§E4.11Jordan 可測領域

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単位円板を細かな正方形格子に重ねると、円板の内部に含まれる小正方形と、円板から外れる小正方形の寄与は確定する。体積の判定を妨げるのは円周と交わる小正方形だけであり、格子を細かくすると、それらの面積の総和を零へ近づけることができる。Riemann 重積分を長方形以外の集合へ拡張するには、この境界の小ささを有限分割で表す必要がある。

Jordan 可測集合は、この条件を満たす有界集合の基本的なクラスである。指示関数の積分が集合の体積を定め、被積分関数を集合の外で零とすることにより、その集合上の Riemann 積分を定めることができる。一方、非有界な開集合には一つの外接直方体を選ぶことができないため、非負関数の積分値は内側のコンパクトな部分集合から定める必要がある。

本記事では、Jordan 可測領域上の積分と広義重積分を結ぶ基本的な性質および代表的な例を扱う。

1 Jordan 零集合

定義 1.1. 有界集合N⊂RnN\subset\mathbb R^nが Jordan 零集合 (Jordan null set) であるとは、任意のε>0\varepsilon>0に対して有限個の開直方体Q1,…,QsQ_1,\ldots,Q_sが存在し、

N⊂⋃j=1sQj,∑j=1s∣Qj∣<εN\subset\bigcup_{j=1}^sQ_j, \qquad \sum_{j=1}^s|Q_j|<\varepsilon

が成り立つことをいう。

補題 1.2. Jordan 零集合の部分集合と有限和は Jordan 零集合である。有限集合、および一つの座標を固定して得られる座標超平面の有界部分集合も Jordan 零集合である。

証明. 部分集合に関する主張には同じ被覆を用いることができる。Jordan 零集合N1,…,NmN_1,\ldots,N_mとε>0\varepsilon>0に対して、NiN_iを総体積がε/m\varepsilon/m未満である有限個の開直方体で覆う。全ての被覆を合わせると、有限和を総体積がε\varepsilon未満である有限個の開直方体で覆うことができる。

有限集合は、各点を十分に小さい開立方体で覆えばよい。座標超平面xk=cx_k=cの有界部分集合HHは、ある有界な直方体の内部に含まれる。第kk座標の辺だけを十分に短くした開直方体でHHを覆うと、その体積を任意に小さくすることができる。▨

補題 1.3. Jordan 零集合NNが閉直方体RRに含まれるとする。任意のε>0\varepsilon>0に対してRRの直積分割PPが存在し、NNと交わる小直方体の体積の総和はε\varepsilon未満になる。

証明.NNを総体積がε\varepsilon未満である有限個の開直方体V1,…,VsV_1,\ldots,V_sで覆う。最初の総体積をさらに小さく取れば、各辺をわずかに広げた開直方体QjQ_jを

Vj‾⊂Qj,∑j=1s∣Qj∣<ε\overline{V_j}\subset Q_j, \qquad \sum_{j=1}^s|Q_j|<\varepsilon

となるように選ぶことができる。被覆が有限であるため、

N‾⊂⋃j=1sVj‾=⋃j=1sVj‾⊂⋃j=1sQj\overline N \subset\overline{\bigcup_{j=1}^sV_j} =\bigcup_{j=1}^s\overline{V_j} \subset\bigcup_{j=1}^sQ_j

が成り立つ。

RRを相対距離によるコンパクト距離空間とみなす。Q1∩R,…,Qs∩RQ_1\cap R,\ldots,Q_s\cap RとR∖N‾R\setminus\overline NはRRの有限開被覆である。Lebesgue 数補題§E2.9 補題 2.3により、この被覆の Lebesgue 数δ>0\delta>0が存在する。全ての小直方体の直径がδ\delta未満になる直積分割PPを取る。

NNと交わる小直方体CCからx∈C∩Nx\in C\cap Nを取る。C⊂BR(x,δ)C\subset B_R(x,\delta)であり、この球を含む被覆要素はR∖N‾R\setminus\overline Nではない。従ってC⊂Qj∩RC\subset Q_j\cap Rとなるjjが存在する。各CCをそのようなQjQ_jの一つへ対応させる。同じQjQ_jへ対応する小直方体は内部が互いに交わらず、全てQjQ_jに含まれるため、体積の総和は∣Qj∣|Q_j|以下である。jjについて加えると、NNと交わる小直方体の体積の総和は∑j∣Qj∣<ε\sum_j|Q_j|<\varepsilonとなる。▨

