§E4.24Gauss の発散定理

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空間を流れるベクトル場を考えるとき、ある領域の内部でどれだけ湧き出し、または吸い込まれているかを測る量が発散である。境界を通過する流れを直接足し合わせる方法と、領域の各点で発散を積分する方法は、同じ現象を異なる側面から捉えている。

平面領域では、境界曲線に沿う積分と内部の微分量の積分を結びつける Green の定理がこの対応を与える。しかし三次元では、境界が複数の曲面パッチからなり、パッチの接合部に稜線や頂点が現れるため、局所的な計算を全体の流束へ組み立てる仕組みが必要になる。

Gauss の発散定理は、適切な正則性をもつ三次元領域に対して、内部の発散の積分が境界を横切る外向き流束に等しいことを述べる。これは局所的な微積分の基本定理を、領域の形状と境界の向きを保ちながら大域的な積分公式へ拡張する定理である。本記事では、三次元の単純立体に対する累次積分、正則な境界をもつ領域への局所化、および流束計算への適用を扱う。

1 正則立体と外向き法線

定義 1.1.Ω⊂R3\Omega\subset\mathbb R^3を有限個の連結成分をもつ有界開集合とし、D=Ω‾D=\overline\Omega、int⁡(D)=Ω\tpint{D}=\Omegaとする。次の条件を満たすとき、DDを区分的に一階連続微分可能な正則立体 (piecewiseC1C^1regular solid) という。

  1. ∂D\partial Dは有限個のコンパクトなC1C^1級正則曲面パッチS1,…,SNS_1,\ldots,S_Nの和である。各SjS_jは、区分的C1C^1級境界をもつコンパクトな Jordan 可測集合Kj⊂R2K_j\subset\mathbb R^2と、その近傍で定義されたC1C^1級写像σj\boldsymbol\sigma_jによりSj=σj(Kj)S_j=\boldsymbol\sigma_j(K_j)と表される。σj∣Kj\boldsymbol\sigma_j|_{K_j}は単射であり、KjK_j上で(σj)u×(σj)v≠0(\boldsymbol\sigma_j)_u\times(\boldsymbol\sigma_j)_v\ne0である。
  2. 各相対内部Sj∘=σj(int⁡(Kj))S_j^\circ=\boldsymbol\sigma_j(\tpint{K_j})は互いに交わらない。異なるパッチの共通部分は有限個の区分的C1C^1級正則曲線の像と有限個の点からなる。全パッチの境界の和を稜線・頂点集合 (edge and vertex set)EEという。
  3. 各p∈Sj∘p\in S_j^\circの球近傍BBを十分小さく取ると、B∖Sj∘B\setminus S_j^\circは二つの局所成分をもち、一方にB∩ΩB\cap\Omegaが、他方にB∩(R3∖D)B\cap(\mathbb R^3\setminus D)が含まれる。
  4. R3∖D\mathbb R^3\setminus Dは一つの非有界連結成分と有限個の有界連結成分からなる。後者をDDの空洞 (cavity) という。

Sj∘S_j^\circ上の外向き単位法線 (outward unit normal)n\boldsymbol nは、Ω\Omegaの側からR3∖D\mathbb R^3\setminus Dの側を向く単位法線である。空洞の内面では空洞の内部を向く。境界流束 (boundary flux) は、各Sj∘S_j^\circに外向き法線を入れた流束の和として定める。稜線と頂点は§E4.20 命題 4.2により曲面上の Jordan 零集合であるため、この和の値へ寄与しない。

補題 1.2.定義 1.1の各境界パッチは三次元の Jordan 零集合である。したがって、∂D\partial Dは Jordan 零集合であり、DDは Jordan 可測である。

