1 標構と余標構
以下、断りのないかぎりM⊆R3を正則曲面(§E19.3 定義 1.1)とし、U⊆Mを開集合とする。R3の標準内積を⟨ , ⟩、ベクトル積を×(§E19.2 定義 1.1)、ノルムを∥ ∥と書く。第一基本形式をI(§E19.4 定義 1.1)、共変微分を∇(§E19.7 定義 2.1)、周囲の空間における方向微分をD(§E19.7 定義 1.3)と書く。
定義 1.2.U⊆Mを開集合とする。
- U上の接ベクトル場の組(e1,e2)(§E19.7 定義 1.2)がU上の正規直交接標構 (orthonormal tangent frame) であるとは、各点p∈UでIp(ei,ej)=δij(i,j∈{1,2})が成り立つことをいう。
- 正規直交接標構(e1,e2)に対し、U上の一次微分形式ω1,ω2を
ωi(X)=I(X,ei)(X∈TpM, p∈U)
で定め、(ω1,ω2)を(e1,e2)の余標構 (coframe) という。各点でωi(ej)=δijが成り立つので、(ω1,ω2)は(e1,e2)の双対基底である。すなわちX=ω1(X)e1+ω2(X)e2である。
- Mが向きづけられ(§E19.3 定義 4.2)、Nをその単位法線ベクトル場とする。U上の正規直交接標構(e1,e2)がe1×e2=Nを満たすとき、e3=Nと置いて組(e1,e2,e3)をU上の適合標構 (adapted frame) という。各点で(e1,e2,e3)はR3の正の向きの正規直交基底である。
命題 1.3.x:W→Mを正則パラメータ表示とし、U=x(W)と置く。第一基本形式の成分をE,F,G(§E19.4 定義 1.3)とする。
e1=Exu,e2=EEG−F2Exv−Fxuと定めると、(e1,e2)はU上の正規直交接標構であり、
e1×e2=EG−F2xu×xvが成り立つ。すなわち(e1,e2)は、xが定める単位法線(xu×xv)/∥xu×xv∥(§E19.3 定義 4.2)に関する適合標構を与える。さらに、余標構は
ω1=Edu+EFdv,ω2=EEG−F2dvであり、ω1,ω2はU上のC∞一次微分形式である。
証明.xははめ込みであるからxu=0でありE=∥xu∥2>0である。また§E19.4 補題 1.5によりEG−F2=∥xu×xv∥2>0である。したがって二つの式の分母はWの上で消えず、e1,e2はU上のC∞接ベクトル場である。
正規直交性を示す。⟨e1,e1⟩=E/E=1である。⟨Exv−Fxu,xu⟩=EF−FE=0であるから⟨e1,e2⟩=0である。また
∥Exv−Fxu∥2=E2G−2EF2+F2E=E(EG−F2)であるから⟨e2,e2⟩=E(EG−F2)/(E(EG−F2))=1である。
ベクトル積を計算する。ベクトル積は双線形でありxu×xu=0である(§E19.2 補題 1.2)から
e1×e2=E1⋅EEG−F2Exu×xv=EG−F2xu×xvである。§E19.4 補題 1.5により∥xu×xv∥=EG−F2であるから、右辺はxが定める単位法線に等しい。
余標構を計算する。ωiは各点で線形形式であり、座標基底に対する値は
ω1(xu)=⟨xu,e1⟩=EE=E,ω1(xv)=⟨xv,e1⟩=EF,ω2(xu)=EEG−F2⟨xu,Exv−Fxu⟩=EEG−F2EF−FE=0,ω2(xv)=EEG−F2EG−F2=EEG−F2である。したがってωiは主張の式で与えられる。係数はW上のC∞関数であるから、ω1,ω2はC∞一次微分形式である(「多様体入門」の§E17.10 命題 2.2)。▨
命題 1.4.命題 1.3の記号のもとで
ω1∧ω2=EG−F2 du∧dvが成り立つ。すなわちω1∧ω2は、§E19.4 定義 5.1の面積要素dA=EG−F2dudvを、xが定める向きに関する二次微分形式として表したものである。以後、適合標構に対してdA=ω1∧ω2と書く。
