§E20.26非線形最小二乗法とパラメータ推定

最終更新

線形モデルを最小二乗法で当てはめるとき、係数行列の列が一次独立ならば、ノルムがδ\delta以下のデータの摂動による推定値の変化のノルムの最大値は、δ\deltaを係数行列の最小特異値で割った値であり、係数行列だけで決まる。パラメータがモデルの値に非線形に入る場合には、このような評価をそのまま当てはめることはできない。

減衰曲線ae−bt+cae^{-bt}+cでは、パラメータbbが指数関数の中に入る。2e−0.8t+0.52e^{-0.8t}+0.5の値に、大きさ0.010.01で符号が交互に変わる摂動を加えて小数第33位に丸めた観測を、区間[0,4][0,4]の等間隔の99点と区間[0,0.4][0,0.4]の等間隔の99点でとる。数値計算で求めた残差の二乗和の停留点の近似では、残差のノルムはどちらの観測でも約0.030.03であるが、(a,b,c)=(2,0.8,0.5)(a,b,c)=(2,0.8,0.5)からの距離は約0.0120.012と約0.650.65である。

残差が同程度に小さいことは、パラメータがデータによってよく定まっていることを意味しない。パラメータ推定では、データが変わったときに停留点がどれだけ動くかを、当てはめの問題そのものから量として取り出す必要がある。本記事では、線形最小二乗問題を繰り返し解いて停留点を求める方法を構成し、求めた停留点のデータに対する感度を、線形モデルでの評価と比べて調べる。

1 残差写像と Gauss–Newton 法

定義 1.1.m,n∈N≥1m,n\in\NNとし、U⊆RnU\subseteq\R^nを開集合とする。

  1. r ⁣:U→Rmr\colon U\to\R^mをC1C^1級の写像とし、全微分Dr(x)Dr(x)を標準基底に関するm×nm\times n行列と同一視してJ(x):=Dr(x)J(x):=Dr(x)と書く。ϕ ⁣:U→R\phi\colon U\to\Rをϕ(x):=12∥r(x)∥22\phi(x):=\frac12\lVert r(x)\rVert_2^2で定める。ϕ\phiの局所最小点を求める問題を、残差写像 (residual map)rrに関する 非線形最小二乗問題 (nonlinear least squares problem) という。
  2. h ⁣:U×R→Rh\colon U\times\R\to\Rを、各t∈Rt\in\Rについてx↦h(x,t)x\mapsto h(x,t)がC1C^1級である関数とする。観測時刻t1,…,tm∈Rt_1,\dots,t_m\in\R、観測値y∈Rmy\in\R^m、正の実数w1,…,wmw_1,\dots,w_mに対して、ri(x):=wi (h(x,ti)−yi)r_i(x):=\sqrt{w_i}\,\bigl(h(x,t_i)-y_i\bigr)(1≤i≤m1\le i\le m)で定まる残差写像rrの非線形最小二乗問題を、モデルhhのデータ(ti,yi)i=1m(t_i,y_i)_{i=1}^mへの重みwwによる 当てはめ (curve fitting) という。このときϕ(x)=12∑i=1mwi(h(x,ti)−yi)2\phi(x)=\frac12\sum_{i=1}^mw_i\bigl(h(x,t_i)-y_i\bigr)^2である。

補題 1.2.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとする。

  1. ϕ\phiはC1C^1級であり、任意のx∈Ux\in Uについて∇ϕ(x)=J(x)Tr(x)\nabla\phi(x)=J(x)^{\mathsf T}r(x)である。
  2. rrがC2C^2級ならばϕ\phiはC2C^2級であり、任意のx∈Ux\in Uについて ∇2ϕ(x)=J(x)TJ(x)+∑i=1mri(x)∇2ri(x)\nabla^2\phi(x)=J(x)^{\mathsf T}J(x)+\sum_{i=1}^mr_i(x)\nabla^2r_i(x) である。

証明. 演習とする(問題 8.1)。▨

定義 1.3.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとし、DGN:={x∈U∣J(x) の列は一次独立}D_{\mathrm{GN}}:=\{x\in U\mid J(x)\text{ の列は一次独立}\}と置く。DGN≠∅D_{\mathrm{GN}}\ne\emptysetならばm≥nm\ge nである。x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}とする。§E20.6 命題 1.2 (2)により、J(x)p=−r(x)J(x)p=-r(x)の最小二乗解、すなわちp↦∥r(x)+J(x)p∥2p\mapsto\lVert r(x)+J(x)p\rVert_2の最小値を与えるp∈Rnp\in\R^nはただ一つ存在し、§E20.9 命題 6.1 (3)により

s(x):=−(J(x)TJ(x))−1J(x)Tr(x)=−J(x)†r(x)s(x):=-\bigl(J(x)^{\mathsf T}J(x)\bigr)^{-1}J(x)^{\mathsf T}r(x)=-J(x)^\dagger r(x)

である。s(x)s(x)をxxにおける Gauss–Newton 修正量 (Gauss-Newton step) といい、G(x):=x+s(x)G(x):=x+s(x)で定まるG ⁣:DGN→RnG\colon D_{\mathrm{GN}}\to\R^nを Gauss–Newton 反復写像 (Gauss-Newton iteration map) という。x0∈Ux_0\in Uとし、xk∈DGNx_k\in D_{\mathrm{GN}}であるときxk+1:=G(xk)x_{k+1}:=G(x_k)と置く。この反復を Gauss–Newton 法 (Gauss-Newton method) といい、すべてのk∈N≥0k\in\Nでxk∈DGNx_k\in D_{\mathrm{GN}}であるとき、Gauss–Newton 法の反復列(xk)k∈N≥0(x_k)_{k\in\N}が定まるという。J(x)TJ(x)J(x)^{\mathsf T}J(x)は正則であるから、補題 1.2 (1)により、x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}についてG(x)=xG(x)=xであることと∇ϕ(x)=0\nabla\phi(x)=0であることは同値である。m=nm=nならばJ(x)†=J(x)−1J(x)^\dagger=J(x)^{-1}であり、GGは§E20.23 定義 1.1のNrN_rに一致する。

注意 1.4.x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}とする。J(x)J(x)と右辺−r(x)-r(x)の Householder QR 法を厳密算術で実行し、その出力を(R,c)(R,c)とすると、§E20.6 命題 3.6によりs(x)s(x)はRs=(c1,…,cn)Rs=(c_1,\dots,c_n)のただ一つの解であり、§E20.6 補題 3.5によりmin⁡p∥r(x)+J(x)p∥2=∥(cn+1,…,cm)∥2\min_p\lVert r(x)+J(x)p\rVert_2=\lVert(c_{n+1},\dots,c_m)\rVert_2である。この計算はJ(x)TJ(x)J(x)^{\mathsf T}J(x)を作らない。J(x)TJ(x)J(x)^{\mathsf T}J(x)を係数行列とする一次方程式を解く場合、§E20.6 命題 2.3により係数行列の条件数はκ2(J(x))2\kappa_2(J(x))^2である。

rrが計算グラフの定める写像であるとき、§E20.22 命題 4.1 (3)により、J(x)J(x)の列は方向e1,…,ene_1,\dots,e_nの前進モードで、行は重みe1,…,eme_1,\dots,e_mの逆モードで得られる。§E20.22 定理 3.2により、重みr(x)r(x)の一回の逆モードはJ(x)Tr(x)=∇ϕ(x)J(x)^{\mathsf T}r(x)=\nabla\phi(x)を与える。

rrが定義 1.1 (2)の重みwwによる当てはめの残差写像であるとき、J(x)J(x)の第ii行はwi Dxh(x,ti)\sqrt{w_i}\,D_xh(x,t_i)である。ここでDxh(x,ti)∈R1×nD_xh(x,t_i)\in\R^{1\times n}はx↦h(x,ti)x\mapsto h(x,t_i)の全微分である。第ii行がDxh(x,ti)D_xh(x,t_i)の行列をAA、b:=(yi−h(x,ti))i=1mb:=\bigl(y_i-h(x,t_i)\bigr)_{i=1}^m、C:=diag⁡(w1,…,wm)C:=\operatorname{diag}(\sqrt{w_1},\dots,\sqrt{w_m})とするとCA=J(x)CA=J(x)、Cb=−r(x)Cb=-r(x)であり、§E20.6 命題 5.2 (2)により、J(x)p=−r(x)J(x)p=-r(x)の最小二乗解はAp=bAp=bの重みdiag⁡(w1,…,wm)\operatorname{diag}(w_1,\dots,w_m)に関する重み付き最小二乗解である。

2 零残差での局所収束

補題 2.1.mm、nn、UU、rr、JJを定義 1.1のとおりとし、DGND_{\mathrm{GN}}、GGを定義 1.3のとおりとする。

  1. DGND_{\mathrm{GN}}は開集合であり、x↦J(x)†x\mapsto J(x)^\daggerはDGND_{\mathrm{GN}}上で連続である。rrがC2C^2級ならば、x↦J(x)†x\mapsto J(x)^\daggerとGGはDGND_{\mathrm{GN}}上でC1C^1級である。
  2. x∗∈DGNx_*\in D_{\mathrm{GN}}とし、σ∗:=σn(J(x∗))\sigma_*:=\sigma_n(J(x_*))と置く。x∈Ux\in Uが∥J(x)−J(x∗)∥2≤σ∗/2\lVert J(x)-J(x_*)\rVert_2\le\sigma_*/2を満たすならば、x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}であり、J(x)†J(x)=InJ(x)^\dagger J(x)=I_n、∥J(x)†∥2≤2/σ∗\lVert J(x)^\dagger\rVert_2\le2/\sigma_*が成り立つ。

