1 表示と比較
定義 1.1.
- Q上代数的な実数を 実代数的数 (real algebraic number) という。
- p∈Q[x]を平方自由とし、有理数a<bについて(a,b)がpの分離区間であるとする。(a,b)に属するpのただ一つの実根をαとするとき、三つ組(p,a,b)をαの 表示 (isolating representation) といい、(p,a,b)はαを表すという。
- (p,a,b)をαの表示とする。(a0,b0):=(a,b)と置き、k∈N≥1に対して、pと(ak−1,bk−1)とτ=2−kに§E20.39 定義 5.5 (3)を適用した出力を(ak,bk)とする。§E20.39 命題 5.6 (3)により各(ak,bk)はpの分離区間であるから、この列は帰納的に定まる。(ak,bk)k∈N≥0を(p,a,b)の 精密化列 (refinement sequence) という。
補題 1.2.KをRの部分体とする。
- q∈K[x]が平方自由であり、次数が1以上のe∈K[x]がqを割り切るならば、eは平方自由であり、eの実根はすべてqの実根である。
- f∈K[x]の次数を1以上とし、lc(f)−1fに§E20.39 定理 3.4 (2)を適用して得るw1を考える。w1は平方自由であり、任意の実数cに対して、f(c)=0であることとw1(c)=0であることは同値である。
証明.(1)を示す。Pとvpを§E20.39 補題 3.3のものとする。§E20.39 補題 3.3 (3)と§E20.39 定理 3.4 (1)により、任意のp∈Pに対してvp(e)≤vp(q)≤1であるから、§E20.39 定理 3.4 (1)によりeは平方自由である。q=ekと書くと、e(c)=0を満たす実数cについてq(c)=e(c)k(c)=0である。
(2)を示す。§E20.39 定理 3.4 (4)によりw1は平方自由である。§E20.39 補題 3.3 (2)によりvp(lc(f)−1f)=vp(f)であるから、§E20.39 定理 3.4 (2)によりw1=∏p∈P, vp(f)≥1pであり、§E20.39 補題 3.3 (1)によりf=lc(f)∏p∈Ppvp(f)である。Rは体であるから、実数cについてf(c)=0であることと、vp(f)≥1を満たすあるpでp(c)=0であることは同値であり、後者はw1(c)=0と同値である。▨
命題 1.3.
- 実数αが実代数的数であることは、αの表示が存在することと同値である。
- (p,a,b)をαの表示とし、(ak,bk)k∈N≥0をその精密化列とする。任意のk∈N≥0に対して(p,ak,bk)はαの表示であり、k≥1ならば[ak,bk]⊂[ak−1,bk−1]かつbk−ak≤2−kである。任意の実数ε>0に対して、bk−ak<εを満たすkが存在する。
- (p,a,b)をαの表示とし、cを有理数、Vをpの Sturm 列から定めたものとする。c≤aならばc<αであり、b≤cならばα<cである。a<c<bかつp(c)=0ならばα=cである。a<c<bかつp(c)=0ならばV(a)−V(c)∈{0,1}であり、α<cであることとV(a)−V(c)=1であることは同値である。
証明.(1)を示す。(p,a,b)がαの表示ならば、零でないp∈Q[x]がp(α)=0を満たすので、αは実代数的数である。逆にαを実代数的数とし、m:=mα,Qと置く。§E8.2 定理 2.1によりmはモニック既約であるから、m自身がmのモニック既約分解であり、§E20.39 補題 3.3の指数はvm(m)=1、p=mでvp(m)=0である。§E20.39 定理 3.4 (1)によりmは平方自由である。mとτ=1に§E20.39 系 6.4を適用すると、§E20.39 系 6.4 (1)と§E20.39 系 6.4 (2)により、実根αはある(cℓ,dℓ)に属し、(cℓ,dℓ)はmの分離区間である。したがって(m,cℓ,dℓ)はαの表示である。
(2)を示す。k≥1とし、(p,ak−1,bk−1)がαの表示であるとする。§E20.39 命題 5.6 (3)により(ak,bk)は[ak,bk]⊂[ak−1,bk−1]とbk−ak≤2−kを満たすpの分離区間であり、(ak−1,bk−1)に属するpの実根αを含む。kに関する帰納法により前半が成り立つ。実数ε>0に対して、§D1.4 命題 2.1によりk>1/εを満たす正の整数kが存在し、2k>kであるからbk−ak≤2−k<1/k<εである。
(3)を示す。α∈(a,b)であるから、c≤aならばc<α、b≤cならばα<cである。a<c<bかつp(c)=0ならば、cは(a,b)に属するpの実根であるからc=αである。a<c<bかつp(c)=0とする。§E20.39 補題 3.2 (1)によりpはR[x]の元として平方自由であり、p(a)p(c)=0であるから、§E20.39 定理 4.3 (3)によりV(a)−V(c)=Np((a,c))である。(a,c)⊂(a,b)に属するpの実根はαだけでありうるので、Np((a,c))∈{0,1}であり、Np((a,c))=1であることはα∈(a,c)、すなわちα<cと同値である。▨
命題 1.4.(p,a,b)をαの表示、(q,c,d)をβの表示とし、Q[x]におけるpとqのモニック最大公約元をDとする。
- e:=max{a,c}、e′:=min{b,d}と置く。α=βであることは、e<e′であり、Dの次数が1以上であり、Dの Sturm 列から定めたVDについてVD(e)−VD(e′)=1であることと同値である。
- α=βとし、(ak,bk)k∈N≥0と(ck,dk)k∈N≥0をそれぞれ(p,a,b)と(q,c,d)の精密化列とする。[ak,bk]∩[ck,dk]=∅を満たすkが存在する。そのようなkに対して、α<βであることとbk<ckであることは同値である。
証明.(1)を示す。§E6.28 命題 3.1により、あるu,v∈Q[x]が存在してD=up+vqとなる。Dの次数が1以上ならば、補題 1.2 (1)によりDは平方自由であり、Dはpとqを割り切りp(a)q(c)=0かつp(b)q(d)=0であるからD(e)D(e′)=0である。このときe<e′ならば、§E20.39 補題 3.2 (1)と§E20.39 定理 4.3 (3)によりVD(e)−VD(e′)=ND((e,e′))である。
α=βとする。α∈(a,b)∩(c,d)=(e,e′)であるからe<e′である。D(α)=u(α)p(α)+v(α)q(α)=0であり、Dはモニックであるから次数が1以上である。補題 1.2 (1)によりDの実根はpの実根であるから、(e,e′)⊂(a,b)に属するDの実根はαだけであり、ND((e,e′))=1である。
逆にe<e′、degD≥1、VD(e)−VD(e′)=1とし、(e,e′)に属するDの実根をγとする。Dはpを割り切るのでγは(a,b)に属するpの実根であり、γ=αである。同様にγ=βであるから、α=βである。
(2)を示す。η:=∣α−β∣>0と置く。命題 1.3 (2)により、bk−ak<η/2かつdk−ck<η/2を満たすkが存在する。y∈[ak,bk]∩[ck,dk]が存在すると仮定すると、α,y∈[ak,bk]とβ,y∈[ck,dk]からη≤∣α−y∣+∣y−β∣<ηとなり、η<ηは成り立たない。したがってこのkで閉区間は交わらない。閉区間が交わらないkではbk<ckまたはdk<akであり、前者ならばα<bk<ck<β、後者ならばβ<dk<ak<αである。▨
2 有限因数分解と最小多項式