証明.du∧du=0でありdv∧dv=0である(§E17.10 系 3.6)から
ω1∧ω2=(Edu+EFdv)∧EEG−F2dv=E⋅EEG−F2 du∧dvである。▨
2 接続形式
証明.(1)を示す。X↦∇Xe1は各点で線形である(§E19.7 命題 2.2 (2))から、ω12は各点でTpM上の線形形式である。正則パラメータ表示x:W→Uを取ると、e2は接平面に属し∇は接平面への正射影であるから
ω12(xu)=⟨∂u∂(e1∘x), e2⟩,ω12(xv)=⟨∂v∂(e1∘x), e2⟩である(§E19.7 命題 1.4 (1))。e1∘xとe2∘xはC∞であるから、これらはW上のC∞関数である。したがってω12=ω12(xu)du+ω12(xv)dvはC∞一次微分形式である(§E17.10 命題 2.2)。
∇Xe1は接平面に属するから∇Xe1=I(∇Xe1,e1)e1+I(∇Xe1,e2)e2である。I(e1,e1)=1は定数関数であるから、§E19.7 命題 2.2 (4)により0=XI(e1,e1)=2I(∇Xe1,e1)であり、第一項は消える。よって∇Xe1=ω12(X)e2である。同様にI(∇Xe2,e2)=0であり、I(e1,e2)=0が定数関数であることから
0=XI(e1,e2)=I(∇Xe1,e2)+I(e1,∇Xe2)=ω12(X)+I(∇Xe2,e1)であるから∇Xe2=−ω12(X)e1である。
(2)を示す。ωijは各点でTpM上の線形形式である。実際、X↦DXeiは線形であり(§E19.7 命題 1.4 (2))、⟨ ⋅ ,ej(p)⟩は線形である。正則パラメータ表示x:W→Uを取ると、§E19.7 命題 1.4 (1)により
ωij(xu)=⟨∂u∂(ei∘x), ej⟩,ωij(xv)=⟨∂v∂(ei∘x), ej⟩であり、ei∘xはC∞であるから、これらはW上のC∞関数である。したがってωijはC∞一次微分形式である(§E17.10 命題 2.2)。
(3)を示す。Uの上で⟨ei,ej⟩=δijは定数関数であるから、§E19.7 命題 1.4 (3)により
0=X⟨ei,ej⟩=⟨DXei,ej⟩+⟨ei,DXej⟩=ωij(X)+ωji(X)である。i=jと置くと2ωii(X)=0を得る。
(4)を示す。各点pで(e1,e2,e3)はR3の正規直交基底であるから、w∈R3はw=∑j⟨w,ej⟩ejと書かれる。w=DXeiと取れば主張を得る。▨
3 第一構造方程式と接続形式の一意性
第一構造方程式は、余標構の外微分を接続形式によって表す。証明に用いるのは、外微分の不変表示と、共変微分が第一基本形式と両立し捩れを持たないこと(§E19.7 命題 2.2 (4)と§E19.7 命題 2.2 (5))だけである。周囲の空間R3は現れない。
定理 3.1 (第一構造方程式).(e1,e2)をU上の正規直交接標構、(ω1,ω2)をその余標構、ω12を接続形式(定義 2.1)とし、ω21=−ω12と置く。このときUの上で
dω1=ω12∧ω2,dω2=ω21∧ω1=ω1∧ω12が成り立つ。
証明. 主張の両辺は各点でTpM上の交代双線形形式である。正則パラメータ表示の像に含まれる開集合の上では、座標基底∂1,∂2が接ベクトル場であって各点でTpMの基底をなすから、U上の接ベクトル場X,Yに対して等式を示せば、(X,Y)=(∂1,∂2)と取ることで各点の等式が従う。以下X,YをU上の接ベクトル場とする。
第一の式を示す。ω1(Y)=I(Y,e1)であるから、§E19.7 命題 2.2 (4)により