証明.(1)を示す。x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}をとる。§E20.6 補題 2.1 (2)によりσn(J(x))>0\sigma_n(J(x))>0である。§E20.6 補題 2.1 (1)により∥J(y)−J(x)∥2≤∥J(y)−J(x)∥F\lVert J(y)-J(x)\rVert_2\le\lVert J(y)-J(x)\rVert_Fであり、JJは連続であるから、xxの開近傍W⊆UW\subseteq Uが存在して、y∈Wy\in Wならば∥J(y)−J(x)∥2<σn(J(x))\lVert J(y)-J(x)\rVert_2<\sigma_n(J(x))である。§E20.6 補題 2.1 (3)により、y∈Wy\in WならばJ(y)J(y)の列は一次独立であり、W⊆DGNW\subseteq D_{\mathrm{GN}}である。したがってDGND_{\mathrm{GN}}は開集合である。y∈DGNy\in D_{\mathrm{GN}}についてM(y):=J(y)TJ(y)M(y):=J(y)^{\mathsf T}J(y)は§E20.6 命題 1.2 (2)により正則であり、余因子行列による逆行列の表示から、M(y)−1M(y)^{-1}の各成分はM(y)M(y)の成分の多項式をdet⁡M(y)≠0\det M(y)\ne0で割ったものである。M(y)M(y)の成分はJ(y)J(y)の成分の多項式であるから、J(y)†=M(y)−1J(y)TJ(y)^\dagger=M(y)^{-1}J(y)^{\mathsf T}の各成分は、J(y)J(y)の成分の有理式で分母がDGND_{\mathrm{GN}}上で00にならないものである。JJは連続であるからx↦J(x)†x\mapsto J(x)^\daggerは連続である。rrがC2C^2級ならばJJはC1C^1級であるから、x↦J(x)†x\mapsto J(x)^\daggerはC1C^1級であり、G(x)=x−J(x)†r(x)G(x)=x-J(x)^\dagger r(x)もC1C^1級である。

(2)を示す。§E20.6 補題 2.1 (2)によりσ∗>0\sigma_*>0であり、∥J(x)−J(x∗)∥2≤σ∗/2<σ∗\lVert J(x)-J(x_*)\rVert_2\le\sigma_*/2<\sigma_*であるから、§E20.6 補題 2.1 (3)によりJ(x)J(x)の列は一次独立であってσn(J(x))≥σ∗/2\sigma_n(J(x))\ge\sigma_*/2である。J(x)†J(x)=(J(x)TJ(x))−1J(x)TJ(x)=InJ(x)^\dagger J(x)=(J(x)^{\mathsf T}J(x))^{-1}J(x)^{\mathsf T}J(x)=I_nであり、§E20.9 命題 6.1 (3)により∥J(x)†∥2=1/σn(J(x))≤2/σ∗\lVert J(x)^\dagger\rVert_2=1/\sigma_n(J(x))\le2/\sigma_*である。▨

定理 2.2.mm、nn、UU、rr、JJを定義 1.1のとおりとし、DGND_{\mathrm{GN}}、GGを定義 1.3のとおりとする。Rn\R^nとRm\R^mには Euclid ノルムを、行列にはそれに関する作用素ノルムを用いる。x∗∈Ux_*\in Uはr(x∗)=0r(x_*)=0を満たし、J(x∗)J(x_*)の列は一次独立であるとし、σ∗:=σn(J(x∗))\sigma_*:=\sigma_n(J(x_*))と置く。実数R>0R>0、γ≥0\gamma\ge0について、閉球B‾(x∗,R):={x∈Rn∣∥x−x∗∥2≤R}\overline B(x_*,R):=\{x\in\R^n\mid\lVert x-x_*\rVert_2\le R\}がUUに含まれ、任意のx,y∈B‾(x∗,R)x,y\in\overline B(x_*,R)に対して∥J(x)−J(y)∥2≤γ∥x−y∥2\lVert J(x)-J(y)\rVert_2\le\gamma\lVert x-y\rVert_2が成り立つとする。γ>0\gamma>0ならばρ:=min⁡{R,σ∗/(2γ)}\rho:=\min\{R,\sigma_*/(2\gamma)\}、γ=0\gamma=0ならばρ:=R\rho:=Rと置く。

  1. 任意のx∈B‾(x∗,ρ)x\in\overline B(x_*,\rho)についてx∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}であり、 ∥G(x)−x∗∥2≤γσ∗∥x−x∗∥22≤12∥x−x∗∥2\lVert G(x)-x_*\rVert_2\le\frac{\gamma}{\sigma_*}\lVert x-x_*\rVert_2^2\le\frac12\lVert x-x_*\rVert_2 が成り立つ。
  2. 任意のx0∈B‾(x∗,ρ)x_0\in\overline B(x_*,\rho)について Gauss–Newton 法の反復列(xk)(x_k)が定まり、すべてのk∈N≥0k\in\Nでxk∈B‾(x∗,ρ)x_k\in\overline B(x_*,\rho)であって、ek:=xk−x∗e_k:=x_k-x_*は ∥ek+1∥2≤γσ∗∥ek∥22,∥ek+1∥2≤12∥ek∥2\lVert e_{k+1}\rVert_2\le\frac{\gamma}{\sigma_*}\lVert e_k\rVert_2^2,\qquad\lVert e_{k+1}\rVert_2\le\frac12\lVert e_k\rVert_2 を満たす。(xk)(x_k)はx∗x_*へ少なくとも二次で収束する。γ=0\gamma=0ならばx1=x∗x_1=x_*であり、あるkkでxk=x∗x_k=x_*ならば、j≥kj\ge kを満たすすべてのjjでxj=x∗x_j=x_*である。

証明.(1)を示す。x∈B‾(x∗,ρ)x\in\overline B(x_*,\rho)をとり、e:=x−x∗e:=x-x_*と置く。Lipschitz 条件とγρ≤σ∗/2\gamma\rho\le\sigma_*/2により∥J(x)−J(x∗)∥2≤γ∥e∥2≤σ∗/2\lVert J(x)-J(x_*)\rVert_2\le\gamma\lVert e\rVert_2\le\sigma_*/2であるから、補題 2.1 (2)によりx∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}、J(x)†J(x)=InJ(x)^\dagger J(x)=I_n、∥J(x)†∥2≤2/σ∗\lVert J(x)^\dagger\rVert_2\le2/\sigma_*である。r(x∗)=0r(x_*)=0であるから

G(x)−x∗=e−J(x)†r(x)=J(x)†(J(x)e−r(x))=J(x)†(r(x∗)−r(x)−J(x)(x∗−x))G(x)-x_*=e-J(x)^\dagger r(x)=J(x)^\dagger\bigl(J(x)e-r(x)\bigr)=J(x)^\dagger\bigl(r(x_*)-r(x)-J(x)(x_*-x)\bigr)

である。B‾(x∗,ρ)\overline B(x_*,\rho)は凸であるから、t∈[0,1]t\in[0,1]についてx+t(x∗−x)∈B‾(x∗,ρ)⊆Ux+t(x_*-x)\in\overline B(x_*,\rho)\subseteq Uであり、Lipschitz 条件から∥J(x+t(x∗−x))−J(x)∥2≤γt∥e∥2\lVert J(x+t(x_*-x))-J(x)\rVert_2\le\gamma t\lVert e\rVert_2である。§E20.23 補題 2.2をF=rF=r、a=xa=x、h=x∗−xh=x_*-xに適用すると、右辺の括弧内のベクトルのノルムはγ2∥e∥22\frac\gamma2\lVert e\rVert_2^2以下であり、

∥G(x)−x∗∥2≤2σ∗⋅γ2∥e∥22=γσ∗∥e∥22\lVert G(x)-x_*\rVert_2\le\frac2{\sigma_*}\cdot\frac\gamma2\lVert e\rVert_2^2=\frac\gamma{\sigma_*}\lVert e\rVert_2^2

を得る。γ∥e∥2≤γρ≤σ∗/2\gamma\lVert e\rVert_2\le\gamma\rho\le\sigma_*/2であるから、右辺は12∥e∥2\frac12\lVert e\rVert_2以下である。

(2)を示す。xk∈B‾(x∗,ρ)x_k\in\overline B(x_*,\rho)ならば、(1)によりxk∈DGNx_k\in D_{\mathrm{GN}}であってxk+1=G(xk)x_{k+1}=G(x_k)が定まり、二つの不等式が成り立ち、∥ek+1∥2≤ρ/2\lVert e_{k+1}\rVert_2\le\rho/2である。x0∈B‾(x∗,ρ)x_0\in\overline B(x_*,\rho)から、kkに関する帰納法により、反復列が定まり、すべてのkkでxk∈B‾(x∗,ρ)x_k\in\overline B(x_*,\rho)と二つの不等式が成り立つ。∥ek∥2≤2−k∥e0∥2\lVert e_k\rVert_2\le2^{-k}\lVert e_0\rVert_2であるからxk→x∗x_k\to x_*であり、第一の不等式は§E20.4 定義 1.5の不等式をC=γ/σ∗C=\gamma/\sigma_*、k0=0k_0=0として与える。γ=0\gamma=0ならば第一の不等式から∥e1∥2≤0\lVert e_1\rVert_2\le0である。ek=0e_k=0ならば第一の不等式からek+1=0e_{k+1}=0であり、jjに関する帰納法によりj≥kj\ge kについてej=0e_j=0である。▨

注意 2.3.m=nm=nのとき、§E20.9 命題 6.1 (3)により∥J(x∗)−1∥2=1/σ∗\lVert J(x_*)^{-1}\rVert_2=1/\sigma_*であるから、定理 2.2のρ\rhoと定数γ/σ∗\gamma/\sigma_*は、F=rF=rについての§E20.23 定義 2.1のρ\rhoと§E20.23 定理 2.5の定数βγ\beta\gammaに一致する。

3 非零残差と反復写像の微分

命題 3.1.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとし、DGND_{\mathrm{GN}}、GGを定義 1.3のとおりとする。rrはC2C^2級であるとし、x∗∈DGNx_*\in D_{\mathrm{GN}}は∇ϕ(x∗)=0\nabla\phi(x_*)=0を満たすとする。J∗:=J(x∗)J_*:=J(x_*)、S∗:=∑i=1mri(x∗)∇2ri(x∗)S_*:=\sum_{i=1}^mr_i(x_*)\nabla^2r_i(x_*)と置く。このときGGはx∗x_*を含む開集合DGND_{\mathrm{GN}}上でC1C^1級であり、G(x∗)=x∗G(x_*)=x_*であって

DG(x∗)=−(J∗TJ∗)−1S∗DG(x_*)=-(J_*^{\mathsf T}J_*)^{-1}S_*

が成り立つ。特にr(x∗)=0r(x_*)=0ならばDG(x∗)=0DG(x_*)=0である。

証明.補題 2.1 (1)によりDGND_{\mathrm{GN}}は開集合であり、GGはその上でC1C^1級である。定義 1.3によりG(x∗)=x∗G(x_*)=x_*である。x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}についてM(x):=J(x)TJ(x)M(x):=J(x)^{\mathsf T}J(x)と置くと、GGの定義と補題 1.2 (1)により

