§D1.19微積分学の基本定理

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微積分学の基本定理は、積分によって定めた関数を微分すると被積分関数が得られることと、原始関数の端点差が定積分を与えることを述べます。

以下ffを[a,b][a,b]上の連続関数とします。

1 第一基本定理

定理 1.1 (第一基本定理).a<ba<bとし、f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\mathbb{R}を連続関数とする。F(x)=∫axf(t) dtF(x)=\displaystyle\int_a^x f(t)\,dtとおくと、FFは(a,b)(a,b)で微分可能であり、F′(x)=f(x)F'(x)=f(x)である。端点では右微分F+′(a)=f(a)F'_+(a)=f(a)と左微分F−′(b)=f(b)F'_-(b)=f(b)が成り立つ。

証明.x∈(a,b)x\in(a,b)とh≠0h\ne0(x+h∈[a,b]x+h\in[a,b])をとる。§D1.17 命題 3.8と§D1.17 定義 3.7により

F(x+h)−F(x)=∫xx+hf(t) dtF(x+h) - F(x) = \int_x^{x+h} f(t)\,dt

である。さらに、§D1.17 系 3.3を[min⁡{x,x+h},max⁡{x,x+h}][\min\{x,x+h\},\max\{x,x+h\}]上で適用し、§D1.17 定義 3.7によって向きを戻すと、

F(x+h)−F(x)h−f(x)=1h∫xx+h(f(t)−f(x)) dt.\frac{F(x+h)-F(x)}{h} - f(x) = \frac1h \int_x^{x+h} \big(f(t) - f(x)\big)\,dt.

ε>0\varepsilon>0をとる。ffの連続性により、あるδ>0\delta>0が存在して、∣t−x∣<δ|t-x|<\deltaならば∣f(t)−f(x)∣<ε|f(t)-f(x)|<\varepsilonとなる。0<∣h∣<δ0<|h|<\deltaのとき、xxとx+hx+hの間の各ttについて∣f(t)−f(x)∣<ε|f(t)-f(x)|<\varepsilonであるから、§D1.17 命題 3.9により

∣1h∫xx+h(f(t)−f(x)) dt∣≤1∣h∣⋅∣h∣⋅ε=ε.\left|\frac1h \int_x^{x+h} (f(t)-f(x))\,dt\right| \le \frac1{|h|}\cdot|h|\cdot\varepsilon = \varepsilon.

したがって

lim⁡h→0F(x+h)−F(x)h=f(x)\lim_{h\to0}\frac{F(x+h)-F(x)}{h}=f(x)

であり、F′(x)=f(x)F'(x)=f(x)である。

x=ax=aとしてh>0h>0とすると、上の差商の等式と長さ評価をそのまま適用することができる。aaにおけるffの連続性により

lim⁡h→0+F(a+h)−F(a)h=f(a)\lim_{h\to0+}\frac{F(a+h)-F(a)}{h}=f(a)

であるから、F+′(a)=f(a)F'_+(a)=f(a)である。同様に、x=bx=bとしてh<0h<0とし、bbにおけるffの連続性を用いると

lim⁡h→0−F(b+h)−F(b)h=f(b)\lim_{h\to0-}\frac{F(b+h)-F(b)}{h}=f(b)

であるから、F−′(b)=f(b)F'_-(b)=f(b)である。▨

例 1.2 (第一基本定理を具体例で確かめる).f(t)=t2f(t) = t^2に対してはF(x)=∫0xt2 dt=x33F(x) = \displaystyle\int_0^x t^2\,dt = \dfrac{x^3}{3}なので、F′(x)=x2=f(x)F'(x) = x^2 = f(x)となる。積分してから微分すると元の関数に戻るという第一基本定理の主張が、この計算にそのまま現れている。

2 第二基本定理

定理 2.1 (第二基本定理).a<ba<bとし、f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\mathbb{R}を連続関数とする。F:[a,b]→RF:[a,b]\to\mathbb{R}をffの任意の原始関数、すなわち[a,b][a,b]で連続かつ(a,b)(a,b)で微分可能であり、F′=fF'=fを満たす関数とすると

∫abf(x) dx=F(b)−F(a).\int_a^b f(x)\,dx = F(b) - F(a).

証明.G(x)=∫axf(t) dtG(x)=\displaystyle\int_a^x f(t)\,dtとおく。定理 1.1により、GGは[a,b][a,b]上連続かつ(a,b)(a,b)上微分可能であり、G′=fG'=fである。したがってF−GF-Gは(a,b)(a,b)上で導関数が00であり、§D1.14 系 4.1により(a,b)(a,b)上で定数である。F−GF-Gは[a,b][a,b]上連続であるから、この定数値は端点にも延長され、F(b)−G(b)=F(a)−G(a)F(b)-G(b)=F(a)-G(a)となる。G(a)=0G(a)=0およびG(b)=∫abf(t) dtG(b)=\displaystyle\int_a^b f(t)\,dtであるから、主張が従う。▨

