§D1.23べき級数と収束半径

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多項式は、係数の個数が有限である式です。項の個数を無限にした∑n=0∞anxn\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^nを扱うには、まずどのxxに対してこの級数が収束するのかを決めなければなりません。本記事は、収束するxxの範囲が原点を中心とする区間になること、その区間の半径が係数だけから定まること、そして半径の内側で項ごとの微分と積分が許されることを示します。

用いるのは、級数の収束判定(§D1.21 定理 1.3、§D1.21 定理 2.1)と、前の記事で扱った一様収束です。範囲の決定には収束判定を、項ごとの微分と積分には一様収束を用います。

1 収束する範囲は区間になる

定義 1.1 (べき級数). 実数の列{an}n≥0\{a_n\}_{n\ge0}に対し、xxを変数とする級数

∑n=0∞anxn\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^n

をべき級数 (power series) という。x=0x=0ではこの級数の和はa0a_0であり、つねに収束する。

収束する範囲を決めるための出発点は、次の補題です。一点で収束することが、それより原点に近いすべての点で絶対収束することを導きます。

補題 1.2 (アーベルの補題).x0≠0x_0 \ne 0とし、数列{anx0 n}\{a_n x_0^{\,n}\}が有界であるとする。このとき∣x∣<∣x0∣|x|<|x_0|を満たすすべてのxxについて、∑n=0∞anxn\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^nは絶対収束する。

証明. 仮定より、あるM>0M>0が存在して、すべてのnnについて∣anx0 n∣≤M|a_n x_0^{\,n}| \le Mとなる。∣x∣<∣x0∣|x|<|x_0|とし、t=∣x∣∣x0∣t=\dfrac{|x|}{|x_0|}とおくと0≤t<10 \le t<1である。このとき

∣anxn∣=∣anx0 n∣⋅(∣x∣∣x0∣)n≤Mtn|a_n x^n|=|a_n x_0^{\,n}|\cdot\left(\frac{|x|}{|x_0|}\right)^{n} \le M t^{n}

が成り立つ。∑Mtn\sum M t^nは公比ttの等比級数で収束するから、§D1.21 定理 1.3により∑∣anxn∣\sum |a_n x^n|は収束する。▨

定義 1.3 (収束半径). べき級数∑anxn\sum a_n x^nに対し

E={ ∣x∣ : x∈R, ∑n=0∞anxn が収束する }E=\Bigl\{\,|x| \ :\ x \in \mathbb{R},\ \sum_{n=0}^{\infty}a_n x^n \text{ が収束する}\,\Bigr\}

とおく。0∈E0 \in Eである。EEが上に有界であるときR=sup⁡ER=\sup Eとおき、上に有界でないときR=∞R=\inftyとおく。このRRを、このべき級数の収束半径 (radius of convergence) という。

定理 1.4 (収束半径による範囲の決定). べき級数∑anxn\sum a_n x^nの収束半径をRRとする。

  1. ∣x∣<R|x|<Rを満たすxxについて、∑anxn\sum a_n x^nは絶対収束する。
  2. R<∞R<\inftyとする。∣x∣>R|x|>Rを満たすxxについて、∑anxn\sum a_n x^nは発散する。

証明.(1)を示す。∣x∣<R|x|<Rとする。R=∞R=\inftyのときEEは上に有界でないので、∣x∣<r|x|<rを満たすr∈Er \in Eが存在する。R<∞R<\inftyのとき、∣x∣|x|はEEの上界ではないので(RRが最小の上界であることによる。§D1.4 命題 1.6をε=R−∣x∣\varepsilon=R-|x|に対して用いてもよい)、やはり∣x∣<r|x|<rを満たすr∈Er \in Eが存在する。

r∈Er \in Eであるから、∣x0∣=r|x_0|=rかつ∑anx0 n\sum a_n x_0^{\,n}が収束するようなx0x_0が存在する。収束する級数の項は00へ収束するから(§D1.21 命題 1.1)、数列{anx0 n}\{a_n x_0^{\,n}\}は有界である。∣x∣<r=∣x0∣|x|<r=|x_0|であるから、補題 1.2により∑anxn\sum a_n x^nは絶対収束する。