M(x)(G(x)−x)=−J(x)Tr(x)=−∇ϕ(x)M(x)\bigl(G(x)-x\bigr)=-J(x)^{\mathsf T}r(x)=-\nabla\phi(x)

である。rrはC2C^2級であるからMMと∇ϕ\nabla\phiはC1C^1級であり、両辺をx∗x_*で方向h∈Rnh\in\R^nに微分すると、G(x∗)−x∗=0G(x_*)-x_*=0と補題 1.2 (2)により

M(x∗)(DG(x∗)h−h)=−∇2ϕ(x∗)h=−M(x∗)h−S∗hM(x_*)\bigl(DG(x_*)h-h\bigr)=-\nabla^2\phi(x_*)h=-M(x_*)h-S_*h

である。M(x∗)M(x_*)は正則であるからDG(x∗)h=−M(x∗)−1S∗hDG(x_*)h=-M(x_*)^{-1}S_*hを得る。r(x∗)=0r(x_*)=0ならばS∗=0S_*=0である。▨

定理 3.2.mm、nn、UU、rr、ϕ\phi、DGND_{\mathrm{GN}}、GG、x∗x_*を命題 3.1のとおりとする。Rn\R^nにノルム∥⋅∥\lVert\cdot\rVertを一つ固定し、nn次正方行列にはそれに関する作用素ノルムを用いる。∥DG(x∗)∥<1\lVert DG(x_*)\rVert<1とし、実数qqが∥DG(x∗)∥<q<1\lVert DG(x_*)\rVert<q<1を満たすとする。

  1. 実数δ>0\delta>0が存在して、∥x0−x∗∥≤δ\lVert x_0-x_*\rVert\le\deltaを満たす任意のx0∈Rnx_0\in\R^nについて、Gauss–Newton 法の反復列(xk)(x_k)が定まり、すべてのk∈N≥0k\in\Nで∥xk−x∗∥≤δ\lVert x_k-x_*\rVert\le\deltaかつ∥xk+1−x∗∥≤q∥xk−x∗∥\lVert x_{k+1}-x_*\rVert\le q\lVert x_k-x_*\rVertが成り立ち、xk→x∗x_k\to x_*である。
  2. (1)の反復列がすべてのkkでxk≠x∗x_k\ne x_*を満たすならば、lim sup⁡k→∞∥xk+1−x∗∥/∥xk−x∗∥≤∥DG(x∗)∥\limsup_{k\to\infty}\lVert x_{k+1}-x_*\rVert/\lVert x_k-x_*\rVert\le\lVert DG(x_*)\rVertである。

証明.

主張 3.2.1.∥DG(x∗)∥<q′<1\lVert DG(x_*)\rVert<q'<1を満たす任意の実数q′q'について、実数δ′>0\delta'>0が存在して、B′:={x∈Rn∣∥x−x∗∥≤δ′}B':=\{x\in\R^n\mid\lVert x-x_*\rVert\le\delta'\}はDGND_{\mathrm{GN}}に含まれ、任意のx∈B′x\in B'について∥G(x)−x∗∥≤q′∥x−x∗∥\lVert G(x)-x_*\rVert\le q'\lVert x-x_*\rVertが成り立つ。

証明.命題 3.1によりDGND_{\mathrm{GN}}はx∗x_*を含む開集合であり、DGDGはDGND_{\mathrm{GN}}上で連続である。作用素ノルムはnn次正方行列の空間のノルムであり、有限次元のノルムはすべて同値であるから、x↦∥DG(x)−DG(x∗)∥x\mapsto\lVert DG(x)-DG(x_*)\rVertはx∗x_*で連続である。この連続性と§E20.2 補題 1.2 (2)により、δ′>0\delta'>0が存在して、B′⊆DGNB'\subseteq D_{\mathrm{GN}}であり、任意のx∈B′x\in B'について∥DG(x)∥≤∥DG(x∗)∥+∥DG(x)−DG(x∗)∥≤q′\lVert DG(x)\rVert\le\lVert DG(x_*)\rVert+\lVert DG(x)-DG(x_*)\rVert\le q'である。x∈B′x\in B'をとる。B′B'は凸であるから、t∈[0,1]t\in[0,1]についてx∗+t(x−x∗)∈B′x_*+t(x-x_*)\in B'であり、§E20.2 命題 4.1を開集合DGND_{\mathrm{GN}}上のGG、点x∗x_*、Δx=x−x∗\Delta x=x-x_*、L=q′L=q'に適用すると∥G(x)−G(x∗)∥≤q′∥x−x∗∥\lVert G(x)-G(x_*)\rVert\le q'\lVert x-x_*\rVertである。G(x∗)=x∗G(x_*)=x_*である。▨

(1)を示す。主張 3.2.1をq′=qq'=qに適用してδ:=δ′\delta:=\delta'と置く。∥xk−x∗∥≤δ\lVert x_k-x_*\rVert\le\deltaならば、xk∈DGNx_k\in D_{\mathrm{GN}}であってxk+1=G(xk)x_{k+1}=G(x_k)が定まり、∥xk+1−x∗∥≤q∥xk−x∗∥≤δ\lVert x_{k+1}-x_*\rVert\le q\lVert x_k-x_*\rVert\le\deltaである。kkに関する帰納法により、反復列が定まり、すべてのkkで二つの不等式が成り立つ。∥xk−x∗∥≤qkδ\lVert x_k-x_*\rVert\le q^k\deltaであるからxk→x∗x_k\to x_*である。

(2)を示す。∥DG(x∗)∥<q′<1\lVert DG(x_*)\rVert<q'<1を満たすq′q'をとり、主張 3.2.1のδ′\delta'をとる。xk→x∗x_k\to x_*であるから、K∈N≥0K\in\Nが存在して、k≥Kk\ge Kならば∥xk−x∗∥≤δ′\lVert x_k-x_*\rVert\le\delta'であり、∥xk+1−x∗∥/∥xk−x∗∥≤q′\lVert x_{k+1}-x_*\rVert/\lVert x_k-x_*\rVert\le q'である。したがって上極限はq′q'以下であり、q′q'は∥DG(x∗)∥\lVert DG(x_*)\rVertより大きい任意の実数であるから、上極限は∥DG(x∗)∥\lVert DG(x_*)\rVert以下である。▨

例 3.3.λ∈R\lambda\in\Rとし、r ⁣:R→R2r\colon\R\to\R^2をr(x):=(x+1, λx2+x−1)r(x):=(x+1,\ \lambda x^2+x-1)で定める。J(x)=(1, 2λx+1)TJ(x)=(1,\ 2\lambda x+1)^{\mathsf T}は00でないからDGN=RD_{\mathrm{GN}}=\Rであり、

G(x)=x−(x+1)+(λx2+x−1)(2λx+1)1+(2λx+1)2G(x)=x-\frac{(x+1)+(\lambda x^2+x-1)(2\lambda x+1)}{1+(2\lambda x+1)^2}

である。r(0)=(1,−1)r(0)=(1,-1)、J(0)=(1,1)TJ(0)=(1,1)^{\mathsf T}から∇ϕ(0)=0\nabla\phi(0)=0、J(0)TJ(0)=2J(0)^{\mathsf T}J(0)=2であり、残差のノルム∥r(0)∥2=2\lVert r(0)\rVert_2=\sqrt2はλ\lambdaによらない。∇2r1=0\nabla^2r_1=0、∇2r2=2λ\nabla^2r_2=2\lambdaからS∗=−2λS_*=-2\lambdaであり、命題 3.1によりG′(0)=λG'(0)=\lambda、補題 1.2 (2)によりϕ′′(0)=2−2λ\phi''(0)=2-2\lambdaである。

  1. ∣λ∣<1\lvert\lambda\rvert<1ならば、定理 3.2 (1)により、実数δ>0\delta>0が存在して、∣x0∣≤δ\lvert x_0\rvert\le\deltaを満たす任意の初期値x0x_0からの反復列は00に収束する。そのような反復列(xk)(x_k)がすべてのk∈N≥0k\in\Nでxk≠0x_k\ne0を満たすならば、定理 3.2 (2)により∣xk+1∣/∣xk∣\lvert x_{k+1}\rvert/\lvert x_k\rvertの上極限は∣λ∣\lvert\lambda\rvert以下である。λ=12\lambda=\frac12、x0=110x_0=\frac1{10}ではx1=2114420≈4.774×10−2x_1=\frac{211}{4420}\approx4.774\times10^{-2}、x2≈2.333×10−2x_2\approx2.333\times10^{-2}、x3≈1.153×10−2x_3\approx1.153\times10^{-2}であり、xk+1/xkx_{k+1}/x_k(k=0,1,2k=0,1,2)は0.4770.477、0.4890.489、0.4940.494である。
  2. λ=0\lambda=0ならばG(x)=x−(x+1)+(x−1)2=0G(x)=x-\frac{(x+1)+(x-1)}2=0であるから、任意の初期値についてx1=0x_1=0である。
  3. ∣λ∣>1\lvert\lambda\rvert>1とする。DGN=RD_{\mathrm{GN}}=\Rであるから、任意の初期値x0∈Rx_0\in\Rについて Gauss–Newton 法の反復列はx0x_0から始まるGGの不動点反復である。GGは00で微分可能であり、G(0)=0G(0)=0、∣G′(0)∣=∣λ∣>1\lvert G'(0)\rvert=\lvert\lambda\rvert>1であるから、§E20.4 命題 3.4をD=RD=\R、g=Gg=G、x∗=0x^*=0に適用すると、00に収束する反復列については、K∈N≥0K\in\Nが存在して、k≥Kk\ge Kを満たすすべてのkkでxk=0x_k=0である。λ<−1\lambda<-1ならばϕ′′(0)=2−2λ>0\phi''(0)=2-2\lambda>0であり、00はϕ\phiの狭義の局所最小点である。λ=−2\lambda=-2、x0=110x_0=\frac1{10}ではx1=−103340≈−0.3029x_1=-\frac{103}{340}\approx-0.3029である。