X(ω1(Y))=I(∇XY,e1)+I(Y,∇Xe1)である。命題 2.2 (1)により∇Xe1=ω12(X)e2であり、I(Y,e2)=ω2(Y)であるから
X(ω1(Y))=I(∇XY,e1)+ω12(X)ω2(Y)となる。XとYを入れ替えると
Y(ω1(X))=I(∇YX,e1)+ω12(Y)ω2(X)である。また、§E19.7 命題 2.2 (5)により[X,Y]=∇XY−∇YXであるから
ω1([X,Y])=I(∇XY,e1)−I(∇YX,e1)である。§E17.11 定理 4.2の不変表示へ三つを代入すると、∇XYと∇YXを含む項が相殺して
dω1(X,Y)=ω12(X)ω2(Y)−ω12(Y)ω2(X)=(ω12∧ω2)(X,Y)を得る。
第二の式を示す。同じ計算をω2(Y)=I(Y,e2)について行う。∇Xe2=ω21(X)e1であるから
dω2(X,Y)=ω21(X)ω1(Y)−ω21(Y)ω1(X)=(ω21∧ω1)(X,Y)である。ω21=−ω12と、一次微分形式どうしの外積が反交換すること(§E17.10 系 3.6)によりω21∧ω1=ω1∧ω12である。▨
次の定理が本記事の要である。接続形式ω12の定義には、周囲の空間における微分D、または接平面への正射影∇が現れている。次の定理は、そのω12が第一構造方程式によって余標構だけから決定されることを述べる。したがってω12は、曲面がR3へどのように入っているかに依存しない。
証明の方針を述べる。存在はすでに得られているので、示すべきは一意性だけである。出発点は、二つの解の差β=η−η′を取ると、外積が一次微分形式について双線形であることからβ∧ω1=0とβ∧ω2=0の二つが同時に成り立つことである。中間目標は、この二つの等式からβそのものが零であると結論することであり、そのためにβを余標構で展開する。(ω1,ω2)は各点で余接空間の基底であるから、U上の関数a,bによってβ=aω1+bω2と書かれる。本質的な一手は、この展開を二つの等式へ代入したときに、ω1∧ω1=0とω2∧ω2=0によって片方の係数だけが残ることである。残った項はω1∧ω2の関数倍であり、(ω1∧ω2)(e1,e2)=1からこの二次微分形式は各点で消えないので、係数が零であると結論される。二つの等式からa=0とb=0が一つずつ得られる。片方の等式だけでは片方の係数しか消えないことは注意 3.3が述べる。
証明. 存在は定理 3.1が与える。実際、η=ω12と置くと第一の式が成り立ち、ω21∧ω1=−ω12∧ω1であるから第二の式も成り立つ。
一意性を示す。ηとη′がともに二つの式を満たすとし、β=η−η′と置く。外積は一次微分形式について双線形であるから
β∧ω2=0,β∧ω1=0である。(ω1,ω2)は各点でTpMの双対空間の基底であるから、U上の関数a,bによってβ=aω1+bω2と書かれる。ω2∧ω2=0であるから
0=β∧ω2=aω1∧ω2である。(ω1∧ω2)(e1,e2)=ω1(e1)ω2(e2)−ω1(e2)ω2(e1)=1であるからω1∧ω2は各点で消えず、a=0である。同様にω1∧ω1=0から
0=β∧ω1=bω2∧ω1=−bω1∧ω2でありb=0である。したがってβ=0、すなわちη=η′である。▨
証明.X∈TpMがdϕp(X)=0を満たすとすると、局所等長性からIp(X,X)=0であり、第一基本形式は正定値であるからX=0である。dimTpM=dimTϕ(p)Mˉ=2であるからdϕpは線形同型である。仮定を満たすUが各点のまわりに存在することは§E19.4 命題 7.2 (2)による。局所等長性から
I(ei,ej)=Iˉ(dϕ(ei),dϕ(ej))=Iˉ(eˉi,eˉj)=δijであるから(e1,e2)は正規直交接標構である。ϕの制限は微分同相であるから、eiはU上のC∞接ベクトル場である。