(2)を示す。∣x∣>R|x|>Rとする。もし∑anxn\sum a_n x^nが収束するとすれば∣x∣∈E|x| \in Eとなり、∣x∣>R=sup⁡E|x|>R=\sup Eに反する。したがって発散する。▨

残るのは∣x∣=R|x|=R(0<R<∞0<R<\infty)の場合です。この場合は収束半径だけでは決まりません。同じ収束半径をもつべき級数のうちに、両端で発散するもの、片方の端でだけ収束するもの、両端で絶対収束するものがあります。

例 1.5 (境界では収束することも発散することもある). 次の三つのべき級数は、いずれも収束半径が11である。

∣x∣>1|x|>1のときに∣x∣nn2→∞\dfrac{|x|^n}{n^2} \to \inftyとなることを、先に確かめておく。∣x∣=1+h|x|=1+h(h>0h>0)と書くと、二項定理によりn≥3n\ge3で(1+h)n≥n(n−1)(n−2)6h3(1+h)^n \ge \dfrac{n(n-1)(n-2)}{6}h^3であるから、∣x∣nn2≥(n−1)(n−2)6nh3→∞\dfrac{|x|^n}{n^2} \ge \dfrac{(n-1)(n-2)}{6n}h^3 \to \inftyとなる。n≥1n\ge1では∣x∣nn≥∣x∣nn2\dfrac{|x|^n}{n} \ge \dfrac{|x|^n}{n^2}であるから、∣x∣nn→∞\dfrac{|x|^n}{n} \to \inftyでもある。

  • ∑n≥0xn\sum_{n\ge0} x^n:∣x∣<1|x|<1では等比級数として収束し、∣x∣≥1|x|\ge1では項が00へ収束しないので発散する(§D1.21 命題 1.1)。よって収束半径は11である。x=1x=1でもx=−1x=-1でも発散する。
  • ∑n≥1xnn\sum_{n\ge1} \dfrac{x^n}{n}:∣x∣<1|x|<1では∣xnn∣≤∣x∣n\left|\dfrac{x^n}{n}\right| \le |x|^nと等比級数の比較により絶対収束し、∣x∣>1|x|>1では項の絶対値∣x∣nn\dfrac{|x|^n}{n}が00へ収束しないので発散する。よって収束半径は11である。x=1x=1では調和級数となって発散し、x=−1x=-1では交代級数として収束する(§D1.21 定理 5.1)。
  • ∑n≥1xnn2\sum_{n\ge1} \dfrac{x^n}{n^2}:同様に収束半径は11である。x=±1x=\pm1ではいずれも∑1n2\sum \dfrac1{n^2}と比較して絶対収束する(§D1.21 例 4.2)。

2 係数から収束半径を求める

定理 2.1 (コーシー・アダマールの公式). べき級数∑anxn\sum a_n x^nの収束半径をRRとし、

L=lim sup⁡n→∞∣an∣1/nL=\limsup_{n\to\infty}|a_n|^{1/n}

とおく。LLは§D1.8 定義 2.5で定めた上極限であり、∣an∣1/n≥0|a_n|^{1/n} \ge 0であるから定まる。このとき、0<L<∞0<L<\inftyならばR=1LR=\dfrac1L、L=0L=0ならばR=∞R=\infty、L=∞L=\inftyならばR=0R=0である。

証明.x≠0x \ne 0とし、L<1∣x∣L<\dfrac{1}{|x|}が成り立つとする。このときL<θ<1∣x∣L<\theta<\dfrac1{|x|}を満たすθ>0\theta>0を取ることができる(L=0L=0のときも、θ\thetaを0<θ<1∣x∣0<\theta<\frac1{|x|}の範囲に取ればよい)。§D1.8 定理 2.7 (3)により、ある正の整数NNが存在して、すべてのn≥Nn\ge Nについて∣an∣1/n<θ|a_n|^{1/n}<\thetaとなる。したがって∣anxn∣<(θ∣x∣)n|a_n x^n|<(\theta|x|)^nである。θ∣x∣<1\theta|x|<1であるから、等比級数との比較(§D1.21 定理 1.3)により∑anxn\sum a_n x^nは絶対収束する。