定理 2.1.P∈Z[x]を次数n≥2の原始的多項式とする。1≤d≤⌊n/2⌋を満たす整数dに対して、Pが零にならない非負整数を小さい順にd+1個取ってx0<⋯<xdとし、P(xi)を割り切る整数(負のものを含む)の集合をDiとする。(y0,…,yd)∈D0×⋯×Ddに対して節点x0,…,xdの Lagrange 基底ℓ0,…,ℓdによる∑i=0dyiℓiの全体をTdとする。
- x0,…,xdは{0,1,…,n+d}の中に取ることができ、TdはQ[x]の有限部分集合である。
- PがQ[x]で可約であることは、あるdとあるL∈Tdが存在して、L∈Z[x]、degL≥1であり、Q[x]においてLがPを割り切ることと同値である。
- 零でないf∈Q[x]に対して、次の手続きを考える。F:=lc(f)−1fと置く。fが定数ならばF=1であり、空列を出力する。fが定数でなければ、Fの係数の分母の積をNとしてPf:=NF/cont(NF)と置く。degPf=1ならば(F)を出力する。degPf≥2であり、(2)の条件を満たすLが存在しなければ(F)を出力する。存在すれば、その一つLと、PfのLによる除法の商Pf/Lのそれぞれにこの手続きを適用し、二つの出力を並べたものを出力する。この手続きは有理数の四則演算と比較の有限回で停止し、出力はモニック既約多項式の列であって、その積(空列の積は1)はFに等しい。
証明.(1)を示す。§E20.39 命題 2.1 (1)によりPの実根は高々n個であるから、n+d+1個の整数0,1,…,n+dのうち少なくともd+1個でPは零にならない。P(xi)は零でない整数であるから、その約数は∣P(xi)∣以下の絶対値をもち、Diは有限集合である。したがってTdは有限集合であり、xiとyiは有理数であるからTd⊂Q[x]である。
(2)を示す。L∈Tdが条件を満たしP=LHと書くとする。Lは次数がd以下の多項式の一次結合であるからdegL≤d≤n/2<nであり、§E6.28 命題 1.2によりdegH=n−degL≥1である。§E6.28 命題 1.3によりLとHは単元でないので、PはQ[x]で可約である。
逆にPがQ[x]で可約であるとする。§E6.28 定理 7.5により、正の次数をもつg,h∈Z[x]が存在してP=ghとなる。degg≤deghとしてよく、§E6.28 命題 1.2によりd:=deggは1≤d≤⌊n/2⌋を満たす。各iについてg(xi)h(xi)=P(xi)=0は整数の積であるから、g(xi)∈Diである。gは次数がd以下の実係数多項式であり、節点x0,…,xdは相異なるので、§E20.12 定理 1.3によりg=∑i=0dg(xi)ℓi∈Tdである。L:=gは条件を満たす。
(3)を示す。fが定数ならば、空列の積1はFに等しい。以下、定数でないfについてdegfに関する強帰納法を用いる。Nは正の整数でありNF∈Z[x]は零でないから、§E6.28 命題 7.2によりPfは原始的であり、Pf=cFを満たすc∈Q×が存在する。§E6.28 命題 1.3によりcはQ[x]の単元であるから、Fが既約であることとPfが既約であることは同値であり、degPf=degFである。degF=1ならば、§E6.28 命題 1.2によりFは二つの正の次数の多項式の積でないので既約であり、出力(F)は主張を満たす。degF≥2であり条件を満たすLが存在しないならば、(2)によりPfは既約であり、出力(F)は主張を満たす。条件を満たすLが存在するならば、(2)の証明の前半によりLとPf/Lの次数は1以上degf未満である。帰納法の仮定により二つの手続きは停止し、出力の積はそれぞれlc(L)−1Lとlc(Pf/L)−1(Pf/L)に等しい。§E6.28 命題 1.2によりこの二つの積はlc(Pf)−1Pfであり、Pf=cFとFがモニックであることからlc(Pf)−1Pf=Fである。各段で行う操作は、(1)の有限集合の列挙、Lagrange 基底の係数の計算、§E6.28 定理 2.1の除法であり、いずれも有理数の四則演算と比較の有限回で終わる。▨
命題 2.2.(p,a,b)をαの表示とし、lc(p)−1pに定理 2.1 (3)を適用して得るモニック既約多項式をp1,…,prとする。pjの Sturm 列から定めたVjについてVj(a)−Vj(b)=1を満たすjはただ一つであり、そのjについてpj=mα,Qであって、(pj,a,b)はαの表示である。
証明. 各pjはpを割り切り次数が1以上であるから、補題 1.2 (1)により平方自由であり、その実根はpの実根である。p(a)p(b)=0からpj(a)pj(b)=0であり、§E20.39 補題 3.2 (1)と§E20.39 定理 4.3 (3)によりVj(a)−Vj(b)=Npj((a,b))である。(a,b)に属するpの実根はαだけであるから、Npj((a,b))=1であることはpj(α)=0と同値である。p(α)=lc(p)p1(α)⋯pr(α)=0であるから、pj(α)=0を満たすjが存在する。そのようなjについて、§E8.2 定理 2.1によりmα,Qはpjを割り切り、pjは既約でmα,Qは定数でないので商は零でない定数であり、両者がモニックであるからpj=mα,Qである。pは平方自由であるから、§E20.39 定理 3.4 (1)によりmα,Qはp1,…,prに一度だけ現れ、このjはただ一つである。pjは平方自由でpj(a)pj(b)=0であり、(a,b)に属するpjの実根はαだけであるから、(pj,a,b)はαの表示である。▨
3 単拡大の演算と区間評価による符号
命題 3.1.αを実代数的数とし、m:=mα,Q、n:=degmと置く。Q[x]の元で、零であるか次数がn未満であるものの全体をQ[x]<nと書く。
- Q(α)の任意の元γに対して、γ=r(α)を満たすr∈Q[x]<nがただ一つ存在する。
- r,s∈Q[x]<nとする。r+s∈Q[x]<nかつr(α)+s(α)=(r+s)(α)である。rsのmによる除法の剰余をρとすると、ρ∈Q[x]<nかつr(α)s(α)=ρ(α)である。
- r∈Q[x]<nについて、r(α)=0であることとr=0であることは同値である。
- 零でないr∈Q[x]<nについて、Q[x]におけるmとrのモニック最大公約元は1である。um+vr=1を満たすu,v∈Q[x]を取り、vのmによる除法の剰余をvˉとすると、r(α)−1=vˉ(α)である。
証明.§E8.2 定理 3.1により、f+(m)↦f(α)はQ[x]/(m)からQ(α)への同型であり、1,α,…,αn−1はQ(α)のQ上の基底である。γ∈Q(α)の基底に関する座標を係数とする多項式がrであるから、(1)が成り立ち、γ=0に適用すると(3)が成り立つ。r+sの係数はrとsの係数の和であるからr+s∈Q[x]<nである。rs=hm+ρと書くと、§E6.28 定理 2.1によりρ∈Q[x]<nであり、m(α)=0からr(α)s(α)=ρ(α)である。
(4)を示す。mとrのモニック最大公約元Dは既約多項式mを割り切るので、D=1であるか、Dはmと同伴でモニックであるからD=mである。Dは零でないrを割り切り、degr<degmであるから、§E6.28 命題 1.2によりD=mではない。したがってD=1であり、§E6.28 命題 3.1によりum+vr=1を満たすu,vが存在する。x=αを代入するとv(α)r(α)=1であり、v=hm+vˉと書くとv(α)=vˉ(α)である。▨
補題 3.2.n∈N≥1とし、Eをn変数の式、XをE(X)が定まるRnの箱とする。ある実数L≥0が存在して、任意の箱X′⊂Xに対して
w(E(X′))≤L1≤i≤nmaxw(Xi′)が成り立つ。
証明.
