§E19.17Dirichlet エネルギーと調和写像

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「測地線・測地曲率・エネルギーの第一変分」は、曲線のエネルギー12∫∥γ′∥2 dt\tfrac12\int\lVert\gamma'\rVert^2\,dtの臨界点が測地線であることを示した。「面積の第一変分と極小曲面」は、面積汎関数の臨界点が平均曲率の消える曲面であることを示した。本記事は、この二つと同じ形の計算を、曲面から Euclid 空間への写像に対して行う。定義域の次元を一つ上げ、被積分関数を写像の微分の大きさの二乗に取ると、Dirichlet エネルギーが得られる。

本記事が実際に示すのは次の四つである。第一に、抽象曲面の上で勾配、発散および Laplace–Beltrami 作用素を定め、それらが基底の取り方に依らないことと、局所座標における表示である。第二に、Dirichlet エネルギーの第一変分が−∫⟨V,Δf⟩ dA-\int\langle V,\Delta f\rangle\,dAに等しいことである。第三に、この量が、写像を動かす範囲を一つのチャートの中のコンパクト集合に限ったすべての変分について消えることと、Δf=0\Delta f=0が成り立つこととが同値であることである。第四に、等温座標が与えられているという仮定のもとで、共形なはめ込みx\boldsymbol{x}についてΔx=2HN\Delta\boldsymbol{x}=2HNが成り立ち、x\boldsymbol{x}が調和であることと平均曲率が恒等的に零であることが同値であることである。

標的は Euclid 空間に限る。標的が一般の多様体である場合には、第一変分に標的の Christoffel 記号を含む項が加わり、方程式は張力場が消えるという形になる。その一般論、および解の存在、正則性、第二変分は「Riemann 幾何 II」が扱う。本記事は第一変分の計算と定義の同値性までを扱う。

以下、(M,I)(M,\mathrm{I})を抽象曲面(§E19.7 定義 5.1)とし、∇\nablaを§E19.7 定理 5.3の接続とする。nnを正の整数とし、Rn\mathbb{R}^nの標準内積を⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangle、ノルムを∥ ∥\lVert\ \rVertと書く。「滑らか」はC∞C^\inftyを意味する。MMのチャート(U,ϕ)(U,\phi)を取ったとき、座標を(u1,u2)(u^1,u^2)、座標基底を∂1,∂2\partial_1,\partial_2、第一基本形式の成分をgij=I(∂i,∂j)g_{ij}=\mathrm{I}(\partial_i,\partial_j)と書き、成分行列をg=(gij)g=(g_{ij})、その逆行列を(gij)(g^{ij})と書く。正則曲面の正則パラメータ表示についてはg11=Eg_{11}=E、g12=g21=Fg_{12}=g_{21}=F、g22=Gg_{22}=Gであり、det⁡g=EG−F2>0\det g=EG-F^2>0である(§E19.4 命題 1.4)。面積要素は

dA=det⁡g du1du2dA=\sqrt{\det g}\ du^1du^2

である(§E19.4 定義 5.1、§E19.7 注意 5.4)。UUの上の関数およびUUを定義域とする写像は、ϕ−1\phi^{-1}と合成してϕ(U)⊆R2\phi(U)\subseteq\mathbb{R}^2の上のものとみなし、同じ記号で書く。

1 勾配・発散・Laplace–Beltrami 作用素

Dirichlet エネルギーの第一変分に現れる作用素を先に用意する。三つとも第一基本形式と共変微分だけから作られるので、抽象曲面に対して定まる。

定義 1.1.h ⁣:M→Rh\colon M\to\mathbb{R}を滑らかな関数とする。各点p∈Mp\in Mにおいて、すべてのX∈TpMX\in T_pMに対して

Ip(grad⁡h(p), X)=dhp(X)\mathrm{I}_p\bigl(\operatorname{grad}h(p),\ X\bigr)=dh_p(X)

を満たすベクトルgrad⁡h(p)∈TpM\operatorname{grad}h(p)\in T_pMを、hhのppにおける勾配 (gradient) という。Ip\mathrm{I}_pは正定値であるから非退化であり、Y∈TpMY\in T_pMへ線形写像X↦Ip(Y,X)X\mapsto\mathrm{I}_p(Y,X)を対応させる写像は、TpMT_pMからその双対空間への線形同型である。したがってgrad⁡h(p)\operatorname{grad}h(p)は存在して一意である。

命題 1.2.MMのチャートの上で

grad⁡h=∑i,j=12gij ∂h∂uj ∂i\operatorname{grad}h=\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\,\frac{\partial h}{\partial u^j}\,\partial_i

が成り立つ。とくにgrad⁡h\operatorname{grad}hはMMの上の滑らかな接ベクトル場である。

証明. 右辺をZZと置く。k∈{1,2}k\in\{1,2\}に対して

I(Z,∂k)=∑i,j=12gij∂h∂uj gik=∑j=12δkj ∂h∂uj=∂h∂uk=dh(∂k)\mathrm{I}(Z,\partial_k)=\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\frac{\partial h}{\partial u^j}\,g_{ik} =\sum_{j=1}^{2}\delta^j_k\,\frac{\partial h}{\partial u^j} =\frac{\partial h}{\partial u^k} =dh(\partial_k)

である。ここで∑igijgik=δkj\sum_ig^{ij}g_{ik}=\delta^j_kを用いた。∂1,∂2\partial_1,\partial_2は各点でTpMT_pMの基底であり、両辺は第二変数について線形であるから、すべてのX∈TpMX\in T_pMについてI(Z,X)=dh(X)\mathrm{I}(Z,X)=dh(X)が成り立つ。定義 1.1の一意性によりZ=grad⁡hZ=\operatorname{grad}hである。(gij)(g^{ij})の成分はdet⁡g\det gを分母とするgijg_{ij}の多項式であり、det⁡g>0\det g>0であるから滑らかである。よってgrad⁡h\operatorname{grad}hの成分は滑らかである。▨

定義 1.3.XXをMMの上の滑らかな接ベクトル場、p∈Mp\in Mとする。Y∈TpMY\in T_pMに対して、ppの近傍の上の滑らかな接ベクトル場Y~\tilde YであってY~(p)=Y\tilde Y(p)=Yを満たすものを取り

Ap(Y)=(∇Y~X)(p)∈TpMA_p(Y)=\bigl(\nabla_{\tilde Y}X\bigr)(p)\in T_pM

と定める。ppを含むチャートを取りX=∑kXk∂kX=\sum_kX^k\partial_k、Y~=∑iai∂i\tilde Y=\sum_ia^i\partial_iと書くと、§E19.7 定理 5.3により

(∇Y~X)(p)=∑k=12(∑i=12ai(p)∂Xk∂ui(p)+∑i,j=12Γijk(p) ai(p)Xj(p))∂k(p)\bigl(\nabla_{\tilde Y}X\bigr)(p)=\sum_{k=1}^{2}\Bigl(\sum_{i=1}^{2}a^i(p)\frac{\partial X^k}{\partial u^i}(p)+\sum_{i,j=1}^{2}\Gamma^k_{ij}(p)\,a^i(p)X^j(p)\Bigr)\partial_k(p)

であるから、右辺はY~\tilde Yにa1(p),a2(p)a^1(p),a^2(p)だけを通じて依存し、YYについて線形である。とくにAp(Y)A_p(Y)はY~\tilde Yの取り方に依らない(成分が定数である場からY~\tilde Yを作ることができるので、そのようなY~\tilde Yは存在する)。ApA_pはTpMT_pM上の線形変換であり、その跡

div⁡X(p)=tr⁡Ap\operatorname{div}X(p)=\operatorname{tr}A_p

をXXのppにおける発散 (divergence) という。

命題 1.4.XXをMMの上の滑らかな接ベクトル場とする。

  1. p∈Mp\in Mとし、(ϵ1,ϵ2)(\epsilon_1,\epsilon_2)をIp\mathrm{I}_pに関するTpMT_pMの正規直交基底とすると div⁡X(p)=∑a=12Ip(Ap(ϵa), ϵa)\operatorname{div}X(p)=\sum_{a=1}^{2}\mathrm{I}_p\bigl(A_p(\epsilon_a),\ \epsilon_a\bigr) が成り立つ。ここでApA_pは定義 1.3の線形変換である。とくに右辺は正規直交基底の取り方に依らない。
  2. MMのチャートの上でX=∑iXi∂iX=\sum_iX^i\partial_iと書くと div⁡X=1det⁡g∑i=12∂∂ui(det⁡g Xi)\operatorname{div}X=\frac{1}{\sqrt{\det g}}\sum_{i=1}^{2}\frac{\partial}{\partial u^i}\Bigl(\sqrt{\det g}\ X^i\Bigr) が成り立つ。とくにdiv⁡X\operatorname{div}XはMMの上の滑らかな関数である。

証明.(1)を示す。(ϵ1,ϵ2)(\epsilon_1,\epsilon_2)はTpMT_pMの正規直交基底であるから、線形変換ApA_pのこの基底に関する表現行列の(a,b)(a,b)成分はIp(Ap(ϵb),ϵa)\mathrm{I}_p(A_p(\epsilon_b),\epsilon_a)である。跡は対角成分の和であるからtr⁡Ap=∑aIp(Ap(ϵa),ϵa)\operatorname{tr}A_p=\sum_a\mathrm{I}_p(A_p(\epsilon_a),\epsilon_a)である。跡は基底の取り方に依らないので、右辺も正規直交基底の取り方に依らない。

(2)を示す。跡を座標基底で計算する。定義 1.3の式でY~=∂i\tilde Y=\partial_iと取ると

Ap(∂i)=∑k=12(∂Xk∂ui+∑j=12ΓijkXj)∂kA_p(\partial_i)=\sum_{k=1}^{2}\Bigl(\frac{\partial X^k}{\partial u^i}+\sum_{j=1}^{2}\Gamma^k_{ij}X^j\Bigr)\partial_k

であるから

div⁡X=∑i=12∂Xi∂ui+∑i,j=12ΓijiXj\operatorname{div}X=\sum_{i=1}^{2}\frac{\partial X^i}{\partial u^i}+\sum_{i,j=1}^{2}\Gamma^i_{ij}X^j

である。したがって、次の等式を示せば足りる。

∑i=12Γiji=1det⁡g ∂det⁡g∂uj(j∈{1,2}).\sum_{i=1}^{2}\Gamma^i_{ij}=\frac{1}{\sqrt{\det g}}\ \frac{\partial\sqrt{\det g}}{\partial u^j} \qquad(j\in\{1,2\}).