x≠0x \ne 0とし、L>1∣x∣L>\dfrac1{|x|}が成り立つとする。このときL<∞L<\inftyならば1∣x∣<θ<L\dfrac1{|x|}<\theta<Lを満たすθ\thetaを取る。§D1.8 定理 2.7 (3)により、任意の正の整数NNに対して、あるk≥Nk\ge Nが存在して∣ak∣1/k>θ|a_k|^{1/k}>\thetaとなる。L=∞L=\inftyならば1∣x∣<θ\dfrac1{|x|}<\thetaを満たすθ\thetaを取る。同じ§D1.8 定理 2.7 (3)により、任意の正の整数NNに対して、あるk≥Nk\ge Nが存在して∣ak∣1/k>θ|a_k|^{1/k}>\thetaとなる。いずれの場合も、そのkkについて∣akxk∣>(θ∣x∣)k>1|a_k x^k|>(\theta|x|)^k>1である。したがって項anxna_n x^nは00へ収束せず、§D1.21 命題 1.1により∑anxn\sum a_n x^nは発散する。

0<L<∞0<L<\inftyのとき、∣x∣<1L|x|<\frac1Lで収束し∣x∣>1L|x|>\frac1Lで発散するので、収束半径の定義からR=1LR=\frac1Lである。L=0L=0のときはすべてのxxで収束するのでR=∞R=\infty、L=∞L=\inftyのときはx≠0x \ne 0のすべてで発散するのでR=0R=0である。▨

例 2.2 (収束半径の計算).

  • ∑2nxn\sum 2^n x^n:∣an∣1/n=2|a_n|^{1/n}=2であるからL=2L=2であり、収束半径は12\dfrac12である。
  • ∑xnn!\sum \dfrac{x^n}{n!}:x≠0x \ne 0のとき、隣り合う項の比の絶対値は∣x∣n+1/(n+1)!∣x∣n/n!=∣x∣n+1→0<1\dfrac{|x|^{n+1}/(n+1)!}{|x|^n/n!}=\dfrac{|x|}{n+1} \to 0<1であるから、§D1.21 定理 2.1によりすべてのxxで絶対収束する。したがって収束半径は∞\inftyである。
  • ∑n! xn\sum n!\,x^n:x≠0x \ne 0のとき、同じ比は(n+1)∣x∣→∞(n+1)|x| \to \inftyであるから、§D1.21 定理 2.1により発散する。したがって収束半径は00である。

3 内部の有界閉区間では一様収束する

収束半径の内側の各点で収束することは示しました。項ごとの微分と積分を許すには、点ごとの収束では足りず、一様収束が要ります(§D1.22 定義 1.1)。開区間(−R,R)(-R,R)全体で一様収束するとは限りませんが、その内部の有界閉区間では一様収束します。

定理 3.1 (内部の有界閉区間での一様収束). べき級数∑anxn\sum a_n x^nの収束半径をRRとし、0<r<R0<r<Rとする。このとき部分和の列sN(x)=∑n=0Nanxns_N(x)=\sum_{n=0}^{N}a_n x^nは、区間[−r,r][-r,r]上で一様収束する。

証明.r<Rr<Rであるから、定理 1.4により∑∣an∣rn\sum|a_n|r^nは収束する。Mn=∣an∣rnM_n=|a_n|r^nとおくと、∣x∣≤r|x| \le rを満たすすべてのxxについて∣anxn∣≤Mn|a_n x^n| \le M_nであり、∑Mn\sum M_nは収束する。したがって§D1.22 定理 5.2により、{sN}\{s_N\}は[−r,r][-r,r]上で一様収束する。▨

系 3.2 (べき級数の和は連続である).R>0R>0とし、∣x∣<R|x|<Rでf(x)=∑n=0∞anxnf(x)=\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^nとおく。このときffは開区間(−R,R)(-R,R)上で連続である。