主張 3.2.1.A,B∈IRに対してw(A⋅B)≤magAw(B)+magBw(A)である。またA⊂A′を満たすA′∈IRに対してmagA≤magA′である。
証明.§E20.36 定理 2.3 (1)により、A⋅Bの端点はAの端点とBの端点の積であるから、あるa,a′∈Aとb,b′∈Bによってw(A⋅B)=a′b′−abと書くことができる。a′b′−ab=a′(b′−b)+b(a′−a)である。§E20.36 補題 1.2 (2)により∣b′−b∣≤w(B)かつ∣a′−a∣≤w(A)であり、Y∈IRの元yは∣y∣≤magYを満たすので、w(A⋅B)≤magAw(B)+magBw(A)である。Aの端点はA′に属するので、magA≤magA′である。▨
X′⊂Xを箱とし、h:=maxiw(Xi′)と置く。§E20.36 定理 4.2 (2)により、Eの部分式GでG(X)が定まるものについて、G(X′)も定まりG(X′)⊂G(X)である。E(X)が定まる式Eに対して、X′によらずw(E(X′))≤LEhを満たす実数LE≥0を、式の構成に関する帰納法で定める。E=ξiならばw(E(X′))=w(Xi′)≤hであり、LE=1と取る。Eが定数ならばw(E(X′))=0であり、LE=0と取る。
E=(E′∘E′′)とし、E′とE′′について主張が成り立つとする。A:=E′(X′)、B:=E′′(X′)と置くと、A⊂E′(X)かつB⊂E′′(X)である。∘∈{+,−}ならば、§E20.36 定理 2.3 (1)によりw(E(X′))=w(A)+w(B)≤(LE′+LE′′)hである。∘=⋅ならば、主張 3.2.1により
w(E(X′))≤magE′(X)LE′′h+magE′′(X)LE′hである。∘=/ならば、0∈/E′′(X)であるからμ:=min{∣infE′′(X)∣, ∣supE′′(X)∣}>0であり、E′′(X)の元yはすべて同符号で∣y∣≥μを満たす。B=[β1,β2]と書くと、§E20.36 定理 2.3 (1)によりA/B=A⋅[1/β2,1/β1]であり、β1β2≥μ2から
w([1/β2,1/β1])=β1β2β2−β1≤μ2w(B),mag[1/β2,1/β1]≤μ1である。主張 3.2.1によりw(E(X′))≤(magE′(X)LE′′/μ2+LE′/μ)hである。いずれの場合も係数はX′によらない。▨
命題 3.3.n∈N≥1とし、Eをn変数の式、y∈Rnとする。Rnの箱の列(X(k))k∈N≥0が、任意のkでy∈X(k)⊂X(0)を満たし、E(X(0))が定まり、任意の実数ε>0に対してmaxiw(Xi(k))<εを満たすkが存在するとする。このときy∈DEである。fE(y)=0ならば、0∈/E(X(k))を満たすkが存在し、そのような任意のkについてfE(y)はinfE(X(k))と同符号である。Eの定数と各X(k)の端点が有理数ならば、E(X(k))の端点は有理数の四則演算と比較の有限回で得られる。
証明.§E20.36 定理 4.2 (1)と§E20.36 定理 4.2 (2)により、X(0)⊂DEであり、各E(X(k))が定まってfE(y)∈E(X(k))である。fE(y)=0とし、補題 3.2のLをX(0)について取る。ε:=∣fE(y)∣/(L+1)に対してmaxiw(Xi(k))<εを満たすkを取ると、w(E(X(k)))≤Lε<∣fE(y)∣である。0∈E(X(k))と仮定すると、§E20.36 補題 1.2 (2)をy^=0で用いて∣fE(y)∣≤w(E(X(k)))となり、w(E(X(k)))<∣fE(y)∣に反する。したがって0∈/E(X(k))である。0∈/E(X(k))を満たすkについて、§E20.36 命題 7.1をS={y}に適用すると、fE(y)はinfE(X(k))と同符号である。端点が有理数の場合の主張は、§E20.36 定理 2.3 (1)の端点の式から従う。▨
系 3.4.(p,a,b)をαの表示、(ak,bk)k∈N≥0をその精密化列とし、r=∑i=0scixi∈Q[x]がr(α)=0を満たすとする。一変数の式をE(s):=cs、0≤i<sについてE(i):=E(i+1)⋅ξ1+ciで定め、Er:=E(0)と置く。0∈/Er([ak,bk])を満たすkが存在し、そのような任意のkについてr(α)はinfEr([ak,bk])と同符号である。p=mα,Qでありrが零でなくdegr<degpを満たすならば、命題 3.1 (3)によりr(α)=0である。
証明.Erは除算を含まないので、任意の箱XでEr(X)が定まり、DEr=Rである。iに関する下向きの帰納法によりfE(i)(x)=∑j=iscjxj−iであるから、fEr(x)=r(x)である。命題 1.3 (2)により、α∈[ak,bk]⊂[a0,b0]であり、任意の実数ε>0に対してbk−ak<εを満たすkが存在するので、命題 3.3をy=α、X(k)=[ak,bk]に適用すると主張を得る。▨
4 行列式と終結式
定義 4.1.Aを単位元をもつ可換環、n∈N≥1とし、M=(mij)を成分がAに属するn次正方行列とする。
detM:=σ∈Sn∑sgn(σ)m1σ(1)m2σ(2)⋯mnσ(n)と定める。ここでsgn(σ)∈{1,−1}はAの元1または−1とみなす。
補題 4.2.Aを単位元をもつ可換環、M=(mij)を成分がAに属するn次正方行列とする。
- ψ:A→A′を単位元を保つ環準同型とし、ψ(M):=(ψ(mij))と置くと、detψ(M)=ψ(detM)である。
- detM⊤=detMである。
- detMは各行と各列についてA-線形である。二つの行または二つの列を入れ替えるとdetMは−1倍になり、ある行に他の行のc倍(c∈A)を加えても、ある列に他の列のc倍を加えても、detMは変わらない。
- i>jならばmij=0であるとき、detM=m11m22⋯mnnである。
命題 4.3.Fを体とし、Mを成分がFに属するn次正方行列とする。detM=0であることと、Mx=0を満たす零でないx∈Fnが存在することは同値である。
証明.M0:=Mと置き、1≤k≤nについてMk−1からMkを次のように定める。Mk−1の第k列の第k行以下の成分がすべて零ならばMk:=Mk−1とする。そうでなければ、第k列の成分が零でない第i行(i≥k)を一つ取って第k行と入れ替え、得られた行列の(k,k)成分をπとして、各i>kについて第i行に第k行の−π−1⋅(第 i 行の第 k 成分)倍を加えた行列をMkとする。第k段の操作は、第k行以下の二つの行の入れ替えと、第k行より下の行に第k行の定数倍を加える操作だけである。j<kについてMk−1の第j列の第j行より下の成分が零であるとき、第k行以下の行の第j成分はすべて零であるから、第k段の操作の後も零である。第k段の後、第k列の第k行より下の成分は零である。したがってkに関する帰納法により、Mkの第1列から第k列までは対角成分より下の成分が零である。U:=Mnと置くとUは上三角行列であり、補題 4.2 (3)によりdetU=±detMである。行の入れ替えと、ある行に他の行の定数倍を加える操作は、それぞれ同じ入れ替えと逆符号の定数倍の加算で元に戻るので、Mx=0の解の集合とUx=0の解の集合は一致する。補題 4.2 (4)によりdetU=u11⋯unnである。
すべてのiでuii=0ならばdetM=0である。このときUx=0とすると、第n行からunnxn=0であり、iに関する下向きの帰納法により、第i行uiixi+∑j>iuijxj=0とxj=0(j>i)からxi=0である。したがって零でない解は存在しない。
uii=0を満たすiが存在するならばdetM=0である。そのような最小のiをsとすると、i<sならばuii=0である。xs:=1、j>sについてxj:=0と置き、i=s−1,…,1の順にxi:=−uii−1∑j=i+1suijxjと定める。i<sならば第i行の値はuiixi+∑j=i+1suijxj=0であり、第s行の値はussxs+∑j>susjxj=0であり、i>sならば第i行の値はj≥i>sのxj=0だけを含むので0である。したがってx=0かつUx=0であり、Mx=0である。▨
