§E4.23Stokes の定理

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平面領域では、Green の定理が境界曲線に沿う線積分と領域内部の回転の面積分を結び付ける。曲面上でも、境界を一周する線積分と曲面を貫く回転の流束を対応させることができるが、そのためには曲面の向きと、そこから誘導される境界の向きを定めなければならない。例えば、放物面の円形境界に沿う線積分は、放物面上の回転の流束によって計算できる。この対応を三次元 Stokes の定理として定式化し、境界が滑らかな曲面と有限個の角点をもつ曲面に適用する。本記事では、古典的な曲面上の線積分と流束の関係を扱う。

1 閉円板・閉扇形と向き

注意 1.1 (閉モデルの記号). 閉円板Δ‾\overline\Delta、閉扇形TθT_\theta、半径辺R0,RθR_0,R_\theta、円弧辺AθA_\theta、および有効部分Tθ∗T_\theta^*には§E4.20 定義 2.1の定義を用いる。境界チャートでは、半径辺が曲面の真の境界へ写り、円弧辺はチャートを切り取った人工境界になる。

補題 1.2.Δ‾\overline\DeltaとTθT_\thetaは、§E4.22 定義 1.2の区分的に一階連続微分可能な正則領域である。正の向きは、Δ‾\overline\Deltaでは単位円を反時計回りに進む向きであり、TθT_\thetaではR0R_0を原点から円周へ進み、AθA_\thetaを偏角の増加方向へ進み、RθR_\thetaを原点へ戻る向きである。

証明.Δ‾\overline\Deltaの内部は有界連結開集合Δ\Deltaであり、境界は正則単純閉曲線

t⟼(cos⁡t,sin⁡t)(0≤t≤2π)t\longmapsto(\cos t,\sin t)\qquad(0\leq t\leq2\pi)

の像である。補集合は連結かつ非有界であり、各境界点では円周が十分小さい円板を内側と外側へ分ける。反時計回りに進むと内側が左にあるので、正則領域の全条件を満たす。

TθT_\thetaの内部は

Ωθ={(ρcos⁡φ,ρsin⁡φ):0<ρ<1, 0<φ<θ}\Omega_\theta =\{(\rho\cos\varphi,\rho\sin\varphi):0<\rho<1,\ 0<\varphi<\theta\}

であり、有界連結開集合で、その閉包はTθT_\thetaである。境界はR0,Aθ,RθR_0,A_\theta,R_\thetaの有限な和である。各弧の微分は零でなく、三弧は端点以外では交わらないため、指定した順で一つの区分的C1C^1級正則単純閉曲線をなす。

補集合の点は、偏角を[0,θ][0,\theta]の外に保ったまま半径を増やすか、単位円の外側から無限遠へ進むことによって相互に結ぶことができる。したがって補集合には有界成分がない。半径辺と円弧辺の相対内部では境界の局所的な片側性が明らかである。原点では二本の半径辺が小円板を開きθ\thetaと2π−θ2\pi-\thetaの二領域へ分け、円周上の二角点でも半径辺と円弧辺が小円板を内外の二領域へ分ける。0<θ<2π0<\theta<2\piであるため、いずれの領域も空でない。指定した向きでは各弧の左側がΩθ\Omega_\thetaである。ゆえにTθT_\thetaも正則領域である。▨

注意 1.3 (扇形の開きと曲面の角).θ\thetaはパラメータ領域を指定する数であり、曲面上の計量的な角度ではない。θ=π\theta=\piでは二本の半径辺が原点で一つの直線をなし、滑らかな境界点のモデルになる。θ≠π\theta\neq\piでは二本の半径辺の接方向が異なり、その像が曲面境界の角点になる。

補題 1.4.SSを向きn\boldsymbol nをもつC1C^1級正則曲面とし、

c:Tθ⟶S\boldsymbol c:T_\theta\longrightarrow S

を境界チャートの閉扇形への制限とする。角の二等分線に関する反射

Jθ(ρcos⁡φ,ρsin⁡φ)=(ρcos⁡(θ−φ),ρsin⁡(θ−φ))J_\theta(\rho\cos\varphi,\rho\sin\varphi) =(\rho\cos(\theta-\varphi),\rho\sin(\theta-\varphi))