§E19.7 定理 5.3の式により

∑i=12Γiji=12∑i,l=12gil(∂gjl∂ui+∂gil∂uj−∂gij∂ul)\sum_{i=1}^{2}\Gamma^i_{ij} =\frac12\sum_{i,l=1}^{2}g^{il}\Bigl(\frac{\partial g_{jl}}{\partial u^i}+\frac{\partial g_{il}}{\partial u^j}-\frac{\partial g_{ij}}{\partial u^l}\Bigr)

である。第一項の和と第三項の和は打ち消し合う。実際、第三項の和において添字の名前iiとllを入れ替え、gli=gilg^{li}=g^{il}とglj=gjlg_{lj}=g_{jl}を用いると、第三項の和は第一項の和に一致する。よって

∑i=12Γiji=12∑i,l=12gil∂gil∂uj\sum_{i=1}^{2}\Gamma^i_{ij}=\frac12\sum_{i,l=1}^{2}g^{il}\frac{\partial g_{il}}{\partial u^j}

である。det⁡g=g11g22−g122\det g=g_{11}g_{22}-g_{12}^2と

g11=g22det⁡g,g12=g21=−g12det⁡g,g22=g11det⁡gg^{11}=\frac{g_{22}}{\det g},\qquad g^{12}=g^{21}=\frac{-g_{12}}{\det g},\qquad g^{22}=\frac{g_{11}}{\det g}

から

∑i,l=12gil∂gil∂uj=1det⁡g(g22∂g11∂uj−2g12∂g12∂uj+g11∂g22∂uj)=1det⁡g ∂(det⁡g)∂uj\sum_{i,l=1}^{2}g^{il}\frac{\partial g_{il}}{\partial u^j} =\frac{1}{\det g}\Bigl(g_{22}\frac{\partial g_{11}}{\partial u^j}-2g_{12}\frac{\partial g_{12}}{\partial u^j}+g_{11}\frac{\partial g_{22}}{\partial u^j}\Bigr) =\frac{1}{\det g}\ \frac{\partial(\det g)}{\partial u^j}

である。det⁡g>0\det g>0であるから

12⋅1det⁡g∂(det⁡g)∂uj=1det⁡g ∂det⁡g∂uj\frac12\cdot\frac{1}{\det g}\frac{\partial(\det g)}{\partial u^j} =\frac{1}{\sqrt{\det g}}\ \frac{\partial\sqrt{\det g}}{\partial u^j}

であり、求める等式が得られる。これを代入すると

div⁡X=∑i=12∂Xi∂ui+∑i=12Xi 1det⁡g∂det⁡g∂ui=1det⁡g∑i=12∂∂ui(det⁡g Xi)\operatorname{div}X=\sum_{i=1}^{2}\frac{\partial X^i}{\partial u^i}+\sum_{i=1}^{2}X^i\ \frac{1}{\sqrt{\det g}}\frac{\partial\sqrt{\det g}}{\partial u^i} =\frac{1}{\sqrt{\det g}}\sum_{i=1}^{2}\frac{\partial}{\partial u^i}\Bigl(\sqrt{\det g}\,X^i\Bigr)

である。▨

定義 1.5.h ⁣:M→Rh\colon M\to\mathbb{R}を滑らかな関数とする。

Δh=div⁡(grad⁡h)\Delta h=\operatorname{div}\bigl(\operatorname{grad}h\bigr)

と定め、Δ\Deltaを(M,I)(M,\mathrm{I})のLaplace–Beltrami 作用素 (Laplace–Beltrami operator) という。f=(f1,…,fn) ⁣:M→Rnf=(f^1,\dots,f^n)\colon M\to\mathbb{R}^nが滑らかな写像であるときは、成分ごとに作用させて

Δf=(Δf1,…,Δfn)\Delta f=\bigl(\Delta f^1,\dots,\Delta f^n\bigr)

と定める。

公式 1.6.MMのチャートの上で

Δh=1det⁡g∑i,j=12∂∂ui(det⁡g gij∂h∂uj)\Delta h=\frac{1}{\sqrt{\det g}}\sum_{i,j=1}^{2}\frac{\partial}{\partial u^i}\Bigl(\sqrt{\det g}\ g^{ij}\frac{\partial h}{\partial u^j}\Bigr)

が成り立つ。この式は、命題 1.2の成分Xi=∑jgij∂h/∂ujX^i=\sum_jg^{ij}\partial h/\partial u^jを命題 1.4 (2)へ代入して得られる。Rn\mathbb{R}^nに値を持つ写像に対しては、右辺を成分ごとに読む。

定義 1.7.MMのチャート(U,ϕ)(U,\phi)の座標が等温座標 (isothermal coordinates) であるとは、UUの上の正の滑らかな関数λ\lambdaが存在して、第一基本形式の成分がUUの全体で

g11=g22=λ2,g12=0g_{11}=g_{22}=\lambda^2,\qquad g_{12}=0

を満たすことをいう。

公式 1.8.MMのチャートの座標(u,v)(u,v)が定義 1.7の意味の等温座標であり、λ\lambdaを同定義の関数とすると、このチャートの上で

Δh=1λ2(∂2h∂u2+∂2h∂v2)\Delta h=\frac{1}{\lambda^2}\Bigl(\frac{\partial^2h}{\partial u^2}+\frac{\partial^2h}{\partial v^2}\Bigr)

が成り立つ。

証明.det⁡g=λ4\det g=\lambda^4、det⁡g=λ2\sqrt{\det g}=\lambda^2、g11=g22=λ−2g^{11}=g^{22}=\lambda^{-2}、g12=0g^{12}=0である。公式 1.6へ代入すると

Δh=1λ2[∂∂u(λ2⋅λ−2∂h∂u)+∂∂v(λ2⋅λ−2∂h∂v)]=1λ2(huu+hvv)\Delta h=\frac{1}{\lambda^2}\Bigl[\frac{\partial}{\partial u}\Bigl(\lambda^2\cdot\lambda^{-2}\frac{\partial h}{\partial u}\Bigr)+\frac{\partial}{\partial v}\Bigl(\lambda^2\cdot\lambda^{-2}\frac{\partial h}{\partial v}\Bigr)\Bigr] =\frac{1}{\lambda^2}\bigl(h_{uu}+h_{vv}\bigr)

である。▨

注意 1.9 (符号の流儀と、等温座標を与えられたものとして扱うこと). 本単元はΔ=div⁡∘grad⁡\Delta=\operatorname{div}\circ\operatorname{grad}と定める。平面の標準的な第一基本形式(λ≡1\lambda\equiv1)に対して、この作用素は通常の Laplace 作用素∂u2+∂v2\partial_u^2+\partial_v^2に一致する。解析の文献では、固有値を非負にするために符号を反転した−div⁡∘grad⁡-\operatorname{div}\circ\operatorname{grad}を Laplace 作用素と呼ぶことがある。本記事の等式の符号は、上の定義に対するものである。

等温座標の存在は、本記事も本単元も証明しない。定義 1.7は、成分が上の形をしているチャートの座標に名前を与えたものであり、公式 1.8は、そのようなチャートが与えられたときに何が成り立つかを述べたものである。どちらも、そのようなチャートを取ることができることを主張していない。以下で等温座標を用いる箇所は、いずれも「与えられている」という仮定のもとにある。

2 Dirichlet エネルギー

定義 2.1.f ⁣:M→Rnf\colon M\to\mathbb{R}^nを滑らかな写像とする。点p∈Mp\in MにおいてIp\mathrm{I}_pに関するTpMT_pMの正規直交基底(ϵ1,ϵ2)(\epsilon_1,\epsilon_2)を取り

∥df∥2(p)=∑a=12∥dfp(ϵa)∥2\lVert df\rVert^2(p)=\sum_{a=1}^{2}\bigl\lVert df_p(\epsilon_a)\bigr\rVert^2

と定める。命題 2.2により、この値は正規直交基底の取り方に依らない。e(f)=12∥df∥2e(f)=\tfrac12\lVert df\rVert^2をffのエネルギー密度 (energy density) という。

D⊆MD\subseteq Mをコンパクト集合とし、DDが一つのチャート(U,ϕ)(U,\phi)の定義域に含まれ、ϕ(D)\phi(D)が Jordan 可測(「実解析 II」の§E4.11 定義 2.1)であるとする。ffのDD上のDirichlet エネルギー (Dirichlet energy) を