定義 4.4.Aを単位元をもつ可換環とし、m,n∈N≥0がm+n≥1を満たすとする。N:=m+nと置く。次数がN−1以下のh=∑i=0N−1hixi∈A[x]に対して、(hN−1,hN−2,…,h0)をhの係数ベクトルという。
- f=∑i=0maixiとg=∑j=0nbjxjをA[x]の元とする。1≤j≤nに対して第j列がxn−jfの係数ベクトルであり、1≤j≤mに対して第n+j列がxm−jgの係数ベクトルであるN次正方行列をSm,n(f,g)と書き、f,gの Sylvester 行列 (Sylvester matrix) という。
- Fを体とし、零でないf,g∈F[x]がdegf+degg≥1を満たすとする。Res(f,g):=detSdegf,degg(f,g)をfとgの 終結式 (resultant) という。fまたはgが零である場合と、f,gがともに定数である場合には、終結式を定めない。
定理 4.5.Fを体とし、零でないf,g∈F[x]がm:=degf、n:=deggについてm+n≥1を満たすとする。次の四条件は同値である。
- Res(f,g)=0である。
- u=0またはdegu<nを満たすu∈F[x]と、v=0またはdegv<mを満たすv∈F[x]が存在して、(u,v)=(0,0)かつuf+vg=0である。
- F[x]におけるfとgのモニック最大公約元の次数は1以上である。
- 体Lと、Fを部分体とするLの元γが存在して、f(γ)=g(γ)=0である。
証明.(1)⇔(2)を示す。c∈Fm+nに対してuc:=∑j=1ncjxn−j、vc:=∑j=1mcn+jxm−jと置くと、c↦(uc,vc)はFm+nから(2)の次数条件を満たす組(u,v)の全体への全単射である。定義 4.4 (1)によりSm,n(f,g)cはucf+vcgの係数ベクトルであるから、Sm,n(f,g)c=0であることとucf+vcg=0であることは同値である。命題 4.3により主張が成り立つ。
(3)⇒(2)を示す。モニック最大公約元Dの次数が1以上であるとし、f=Df1、g=Dg1と書く。§E6.28 命題 1.2によりdegg1=n−degD<n、degf1<mであり、g1=0である。(u,v):=(g1,−f1)はuf+vg=g1Df1−f1Dg1=0を満たす。
(2)⇒(3)を示す。(2)の(u,v)を取り、モニック最大公約元が1であると仮定する。§E6.28 命題 3.1によりaf+bg=1を満たすa,b∈F[x]が存在し、uf=−vgからu=u(af+bg)=g(bu−av)である。u=0ならば§E6.28 命題 1.2によりdegu≥nとなり、uの次数条件に反する。したがってu=0であり、vg=0とg=0から§E6.28 命題 1.2によりv=0となって、(u,v)=(0,0)に反する。したがってモニック最大公約元の次数は1以上である。
(3)⇒(4)を示す。モニック最大公約元Dのモニック既約因子pを§E6.28 定理 5.1により取る。§E6.28 定理 6.1によりL:=F[x]/(p)は体であり、pは定数でないのでc↦c+(p)はFからLへの単射な環準同型である。これによりFをLの部分体とみなし、γ:=x+(p)と置くと、h∈F[x]に対してh(γ)=h+(p)である。pはDを割り切り、Dはfとgを割り切るので、f(γ)=g(γ)=0である。
(4)⇒(1)を示す。§E6.28 定理 4.2をL[x]で適用すると、x−γはL[x]においてfとgを割り切るので、L[x]におけるfとgのモニック最大公約元の次数は1以上である。f,gのL[x]における次数はm,nであるから、(3)⇒(2)と(1)⇔(2)をLで適用するとdetSm,n(f,g)=0である。この行列の成分はFに属するのでRes(f,g)=0である。▨
定義 4.6.Fを、任意の正の整数kに対してk⋅1=0を満たす体とする。f=∑i=0maixi∈F[x]に対してf′:=∑i=1miaixi−1と置く。degf=m≥1ならば、f′のxm−1の係数mamは零でないのでdegf′=m−1であり、
disc(f):=(−1)m(m−1)/2lc(f)−1Res(f,f′)をfの 判別式 (discriminant) という。
命題 4.7.Fを定義 4.6の体とし、f∈F[x]の次数を1以上とする。disc(f)=0であることは、F[x]におけるfとf′のモニック最大公約元の次数が1以上であることと同値であり、Fを部分体とするある体Lのある元γでf(γ)=f′(γ)=0となることとも同値である。FがRの部分体ならば、これらはfが平方自由でないことと同値である。
証明.degf+degf′≥1でありlc(f)=0であるから、前半は定理 4.5による。FがRの部分体ならばf′は§E20.39 補題 1.2の導関数に等しく、§E20.39 定義 3.1によりfが平方自由であることはfとf′のモニック最大公約元が1であることである。▨
例 4.8.
- 体Fの元α,βについて、S1,1(x−α,x−β)の第1列は(1,−α)、第2列は(1,−β)であり、Res(x−α,x−β)=−β+α=α−βである。
- degf=m≥1、c∈Fが零でないとき、Sm,0(f,c)の第j列はcxm−jの係数ベクトルであるからSm,0(f,c)=cImであり、補題 4.2 (4)によりRes(f,c)=cmである。
- 定義 4.6の体Fの元b,cについてf=x2+bx+cとするとf′=2x+bであり、
S2,1(f,f′)=1bc2b002b,Res(f,f′)=b2−2b2+4c=4c−b2
であるから、disc(f)=−(4c−b2)=b2−4cである。
命題 4.9.Aを単位元をもつ可換環、Fを体、ψ:A→Fを単位元を保つ環準同型とする。m,n∈N≥0がm+n≥1を満たし、f=∑i=0maixi、g=∑j=0nbjxj∈A[x]とし、ψf:=∑iψ(ai)xi、ψg:=∑jψ(bj)xjと置く。
- ψ(detSm,n(f,g))=detSm,n(ψf,ψg)である。
- ψ(am)=0かつψ(bn)=0ならば、ψ(detSm,n(f,g))=Res(ψf,ψg)である。
証明.Sm,n(f,g)の成分はf,gの係数または0であるから、ψを成分ごとに施した行列はSm,n(ψf,ψg)であり、補題 4.2 (1)により(1)が成り立つ。(2)の仮定の下ではdegψf=m、degψg=nであるから、右辺は定義 4.4 (2)によりRes(ψf,ψg)である。▨
例 4.10.A=Q[t]、f=tx+1、g=xとするとS1,1(f,g)=(t110)であり、detS1,1(f,g)=−1である。ψ:Q[t]→Qをt↦0の代入とするとψf=1の次数は0であり、S0,1(1,x)は第1列が1の係数ベクトル(1)である1次正方行列であるから、Res(1,x)=1=−1である。したがってψ(am)=0の場合には、ψ(detSm,n(f,g))はRes(ψf,ψg)に等しいとは限らない。f=tのようにψf=0となる場合には、終結式は定まらない。
5 四則演算
命題 5.1.p,q∈Q[x]の次数をm:=degp≥1、n:=degq≥1とし、q=∑j=0nqjxjと書く。Q[t][x]の元
g+:=j=0∑nqj(t−x)j,g×:=j=0∑nqjtjxn−jに対して、R+:=detSm,n(p,g+)、R×:=detSm,n(p,g×)と置く。これらはQ[t]の元である。
- R+は次数mnの多項式であり、pの任意の実根αとqの任意の実根βに対してR+(α+β)=0である。
- q(0)=0ならば、R×は次数mnの多項式であり、pの任意の実根αとqの任意の実根βに対してR×(αβ)=0である。
証明.