証明. 一つのパッチをS=σ(K)S=\boldsymbol\sigma(K)と書く。KKの近傍にあるコンパクト集合上でDσD\boldsymbol\sigmaは有界であるため、§E4.3 定理 2.1によりσ\boldsymbol\sigmaはその集合上で Lipschitz 連続である。KKを含む長方形を一辺hhの正方形へ分けると、KKと交わる正方形はO(h−2)O(h^{-2})個であり、各正方形の像は一辺O(h)O(h)の立方体に含まれる。したがって、それらの立方体の総体積はO(h)O(h)である。h↓0h\downarrow0とすればSSは Jordan 零集合である。

境界パッチは有限個であるから、§E4.11 補題 1.2により∂D\partial Dも Jordan 零集合である。DDは有界であり、その境界が Jordan 零集合なので、§E4.11 定義 2.1により Jordan 可測である。▨

2 単純立体の累次積分

補題 2.1.K⊂R2K\subset\mathbb R^2をコンパクトな Jordan 可測集合とし、KKの近傍で連続な関数α,β\alpha,\betaがα≤β\alpha\leq\betaを満たすとする。

V={(x,y,z):(x,y)∈K, α(x,y)≤z≤β(x,y)}V=\{(x,y,z):(x,y)\in K,\ \alpha(x,y)\leq z\leq\beta(x,y)\}

とおく。ffがVVの近傍で連続ならば、VVは Jordan 可測であり、

∭Vf dV=∬K(∫α(x,y)β(x,y)f(x,y,z) dz)dx dy(1)\iiint_Vf\,dV =\iint_K\left(\int_{\alpha(x,y)}^{\beta(x,y)}f(x,y,z)\,dz\right)dx\,dy \tag{1}

が成り立つ。

証明.K=∅K=\emptysetの場合は両辺が零なので、以下ではK≠∅K\ne\emptysetとする。KKを閉長方形RRに含め、V⊂R×[c,d]V\subset R\times[c,d]となるc<dc<dを取る。α\alphaとβ\betaはKKのコンパクトな近傍で一様連続である。底面を幅hhの小長方形へ分けると、各グラフを覆う柱の総体積は、RRの面積とα,β\alpha,\betaの連続率との積で上から評価され、h↓0h\downarrow0で零へ収束する。また、∂K×[c,d]\partial K\times[c,d]は Jordan 零集合である。したがって

∂V⊂graph⁡(α∣K)∪graph⁡(β∣K)∪(∂K×[c,d])\partial V\subset\operatorname{graph}(\alpha|_K)\cup \operatorname{graph}(\beta|_K)\cup(\partial K\times[c,d])

は Jordan 零集合であり、VVは Jordan 可測である。

g(x,y)=∫α(x,y)β(x,y)f(x,y,z) dzg(x,y)=\int_{\alpha(x,y)}^{\beta(x,y)}f(x,y,z)\,dzとおく。積分区間の共通部分ではffの一様連続性を用い、対称差ではsup⁡V∣f∣\sup_V|f|と端点の差を用いると、ggはKK上で連続である。したがって、§E4.11 補題 3.4によりggはKK上で可積分である。

S=R×[c,d]S=R\times[c,d]とし、f∣Vf|_VをSS上で零拡張した関数をf^\widehat fとする。§E4.11 補題 3.4と§E4.11 命題 3.3によりf^\widehat fは可積分であり、∫Sf^=∭Vf\int_S\widehat f=\iiint_Vfである。q=(x,y)∈Rq=(x,y)\in Rに対して

G(q)=∫cdf^(q,z) dzG(q)=\int_c^d\widehat f(q,z)\,dz

とおく。q∈Kq\in Kならば、この切片は連続関数z↦f(q,z)z\mapsto f(q,z)の区間[α(q),β(q)][\alpha(q),\beta(q)]から[c,d][c,d]への零拡張なので可積分であり、G(q)=g(q)G(q)=g(q)である。q∉Kq\notin KならばG(q)=0G(q)=0である。したがってGGはggの零拡張であり、同じ二つの既証明の結果から∫RG=∬Kg\int_RG=\iint_Kgを得る。