E(f;D)=∫De(f) dA=12∬ϕ(D)∥df∥2det⁡g du1du2E(f;D)=\int_De(f)\,dA=\frac12\iint_{\phi(D)}\lVert df\rVert^2\sqrt{\det g}\ du^1du^2

と定める。被積分関数は連続でありϕ(D)\phi(D)はコンパクトかつ Jordan 可測であるから、§E4.11 系 3.5によりこの積分は定まる。値がチャートの取り方に依らないことは、§E19.4 命題 5.2の証明と同じ変数変換による。MMがコンパクトであり境界を持たない場合には、§E19.15 定理 1.1の三角形分割を一つ取れば、§E19.15 定義 2.1によって

E(f)=12∫M∥df∥2 dAE(f)=\frac12\int_M\lVert df\rVert^2\,dA

が定まる。本記事の以下の主張は、いずれも一つのチャートに含まれる領域の上の積分だけを用いるので、この形の積分を必要としない。

命題 2.2.f ⁣:M→Rnf\colon M\to\mathbb{R}^nを滑らかな写像とする。

  1. 正規直交基底による∥df∥2\lVert df\rVert^2の定義は、基底の取り方に依らない。
  2. MMのチャートの上で ∥df∥2=∑i,j=12gij⟨∂f∂ui,∂f∂uj⟩\lVert df\rVert^2=\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\Bigl\langle\frac{\partial f}{\partial u^i},\frac{\partial f}{\partial u^j}\Bigr\rangle が成り立つ。とくに∥df∥2\lVert df\rVert^2はMMの上の滑らかな関数である。

証明.ppを含むチャートを一つ取り、Ip\mathrm{I}_pに関する正規直交基底(ϵ1,ϵ2)(\epsilon_1,\epsilon_2)をϵa=∑iAai∂i(p)\epsilon_a=\sum_iA^i_a\partial_i(p)と書く。Ip(ϵa,ϵb)=δab\mathrm{I}_p(\epsilon_a,\epsilon_b)=\delta_{ab}は、行列A=(Aai)A=(A^i_a)についてATgA=IA^{\mathsf T}gA=I(IIは二次単位行列)を意味する。ggは正則であるからAAも正則であり、両辺の逆行列を取るとA−1g−1(AT)−1=IA^{-1}g^{-1}(A^{\mathsf T})^{-1}=I、すなわちg−1=AATg^{-1}=AA^{\mathsf T}である。成分で書くと

∑a=12AaiAaj=gij\sum_{a=1}^{2}A^i_aA^j_a=g^{ij}

である。したがって

∑a=12∥dfp(ϵa)∥2=∑a=12∑i,j=12AaiAaj⟨∂f∂ui,∂f∂uj⟩=∑i,j=12gij⟨∂f∂ui,∂f∂uj⟩\sum_{a=1}^{2}\bigl\lVert df_p(\epsilon_a)\bigr\rVert^2 =\sum_{a=1}^{2}\sum_{i,j=1}^{2}A^i_aA^j_a\Bigl\langle\frac{\partial f}{\partial u^i},\frac{\partial f}{\partial u^j}\Bigr\rangle =\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\Bigl\langle\frac{\partial f}{\partial u^i},\frac{\partial f}{\partial u^j}\Bigr\rangle

である。右辺は正規直交基底を含まないので、1 と 2 がともに従う。(gij)(g^{ij})の成分と∂f/∂ui\partial f/\partial u^iは滑らかであるから、右辺は滑らかである。▨

例 2.3 (共形なはめ込みのエネルギー密度は11である).W⊆R2W\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、x ⁣:W→R3\boldsymbol{x}\colon W\to\mathbb{R}^3を滑らかなはめ込みとし、第一基本形式の成分(§E19.12 定義 2.1)がE=G=λ2E=G=\lambda^2、F=0F=0を満たすとする。I\mathrm{I}は各点で正定値であるから、WWにI\mathrm{I}を与えた組は抽象曲面である(§E19.7 定義 5.1)。これを定義域とみると、座標(u,v)(u,v)は等温座標である。命題 2.2 (2)により

∥dx∥2=λ−2∥xu∥2+λ−2∥xv∥2=λ−2λ2+λ−2λ2=2\lVert d\boldsymbol{x}\rVert^2=\lambda^{-2}\lVert\boldsymbol{x}_u\rVert^2+\lambda^{-2}\lVert\boldsymbol{x}_v\rVert^2=\lambda^{-2}\lambda^2+\lambda^{-2}\lambda^2=2

であるからe(x)≡1e(\boldsymbol{x})\equiv1である。したがって、コンパクトで Jordan 可測なD⊆WD\subseteq Wについて

E(x;D)=∫D1 dA=∬DEG−F2 du dvE(\boldsymbol{x};D)=\int_D1\,dA=\iint_D\sqrt{EG-F^2}\ du\,dv

である。右辺は、x\boldsymbol{x}が正則パラメータ表示であるときには像x(D)\boldsymbol{x}(D)の面積である(§E19.4 定義 5.1)。共形なはめ込みについて調和性と極小性が同じ条件になる理由は、二つの汎関数がこの場合に同じ値を取ることにある。

3 第一変分

変分の設定を、「面積の第一変分と極小曲面」と同じ形に取る。すなわち、写像を動かす範囲を一つのチャートに含まれるコンパクト集合に限る。この制限は、境界を固定するという条件を、境界を持たない対象に対して述べたものである。

定義 3.1.f ⁣:M→Rnf\colon M\to\mathbb{R}^nを滑らかな写像とする。組(K,ε,F)(\mathcal{K},\varepsilon,F)がffの台がコンパクトな変分 (compactly supported variation) であるとは、次の三つがすべて成り立つことをいう。

  1. K⊆M\mathcal{K}\subseteq Mはコンパクト集合であり、あるチャート(U,ϕ)(U,\phi)の定義域UUに含まれる。
  2. ε>0\varepsilon>0であり、F ⁣:M×(−ε,ε)→RnF\colon M\times(-\varepsilon,\varepsilon)\to\mathbb{R}^nは滑らかな写像である。
  3. すべてのp∈Mp\in MについてF(p,0)=f(p)F(p,0)=f(p)が成り立ち、すべてのp∈M∖Kp\in M\setminus\mathcal{K}とすべてのs∈(−ε,ε)s\in(-\varepsilon,\varepsilon)についてF(p,s)=f(p)F(p,s)=f(p)が成り立つ。

Fs=F(⋅,s)F_s=F(\cdot,s)と書く。

V(p)=∂F∂s(p,0)V(p)=\frac{\partial F}{\partial s}(p,0)

で定まる滑らかな写像V ⁣:M→RnV\colon M\to\mathbb{R}^nを、この変分の変分場 (variation field) という。条件 (c)によりM∖KM\setminus\mathcal{K}の上でV=0V=0であるから、VVが零でない点の全体の閉包はK\mathcal{K}に含まれる。

補題 3.2.f ⁣:M→Rnf\colon M\to\mathbb{R}^nを滑らかな写像、K⊆M\mathcal{K}\subseteq Mを一つのチャートの定義域に含まれるコンパクト集合、V ⁣:M→RnV\colon M\to\mathbb{R}^nを滑らかな写像であってM∖KM\setminus\mathcal{K}の上でV=0V=0となるものとする。このとき

F(p,s)=f(p)+s V(p)((p,s)∈M×R)F(p,s)=f(p)+s\,V(p)\qquad\bigl((p,s)\in M\times\mathbb{R}\bigr)

は、ε>0\varepsilon>0をどのように取っても定義 3.1の条件を満たすffの変分であり、その変分場はVVである。

証明.FFは滑らかな写像の和と積であるから滑らかである。F(p,0)=f(p)F(p,0)=f(p)であり、p∈M∖Kp\in M\setminus\mathcal{K}ではV(p)=0V(p)=0であるからF(p,s)=f(p)F(p,s)=f(p)である。∂F/∂s=V\partial F/\partial s=Vであるから、変分場はVVである。▨

補題 3.3.O⊆R2\mathcal{O}\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、K⊆O\mathcal{K}\subseteq\mathcal{O}をコンパクト集合、P1,P2 ⁣:O→RP^1,P^2\colon\mathcal{O}\to\mathbb{R}を滑らかな関数であってO∖K\mathcal{O}\setminus\mathcal{K}の上でP1=P2=0P^1=P^2=0となるものとする。このとき

∬O(∂P1∂u1+∂P2∂u2)du1du2=0\iint_{\mathcal{O}}\Bigl(\frac{\partial P^1}{\partial u^1}+\frac{\partial P^2}{\partial u^2}\Bigr)du^1du^2=0

が成り立つ。ここで左辺は、K\mathcal{K}を含むコンパクトで Jordan 可測なO\mathcal{O}の部分集合の上の積分として定める。被積分関数が零でない点の全体の閉包はK\mathcal{K}に含まれるので、値はその取り方に依らない。

証明.P1P^1とP2P^2を、R2∖K\mathbb{R}^2\setminus\mathcal{K}の上では00と定めてR2\mathbb{R}^2全体へ延ばす。O\mathcal{O}とR2∖K\mathbb{R}^2\setminus\mathcal{K}はR2\mathbb{R}^2を覆う開集合であり、共通部分O∖K\mathcal{O}\setminus\mathcal{K}の上で二つの定め方は一致するから、延長はR2\mathbb{R}^2の上で滑らかである。K\mathcal{K}は有界であるから、閉長方形R=[a,b]×[c,d]R=[a,b]\times[c,d]であってK⊆(a,b)×(c,d)\mathcal{K}\subseteq(a,b)\times(c,d)を満たすものが存在する。