を用いると、c\boldsymbol cとc∘Jθ\boldsymbol c\circ J_\thetaの一方はn\boldsymbol nと整合する。反射はTθ∗T_\theta^*とAθA_\thetaを保ち、R0R_0とRθR_\thetaを交換する。

証明. 連続関数

n(c(u,v))⋅(cu×cv)(u,v)\boldsymbol n(\boldsymbol c(u,v))\boldsymbol\cdot (\boldsymbol c_u\times\boldsymbol c_v)(u,v)

は連結集合TθT_\theta上で零にならないので、符号は一定である。符号が正ならc\boldsymbol cが整合する。符号が負なら、JθJ_\thetaの行列式が−1-1であることと外積の変換式から

(c∘Jθ)u×(c∘Jθ)v=−(cu×cv)∘Jθ(\boldsymbol c\circ J_\theta)_u\times (\boldsymbol c\circ J_\theta)_v =-(\boldsymbol c_u\times\boldsymbol c_v)\circ J_\theta

を得る。したがってc∘Jθ\boldsymbol c\circ J_\thetaが整合する。各辺に関する主張は極座標表示から従う。▨

2 一つのパッチにおける局所公式

補題 2.1.D⊂R2D\subset\mathbb R^2を§E4.22 定義 1.2の正則領域とする。DDを含む開集合VV上のC2C^2級写像

r:V⟶R3\boldsymbol r:V\longrightarrow\mathbb R^3

がDD上で単射かつ正則であるとする。S=r(D)S=\boldsymbol r(D)にru×rv\boldsymbol r_u\times\boldsymbol r_vと整合する向きを与える。SSを含む開集合WW上でF∈C1(W;R3)F\in C^1(W;\mathbb R^3)ならば

∮r(∂D)F⋅dr=∬D(curl⁡F)(r(u,v))⋅(ru×rv)(u,v) du dv(1)\oint_{\boldsymbol r(\partial D)}F\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r =\iint_D (\operatorname{curl}F)(\boldsymbol r(u,v))\boldsymbol\cdot (\boldsymbol r_u\times\boldsymbol r_v)(u,v)\,du\,dv \tag{1}

が成り立つ。左辺にはDDを左側に見る向きをr\boldsymbol rで写した向きを用いる。

証明. 必要ならVVを縮小し、r(V)⊂W\boldsymbol r(V)\subset Wとする。パラメータ平面上で

A=F(r)⋅ru,B=F(r)⋅rvA=F(\boldsymbol r)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_u, \qquad B=F(\boldsymbol r)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_v

とおく。FFはC1C^1級でr\boldsymbol rはC2C^2級であるため、A,BA,BはDDの近傍でC1C^1級である。境界曲線をc(t)=(u(t),v(t))c(t)=(u(t),v(t))とすれば、連鎖律により

F(r(c(t)))⋅ddtr(c(t))=A(c(t))u′(t)+B(c(t))v′(t).F(\boldsymbol r(c(t)))\boldsymbol\cdot\frac{d}{dt}\boldsymbol r(c(t)) =A(c(t))u'(t)+B(c(t))v'(t).

有限個の境界弧について加え、§E4.18 命題 3.2と§E4.22 定理 4.1を用いると

∮r(∂D)F⋅dr=∮∂DA du+B dv=∬D(∂uB−∂vA) du dv.(2)\oint_{\boldsymbol r(\partial D)}F\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r =\oint_{\partial D}A\,du+B\,dv =\iint_D(\partial_uB-\partial_vA)\,du\,dv. \tag{2}