X∈TpMに対してdϕp(X)=∑jωˉj(dϕpX)eˉjであり、局所等長性から
ωi(X)=I(X,ei)=Iˉ(dϕpX,eˉi)=ωˉi(dϕpX)=(ϕ∗ωˉi)(X)である。よってωi=ϕ∗ωˉiである。
引き戻しは外積と可換であり(「多様体入門」の§E17.10 定理 5.3)、外微分とも可換である(同§E17.11 命題 3.1)。したがってη=ϕ∗ωˉ12と置くと
dω1=dϕ∗ωˉ1=ϕ∗dωˉ1=ϕ∗(ωˉ12∧ωˉ2)=η∧ω2であり、同様にdω2=−η∧ω1である。定理 3.2によりη=ω12である。▨
4 標構の回転
一つの開集合の上に正規直交接標構は一つとは限らない。次の定理は、二つの標構の接続形式がどれだけ異なるかを述べる。
定理 4.1.(e1,e2)をU上の正規直交接標構、(ω1,ω2)をその余標構、ω12をその接続形式とする。
- θ∈C∞(U)に対して
e~1=cosθe1+sinθe2,e~2=−sinθe1+cosθe2
と置くと、(e~1,e~2)はU上の正規直交接標構であり
ω~1=cosθω1+sinθω2,ω~2=−sinθω1+cosθω2,
ω~1∧ω~2=ω1∧ω2,ω~12=ω12+dθ
が成り立つ。
- (e~1,e~2)=(e1,−e2)と置くと(e~1,e~2)はU上の正規直交接標構であり
ω~1=ω1,ω~2=−ω2,ω~1∧ω~2=−ω1∧ω2,ω~12=−ω12
が成り立つ。
- (e~1,e~2)をU上の任意の正規直交接標構とする。各点p∈Uに対してpの連結な開近傍V⊆Uとθ∈C∞(V)が存在して、Vの上で(e~1,e~2)は 1 の形か、または 1 の形と 2 の合成の形に書かれる。
証明.(1)を示す。I(e~1,e~1)=cos2θ+sin2θ=1であり、I(e~1,e~2)=−cosθsinθ+sinθcosθ=0、I(e~2,e~2)=1である。余標構については
ω~1(X)=I(X,e~1)=cosθI(X,e1)+sinθI(X,e2)であり、ω~2についても同様である。外積は
ω~1∧ω~2=cos2θ ω1∧ω2−sin2θ ω2∧ω1=ω1∧ω2である。
接続形式を計算する。§E19.7 命題 2.2 (3)により
∇Xe~1=−sinθ(Xθ)e1+cosθ∇Xe1+cosθ(Xθ)e2+sinθ∇Xe2である。命題 2.2 (1)により∇Xe1=ω12(X)e2、∇Xe2=−ω12(X)e1であるから
∇Xe~1=(−sinθ(Xθ)−sinθω12(X))e1+(cosθ(Xθ)+cosθω12(X))e2である。e~2=−sinθe1+cosθe2との内積を取ると
ω~12(X)=I(∇Xe~1,e~2)=sin2θ((Xθ)+ω12(X))+cos2θ((Xθ)+ω12(X))=(Xθ)+ω12(X)である。Xθ=dθ(X)であるからω~12=ω12+dθを得る。
(2)を示す。正規直交性は明らかである。ω~2(X)=I(X,−e2)=−ω2(X)であり、ω~1∧ω~2=−ω1∧ω2である。∇Xe~1=∇Xe1=ω12(X)e2であるから
ω~12(X)=I(ω12(X)e2, −e2)=−ω12(X)である。
(3)を示す。a=I(e~1,e1)、b=I(e~1,e2)と置くとa,b∈C∞(U)であり、e~1=ae1+be2、a2+b2=I(e~1,e~1)=1である。e~2はe~1に直交する単位接ベクトル場であるから、各点でe~2=ε(−be1+ae2)(ε∈{1,−1})である。ε=I(e~2,−be1+ae2)は連続で値が二点集合に含まれるから局所的に定数である。
p∈Uを取り、a(p)=cosθ0、b(p)=sinθ0を満たすθ0∈Rを取る。