被積分関数はRRの上で連続であるから、「実解析 II」の§E4.12 定理 1により

∬R∂P1∂u1 du1du2=∫cd(∫ab∂P1∂u1(u1,u2) du1)du2\iint_R\frac{\partial P^1}{\partial u^1}\,du^1du^2=\int_c^d\Bigl(\int_a^b\frac{\partial P^1}{\partial u^1}(u^1,u^2)\,du^1\Bigr)du^2

である。内側の積分は、「ε-論法と基礎解析」の微分積分学の基本定理(§D1.19 定理 2.1)によりP1(b,u2)−P1(a,u2)P^1(b,u^2)-P^1(a,u^2)に等しく、点(b,u2)(b,u^2)と(a,u2)(a,u^2)はいずれもK\mathcal{K}に属さないから、この値は00である。したがって第一項の積分は00である。P2P^2についてはu2u^2について先に積分すればよく、同じ理由で00である。▨

証明の方針を述べる。出発点は、変分に沿うエネルギー密度が座標とssについて滑らかであることである。中間目標は二つある。第一に、エネルギーのssについての微分を積分記号の下へ入れることである。「測地線・測地曲率・エネルギーの第一変分」の§E19.8 補題 2.1は一つの変数についての積分に対する主張であるから、二重積分をいったん累次積分へ直し、内側の積分と外側の積分のそれぞれへ適用する。第二に、得られた被積分関数∑i,jgij⟨∂iV,∂jf⟩\sum_{i,j}g^{ij}\langle\partial_iV,\partial_jf\rangleからVVの微分を外すことである。この一手が本質的である。det⁡g∑jgij⟨V,∂jf⟩\sqrt{\det g}\sum_jg^{ij}\langle V,\partial_jf\rangleを第ii成分とする場を作ると、その発散が、被積分関数とdet⁡g ⟨V,Δf⟩\sqrt{\det g}\,\langle V,\Delta f\rangleの和になる。補題 3.3により発散の積分は消えるので、符号を変えた等式が残る。ここで公式 1.6の形のΔ\Deltaがそのまま現れることが、この作用素をdiv⁡∘grad⁡\operatorname{div}\circ\operatorname{grad}と定めたことの帰結である。

定理 3.4 (Dirichlet エネルギーの第一変分).f ⁣:M→Rnf\colon M\to\mathbb{R}^nを滑らかな写像、(K,ε,F)(\mathcal{K},\varepsilon,F)を定義 3.1の変分、VVをその変分場、(U,ϕ)(U,\phi)をK⊆U\mathcal{K}\subseteq Uとなるチャートとする。D⊆UD\subseteq Uをコンパクト集合であって、ϕ(D)\phi(D)が Jordan 可測であり、K\mathcal{K}がDDの内部に含まれるものとする。このとき

s⟼E(Fs;D)s\longmapsto E(F_s;D)

は(−ε,ε)(-\varepsilon,\varepsilon)の上でC1C^1級であり

dds∣s=0E(Fs;D)=−∫D⟨V, Δf⟩ dA\left.\frac{d}{ds}\right|_{s=0}E(F_s;D)=-\int_D\bigl\langle V,\ \Delta f\bigr\rangle\,dA

が成り立つ。右辺の被積分関数が零でない点の全体の閉包はK\mathcal{K}に含まれるので、右辺はDDの取り方に依らない。

証明.ϕ\phiによる座標を(u1,u2)(u^1,u^2)と書き、U^=ϕ(U)\widehat{U}=\phi(U)、K^=ϕ(K)\widehat{\mathcal{K}}=\phi(\mathcal{K})、D^=ϕ(D)\widehat{D}=\phi(D)と置く。UUの上の写像は座標を通じてU^\widehat{U}の上の写像とみなす。

被積分関数の差を延長する。命題 2.2 (2)により、∣s∣<ε\lvert s\rvert<\varepsilonに対して

ψ(u1,u2,s)=12(∑i,j=12gij⟨∂iFs,∂jFs⟩−∑i,j=12gij⟨∂if,∂jf⟩)det⁡g\psi(u^1,u^2,s)=\frac12\Bigl(\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\bigl\langle\partial_iF_s,\partial_jF_s\bigr\rangle-\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\bigl\langle\partial_if,\partial_jf\bigr\rangle\Bigr)\sqrt{\det g}

と置く。ここで∂i=∂/∂ui\partial_i=\partial/\partial u^iである。FFはM×(−ε,ε)M\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で滑らかであり、gijg^{ij}とdet⁡g\sqrt{\det g}はU^\widehat{U}の上で滑らかであるから、ψ\psiはU^×(−ε,ε)\widehat{U}\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で滑らかである。定義 3.1 条件 (c)により、U^∖K^\widehat{U}\setminus\widehat{\mathcal{K}}の上ではFs=fF_s=fであるからψ=0\psi=0である。そこでψ\psiを(R2∖K^)×(−ε,ε)(\mathbb{R}^2\setminus\widehat{\mathcal{K}})\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上では00と定めてR2×(−ε,ε)\mathbb{R}^2\times(-\varepsilon,\varepsilon)へ延ばす。K^⊆U^\widehat{\mathcal{K}}\subseteq\widehat{U}であるから、二つの開集合U^\widehat{U}とR2∖K^\mathbb{R}^2\setminus\widehat{\mathcal{K}}はR2\mathbb{R}^2を覆い、共通部分の上で二つの定め方は一致するから、延長は滑らかである。

積分領域を長方形へ取り替える。閉長方形R=[a,b]×[c,d]R=[a,b]\times[c,d]をK^⊆(a,b)×(c,d)\widehat{\mathcal{K}}\subseteq(a,b)\times(c,d)となるように取る。各ssについてψ(⋅,⋅,s)\psi(\cdot,\cdot,s)は連続であり、零でない点の全体の閉包はK^\widehat{\mathcal{K}}に含まれるから、K^\widehat{\mathcal{K}}を含むコンパクトで Jordan 可測な集合の上の積分の値は、どれを取っても等しい。K^⊆D^\widehat{\mathcal{K}}\subseteq\widehat{D}かつK^⊆R\widehat{\mathcal{K}}\subseteq Rであるから

E(Fs;D)−E(f;D)=∬D^ψ(u1,u2,s) du1du2=∬Rψ(u1,u2,s) du1du2=:Φ(s)E(F_s;D)-E(f;D)=\iint_{\widehat{D}}\psi(u^1,u^2,s)\,du^1du^2=\iint_R\psi(u^1,u^2,s)\,du^1du^2=:\Phi(s)

である。したがってΦ\Phiを調べれば足りる。

累次積分へ直して積分記号の下で微分する。各ssについてψ(⋅,⋅,s)\psi(\cdot,\cdot,s)はRRの上で連続であるから、§E4.12 定理 1により

Φ(s)=∫ab(∫cdψ(u1,u2,s) du2)du1\Phi(s)=\int_a^b\Bigl(\int_c^d\psi(u^1,u^2,s)\,du^2\Bigr)du^1

である。内側の積分をη(u1,s)\eta(u^1,s)と書く。u1∈[a,b]u^1\in[a,b]を固定すると、ψ\psiと∂sψ\partial_s\psiは[c,d]×(−ε,ε)[c,d]\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で連続であるから、§E19.8 補題 2.1によりs↦η(u1,s)s\mapsto\eta(u^1,s)はC1C^1級であり∂sη(u1,s)=∫cd∂sψ(u1,u2,s) du2\partial_s\eta(u^1,s)=\int_c^d\partial_s\psi(u^1,u^2,s)\,du^2である。次にη\etaと∂sη\partial_s\etaが二変数の関数として連続であることを確かめる。0<ε′<ε0<\varepsilon'<\varepsilonを取るとR×[−ε′,ε′]R\times[-\varepsilon',\varepsilon']はコンパクトであるから、ψ\psiと∂sψ\partial_s\psiはその上で一様連続である。(u1,s)(u^1,s)と(w,t)(w,t)を[a,b]×[−ε′,ε′][a,b]\times[-\varepsilon',\varepsilon']の点とすると

∣η(u1,s)−η(w,t)∣≤(d−c)sup⁡u2∈[c,d]∣ψ(u1,u2,s)−ψ(w,u2,t)∣\bigl\lvert\eta(u^1,s)-\eta(w,t)\bigr\rvert \le(d-c)\sup_{u^2\in[c,d]}\bigl\lvert\psi(u^1,u^2,s)-\psi(w,u^2,t)\bigr\rvert

であり、右辺は一様連続性により(w,t)→(u1,s)(w,t)\to(u^1,s)のとき00へ収束する。∂sη\partial_s\etaについても同じ評価を∂sψ\partial_s\psiに対して行えばよい。よってη\etaと∂sη\partial_s\etaは[a,b]×(−ε,ε)[a,b]\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で連続であり、ふたたび§E19.8 補題 2.1を適用して、Φ\Phiは(−ε,ε)(-\varepsilon,\varepsilon)の上でC1C^1級であり

Φ′(s)=∫ab(∫cd∂ψ∂s(u1,u2,s) du2)du1=∬R∂ψ∂s(u1,u2,s) du1du2\Phi'(s)=\int_a^b\Bigl(\int_c^d\frac{\partial\psi}{\partial s}(u^1,u^2,s)\,du^2\Bigr)du^1 =\iint_R\frac{\partial\psi}{\partial s}(u^1,u^2,s)\,du^1du^2