補題 1.4. 連続写像γ:[a,b]→R2\gamma:[a,b]\to\mathbb R^2について、有限分割

a=t0<t1<⋯<tm=ba=t_0<t_1<\cdots<t_m=b

が存在し、各γ∣[tj−1,tj]\gamma|_{[t_{j-1},t_j]}が一階連続微分可能であるとする。このときγ([a,b])\gamma([a,b])は Jordan 零集合である。γ\gammaの単射性とγ′(t)≠0\gamma'(t)\ne0は仮定しない。

証明. 一つの区間I=[u,v]I=[u,v]への制限を考え、

M=max⁡t∈I∥γ′(t)∥M=\max_{t\in I}\lVert\gamma'(t)\rVert

とおく。一変数の微積分学の基本定理§D1.19 定理 2.1を各成分へ適用すると、任意のs,t∈Is,t\in Iに対して

∥γ(t)−γ(s)∥≤M∣t−s∣\lVert\gamma(t)-\gamma(s)\rVert \le M|t-s|

を得る。M=0M=0ならばγ(I)\gamma(I)は一点集合である。

M>0M>0とする。IIを長さ(v−u)/N(v-u)/NのNN個の閉区間に等分する。各小区間の左端をsks_kとすると、その像は中心γ(sk)\gamma(s_k)、一辺3M(v−u)/N3M(v-u)/Nの開正方形に含まれる。これらの正方形の総面積は

N(3M(v−u)N)2=9M2(v−u)2NN\left(\frac{3M(v-u)}{N}\right)^2 =\frac{9M^2(v-u)^2}{N}

であり、N→∞N\to\inftyのとき零へ収束する。従って各γ([tj−1,tj])\gamma([t_{j-1},t_j])は Jordan 零集合である。有限和に関する補題 1.2によりγ([a,b])\gamma([a,b])も Jordan 零集合である。▨

2 Jordan 可測性と体積

定義 2.1. 有界集合E⊂RnE\subset\mathbb R^nの境界∂E\partial Eが Jordan 零集合であるとき、EEを Jordan 可測集合 (Jordan measurable set) という。

定理 2.2. 有界集合E⊂RnE\subset\mathbb R^nを閉直方体RRが含むとする。EEが Jordan 可測であるための必要十分条件は、指示関数

1E(x)={1,x∈E,0,x∉E\mathbf 1_E(x)= \begin{cases} 1,&x\in E,\\ 0,&x\notin E \end{cases}

がRR上で Riemann 可積分であることである。この条件が成り立つとき、この積分値を

vol⁡(E)=∫R1E\operatorname{vol}(E)=\int_R\mathbf 1_E

と書き、EEの Jordan 体積という。

証明.EEが Jordan 可測であるとする。補題 1.3により、∂E\partial Eと交わる小直方体の体積の総和がε\varepsilon未満になる分割PPを取る。∂E\partial Eと交わらない小直方体では1E\mathbf 1_Eが定数である。従って振幅が11になり得るのは∂E\partial Eと交わる小直方体だけであり、

U(1E,P)−L(1E,P)<εU(\mathbf 1_E,P)-L(\mathbf 1_E,P)<\varepsilon

となる。Darboux の可積分判定§E4.10 命題 2.1により1E\mathbf 1_Eは可積分である。

逆に1E\mathbf 1_Eが可積分であるとする。ε>0\varepsilon>0に対し、上 Darboux 和と下 Darboux 和の差がε/4\varepsilon/4未満になる分割PPを取る。分割面上にない∂E\partial Eの点は一つの小直方体の内部にあり、その小直方体はEEとRn∖E\mathbb R^n\setminus Eの両方に交わる。従って、その小直方体における1E\mathbf 1_Eの振幅は11である。そのような小直方体の体積の総和はε/4\varepsilon/4未満である。個数が有限なので、各小直方体をわずかに広げた開直方体によって、総体積をε/2\varepsilon/2未満に保ったまま覆うことができる。分割面の全体は有限個の座標超平面の有界部分集合の和であり、補題 1.2により総体積がε/2\varepsilon/2未満である有限開直方体被覆をもつ。二つの被覆を合わせると∂E\partial Eを総体積がε\varepsilon未満である有限個の開直方体で覆うことができる。従ってEEは Jordan 可測である。▨

