§E20.42量化子消去による設計と検証

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前進 Euler 法をテスト方程式y′=−ayy'=-ayに刻みh>0h>0で適用するとき、数値解が減衰するか有界にとどまるかは、安定関数の値1−ah1-ahの冪の振る舞い、すなわち1−ah1-ahの絶対値で判定される。係数aaが一つの値に定まっていれば、この判定はhhについての一つの不等式を解くことに帰着する。

しかし係数が不確かで、区間[1,4][1,4]に属することしか分からないとき、求めるべきものは、区間のすべてのaaについて不等式が成り立つようなhhの全体である。近似の誤差についても同じ形の問いが生じる。区間上の関数を係数ccをもつ多項式や有理式で近似するとき、区間のすべての点で誤差が許容値以下となるccの全体を求めたい。有限個の点で誤差を計算しても、区間全体での誤差は定まらない。

これらの条件は、設計するパラメータを自由変数とし、区間を動く変数に全称量化子を付けた式である。有理係数の多項式の符号条件式に対しては、一つの量化変数を消して自由変数だけの符号条件式を有理数の演算の有限回で得る量化子消去がすでにある。これを用いるには、量化の範囲を実数全体から閉区間へ制限し、誤差の絶対値と有理式の分母を多項式の符号条件へ書き換えなければならない。後者では、分母が消えないことと許容誤差が非負であることを条件に残さなければ同値が成り立たない。

本記事は、この二つの書き換えを示して前進 Euler 法の刻みと定数・有理式による近似の係数の条件を求め、浮動小数点数による有限標本の探索と有理係数の厳密な判定とを区別する。

1 区間上の全称条件

補題 1.1.r∈N≥0r\in\N、p1,…,pr∈Q[t][x]p_1,\ldots,p_r\in\Q[t][x]とし、Φ\Phiを族(p1,…,pr)(p_1,\ldots,p_r)上の符号条件式、A,B∈QA,B\in\Qとする。pr+1:=x−Ap_{r+1}:=x-A、pr+2:=B−xp_{r+2}:=B-xと置き、族(p1,…,pr+2)(p_1,\ldots,p_{r+2})上の符号条件式

Φ[A,B]:=¬(pr+1≥0∧pr+2≥0)∨Φ\Phi_{[A,B]}:=\neg(p_{r+1}\ge0\wedge p_{r+2}\ge0)\vee\Phi

に§E20.41 定理 5.3の手続きを適用して得るΨ∀\Psi_\forallをΨ\Psiと置く。Ψ\Psiは有理数の四則演算と比較の有限回で得られる、Q[t]\Q[t]の元からなる有限族上の符号条件式であり、任意のa∈Ra\in\Rに対して

(∀b∈[A,B]  Φ(a,b))  ⟺  Ψ(a)\bigl(\forall b\in[A,B]\ \ \Phi(a,b)\bigr)\iff\Psi(a)

が成り立つ。

証明.§E20.41 定義 1.1 (2)の規則についてΦ\Phiの構成に沿った帰納法により、族(p1,…,pr+2)(p_1,\ldots,p_{r+2})に関する[Φ][\Phi]は族(p1,…,pr)(p_1,\ldots,p_r)に関する[Φ][\Phi]と{−1,0,1}2\{-1,0,1\}^2の直積であるから、Φ(a,b)\Phi(a,b)の成否はどちらの族で読んでも同じである。§E20.41 定義 1.1 (2)により、Φ[A,B](a,b)\Phi_{[A,B]}(a,b)が成り立つことは、b−A≥0b-A\ge0かつB−b≥0B-b\ge0が成り立たないかΦ(a,b)\Phi(a,b)が成り立つこと、すなわちb∉[A,B]b\notin[A,B]であるかΦ(a,b)\Phi(a,b)が成り立つことと同値である。したがって、任意のb∈Rb\in\RでΦ[A,B](a,b)\Phi_{[A,B]}(a,b)が成り立つことは、任意のb∈[A,B]b\in[A,B]でΦ(a,b)\Phi(a,b)が成り立つことと同値である。§E20.41 定理 5.3をΦ[A,B]\Phi_{[A,B]}に適用すれば主張が従う。▨