である。最後の等号は、∂sψ(⋅,⋅,s)\partial_s\psi(\cdot,\cdot,s)がRRの上で連続であることから§E4.12 定理 1による。

s=0s=0における被積分関数を計算する。gij=gjig^{ij}=g^{ji}であるから、積の微分法によりU^×(−ε,ε)\widehat{U}\times(-\varepsilon,\varepsilon)の上で

∂∂s(12∑i,j=12gij⟨∂iF,∂jF⟩)=∑i,j=12gij⟨∂∂s∂iF, ∂jF⟩\frac{\partial}{\partial s}\Bigl(\frac12\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\bigl\langle\partial_iF,\partial_jF\bigr\rangle\Bigr) =\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\Bigl\langle\frac{\partial}{\partial s}\partial_iF,\ \partial_jF\Bigr\rangle

である。FFは滑らかであるから「実解析 II」の§E4.4 定理 2.1により∂s∂iF=∂i∂sF\partial_s\partial_iF=\partial_i\partial_sFであり、s=0s=0では∂sF=V\partial_sF=Vである。したがって、U^\widehat{U}の上で

∂ψ∂s(u1,u2,0)=(∑i,j=12gij⟨∂iV,∂jf⟩)det⁡g\frac{\partial\psi}{\partial s}(u^1,u^2,0)=\Bigl(\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\bigl\langle\partial_iV,\partial_jf\bigr\rangle\Bigr)\sqrt{\det g}

であり、U^\widehat{U}の外では∂sψ(⋅,⋅,0)=0\partial_s\psi(\cdot,\cdot,0)=0である。この関数が零でない点の全体の閉包はK^\widehat{\mathcal{K}}に含まれるから

Φ′(0)=∬U^(∑i,j=12gij⟨∂iV,∂jf⟩)det⁡g du1du2\Phi'(0)=\iint_{\widehat{U}}\Bigl(\sum_{i,j=1}^{2}g^{ij}\bigl\langle\partial_iV,\partial_jf\bigr\rangle\Bigr)\sqrt{\det g}\ du^1du^2

である。

VVの微分を外す。U^\widehat{U}の上で

Pi=det⁡g∑j=12gij⟨V, ∂jf⟩(i∈{1,2})P^i=\sqrt{\det g}\sum_{j=1}^{2}g^{ij}\bigl\langle V,\ \partial_jf\bigr\rangle\qquad(i\in\{1,2\})

と置く。VVはU^∖K^\widehat{U}\setminus\widehat{\mathcal{K}}の上で零であるからP1P^1とP2P^2も同じ集合の上で零である。積の微分法により

∑i=12∂iPi=∑i,j=12det⁡g gij⟨∂iV,∂jf⟩+⟨V, ∑i,j=12∂i(det⁡g gij∂jf)⟩\sum_{i=1}^{2}\partial_iP^i =\sum_{i,j=1}^{2}\sqrt{\det g}\ g^{ij}\bigl\langle\partial_iV,\partial_jf\bigr\rangle +\Bigl\langle V,\ \sum_{i,j=1}^{2}\partial_i\Bigl(\sqrt{\det g}\ g^{ij}\partial_jf\Bigr)\Bigr\rangle

である。公式 1.6をffの成分ごとに読むと、右辺の第二項はdet⁡g ⟨V,Δf⟩\sqrt{\det g}\,\langle V,\Delta f\rangleである。補題 3.3をO=U^\mathcal{O}=\widehat{U}として適用すると左辺の積分は00であるから

Φ′(0)=−∬U^⟨V,Δf⟩det⁡g du1du2=−∫D⟨V,Δf⟩ dA\Phi'(0)=-\iint_{\widehat{U}}\bigl\langle V,\Delta f\bigr\rangle\sqrt{\det g}\ du^1du^2 =-\int_D\bigl\langle V,\Delta f\bigr\rangle\,dA

である。最後の等号は、被積分関数が零でない点の全体の閉包がK^⊆D^\widehat{\mathcal{K}}\subseteq\widehat{D}に含まれることによる。E(Fs;D)=E(f;D)+Φ(s)E(F_s;D)=E(f;D)+\Phi(s)であるから、主張が従う。▨

4 調和写像

定義 4.1. 滑らかな写像f ⁣:M→Rnf\colon M\to\mathbb{R}^nが調和写像 (harmonic map) であるとは、MMの全体で

Δf=0\Delta f=0

が成り立つことをいう。すなわち、ffのnn個の成分がいずれも(M,I)(M,\mathrm{I})の Laplace–Beltrami 作用素(定義 1.5)によって消えることをいう。n=1n=1の場合には、ffを調和関数 (harmonic function) という。

定理 4.2.f ⁣:M→Rnf\colon M\to\mathbb{R}^nを滑らかな写像とする。次の二つは同値である。

  1. 定義 3.1のすべての変分(K,ε,F)(\mathcal{K},\varepsilon,F)と、定理 3.4の条件を満たすすべてのDDについて dds∣s=0E(Fs;D)=0\left.\frac{d}{ds}\right|_{s=0}E(F_s;D)=0 が成り立つ。
  2. ffは調和写像である。

証明.(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。Δf=0\Delta f=0ならば定理 3.4の右辺の被積分関数が恒等的に零であるから、値は00である。

(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。p∈Mp\in Mを任意に取り、ppを含むチャート(U,ϕ)(U,\phi)を取る。U^=ϕ(U)\widehat{U}=\phi(U)と置く。c∈Rnc\in\mathbb{R}^nと、零でない点の全体の閉包がコンパクトでU^\widehat{U}に含まれる滑らかな関数φ ⁣:U^→R\varphi\colon\widehat{U}\to\mathbb{R}を任意に取る。その閉包をK^\widehat{\mathcal{K}}、K=ϕ−1(K^)\mathcal{K}=\phi^{-1}(\widehat{\mathcal{K}})と置く。V ⁣:M→RnV\colon M\to\mathbb{R}^nを、UUの上ではV=φ cV=\varphi\,c(座標を通じて読む)、M∖KM\setminus\mathcal{K}の上ではV=0V=0と定める。二つの定め方はU∖KU\setminus\mathcal{K}の上で一致するので、VVはMMの上で滑らかである。補題 3.2によりF(q,s)=f(q)+sV(q)F(q,s)=f(q)+sV(q)は変分場VVを持つ変分である。定理 3.4が要求するDDは、次のようにして得られる。K^\widehat{\mathcal{K}}はコンパクトであって開集合U^\widehat Uに含まれるから、K^\widehat{\mathcal{K}}とR2∖U^\mathbb{R}^2\setminus\widehat Uとの距離ρ\rho(U^=R2\widehat U=\mathbb{R}^2のときは任意の正の数)は正であり、辺の長さがρ/2\rho/2より小さい正方格子の閉正方形のうちK^\widehat{\mathcal{K}}と交わるものは有限個であって、その合併はコンパクトかつ Jordan 可測であり、K^\widehat{\mathcal{K}}を内部に含みU^\widehat Uに含まれる。この合併をϕ−1\phi^{-1}で引き戻したものをDDと取る。仮定と定理 3.4により

0=−∫D⟨V,Δf⟩ dA=−∬U^φ ⟨c,Δf⟩det⁡g du1du20=-\int_D\bigl\langle V,\Delta f\bigr\rangle\,dA =-\iint_{\widehat{U}}\varphi\ \bigl\langle c,\Delta f\bigr\rangle\sqrt{\det g}\ du^1du^2

である。w=⟨c,Δf⟩det⁡gw=\langle c,\Delta f\rangle\sqrt{\det g}と置くと、wwはU^\widehat{U}の上の連続関数であり、上の等式は、台がコンパクトでU^\widehat{U}に含まれるすべての滑らかなφ\varphiについて∬U^wφ du1du2=0\iint_{\widehat{U}}w\varphi\,du^1du^2=0が成り立つことを意味する。「面積の第一変分と極小曲面」の§E19.16 補題 3.1によりw≡0w\equiv0である。det⁡g>0\sqrt{\det g}>0であるからU^\widehat{U}の上で⟨c,Δf⟩=0\langle c,\Delta f\rangle=0であり、c∈Rnc\in\mathbb{R}^nは任意であったからUUの上でΔf=0\Delta f=0である。とくにΔf(p)=0\Delta f(p)=0である。ppは任意であったから、MMの全体でΔf=0\Delta f=0である。▨

例 4.3 (平面領域の上の調和関数).W⊆R2W\subseteq\mathbb{R}^2を開集合とし、I\mathrm{I}をR2\mathbb{R}^2の標準内積の各点への制限とする。この抽象曲面のチャートとして恒等写像を取るとg11=g22=1g_{11}=g_{22}=1、g12=0g_{12}=0であるから、公式 1.8をλ≡1\lambda\equiv1として適用してΔh=huu+hvv\Delta h=h_{uu}+h_{vv}である。したがって定義 4.1は、この場合には通常の意味の調和関数の定義に一致する。たとえばh(u,v)=u2−v2h(u,v)=u^2-v^2はhuu+hvv=2−2=0h_{uu}+h_{vv}=2-2=0を満たすので調和関数である。