例 2.3 (有界だが Jordan 可測でない集合). 正の体積をもつ閉直方体R⊂RnR\subset\mathbb R^nに対し、

E=R∩QnE=R\cap\mathbb Q^n

とおく。EEとR∖ER\setminus EはともにRRで稠密であるため、∂E=R\partial E=Rである。RRが Jordan 零集合ならば補題 1.3により、RRと交わる小直方体の体積の総和を∣R∣|R|未満にすることができるはずである。しかし、その総和は常に∣R∣|R|である。従ってRRは Jordan 零集合ではなく、EEは Jordan 可測ではない。

例 2.4 (閉円板の Jordan 可測性). 写像

γ:[0,2π]→R2,γ(t)=(cos⁡t,sin⁡t)\gamma:[0,2\pi]\to\mathbb R^2, \qquad \gamma(t)=(\cos t,\sin t)

は一階連続微分可能である。補題 1.4により単位円γ([0,2π])\gamma([0,2\pi])は Jordan 零集合である。従って閉円板

E={(x,y)∈R2:x2+y2≤1}E=\{(x,y)\in\mathbb R^2:x^2+y^2\le1\}

は Jordan 可測である。

3 Jordan 可測集合上の Riemann 積分

定義 3.1.E⊂RnE\subset\mathbb R^nを Jordan 可測な有界集合、f:E→Rf:E\to\mathbb Rを有界関数とする。EEを含む閉直方体RR上で零拡張

f~R(x)={f(x),x∈E,0,x∈R∖E\widetilde f_R(x)= \begin{cases} f(x),&x\in E,\\ 0,&x\in R\setminus E \end{cases}

を定める。f~R\widetilde f_RがRR上で Riemann 可積分であるとき、ffはEE上で Riemann 可積分 (Riemann integrable) であるといい、Jordan 可測集合上の Riemann 積分 (Riemann integral over a Jordan measurable set) を

∫Ef=∫Rf~R\int_Ef=\int_R\widetilde f_R

と定める。

補題 3.2. 二つの閉直方体がR⊂SR\subset Sを満たし、有界関数g:R→Rg:R\to\mathbb Rが与えられているとする。SS上で

g^(x)={g(x),x∈R,0,x∈S∖R\widehat g(x)= \begin{cases} g(x),&x\in R,\\ 0,&x\in S\setminus R \end{cases}

と定める。このときggがRR上で Riemann 可積分であることと、g^\widehat gがSS上で Riemann 可積分であることは同値である。可積分である場合には

∫Sg^=∫Rg\int_S\widehat g=\int_Rg

が成り立つ。

証明.M=sup⁡R∣g∣M=\sup_R|g|とする。∂R\partial Rは有限個の座標超平面内の有界集合の和であるため、補題 1.2により Jordan 零集合である。従ってSSの直積分割を、∂R\partial Rと交わる小直方体の体積の総和が任意に指定した正数未満になるように取ることができる。分割へRRの各面を加えても、この性質は保たれる。

ggがRR上で可積分であるとする。ggの上 Darboux 和と下 Darboux 和の差がε/2\varepsilon/2未満になるRRの分割を取り、その分割面をSSへ延長する。さらに細分し、∂R\partial Rと交わる小直方体の体積の総和をε/(2(2M+1))\varepsilon/(2(2M+1))未満にする。RRの内部にある小直方体から生じる振幅和はε/2\varepsilon/2未満であり、RRから離れた小直方体ではg^=0\widehat g=0である。∂R\partial Rと交わる小直方体では振幅が2M2M以下である。従って

U(g^,P)−L(g^,P)<εU(\widehat g,P)-L(\widehat g,P)<\varepsilon

となり、g^\widehat gは可積分である。

逆にg^\widehat gがSS上で可積分であるとする。上 Darboux 和と下 Darboux 和の差がε\varepsilon未満になる分割へRRの各面を加える。この分割がRRに誘導する分割では、ggの振幅和はg^\widehat gの振幅和の一部である。従ってggの上 Darboux 和と下 Darboux 和の差もε\varepsilon未満であり、ggは可積分である。

両関数が可積分である場合に、最初の構成でRRの分割誤差と境界層の体積をともに零へ近づける。RRの内側の対応する小直方体では二つの Darboux 和の項が一致し、RRの外側で新しく生じる項は境界層に含まれるものだけである。その絶対値は2M2Mと境界層の体積の積で評価することができる。従って二つの積分値の差の絶対値は任意の正数未満であり、積分値は等しい。▨