主張 5.1.1.g∈Q[t][x]のxについての次数がn以下であり、各xiの係数のtについての次数がn以下であり、tnx0の係数が零でない有理数c、i≥1に対するtnxiの係数が0であるとする。このときdetSm,n(p,g)はtについて次数mnの多項式である。
証明.定義 4.1の和の各項は、各列からちょうど一つずつ成分を取った積である。第1列から第n列の成分はpの係数または0であり、第n+j列(1≤j≤m)の成分はxm−jgの係数であってtについて次数がn以下である。したがって各項の次数はmn以下であり、そのtmnの係数は、第1列から第n列の成分と、第n+j列の成分のtnの係数との積である。第n+j列の成分のtnの係数を並べたものはcxm−jの係数ベクトルであるから、detSm,n(p,g)のtmnの係数は、Sm,n(p,g)の第n+j列をcxm−jの係数ベクトルに取り替えた行列Hの行列式である。c′∈Qm+nに対してu:=∑j=1ncj′xn−j、v:=∑j=1mcn+j′xm−jと置くと、Hc′はup+cvの係数ベクトルである。up+cv=0かつu=0ならば、§E6.28 命題 1.2によりdeg(up)≥mであり、cvは零であるか次数がm未満であるから両立しない。したがってu=0であり、cv=0からv=0であるのでc′=0である。命題 4.3によりdetH=0である。▨
(t−x)jのtについての次数はjであり、tnの項をもつのはj=nの場合だけで、その係数は1である。したがってg+はc=qnとして主張 5.1.1の仮定を満たす。g×のxn−jの係数はqjtjであるから、g×もc=qnとして仮定を満たす。よってR+とR×の次数はmnである。
実数t0に対して、t↦t0の代入evt0:Q[t]→Rを考える。pの係数は有理数であるからevt0で変わらず、evt0g+=q(t0−x)のxnの係数は(−1)nqn=0であるから、命題 4.9 (2)によりR+(t0)=Res(p,q(t0−x))である。t0=α+βならば、p(α)=0かつq(t0−α)=q(β)=0であるから、定理 4.5 (4)⇒(1)をF=L=Rで適用してR+(α+β)=0である。q(0)=0ならばevt0g×のxnの係数はq0=0であり、同様にR×(t0)=Res(p,∑jqjt0jxn−j)である。t0=αβならば∑jqj(αβ)jαn−j=αnq(β)=0であるから、x=αは共通根でありR×(αβ)=0である。▨
補題 5.2.γを実数、P∈Q[x]をP(γ)=0を満たす零でない多項式とする。有理数を端点とする閉区間の列(Jk)k∈N≥0が、任意のkでγ∈Jkを満たし、任意の実数ε>0に対してw(Jk)<εを満たすkをもつとする。有理数cℓ<dℓ(1≤ℓ≤t)が、P(cℓ)P(dℓ)=0を満たし、各(cℓ,dℓ)がPの実根をちょうど一つ含み、Pの実根がすべていずれかの(cℓ,dℓ)に属するとする。lc(P)−1Pに§E20.39 定理 3.4 (2)を適用して得るw1を考える。このときJk⊂(cℓ,dℓ)を満たすkとℓが存在し、そのような任意のk,ℓについて(w1,cℓ,dℓ)はγの表示である。
証明.Pは零でなく実根γをもつので次数が1以上である。仮定によりγ∈(cℓ,dℓ)を満たすℓがあり、η:=min{γ−cℓ, dℓ−γ}>0と置く。w(Jk)<ηを満たすkを取ると、y∈Jkは§E20.36 補題 1.2 (2)により∣y−γ∣≤w(Jk)<ηを満たすので、Jk⊂(cℓ,dℓ)である。逆にJk⊂(cℓ,dℓ)ならばγ∈(cℓ,dℓ)である。補題 1.2 (2)によりw1は平方自由であり、w1とPの実根は一致するので、w1(cℓ)w1(dℓ)=0であり、(cℓ,dℓ)に属するw1の実根はγだけである。したがって(w1,cℓ,dℓ)はγの表示である。▨
定理 5.3.(p,a,b)をαの表示、(q,c,d)をβの表示とし、(ak,bk)k∈N≥0と(ck,dk)k∈N≥0をそれぞれの精密化列、m:=degp、p=∑i=0mpixiとする。次の各項のPは零でないQ[x]の元であって、各項の実数γについてP(γ)=0を満たし、(Jk)k∈N≥0はγについて補題 5.2の仮定を満たす。
- γ=−α、P:=p(−x)、Jk:=[−bk,−ak]である。
- γ=α+β、Pは命題 5.1のR+の変数をxに替えたもの、Jk:=[ak,bk]+[ck,dk]である。
- α=0かつβ=0とする。q(0)=0ならばq~:=q/x、q(0)=0ならばq~:=qと置く。γ=αβ、Pはpとq~から命題 5.1のR×の変数をxに替えたもの、Jk:=[ak,bk]⋅[ck,dk]である。
- α=0とする。0∈/[ak0,bk0]を満たすk0が存在する。γ=1/α、P:=∑i=0mpixm−i、Jk:=[1,1]/[ak0+k,bk0+k]である。
α=0であるかどうかは、命題 1.3 (3)によりαを有理数0と比較して判定され、α=0またはβ=0ならばαβ=0は(x,−1,1)で表される。したがって−α、α+β、αβ、α=0の場合の1/αの表示は、§E20.39 系 6.4をPとτ=1に適用した出力と補題 5.2により、有理数の四則演算と比較の有限回で得られる。
証明.命題 1.3 (2)により、α∈[ak,bk]⊂[a0,b0]、β∈[ck,dk]⊂[c0,d0]であり、bk−akとdk−ckはk≥1で2−k以下であるから、任意の実数ε>0に対して、bk−ak<εかつdk−ck<εを満たすkが存在する。
(1)を示す。Pの係数はpの係数に±1を掛けたものであるからP=0であり、P(−α)=p(α)=0である。−α∈[−bk,−ak]であり、w(Jk)=bk−akである。
(2)を示す。命題 5.1 (1)によりP=0かつP(α+β)=0である。§E20.36 定理 2.3 (2)によりα+β∈Jkであり、§E20.36 定理 2.3 (1)によりw(Jk)=(bk−ak)+(dk−ck)である。
(3)を示す。q(0)=0ならば§E6.28 定理 4.2によりxはqを割り切り、§E20.39 補題 3.2 (2)によりmult0(q)=1であるからx2はqを割り切らず、§E6.28 定理 4.2によりq~(0)=0である。どちらの場合もq~(0)=0である。q~=q/xの場合はβq~(β)=q(β)=0とβ=0から、q~=qの場合はq(β)=0から、q~(β)=0であるので、q~の次数は1以上である。命題 5.1 (2)によりP=0かつP(αβ)=0である。§E20.36 定理 2.3 (2)によりαβ∈Jkである。二変数の式ξ1⋅ξ2と箱[a0,b0]×[c0,d0]に補題 3.2を適用して得るLについて、w(Jk)≤Lmax{bk−ak, dk−ck}である。
(4)を示す。∣α∣>0であるから、bk0−ak0<∣α∣を満たすk0が存在する。0∈[ak0,bk0]ならば、§E20.36 補題 1.2 (2)により∣α∣≤bk0−ak0となってbk0−ak0<∣α∣に反するので、0∈/[ak0,bk0]である。k≥0について[ak0+k,bk0+k]⊂[ak0,bk0]であるからJkは定まる。Pの定数項はpm=0であるからP=0であり、P(1/α)=α−m∑ipiαi=α−mp(α)=0である。§E20.36 定理 2.3 (2)により1/α∈Jkである。一変数の式1/ξ1と箱[ak0,bk0]に補題 3.2を適用して得るLについて、w(Jk)≤L(bk0+k−ak0+k)である。