4 Levenberg–Marquardt 法

定義 4.1.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとし、x∈Ux\in U、実数μ>0\mu>0をとる。§E20.25 命題 2.2 (1)をA=J(x)A=J(x)、L=InL=I_n、c=−r(x)c=-r(x)、λ=μ\lambda=\sqrt\muに適用すると、∥r(x)+J(x)p∥22+μ∥p∥22\lVert r(x)+J(x)p\rVert_2^2+\mu\lVert p\rVert_2^2の最小値を与えるp∈Rnp\in\R^nはただ一つ存在し、それは

(J(x)TJ(x)+μIn)p=−J(x)Tr(x)\bigl(J(x)^{\mathsf T}J(x)+\mu I_n\bigr)p=-J(x)^{\mathsf T}r(x)

のただ一つの解であって、(J(x)μ In)p=(−r(x)0)\begin{pmatrix}J(x)\\\sqrt\mu\,I_n\end{pmatrix}p=\begin{pmatrix}-r(x)\\0\end{pmatrix}のただ一つの最小二乗解である。このppをpμ(x)p_\mu(x)と書き、xxにおける減衰係数μ\muの Levenberg–Marquardt 修正量 (Levenberg-Marquardt step) といい、μ\muを 減衰係数 (damping parameter) という。§E20.25 定義 2.3の行列RλR_\lambdaをA=J(x)A=J(x)について作るとpμ(x)=Rμ(−r(x))p_\mu(x)=R_{\sqrt\mu}\bigl(-r(x)\bigr)であり、pμ(x)p_\mu(x)はデータ−r(x)-r(x)の、正則化係数μ\sqrt\muの Tikhonov 正則化解である。拡大行列の列は下のnn行μ In\sqrt\mu\,I_nにより一次独立であるから、§E20.6 命題 3.6により、pμ(x)p_\mu(x)はこの拡大行列と右辺(−r(x),0)(-r(x),0)の Householder QR 法で計算することができ、J(x)TJ(x)+μInJ(x)^{\mathsf T}J(x)+\mu I_nを作る必要はない。

命題 4.2.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとし、DGND_{\mathrm{GN}}、ssを定義 1.3のとおりとする。x∈Ux\in U、実数μ>0\mu>0をとり、g:=∇ϕ(x)g:=\nabla\phi(x)、p:=pμ(x)p:=p_\mu(x)と置く。

  1. g≠0g\ne0ならばp≠0p\ne0であり、 gTp=−∥J(x)p∥22−μ∥p∥22<0,ϕ(x)−12∥r(x)+J(x)p∥22=12∥J(x)p∥22+μ∥p∥22>0g^{\mathsf T}p=-\lVert J(x)p\rVert_2^2-\mu\lVert p\rVert_2^2<0,\qquad\phi(x)-\frac12\lVert r(x)+J(x)p\rVert_2^2=\frac12\lVert J(x)p\rVert_2^2+\mu\lVert p\rVert_2^2>0 が成り立つ。
  2. ∥p∥2≤∥g∥2/μ\lVert p\rVert_2\le\lVert g\rVert_2/\muであり、 −gTp≥μ∥J(x)∥22+μ∥g∥2∥p∥2-g^{\mathsf T}p\ge\frac{\mu}{\lVert J(x)\rVert_2^2+\mu}\lVert g\rVert_2\lVert p\rVert_2 が成り立つ。
  3. μ→∞\mu\to\inftyのときμpμ(x)→−g\mu p_\mu(x)\to-gである。x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}ならば、μ→+0\mu\to+0のときpμ(x)→s(x)p_\mu(x)\to s(x)である。

証明.J:=J(x)J:=J(x)、M:=JTJ+μInM:=J^{\mathsf T}J+\mu I_nと置く。補題 1.2 (1)によりg=JTr(x)g=J^{\mathsf T}r(x)であり、Mp=−gMp=-g、pTMp=∥Jp∥22+μ∥p∥22p^{\mathsf T}Mp=\lVert Jp\rVert_2^2+\mu\lVert p\rVert_2^2である。

(1)を示す。g≠0g\ne0ならばMp=−gMp=-gからp≠0p\ne0であり、gTp=−pTMpg^{\mathsf T}p=-p^{\mathsf T}Mpから第一の等式を得る。12∥r(x)+Jp∥22=ϕ(x)+gTp+12∥Jp∥22\frac12\lVert r(x)+Jp\rVert_2^2=\phi(x)+g^{\mathsf T}p+\frac12\lVert Jp\rVert_2^2に第一の等式を代入して第二の等式を得る。p≠0p\ne0とμ>0\mu>0から二つの量の符号を得る。

(2)を示す。 Cauchy–Schwarz の不等式によりμ∥p∥22≤pTMp=−gTp≤∥g∥2∥p∥2\mu\lVert p\rVert_2^2\le p^{\mathsf T}Mp=-g^{\mathsf T}p\le\lVert g\rVert_2\lVert p\rVert_2であり、第一の不等式を得る。§E20.6 補題 2.1 (1)により∥JT∥2=∥J∥2\lVert J^{\mathsf T}\rVert_2=\lVert J\rVert_2であるから、∥g∥2=∥Mp∥2≤(∥J∥22+μ)∥p∥2\lVert g\rVert_2=\lVert Mp\rVert_2\le(\lVert J\rVert_2^2+\mu)\lVert p\rVert_2であり、

−gTp≥μ∥p∥22≥μ∥J∥22+μ∥g∥2∥p∥2-g^{\mathsf T}p\ge\mu\lVert p\rVert_2^2\ge\frac{\mu}{\lVert J\rVert_2^2+\mu}\lVert g\rVert_2\lVert p\rVert_2

である。

(3)を示す。μp+g=−JTJp\mu p+g=-J^{\mathsf T}Jpであるから、(2)により∥μp+g∥2≤∥J∥22∥g∥2/μ\lVert\mu p+g\rVert_2\le\lVert J\rVert_2^2\lVert g\rVert_2/\muであり、右辺はμ→∞\mu\to\inftyのとき00に収束する。x∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}ならばJ≠0J\ne0であり、§E20.25 命題 2.4 (3)をA=JA=J、c=−r(x)c=-r(x)に適用すると、μ→+0\mu\to+0のときpμ(x)=Rμ(−r(x))→J†(−r(x))=s(x)p_\mu(x)=R_{\sqrt\mu}(-r(x))\to J^\dagger(-r(x))=s(x)である。▨

命題 4.3.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとし、T∈Rn×nT\in\R^{n\times n}を正則行列とする。U~:={z∈Rn∣Tz∈U}\tilde U:=\{z\in\R^n\mid Tz\in U\}と置き、r~ ⁣:U~→Rm\tilde r\colon\tilde U\to\R^mをr~(z):=r(Tz)\tilde r(z):=r(Tz)で定める。U~\tilde Uは開集合であり、r~\tilde rはC1C^1級である。残差写像r~\tilde rについて定義 1.3と定義 4.1で定まるDGND_{\mathrm{GN}}、GG、pμp_\muをD~GN\tilde D_{\mathrm{GN}}、G~\tilde G、p~μ\tilde p_\muと書く。z∈U~z\in\tilde Uとし、x:=Tzx:=Tzと置く。

  1. z∈D~GNz\in\tilde D_{\mathrm{GN}}であることとx∈DGNx\in D_{\mathrm{GN}}であることは同値であり、そのときTG~(z)=G(x)T\tilde G(z)=G(x)である。
  2. 実数μ>0\mu>0について、Tp~μ(z)T\tilde p_\mu(z)はq↦∥r(x)+J(x)q∥22+μ∥T−1q∥22q\mapsto\lVert r(x)+J(x)q\rVert_2^2+\mu\lVert T^{-1}q\rVert_2^2の最小値を与えるただ一つのq∈Rnq\in\R^nであり、 (J(x)TJ(x)+μ T−TT−1)Tp~μ(z)=−J(x)Tr(x)\bigl(J(x)^{\mathsf T}J(x)+\mu\,T^{-\mathsf T}T^{-1}\bigr)T\tilde p_\mu(z)=-J(x)^{\mathsf T}r(x) を満たす。
  3. T=dInT=dI_n(d∈Rd\in\R、d≠0d\ne0)ならば、任意の実数μ>0\mu>0についてTp~μ(z)=pμ/d2(x)T\tilde p_\mu(z)=p_{\mu/d^2}(x)である。さらに∇ϕ(x)≠0\nabla\phi(x)\ne0かつd2≠1d^2\ne1ならばTp~μ(z)≠pμ(x)T\tilde p_\mu(z)\ne p_\mu(x)である。

証明. 演習とする(問題 8.2)。▨

定義 4.4.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとする。初期値x0∈Ux_0\in U、初期減衰係数μ0>0\mu_0>0、受理の定数η∈(0,1)\eta\in(0,1)、更新の倍率ν>1\nu>1、許容量εg≥0\varepsilon_g\ge0、εx≥0\varepsilon_x\ge0、試行の上限K∈N≥1K\in\NNを固定する。k=0,1,…,K−1k=0,1,\dots,K-1の順に、xk∈Ux_k\in Uとμk>0\mu_k>0から次の試行kkを行う手続きを Levenberg–Marquardt 法 (Levenberg-Marquardt method) という。

  1. ∥∇ϕ(xk)∥2≤εg\lVert\nabla\phi(x_k)\rVert_2\le\varepsilon_gならば、xkx_kを出力して停止する。この停止理由を「勾配」という。
  2. pk:=pμk(xk)p_k:=p_{\mu_k}(x_k)、pred⁡k:=ϕ(xk)−12∥r(xk)+J(xk)pk∥22\operatorname{pred}_k:=\phi(x_k)-\frac12\lVert r(x_k)+J(x_k)p_k\rVert_2^2と置く。xk+pk∈Ux_k+p_k\in Uでありϕ(xk)−ϕ(xk+pk)≥ηpred⁡k\phi(x_k)-\phi(x_k+p_k)\ge\eta\operatorname{pred}_kであるならば、試行kkを受理し、xk+1:=xk+pkx_{k+1}:=x_k+p_k、μk+1:=μk/ν\mu_{k+1}:=\mu_k/\nuと置く。このとき∥pk∥2≤εx(1+∥xk+1∥2)\lVert p_k\rVert_2\le\varepsilon_x(1+\lVert x_{k+1}\rVert_2)ならばxk+1x_{k+1}を出力して停止し、この停止理由を「修正量」という。
  3. 試行kkを受理しないならば、試行kkを棄却し、xk+1:=xkx_{k+1}:=x_k、μk+1:=νμk\mu_{k+1}:=\nu\mu_kと置く。