PRP_RをRRの直積分割、PzP_zを[c,d][c,d]の分割とする。各Q∈PRQ\in P_Rに対して

ℓQ=∑J∈Pzinf⁡Q×Jf^ ∣J∣,uQ=∑J∈Pzsup⁡Q×Jf^ ∣J∣\ell_Q=\sum_{J\in P_z}\inf_{Q\times J}\widehat f\,|J|, \qquad u_Q=\sum_{J\in P_z}\sup_{Q\times J}\widehat f\,|J|

とおく。各q∈Qq\in Qの切片に一変数の Darboux 和を適用するとℓQ≤G(q)≤uQ\ell_Q\leq G(q)\leq u_Qである。q∈Qq\in Qについて下限と上限を取り、∣Q∣|Q|を掛けて加えると

L(f^,PR×Pz)≤L(G,PR)≤∫RG≤U(G,PR)≤U(f^,PR×Pz)L(\widehat f,P_R\times P_z)\leq L(G,P_R)\leq\int_RG \leq U(G,P_R)\leq U(\widehat f,P_R\times P_z)

を得る。これは§E4.12 定理 1の Darboux 和比較を、零拡張f^\widehat fに対して直接示したものである。f^\widehat fの可積分性により、この不等式の両端の差を任意の正数未満にできる。したがって∫Sf^=∫RG\int_S\widehat f=\int_RGであり、式 (1) が従う。▨

定義 2.2. 有界な閉立体VVが

V={(x,y,z):(x,y)∈Dxy, αz(x,y)≤z≤βz(x,y)}V=\{(x,y,z):(x,y)\in D_{xy},\ \alpha_z(x,y)\leq z\leq\beta_z(x,y)\}

と表され、DxyD_{xy}がコンパクトな Jordan 可測集合、αz,βz\alpha_z,\beta_zがその近傍でC1C^1級であるとき、VVは zz方向に単純 (simple in the z-direction) であるという。xx方向に単純 (simple in the x-direction) であることとyy方向に単純 (simple in the y-direction) であることも、座標を巡回して同様に定める。三方向の全てについて単純であり、境界が有限個のC1C^1級正則曲面パッチからなる立体を座標単純立体 (coordinate-simple solid) という。

補題 2.3.VVを座標単純立体、F=(P,Q,R)F=(P,Q,R)をVVの近傍で定義されたC1C^1級ベクトル場とする。∂V\partial Vに外向き法線を入れると、

∬∂VF⋅n dA=∭V(∂xP+∂yQ+∂zR) dV(2)\iint_{\partial V}F\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA =\iiint_V(\partial_xP+\partial_yQ+\partial_zR)\,dV \tag{2}

が成り立つ。

証明.zz方向の表示を用いる。(0,0,R)(0,0,R)の流束に寄与するのは上面と下面だけであり、それぞれの外向き面積ベクトルの第三成分は11と−1-1である。したがって、§D1.19 定理 2.1と補題 2.1により

∬∂V(0,0,R)⋅n dA=∬Dxy[R(x,y,βz)−R(x,y,αz)] dx dy=∭V∂zR dV.\begin{aligned} \iint_{\partial V}(0,0,R)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA &=\iint_{D_{xy}}[R(x,y,\beta_z)-R(x,y,\alpha_z)]\,dx\,dy\\ &=\iiint_V\partial_zR\,dV. \end{aligned}

xx方向とyy方向の表示を用いると、同じ議論から

∬∂V(P,0,0)⋅n dA=∭V∂xP dV,∬∂V(0,Q,0)⋅n dA=∭V∂yQ dV\iint_{\partial V}(P,0,0)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA=\iiint_V\partial_xP\,dV, \qquad \iint_{\partial V}(0,Q,0)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA=\iiint_V\partial_yQ\,dV

を得る。三式を加えれば式 (2) が従う。▨

3 境界グラフの局所公式

補題 3.1.T(ξ)=a+RξT(\xi)=a+R\xiとし、RRをdet⁡R=1\det R=1の直交行列とする。F~(ξ)=RTF(T(ξ))\widetilde F(\xi)=R^{\mathsf T}F(T(\xi))とおくと、

div⁡F~=(div⁡F)∘T.\operatorname{div}\widetilde F=(\operatorname{div}F)\circ T.

