1 Codazzi–Mainardi 方程式
定理 1.1 (Codazzi–Mainardi 方程式).M⊆R3を向きづけられた正則曲面、U⊆Mを開集合、(e1,e2,e3)をU上の適合標構(§E19.10 定義 1.2)とする。このときUの上で
dω13=ω12∧ω23,dω23=ω21∧ω13=−ω12∧ω13が成り立つ。
証明.X,YをU上の接ベクトル場とする。§E19.10 命題 2.2 (4)と§E19.10 命題 2.2 (3)により
DXe1=ω12(X)e2+ω13(X)e3,DXe2=−ω12(X)e1+ω23(X)e3,DXe3=−ω13(X)e1−ω23(X)e2である。
第一の式を示す。(e1,e2,e3)は各点で正規直交基底であるから
⟨DYe1,DXe3⟩=⟨ ω12(Y)e2+ω13(Y)e3, −ω13(X)e1−ω23(X)e2 ⟩=−ω12(Y)ω23(X)である。XとYを入れ替えると⟨DXe1,DYe3⟩=−ω12(X)ω23(Y)である。§E19.10 補題 5.2を(i,j)=(1,3)に適用すると
dω13(X,Y)=−ω12(Y)ω23(X)+ω12(X)ω23(Y)=(ω12∧ω23)(X,Y)を得る。
第二の式を示す。同様に
⟨DYe2,DXe3⟩=⟨ −ω12(Y)e1+ω23(Y)e3, −ω13(X)e1−ω23(X)e2 ⟩=ω12(Y)ω13(X)であり、XとYを入れ替えると⟨DXe2,DYe3⟩=ω12(X)ω13(Y)である。§E19.10 補題 5.2を(i,j)=(2,3)に適用すると
dω23(X,Y)=ω12(Y)ω13(X)−ω12(X)ω13(Y)=−(ω12∧ω13)(X,Y)を得る。ω21=−ω12であるから、右辺はω21∧ω13に等しい。▨
2 適合条件
ここからは、曲面が与えられていない状態から出発する。平面の開集合の上に二つの対称二次形式を与え、それらが曲面の二つの基本形式でありうるための条件を書き下す。
上の 3 で置いたω13、ω23は、はめ込みが与えられている場合の法線方向の接続形式(§E19.10 命題 5.3)と同じ形をしている。実際、次が成り立つ。
証明.(1)を示す。IIは各点で対称双線形形式であるからh12=II(e1,e2)=II(e2,e1)=h21である。
(2)を示す。(ω1,ω2)は(e1,e2)の双対余標構であるからωi(ej)=δijであり、各接ベクトルはX=ω1(X)e1+ω2(X)e2と書かれる。IIの双線形性と(1)により
II(X,e1)=ω1(X)h11+ω2(X)h21=h11ω1(X)+h12ω2(X)=ω13(X)であり、同様に
II(X,e2)=ω1(X)h12+ω2(X)h22=ω23(X)である。▨
定義 2.4.定義 2.2の記号のもとで、組(I,II)が適合条件 (compatibility conditions) を満たすとは、Vの上で次の二つがともに成り立つことをいう。
- Gauss 方程式。dω12=−ω13∧ω23である。
- Codazzi–Mainardi 方程式。dω13=ω12∧ω23かつdω23=ω21∧ω13である。
条件 (a)は、「Gauss 方程式と Gauss の驚異の定理」が証明した Gauss 方程式(§E19.11 定理 1.1)と第二構造方程式(§E19.10 定理 5.4)を合わせた形であり、条件 (b)は定理 1.1の形である。
命題 2.5.定義 2.2の記号のもとで、KIを抽象曲面(V,I)の Gauss 曲率(§E19.11 定理 2.1)とする。次の二つは同値である。
- dω12=−ω13∧ω23である。
- Vの上で
KI=EG−F2eg−f2
が成り立つ。
証明.§E19.11 定理 1.1の証明の最初の計算は、ω13とω23の定義 2.2における定義だけを用いており、曲面の存在を用いていない。同じ計算により
ω13∧ω23=(h11h22−h122)ω1∧ω2である。
h11h22−h122を成分で表す。ei=∑k=12aki∂kと書き、A=(aki)と置く。座標基底に関する成分行列を
[I]=(EFFG),[II]=(effg)と書くと、(e1,e2)がIについて正規直交であることはAT[I]Aが単位行列であることと同値である。行列式を取ると(detA)2(EG−F2)=1である。また(hij)=AT[II]Aであるから