c=aa(p)+bb(p),s=ba(p)−ab(p)と置くとc,s∈C∞(U)、c2+s2=1、c(p)=1である。c>0かつεが定数となるpの連結な開近傍Vを取り、Vの上でθ=θ0+arctan(s/c)と定める。arctanはR上のC∞関数であるからθ∈C∞(V)であり、c=cos(θ−θ0)、s=sin(θ−θ0)が成り立つ。実際、c>0かつc2+s2=1であるからθ−θ0∈(−π/2,π/2)の範囲で正接の値がs/cである角は一つに定まり、それがarctan(s/c)である。したがって
a=ca(p)−sb(p)=cos(θ−θ0)cosθ0−sin(θ−θ0)sinθ0=cosθであり、同様にb=sinθである。ε=1ならば(e~1,e~2)は 1 の形であり、ε=−1ならば 1 の形に 2 を合成した形である。▨
5 第二構造方程式
ここからは単位法線を用いる。まず、周囲の空間における二階の方向微分が対称であることを確かめる。これはR3の平坦性を表す事実であり、以後の計算の出発点である。
補題 5.1.U⊆Mを開集合、Z:U→R3を滑らかな写像、X,YをU上の接ベクトル場とする。このときUの上で
DXDYZ−DYDXZ=D[X,Y]Zが成り立つ。
証明. 主張は局所的であるから、正則パラメータ表示x:W→Uを取り、X=∑iai∂i、Y=∑jbj∂jと書く(ai,bjはW上のC∞関数、∂1=xu、∂2=xv)。§E19.7 命題 1.4 (1)によりDYZ=∑jbj∂j(Z∘x)であるから、ふたたび同じ主張により
DXDYZ=i,j=1∑2ai(∂ibj)∂j(Z∘x)+i,j=1∑2aibj∂i∂j(Z∘x)である。XとYを入れ替えた式との差を取る。Z∘xはC∞であるから§E4.4 定理 2.1により∂i∂j(Z∘x)=∂j∂i(Z∘x)であり、二階偏導関数を含む項は相殺する。残るのは
k=1∑2(i=1∑2(ai∂ibk−bi∂iak))∂k(Z∘x)であり、括弧積の座標表示(「多様体入門」の§E17.7 命題 1.3)により、これはD[X,Y]Zに等しい。▨
証明.§E19.7 命題 1.4 (3)により
X(ωij(Y))=X⟨DYei,ej⟩=⟨DXDYei,ej⟩+⟨DYei,DXej⟩である。XとYを入れ替えると
Y(ωij(X))=⟨DYDXei,ej⟩+⟨DXei,DYej⟩である。またωij([X,Y])=⟨D[X,Y]ei,ej⟩である。§E17.11 定理 4.2の不変表示へ代入すると
dωij(X,Y)=⟨DXDYei−DYDXei−D[X,Y]ei, ej⟩+⟨DYei,DXej⟩−⟨DXei,DYej⟩となる。補題 5.1をZ=eiに適用すると第一項の内積の左側は0である。▨
証明.Uの上で⟨e1,e3⟩=0であるから、§E19.7 命題 1.4 (3)により
0=X⟨e1,e3⟩=⟨DXe1,e3⟩+⟨e1,DXe3⟩である。e3=Nであり、§E19.4 定義 2.2の微分の定義と§E19.7 定義 1.3は同じ値を与えるからDXe3=dN(X)=−S(X)(§E19.5 定義 1.4)である。したがって
ω13(X)=⟨DXe1,e3⟩=⟨e1,S(X)⟩=II(X,e1)である。ここで最後の等号は、内積の対称性と第二基本形式の定義II(X,Y)=⟨S(X),Y⟩(§E19.5 定義 3.1)による。ω23についても同様である。
成分表示を示す。ω13は一次微分形式であり、(ω1,ω2)は各点で双対空間の基底であるからω13=ω13(e1)ω1+ω13(e2)ω2である。ω13(ek)=II(ek,e1)=hk1であり、IIは対称である(§E19.5 定義 3.1)からhk1=h1kである。ω23についても同様である。
