一意存在とは、「条件を満たすものがちょうど1つ存在する」という主張です。存在と一意性の2つを合わせたもので、大学数学のいたるところ(解の一意性、標準形の一意性、極限の一意性)で現れます。
1 定義:存在 + 一意性
定義 1.1 (一意存在). 一意存在 (unique existence) を表すとは、次の2つの主張の連言をいう。
だから一意存在を示すには、2段階——「1つ存在する(構成するか、存在定理を使う)」と「2つあれば一致する(を仮定してを導く)」——を別々に証明します。量化子で書けば、一意性は「を満たすどの2つも等しい」という全称命題です。
注意 1.2. 一意性だけでは存在を含意しない。たとえば「を満たす実数」は、一意性のパート(2つあれば等しい)が空虚に真(満たすものが1つもないので前提が常に偽)であるが、存在は偽である。「あるとしても1つ」と「ちょうど1つ」は別の主張——存在の証明を一意性の議論で代用することはできない。
2 証明の型
- 存在:条件を満たすを具体的に構成するか、存在を保証する定理(中間値の定理、不動点定理など)を使います。
- 一意性:とを仮定し、そこからを導きます。多くは「差が」「両者を比較して矛盾」など、定義展開(論理/発展)で進みます。
「存在と一意性は別の証明」——一方だけ示して満足しないのが、を扱う鉄則です。 2段構えの実例を1つ、完全に書いてみます。
定理 2.1 (偶奇分解の一意存在). 任意の関数は、偶関数と奇関数の和としてただ一通りに表せる。
証明. 関数を
で定める。直接計算により、、が成り立つので、偶関数と奇関数による分解が存在する。
を満たす偶関数と奇関数をとる。等式を移項するととなる。左辺は偶関数であり、右辺は奇関数である。両辺が表す関数をとおくと、は偶かつ奇である。するとより(すべての)。ゆえに,。▨
存在パートは「候補を書き下す」構成、一意性パートは「2つ取って比較し、差が消える」——定義 1.1の2段が、そのまま証明の設計図になっていることを確認してください。この単元で扱う極限の一意性や、ジョルダン標準形の一意性(線形代数)も、規模こそ違えど同じ骨格です。
例 2.2 (上限・数列の極限・逆関数).
- 空でなく上に有界な集合に対して、実数の完備性から最小上界を得ることは存在の責任である。一方、上限の定義を満たす任意の二つの対象が一致することを示すのは一意性の責任である。
- ある具体的な数列と候補に対して、-条件を検証することはが極限であることを示す責任である。一方、同じ数列の任意の二つの極限候補が一致することを示すのは一意性の責任である。
- 写像に対して、全射性は各についてを満たすの存在を与え、単射性はそのの一意性を与える。逆写像の連続性は、存在と一意性とは異なる後の責任である。