h11h22−h122=(detA)2(eg−f2)=EG−F2eg−f2である。
一方、§E19.11 定理 2.1 (1)によりdω12=−KIω1∧ω2である。(ω1∧ω2)(e1,e2)=1であるからω1∧ω2は各点で消えない。したがって(1)は
KIω1∧ω2=(h11h22−h122)ω1∧ω2と同値であり、これは(2)と同値である。▨
次の命題は、はめ込みが与えられているときに、そこから作られるR3に値を持つ標構と、定義 2.2が形式の組だけから作った一次微分形式との対応を与える。適合条件の必要性と、基本定理の一意性の両方がこの対応を用いる。
証明.(1)を示す。a1,a2は§E19.10 命題 1.3の式であり、同命題の計算がそのまま成り立つので(a1,a2)は正規直交であり
a1×a2=EG−F2xu×xv=N=a3である(∥xu×xv∥=EG−F2は§E19.4 補題 1.5による)。§E19.2 補題 1.2 (3)により(a1,a2,a3)は正の向きの正規直交基底である。
(2)を示す。∂kxはa1,a2の張る平面に属するから∂kx=⟨∂kx,a1⟩a1+⟨∂kx,a2⟩a2である。直接に計算すると
⟨xu,a1⟩=EE=E,⟨xv,a1⟩=EF,⟨xu,a2⟩=EEG−F2EF−FE=0,⟨xv,a2⟩=EEG−F2EG−F2=EEG−F2である。これらは定義 2.2 (1)のω1,ω2の座標基底に対する値に一致する。
(3)を示す。主張はVの各点における等式であるから、各点の近傍で示せば足りる。q0∈Vを取る。§E19.3 補題 1.5により、q0の開近傍V1⊆Vを取ってx∣V1を単射かつ像への同相にすることができる。したがってx∣V1は正則パラメータ表示であり(§E19.3 定義 1.3)、§E19.3 定理 1.6によりM1=x(V1)は正則曲面である。M1にNが与える向きを入れ、Φ=x∣V1:V1→M1と書く。Φは微分同相である(§E19.3 命題 1.7)。
M1の上で§E19.10 命題 1.3の適合標構(eˉ1,eˉ2,eˉ3)を取る。定義からeˉi∘Φ=aiである。その余標構と接続形式をωˉ1,ωˉ2,ωˉijと書く。
まずωi=Φ∗ωˉi(i=1,2)である。実際、dΦ(∂k)=∂kxであり、ωˉi(X)=⟨X,eˉi⟩(§E19.10 定義 1.2)であるから、2 の証明で計算した内積により
(Φ∗ωˉi)(∂k)=ωˉi(∂kx)=⟨∂kx, ai⟩=ωi(∂k)である。
次に、i,j∈{1,2,3}について
(Φ∗ωˉij)(∂k)=ωˉij(dΦ(∂k))=⟨DdΦ(∂k)eˉi, eˉj⟩=⟨∂k(eˉi∘Φ), eˉj∘Φ⟩=⟨∂kai, aj⟩である。ここで第三の等号は、方向微分の定義(§E19.7 定義 1.3)と連鎖律による。すなわち、曲線t↦Φ(q+tek)を用いるとDdΦ(∂k)eˉi=∂k(eˉi∘Φ)である。
最後に、Φ∗ωˉijが定義 2.2のωijに一致することを見る。(i,j)=(1,3),(2,3)については、§E19.10 命題 5.3によりωˉi3(X)=II(X,eˉi)であり、定義 2.1によりIIの成分は(e,f,g)であるからhˉij=hijであり、Φ∗ωˉi3=hi1ω1+hi2ω2=ωi3である。(i,j)=(1,2)については、引き戻しが外微分および外積と可換であること(「多様体入門」の§E17.11 命題 3.1と§E17.10 定理 5.3)と§E19.10 定理 3.1により
dω1=Φ∗dωˉ1=(Φ∗ωˉ12)∧ω2,dω2=−(Φ∗ωˉ12)∧ω1が成り立つので、§E19.10 定理 3.2によりΦ∗ωˉ12=ω12である。残る添字は交代性ωˉji=−ωˉijとωji=−ωijから従う。
以上によりV1の上で⟨∂kai,aj⟩=ωij(∂k)が成り立つ。q0は任意であったからVの全体で成り立つ。最後の等式は、(a1,a2,a3)が各点で正規直交基底であることから
∂kai=j=1∑3⟨∂kai,aj⟩ajと書かれることによる。▨
命題 2.7.V⊆R2を開集合、x:V→R3をC∞のはめ込みとし、(E,F,G)と(e,f,g)を定義 2.1の成分とする。このとき組(I,II)は適合条件(定義 2.4)を満たす。