向きの反転については、§E19.5 命題 3.4によりIIの符号が変わることから従う。▨
定理 5.4 (第二構造方程式).Mを向きづけられた正則曲面、(e1,e2,e3)をU上の適合標構とする。このときUの上で
dω12=ω13∧ω32=−ω13∧ω23が成り立つ。
証明.X,YをU上の接ベクトル場とする。命題 2.2 (4)と命題 2.2 (3)により
DXe1=ω12(X)e2+ω13(X)e3,DXe2=−ω12(X)e1+ω23(X)e3である。(e1,e2,e3)は各点で正規直交基底であり、⟨e2,e1⟩=⟨e2,e3⟩=⟨e3,e1⟩=0、⟨e3,e3⟩=1であるから
⟨DYe1,DXe2⟩=⟨ ω12(Y)e2+ω13(Y)e3, −ω12(X)e1+ω23(X)e3 ⟩=ω13(Y)ω23(X)である。XとYを入れ替えると
⟨DXe1,DYe2⟩=ω13(X)ω23(Y)である。補題 5.2を(i,j)=(1,2)に適用すると
dω12(X,Y)=ω13(Y)ω23(X)−ω13(X)ω23(Y)=−(ω13∧ω23)(X,Y)を得る。ω32=−ω23であるから、これはω13∧ω32に等しい。▨
6 抽象曲面への移行
7 例
以下の例では、余標構と接続形式を第一構造方程式から独立に決定する。定理 3.2により、この方法で得られる形式は定義 2.1の接続形式に一致する。
例 7.1 (平面の直交座標と極座標).P={(x,y,0):x,y∈R}を平面とする。
直交座標。x(u,v)=(u,v,0)に対してE=G=1、F=0であるから、命題 1.3によりe1=(1,0,0)、e2=(0,1,0)、ω1=du、ω2=dvである。dω1=dω2=0であり、η=0が定理 3.2の二つの式を満たすからω12=0である。
極座標。y(r,φ)=(rcosφ, rsinφ, 0)(r>0、φ∈R)に対してE=1、F=0、G=r2であるからω1=dr、ω2=rdφである。dω1=0、dω2=dr∧dφである。ω12=adr+brdφと置くと
0=dω1=ω12∧ω2=ardr∧dφ,dr∧dφ=dω2=−ω12∧ω1=−brdφ∧dr=brdr∧dφであるからa=0、b=1/r、すなわちω12=dφである。とくにdω12=0である。
平面の第二基本形式は零である(§E19.5 例 5.1)からω13=ω23=0である(命題 5.3)。定理 5.4の両辺はいずれも0であり、二つの座標のどちらでも整合する。ω12の値が座標によって異なるのは、ω12が標構に依存する量だからである。二つの標構は定理 4.1 (1)の形で結ばれており、θ=φと取ると直交座標の標構から極座標の標構が得られ、0+dφ=dφが接続形式の変換則と一致する。
例 7.2 (球面). 半径r>0の球面M={p∈R3:∥p∥=r}に、§E19.4 例 6.2の表示
x(u,v)=r(sinucosv, sinusinv, cosu)(0<u<π, v∈R)を取る。E=r2、F=0、G=r2sin2uである。本単元は有界領域を囲む閉曲面に内向きの単位法線を取る(§E19.3 定義 4.2)ので、N=−x/rとする。
§E19.7 例 7.3で確かめたとおり、
e1=rsinuxv,e2=rxuと取るとe1×e2=Nであるから、(e1,e2,N)は適合標構である。余標構は
ω1=rsinudv,ω2=rduである。外微分はdω1=rcosudu∧dv、dω2=0である。ω12=aω1+bω2と置くと
0=dω2=−ω12∧ω1=−brdu∧rsinudv=−br2sinudu∧dvからb=0であり、
rcosudu∧dv=dω1=ω12∧ω2=arsinudv∧rdu=−ar2sinudu∧dvからa=−cosu/(rsinu)である。したがって