最後の主張は、§E20.39 系 6.4 (1)と§E20.39 系 6.4 (2)により§E20.39 系 6.4の出力が補題 5.2の区間の仮定を満たすこと、Jkの端点が有理数の四則演算で得られること、補題 5.2のkとℓをk=0,1,2,…の順に有理数の比較で探す手続きが停止することから従う。▨
例 5.4.x2−2と2xのモニック最大公約元は2xを割り切るので1またはxであり、xはx2−2を割り切らないので1である。したがってx2−2は平方自由であり、その実根±2のうち(1,2)に属するのは2だけであるから、(x2−2,1,2)は2の表示である。同様に(x2−3,1,2)は3の表示である。g+=(t−x)2−3=x2−2tx+t2−3であり、s:=t2−3と置くと
S2,2(x2−2,g+)=10−20010−21−2ts001−2tsである。第3列から第1列を、第4列から第2列を引くと、補題 4.2 (3)により行列式は変わらず、第1行は(1,0,0,0)になる。定義 4.1の和でσ(1)=1の項だけが残るので、
R+=det10−2−2ts+200−2ts+2=(s+2)2−8t2=t4−10t2+1である。P:=x4−10x2+1=(x2−5)2−24と置くとP′=4x(x2−5)である。PとP′のモニック既約な公約元πはxであるかx2−5を割り切るが、P(0)=1であるからπ=xであり、πがx2−5を割り切るならばπは24=(x2−5)2−Pを割り切るので、πは存在しない。したがってPとP′のモニック最大公約元は1であり、Pは平方自由であって、補題 5.2のw1はPである。Pの実根はx2=5±26を満たす。19/4<26<79/16から5−26∈(1/16,1/4)であり、4<26<11から5+26∈(9,16)であるので、(−4,−3)、(−1/2,−1/4)、(1/4,1/2)、(3,4)はそれぞれPの実根をちょうど一つ含み、Pの実根はすべてこれらに属する。P(±3)=−8、P(±4)=97、P(±1/4)=97/256、P(±1/2)=−23/16であるから、端点でPは零にならない。2と3の精密化列の第4項は(11/8,23/16)と(27/16,7/4)であり、J4=[49/16,51/16]⊂(3,4)である。したがって(x4−10x2+1,3,4)は2+3の表示である。J0,…,J3は[2,4]、[5/2,7/2]、[11/4,13/4]、[3,13/4]であり、いずれも四つの開区間のどれにも含まれない。
6 実代数的係数の多項式
命題 6.1.s∈N≥0とし、実代数的数γ1,…,γsの表示が与えられているとする。K:=Q(γ1,…,γs)⊂Rと置き、K[x]の元は、各係数の表示を並べた有限列によって与えられるとする。
- Kの元はすべて実代数的数である。
- h,g∈K[x]とする。g=0ならば、gの次数と最高次係数、hのgによる除法の商と剰余が得られる。h=0かつg=0ならば、hとgのモニック最大公約元Dと、D=uh+vgを満たすu,v∈K[x]が得られる。hの次数が1以上ならば、lc(h)−1hに§E20.39 定理 3.4 (2)を適用して得るwi,fiが得られる。hが平方自由ならば、hの Sturm 列と、有理数cに対するV(c)とχh(c)が得られる。いずれも、定理 5.3と命題 1.3 (3)の有限回の適用で得られ、得られる多項式はK[x]に属する。
- q∈K[x]を平方自由とし、Vをqの Sturm 列から定めたものとする。有理数a<bがq(a)q(b)=0を満たすならば、Nq((a,b))=V(a)−V(b)である。
命題 6.2.Kを命題 6.1の体とし、h=∑i=0ncixi∈K[x]がn≥1とcn=0を満たすとする。0≤i<nについて∣ci/cn∣の表示を(pi,ai,bi)とし、B:=1+max{0,b0,…,bn−1}と置く。Bは有理数であり、hの実根はすべて(−B,B)に属し、∣x∣≥Bを満たす任意の実数xに対してh(x)=0かつsgnh(x)=sgn(cnxn)である。
証明.∣ci/cn∣はci/cnまたは−ci/cnであり、命題 6.1 (2)と命題 1.3 (3)によりその表示が得られる。∣ci/cn∣∈(ai,bi)であるから、§E20.39 命題 2.1 (2)のM=maxi<n∣ci/cn∣はM<B−1を満たし、B≥1+Mである。∣x∣≥Bを満たす実数xに§E20.39 命題 2.1 (2)を適用すると、h(x)=0かつsgnh(x)=sgn(cnxn)である。▨
定義 6.3.Kを命題 6.1の体とし、q∈K[x]を平方自由、d:=degq、Vをqの Sturm 列から定めたものとする。
- 有理数a<bに対して、0≤j≤dについてsj:=a+(b−a)(1/2+j/(4(d+1)))と置く。§E20.39 命題 2.1 (1)によりqの実根は高々d個であるから、q(sj)=0を満たすjが存在する。そのような最小のjに対するsjをσq(a,b)と書く。
- h=qについて命題 6.2のBを取る。有理数を端点とする開区間の有限列L、Cを次のように更新する。初めにL:=((−B,B))とし、Cを空列とする。Lが空でない間、Lの項(a,b)を一つ選んでLから除き、ν:=V(a)−V(b)を計算する。ν=0ならば何も加えず、ν=1ならば(a,b)をCに加え、ν≥2ならばs:=σq(a,b)として(a,s)と(s,b)をLに加える。Lが空になった時点で停止する。
- 有理数a<bがq(a)q(b)=0とV(a)−V(b)=1を満たすとする。(a0,b0):=(a,b)と置き、(ak,bk)が定まったときs:=σq(ak,bk)として、V(ak)−V(s)=1ならば(ak+1,bk+1):=(ak,s)、そうでなければ(ak+1,bk+1):=(s,bk)と置く。(ak,bk)k∈N≥0をqによる(a,b)の 縮小列 (shrinking sequence) という。有理数τ>0に対して、a<ak、bk<b、bk−ak≤τを満たす最初の(ak,bk)を、幅τの出力という。
定理 6.4.定義 6.3の記号の下で、qの実根の集合をZとする。
- 有理数a<bに対して、s:=σq(a,b)はq(s)=0とa<s<bを満たし、s−aとb−sはいずれも3(b−a)/4以下である。
- 定義 6.3 (2)は有限回の更新で停止する。停止したとき、Cの区間は互いに交わらず、端点はqの根でない有理数であり、各区間はqの実根をちょうど一つ含み、Zの各元はCのある区間に属する。
- 定義 6.3 (3)の縮小列について、(a,b)に属するqの実根をξとする。任意のkについて、q(ak)q(bk)=0であり、(ak,bk)に属するqの実根はξだけであり、[ak+1,bk+1]⊂[ak,bk]かつbk−ak≤(3/4)k(b−a)であり、任意の実数ε>0に対してbk−ak<εを満たすkが存在する。任意の有理数τ>0に対して幅τの出力(c′,d′)が存在し、[c′,d′]⊂(a,b)である。
- τ>0を有理数とし、(2)のCの各区間に対する幅τの出力を(cℓ,dℓ)(1≤ℓ≤t)とする。閉区間[cℓ,dℓ]は互いに交わらず、q(cℓ)q(dℓ)=0かつdℓ−cℓ≤τであり、各(cℓ,dℓ)はqの実根をちょうど一つ含み、Zの各元はある(cℓ,dℓ)に属する。
これらの手続きは命題 6.1 (2)の計算の有限回で終わる。
証明.