試行K−1K-1の後に停止していなければ、xKx_Kを出力して停止し、この停止理由を「反復上限」という。

命題 4.5. 記号を定義 4.4のとおりとする。

  1. 試行kkで定義 4.4 (2)に達したならばpred⁡k>0\operatorname{pred}_k>0であり、試行kkを受理したならばϕ(xk+1)<ϕ(xk)\phi(x_{k+1})<\phi(x_k)である。したがって、定まったx0,x1,…x_0,x_1,\dotsについてϕ(x0)≥ϕ(x1)≥⋯\phi(x_0)\ge\phi(x_1)\ge\cdotsである。
  2. x∈Ux\in Uが∇ϕ(x)≠0\nabla\phi(x)\ne0を満たすとする。実数μˉ>0\bar\mu>0が存在して、任意の実数μ≥μˉ\mu\ge\bar\muについてx+pμ(x)∈Ux+p_\mu(x)\in Uであり、 ϕ(x)−ϕ(x+pμ(x))≥η(ϕ(x)−12∥r(x)+J(x)pμ(x)∥22)\phi(x)-\phi\bigl(x+p_\mu(x)\bigr)\ge\eta\Bigl(\phi(x)-\frac12\bigl\lVert r(x)+J(x)p_\mu(x)\bigr\rVert_2^2\Bigr) が成り立つ。特に、j∈N≥1j\in\NNとし、xk=xx_k=xであって試行k,…,k+j−1k,\dots,k+j-1がすべて棄却されたならば、νj−1μk<μˉ\nu^{j-1}\mu_k<\bar\muである。

証明.(1)を示す。試行kkで定義 4.4 (2)に達したならば、定義 4.4 (1)で停止していないので∥∇ϕ(xk)∥2>εg≥0\lVert\nabla\phi(x_k)\rVert_2>\varepsilon_g\ge0であり、命題 4.2 (1)によりpred⁡k>0\operatorname{pred}_k>0である。試行kkを受理したならばϕ(xk)−ϕ(xk+1)≥ηpred⁡k>0\phi(x_k)-\phi(x_{k+1})\ge\eta\operatorname{pred}_k>0であり、棄却したならばxk+1=xkx_{k+1}=x_kである。

(2)を示す。g:=∇ϕ(x)g:=\nabla\phi(x)、ε:=(1−η)∥g∥2/2\varepsilon:=(1-\eta)\lVert g\rVert_2/2と置くとε>0\varepsilon>0である。補題 1.2 (1)によりϕ\phiはxxで全微分可能であり、§E20.2 補題 1.2 (3)により、実数ρ>0\rho>0が存在して、∥h∥2<ρ\lVert h\rVert_2<\rhoを満たす任意のh∈Rnh\in\R^nについてx+h∈Ux+h\in Uかつ∣ϕ(x+h)−ϕ(x)−gTh∣≤ε∥h∥2\lvert\phi(x+h)-\phi(x)-g^{\mathsf T}h\rvert\le\varepsilon\lVert h\rVert_2である。μˉ:=max⁡{∥J(x)∥22, 2∥g∥2/ρ}\bar\mu:=\max\{\lVert J(x)\rVert_2^2,\ 2\lVert g\rVert_2/\rho\}と置くとμˉ>0\bar\mu>0である。μ≥μˉ\mu\ge\bar\muとし、p:=pμ(x)p:=p_\mu(x)、π:=ϕ(x)−12∥r(x)+J(x)p∥22\pi:=\phi(x)-\frac12\lVert r(x)+J(x)p\rVert_2^2と置く。命題 4.2 (2)により∥p∥2≤∥g∥2/μ≤ρ/2<ρ\lVert p\rVert_2\le\lVert g\rVert_2/\mu\le\rho/2<\rhoであるからx+p∈Ux+p\in Uであり、μ≥∥J(x)∥22\mu\ge\lVert J(x)\rVert_2^2からμ/(∥J(x)∥22+μ)≥1/2\mu/(\lVert J(x)\rVert_2^2+\mu)\ge1/2であるので−gTp≥12∥g∥2∥p∥2-g^{\mathsf T}p\ge\frac12\lVert g\rVert_2\lVert p\rVert_2である。命題 4.2 (1)の二つの等式からπ=−gTp−12∥J(x)p∥22≤−gTp\pi=-g^{\mathsf T}p-\frac12\lVert J(x)p\rVert_2^2\le-g^{\mathsf T}pである。したがって

ϕ(x)−ϕ(x+p)≥−gTp−ε∥p∥2=(1−η)(−gTp)+η(−gTp)−ε∥p∥2≥(1−η2∥g∥2−ε)∥p∥2+ηπ=ηπ\phi(x)-\phi(x+p)\ge-g^{\mathsf T}p-\varepsilon\lVert p\rVert_2=(1-\eta)(-g^{\mathsf T}p)+\eta(-g^{\mathsf T}p)-\varepsilon\lVert p\rVert_2\ge\Bigl(\frac{1-\eta}2\lVert g\rVert_2-\varepsilon\Bigr)\lVert p\rVert_2+\eta\pi=\eta\pi

である。

j∈N≥1j\in\NNとし、xk=xx_k=xであって試行k,…,k+j−1k,\dots,k+j-1がすべて棄却されたとする。定義 4.4 (3)によりxk+j−1=xx_{k+j-1}=x、μk+j−1=νj−1μk\mu_{k+j-1}=\nu^{j-1}\mu_kである。μk+j−1≥μˉ\mu_{k+j-1}\ge\bar\muならば、上で示したことにより試行k+j−1k+j-1は受理され、棄却されたことと両立しない。したがってνj−1μk<μˉ\nu^{j-1}\mu_k<\bar\muである。▨

5 停止と局所感度

系 5.1.mm、nn、UU、rr、JJ、ϕ\phiを定義 1.1のとおりとし、rrはC2C^2級であるとする。x∗∈Ux_*\in Uは∇ϕ(x∗)=0\nabla\phi(x_*)=0を満たし、H∗:=∇2ϕ(x∗)H_*:=\nabla^2\phi(x_*)は正則であるとする。実数R>0R>0、γ≥0\gamma\ge0についてB‾(x∗,R)⊆U\overline B(x_*,R)\subseteq Uであり、任意のx,y∈B‾(x∗,R)x,y\in\overline B(x_*,R)に対して∥∇2ϕ(x)−∇2ϕ(y)∥2≤γ∥x−y∥2\lVert\nabla^2\phi(x)-\nabla^2\phi(y)\rVert_2\le\gamma\lVert x-y\rVert_2が成り立つとする。β:=∥H∗−1∥2\beta:=\lVert H_*^{-1}\rVert_2と置き、γ>0\gamma>0ならばρ:=min⁡{R,1/(2βγ)}\rho:=\min\{R,1/(2\beta\gamma)\}、γ=0\gamma=0ならばρ:=R\rho:=Rと置く。

  1. 任意のx∈B‾(x∗,ρ)x\in\overline B(x_*,\rho)について∥x−x∗∥2≤43β∥∇ϕ(x)∥2\lVert x-x_*\rVert_2\le\frac43\beta\lVert\nabla\phi(x)\rVert_2であり、B‾(x∗,ρ)\overline B(x_*,\rho)に属するϕ\phiの停留点はx∗x_*だけである。特に、定義 4.4の手続きが停止理由「勾配」で出力した点xxがB‾(x∗,ρ)\overline B(x_*,\rho)に属するならば、∥x−x∗∥2≤43βεg\lVert x-x_*\rVert_2\le\frac43\beta\varepsilon_gである。
  2. r(x∗)=0r(x_*)=0ならば、H∗=J(x∗)TJ(x∗)H_*=J(x_*)^{\mathsf T}J(x_*)であり、H∗H_*が正則であることはJ(x∗)J(x_*)の列が一次独立であることと同値であって、β=σn(J(x∗))−2\beta=\sigma_n(J(x_*))^{-2}である。

証明.(1)を示す。F:=∇ϕ ⁣:U→RnF:=\nabla\phi\colon U\to\R^nは補題 1.2 (2)によりC1C^1級であり、DF(x)=∇2ϕ(x)DF(x)=\nabla^2\phi(x)である。仮定によりx∗x_*はFFの正則零点で、半径RR、定数γ\gammaの Lipschitz 条件を満たし、§E20.23 定義 2.1のβ\beta、ρ\rhoはここでのβ\beta、ρ\rhoに一致する。§E20.23 命題 3.1 (1)と§E20.23 命題 3.1 (3)により前半の二つの主張を得る。停止理由「勾配」で出力された点xxは∥∇ϕ(x)∥2≤εg\lVert\nabla\phi(x)\rVert_2\le\varepsilon_gを満たす。

(2)を示す。r(x∗)=0r(x_*)=0ならば補題 1.2 (2)の和は00であり、H∗=J(x∗)TJ(x∗)H_*=J(x_*)^{\mathsf T}J(x_*)である。§E20.6 命題 1.2 (2)により、J(x∗)J(x_*)の列が一次独立ならばH∗H_*は正則である。一次従属ならば、J(x∗)h=0J(x_*)h=0を満たすh≠0h\ne0についてH∗h=0H_*h=0であり、H∗H_*は正則でない。列が一次独立なとき、§E20.6 補題 2.1 (2)によりβ=σn(J(x∗))−2\beta=\sigma_n(J(x_*))^{-2}である。▨

命題 5.2.m,n∈N≥1m,n\in\NN、U⊆RnU\subseteq\R^nを開集合、f ⁣:U→Rmf\colon U\to\R^mをC2C^2級の写像とし、J(x):=Df(x)J(x):=Df(x)と置く。y∈Rmy\in\R^mについて、残差写像x↦f(x)−yx\mapsto f(x)-yの目的関数をϕy(x):=12∥f(x)−y∥22\phi_y(x):=\frac12\lVert f(x)-y\rVert_2^2と書く。y0∈Rmy_0\in\R^mとx∗∈Ux_*\in UがJ(x∗)T(f(x∗)−y0)=0J(x_*)^{\mathsf T}\bigl(f(x_*)-y_0\bigr)=0を満たし、

H∗:=J(x∗)TJ(x∗)+∑i=1m(fi(x∗)−y0,i)∇2fi(x∗)H_*:=J(x_*)^{\mathsf T}J(x_*)+\sum_{i=1}^m\bigl(f_i(x_*)-y_{0,i}\bigr)\nabla^2f_i(x_*)