証明. 適合条件はVの各点における微分形式の等式であるから、各点の近傍で確かめれば足りる。命題 2.6 (3)の証明で取ったV1、M1、Φをそのまま用いる。同証明により、V1の上でωij=Φ∗ωˉijが成り立つ。
M1の上では、§E19.10 定理 5.4によりdωˉ12=−ωˉ13∧ωˉ23が、定理 1.1によりdωˉ13=ωˉ12∧ωˉ23とdωˉ23=ωˉ21∧ωˉ13が成り立つ。引き戻しは外微分および外積と可換であるから、三つの等式をΦで引き戻すと、V1の上の等式として適合条件が得られる。▨
3 単連結な領域における全微分方程式系
曲面を復元する手続きは、標構と位置ベクトルを未知数とする一階の全微分方程式系を解くことである。「多様体入門」の§E17.13 定理 5.3は、可積分条件が満たされるとき各点の近傍で解が存在することを与える。本節は、領域が単連結であればその局所解が領域全体へ広がることを証明する。
以下、mを正の整数とし、開集合V⊆Rnの上のm次正方行列に値を持つC∞一次微分形式A(§E17.13 定義 5.1)と、C∞写像Y:V→Rmについての方程式
dY=AY
を考える。座標表示A=∑i=1nAidxi(§E17.13 命題 5.2)を用いると、この方程式は∂Y/∂xi=AiY(i=1,…,n)と同値である。
補題 3.1.V⊆Rnを連結開集合、Aを上のとおりとする。C∞写像Y1,Y2:V→RmがともにdY=AYを満たし、ある一点p0∈VでY1(p0)=Y2(p0)が成り立つならば、Vの全体でY1=Y2である。
証明.Z=Y1−Y2と置くとZはC∞でありdZ=AZ、Z(p0)=0を満たす。
S={p∈V:Z(p)=0}と置く。Zは連続であるからSはVの閉集合であり、p0∈Sであるから空でない。
Sが開であることを示す。q∈Sを取り、B={p:∥p−q∥<r}⊆Vを開球とする。y∈Bを取り、c(t)=q+t(y−q)と置く。y=qのとき、∣t∣<r/∥y−q∥ならばc(t)∈Bであり、r/∥y−q∥>1であるから、開区間J=(−1, r/∥y−q∥)は[0,1]を含みc(J)⊆Bを満たす(y=qのときはJ=Rと取る)。W(t)=Z(c(t))と置くと、連鎖律により
W′(t)=dZc(t)(y−q)=Ac(t)(y−q)Z(c(t))=Ac(t)(y−q)W(t)である。t↦Ac(t)(y−q)はJ上の連続な行列値関数であるから、「常微分方程式」の§E10.7 系 1.2により、初期値W(0)=Z(q)=0を満たす解はJの全体でただ一つである。恒等的に0である写像はこの初期値問題の解であるからW≡0であり、とくにZ(y)=W(1)=0である。y∈Bは任意であったからB⊆Sである。
SはVの空でない開かつ閉な部分集合であり、Vは連結であるからS=Vである。▨
補題 3.2.V⊆Rnを開集合、Aを上のとおりとし、Vの上でdA−A∧A=0が成り立つとする。このとき各q∈Vに対して、qを中心とする開球B⊆Vであって次を満たすものが存在する。
すべてのy∈Bとすべてのη∈Rmに対して、dY=AYとY(y)=ηを満たすC∞写像Y:B→Rmがちょうど一つ存在する。
この性質を満たす開球を、以下では良い球という。良い球に含まれる開球は、ふたたび良い球である。
証明.§E17.13 定理 5.3を適用すると、qの開近傍W⊆VとC∞写像Y:W→Mm(R)であってdY=AYとY(q)=I(単位行列)を満たすものが存在する。B⊆Wをqを中心とする開球とする。
η∈Rmに対してY=Yηと置くと、dY=(dY)η=AYη=AYでありY(q)=ηである。すなわち、qにおける値を任意に指定した解がBの上に存在する。
Bの上の解の全体をSol(B)と書くと、これは実線形空間である。Bは連結であるから、補題 3.1により評価写像
evq:Sol(B)→Rm,Y↦Y(q)は単射であり、前段により全射である。したがってSol(B)の次元はmである。y∈Bを取ると、同じ理由でevyは単射な線形写像であり、m次元空間からm次元空間への単射であるから全単射である。すなわち、yにおける値を任意に指定した解がBの上にちょうど一つ存在する。