台がコンパクトでWWに含まれる滑らかな関数φ\varphiを取り、V=φV=\varphiを変分場とする変分F(⋅,s)=h+sφF(\cdot,s)=h+s\varphiを考えると、定理 3.4は

dds∣s=012∬D∥grad⁡(h+sφ)∥2du dv=−∬Dφ (huu+hvv) du dv\left.\frac{d}{ds}\right|_{s=0}\frac12\iint_D\bigl\lVert\operatorname{grad}(h+s\varphi)\bigr\rVert^2du\,dv=-\iint_D\varphi\,(h_{uu}+h_{vv})\,du\,dv

という古典的な等式になる。ここでDDは、φ\varphiの台を内部に含むコンパクトで Jordan 可測なWWの部分集合である。

4.1 勾配降下を目で追う

調和写像は Dirichlet エネルギーの臨界点であり、臨界点は勾配が消える点である。有限個の頂点からなる格子でこの構造を近似すると、各頂点で勾配の逆向きへ動かす操作を繰り返すことができ、エネルギーが減るにつれてその向きが消えていく様子を追うことができる。次の図はその操作を実行する。

離散 Dirichlet エネルギーの勾配降下

三次元の閉曲線を境界とする格子の面が描かれ、境界を除く各頂点から短い矢印が伸びている。矢印は離散 Dirichlet エネルギーの勾配の逆向きであり、隣接する頂点の平均へ向かう。図の左上には座標系を置く。曲面と同じ正射影で三本の軸を描き、x 軸を実線、y 軸を破線、z 軸を点線として、それぞれの先に x・y・z の文字を添えるので、色を見分けることができなくても三本を区別することができる。視点を回すと座標系も曲面と一緒に回るので、面がどの向きに置かれているかを読み取ることができる。境界の閉曲線は xy 平面の単位円の上に載り、z 方向へ上下する。反復を進めると面は滑らかになり、矢印は一様に短くなって消える。エネルギーは 6.41 から 4.29 へ、矢印の最大の長さは 0.023 から 0.00004 へ単調に減り、313 回の反復で停止条件に達する。到達する曲面は離散調和写像であり、平均曲率が零である極小曲面と一致するとは限らない。

境界を三次元の閉曲線に固定し、素朴に張った面から出発して、各頂点を隣接する頂点の平均へ少しずつ寄せる。矢印の長さの倍率は初期の値で固定してあるので、短くなることがそのまま勾配の減少を表す。ここで得られるのは調和写像であって、平均曲率が零である極小曲面そのものではない。両者は写像が等温座標を与える場合に一致するが、この格子でそれが成り立つとは限らない。

矢印が消えていくことは、勾配が零へ向かうことの見え方である。有限の格子で得られるのは離散化した問題の停留点であり、連続な問題の解へ収束することを本記事は主張しない。

5 共形なはめ込みと極小曲面

本節では、写像をx\boldsymbol{x}と書く。第二基本形式の成分e,f,ge,f,g(§E19.5 命題 3.2)と記号が衝突することを避けるためである。

証明の方針を述べる。等温座標では公式 1.8によりΔx=λ−2(xuu+xvv)\Delta\boldsymbol{x}=\lambda^{-2}(\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv})であるから、示すべきことはxuu+xvv\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}を計算することである。この和を、正規直交基底(xu/λ, xv/λ, N)(\boldsymbol{x}_u/\lambda,\ \boldsymbol{x}_v/\lambda,\ N)によって分解する。接方向の二つの成分は、第一基本形式の成分の偏導関数だけで書くことができ、E=G=λ2E=G=\lambda^2とF=0F=0を代入すると打ち消し合って零になる。法方向の成分は定義によりe+ge+gであり、共形性のもとで平均曲率の成分表示がこれを2λ2H2\lambda^2Hへ書き換える。二つを合わせるとxuu+xvv=2λ2HN\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}=2\lambda^2HNが得られる。

定理 5.1.W⊆R2W\subseteq\mathbb{R}^2を開集合とし、x ⁣:W→R3\boldsymbol{x}\colon W\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みとする。§E19.12 定義 2.1の記号のもとで、座標(u,v)(u,v)がx\boldsymbol{x}の第一基本形式に対する等温座標であることを仮定する。すなわち、WWの上の正のC∞C^\infty関数λ\lambdaが存在して

E=G=λ2,F=0E=G=\lambda^2,\qquad F=0

がWWの全体で成り立つと仮定する。このような座標を取ることができることは、本記事も本単元も証明しない。本定理は、そのような座標が与えられている場合についての主張である。

WWに第一基本形式I\mathrm{I}を与えた抽象曲面を定義域とみなし、x\boldsymbol{x}をWWからR3\mathbb{R}^3への滑らかな写像とみなす。NNを§E19.12 定義 2.1の単位法線、H=eG−2fF+gE2(EG−F2)H=\dfrac{eG-2fF+gE}{2(EG-F^2)}をこの向きに関する平均曲率とする。このとき次が成り立つ。

  1. WWの全体でΔx=2HN\Delta\boldsymbol{x}=2HNである。
  2. x\boldsymbol{x}が定義 4.1の意味で調和写像であることと、WWの全体でH≡0H\equiv0であることは同値である。
  3. x\boldsymbol{x}が正則曲面の正則パラメータ表示であるとき、2 の条件は、像x(W)\boldsymbol{x}(W)が極小曲面であること(§E19.16 定義 3.2)と同値である。

単位法線を−N-Nへ取り替えるとHHとNNがともに符号を変えるので(§E19.6 命題 2.4)、1 の等式は保たれる。

証明. 基底を用意する。∥xu∥2=∥xv∥2=λ2\lVert\boldsymbol{x}_u\rVert^2=\lVert\boldsymbol{x}_v\rVert^2=\lambda^2かつ⟨xu,xv⟩=0\langle\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v\rangle=0であるから、各点で(xu/λ, xv/λ, N)\bigl(\boldsymbol{x}_u/\lambda,\ \boldsymbol{x}_v/\lambda,\ N\bigr)はR3\mathbb{R}^3の正規直交基底である。したがって、ベクトルZ∈R3Z\in\mathbb{R}^3は

Z=⟨Z,xu⟩λ2xu+⟨Z,xv⟩λ2xv+⟨Z,N⟩NZ=\frac{\langle Z,\boldsymbol{x}_u\rangle}{\lambda^2}\boldsymbol{x}_u+\frac{\langle Z,\boldsymbol{x}_v\rangle}{\lambda^2}\boldsymbol{x}_v+\langle Z,N\rangle N

と分解される。

接方向の成分を計算する。x\boldsymbol{x}はC∞C^\inftyであるから「実解析 II」の§E4.4 定理 2.1によりxuv=xvu\boldsymbol{x}_{uv}=\boldsymbol{x}_{vu}である。E=⟨xu,xu⟩E=\langle\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_u\rangleをuuで偏微分して

⟨xuu,xu⟩=12Eu\langle\boldsymbol{x}_{uu},\boldsymbol{x}_u\rangle=\tfrac12E_u

を得る。F=⟨xu,xv⟩F=\langle\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v\rangleをvvで偏微分し、G=⟨xv,xv⟩G=\langle\boldsymbol{x}_v,\boldsymbol{x}_v\rangleをuuで偏微分すると

Fv=⟨xuv,xv⟩+⟨xu,xvv⟩,Gu=2⟨xvu,xv⟩F_v=\langle\boldsymbol{x}_{uv},\boldsymbol{x}_v\rangle+\langle\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_{vv}\rangle,\qquad G_u=2\langle\boldsymbol{x}_{vu},\boldsymbol{x}_v\rangle

であるから

⟨xvv,xu⟩=Fv−12Gu\langle\boldsymbol{x}_{vv},\boldsymbol{x}_u\rangle=F_v-\tfrac12G_u

である。二つを加えると

⟨xuu+xvv, xu⟩=12Eu+Fv−12Gu\bigl\langle\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv},\ \boldsymbol{x}_u\bigr\rangle=\tfrac12E_u+F_v-\tfrac12G_u

である。仮定E=G=λ2E=G=\lambda^2とF=0F=0を代入すると、右辺は12(λ2)u+0−12(λ2)u=0\tfrac12(\lambda^2)_u+0-\tfrac12(\lambda^2)_u=0である。uuとvvを入れ替えた同じ計算により

⟨xuu+xvv, xv⟩=12Gv+Fu−12Ev=0\bigl\langle\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv},\ \boldsymbol{x}_v\bigr\rangle=\tfrac12G_v+F_u-\tfrac12E_v=0

である。

法方向の成分を計算する。§E19.12 定義 2.1により⟨xuu,N⟩=e\langle\boldsymbol{x}_{uu},N\rangle=e、⟨xvv,N⟩=g\langle\boldsymbol{x}_{vv},N\rangle=gであるから

⟨xuu+xvv, N⟩=e+g\bigl\langle\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv},\ N\bigr\rangle=e+g

である。一方、E=G=λ2E=G=\lambda^2とF=0F=0からEG−F2=λ4EG-F^2=\lambda^4であり

H=eG−2fF+gE2(EG−F2)=λ2(e+g)2λ4=e+g2λ2H=\frac{eG-2fF+gE}{2(EG-F^2)}=\frac{\lambda^2(e+g)}{2\lambda^4}=\frac{e+g}{2\lambda^2}

であるからe+g=2λ2He+g=2\lambda^2Hである。

(1)を示す。上の分解にZ=xuu+xvvZ=\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}を代入すると

xuu+xvv=0⋅xu+0⋅xv+2λ2H N=2λ2H N\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}=0\cdot\boldsymbol{x}_u+0\cdot\boldsymbol{x}_v+2\lambda^2H\,N=2\lambda^2H\,N