が正則であるとする。

  1. y0y_0の開近傍V⊆RmV\subseteq\R^m、x∗x_*の開近傍B⊆UB\subseteq U、C1C^1級写像ξ ⁣:V→B\xi\colon V\to Bが存在して、ξ(y0)=x∗\xi(y_0)=x_*であり、任意のy∈Vy\in Vについて∇ϕy(ξ(y))=0\nabla\phi_y(\xi(y))=0が成り立ち、x∈Bx\in B、y∈Vy\in V、∇ϕy(x)=0\nabla\phi_y(x)=0ならばx=ξ(y)x=\xi(y)である。
  2. Dξ(y0)=H∗−1J(x∗)TD\xi(y_0)=H_*^{-1}J(x_*)^{\mathsf T}である。
  3. f(x∗)=y0f(x_*)=y_0ならば、J(x∗)J(x_*)の列は一次独立であり、Dξ(y0)=J(x∗)†D\xi(y_0)=J(x_*)^\dagger、∥Dξ(y0)∥2=1/σn(J(x∗))\lVert D\xi(y_0)\rVert_2=1/\sigma_n(J(x_*))である。さらに、正規直交基底u1,…,umu_1,\dots,u_m、v1,…,vnv_1,\dots,v_nと実数σ1≥⋯≥σn≥0\sigma_1\ge\dots\ge\sigma_n\ge0がJ(x∗)=∑i=1nσiuiviTJ(x_*)=\sum_{i=1}^n\sigma_iu_iv_i^{\mathsf T}を満たすならば、1≤i≤n1\le i\le nについてDξ(y0)ui=σi−1viD\xi(y_0)u_i=\sigma_i^{-1}v_iである。

証明.Q:=U×RmQ:=U\times\R^mは開集合である。Γ ⁣:Q→Rn\Gamma\colon Q\to\R^nをΓ(x,y):=J(x)T(f(x)−y)\Gamma(x,y):=J(x)^{\mathsf T}\bigl(f(x)-y\bigr)で定めると、補題 1.2 (1)を残差写像f−yf-yに適用してΓ(x,y)=∇ϕy(x)\Gamma(x,y)=\nabla\phi_y(x)である。ffはC2C^2級であるからΓ\GammaはC1C^1級であり、補題 1.2 (2)によりxxに関する微分は∇2ϕy(x)=J(x)TJ(x)+∑i(fi(x)−yi)∇2fi(x)\nabla^2\phi_y(x)=J(x)^{\mathsf T}J(x)+\sum_i(f_i(x)-y_i)\nabla^2f_i(x)、Γ\Gammaはyyについてアフィンであってyyに関する微分は−J(x)T-J(x)^{\mathsf T}である。Γ(x∗,y0)=0\Gamma(x_*,y_0)=0であり、xxに関する微分の(x∗,y0)(x_*,y_0)での値H∗H_*は正則である。

(1)を示す。§E20.22 命題 5.1をG=ΓG=\Gamma、(u0,p0)=(x∗,y0)(u_0,p_0)=(x_*,y_0)に適用し、§E20.22 命題 5.1 (1)のVV、BB、uuをとる。p∈Vp\in Vについて(u(p),p)∈Q(u(p),p)\in Qであるからu(p)∈Uu(p)\in Uであり、BBをB∩UB\cap Uに、uuをξ\xiに置き換えて主張を得る。

(2)を示す。§E20.22 命題 5.1 (2)により、任意のy˙∈Rm\dot y\in\R^mについてH∗Dξ(y0)y˙=J(x∗)Ty˙H_*D\xi(y_0)\dot y=J(x_*)^{\mathsf T}\dot yであり、H∗H_*は正則である。

(3)を示す。f(x∗)=y0f(x_*)=y_0ならばH∗=J(x∗)TJ(x∗)H_*=J(x_*)^{\mathsf T}J(x_*)であり、J(x∗)h=0J(x_*)h=0ならばH∗h=0H_*h=0であるから、H∗H_*の正則性によりh=0h=0である。したがってJ(x∗)J(x_*)の列は一次独立であり、§E20.9 命題 6.1 (3)によりDξ(y0)=H∗−1J(x∗)T=J(x∗)†D\xi(y_0)=H_*^{-1}J(x_*)^{\mathsf T}=J(x_*)^\dagger、∥Dξ(y0)∥2=1/σn(J(x∗))\lVert D\xi(y_0)\rVert_2=1/\sigma_n(J(x_*))である。J(x∗)≠0J(x_*)\ne0であるからσ1>0\sigma_1>0であり、§E20.25 補題 1.1 (1)によりσi>0\sigma_i>0を満たすiiの個数はrank⁡J(x∗)=n\operatorname{rank}J(x_*)=nであって、J(x∗)†=∑i=1nσi−1viuiTJ(x_*)^\dagger=\sum_{i=1}^n\sigma_i^{-1}v_iu_i^{\mathsf T}である。u1,…,umu_1,\dots,u_mの正規直交性から最後の等式を得る。▨

例 5.3.h(x,t):=a1e−b1t+a2e−b2th(x,t):=a_1e^{-b_1t}+a_2e^{-b_2t}(x=(a1,b1,a2,b2)∈R4x=(a_1,b_1,a_2,b_2)\in\R^4、t∈Rt\in\R)とし、P(a1,b1,a2,b2):=(a2,b2,a1,b1)P(a_1,b_1,a_2,b_2):=(a_2,b_2,a_1,b_1)と置く。任意のxxとttについてh(Px,t)=h(x,t)h(Px,t)=h(x,t)であるから、任意のデータと重みについて、当てはめの目的関数はϕ(Px)=ϕ(x)\phi(Px)=\phi(x)を満たす。x∗:=(1,log⁡2,1,log⁡3)x_*:=(1,\log2,1,\log3)とし、ti:=i−1t_i:=i-1、yi:=h(x∗,ti)=2−ti+3−tiy_i:=h(x_*,t_i)=2^{-t_i}+3^{-t_i}、wi:=1w_i:=1(1≤i≤41\le i\le4)とする。ϕ(x∗)=ϕ(Px∗)=0\phi(x_*)=\phi(Px_*)=0であり、x∗≠Px∗x_*\ne Px_*である。J(x∗)J(x_*)の第ii行は(2−ti, −ti2−ti, 3−ti, −ti3−ti)(2^{-t_i},\ -t_i2^{-t_i},\ 3^{-t_i},\ -t_i3^{-t_i})であり、有理数の計算によりdet⁡J(x∗)=1/7776\det J(x_*)=1/7776である。J(Px∗)J(Px_*)はJ(x∗)J(x_*)の列を並べ替えた行列であるから正則である。したがって命題 5.2は(x∗,y)(x_*,y)と(Px∗,y)(Px_*,y)のいずれにも適用することができ、データからx∗x_*の近くの停留点への写像とPx∗Px_*の近くの停留点への写像はいずれもC1C^1級であるが、ϕ\phiの最小値00を与える点はx∗x_*とPx∗Px_*の二つを含む。

6 減衰曲線の当てはめ

例 6.1.h(x,t):=ae−bt+ch(x,t):=ae^{-bt}+c(x=(a,b,c)∈U:=R3x=(a,b,c)\in U:=\R^3)とし、重みwi:=1w_i:=1の当てはめを考える。J(x)J(x)の第ii行は(e−bti, −atie−bti, 1)(e^{-bt_i},\ -at_ie^{-bt_i},\ 1)である。観測は次の二つとする。

  • 長い区間:ti:=(i−1)/2t_i:=(i-1)/2(1≤i≤91\le i\le9)、y=(2.510,1.831,1.409,1.092,0.914,0.761,0.691,0.612,0.592)y=(2.510,1.831,1.409,1.092,0.914,0.761,0.691,0.612,0.592)。
  • 短い区間:ti:=(i−1)/20t_i:=(i-1)/20(1≤i≤91\le i\le9)、y=(2.510,2.412,2.356,2.264,2.214,2.127,2.083,2.002,1.962)y=(2.510,2.412,2.356,2.264,2.214,2.127,2.083,2.002,1.962)。

いずれもyiy_iは2e−0.8ti+0.5+0.01⋅(−1)i−12e^{-0.8t_i}+0.5+0.01\cdot(-1)^{i-1}を小数第33位に丸めた値であり、x∘:=(2,0.8,0.5)x^\circ:=(2,0.8,0.5)について∥y−(h(x∘,ti))i∥2\lVert y-(h(x^\circ,t_i))_i\rVert_2は長い区間で2.999×10−22.999\times10^{-2}、短い区間で2.947×10−22.947\times10^{-2}である。

定義 4.4の手続きをμ0=10−3\mu_0=10^{-3}、ν=10\nu=10、η=1/4\eta=1/4、εg=εx=10−10\varepsilon_g=\varepsilon_x=10^{-10}、K=100K=100で実行した。演算は binary64 で行い、e−bte^{-bt}は NumPy 2.0.2 の numpy.exp で計算し、pkp_kは拡大行列の QR 分解を numpy.linalg.qr(LAPACK の Householder QR 法)で求めて上三角系を後退代入で解いた。以下の値はこの実行の観察であり、丸めて示す。試行数は停止までに計算したpkp_kの個数である。

長い区間でx0=(1.5,1,0.3)x_0=(1.5,1,0.3)とした実行 A の各試行は次のとおりである。

kk xkx_k ϕ(xk)\phi(x_k) ∥∇ϕ(xk)∥2\lVert\nabla\phi(x_k)\rVert_2 μk\mu_k 判定
0 (1.5, 1, 0.3)(1.5,\ 1,\ 0.3) 9.669×10−19.669\times10^{-1} 4.3964.396 10−310^{-3} 受理
1 (1.98034, 0.73755, 0.52468)(1.98034,\ 0.73755,\ 0.52468) 1.671×10−21.671\times10^{-2} 6.462×10−16.462\times10^{-1} 10−410^{-4} 受理
2 (1.99549, 0.80971, 0.51126)(1.99549,\ 0.80971,\ 0.51126) 4.577×10−44.577\times10^{-4} 3.124×10−23.124\times10^{-2} 10−510^{-5} 受理
3 (2.00051, 0.80972, 0.50670)(2.00051,\ 0.80972,\ 0.50670) 4.085×10−44.085\times10^{-4} 8.836×10−88.836\times10^{-8} 10−610^{-6} 受理
4 (2.00051, 0.80972, 0.50670)(2.00051,\ 0.80972,\ 0.50670) 4.085×10−44.085\times10^{-4} 6.994×10−116.994\times10^{-11} 停止(勾配)