最後の主張を示す。B′⊆Bを開球とし、y∈B′、η∈Rmとする。Bの上の解をB′へ制限すれば存在が従い、B′は連結であるから補題 3.1により一意性が従う。▨
定理 3.3.V⊆Rnを単連結な開集合(「位相幾何入門」の§E18.4 定義 3.4)とし、AをV上のm次正方行列に値を持つC∞一次微分形式であってdA−A∧A=0を満たすものとする。p0∈Vとη0∈Rmを取る。このとき
dY=AY,Y(p0)=η0を満たすC∞写像Y:V→Rmがちょうど一つ存在する。
証明の方針を述べる。§E17.13 定理 5.3が与えるのは各点の近傍における解であり、それだけでは領域全体の解は得られない。局所解を貼り合わせようとすると、貼り合わせが道の取り方に依存するかどうかという問題が生じる。この問題は被覆空間の言葉で扱うのが最も短い。すなわち、集合V×Rmに、局所解のグラフを基本開集合とする位相を入れると、第一成分への射影が被覆写像になる。単連結性は、恒等写像がこの被覆へ持ち上がることを保証し、その持ち上げが求める解のグラフを与える。
証明. 一意性を示す。単連結性の定義(§E18.4 定義 3.4)は弧状連結性を含み、弧状連結な空間は連結である。したがって補題 3.1が一意性を与える。
良い球が位相の基底をなすことを確かめる。補題 3.2により、Vの各点は良い球の中心である。また、良い球に含まれる開球は良い球である。Vの開集合Oとq∈Oに対して、qを中心とする良い球Bを取り、B∩Oに含まれるq中心の開球を取れば、それは良い球であってOに含まれる。したがって良い球の全体はVの位相の基底である。
被覆空間を作る。集合としてE=V×Rmと置く。良い球BとBの上の解Yに対して
G(B,Y)={(y,Y(y)) : y∈B}⊆Eと置く。このような集合の全体がEの位相の基底の条件を満たすことを示す。第一に、(q,η)∈Eに対し、qを中心とする良い球BとY(q)=ηを満たすB上の解Yを取れば(q,η)∈G(B,Y)である。第二に、(q,η)∈G(B,Y)∩G(B′,Y′)とするとq∈B∩B′かつY(q)=η=Y′(q)である。qを中心としてB∩B′に含まれる良い球B′′を取ると、B′′は連結でありYとY′の制限はともにB′′上の解であってqで一致するから、補題 3.1によりB′′の上で一致する。したがって
(q,η)∈G(B′′,Y∣B′′)⊆G(B,Y)∩G(B′,Y′)である。よって基底の条件が満たされる。この基底が生成する位相をEに入れる。
P:E→Vを第一成分への射影とする。Pは全射である。Pが連続であることを示す。O⊆Vを開集合、(q,η)∈P−1(O)とすると、qを中心としてOに含まれる良い球Bと、Y(q)=ηを満たすB上の解Yを取ることができる。G(B,Y)⊆P−1(O)かつ(q,η)∈G(B,Y)であるからP−1(O)は開である。
良い球が均等被覆近傍であることを示す。Bを良い球とする。y∈Bとη∈Rmに対してY(y)=ηを満たすB上の解Yがちょうど一つ存在するから
P−1(B)=Y∈Sol(B)⋃G(B,Y)である。二つの相異なる解Y=Y′に対してG(B,Y)∩G(B,Y′)=∅である。実際、共通の点があればYとY′は一点で一致し、Bは連結であるから補題 3.1によりY=Y′となる。各G(B,Y)は基底の元であるから開である。PのG(B,Y)への制限はBへの全単射であり、連続である。さらに開写像である。実際、G(B,Y)に含まれる基底の元G(B′′,Y′′)の像はB′′であって開である。したがってP∣G(B,Y)は同相写像である。以上によりPは被覆写像である(§E18.5 定義 1.1)。
持ち上げを取る。VはRnの開集合であるから局所弧状連結である(§E18.5 定義 4.1。各点は弧状連結な開球からなる近傍系を持つ)。また単連結であるから連結であり、π1(V,p0)は自明群である。e0=(p0,η0)∈Eと置き、恒等写像id:(V,p0)→(V,p0)に「位相幾何入門」の§E18.5 定理 4.2を適用する。π1(V,p0)が自明であるから像の包含条件は自動的に満たされ、連続写像s:V→EであってP∘s=idとs(p0)=e0を満たすものが存在する。