証明 (リーマン和による別証明).ε>0\varepsilon>0をとる。ffは連続であるから§D1.17 定理 2.5により可積分であり、§D1.17 定理 2.4により

U(f,P)−L(f,P)<εU(f,P)-L(f,P)<\varepsilon

を満たす分割P:a=x0<⋯<xn=bP:a=x_0<\cdots<x_n=bが存在する。各小区間でFFに§D1.14 定理 3.1 (平均値の定理)を適用すると、あるξi∈(xi−1,xi)\xi_i\in(x_{i-1},x_i)が存在して

F(xi)−F(xi−1)=F′(ξi)(xi−xi−1)=f(ξi)(xi−xi−1)F(x_i)-F(x_{i-1})=F'(\xi_i)(x_i-x_{i-1})=f(\xi_i)(x_i-x_{i-1})

となる。これらの等式を加えると

F(b)−F(a)=∑if(ξi)(xi−xi−1).F(b) - F(a) = \sum_i f(\xi_i)(x_i - x_{i-1}).

各ξi\xi_iは対応する小区間に属するから、右辺のリーマン和をSPS_Pとおくと

L(f,P)≤SP≤U(f,P)L(f,P)\leq S_P\leq U(f,P)

である。一方、§D1.17 命題 2.3により

L(f,P)≤∫abf(x) dx≤U(f,P)L(f,P)\leq\int_a^b f(x)\,dx\leq U(f,P)

である。したがって

∣F(b)−F(a)−∫abf(x) dx∣=∣SP−∫abf(x) dx∣≤U(f,P)−L(f,P)<ε.\left|F(b)-F(a)-\int_a^b f(x)\,dx\right| =\left|S_P-\int_a^b f(x)\,dx\right| \leq U(f,P)-L(f,P)<\varepsilon.

ε>0\varepsilon>0は任意であるから、F(b)−F(a)=∫abf(x) dxF(b)-F(a)=\int_a^b f(x)\,dxである。▨

第一基本定理は、積分によって定めた関数の変化率が被積分関数に等しいことを示します。

3 積分の平均値の定理と可変上端

第一基本定理の証明の背後には、次の素直な事実があります。

命題 3.1 (積分の平均値の定理).a<ba<bとし、f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\mathbb{R}を連続関数とする。このとき、あるξ∈[a,b]\xi\in[a,b]が存在して∫abf(x) dx=f(ξ)(b−a)\displaystyle\int_a^b f(x)\,dx=f(\xi)(b-a)が成り立つ。

証明.§D1.13 定理 2.1 (最大値の定理)により、f(u)=mf(u)=mとf(v)=Mf(v)=Mを満たすu,v∈[a,b]u,v\in[a,b]が存在する。m≤f≤Mm\leq f\leq Mであるから、§D1.17 命題 3.4により

m(b−a)≤∫abf(x) dx≤M(b−a)m(b-a)\leq\int_a^b f(x)\,dx\leq M(b-a)

である。したがって平均値1b−a∫abf(x) dx\frac{1}{b-a}\int_a^b f(x)\,dxは[m,M][m,M]に属する。m=Mm=Mならばξ=u\xi=uとすればよい。m<Mm<Mならばu≠vu\ne vであり、c=min⁡{u,v}c=\min\{u,v\}、d=max⁡{u,v}d=\max\{u,v\}とおくと、f(c)f(c)とf(d)f(d)はmmとMMのいずれかである。§D1.12 系 1.2 (中間値の定理・一般形)を[c,d][c,d]上のffに適用すると、この平均値をf(ξ)f(\xi)にとるξ∈[c,d]⊆[a,b]\xi\in[c,d]\subseteq[a,b]が存在する。▨

注意 3.2. 積分平均値の定理は、「区間のどこかに、その高さで長方形にならすと面積が等しくなる点がある」という主張である。F(x)=∫axfF(x) = \int_a^x fに用いると、F(x+h)−F(x)=f(ξh) hF(x+h) - F(x) = f(\xi_h)\,hとなる。ここで、ξh\xi_hはxxとx+hx+hの間にある。h→0h \to 0ならばξh→x\xi_h \to xであるから、ffの連続性によりF′(x)=f(x)F'(x) = f(x)が従う。これは第一基本定理の別証明にもなる。

例 3.3 (可変上端と連鎖律). 上端がxxの関数のときは連鎖律を併せる。たとえばddx∫0x2e−t2 dt\dfrac{d}{dx}\displaystyle\int_0^{x^2} e^{-t^2}\,dtは、G(u)=∫0ue−t2 dtG(u) = \int_0^u e^{-t^2}\,dt(G′(u)=e−u2G'(u) = e^{-u^2}、第一基本定理)とu=x2u = x^2の合成なので、ddxG(x2)=G′(x2)⋅2x=2x e−x4\dfrac{d}{dx}G(x^2) = G'(x^2)\cdot 2x = 2x\,e^{-x^4}。原始関数が初等関数で書けないe−t2e^{-t^2}でも、微分は基本定理と連鎖律だけで求まる。

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