主張 6.4.1. 任意の実数ε>0に対して、(3/4)k<εを満たすk∈N≥0が存在する。
証明.§D1.4 命題 2.1によりj>1/εを満たす正の整数jが存在する。(3/4)2=9/16<1/2であり2j>jであるから、(3/4)2j<2−j<1/j<εである。▨
(1)を示す。0≤j≤dに対して0≤j/(4(d+1))<1/4であるから、a+(b−a)/2≤s<a+3(b−a)/4である。したがってs−a<3(b−a)/4かつb−s≤(b−a)/2である。q(s)=0はσqの定義による。
(2)を示す。
主張 6.4.2. 初めの状態と各更新の後で、LとCに現れる区間は(−B,B)に含まれ、互いに交わらず、端点はqの根でない有理数である。Cの各区間はqの実根をちょうど一つ含む。ZはLとCの区間の和集合に含まれる。
証明. 初めの状態では命題 6.2により主張が成り立つ。更新の前に主張が成り立つとし、Lから除いた区間を(a,b)とすると、命題 6.1 (3)によりν=Nq((a,b))である。ν=0ならばZ∩(a,b)=∅であり、ν=1ならばCに加えた区間は実根をちょうど一つ含む。ν≥2ならば、(1)によりsはqの根でない(a,b)の点であるから、Z∩(a,b)⊂(a,s)∪(s,b)であり、(a,s)と(s,b)は互いに交わらず(a,b)に含まれる。いずれの場合も主張は更新の後で成り立つ。▨
(−B,B)の深さを0とし、(a,b)を分けて加える二つの区間の深さを(a,b)の深さに1を加えたものとする。(1)により、深さkの区間の幅は(3/4)k⋅2B以下である。Zの元が高々一つならば、最初の更新でν≤1となり手続きは停止する。Zの元が二つ以上ならば、§E20.39 命題 2.1 (1)によりZは有限であるから、相異なる二元の距離の最小値η>0が存在する。主張 6.4.1により(3/4)k0⋅2B<ηを満たすk0が存在し、深さがk0以上の区間はZの元を二つ含まないので分けられない。したがってLに加えられる区間の深さはk0以下であり、深さk+1の区間は深さkの区間を分けるごとに二つ加えられ、各区間はLから一度だけ除かれるので、更新の回数は2k0+1−1以下である。停止したときLは空であるから、主張 6.4.2により(2)の停止時の性質が成り立つ。
(3)を示す。(ak,bk)がq(ak)q(bk)=0を満たし実根ξだけを含むとし、s:=σq(ak,bk)と置く。q(s)=0であるから(ak,s)と(s,bk)の一方だけがξを含み、命題 6.1 (3)によりV(ak)−V(s)=Nq((ak,s))∈{0,1}である。したがって(ak+1,bk+1)はξだけを含み、端点でqは零にならず、[ak+1,bk+1]⊂[ak,bk]であり、(1)によりbk+1−ak+1≤43(bk−ak)である。kに関する帰納法により前半の四つの性質が成り立ち、主張 6.4.1によりbk−akはεより小さくなる。η:=min{ξ−a, b−ξ}>0と置き、主張 6.4.1により(3/4)k(b−a)<min{η,τ}を満たすkを取る。ξ∈(ak,bk)とbk−ak<ηからak>ξ−η≥aかつbk<ξ+η≤bであり、bk−ak<τであるから、このkで幅τの出力の条件が満たされる。出力(c′,d′)はa<c′とd′<bを満たすので、[c′,d′]⊂(a,b)である。
(4)を示す。(3)により、各[cℓ,dℓ]はCの対応する区間に含まれ、その区間の実根だけを含む。(2)によりCの区間は互いに交わらずZを覆うので、主張が成り立つ。
各段の計算は、有理数におけるVとqの値と有理数の比較であり、命題 6.1 (2)により得られる。▨
定義 6.5.Kを命題 6.1の体とする。h∈K[x]が平方自由であり、有理数c<dがh(c)h(d)=0を満たし、(c,d)がhの実根をちょうど一つ含むとき、その実根をβとして、(h,c,d)をβの K上の表示 (representation over K) という。
命題 6.6.Kを命題 6.1の体とし、h∈K[x]を零でない多項式とする。hの任意の実根βは実代数的数である。hが平方自由ならば、定理 6.4 (4)の各(cℓ,dℓ)について(h,cℓ,dℓ)はK上の表示であり、hの各実根はそのいずれかによって表される。
証明.βは零でないh∈K[x]の根であるからK上代数的であり、§E8.2 定理 3.1により[K(β):K]は有限であるので、§E8.2 命題 4.1によりK(β)/Kは代数拡大である。命題 6.1 (1)によりK/Qは代数拡大であるから、§E8.2 定理 5.1をQ⊆K⊆K(β)に適用して、βはQ上代数的である。後半は定理 6.4 (4)による。▨
例 6.7.K:=Q(2)とし、例 5.4の表示(x2−2,1,2)で2を与える。h:=x2−2∈K[x]と置くとh′=2xであり、hとh′のモニック最大公約元は2xを割り切るので1またはxであって、h(0)=−2=0から1である。したがってhは平方自由である。命題 1.3 (3)により1<2<4であるからh(1)=1−2<0<4−2=h(2)であり、§E20.39 補題 1.4によりhは(1,2)に実根βをもつ。hの実根はx2=2の解であり±βに限られるので、(h,1,2)はβのK上の表示である。
βはKに属さない。実際、2=r/sを満たす互いに素な整数r,sがあればr2=2s2からrは偶数であり、r=2r′と書くとs2=2r′2からsも偶数となって、r,sが互いに素であることに反するので、2は有理数でない。次数2の可約多項式は一次因子をもつのでx2−2はQ上既約であり、§E8.2 定理 3.1によりKの元は有理数u,vによりu+v2と書くことができる。β=u+v2ならば2=β2=u2+2v2+2uv2であり、2が有理数でないことから2uv=1かつu2+2v2=0である。後者からu=v=0となり、2uv=1に反する。したがってβは命題 6.1の係数として扱われるKの元ではなく、K上の表示(h,1,2)によって与えられる。
7 根における符号と符号表
命題 7.1.Kを命題 6.1の体、(h,c,d)をβのK上の表示とし、g∈K[x]とする。
- g=0ならばg(β)=0である。g=0とし、hとgのモニック最大公約元をDとする。g(β)=0であることは、Dの次数が1以上であり、Dの Sturm 列から定めたVDについてVD(c)−VD(d)=1であることと同値である。
- g(β)=0とし、g=∑i=0rgixiと書く。各iについて、giが有理数として与えられているならば[ai,k,bi,k]:=[gi,gi]と置き、そうでなければgiの表示の精密化列を(ai,k,bi,k)k∈N≥0とする。(ck,dk)k∈N≥0をhによる(c,d)の縮小列とする。r+2変数の式をE(r):=ξr+2、0≤i<rについてE(i):=E(i+1)⋅ξ1+ξi+2で定めてEg:=E(0)と置き、X(k):=[ck,dk]×∏i=0r[ai,k,bi,k]と置く。0∈/Eg(X(k))を満たすkが存在し、そのような任意のkについてg(β)はinfEg(X(k))と同符号である。
証明.(1)を示す。零多項式の値は0であるから、g=0ならばg(β)=0である。g=0とする。命題 6.1 (2)によりD=uh+vgを満たすu,v∈K[x]が存在する。g(β)=0ならばD(β)=u(β)h(β)+v(β)g(β)=0であり、Dはモニックであるから次数が1以上である。Dの次数が1以上ならば、補題 1.2 (1)によりDは平方自由でその実根はhの実根であり、h(c)h(d)=0からD(c)D(d)=0であるので、命題 6.1 (3)によりVD(c)−VD(d)=ND((c,d))である。(c,d)に属するhの実根はβだけであるから、ND((c,d))=1であることはD(β)=0と同値である。D(β)=0ならば、Dはgを割り切るのでg(β)=0である。したがってg(β)=0であることはD(β)=0であることと同値であり、後者はdegD≥1かつVD(c)−VD(d)=1であることと同値である。
(2)を示す。y:=(β,g0,…,gr)と置くと、y1=β、yi+2=giであるからfE(r)(y)=grであり、0≤i<rについてfE(i)(y)=fE(i+1)(y)β+giである。iに関する下向きの帰納法によりfE(i)(y)=∑j=irgjβj−iであるから、fEg(y)=g(β)=0である。定理 6.4 (3)と命題 1.3 (2)により、y∈X(k)⊂X(0)であり、任意の実数ε>0に対してX(k)の各辺の幅がεより小さくなるkが存在する。Egは除算を含まないのでEg(X(0))は定まり、命題 3.3により主張が成り立つ。▨