証明.x1∈(−R,R)x_1 \in (-R,R)を取り、∣x1∣<r<R|x_1|<r<Rを満たすrrを選ぶ。定理 3.1により、部分和の列は[−r,r][-r,r]上でffへ一様収束する。各部分和は多項式であるから[−r,r][-r,r]上連続で、§D1.22 定理 2.1によりffは[−r,r][-r,r]上連続である。とくにx1x_1で連続である。x1x_1は任意であったから、ffは(−R,R)(-R,R)上連続である。▨

4 項ごとの微分と積分

定理 4.1 (項ごとの積分).R>0R>0とし、∣x∣<R|x|<Rでf(x)=∑n=0∞anxnf(x)=\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^nとおく。c<dc<dかつ[c,d]⊆(−R,R)[c,d] \subseteq (-R,R)ならば、右辺の級数は収束して

∫cdf(x) dx=∑n=0∞an d n+1−c n+1n+1\int_c^d f(x)\,dx=\sum_{n=0}^{\infty}a_n\,\frac{d^{\,n+1}-c^{\,n+1}}{n+1}

が成り立つ。

証明.r=max⁡{∣c∣,∣d∣}r=\max\{|c|,|d|\}とおくとr<Rr<Rであり、[c,d]⊆[−r,r][c,d] \subseteq [-r,r]である。定理 3.1により、部分和の列{sN}\{s_N\}は[−r,r][-r,r]上でffへ一様収束する。各sNs_Nは多項式であるから連続であり、したがって可積分である(§D1.17 定理 2.5)。よって§D1.22 定理 3.1により

∫cdsN(x) dx⟶∫cdf(x) dx(N→∞)\int_c^d s_N(x)\,dx \longrightarrow \int_c^d f(x)\,dx \qquad (N\to\infty)

が成り立つ。

左辺を計算する。SN(x)=∑n=0Nanxn+1n+1S_N(x)=\sum_{n=0}^{N}a_n\dfrac{x^{n+1}}{n+1}は多項式であり、有限個の和の微分は各項の微分の和に等しいので(§D1.6 定理 2.1の和についての法則から従う)、SN′=sNS_N'=s_Nである。sNs_Nは連続であるから§D1.19 定理 2.1により

∫cdsN(x) dx=SN(d)−SN(c)=∑n=0Nan d n+1−c n+1n+1\int_c^d s_N(x)\,dx=S_N(d)-S_N(c)=\sum_{n=0}^{N}a_n\,\frac{d^{\,n+1}-c^{\,n+1}}{n+1}

である。左辺の数列が収束するので、右辺の部分和も収束し、両者の極限は等しくなる。▨

項ごとに微分するには、§D1.22 定理 4.2を用います。そのためには、項ごとに微分した級数が同じ区間で一様収束することを確かめなければなりません。まず、収束半径が変わらないことを示します。

補題 4.2 (項ごとに微分した級数の収束半径).∑n≥0anxn\sum_{n\ge0}a_n x^nの収束半径をRRとすると、∑n≥1n anxn−1\sum_{n\ge1}n\,a_n x^{n-1}の収束半径もRRである。

証明.x=0x=0のときは第1項だけが残るので明らかである。0<∣x∣<R0<|x|<Rとし、∣x∣<r<R|x|<r<Rを満たすrrを取る。定理 1.4により∑∣an∣rn\sum|a_n|r^nは収束する。t=∣x∣rt=\dfrac{|x|}{r}とおくと0<t<10<t<1である。級数∑n≥1n tn−1\sum_{n\ge1}n\,t^{n-1}は、隣り合う項の比が(n+1)tnn tn−1=n+1nt→t<1\dfrac{(n+1)t^{n}}{n\,t^{n-1}}=\dfrac{n+1}{n}t \to t<1となるので収束し(§D1.21 定理 2.1)、したがって項n tn−1n\,t^{n-1}は00へ収束して有界である。その上界をKKとすると

n∣an∣∣x∣n−1=∣an∣rn⋅n t n−1r≤Kr ∣an∣rnn|a_n||x|^{n-1}=|a_n|r^n\cdot\frac{n\,t^{\,n-1}}{r} \le \frac{K}{r}\,|a_n|r^n