2 前進 Euler 法の刻み

命題 2.1.h∈Rh\in\Rとする。

  1. 任意のa∈[1,4]a\in[1,4]について(1−ah)2<1(1-ah)^2<1が成り立つことは、0<h<1/20<h<1/2と同値である。
  2. 任意のa∈[1,4]a\in[1,4]について(1−ah)2≤1(1-ah)^2\le1が成り立つことは、0≤h≤1/20\le h\le1/2と同値である。

証明. 任意の実数aaについて(1−ah)2−1=ah(ah−2)(1-ah)^2-1=ah(ah-2)であるから、(1−ah)2<1(1-ah)^2<1は0<ah<20<ah<2と同値であり、(1−ah)2≤1(1-ah)^2\le1は0≤ah≤20\le ah\le2と同値である。

(1)を示す。0<h<1/20<h<1/2ならば、任意のa∈[1,4]a\in[1,4]について0<h≤ah≤4h<20<h\le ah\le4h<2である。逆に、任意のa∈[1,4]a\in[1,4]について0<ah<20<ah<2が成り立つならば、a=1a=1から0<h0<hが、a=4a=4から4h<24h<2が従う。

(2)を示す。0≤h≤1/20\le h\le1/2ならば、任意のa∈[1,4]a\in[1,4]について0≤ah≤4h≤20\le ah\le4h\le2である。逆に、任意のa∈[1,4]a\in[1,4]について0≤ah≤20\le ah\le2が成り立つならば、a=1a=1から0≤h0\le hが、a=4a=4から4h≤24h\le2が従う。▨

系 2.2.h>0h>0とし、a∈[1,4]a\in[1,4]に対してテスト方程式y′=−ayy'=-ay、y(0)=1y(0)=1に前進 Euler 法を刻みhhで適用する。前進 Euler 法の安定関数をRRとし、za:=−ahz_a:=-ahと置く。

  1. 任意のa∈[1,4]a\in[1,4]についてR(za)n→0R(z_a)^n\to0(n→∞n\to\infty)が成り立つことは、h<1/2h<1/2と同値である。
  2. 任意のa∈[1,4]a\in[1,4]についてsup⁡n∣R(za)n∣<∞\sup_n|R(z_a)^n|<\inftyが成り立つことは、h≤1/2h\le1/2と同値である。
  3. h=1/2h=1/2、a=4a=4ならばR(za)=−1R(z_a)=-1であり、任意のnnについて∣R(za)n∣=1|R(z_a)^n|=1である。

証明.§E20.28 系 5.6によりR(z)=1+zR(z)=1+z(DR=CD_R=\C)であるから、R(za)=1−ahR(z_a)=1-ahは実数であり、∣R(za)∣<1|R(z_a)|<1は(1−ah)2<1(1-ah)^2<1と、zaz_aが絶対安定領域に属することは(1−ah)2≤1(1-ah)^2\le1と同値である。§E20.28 命題 5.3 (1)により、R(za)n→0R(z_a)^n\to0は∣R(za)∣<1|R(z_a)|<1と同値であり、sup⁡n∣R(za)n∣<∞\sup_n|R(z_a)^n|<\inftyはzaz_aが絶対安定領域に属することと同値である。h>0h>0であるから、命題 2.1 (1)により(1)が、命題 2.1 (2)により(2)が従う。h=1/2h=1/2、a=4a=4ならばR(za)=1−2=−1R(z_a)=1-2=-1であるから、(3)が成り立つ。▨

例 2.3.p1:=t2x2−2txp_1:=t^2x^2-2tx、p2:=x−1p_2:=x-1、p3:=4−xp_3:=4-xをQ[t][x]\Q[t][x]の元とし、族(p1,p2,p3)(p_1,p_2,p_3)上の符号条件式

Φ<:=¬(p2≥0∧p3≥0)∨p1<0,Φ≤:=¬(p2≥0∧p3≥0)∨p1≤0\Phi_<:=\neg(p_2\ge0\wedge p_3\ge0)\vee p_1<0,\qquad\Phi_\le:=\neg(p_2\ge0\wedge p_3\ge0)\vee p_1\le0