ω12=−cosudv,dω12=sinudu∧dvである。
第二構造方程式を確かめる。N(p)=−p/rであるからdN(X)=−X/r、すなわちS(X)=X/rでありII(X,Y)=⟨X,Y⟩/rである。よってh11=h22=1/r、h12=0であり、命題 5.3により
ω13=r1ω1,ω23=r1ω2である。ω1∧ω2=rsinudv∧rdu=−r2sinudu∧dvであるから
−ω13∧ω23=−r21ω1∧ω2=sinudu∧dvとなり、dω12と一致する。
なお、標構の順序を入れ替えてe1′=xu/r、e2′=xv/(rsinu)と取るとω1′=rdu、ω2′=rsinudvとなり、同じ計算でω12′=cosudvを得る。この組は定理 4.1 (2)によって上の組と結ばれており、e1′×e2′は外向きの単位法線であるから、内向きのNに対する適合標構ではない。適合性を要求する主張へ用いるときは、この違いを落としてはならない。
例 7.3 (円柱). 半径r>0の円柱M={(x,y,z):x2+y2=r2}にx(u,v)=(rcosu, rsinu, v)を取る。E=r2、F=0、G=1であるから
e1=rxu=(−sinu, cosu, 0),e2=xv=(0,0,1),ω1=rdu,ω2=dvである。e1×e2=(cosu, sinu, 0)は外向きの単位法線であるから、外向きの向きに関する適合標構である。dω1=dω2=0であり、η=0が定理 3.2の二つの式を満たすからω12=0である。
これは平面の直交座標の場合と同じ値である。平面と円柱は局所等長であり(§E19.4 例 7.4)、上で取った標構は系 3.4の対応で移り合うから、接続形式が一致することは同系の帰結である。
一方、法線方向の接続形式は消えない。N=(cosu, sinu, 0)に対してxuu=(−rcosu,−rsinu,0)であるから⟨N,xuu⟩=−rであり、h11=II(e1,e1)=⟨N,xuu⟩/r2=−1/r、h12=h22=0である。したがってω13=−ω1/r、ω23=0であり、ω13∧ω23=0=dω12となって第二構造方程式が成り立つ。ω12=0でありながらω13=0であるという事実が、接平面の側の量と法線方向の量の違いを表している。
例 7.4 (弧長を母線のパラメータに取った回転面).§E19.9 命題 1.2の記号で、母線が単位速度である回転面を取る。第一基本形式は
I=dt2+f(t)2dθ2(f>0)である。E=1、F=0、G=f2であるからω1=dt、ω2=fdθである。dω1=0、dω2=f′dt∧dθである。ω12=aω1+bω2と置くと
0=dω1=ω12∧ω2=afdt∧dθからa=0であり、
f′dt∧dθ=dω2=−ω12∧ω1=−bfdθ∧dt=bfdt∧dθからb=f′/fである。したがって
ω12=f′dθ,dω12=f′′dt∧dθである。ω1∧ω2=fdt∧dθであるからdω12=(f′′/f)ω1∧ω2である。
球面はこの形の回転面であり、f(t)=rsin(t/r)、t∈(0,πr)と取るとφ(t)=rsin(t/r)、ψ(t)=rcos(t/r)が単位速度の母線を与え、f′′/f=−1/r2である。u=t/r、v=θと置くと、本例の余標構はω1=dt=rdu、ω2=fdθ=rsinudvであり、例 7.2の余標構ω1=rsinudv、ω2=rduとは二本の順序が入れ替わっている。順序の入れ替えは、定理 4.1 (1)を定数θ=π/2について適用したものと 2 との合成であるから、同じ命題により接続形式の符号が変わる。実際、本例のω12=f′dθ=cosudvは例 7.2の−cosudvの符号を変えたものである。
8 演習
問題 8.1.