また、TTは体積、立体の内外、外向き面積ベクトルおよび境界流束を保つ。

証明. 連鎖律からDF~=RT(DF∘T)RD\widetilde F=R^{\mathsf T}(DF\circ T)Rである。行列の跡の巡回性とRRT=IRR^{\mathsf T}=Iにより発散の式を得る。∣det⁡R∣=1|\det R|=1なので体積は保たれる。さらに、det⁡R=1\det R=1であるため

(Ru)×(Rv)=R(u×v)(Ru)\times(Rv)=R(u\times v)

が成り立つ。内側と外側もTTによって対応するから、外向き面積ベクトルと流束が保たれる。▨

補題 3.2.DDを区分的にC1C^1級正則立体、p∈∂D∖Ep\in\partial D\setminus Eとする。向きを保つ剛体座標、閉長方形B⊂R2B\subset\mathbb R^2、c<dc<dおよびBBの近傍で定義されたC1C^1級関数φ\varphiを選び、

c<min⁡Bφ≤max⁡Bφ<dc<\min_B\varphi\leq\max_B\varphi<d

を満たすように取ることができる。U=(int⁡(B))×(c,d)U=(\tpint{B})\times(c,d)とおけばp∈Up\in Uであり、

∂D∩U={(x,y,φ(x,y)):(x,y)∈int⁡(B)},D∩U={(x,y,z)∈U:z≤φ(x,y)}(3)\partial D\cap U=\{(x,y,\varphi(x,y)):(x,y)\in\tpint{B}\}, \qquad D\cap U=\{(x,y,z)\in U:z\leq\varphi(x,y)\} \tag{3}

が成り立つ。グラフ上の外向き面積ベクトルは(−φx,−φy,1) dx dy(-\varphi_x,-\varphi_y,1)\,dx\,dyである。

証明. 新しいzz軸をppにおける外向き法線の向きに取る。境界パッチからxyxy平面への射影の微分はppで可逆であるため、§E4.7 定理 2.1により、パッチはppの近傍でC1C^1級グラフになる。p∉Ep\notin Eなので、近傍を縮小すれば他の境界パッチは現れない。外向き法線のzz成分は近傍で正であり、局所的な片側性からDDはグラフの下側にある。この近傍の内部にB×[c,d]B\times[c,d]を取ってさらに縮小すると、表示された不等式と式 (3) が成り立つ。外向き法線の向きから面積ベクトルの表示を得る。▨

補題 3.3.B=[a,b]×[c1,d1]B=[a,b]\times[c_1,d_1]、φ∈C1(B)\varphi\in C^1(B)、c0<min⁡Bφc_0<\min_B\varphiとし、

C={(x,y,z):(x,y)∈B, c0≤z≤φ(x,y)}C=\{(x,y,z):(x,y)\in B,\ c_0\leq z\leq\varphi(x,y)\}

とおく。F=(P,Q,R)F=(P,Q,R)はCCの近傍でC1C^1級であり、グラフ面以外の人工境界の近傍で零であるとする。このとき

∭Cdiv⁡F dV=∬BF(x,y,φ(x,y))⋅(−φx,−φy,1) dx dy(4)\iiint_C\operatorname{div}F\,dV =\iint_BF(x,y,\varphi(x,y))\boldsymbol\cdot(-\varphi_x,-\varphi_y,1)\,dx\,dy \tag{4}

が成り立つ。

証明.補題 2.1と一変数の微積分学の基本定理から

∭C∂zR dV=∬BR(x,y,φ(x,y)) dx dy\iiint_C\partial_zR\,dV=\iint_BR(x,y,\varphi(x,y))\,dx\,dy

を得る。下面の項はF=0F=0により消える。

H1(x,y)=∫c0φ(x,y)P(x,y,z) dzH_1(x,y)=\int_{c_0}^{\varphi(x,y)}P(x,y,z)\,dzとおく。有限区間上のパラメータ積分の微分公式§D1.26 補題 2.1と連鎖律§E4.3 定理 1.1により