四つの実行の結果は次のとおりである。σi\sigma_iは出力点でのJJの特異値である。

実行 区間 x0x_0 停止理由 試行数 棄却数 出力 ∥r∥2\lVert r\rVert_2 (σ1,σ2,σ3)(\sigma_1,\sigma_2,\sigma_3)
A 長い (1.5,1,0.3)(1.5,1,0.3) 勾配 4 0 (2.00051, 0.80972, 0.50670)(2.00051,\ 0.80972,\ 0.50670) 2.858×10−22.858\times10^{-2} (3.615, 1.011, 0.5961)(3.615,\ 1.011,\ 0.5961)
B 長い (1,5,0)(1,5,0) 勾配 10 3 (2.00051, 0.80972, 0.50670)(2.00051,\ 0.80972,\ 0.50670) 2.858×10−22.858\times10^{-2} (3.615, 1.011, 0.5961)(3.615,\ 1.011,\ 0.5961)
C 長い (1,−1,0)(1,-1,0) 反復上限 100 50 (−9.2047, −0.042584, 11.195)(-9.2047,\ -0.042584,\ 11.195) 0.77640.7764 (75.44, 2.380, 2.813×10−3)(75.44,\ 2.380,\ 2.813\times10^{-3})
D 短い (1.5,1,0.3)(1.5,1,0.3) 勾配 5 0 (1.58549, 1.06121, 0.92008)(1.58549,\ 1.06121,\ 0.92008) 2.823×10−22.823\times10^{-2} (3.939, 0.5051, 1.510×10−2)(3.939,\ 0.5051,\ 1.510\times10^{-2})
  1. 実行 B では、試行00のp0p_0のノルムは13.5813.58であり、ϕ(x0+p0)\phi(x_0+p_0)はϕ(x0)=5.557\phi(x_0)=5.557を上回って棄却された。試行11をμ1=10−2\mu_1=10^{-2}で受理してx2=(1.6142, 2.0923, 0.9447)x_2=(1.6142,\ 2.0923,\ 0.9447)、ϕ(x2)=0.2613\phi(x_2)=0.2613となり、試行22、33を棄却し、試行44をμ4=10−1\mu_4=10^{-1}で受理した。同じx0x_0でJ(x0)J(x_0)の特異値は(3.024, 0.9279, 0.03821)(3.024,\ 0.9279,\ 0.03821)であり、Gauss–Newton 法の一段を同じ演算条件で計算するとG(x0)=(1.6764, −17.800, 0.83057)G(x_0)=(1.6764,\ -17.800,\ 0.83057)、ϕ(G(x0))≈9.8×1061\phi(G(x_0))\approx9.8\times10^{61}である。
  2. 実行 C では、命題 4.5 (1)によりϕ(xk)\phi(x_k)はϕ(x0)=2269\phi(x_0)=2269から増えずに出力で0.30140.3014となり、この値は A の出力の4.085×10−44.085\times10^{-4}より大きい。出力で∥∇ϕ∥2=7.780×10−2>εg\lVert\nabla\phi\rVert_2=7.780\times10^{-2}>\varepsilon_gである。
  3. 実行 A と D の出力点で、残差のノルムは2.858×10−22.858\times10^{-2}と2.823×10−22.823\times10^{-2}であり、∥x−x∘∥2\lVert x-x^\circ\rVert_2は1.182×10−21.182\times10^{-2}と0.64540.6454である。出力点xxで命題 5.2 (2)のH∗−1JTH_*^{-1}J^{\mathsf T}をy0=yy_0=y、x∗=xx_*=xとして計算すると、その 2 ノルムは A で1.6801.680、D で66.2866.28であり、1/σ31/\sigma_3は A で1.6781.678、D で66.2466.24である。二つの値の差はH∗H_*の残差の項による。
  4. 観測時刻は、長い区間でh=1/2h=1/2、短い区間でh=1/20h=1/20としてti=(i−1)ht_i=(i-1)hである。q:=e−bhq:=e^{-bh}と置くと、J(x)J(x)の最初の33行からなる行列は (101q−ahq1q2−2ahq21)\begin{pmatrix}1&0&1\\q&-ahq&1\\q^2&-2ahq^2&1\end{pmatrix} であり、その行列式は−ahq(q−1)2-ahq(q-1)^2である。実行 A と D の出力はいずれもa≠0a\ne0、b≠0b\ne0を満たし、q>0q>0、q≠1q\ne1であるから、この行列式は00でなく、出力点でJJの列は一次独立であってrank⁡J=3\operatorname{rank}J=3である。許容量0.020.02に関する§E20.9 定義 5.1の数値的階数は、表の(σ1,σ2,σ3)(\sigma_1,\sigma_2,\sigma_3)のうち0.020.02より大きいものの個数であり、A で33、D で22である。この判定は、観測時刻、パラメータ(a,b,c)(a,b,c)の尺度、許容量0.020.02を固定したものである。A と D はいずれも停止理由「勾配」で出力したが、許容量0.020.02に関する数値的階数は異なり、出力点でのH∗−1JTH_*^{-1}J^{\mathsf T}の 2 ノルムは A で1.6801.680、D で66.2866.28である。
  5. 出力点xxで命題 3.1の−(JTJ)−1S∗-(J^{\mathsf T}J)^{-1}S_*を計算すると、その 2 ノルムは A で1.787×10−31.787\times10^{-3}、D で1.184×10−31.184\times10^{-3}である。

7 統計的分散との比較

命題 7.1.m≥nm\ge nとし、X∈Rm×nX\in\R^{m\times n}の列は一次独立であるとする。正規直交基底u1,…,umu_1,\dots,u_m、v1,…,vnv_1,\dots,v_nがX=∑i=1nσi(X)uiviTX=\sum_{i=1}^n\sigma_i(X)u_iv_i^{\mathsf T}を満たすとする。

  1. 任意のe∈Rme\in\R^mと1≤i≤n1\le i\le nについてviTX†e=σi(X)−1uiTev_i^{\mathsf T}X^\dagger e=\sigma_i(X)^{-1}u_i^{\mathsf T}eである。実数δ≥0\delta\ge0について、∥e∥2≤δ\lVert e\rVert_2\le\deltaを満たすe∈Rme\in\R^mの全体での∥X†e∥2\lVert X^\dagger e\rVert_2の最大値はδ/σn(X)\delta/\sigma_n(X)であり、e=δune=\delta u_nで達する。
  2. y=Xβ+εy=X\beta+\varepsilonを§E14.19 定義 1.1の線形回帰モデルとし、Gauss–Markov 仮定E[ε]=0E[\varepsilon]=0、Cov⁡(ε)=σ2Im\operatorname{Cov}(\varepsilon)=\sigma^2I_mを置く。β^:=X†y\hat\beta:=X^\dagger yはE[β^]=βE[\hat\beta]=\beta、Cov⁡(β^)=σ2∑i=1nσi(X)−2viviT\operatorname{Cov}(\hat\beta)=\sigma^2\sum_{i=1}^n\sigma_i(X)^{-2}v_iv_i^{\mathsf T}を満たし、1≤i≤n1\le i\le nについてVar⁡(viTβ^)=σ2/σi(X)2\operatorname{Var}(v_i^{\mathsf T}\hat\beta)=\sigma^2/\sigma_i(X)^2、またE∥β^−β∥22=σ2∑i=1nσi(X)−2E\lVert\hat\beta-\beta\rVert_2^2=\sigma^2\sum_{i=1}^n\sigma_i(X)^{-2}である。

証明.(1)を示す。σi(X)>0\sigma_i(X)>0(1≤i≤n1\le i\le n)であるから、§E20.25 補題 1.1 (1)によりX†=∑i=1nσi(X)−1viuiTX^\dagger=\sum_{i=1}^n\sigma_i(X)^{-1}v_iu_i^{\mathsf T}であり、v1,…,vnv_1,\dots,v_nの正規直交性から第一の等式を得る。§E20.25 補題 1.1 (2)をgi=σi(X)−1g_i=\sigma_i(X)^{-1}に適用すると、∣gi∣\lvert g_i\rvertの最大値はi=ni=nでとられるから、第二の主張を得る。

(2)を示す。§E20.9 命題 6.1 (3)によりβ^=(XTX)−1XTy\hat\beta=(X^{\mathsf T}X)^{-1}X^{\mathsf T}yは§E14.19 系 2.2の最小二乗推定量であり、§E14.19 系 4.1によりE[β^]=βE[\hat\beta]=\beta、Cov⁡(β^)=σ2(XTX)−1\operatorname{Cov}(\hat\beta)=\sigma^2(X^{\mathsf T}X)^{-1}である。XTX=∑i=1nσi(X)2viviTX^{\mathsf T}X=\sum_{i=1}^n\sigma_i(X)^2v_iv_i^{\mathsf T}であり、v1,…,vnv_1,\dots,v_nはRn\R^nの正規直交基底であるから、(XTX)−1=∑i=1nσi(X)−2viviT(X^{\mathsf T}X)^{-1}=\sum_{i=1}^n\sigma_i(X)^{-2}v_iv_i^{\mathsf T}である。Var⁡(viTβ^)=viTCov⁡(β^)vi=σ2σi(X)−2\operatorname{Var}(v_i^{\mathsf T}\hat\beta)=v_i^{\mathsf T}\operatorname{Cov}(\hat\beta)v_i=\sigma^2\sigma_i(X)^{-2}であり、E[β^]=βE[\hat\beta]=\betaからE∥β^−β∥22=tr⁡Cov⁡(β^)=σ2∑i=1nσi(X)−2E\lVert\hat\beta-\beta\rVert_2^2=\operatorname{tr}\operatorname{Cov}(\hat\beta)=\sigma^2\sum_{i=1}^n\sigma_i(X)^{-2}である。▨

例 7.2. 直線β1+β2t\beta_1+\beta_2tの当てはめで、XXの第ii行を(1,ti)(1,t_i)(1≤i≤91\le i\le9)とし、例 6.1と同じ長い区間ti=(i−1)/2t_i=(i-1)/2と短い区間ti=(i−1)/20t_i=(i-1)/20を比べる。