持ち上げが解を与えることを示す。P∘s=idであるから、s(y)=(y,Y(y))の形に書いて写像Y:V→Rmを定めることができる。q∈Vを取り、qを中心とする良い球Bと、Yq(q)=Y(q)を満たすB上の解Yqを取る。s(q)∈G(B,Yq)でありG(B,Yq)は開であるから、O=s−1(G(B,Yq))はqを含むVの開集合である。y∈Oに対してs(y)∈G(B,Yq)でありP(s(y))=yであるからs(y)=(y,Yq(y))、すなわちY(y)=Yq(y)である。したがってYはOの上でC∞でありdY=AYを満たす。qは任意であったから、YはVの上でC∞でありdY=AYを満たす。Y(p0)=η0である。▨
4 曲面論の基本定理
定理 4.1 (曲面論の基本定理).V⊆R2を単連結な開集合とし、V上のC∞関数の組(E,F,G)と(e,f,g)が各点でE>0、EG−F2>0を満たすとする。I、IIと付随する形式を定義 2.2のとおりとする。
- 存在。組(I,II)が適合条件(定義 2.4)を満たすならば、C∞のはめ込みx:V→R3であって、定義 2.1の意味で第一基本形式の成分が(E,F,G)、第二基本形式の成分が(e,f,g)であるものが存在する。
- 一意性。x,x~:V→R3をともにC∞のはめ込みとし、定義 2.1の二組の成分がいずれも一致するとする。このとき、detR=1を満たす直交行列Rとb∈R3が存在して、Vの全体で
x~=Rx+b
が成り立つ。すなわちxは、R3の向きを保つ合同変換を除いて一意である。
- 適合条件は、そのようなはめ込みが存在するための必要条件でもある(命題 2.7)。
証明の方針を述べる。求めるxが存在したとすると、命題 2.6により、付随する標構(a1,a2,a3)と位置ベクトルxは、接続形式を係数とする一階の全微分方程式系
dai=j=1∑3ωijaj,dx=ω1a1+ω2a2
を満たす。逆に、この系を未知数(a1,a2,a3,x)について解けば曲面が得られる。二つの式をまとめると、4次正方行列に値を持つ一次微分形式を係数とする線形な全微分方程式系になる。その可積分条件dA−A∧A=0を成分ごとに書き下すと、第一構造方程式、第二基本形式の対称性、Gauss 方程式および Codazzi–Mainardi 方程式が現れる。前二者は形式の作り方から自動的に成り立ち、後二者が適合条件である。単連結性により定理 3.3がV全体の解を与える。標構が正規直交であり続けることは、(ωij)が交代行列であることと解の一意性から従い、そこからxの二つの基本形式が所与の形式に一致することが計算で確かめられる。一意性は、解に右から定数行列を掛けたものがふたたび解であることと、解の一意性による。
証明. 係数行列を作る。定義 2.2のω1,ω2,ωijを用いて、V上の4次正方行列に値を持つC∞一次微分形式Aを
A=0ω21ω31ω1ω120ω32ω2ω13ω23000000と定める。左上の3次小行列をΩ=(ωij)i,j≤3と書くと、Ωは交代行列である。
可積分条件を成分で書く。(A∧A)αβ=∑γ=14Aαγ∧Aγβである(§E17.13 定義 5.1)。Aの第4列は0であるから、β=4の成分はすべて0であり、dAα4=0と合わせて条件は自動的に成り立つ。
α≤3かつβ≤3のときはAα4=0により
(A∧A)αβ=γ=1∑3ωαγ∧ωγβである。α=βのときはωαγ∧ωγα=−ωαγ∧ωαγ=0でありdωαα=0であるから条件は成り立つ。α=βのときは、Ωが交代行列であることから
γ=1∑3ωβγ∧ωγα=γ=1∑3(−ωγβ)∧(−ωαγ)=−γ=1∑3ωαγ∧ωγβでありdωβα=−dωαβであるから、(α,β)の条件と(β,α)の条件は同値である。したがって(1,2)、(1,3)、(2,3)を調べれば足りる。それぞれ
dω12=ω13∧ω32=−ω13∧ω23,dω13=ω12∧ω23,dω23=ω21∧ω13であり、これらはちょうど適合条件(定義 2.4)である。
α=4かつβ≤3のときは、A41=ω1、A42=ω2、A43=A44=0であるから
(A∧A)4β=ω1∧ω1β+ω2∧ω2βである。β=1ではω2∧ω21=−ω2∧ω12=ω12∧ω2であるから、条件はdω1=ω12∧ω2である。β=2ではω1∧ω12=−ω12∧ω1であるから、条件はdω2=−ω12∧ω1である。この二つはω12の定義(定義 2.2 (2))そのものである。β=3ではdA43=0であり