を考える。Φ<\Phi_<とΦ≤\Phi_\leは、補題 1.1のΦ[A,B]\Phi_{[A,B]}をr=1r=1、A=1A=1、B=4B=4とし、Φ\Phiをそれぞれp1<0p_1<0、p1≤0p_1\le0として作った式であり、任意の実数h,ah,aについてp1(h,a)=(1−ah)2−1p_1(h,a)=(1-ah)^2-1である。§E20.41 定理 5.3をΦ<\Phi_<とΦ≤\Phi_\leに適用して得るΨ∀\Psi_\forallをそれぞれΨ<\Psi_<、Ψ≤\Psi_\leとすると、補題 1.1と命題 2.1により、任意のh∈Rh\in\Rに対してΨ<(h)\Psi_<(h)は0<h<1/20<h<1/2と同値であり、Ψ≤(h)\Psi_\le(h)は0≤h≤1/20\le h\le1/2と同値である。

二つの式の多項式の族は同じであるから、手続きの区画は二つの式で共通である。§E20.41 定理 5.3 (5)と§E20.41 定義 1.1 (2)と§E20.41 命題 5.2 (2)により、Ψ<(h)\Psi_<(h)が成り立つhhの全体はΦ<\Phi_<のT∀\mathcal T_\forallに属する区画の和集合であり、Ψ≤(h)\Psi_\le(h)が成り立つhhの全体はΦ≤\Phi_\leのT∀\mathcal T_\forallに属する区画の和集合である。区画はR\Rの分割をなすので、区画の集合T\mathcal Tの和集合がXXならば、各区画はXXに含まれるかXXと交わらず、T\mathcal TはXXに含まれる区画の全体である。したがって、Φ<\Phi_<のT∀\mathcal T_\forallは(0,1/2)(0,1/2)に含まれる区画の全体であり、Φ≤\Phi_\leのT∀\mathcal T_\forallは[0,1/2][0,1/2]に含まれる区画の全体である。00または1/21/2を含む区画は(0,1/2)(0,1/2)と交わらず、00または1/21/2を含む開区間は(0,1/2)(0,1/2)と交わるので、§E20.41 命題 5.2 (1)により{0}\{0\}と{1/2}\{1/2\}は区画であり、00と1/21/2はWWの実根である。

区画{0}\{0\}と{1/2}\{1/2\}は[0,1/2][0,1/2]に含まれ、(0,1/2)(0,1/2)に含まれないので、Φ≤\Phi_\leのT∀\mathcal T_\forallに属し、Φ<\Phi_<のT∀\mathcal T_\forallに属さない。標本点1/21/2では、b=4b=4についてp1(1/2,4)=0p_1(1/2,4)=0、p2(1/2,4)=3p_2(1/2,4)=3、p3(1/2,4)=0p_3(1/2,4)=0であるから(0,1,0)∈S(1/2)(0,1,0)\in S(1/2)であり、(0,1,0)(0,1,0)はp2≥0∧p3≥0p_2\ge0\wedge p_3\ge0を満たしp1<0p_1<0を満たさないので[Φ<][\Phi_<]に属さず、S(1/2)⊂[Φ<]S(1/2)\subset[\Phi_<]は成り立たない。標本点00では、b=2b=2についてp1(0,2)=0p_1(0,2)=0、p2(0,2)=1p_2(0,2)=1、p3(0,2)=2p_3(0,2)=2であるから(0,1,1)∈S(0)(0,1,1)\in S(0)であり、(0,1,1)(0,1,1)はp2≥0∧p3≥0p_2\ge0\wedge p_3\ge0を満たしp1<0p_1<0を満たさないので[Φ<][\Phi_<]に属さず、S(0)⊂[Φ<]S(0)\subset[\Phi_<]は成り立たない。

3 近似誤差の条件

補題 3.1.