命題 3.3.定義 3.1の可積分性と積分値は、EEを含む外接直方体の選択によらない。特に、定理 2.2で定めた Jordan 体積は外接直方体の選択によらない。

証明. 二つの外接直方体R1,R2R_1,R_2を含む閉直方体SSを取る。RiR_i上の零拡張をさらにSSの外側で零として延長すると、どちらもSS上で同じ関数になる。補題 3.2により、各RiR_i上の零拡張が可積分であることと、この共通関数がSS上で可積分であることは同値であり、積分値も等しい。▨

補題 3.4.E⊂RnE\subset\mathbb R^nをコンパクトな Jordan 可測集合とし、g:E→Rg:E\to\mathbb Rを連続関数とする。このときggはEE上で Riemann 可積分である。

証明.E=∅E=\emptysetの場合、任意の外接直方体上の零拡張は零関数であるため、主張は成り立つ。以下、E≠∅E\ne\emptysetとする。

EEを含む閉直方体RRを取り、ggのRR上の零拡張をg~\widetilde gとする。コンパクト性と Heine–Cantor の定理§E2.9 定理 5.1により、ggは有界かつ一様連続である。

M=sup⁡E∣g∣M=\sup_E|g|

とおく。ε>0\varepsilon>0に対して、補題 1.3により、∂E\partial Eと交わる小直方体の体積の総和が

ε2(2M+1)\frac{\varepsilon}{2(2M+1)}

未満になる分割を取る。一様連続性により、x,y∈Ex,y\in Eと∥x−y∥<δ\lVert x-y\rVert<\deltaから

∣g(x)−g(y)∣<ε2(∣R∣+1)|g(x)-g(y)|<\frac{\varepsilon}{2(|R|+1)}

が従うδ>0\delta>0が存在する。分割をさらに細分し、全ての小直方体の直径をδ\delta未満にする。細分後も、∂E\partial Eと交わる小直方体の体積の総和は増加しない。

∂E\partial Eと交わる小直方体ではg~\widetilde gの振幅が2M2M以下であるため、それらの振幅和はε/2\varepsilon/2未満である。∂E\partial Eと交わらない小直方体はEEの内部に含まれるかEEと交わらないかのいずれかである。前者における振幅は一様連続性からε/(2(∣R∣+1))\varepsilon/(2(|R|+1))未満であり、後者における振幅は零である。従って残りの小直方体の振幅和もε/2\varepsilon/2未満である。Darboux の可積分判定によりg~\widetilde gはRR上で可積分であり、定義 3.1によりggはEE上で可積分である。▨

系 3.5.EEを Jordan 可測な有界集合とし、ffがE‾\overline Eを含む開集合上で連続であるとする。このときf∣Ef|_EはEE上で Riemann 可積分である。

証明.∂E‾⊂∂E\partial\overline E\subset\partial Eであるため、E‾\overline Eはコンパクトな Jordan 可測集合である。補題 3.4によりf∣E‾f|_{\overline E}はE‾\overline E上で可積分である。f∣E‾f|_{\overline E}とf∣Ef|_Eの外接直方体上の零拡張は、E‾∖E⊂∂E\overline E\setminus E\subset\partial Eの上でしか異ならない。二つの関数は有界であり、補題 1.3によって差が生じる小直方体の総体積を任意に小さくすることができる。従ってf∣Ef|_Eの零拡張も可積分であり、積分値はf∣E‾f|_{\overline E}の積分値に等しい。▨

4 広義重積分

定義 4.1.A⊂RnA\subset\mathbb R^nを開集合、f:A→[0,∞)f:A\to[0,\infty)を連続関数とする。ffのAA上の 広義重積分 (improper multiple integral) を

∫Af:=sup⁡{∫Kf:K⊂A, K はコンパクトな Jordan 可測集合}∈[0,∞]\int_Af := \sup\left\{ \int_Kf: K\subset A,\ K\text{ はコンパクトな Jordan 可測集合} \right\} \in[0,\infty]

と定める。この値が有限であるとき、ffはAA上で 広義可積分 (improperly integrable) であるという。各∫Kf\int_Kfは補題 3.4により定義される。