∂xH1=∫c0φ(x,y)∂xP(x,y,z) dz+P(x,y,φ(x,y))φx(x,y)\partial_xH_1=\int_{c_0}^{\varphi(x,y)}\partial_xP(x,y,z)\,dz +P(x,y,\varphi(x,y))\varphi_x(x,y)

である。H1H_1は∂B\partial Bの近傍で零なので、xx方向の基本定理を適用してからyyについて積分すると

∭C∂xP dV=−∬BP(x,y,φ(x,y))φx(x,y) dx dy\iiint_C\partial_xP\,dV=-\iint_BP(x,y,\varphi(x,y))\varphi_x(x,y)\,dx\,dy

を得る。同様に

∭C∂yQ dV=−∬BQ(x,y,φ(x,y))φy(x,y) dx dy\iiint_C\partial_yQ\,dV=-\iint_BQ(x,y,\varphi(x,y))\varphi_y(x,y)\,dx\,dy

である。三式を加えれば式 (4) が従う。▨

4 有限局所化と稜線の切断

補題 4.1.DDを区分的にC1C^1級正則立体、EEをその稜線・頂点集合とする。FFがDDの近傍でC1C^1級であり、EEのある近傍で零ならば

∬∂DF⋅n dA=∭Ddiv⁡F dV(5)\iint_{\partial D}F\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA =\iiint_D\operatorname{div}F\,dV \tag{5}

が成り立つ。

証明.FFの定義域をWWとする。§E4.19 系 2.2を用いて、DDの近傍では値を変えず、WWにコンパクトな台をもつC1C^1級ベクトル場へFFを延長する。K=D∩supp⁡FK=D\cap\operatorname{supp}FはEEと交わらないコンパクト集合である。K∩ΩK\cap\Omegaを閉包までΩ\Omegaに含まれる開直方体で覆い、K∩∂DK\cap\partial Dを補題 3.2のグラフ近傍で覆う。有限部分被覆を取り、§E4.19 定理 2.1により従属する有限局所化(θν)(\theta_\nu)を選び、Fν=θνFF_\nu=\theta_\nu Fとおく。

内部直方体に台をもつFνF_\nuには補題 2.3を適用する。FνF_\nuは直方体の境界近傍で零であるため、発散の体積積分と∂D\partial D上の流束はともに零である。境界グラフに台をもつFνF_\nuには、補題 3.1で座標を移す。対応する補題 3.2の直方柱をU=(int⁡(B))×(c,d)U=(\tpint{B})\times(c,d)とし、局所化の台をUUの内部に取る。式 (3) により、この台上ではDDとグラフ立体

C={(x,y,z):(x,y)∈B, c≤z≤φ(x,y)}C=\{(x,y,z):(x,y)\in B,\ c\leq z\leq\varphi(x,y)\}

が一致する。FνF_\nuはCCの人工境界の近傍で零であるため、補題 3.3を適用できる。各局所項について、DD上の発散積分は実境界グラフを通る外向き流束に等しい。

KKの近傍で∑νθν=1\sum_\nu\theta_\nu=1であり、その外ではF=0F=0である。したがってDDの近傍でF=∑νFνF=\sum_\nu F_\nuかつdiv⁡F=∑νdiv⁡Fν\operatorname{div}F=\sum_\nu\operatorname{div}F_\nuである。有限個の等式を加えると式 (5) を得る。▨

補題 4.2.DDを区分的にC1C^1級正則立体、EEを稜線・頂点集合とする。十分小さいr>0r>0に対して、開集合UrU_rとC1C^1級関数χr:R3→[0,1]\chi_r:\mathbb R^3\to[0,1]で次を満たすものが存在する。