  1. 実数u,v,w,Eu,v,w,Eがw≠0w\ne0かつE≥0E\ge0を満たすならば、∣u−v/w∣≤E|u-v/w|\le Eであることは(uw−v)2≤E2w2(uw-v)^2\le E^2w^2であることと同値である。
  2. A,B∈QA,B\in\Q、f∈Q[x]f\in\Q[x]、P,Q∈Q[t][x]P,Q\in\Q[t][x]、e∈Q[t]e\in\Q[t]とし、g:=e2Q2−(fQ−P)2g:=e^2Q^2-(fQ-P)^2と置く。族(Q,e,g)(Q,e,g)上の符号条件式Q≠0∧e≥0∧g≥0Q\ne0\wedge e\ge0\wedge g\ge0に補題 1.1を適用して得る式をΨ\Psiとすると、任意のa∈Ra\in\Rに対して (∀b∈[A,B]  (Q(a,b)≠0 かつ ∣f(b)−P(a,b)Q(a,b)∣≤e(a)))  ⟺  Ψ(a)\Bigl(\forall b\in[A,B]\ \ \Bigl(Q(a,b)\ne0\ \text{かつ}\ \Bigl|f(b)-\frac{P(a,b)}{Q(a,b)}\Bigr|\le e(a)\Bigr)\Bigr)\iff\Psi(a) が成り立つ。
  3. A,B∈QA,B\in\Q、f,p∈Q[x]f,p\in\Q[x]とし、(2)をP=pP=p、Q=1Q=1、e=te=tに適用して得る式をΨ\Psiとする。任意のE∈RE\in\Rについて、Ψ(E)\Psi(E)は任意のb∈[A,B]b\in[A,B]で∣f(b)−p(b)∣≤E|f(b)-p(b)|\le Eが成り立つことと同値である。

証明.(1)を示す。w2>0w^2>0である。∣u−v/w∣≥0|u-v/w|\ge0かつE≥0E\ge0であるから、∣u−v/w∣≤E|u-v/w|\le Eは(u−v/w)2≤E2(u-v/w)^2\le E^2と同値であり、両辺にw2>0w^2>0を掛けると(uw−v)2≤E2w2(uw-v)^2\le E^2w^2と同値である。

(2)を示す。a,b∈Ra,b\in\Rとする。§E20.41 定義 1.1 (2)により、Q≠0∧e≥0∧g≥0Q\ne0\wedge e\ge0\wedge g\ge0が(a,b)(a,b)で成り立つことは、Q(a,b)≠0Q(a,b)\ne0、e(a)≥0e(a)\ge0、g(a,b)≥0g(a,b)\ge0がすべて成り立つことと同値である。Q(a,b)≠0Q(a,b)\ne0かつe(a)≥0e(a)\ge0ならば、(1)をu=f(b)u=f(b)、v=P(a,b)v=P(a,b)、w=Q(a,b)w=Q(a,b)、E=e(a)E=e(a)に適用して、g(a,b)≥0g(a,b)\ge0は∣f(b)−P(a,b)/Q(a,b)∣≤e(a)|f(b)-P(a,b)/Q(a,b)|\le e(a)と同値である。Q(a,b)≠0Q(a,b)\ne0かつe(a)<0e(a)<0ならば、e(a)≥0e(a)\ge0も∣f(b)−P(a,b)/Q(a,b)∣≤e(a)|f(b)-P(a,b)/Q(a,b)|\le e(a)も成り立たない。したがって、符号条件式が(a,b)(a,b)で成り立つことは、Q(a,b)≠0Q(a,b)\ne0かつ∣f(b)−P(a,b)/Q(a,b)∣≤e(a)|f(b)-P(a,b)/Q(a,b)|\le e(a)であることと同値である。補題 1.1により主張が従う。

(3)は、Q=1Q=1であるから(2)の左辺でQ(E,b)≠0Q(E,b)\ne0が常に成り立つことによる。▨

注意 3.2.