  • 長い区間ではXTX=(9181851)X^{\mathsf T}X=\begin{pmatrix}9&18\\18&51\end{pmatrix}、(XTX)−1=1135(51−18−189)(X^{\mathsf T}X)^{-1}=\frac1{135}\begin{pmatrix}51&-18\\-18&9\end{pmatrix}であり、XTXX^{\mathsf T}Xの固有値30±38530\pm3\sqrt{85}からσ1(X)≈7.593\sigma_1(X)\approx7.593、σ2(X)≈1.530\sigma_2(X)\approx1.530である。
  • 短い区間ではXTX=(99/59/551/100)X^{\mathsf T}X=\begin{pmatrix}9&9/5\\9/5&51/100\end{pmatrix}、(XTX)−1=(17/45−4/3−4/320/3)(X^{\mathsf T}X)^{-1}=\begin{pmatrix}17/45&-4/3\\-4/3&20/3\end{pmatrix}であり、σ1(X)≈3.060\sigma_1(X)\approx3.060、σ2(X)≈0.3797\sigma_2(X)\approx0.3797である。

命題 7.1 (2)により、傾きの分散Var⁡(β^2)\operatorname{Var}(\hat\beta_2)は長い区間でσ2/15\sigma^2/15、短い区間で20σ2/320\sigma^2/3であり、E∥β^−β∥22E\lVert\hat\beta-\beta\rVert_2^2は4σ2/94\sigma^2/9と317σ2/45≈7.044σ2317\sigma^2/45\approx7.044\sigma^2である。命題 7.1 (1)により、∥e∥2≤δ\lVert e\rVert_2\le\deltaの範囲での∥X†e∥2\lVert X^\dagger e\rVert_2の最大値は0.6535 δ0.6535\,\deltaと2.634 δ2.634\,\deltaである。E∥ε∥22=9σ2E\lVert\varepsilon\rVert_2^2=9\sigma^2であり、δ2=9σ2\delta^2=9\sigma^2とすると最大値の二乗は3.844σ23.844\sigma^2と62.44σ262.44\sigma^2であって、E∥β^−β∥22E\lVert\hat\beta-\beta\rVert_2^2のそれぞれ約8.658.65倍と8.868.86倍である。

注意 7.3.ff、JJ、ϕy\phi_yを命題 5.2のとおりとし、x∘∈Ux^\circ\in UでJ(x∘)J(x^\circ)の列が一次独立であるとして、y0:=f(x∘)y_0:=f(x^\circ)、x∗:=x∘x_*:=x^\circとする。H∗=J(x∘)TJ(x∘)H_*=J(x^\circ)^{\mathsf T}J(x^\circ)は正則であり、同命題のVV、ξ\xiが定まる。観測y=y0+εy=y_0+\varepsilonのε\varepsilonに Gauss–Markov 仮定を置く。命題 5.2 (3)の一次の項Dξ(y0)ε=J(x∘)†εD\xi(y_0)\varepsilon=J(x^\circ)^\dagger\varepsilonは、線形回帰モデルy′=J(x∘)x∘+εy'=J(x^\circ)x^\circ+\varepsilonのβ^=J(x∘)†y′\hat\beta=J(x^\circ)^\dagger y'についてβ^−x∘\hat\beta-x^\circに等しいので、命題 7.1 (2)をX=J(x∘)X=J(x^\circ)に適用して、平均00、共分散σ2(J(x∘)TJ(x∘))−1\sigma^2(J(x^\circ)^{\mathsf T}J(x^\circ))^{-1}をもつ。y0+εy_0+\varepsilonはVVに属するとは限らず、ξ(y0+ε)\xi(y_0+\varepsilon)が定まるとは限らない。

ε\varepsilonの成分が独立に正規分布N(0,σ2)N(0,\sigma^2)に従うならば、xxにおける尤度は(2πσ2)−m/2exp⁡(−ϕy(x)/σ2)(2\pi\sigma^2)^{-m/2}\exp(-\phi_y(x)/\sigma^2)であり、尤度の最大値を与えるxxとϕy\phi_yの最小値を与えるxxは一致する。重み11の当てはめでyiy_iの分布はN(h(x,ti),σ2)N(h(x,t_i),\sigma^2)であり、h(x,t1),…,h(x,tm)h(x,t_1),\dots,h(x,t_m)が一定でなければy1,…,ymy_1,\dots,y_mは同分布でないので、§E14.13 定理 3.1の独立同分布の仮定を満たさない。例 5.3のPPについて、尤度はxxとPxPxで等しい。

8 演習

問題 8.1.補題 1.2の証明を完成させよ。

解答.

ϕ=12∑i=1mri2\phi=\frac12\sum_{i=1}^mr_i^2であり、各rir_iはC1C^1級であるから、1≤j≤n1\le j\le nについて∂jϕ=∑i=1mri ∂jri\partial_j\phi=\sum_{i=1}^mr_i\,\partial_jr_iはUU上で連続である。したがってϕ\phiはC1C^1級であり、∇ϕ(x)\nabla\phi(x)の第jj成分∑i∂jri(x) ri(x)\sum_i\partial_jr_i(x)\,r_i(x)はJ(x)Tr(x)J(x)^{\mathsf T}r(x)の第jj成分である。これで補題 1.2 (1)は示された。

rrがC2C^2級ならば、1≤j,k≤n1\le j,k\le nについて

∂k∂jϕ=∑i=1m(∂kri ∂jri+ri ∂k∂jri)\partial_k\partial_j\phi=\sum_{i=1}^m\bigl(\partial_kr_i\,\partial_jr_i+r_i\,\partial_k\partial_jr_i\bigr)

はUU上で連続であり、ϕ\phiはC2C^2級である。右辺の第一項の和はJ(x)TJ(x)J(x)^{\mathsf T}J(x)の(k,j)(k,j)成分であり、第二項の和は∑iri(x)∇2ri(x)\sum_ir_i(x)\nabla^2r_i(x)の(k,j)(k,j)成分である。これで補題 1.2 (2)は示された。▨

問題 8.2.命題 4.3の証明を完成させよ。

解答.

z↦Tzz\mapsto Tzは連続であるからU~\tilde Uは開集合であり、全微分の連鎖律によりr~\tilde rはC1C^1級であってJ~(z):=Dr~(z)=J(x)T\tilde J(z):=D\tilde r(z)=J(x)Tである。

命題 4.3 (1)を示す。TTは正則であるから、h∈Rnh\in\R^nについてJ(x)Th=0J(x)Th=0であることとTh∈ker⁡J(x)Th\in\ker J(x)であることは同値であり、ker⁡J~(z)=T−1ker⁡J(x)\ker\tilde J(z)=T^{-1}\ker J(x)である。したがってJ~(z)\tilde J(z)の列が一次独立であることとJ(x)J(x)の列が一次独立であることは同値である。そのとき

s~(z)=−(TTJ(x)TJ(x)T)−1TTJ(x)Tr(x)=−T−1(J(x)TJ(x))−1J(x)Tr(x)=T−1s(x)\tilde s(z)=-(T^{\mathsf T}J(x)^{\mathsf T}J(x)T)^{-1}T^{\mathsf T}J(x)^{\mathsf T}r(x)=-T^{-1}(J(x)^{\mathsf T}J(x))^{-1}J(x)^{\mathsf T}r(x)=T^{-1}s(x)

であり、TG~(z)=Tz+s(x)=G(x)T\tilde G(z)=Tz+s(x)=G(x)である。

命題 4.3 (2)を示す。p∈Rnp\in\R^nについて∥r~(z)+J~(z)p∥22+μ∥p∥22=∥r(x)+J(x)Tp∥22+μ∥p∥22\lVert\tilde r(z)+\tilde J(z)p\rVert_2^2+\mu\lVert p\rVert_2^2=\lVert r(x)+J(x)Tp\rVert_2^2+\mu\lVert p\rVert_2^2である。定義 4.1によりp~μ(z)\tilde p_\mu(z)は左辺の最小値を与えるただ一つのppであり、p↦Tpp\mapsto TpはRn\R^nの全単射であるから、Tp~μ(z)T\tilde p_\mu(z)は∥r(x)+J(x)q∥22+μ∥T−1q∥22\lVert r(x)+J(x)q\rVert_2^2+\mu\lVert T^{-1}q\rVert_2^2の最小値を与えるただ一つのqqである。定義 4.1の一次方程式(TTJ(x)TJ(x)T+μIn)p~μ(z)=−TTJ(x)Tr(x)(T^{\mathsf T}J(x)^{\mathsf T}J(x)T+\mu I_n)\tilde p_\mu(z)=-T^{\mathsf T}J(x)^{\mathsf T}r(x)の両辺に左からT−TT^{-\mathsf T}を掛けると、T−Tp~μ(z)=T−TT−1Tp~μ(z)T^{-\mathsf T}\tilde p_\mu(z)=T^{-\mathsf T}T^{-1}T\tilde p_\mu(z)から主張の等式を得る。

命題 4.3 (3)を示す。T=dInT=dI_nならばT−TT−1=d−2InT^{-\mathsf T}T^{-1}=d^{-2}I_nであり、命題 4.3 (2)の等式は(J(x)TJ(x)+(μ/d2)In)Tp~μ(z)=−J(x)Tr(x)(J(x)^{\mathsf T}J(x)+(\mu/d^2)I_n)T\tilde p_\mu(z)=-J(x)^{\mathsf T}r(x)となる。定義 4.1によりこの一次方程式のただ一つの解はpμ/d2(x)p_{\mu/d^2}(x)である。∇ϕ(x)≠0\nabla\phi(x)\ne0、d2≠1d^2\ne1とし、p:=pμ/d2(x)=pμ(x)p:=p_{\mu/d^2}(x)=p_\mu(x)と仮定する。二つの一次方程式の差をとると(μ/d2−μ)p=0(\mu/d^2-\mu)p=0であり、μ/d2≠μ\mu/d^2\ne\muからp=0p=0である。一方命題 4.2 (1)によりpμ(x)≠0p_\mu(x)\ne0であり、p=0p=0と両立しない。したがってTp~μ(z)=pμ/d2(x)≠pμ(x)T\tilde p_\mu(z)=p_{\mu/d^2}(x)\ne p_\mu(x)である。▨

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