  1. χr=0\chi_r=0はEEの開近傍で、χr=1\chi_r=1はUrU_rの外で成り立つ。
  2. ∥∇χr∥≤C/r\lVert\nabla\chi_r\rVert\leq C/r。
  3. vol⁡(Ur)≤Cr2\operatorname{vol}(U_r)\leq Cr^2。
  4. area⁡(∂D∩Ur)≤Cr\operatorname{area}(\partial D\cap U_r)\leq Cr。

証明.EEは有限個の有限長な区分的C1C^1級正則曲線と有限個の点の和である。一辺rrの格子立方体のうちEEと交わるものの個数をNrN_rとする。各正則曲線片では、有限個の小区間へ分ければ一つの座標成分をパラメータとして用いることができ、残りの座標成分は Lipschitz 連続になる。したがってNr=O(r−1)N_r=O(r^{-1})である。

選んだ格子立方体の中心をqνq_\nuとする。§E4.19 補題 1.3の切断関数を用いて、各立方体を含み半径O(r)O(r)の球に台をもつ関数bνb_\nuを取り、

χr=∏ν=1Nr(1−bν)\chi_r=\prod_{\nu=1}^{N_r}(1-b_\nu)

とおく。半径O(r)O(r)の球族の和をUrU_rとすれば、χr\chi_rはEEの近傍で零、UrU_rの外で一である。格子中心の間隔はrrなので球族の重なり度には一様な上界があり、各∥∇bν∥=O(r−1)\lVert\nabla b_\nu\rVert=O(r^{-1})と積の微分から∥∇χr∥=O(r−1)\lVert\nabla\chi_r\rVert=O(r^{-1})を得る。また

vol⁡(Ur)=NrO(r3)=O(r2).\operatorname{vol}(U_r)=N_rO(r^3)=O(r^2).

各境界パッチは有限個のグラフチャートで覆われ、各チャートの面積要素は有界である。したがって、半径O(r)O(r)の球と一つのパッチとの共通部分の面積はO(r2)O(r^2)であり、パッチ数も有限である。ゆえに

area⁡(∂D∩Ur)=NrO(r2)=O(r)\operatorname{area}(\partial D\cap U_r)=N_rO(r^2)=O(r)

である。▨

5 Gauss の発散定理

定理 5.1 (Gauss の発散定理).D=Ω‾D=\overline\Omegaを定義 1.1の区分的にC1C^1級正則立体とし、∂D\partial Dの各パッチ相対内部に外向き単位法線n\boldsymbol nを与える。FFがDDを含む開集合上のC1C^1級ベクトル場ならば

∬∂DF⋅n dA=∭Ddiv⁡F dV(6)\iint_{\partial D}F\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA =\iiint_D\operatorname{div}F\,dV \tag{6}

が成り立つ。空洞の内面ではn\boldsymbol nは空洞の内部を向く。

証明.EEを稜線・頂点集合とし、補題 4.2のUr,χrU_r,\chi_rを取る。Fr=χrFF_r=\chi_rFはEEの近傍で零なので、補題 4.1により

∬∂DχrF⋅n dA=∭D[χrdiv⁡F+∇χr⋅F] dV(7)\iint_{\partial D}\chi_rF\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA =\iiint_D[\chi_r\operatorname{div}F+\nabla\chi_r\boldsymbol\cdot F]\,dV \tag{7}

である。

MMをDD上の∥F∥\lVert F\rVertと∣div⁡F∣|\operatorname{div}F|の共通上界とする。1−χr1-\chi_rと∇χr\nabla\chi_rの台はUrU_rに含まれるため、

∣∬∂D(1−χr)F⋅n dA∣≤Marea⁡(∂D∩Ur)=O(r),\left|\iint_{\partial D}(1-\chi_r)F\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA\right| \leq M\operatorname{area}(\partial D\cap U_r)=O(r),∣∭D(1−χr)div⁡F dV∣=O(r2),∣∭D∇χr⋅F dV∣≤MCr−1vol⁡(Ur)=O(r).\left|\iiint_D(1-\chi_r)\operatorname{div}F\,dV\right|=O(r^2), \qquad \left|\iiint_D\nabla\chi_r\boldsymbol\cdot F\,dV\right| \leq MC r^{-1}\operatorname{vol}(U_r)=O(r).