F=(P,Q,R)F=(P,Q,R)、r=(x,y,z)\boldsymbol r=(x,y,z)と書く。積の微分と連鎖律から

∂uB=(DF(r)ru)⋅rv+F(r)⋅rvu,∂vA=(DF(r)rv)⋅ru+F(r)⋅ruv.\begin{aligned} \partial_uB &=(DF(\boldsymbol r)\boldsymbol r_u)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_v +F(\boldsymbol r)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_{vu},\\ \partial_vA &=(DF(\boldsymbol r)\boldsymbol r_v)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_u +F(\boldsymbol r)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_{uv}. \end{aligned}

r\boldsymbol rはC2C^2級なので混合偏導関数の対称性からruv=rvu\boldsymbol r_{uv}=\boldsymbol r_{vu}であり、後半の二項は相殺する。残る差ではPxxuxv,Qyyuyv,RzzuzvP_xx_ux_v,Q_yy_uy_v,R_zz_uz_vが相殺し、

∂uB−∂vA=(Ry−Qz)(yuzv−zuyv)+(Pz−Rx)(zuxv−xuzv)+(Qx−Py)(xuyv−yuxv).(3)\begin{aligned} \partial_uB-\partial_vA ={}&(R_y-Q_z)(y_uz_v-z_uy_v)\\ &+(P_z-R_x)(z_ux_v-x_uz_v)\\ &+(Q_x-P_y)(x_uy_v-y_ux_v). \end{aligned} \tag{3}

§E4.17 定義 1.2の回転と外積の成分表示により、式 (3) は

(curl⁡F)(r)⋅(ru×rv)(\operatorname{curl}F)(\boldsymbol r) \boldsymbol\cdot(\boldsymbol r_u\times\boldsymbol r_v)

である。式 (2) へ代入すると式 (1) を得る。▨

注意 2.2 (グラフ表示における局所公式).r(x,y)=(x,y,g(x,y))\boldsymbol r(x,y)=(x,y,g(x,y))というC2C^2級グラフでは

rx×ry=(−gx,−gy,1).\boldsymbol r_x\times\boldsymbol r_y=(-g_x,-g_y,1).

したがって局所公式の右辺は

∬D(curl⁡F)(x,y,g(x,y))⋅(−gx,−gy,1) dx dy\iint_D(\operatorname{curl}F)(x,y,g(x,y)) \boldsymbol\cdot(-g_x,-g_y,1)\,dx\,dy

となる。証明に必要なのは選んだパッチ自身の二階偏導関数であり、異なるC2C^2級チャート間の遷移写像がC2C^2級であるという別の定理ではない。

補題 2.3.SSを有限個の角点を許す境界をもつコンパクトなC2C^2級正則曲面とし、向きn\boldsymbol nを与える。n\boldsymbol nと整合する境界チャート

c:Tθ⟶S\boldsymbol c:T_\theta\longrightarrow S

を取り、Bθ=R0∪RθB_\theta=R_0\cup R_\thetaとおく。GGをSSの近傍で連続なベクトル場とし、

S∩supp⁡G⋐c(Tθ∗)S\cap\operatorname{supp}G\Subset\boldsymbol c(T_\theta^*)

を仮定する。このとき

∫c(Bθ)G⋅dr=∮∂SG⋅dr(4)\int_{\boldsymbol c(B_\theta)}G\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r =\oint_{\partial S}G\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r \tag{4}

が成り立つ。左辺には∂Tθ\partial T_\thetaの正の向きを写した向き、右辺にはn\boldsymbol nから誘導される向きを用いる。

証明.§E4.21 命題 2.5により、各半径辺の正の向きは、その像である滑らかな境界弧の誘導向きと一致する。境界曲面の定義が与える大域的な区分的C2C^2級表示と半径辺による局所表示は、同じ正則弧上で向きを保つC1C^1級再パラメータ化によって結ばれる。したがって§E4.18 命題 3.2により、両表示による各部分弧の線積分は一致する。

角点と区分点は有限個であり、一点は線積分へ寄与しない。線積分の有限加法性を用いると、c(Bθ)\boldsymbol c(B_\theta)上の積分は、その像に含まれる大域的な境界弧上の積分に等しい。台の仮定によりGGは残りの境界上で零であるから、式 (4) を得る。▨