ω1∧ω13+ω2∧ω23=ω1∧(h11ω1+h12ω2)+ω2∧(h12ω1+h22ω2)=h12ω1∧ω2+h12ω2∧ω1=0であるから、条件はh12=h21、すなわちIIが対称であることによって自動的に成り立つ。
以上により、適合条件が成り立つこととdA−A∧A=0が成り立つことは同値である。
(1)を示す。適合条件を仮定する。p0∈Vを取る。定理 3.3を、初期値としてR4の標準基底の四つのベクトルに順に適用し、得られた四つの解を列に並べてC∞写像Y:V→M4(R)を作る。列ごとにdY=AYが成り立ち、Y(p0)は4次単位行列である。
Yの第4列をwと書くと、wはdw=Awとw(p0)=(0,0,0,1)Tを満たす。定数写像w0≡(0,0,0,1)Tは、Aの第4列が0であることから同じ方程式と同じ初期値を満たすので、補題 3.1によりw≡w0である。
i∈{1,2,3}に対してai=(Yi1,Yi2,Yi3)∈R3、x=(Y41,Y42,Y43)∈R3と置く。dY=AYを成分で書くと、k≤3について
dYik=j=1∑3ωijYjk (i≤3),dY4k=ω1Y1k+ω2Y2kである(Ai4=0による)。すなわち
dai=j=1∑3ωijaj (i≤3),dx=ω1a1+ω2a2である。
標構が正規直交であることを示す。Pを、a1,a2,a3を行に並べた3次正方行列とすると、上の式はdP=ΩPを意味する。S=PPTと置くと、積の微分法により
dS=(dP)PT+P(dP)T=ΩS+SΩT=ΩS−SΩである。右辺はSの9個の成分について線形であり、係数は一次微分形式であるから、SをR9に値を持つ写像とみると、この式はdS=BSの形の方程式である(Bは9次正方行列に値を持つC∞一次微分形式)。定数写像S0≡I(3次単位行列)はΩI−IΩ=0を満たすので同じ方程式の解であり、S(p0)=I=S0(p0)である。Vは連結であるから補題 3.1によりS≡I、すなわち(a1,a2,a3)は各点でR3の正規直交基底である。
さらにdetPは連続で値が{1,−1}に含まれ、detP(p0)=1でありVは連結であるからdetP≡1である。§E19.2 補題 1.2 (3)によりa3=a1×a2である。
基本形式を確かめる。dx=ω1a1+ω2a2を座標基底に適用すると、定義 2.2 (1)により
xu=Ea1,xv=EFa1+EEG−F2a2である。(a1,a2)は正規直交であるから
⟨xu,xu⟩=E,⟨xu,xv⟩=F,⟨xv,xv⟩=EF2+EEG−F2=Gである。また§E19.2 補題 1.2 (2)により
xu×xv=E⋅EEG−F2(a1×a2)=EG−F2 a3であり、これは消えない。したがってxuとxvは一次独立であり、xははめ込みである。∥xu×xv∥=EG−F2であるから、定義 2.1の単位法線はN=a3である。
第二基本形式の成分を計算する。∂jx=∑a=12ωa(∂j)aaであるから
∂i∂jx=a=1∑2(∂i(ωa(∂j))aa+ωa(∂j)∂iaa)である。⟨a3,aa⟩=0(a≤2)であり、∂iaa=∑b=13ωab(∂i)abから⟨a3,∂iaa⟩=ωa3(∂i)であるから
⟨N,∂i∂jx⟩=a=1∑2ωa(∂j)ωa3(∂i)=a,b=1∑2habωb(∂i)ωa(∂j)である。ここで定義 2.2 (3)のωa3=∑bhabωbを用いた。一方、∂i=∑b=12ωb(∂i)ebであるから
II(∂i,∂j)=a,b=1∑2ωb(∂i)ωa(∂j)II(eb,ea)=a,b=1∑2hbaωb(∂i)ωa(∂j)である。hab=hbaであるから二つの式は一致し、⟨N,∂i∂jx⟩=II(∂i,∂j)である。(i,j)=(1,1),(1,2),(2,2)と取ると、第二基本形式の成分がそれぞれe,f,gであることが従う。
(2)を示す。xとx~に対して命題 2.6の標構をそれぞれ(a1,a2,a3)、(a~1,a~2,a~3)と書く。二組の成分が一致するので、定義 2.2が作るω1,ω2,ωijは両者で共通であり、上で作ったAも共通である。
Yを、a1,a2,a3を第1行から第3行の最初の三成分に置き、xを第4行の最初の三成分に置き、第4列を(0,0,0,1)Tとした4次正方行列とする。命題 2.6 (2)と命題 2.6 (3)によりdY=AYが成り立つ。x~から同じ手続きで作るY~についてもdY~=AY~が成り立つ。