命題 4.2.A⊂RnA\subset\mathbb R^nを有界な Jordan 可測開集合とし、非負連続関数f:A→[0,∞)f:A\to[0,\infty)がA‾\overline A上の連続関数へ延長するとする。このとき定義 4.1の広義重積分は定義 3.1の Riemann 積分と一致する。

証明.ffの連続延長を同じ文字で表す。系 3.5により、f∣Af|_Aは Riemann 可積分である。その値をIIとする。任意のコンパクトな Jordan 可測集合K⊂AK\subset Aについて、零拡張の点ごとの順序と積分の単調性から∫Kf≤I\int_Kf\le Iとなる。

ε>0\varepsilon>0を取る。AAの外接直方体RR上の零拡張をf~\widetilde fとし、

U(f~,P)−L(f~,P)<εU(\widetilde f,P)-L(\widetilde f,P)<\varepsilon

となる分割PPを取る。PPの小直方体のうち、全体がAAに含まれるものの和をKKとする。KKはAAに含まれるコンパクトな Jordan 可測集合である。f∣Kf|_KのRR上の零拡張をf~K\widetilde f_Kと書く。AAに含まれない小直方体ではf~\widetilde fの下限が零であり、KKに含まれる小直方体では二つの関数が一致する。従って

I−ε<L(f~,P)=L(f~K,P)≤∫Kf≤II-\varepsilon <L(\widetilde f,P) =L(\widetilde f_K,P) \le\int_Kf \le I

となる。従って内側のコンパクトな Jordan 可測集合上の積分の上限はIIに等しい。▨

例 4.3 (Jordan 可測でない有界開集合).(0,1)(0,1)の有理数をq1,q2,…q_1,q_2,\ldotsと並べ、各qmq_mを中心とする開区間Im⊂(0,1)I_m\subset(0,1)を

∑m=1∞∣Im∣≤14\sum_{m=1}^{\infty}|I_m|\le\frac14

となるように取る。A=⋃m=1∞ImA=\bigcup_{m=1}^{\infty}I_mは(0,1)(0,1)で稠密な有界開集合である。

F=[0,1]∖AF=[0,1]\setminus Aが Jordan 零集合であると仮定する。FFを総長が1/41/4未満である有限個の開区間で覆う。この有限被覆と全てのImI_mは[0,1][0,1]の開被覆であるため、コンパクト性から有限部分被覆をもつ。その有限部分被覆の区間の総長は

14+∑m=1∞∣Im∣≤12\frac14+\sum_{m=1}^{\infty}|I_m|\le\frac12

未満である。一方、[0,1][0,1]を覆う有限個の開区間の長さの総和は11以上である。実際、全ての端点で[0,1][0,1]を分割し、各小区間をそれを含む被覆区間の一つへ対応させれば、この不等式を得る。従ってFFは Jordan 零集合ではない。AAは稠密な開集合であるため∂A=F\partial A=Fであり、AAは Jordan 可測ではない。それでも、非負連続関数に対する定義 4.1はAA上で定義される。

補題 4.4. 任意の開集合A⊂RnA\subset\mathbb R^nに対して、コンパクトな Jordan 可測集合の増加列(Km)m≥1(K_m)_{m\ge1}で

Km⊂A,Km⊂Km+1K_m\subset A, \qquad K_m\subset K_{m+1}

を満たし、さらにAAの任意のコンパクト部分集合CCに対して十分大きい全てのmmでC⊂KmC\subset K_mとなるものが存在する。

証明. 辺の長さが2−m2^{-m}である閉二進直方体のうち、A∩[−m,m]nA\cap[-m,m]^nに含まれるものを全て取り、その有限和をKmK_mとする。各KmK_mは有限個の閉直方体の和なのでコンパクトである。その境界は有限個の座標超平面の有界部分集合の和に含まれるため、補題 1.2により Jordan 可測である。各二進直方体は次の段階の2n2^n個の直方体に分かれるため、Km⊂Km+1K_m\subset K_{m+1}である。

C⊂AC\subset Aをコンパクトとする。C=∅C=\emptysetの場合には主張は明らかである。C≠∅C\ne\emptysetとする。CCは有界であり、AAの補集合が空でない場合にはCCとRn∖A\mathbb R^n\setminus Aの距離は正である。従って十分大きいmmについて、C⊂(−m,m)nC\subset(-m,m)^nであり、CCと交わる辺長2−m2^{-m}の全ての閉二進直方体はA∩[−m,m]nA\cap[-m,m]^nに含まれる。補集合が空の場合にも有界性だけで同じ包含を得る。従って十分大きい全てのmmでC⊂KmC\subset K_mとなる。▨