  1. 符号条件式からe≥0e\ge0を除くと、補題 3.1 (2)の同値は成り立たない。A≤BA\le B、f=P=xf=P=x、Q=1Q=1、e=te=tとするとg=t2g=t^2であり、a=−1a=-1では任意のbbでQ(a,b)≠0Q(a,b)\ne0かつg(a,b)≥0g(a,b)\ge0が成り立つが、∣f(b)−P(a,b)/Q(a,b)∣=0|f(b)-P(a,b)/Q(a,b)|=0は−1-1以下ではない。
  2. (uw−v)2≤E2w2(uw-v)^2\le E^2w^2を∣uw−v∣≤Ew|uw-v|\le Ewに替えると、w<0w<0で補題 3.1 (1)の同値が成り立たない。u=v=0u=v=0、w=−1w=-1、E=1E=1では∣u−v/w∣=0≤1|u-v/w|=0\le1であるが、∣uw−v∣=0≤−1|uw-v|=0\le-1は成り立たない。
  3. A>BA>Bならば[A,B][A,B]は空であり、補題 3.1 (2)の左辺は任意のaaで成り立つ。A=BA=Bならば、左辺はb=Ab=Aでの条件だけである。A≤BA\le Bならば、e(a)<0e(a)<0を満たすaaではb=Ab=Aで∣f(b)−P(a,b)/Q(a,b)∣≤e(a)|f(b)-P(a,b)/Q(a,b)|\le e(a)が成り立たないので、左辺は成り立たない。
  4. 補題 3.1 (2)の左辺は有理関数P/QP/Qではなく多項式の組(P,Q)(P,Q)に依存する。f=xf=x、P=x2P=x^2、Q=xQ=x、A=−1A=-1、B=1B=1とすると、Q(a,b)≠0Q(a,b)\ne0を満たすbbではP(a,b)/Q(a,b)=f(b)P(a,b)/Q(a,b)=f(b)であるが、Q(a,0)=0Q(a,0)=0であるから、左辺は任意のaaで成り立たない。

注意 3.3.A,B∈QA,B\in\Q、A≤BA\le B、P,Q∈Q[x]P,Q\in\Q[x]とし、f ⁣:[A,B]→Rf\colon[A,B]\to\Rを多項式とは限らない関数とする。L,U∈Q[x]L,U\in\Q[x]が任意のb∈[A,B]b\in[A,B]でL(b)≤f(b)≤U(b)L(b)\le f(b)\le U(b)を満たすことが別に証明されているとする。E∈RE\in\Rとb∈[A,B]b\in[A,B]についてQ(b)≠0Q(b)\ne0、∣L(b)−P(b)/Q(b)∣≤E|L(b)-P(b)/Q(b)|\le E、∣U(b)−P(b)/Q(b)∣≤E|U(b)-P(b)/Q(b)|\le Eが成り立つならば、f(b)−P(b)/Q(b)f(b)-P(b)/Q(b)はL(b)−P(b)/Q(b)L(b)-P(b)/Q(b)とU(b)−P(b)/Q(b)U(b)-P(b)/Q(b)の間にあるので、∣f(b)−P(b)/Q(b)∣≤E|f(b)-P(b)/Q(b)|\le Eである。したがって、補題 3.1 (2)をe=te=tとしffをLLとUUに替えて適用して得る二つの式ΨL\Psi_L、ΨU\Psi_Uについて、ΨL(E)\Psi_L(E)かつΨU(E)\Psi_U(E)ならば、任意のb∈[A,B]b\in[A,B]でQ(b)≠0Q(b)\ne0かつ∣f(b)−P(b)/Q(b)∣≤E|f(b)-P(b)/Q(b)|\le Eである。

命題 3.4. 任意の実数c,Ec,Eについて、任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]で∣x2−c∣≤E|x^2-c|\le Eが成り立つことは、1−E≤c≤E1-E\le c\le Eと同値である。

証明. 任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]で∣x2−c∣≤E|x^2-c|\le Eが成り立つならば、x=0x=0でc≤∣−c∣≤Ec\le|-c|\le E、x=1x=1で1−c≤∣1−c∣≤E1-c\le|1-c|\le Eであるから、1−E≤c≤E1-E\le c\le Eである。逆に1−E≤c≤E1-E\le c\le Eならば、任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]について0≤x2≤10\le x^2\le1であるからx2−c≤1−c≤Ex^2-c\le1-c\le Eかつc−x2≤c≤Ec-x^2\le c\le Eであり、∣x2−c∣≤E|x^2-c|\le Eである。▨