Y(p0)は
Y(p0)=(P0x(p0)T01)の形であり、P0は行に正規直交基底を並べた行列であるから直交行列であり、命題 2.6 (1)によりdetP0=1である。とくにY(p0)は可逆である。C=Y(p0)−1Y~(p0)と置くと、YCはd(YC)=(dY)C=AYCを満たすので同じ方程式の解であり、p0でY~(p0)に一致する。Vは連結であるから、補題 3.1を各列に適用してY~=YCを得る。
Cの形を調べる。
Y(p0)−1=(P0T−x(p0)TP0T01),C=(P0TP~0x~(p0)T−x(p0)TP0TP~001)である。RT=P0TP~0、bT=x~(p0)T−x(p0)TRTと置く。P0とP~0はともに行列式が1の直交行列であるから、RTとその転置Rも行列式が1の直交行列である。
Y~=YCの第4行の最初の三成分を読むと
x~T=xTRT+bT,すなわちx~=Rx+bである。▨
例 4.3 (球面の二つの基本形式は適合条件を満たす).V=(0,π)×(0,2π)とし、r>0に対して
E=r2,F=0,G=r2sin2u,e=−r,f=0,g=−rsin2uと置く。E>0かつEG−F2=r4sin2u>0である。これは§E19.4 例 6.2のパラメータ表示
x(u,v)=r(sinucosv, sinusinv, cosu)に対する定義 2.1の成分である。実際、この表示のxu×xvが定める単位法線はN=x/r(外向き)であり、xuu=−x、xvv=−rsinu(cosv,sinv,0)であるから
e=⟨N,xuu⟩=−r∥x∥2=−r,g=⟨N,xvv⟩=−rsin2uであり、xuv=rcosu(−sinv,cosv,0)との内積は0であるからf=0である。
Gauss 方程式。命題 2.5により、条件は
KI=EG−F2eg−f2=r4sin2ur2sin2u=r21である。§E19.11 例 4.2により(V,I)の Gauss 曲率は1/r2であるから、Gauss 方程式が成り立つ。
付随する形式を書き下す。定義 2.2により
e1=r∂1,e2=rsinu∂2,ω1=rdu,ω2=rsinudvである。dω1=0、dω2=rcosudu∧dvであるから、ω12=Pdu+Qdvと置くと
0=dω1=ω12∧ω2=Prsinudu∧dv,rcosudu∧dv=dω2=−ω12∧ω1=−Qrdv∧du=Qrdu∧dvよりP=0、Q=cosu、すなわちω12=cosudvである。これは§E19.10 例 7.4のω12=f′dθにf(t)=rsin(t/r)、t=ru、θ=vを代入したものと一致する。h11=e/E=−1/r、h12=0、h22=g/G=−1/rであるから
ω13=−r1ω1=−du,ω23=−r1ω2=−sinudvである。
Gauss 方程式を形式で確かめる。dω12=−sinudu∧dvであり
−ω13∧ω23=−(−du)∧(−sinudv)=−sinudu∧dvであるから一致する。
Codazzi–Mainardi 方程式を確かめる。dω13=d(−du)=0であり、ω12∧ω23=(cosudv)∧(−sinudv)=0であるから第一の式が成り立つ。dω23=−cosudu∧dvであり
ω21∧ω13=(−cosudv)∧(−du)=cosudv∧du=−cosudu∧dvであるから第二の式も成り立つ。
符号の約束を崩してはならないこと。定義 2.1は単位法線をxu×xvの向きに固定している。本単元は有界領域を囲む閉曲面に内向きの単位法線を取る(§E19.3 定義 4.2)ので、球面の第二基本形式の成分を内向きの法線で書けば(e,f,g)=(r,0,rsin2u)になる。その場合はω13,ω23の符号が反転するが、ω13∧ω23は不変であるから Gauss 方程式は保たれ、Codazzi–Mainardi 方程式は両辺の符号がともに反転するので保たれる。一方、定義 2.2が定めるω1,ω2の順序を入れ替えるとω12の符号が変わる(§E19.10 定理 4.1)ので、ω12だけを別の順序の標構から借りてくると適合条件の両辺が食い違う。二つの約束はどちらも崩してはならない。
5 演習
問題 5.1.