式 (7) でr↓0r\downarrow0とすれば式 (6) を得る。▨

6 有限分割と流束計算

命題 6.1. 有界な閉立体VVが座標単純立体V1,…,VNV_1,\ldots,V_Nの有限和であり、異なる小立体の内部は交わらず、各内部曲面はちょうど二つの小立体に共有され、残る境界面の和が∂V\partial Vであるとする。小立体の共通部分は有限個のC1C^1級正則曲面パッチ、区分的C1C^1級曲線および点からなると仮定する。FFがVVの近傍でC1C^1級ならば、式 (6) がVVについて成り立つ。

証明. 各ViV_iへ補題 2.3を適用して加える。体積積分の和は§E4.13 補題 1によりVV上の体積積分になる。内部面を共有する二つの小立体の外向き法線は互いに反対であり、§E4.21 命題 3.5により二つの流束は相殺する。内部面の境界曲線と点は§E4.20 命題 4.2により寄与しない。残る各面は∂V\partial V上に外向きで一度だけ現れるため、境界流束だけが残る。▨

例 6.2 (発散定理による直方体の流束計算).a,b,c>0a,b,c>0、V=[0,a]×[0,b]×[0,c]V=[0,a]\times[0,b]\times[0,c]、F(x,y,z)=(x,y,z)F(x,y,z)=(x,y,z)とする。div⁡F=3\operatorname{div}F=3なので、定理 5.1により

∬∂VF⋅n dA=3abc.\iint_{\partial V}F\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA=3abc.

直接計算では、x=ax=a、y=by=b、z=cz=cの各面がabcabcを与え、反対側の三面は零を与えるため、同じ値になる。

例 6.3 (球面から出る流束).a>0a>0、D={x∈R3:∥x∥≤a}D=\{x\in\mathbb R^3:\lVert x\rVert\leq a\}、F(x)=xF(x)=xとする。div⁡F=3\operatorname{div}F=3であるから、

∬∂DF⋅n dA=3vol⁡(D)=4πa3.\iint_{\partial D}F\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA =3\operatorname{vol}(D)=4\pi a^3.

一方、球面上ではn=x/a\boldsymbol n=x/aなのでF⋅n=aF\boldsymbol\cdot\boldsymbol n=aであり、直接計算もa⋅4πa2=4πa3a\cdot4\pi a^2=4\pi a^3を与える。

7 演習

問題 7.1 (稜線近傍の切断誤差).定理 5.1の証明で、∥∇χr∥=O(r−1)\lVert\nabla\chi_r\rVert=O(r^{-1})であるにもかかわらず、∭D∇χr⋅F dV\iiint_D\nabla\chi_r\boldsymbol\cdot F\,dVが零へ収束する理由を示せ。また、境界流束の切断誤差も零へ収束することを示せ。

解答.

補題 4.2により、∇χr\nabla\chi_rの台を含むUrU_rの体積はO(r2)O(r^2)である。FFはDD上で有界なので

∣∭D∇χr⋅F dV∣≤O(r−1)O(r2)=O(r)⟶0.\left|\iiint_D\nabla\chi_r\boldsymbol\cdot F\,dV\right| \leq O(r^{-1})O(r^2)=O(r)\longrightarrow0.

また、∂D∩Ur\partial D\cap U_rの面積はO(r)O(r)であるため、

∣∬∂D(1−χr)F⋅n dA∣≤sup⁡D∥F∥ O(r)⟶0.\left|\iint_{\partial D}(1-\chi_r)F\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dA\right| \leq\sup_D\lVert F\rVert\,O(r)\longrightarrow0.

▨

参考文献

  1. Jerrold E. Marsden and Anthony J. Tromba, Vector Calculus, 6th ed., W. H. Freeman, 2012.座標単純立体に対する発散定理と流束計算を参考にした。
  2. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.成分別の局所計算と有限局所化による大域化を参考にした。

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