- 定理 3.2の一意性の証明を再現する。次に、β=aω1+bω2と展開する段階で(ω1,ω2)が各点で双対空間の基底であることをどこで用いたかを特定し、正規直交でない余標構に対して同じ議論が成り立つかどうかを述べる。
- 注意 3.3の主張を確かめる。すなわち、bを任意のC∞関数としてη=ω12+bω2がdω1=η∧ω2を満たすことを計算で示し、dω2=−η∧ω1が成り立つのがb=0の場合に限ることを示す。
- 定理 3.1の証明では、共変微分が第一基本形式と両立することと捩れを持たないことを一度ずつ用いた。それぞれの箇所を特定し、どちらか一方を落とすと式の右辺に何が残るかを書き下す。
- 系 3.4の証明で、引き戻しが外微分と可換であることを用いた箇所を特定する。この可換性を用いずにϕ∗ωˉ12がω12に一致することを直接示そうとすると、どこで議論が止まるかを述べる。
- 定理 4.1 (1)の計算を、ω~12の代わりにω~21について実行し、ω~21=ω21−dθを確かめる。この結果が交代性ω~12=−ω~21と整合することを述べる。
- 定理 4.1 (3)の証明では、c>0となる近傍へ制限してからarctanを用いた。cの符号についての制限を外すと、どの段階が成り立たなくなるかを述べる。次に、U全体で定義されたθを取ることができるとは限らないことを、Uが円環状の領域である場合を念頭に説明する。
- 補題 5.2の証明を(i,j)=(1,3)の場合に書き下し、定理 5.4と同じ手順でdω13をω12とω23で表す。得られた式が注意 5.5の述べる Codazzi–Mainardi 方程式であることを確かめる。
- 例 7.3で、外向きの単位法線の代わりに内向きの単位法線を取った場合に、適合標構をどのように取り直す必要があるかを述べる。そのときω1,ω2,ω12,ω13,ω23のそれぞれがどう変わるかを書き下し、第二構造方程式が保たれることを確かめる。
- 例 7.4の計算を、母線が単位速度でない一般の回転面I=(φ′2+ψ′2)du2+φ2dv2に対して実行し、ω12を書き下す。φ′2+ψ′2≡1と置くと本文の式に戻ることを確かめる。
9 境界と次
標構は大域的に取ることができるとは限らないこと。命題 1.3が与えるのは、一つの正則パラメータ表示の像の上の標構である。曲面全体で正規直交接標構を取ることは一般にはできない。たとえば球面の上には、至るところ消えない連続な接ベクトル場が存在しない。本記事の主張はすべて、標構を取ることができる開集合の上で述べられている。局所 Gauss–Bonnet の定理が「一つの正規直交標構を取ることができる座標近傍に含まれる領域」という仮定を置くのは、この事情による。
接続形式は標構に依存すること。定理 4.1のとおり、ω12の値は標構の取り方で変わる。ω12=0であるかどうかは曲面の性質ではない。例 7.1の平面は、直交座標ではω12=0、極座標ではω12=dφである。標構に依らない量はdω12であり、その意味は「Gauss 方程式と Gauss の驚異の定理」が与える。
一般のベクトル束の接続へ広げないこと。本記事のωijは、接平面と法線という具体的な束の上の接続を、一つの標構で表した成分である。標構の取り替えに対する変換則ω~12=ω12+dθと、外微分dω12が変換で不変であることは、一般のベクトル束の上の接続形式と曲率形式の関係の二次元での原型である。一般論、すなわち束の上の接続、曲率形式、特性類および Chern–Weil 理論は「ベクトル束と接続」が扱う。一般次元の Riemann 多様体に対する同種の構成は「Riemann 幾何 I」が扱う。
変換則を汎関数の対称性として扱わないこと。本記事が示したのは、標構を取り替えると接続形式がdθだけずれ、その外微分が変わらないという計算上の事実だけである。標構の取り替え全体のなす群をゲージ群として扱い、接続形式を変数とする Yang–Mills 汎関数とその臨界点を論じることは「ゲージ理論」が扱う。
次の記事へ渡すもの。定理 3.2は、ω12が第一基本形式だけで決まることを与える。定理 5.4は、dω12を第二基本形式で書かれた量−ω13∧ω23と等しいと述べる。この二つを、ω13∧ω23=Kω1∧ω2という Gauss 方程式によって結ぶと、Gauss 曲率が第一基本形式だけで決まるという結論が得られる。それが次の記事の主定理である。補題 5.2は、法線方向の接続形式の外微分にも適用され、「曲面論の基本定理」が Codazzi–Mainardi 方程式を導くときに用いられる。