となり、§D1.21 定理 1.3により∑n∣an∣∣x∣n−1\sum n|a_n||x|^{n-1}は収束する。

R<∞R<\inftyとし∣x∣>R|x|>Rとする。∑n anxn−1\sum n\,a_n x^{n-1}が収束すると仮定すると、§D1.21 命題 1.1によりn anxn−1→0n\,a_n x^{n-1} \to 0となり、この数列は有界である。その上界をMMとすると、n≥1n\ge1について∣anxn∣=∣x∣⋅∣anxn−1∣≤∣x∣Mn≤∣x∣M|a_n x^n|=|x|\cdot|a_n x^{n-1}| \le \dfrac{|x|M}{n} \le |x|Mであるから、数列{anxn}\{a_n x^n\}は有界である。よって∣y∣<∣x∣|y|<|x|を満たす任意のyyに対し、補題 1.2により∑anyn\sum a_n y^nは収束し、∣y∣≤R|y| \le Rとなる。∣y∣|y|は∣x∣|x|にいくらでも近く取ることができるので∣x∣≤R|x| \le Rとなり、∣x∣>R|x|>Rに反する。したがって発散する。

以上より、∑n anxn−1\sum n\,a_n x^{n-1}は∣x∣<R|x|<Rで収束し∣x∣>R|x|>Rで発散するので、その収束半径はRRである。▨

定理 4.3 (項ごとの微分).R>0R>0とし、∣x∣<R|x|<Rでf(x)=∑n=0∞anxnf(x)=\sum_{n=0}^{\infty}a_n x^nとおく。このときffは開区間(−R,R)(-R,R)で微分可能であり、

f′(x)=∑n=1∞n anxn−1(∣x∣<R)f'(x)=\sum_{n=1}^{\infty}n\,a_n x^{n-1} \qquad (|x|<R)

が成り立つ。

証明.x1∈(−R,R)x_1 \in (-R,R)を取り、∣x1∣<r<R|x_1|<r<Rを満たすrrを選ぶ。以下、区間[−r,r][-r,r]の上で考える。

部分和sN(x)=∑n=0Nanxns_N(x)=\sum_{n=0}^{N}a_n x^nは多項式であるから微分可能で、その導関数sN′(x)=∑n=1Nn anxn−1s_N'(x)=\sum_{n=1}^{N}n\,a_n x^{n-1}も多項式であり連続である(有限個の和の微分が各項の微分の和に等しいことは、§D1.6 定理 2.1の和についての法則から従う)。

補題 4.2により∑n anxn−1\sum n\,a_n x^{n-1}の収束半径はRRであるから、定理 3.1を∑n anxn−1\sum n\,a_n x^{n-1}へ適用すると、{sN′}\{s_N'\}は[−r,r][-r,r]上である関数ggへ一様収束する。またx0=0∈[−r,r]x_0=0 \in [-r,r]についてsN(0)=a0s_N(0)=a_0は収束する数列である。

したがって§D1.22 定理 4.2の仮定がすべて満たされ、{sN}\{s_N\}は[−r,r][-r,r]上のある関数へ一様収束して、その関数は微分可能で導関数がggに等しくなる。{sN}\{s_N\}は[−r,r][-r,r]上でffへ収束しているから、この関数はffである。よってffは[−r,r][-r,r]で微分可能でf′=gf'=gであり、とくにx1x_1においてf′(x1)=∑n≥1n anx1 n−1f'(x_1)=\sum_{n\ge1}n\,a_n x_1^{\,n-1}が成り立つ。x1x_1は任意であったから、主張が従う。▨

項ごとに微分した級数の収束半径はRRのままですから、この定理を繰り返し用いることができます。すなわち、べき級数の和は開区間(−R,R)(-R,R)上で何回でも微分することができ、その導関数はいずれも項ごとの微分によって与えられます。

5 複素数の範囲について

本記事は、変数xxを実数の範囲で動かしました。同じ級数の変数を複素数の範囲へ広げると、収束する範囲は区間ではなく原点を中心とする円板になり、収束半径はその円板の半径にあたります。この扱いと、正則関数がつねにべき級数へ展開されるという事実は、「複素解析」が扱います。

参考文献

  1. 杉浦光夫『解析入門 I』基礎数学 2, 東京大学出版会, 1980.
  2. Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1976.

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