系 3.5.E∈RE\in\Rとする。

  1. 任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]で∣x2−c∣≤E|x^2-c|\le Eを満たす実数ccが存在することは、E≥1/2E\ge1/2と同値である。
  2. E=1/2E=1/2ならば、任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]で∣x2−c∣≤E|x^2-c|\le Eを満たす実数ccは1/21/2だけである。
  3. c∈Qc\in\Qとし、補題 3.1 (3)をf=x2f=x^2、p=cp=c、A=−1A=-1、B=1B=1に適用して得る式をΨ\Psiとする。Ψ(E)\Psi(E)はE≥max⁡{c,1−c}E\ge\max\{c,1-c\}と同値である。また、max⁡{c,1−c}≥1/2\max\{c,1-c\}\ge1/2であり、等号はc=1/2c=1/2のときだけ成り立つ。

証明.命題 3.4により、任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]で∣x2−c∣≤E|x^2-c|\le Eを満たす実数ccの全体は{c∈R∣1−E≤c≤E}\{c\in\R\mid1-E\le c\le E\}である。この集合は1−E≤E1-E\le Eのとき、すなわちE≥1/2E\ge1/2のときだけ空でないので、(1)が成り立つ。E=1/2E=1/2ならばこの集合は{1/2}\{1/2\}であるから、(2)が成り立つ。

(3)を示す。補題 3.1 (3)によりΨ(E)\Psi(E)は任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]で∣x2−c∣≤E|x^2-c|\le Eが成り立つことと同値であり、命題 3.4によりこれはE≥1−cE\ge1-cかつE≥cE\ge cと同値である。max⁡{c,1−c}≥(c+(1−c))/2=1/2\max\{c,1-c\}\ge(c+(1-c))/2=1/2であり、等号はc=1−cc=1-c、すなわちc=1/2c=1/2のときだけ成り立つ。▨

注意 3.6.§E20.15 例 2.6は、f(x)=x2f(x)=x^2について、交代定理により定数1/21/2が[−1,1][-1,1]上のP0\mathcal P_0によるffの一様最良近似であり、E0(f)=1/2E_0(f)=1/2であることを示している。系 3.5 (1)と系 3.5 (2)が与える許容誤差の最小値1/21/2と、そのときの定数1/21/2はこれと一致する。

4 有理近似の係数の設計

命題 4.1.c∈Rc\in\Rとする。

  1. c>−1c>-1ならば、任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]について1+cx2>01+cx^2>0かつ ∣x2−x21+cx2∣≤∣c∣1+c\Bigl|x^2-\frac{x^2}{1+cx^2}\Bigr|\le\frac{|c|}{1+c} であり、x=±1x=\pm1で等号が成り立つ。
  2. 任意のx∈[−1,1]x\in[-1,1]について1+cx2≠01+cx^2\ne0かつ∣x2−x2/(1+cx2)∣≤1/10|x^2-x^2/(1+cx^2)|\le1/10が成り立つことは、−1/11≤c≤1/9-1/11\le c\le1/9と同値である。特に、c∈[0,1]c\in[0,1]ならば、この条件はc≤1/9c\le1/9と同値である。

補題 3.1 (2)をf=x2f=x^2、P=x2P=x^2、Q=1+tx2Q=1+tx^2、e=1/10e=1/10、A=−1A=-1、B=1B=1に適用して得る式をΨ\Psiとすると、任意のc∈Rc\in\Rについて、Ψ(c)\Psi(c)は−1/11≤c≤1/9-1/11\le c\le1/9と同値である。

証明.(1)を示す。x∈[−1,1]x\in[-1,1]とし、y:=x2∈[0,1]y:=x^2\in[0,1]と置く。y∈[0,1]y\in[0,1]であるから1+cy≥min⁡{1,1+c}>01+cy\ge\min\{1,1+c\}>0である。したがってx2−x2/(1+cx2)=cy2/(1+cy)x^2-x^2/(1+cx^2)=cy^2/(1+cy)の絶対値は∣c∣y2/(1+cy)|c|y^2/(1+cy)であり、