である。座標(u,v)(u,v)は等温座標であるから、公式 1.8をx\boldsymbol{x}の成分ごとに適用して

Δx=1λ2(xuu+xvv)=2HN\Delta\boldsymbol{x}=\frac{1}{\lambda^2}\bigl(\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}\bigr)=2HN

である。

(2)を示す。∥N∥=1\lVert N\rVert=1であるから∥Δx∥=2∣H∣\lVert\Delta\boldsymbol{x}\rVert=2\lvert H\rvertである。したがって、Δx=0\Delta\boldsymbol{x}=0がWWの全体で成り立つこととH≡0H\equiv0は同値である。

(3)を示す。x\boldsymbol{x}が正則パラメータ表示であるとき、§E19.12 定義 2.1の成分は§E19.4 定義 1.3と§E19.5 命題 3.2の成分に一致するから、上のHHは§E19.6 公式 2.3が与える像の平均曲率に一致する。§E19.16 定義 3.2により、像が極小曲面であることは、その上で平均曲率が恒等的に零であることである。よって 2 の条件は像が極小曲面であることと同値である。▨

例 5.2 (球面による符号と係数の検算).r>0r>0とし、w=1+u2+v2w=1+u^2+v^2と置いて

x(u,v)=rw(2u, 2v, w−2)((u,v)∈R2)\boldsymbol{x}(u,v)=\frac{r}{w}\bigl(2u,\ 2v,\ w-2\bigr)\qquad\bigl((u,v)\in\mathbb{R}^2\bigr)

と定める。この写像は、北極(0,0,r)(0,0,r)からの立体射影の逆写像であり、像は半径rrの球面から北極を除いたものである。

像が球面に含まれることを確かめる。ρ2=u2+v2\rho^2=u^2+v^2と置くとw=1+ρ2w=1+\rho^2、w−2=ρ2−1w-2=\rho^2-1であるから

∥x∥2=r2w2(4ρ2+(ρ2−1)2)=r2w2(ρ4+2ρ2+1)=r2w2 w2=r2\lVert\boldsymbol{x}\rVert^2=\frac{r^2}{w^2}\bigl(4\rho^2+(\rho^2-1)^2\bigr)=\frac{r^2}{w^2}\bigl(\rho^4+2\rho^2+1\bigr)=\frac{r^2}{w^2}\,w^2=r^2

である。

等温座標であることを確かめる。偏微分すると

xu=2rw2(w−2u2, −2uv, 2u),xv=2rw2(−2uv, w−2v2, 2v)\boldsymbol{x}_u=\frac{2r}{w^2}\bigl(w-2u^2,\ -2uv,\ 2u\bigr),\qquad \boldsymbol{x}_v=\frac{2r}{w^2}\bigl(-2uv,\ w-2v^2,\ 2v\bigr)

である。v2+1=w−u2v^2+1=w-u^2に注意して

(w−2u2)2+4u2v2+4u2=w2−4u2w+4u4+4u2(v2+1)=w2−4u2w+4u4+4u2(w−u2)=w2(w-2u^2)^2+4u^2v^2+4u^2=w^2-4u^2w+4u^4+4u^2(v^2+1)=w^2-4u^2w+4u^4+4u^2(w-u^2)=w^2

であるからE=4r2w2E=\dfrac{4r^2}{w^2}である。同じ計算によりG=4r2w2G=\dfrac{4r^2}{w^2}である。さらに

F=4r2w4⋅2uv(−(w−2u2)−(w−2v2)+2)=8r2uvw4⋅2(1+u2+v2−w)=0F=\frac{4r^2}{w^4}\cdot2uv\Bigl(-(w-2u^2)-(w-2v^2)+2\Bigr)=\frac{8r^2uv}{w^4}\cdot2\bigl(1+u^2+v^2-w\bigr)=0

である。よってλ=2rw\lambda=\dfrac{2r}{w}として定理 5.1の仮定が満たされる。

単位法線が内向きであることを確かめる。(u,v)=(0,0)(u,v)=(0,0)ではx=(0,0,−r)\boldsymbol{x}=(0,0,-r)、xu=2r(1,0,0)\boldsymbol{x}_u=2r(1,0,0)、xv=2r(0,1,0)\boldsymbol{x}_v=2r(0,1,0)であるからxu×xv=4r2(0,0,1)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=4r^2(0,0,1)であり、N(0,0)=(0,0,1)=−x(0,0)/rN(0,0)=(0,0,1)=-\boldsymbol{x}(0,0)/rである。関数(u,v)↦⟨N,x⟩/r(u,v)\mapsto\langle N,\boldsymbol{x}\rangle/rはR2\mathbb{R}^2の上で連続であり、値は{1,−1}\{1,-1\}に含まれ、R2\mathbb{R}^2は連結であるから、この値は恒等的に−1-1である。すなわちN=−x/rN=-\boldsymbol{x}/rであり、この向きは球面が囲む領域から見て内向きである。したがって、この向きは本単元が閉曲面に対して固定した向きである。§E19.6 命題 4.3により、内向きの単位法線に関してH≡1/rH\equiv1/rである。

両辺を独立に計算する。まず

∂2∂u21w+∂2∂v21w=−2w−8u2w3−2w−8v2w3=8ρ2−4ww3=4(w−2)w3\frac{\partial^2}{\partial u^2}\frac1w+\frac{\partial^2}{\partial v^2}\frac1w =-\frac{2w-8u^2}{w^3}-\frac{2w-8v^2}{w^3} =\frac{8\rho^2-4w}{w^3}=\frac{4(w-2)}{w^3}

である(ρ2=w−1\rho^2=w-1による)。したがって第三成分については

∂2∂u2(r−2rw)+∂2∂v2(r−2rw)=−8r(w−2)w3\frac{\partial^2}{\partial u^2}\Bigl(r-\frac{2r}{w}\Bigr)+\frac{\partial^2}{\partial v^2}\Bigl(r-\frac{2r}{w}\Bigr)=-\frac{8r(w-2)}{w^3}

である。第一成分については

∂2∂u2uw+∂2∂v2uw=u⋅4(w−2)w3+2⋅(−2uw2)=−8uw3\frac{\partial^2}{\partial u^2}\frac uw+\frac{\partial^2}{\partial v^2}\frac uw=u\cdot\frac{4(w-2)}{w^3}+2\cdot\Bigl(-\frac{2u}{w^2}\Bigr)=\frac{-8u}{w^3}

であるから、値は−16ruw3-\dfrac{16ru}{w^3}である。第二成分も同様に−16rvw3-\dfrac{16rv}{w^3}である。以上をまとめると

xuu+xvv=−8rw3(2u, 2v, w−2)=−8w2 x\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}=-\frac{8r}{w^3}\bigl(2u,\ 2v,\ w-2\bigr)=-\frac{8}{w^2}\,\boldsymbol{x}

である。λ2=4r2/w2\lambda^2=4r^2/w^2であるから

Δx=w24r2(−8w2x)=−2r2 x\Delta\boldsymbol{x}=\frac{w^2}{4r^2}\Bigl(-\frac{8}{w^2}\boldsymbol{x}\Bigr)=-\frac{2}{r^2}\,\boldsymbol{x}

である。一方、H≡1/rH\equiv1/rとN=−x/rN=-\boldsymbol{x}/rから

2HN=2⋅1r⋅(−xr)=−2r2 x2HN=2\cdot\frac1r\cdot\Bigl(-\frac{\boldsymbol{x}}{r}\Bigr)=-\frac{2}{r^2}\,\boldsymbol{x}

である。二つは一致する。

この検算は係数22と符号の両方を確かめている。仮に等式をΔx=HN\Delta\boldsymbol{x}=HNと書いていれば右辺は−x/r2-\boldsymbol{x}/r^2となり、Δx=−2HN\Delta\boldsymbol{x}=-2HNと書いていれば右辺は+2x/r2+2\boldsymbol{x}/r^2となり、いずれも左辺と一致しない。さらに、この符号は「面積の第一変分と極小曲面」の§E19.16 定理 2.1と整合する。同記事の§E19.16 例 2.3は外向きの単位法線を取ってH≡−1/rH\equiv-1/rとし、面積の第一変分−∫2Hφ dA-\int2H\varphi\,dAが、球面を外へ膨らませたときの面積の増加率と一致することを確かめている。本例で内向きを取るとHHとNNがともに符号を変えるので、積2HN2HNは変わらない。

例 5.3 (懸垂面と常螺旋面の共形なパラメータ表示). 懸垂面。x(u,v)=(cosh⁡ucos⁡v, cosh⁡usin⁡v, u)\boldsymbol{x}(u,v)=\bigl(\cosh u\cos v,\ \cosh u\sin v,\ u\bigr)と置く。これは「面積の第一変分と極小曲面」の§E19.16 例 4.1の懸垂面の母数をc=1c=1とした場合である。

xu=(sinh⁡ucos⁡v, sinh⁡usin⁡v, 1),xv=(−cosh⁡usin⁡v, cosh⁡ucos⁡v, 0)\boldsymbol{x}_u=\bigl(\sinh u\cos v,\ \sinh u\sin v,\ 1\bigr),\qquad \boldsymbol{x}_v=\bigl(-\cosh u\sin v,\ \cosh u\cos v,\ 0\bigr)