例 7.2.例 6.7のK=Q(2)、h=x2−2とβのK上の表示(h,1,2)を用いる。g=hならばD=hであり、(1,2)に属するhの実根はβだけであるからVD(1)−VD(2)=1であり、命題 7.1 (1)によりg(β)=0である。g=1ならばD=1でありg(β)=0であって、Eg=ξ2に対してEg(X(0))=[1,1]であるからg(β)>0である。
g=x−1とする。h(1)=1−2=0であるから§E6.28 定理 4.2によりx−1はhを割り切らず、D=1であるのでg(β)=0である。hによる(1,2)の縮小列は、d=2としてσh(1,2)=3/2、σh(1,3/2)=5/4、σh(1,5/4)=9/8であり、2<25/16と81/64<2からβ∈(1,3/2)、β∈(1,5/4)、β∈(9/8,5/4)となるので、(c1,d1)=(1,3/2)、(c2,d2)=(1,5/4)、(c3,d3)=(9/8,5/4)である。係数g1=1、g0=−1は有理数として与えられ、Eg=ξ3⋅ξ1+ξ2についてEg(X(k))=[ck−1,dk−1]である。これはk=0,1,2で0を含み、k=3で[1/8,1/4]となるので、g(β)=β−1>0である。
定理 7.3.Kを命題 6.1の体とし、g1,…,gr∈K[x](r≥1)とする。gj=0を満たすjの集合をJ0、gjが零でない定数であるjの集合をJc、deggj≥1を満たすjの集合をJ+とする。J+=∅ならばt:=0と置く。J+=∅ならば、∏j∈J+gjに補題 1.2 (2)を適用して得る平方自由なHを取り、t∈N≥0と有理数cℓ<dℓ(1≤ℓ≤t)がH(cℓ)H(dℓ)=0を満たし、閉区間[cℓ,dℓ]は互いに交わらず、各(cℓ,dℓ)はHの実根をちょうど一つ含み、Hの実根はすべていずれかの(cℓ,dℓ)に属し、c1<⋯<ctであるとする(定理 6.4 (4)の出力を並べ替えたものはこれを満たす)。(cℓ,dℓ)に属するHの実根をβℓとする。t=0ならばRを唯一の区画とし、その標本点を0とする。t≥1ならば、開区間I0:=(−∞,β1)、Iℓ:=(βℓ,βℓ+1)(1≤ℓ<t)、It:=(βt,∞)と一点集合{βℓ}(1≤ℓ≤t)を区画とし、I0の標本点をc1、Iℓ(1≤ℓ≤t)の標本点をdℓとする。
- t≥1ならばβℓ<dℓ<cℓ+1<βℓ+1(1≤ℓ<t)であり、区画はRの分割をなし、各標本点はその区画に属する。⋃j∈J+{x∈R∣gj(x)=0}={β1,…,βt}である。すなわち、各j∈J+についてgjの実根はいずれかのβℓに等しく、各βℓはあるj∈J+についてgjの実根である。
- j∈J0ならばgjはR上で0であり、j∈JcならばgjはR上でその定数の符号をとる。j∈J+とし、Iを{βℓ}でない区画、sをその標本点とすると、任意のx∈Iに対してsgngj(x)=sgngj(s)である。
- 1≤ℓ≤tに対して(H,cℓ,dℓ)はβℓのK上の表示であり、各gj(βℓ)の符号は命題 7.1により定まる。
区画、標本点、各区画におけるg1,…,grの符号は、命題 6.1 (2)、定理 6.4、命題 7.1の計算の有限回で得られる。
証明.(1)を示す。ℓ<ℓ′ならばcℓ<cℓ′であり、[cℓ,dℓ]と[cℓ′,dℓ′]は交わらないのでdℓ<cℓ′である。したがってβℓ<dℓ<cℓ+1<βℓ+1であり、β1<⋯<βtであるから区画はRの分割をなし、c1<β1とβt<dtから各標本点はその区画に属する。補題 1.2 (2)により、実数xについてH(x)=0であることは∏j∈J+gj(x)=0であること、すなわちあるj∈J+でgj(x)=0であることと同値である。Hの実根の全体は{β1,…,βt}であるから、⋃j∈J+{x∈R∣gj(x)=0}={β1,…,βt}である。J+=∅ならばこの和集合は空でありt=0である。t=0ならば区画はRだけであり、標本点0はこれに属する。
(2)を示す。j∈J0∪Jcならば、gjは定数多項式であるからRの各点でその定数に等しい。j∈J+とし、Iを{βℓ}でない区画とする。(1)によりIはgjの実根を含まないので、§E20.39 補題 1.4を連続関数gjのIへの制限に適用すると、任意のx∈Iに対してgj(x)gj(s)>0である。
(3)は、Hが平方自由であることと(cℓ,dℓ)の仮定から従う。最後の主張の標本点での符号は、gj(s)∈Kと命題 1.3 (3)により得られる。▨
例 7.4.K=Q、g1=0、g2=−3、g3=(x−1)2、g4=x2−1とする。J0={1}、Jc={2}、J+={3,4}であり、g3g4=(x−1)3(x+1)の平方自由部分はH=(x−1)(x+1)=x2−1である。(c1,d1)=(−3/2,−1/2)、(c2,d2)=(1/2,3/2)は定理 7.3の条件を満たし、β1=−1、β2=1である。標本点−3/2、−1/2、3/2における(g3,g4)の値は(25/4,5/4)、(9/4,−3/4)、(1/4,5/4)である。Hとg4のモニック最大公約元はHであり、(−3/2,−1/2)と(1/2,3/2)はそれぞれHの実根を一つ含むので、g4(β1)=g4(β2)=0である。Hとg3のモニック最大公約元はx−1であり、その実根1は(1/2,3/2)に属し(−3/2,−1/2)に属さないので、g3(β2)=0、g3(β1)=0である。Eg3=(ξ4⋅ξ1+ξ3)⋅ξ1+ξ2のξ1,ξ2,ξ3,ξ4に[−3/2,−1/2]、[1,1]、[−2,−2]、[1,1]を入れると[9/4,25/4]を得るので、命題 7.1 (2)によりg3(β1)>0である。したがって、区画(−∞,−1)、{−1}、(−1,1)、{1}、(1,∞)の順に、g1の符号はすべて0、g2の符号はすべて負、g3の符号は正、正、正、0、正、g4の符号は正、0、負、0、正である。g3の重根1はg4との共有根でもあり、Hの単根β2として一つの区画を与える。
証明.§E20.39 補題 5.4によりp(a)p(b)<0である。αは(a,b)に属するpの唯一の実根でありp(a)p(b)=0であるから、pは[a,α)上と(α,b]上に零点をもたない。§E20.39 補題 1.4により、a<t<αならばp(t)p(a)>0であり、α<t<bならばp(t)p(b)>0であるから、p(t)p(a)⋅p(b)2=p(t)p(b)⋅p(a)p(b)<0よりp(t)p(a)<0である。
t=αならばa<t<bかつp(t)=0であり、逆にa<t<bかつp(t)=0ならばtは(a,b)に属するpの実根であるからt=αである。t<αならば、t≤aであるか、a<t<αであってp(t)p(a)>0である。逆にt≤aならばt<αである。a<t<bかつp(t)p(a)>0ならば、p(α)=0からt=αであり、α<t<bではp(t)p(a)<0であるから、t<αである。t>αはt=αでもt<αでもないことと、t≤αはt=αまたはt<αであることと、t≥αはt<αでないことと同値である。▨
8 演習
解答.
補題 4.2 (2)を示す。M⊤の(i,j)成分はmjiであるから、detM⊤=∑σsgn(σ)∏imσ(i)iである。Aは可換であるから、各項でk=σ(i)と置き換えると∏imσ(i)i=∏kmkσ−1(k)である。§D3.4 命題 3.3 (2)によりsgn(σ−1)=sgn(σ)であり、σ↦σ−1はSnの全単射であるから、detM⊤=detMである。
補題 4.2 (3)を示す。detMの各項は第p行の成分をちょうど一つ因子にもつので、detMは第p行についてA-線形である。p=qとし、τ:=(pq)と置く。第p行と第q行を入れ替えた行列をM′とすると、detM′=∑σsgn(σ)∏imτ(i)σ(i)=∑σsgn(σ)∏jmjστ(j)である。ρ:=στと置くと、σ↦ρはSnの全単射であり、§D3.4 命題 3.3 (2)と§D3.4 命題 3.3 (3)によりsgn(σ)=sgn(ρτ)=−sgn(ρ)であるから、detM′=−detMである。第p行と第q行が等しいとき、σとστは相異なり、∏imiστ(i)=∏imiσ(i)かつsgn(στ)=−sgn(σ)であるから、Snを対{σ,στ}に分けると各対の寄与の和は0であり、detM=0である。第p行に第q行のc倍を加えた行列の行列式は、第p行についての線形性により、detMと、第p行と第q行がともに第q行である行列の行列式のc倍との和であり、後者は0である。列についての主張は、補題 4.2 (2)により転置した行列の行についての主張に帰着する。
補題 4.2 (4)を示す。σ=idならば、∑iσ(i)=∑iiであるからσ(i)<iを満たすiが存在し、その項は因子miσ(i)=0をもつ。したがってdetMはσ=idの項m11⋯mnnに等しい。▨