∣c∣1+c−∣c∣y21+cy=∣c∣(1−y)(1+(1+c)y)(1+c)(1+cy)≥0\frac{|c|}{1+c}-\frac{|c|y^2}{1+cy}=\frac{|c|(1-y)\bigl(1+(1+c)y\bigr)}{(1+c)(1+cy)}\ge0

であるから、不等式が成り立つ。x=±1x=\pm1ではy=1y=1であり、右辺の分子は00である。

(2)を示す。c≤−1c\le-1ならば、x0:=(−c)−1/2∈(0,1]x_0:=(-c)^{-1/2}\in(0,1]は1+cx02=01+cx_0^2=0を満たすから左辺は成り立たず、c<−1/11c<-1/11であるから右辺も成り立たない。c>−1c>-1ならば、(1)により左辺は∣c∣/(1+c)≤1/10|c|/(1+c)\le1/10と同値であり、1+c>01+c>0であるからこれは10∣c∣≤1+c10|c|\le1+cと同値である。c≥0c\ge0では10c≤1+c10c\le1+cはc≤1/9c\le1/9と同値であり、−1<c<0-1<c<0では−10c≤1+c-10c\le1+cはc≥−1/11c\ge-1/11と同値であるから、左辺は−1/11≤c≤1/9-1/11\le c\le1/9と同値である。

最後の主張は、Q(c,x)=1+cx2Q(c,x)=1+cx^2であるから、補題 3.1 (2)と(2)による。▨

例 4.2. Python 3.12.1 の IEEE binary64 浮動小数点演算で、j=0,1,…,2000j=0,1,\ldots,2000に対するc=j/10000c=j/10000とk=−1000,−999,…,1000k=-1000,-999,\ldots,1000に対するx=k/1000x=k/1000について∣x2−x2/(1+cx2)∣|x^2-x^2/(1+cx^2)|を計算し、各ccで標本上の最大値を0.10.1と比較した。比較が成り立った最大のjjは11111111であり、そのときの標本上の最大値は約0.09999100.0999910であった。j=1112j=1112では標本上の最大値が約0.10007200.1000720であり、比較は成り立たなかった。この結果は有限個の標本点での浮動小数点数の比較であり、[−1,1][-1,1]全体での誤差を定めず、有理数の係数に対する判定も与えない。

探索で得た小数0.11110.1111を有理数1111/100001111/10000として係数に採る。1111/100001111/10000は既約分数で分母が22の冪でないので、探索で用いた binary64 の数は1111/100001111/10000に等しくなく、以下の判定は有理数1111/100001111/10000についてのものである。9⋅1111=9999<100009\cdot1111=9999<10000より0<1111/10000<1/90<1111/10000<1/9であるから、命題 4.1 (2)によりc=1111/10000c=1111/10000は条件を満たす。命題 4.1 (1)により[−1,1][-1,1]上の誤差の最大値は

1111/100001+1111/10000=111111111\frac{1111/10000}{1+1111/10000}=\frac{1111}{11111}

であり、c=1111/10000c=1111/10000としてf=x2f=x^2、P=x2P=x^2、Q=1+cx2Q=1+cx^2、e=te=t、A=−1A=-1、B=1B=1に補題 3.1 (2)を適用して得る式Ψ′\Psi'について、Ψ′(E)\Psi'(E)はE≥1111/11111E\ge1111/11111と同値である。

1/9=0.111…1/9=0.111\ldotsを小数第44位へ切り上げた0.1112=139/12500.1112=139/1250は、9⋅139=1251>12509\cdot139=1251>1250より1/91/9より大きいので、命題 4.1 (2)により条件を満たさない。x=1x=1での誤差は

139/12501+139/1250=1391389\frac{139/1250}{1+139/1250}=\frac{139}{1389}

であり、10⋅139=1390>138910\cdot139=1390>1389より139/1389>1/10139/1389>1/10である。c=1/9c=1/9はx=±1x=\pm1で誤差がちょうど1/101/10となり、条件を満たす。1/91/9は有限小数でないので、00以上の有限小数ccが条件を満たすことはc<1/9c<1/9と同値である。

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