命題 4.5.A⊂RnA\subset\mathbb R^nを開集合、f:A→[0,∞)f:A\to[0,\infty)を連続関数とする。コンパクトな Jordan 可測集合の列(Km)m≥1(K_m)_{m\ge1}がKm⊂AK_m\subset Aを満たし、AAの任意のコンパクト部分集合CCに対して十分大きい全てのmmでC⊂KmC\subset K_mとなるとする。このとき

lim⁡m→∞∫Kmf=∫Af\lim_{m\to\infty}\int_{K_m}f=\int_Af

が[0,∞][0,\infty]で成り立つ。列が増加することは仮定しない。

証明. 上限の定義から、全てのmmについて

∫Kmf≤∫Af\int_{K_m}f\le\int_Af

である。従って上極限は∫Af\int_Af以下である。

AAに含まれる任意のコンパクトな Jordan 可測集合KKを取る。仮定により、十分大きい全てのmmでK⊂KmK\subset K_mとなる。f≥0f\ge0と積分の単調性から

∫Kf≤∫Kmf\int_Kf\le\int_{K_m}f

であるため、下極限は∫Kf\int_Kf以上である。KKについて上限を取ると、下極限は∫Af\int_Af以上になる。従って上極限と下極限が一致し、主張を得る。▨

定義 4.6.A⊂RnA\subset\mathbb R^nを開集合、f:A→Rf:A\to\mathbb Rを連続関数とし、∣f∣|f|の非負広義重積分が有限であるとする。

f+=max⁡{f,0},f−=max⁡{−f,0}f^+=\max\{f,0\}, \qquad f^-=\max\{-f,0\}

とおく。0≤f±≤∣f∣0\le f^\pm\le|f|であるためf±f^\pmは広義可積分である。このとき

∫Af:=∫Af+−∫Af−\int_Af := \int_Af^+-\int_Af^-

と定め、ffの広義重積分は 絶対収束する (absolutely convergent) という。

系 4.7.命題 4.5と同じ条件を満たす列(Km)m≥1(K_m)_{m\ge1}に対し、f:A→Rf:A\to\mathbb Rの広義重積分が絶対収束するならば

lim⁡m→∞∫Kmf=∫Af\lim_{m\to\infty}\int_{K_m}f=\int_Af

が成り立つ。従って積分値は取り尽くす列の選択によらない。

証明.命題 4.5をf+f^+とf−f^-に適用すると、

∫Kmf+⟶∫Af+,∫Kmf−⟶∫Af−\int_{K_m}f^+\longrightarrow\int_Af^+, \qquad \int_{K_m}f^-\longrightarrow\int_Af^-

を得る。両極限は有限である。各KmK_m上の Riemann 積分の線形性により

∫Kmf=∫Kmf+−∫Kmf−\int_{K_m}f =\int_{K_m}f^+-\int_{K_m}f^-

であるため、差の極限を取ると主張を得る。▨

5 演習

問題 5.1 (Jordan 可測性だけでは可積分性が従わない理由). Jordan 可測集合EE上の任意の有界関数が Riemann 可積分であるとは限らないことを、具体例によって示せ。

解答.

正の体積をもつ閉直方体RRをEEとし、

f(x)={1,x∈Qn,0,x∉Qnf(x)= \begin{cases} 1,&x\in\mathbb Q^n,\\ 0,&x\notin\mathbb Q^n \end{cases}

と定める。EEの境界は有限個の座標超平面の有界部分集合の和なので、EEは Jordan 可測である。一方、Qn\mathbb Q^nとその補集合は全ての小直方体で稠密であるため、任意の分割PPに対して

U(f,P)−L(f,P)=∣R∣>0U(f,P)-L(f,P)=|R|>0

となる。従って Darboux の可積分判定によりffは Riemann 可積分ではない。Jordan 可測性が制御するのは領域の境界であり、被積分関数の内部における振幅ではない。▨

参考文献

  1. Tom M. Apostol, Mathematical Analysis, 2nd ed., Addison-Wesley, 1974.Jordan 内容と Riemann 積分可能領域の定式化を参考にした。
  2. Serge Lang, Undergraduate Analysis, 2nd ed., Springer, New York, 1997.指示関数による Jordan 可測性の判定を参考にした。

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