であるからE=sinh⁡2u+1=cosh⁡2uE=\sinh^2u+1=\cosh^2u、G=cosh⁡2uG=\cosh^2u、F=0F=0であり、λ=cosh⁡u\lambda=\cosh uとして定理 5.1の仮定が満たされる。さらに

xuu=(cosh⁡ucos⁡v, cosh⁡usin⁡v, 0),xvv=(−cosh⁡ucos⁡v, −cosh⁡usin⁡v, 0)\boldsymbol{x}_{uu}=\bigl(\cosh u\cos v,\ \cosh u\sin v,\ 0\bigr),\qquad \boldsymbol{x}_{vv}=\bigl(-\cosh u\cos v,\ -\cosh u\sin v,\ 0\bigr)

であるからxuu+xvv=0\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}=0であり、Δx=0\Delta\boldsymbol{x}=0である。すなわちx\boldsymbol{x}は調和写像である。定理 5.1 (2)によりH≡0H\equiv0であり、§E19.16 例 4.1の直接計算と一致する。

常螺旋面。x(u,v)=(sinh⁡ucos⁡v, sinh⁡usin⁡v, v)\boldsymbol{x}(u,v)=\bigl(\sinh u\cos v,\ \sinh u\sin v,\ v\bigr)と置く。t=sinh⁡ut=\sinh uと置くと、これは§E19.6 命題 4.3の常螺旋面(母数c=1c=1)の母数の取り替えであり、sinh⁡\sinhがR\mathbb{R}からR\mathbb{R}への微分同相であるから、像は同じ正則曲面である。

xu=(cosh⁡ucos⁡v, cosh⁡usin⁡v, 0),xv=(−sinh⁡usin⁡v, sinh⁡ucos⁡v, 1)\boldsymbol{x}_u=\bigl(\cosh u\cos v,\ \cosh u\sin v,\ 0\bigr),\qquad \boldsymbol{x}_v=\bigl(-\sinh u\sin v,\ \sinh u\cos v,\ 1\bigr)

であるからE=cosh⁡2uE=\cosh^2u、G=sinh⁡2u+1=cosh⁡2uG=\sinh^2u+1=\cosh^2u、F=0F=0であり、ここでもλ=cosh⁡u\lambda=\cosh uである。

xuu=(sinh⁡ucos⁡v, sinh⁡usin⁡v, 0),xvv=(−sinh⁡ucos⁡v, −sinh⁡usin⁡v, 0)\boldsymbol{x}_{uu}=\bigl(\sinh u\cos v,\ \sinh u\sin v,\ 0\bigr),\qquad \boldsymbol{x}_{vv}=\bigl(-\sinh u\cos v,\ -\sinh u\sin v,\ 0\bigr)

であるからxuu+xvv=0\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}=0であり、x\boldsymbol{x}は調和写像である。したがってH≡0H\equiv0であり、§E19.6 命題 4.3の表と一致する。

母数をc≠1c\ne1に取ると、上の懸垂面の表示は共形でなくなる。§E19.16 例 4.1の懸垂面ではE=cosh⁡2(u/c)E=\cosh^2(u/c)、G=c2cosh⁡2(u/c)G=c^2\cosh^2(u/c)であるから、E=GE=Gが成り立つのはc=1c=1の場合に限る。極小性そのものは母数に依らない。したがってこの例は、調和性が座標の取り方に依存する条件であり、極小性が座標の取り方に依らない条件であることを示している。定理 5.1が二つを結ぶのは、等温座標が与えられているという仮定のもとに限る。

6 演習

問題 6.1.

  1. 命題 1.4 (2)の証明のうち、∑iΓiji\sum_i\Gamma^i_{ij}がdet⁡g\sqrt{\det g}の対数微分に等しいことを示した部分を再現する。Christoffel 記号の式の三つの項のうち、第一項の和と第三項の和が打ち消し合う理由を、添字の入れ替えとgil=glig^{il}=g^{li}の使い方に即して述べる。
  2. 命題 2.2の証明でg−1=AATg^{-1}=AA^{\mathsf T}を導いた箇所を再現する。(ϵ1,ϵ2)(\epsilon_1,\epsilon_2)が正規直交でない基底であるとき、∑a∥dfp(ϵa)∥2\sum_a\lVert df_p(\epsilon_a)\rVert^2が基底の取り方に依存することを、平面の標準的な第一基本形式とf(u,v)=uf(u,v)=uの場合に具体例で示す。
  3. 定理 3.4の証明で§E19.8 補題 2.1を二度適用した。二度目の適用のためにη\etaと∂sη\partial_s\etaの連続性を確かめる段を省くと、同補題のどの仮定が満たされないかを述べる。
  4. 定理 3.4の証明のうち、Pi=det⁡g∑jgij⟨V,∂jf⟩P^i=\sqrt{\det g}\sum_jg^{ij}\langle V,\partial_jf\rangleと置いてVVの微分を外した部分を再現する。PiP^iの定義から因子det⁡g\sqrt{\det g}を落とすと、公式 1.6の形が現れなくなる理由を述べる。
  5. 定理 4.2 (1)⇒\Rightarrow(2)を導く部分を再現する。変分場をV=φcV=\varphi cという形に限ってよい理由と、c∈Rnc\in\mathbb{R}^nを任意に動かす必要がある理由を、それぞれ述べる。
  6. 定理 4.2の証明が§E19.16 補題 3.1を用い、§E19.8 補題 3.5を用いていない理由を述べる。後者を二重積分へ適用しようとすると、主張のどの部分が対応しなくなるかを指摘する。
  7. 定理 5.1の証明のうち、接方向の二つの成分が零になる部分を再現する。仮定F=0F=0を落としてE=GE=Gだけを仮定した場合に、⟨xuu+xvv,xu⟩\langle\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv},\boldsymbol{x}_u\rangleがどのような式になるかを書き下す。
  8. 例 5.2の検算を、単位法線を外向きに取った場合について書き直す。HH、NNおよび積2HN2HNがそれぞれどのように変わるかを追い、等式が保たれることを確かめる。
  9. 常螺旋面の母数c=2c=2の表示x(u,v)=(ucos⁡v, usin⁡v, 2v)\boldsymbol{x}(u,v)=(u\cos v,\ u\sin v,\ 2v)について第一基本形式の成分を計算し、この座標が等温座標でないことを確かめる。次にxuu+xvv\boldsymbol{x}_{uu}+\boldsymbol{x}_{vv}を計算し、その値が定理 5.1 (1)の右辺と一致しないことを確かめる。この不一致が定理の反例にならない理由を述べる。
  10. 例 2.3を用いて、共形なはめ込みについて Dirichlet エネルギーと面積が一致することを再現する。この一致が、定理 4.2と§E19.16 定理 3.4をどのように結ぶかを述べる。

7 境界と次

標的を Euclid 空間に限ったこと。定義 4.1は標的がRn\mathbb{R}^nである場合の定義である。標的が第一基本形式を持つ一般の多様体であるとき、定理 3.4の右辺には標的の Christoffel 記号を含む項が加わり、方程式は張力場が消えるという形になる。その定式化、および標的の曲率が解の振る舞いへ与える制約は「Riemann 幾何 II」が扱う。

等温座標の存在を証明していないこと。定理 5.1は、等温座標が与えられている場合についての主張である。第一基本形式を与えられた曲面のどの点のまわりにも等温座標を取ることができるという事実は成り立つが、その証明は本単元の範囲外であり、本記事のどの主張の根拠にも用いていない。例 5.3が示すとおり、極小性は座標の取り方に依らない条件であり、調和性は座標の取り方に依存する条件である。等温座標の存在は、後者から前者を復元するために必要になる。

解の存在を扱わないこと。本記事が示したのは、臨界点であることとΔf=0\Delta f=0が同値であることだけである。境界の値を指定したときに調和写像が存在するかどうか、その解が滑らかであるかどうか、および臨界点が最小点であるかどうかは、いずれも本記事の範囲外である。汎関数の下限が達成されることを示す直接法、下半連続性および弱コンパクト性は「変分法」が扱う。調和写像の存在、正則性、第二変分および安定性は「Riemann 幾何 II」が扱う。

次の記事へ渡すもの。定義 2.1と定義 4.1は「極小曲面と調和性の計算実験」が用いる。同記事は、長方形領域の上の Dirichlet 問題を差分で離散化し、反復によって離散エネルギーと離散調和性の残差が減少することを観察する。公式 1.8は、その離散化が五点差分の形になる根拠である。

参考文献

  1. James, Jr. Eells and J. H. Sampson, Harmonic mappings of Riemannian manifolds, American Journal of Mathematics 86 (1964), no. 1, 109–160.調和写像をエネルギー汎関数の臨界点として定式化する枠組みと、標的が一般の Riemann 多様体である場合に第一変分へ加わる項を参考にした。
  2. Jürgen Jost, Riemannian Geometry and Geometric Analysis, 7th ed., Universitext, Springer, Cham, 2017.エネルギー汎関数の第一変分の計算と、調和写像の方程式の書き方を参考にした。
  3. Isaac Chavel, Eigenvalues in Riemannian Geometry, Pure and Applied Mathematics 115, Academic Press, 1984.勾配・発散・Laplace–Beltrami 作用素の定義と、局所座標における表示を参考にした。
  4. Tobias H. Colding and William P., II Minicozzi, A Course in Minimal Surfaces, Graduate Studies in Mathematics 121, American Mathematical Society, Providence, 2011.共形なはめ込みについて、調和であることと平均曲率が恒等的に零であることが同値であるという主張の形を参考にした。

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