- 定理 1.1の証明を、§E19.10 補題 5.2を用いずに、ω13の外微分の不変表示から直接書き下す形で再現する。どの段階で§E19.10 補題 5.1が必要になるかを特定する。
- 命題 2.6 (3)の証明では、はめ込みを局所的に正則パラメータ表示へ直してから引き戻しを取った。xが単射でない場合に、この局所化を省いてM1=x(V)を正則曲面として扱おうとすると、どこが成り立たなくなるかを述べる。
- 命題 2.5の証明のうち、(detA)2(EG−F2)=1を導いた部分を再現する。(e1,e2)が正規直交でない標構であるときに、この関係がどう変わるかを述べる。
- 補題 3.1の証明では、線分に沿う制限によって常微分方程式へ帰着させた。定義域が球でなく一般の開集合であるときに、同じ議論を各点の近傍でしか行うことができない理由を述べる。次に、連結性を用いた箇所を特定する。
- 補題 3.2の証明では、解の空間の次元を数えることによって、初期値を与える点をqから任意のy∈Bへ移した。この次元の議論を用いずにY(y)が可逆であることを直接示す方針を考え、そのために何を追加で証明する必要があるかを述べる。
- 定理 3.3の証明で、G(B,Y)の全体が基底の条件を満たすことを示した部分を再現する。良い球に含まれる開球が良い球であるという事実を用いた箇所を特定する。
- 定理 3.3の証明で、Vが局所弧状連結であることを用いた。§E18.5 定理 4.2からこの仮定を外すことができない理由を、同記事の反例に即して述べる。
- 定理 4.1の可積分条件の計算を(α,β)=(2,3)の成分について最初から書き下し、Codazzi–Mainardi 方程式の第二の式が現れることを確かめる。
- 定理 4.1の証明で、標構の正規直交性をS=PPTの満たす方程式から導いた。Ωが交代行列でなければS≡Iが解でなくなることを確かめ、交代性がどこから来ているかを定義 2.2に即して述べる。
- 定理 4.1の一意性の証明では、解に右から定数行列を掛けた。左から掛ける操作では同じ議論が通らない理由を、d(CY)を計算して述べる。
- 注意 3.4の反例について、dA=0を計算で確かめる。次に、このAをV={(u,v):u>0}へ制限すると大域解が存在することを、原始関数を書き下して確かめる。
6 境界と次
局所定理であること。定理 4.1は、単連結な平面領域の上の局所的な主張である。得られるのははめ込みであって、埋め込みでも、像が正則曲面であることでもない(注意 4.2)。単連結性を落とすと、注意 3.4のとおり大域解が存在するとは限らない。局所的に与えられた形式の組から大域的な曲面を作る問題は本単元では扱わない。
曲線論の基本定理との違い。§E19.2 定理 5.3では、曲率と捩率を開区間の上の関数として自由に与えることができた。曲面では、二つの基本形式を自由に与えることができず、適合条件という偏微分方程式系を満たす必要がある。違いの原因は、独立変数が二つになったことによって可積分条件が現れることである。曲線の場合は独立変数が一つであるから、行列に値を持つ一次微分形式に対する可積分条件は二次形式の消滅として自動的に成り立つ。
適合条件が非線形の方程式になること。適合条件は、二つの基本形式の成分についての一階の偏微分方程式系である。Gauss 曲率が負の定数であるという条件を課して漸近方向に沿う座標を選ぶと、この系が一つの未知関数についての非線形の偏微分方程式に帰着する。その場合は「負曲率曲面と sine–Gordon 方程式」が扱う。同記事では、本記事の定理 1.1が恒等的に満たされ、Gauss 方程式だけが残る。
接続の一般論へ広げないこと。定理 4.1の証明で現れた条件dA−A∧A=0は、行列に値を持つ一次微分形式から作られる二次形式が消えるという形をしている。この形の量を一般のベクトル束の上の接続の曲率として扱う枠組みは「ベクトル束と接続」が、一般次元の部分多様体に対する Gauss、Codazzi および Ricci の方程式は「Riemann 幾何 I」が扱う。
次の記事へ渡すもの。定理 1.1と定義 2.4は、負曲率曲面の解析で用いられる。定理 3.3は本単元の他の記事では用いないが、標構の微分方程式の可積分性という観点は、同じ「負曲率曲面と sine–Gordon 方程式」で零曲率表示として再び現れる。