3 滑らかな境界に対する大域化

定理 3.1 (三次元 Stokes の定理).W⊂R3W\subset\mathbb R^3を開集合とし、S⊂WS\subset Wを滑らかな境界をもつコンパクトなC2C^2級正則曲面とする。∂S=∅\partial S=\varnothingも許す。SSに向きn\boldsymbol nを与え、F∈C1(W;R3)F\in C^1(W;\mathbb R^3)とする。このとき

∮∂SF⋅dr=∬S(curl⁡F)⋅n dS(5)\boxed{ \oint_{\partial S}F\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r =\iint_S(\operatorname{curl}F)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dS } \tag{5}

が成り立つ。境界には§E4.21 定義 2.4の誘導向きを与える。境界が空なら左辺を零と定める。

証明. 各内部点には閉円板Δ‾\overline\Deltaを閉モデルとするC2C^2級内部チャートを、各境界点には閉半円板TπT_\piを閉モデルとするC2C^2級境界チャートを選ぶ。反射を必要に応じて前合成し、全チャートをn\boldsymbol nと整合させる。境界チャートには補題 1.4を用いる。各チャートをcj:Kj→S\boldsymbol c_j:K_j\to Sと書く。チャートの有効部分の像は相対開集合なので、R3\mathbb R^3の開集合Uj⊂WU_j\subset Wを

S∩Uj⊂cj(Kj∗)(6)S\cap U_j\subset\boldsymbol c_j(K_j^*) \tag{6}

となるように選べる。SSのコンパクト性により、有限個のU1,…,UNU_1,\ldots,U_NがSSを覆う。

§E4.19 定理 2.1をn=3n=3、K=SK=S、この有限開被覆へ適用する。非負なC1C^1級関数θ1,…,θM\theta_1,\ldots,\theta_Mと添字写像σ\sigmaで

supp⁡θν⋐Uσ(ν),∑ν=1Mθν=1S のある近傍で(7)\operatorname{supp}\theta_\nu\Subset U_{\sigma(\nu)}, \qquad \sum_{\nu=1}^M\theta_\nu=1 \quad\text{$S$ のある近傍で} \tag{7}

を満たすものを得る。Fν=θνFF_\nu=\theta_\nu Fとおく。積の微分から

F=∑νFν,curl⁡F=∑νcurl⁡Fν(8)F=\sum_\nu F_\nu, \qquad \operatorname{curl}F=\sum_\nu\operatorname{curl}F_\nu \tag{8}

がSSの近傍で成り立つ。また

S∩supp⁡(curl⁡Fν)⊂S∩supp⁡θν⋐cσ(ν)(Kσ(ν)∗).(9)S\cap\operatorname{supp}(\operatorname{curl}F_\nu) \subset S\cap\operatorname{supp}\theta_\nu \Subset\boldsymbol c_{\sigma(\nu)}(K_{\sigma(\nu)}^*). \tag{9}

ν\nuを固定し、対応するチャートをc:K→S\boldsymbol c:K\to Sと書く。§E4.21 命題 3.4と式 (9) により

∬S(curl⁡Fν)⋅n dS=∬K(curl⁡Fν)(c)⋅(cu×cv) du dv.(10)\iint_S(\operatorname{curl}F_\nu)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dS =\iint_K(\operatorname{curl}F_\nu)(\boldsymbol c) \boldsymbol\cdot(\boldsymbol c_u\times\boldsymbol c_v)\,du\,dv. \tag{10}

K=Δ‾K=\overline\Deltaなら、補題 2.1によって式 (10) はc(∂Δ‾)\boldsymbol c(\partial\overline\Delta)上の線積分に等しい。この人工境界はc(K∗)\boldsymbol c(K^*)の外にあり、式 (9) からFνF_\nuはそこで零である。したがって式 (10) は零である。このチャートの像はS∖∂SS\setminus\partial Sに含まれるので、∂S\partial S上のFνF_\nuの積分も零である。

K=TπK=T_\piなら、同じ局所公式によって式 (10) はc(∂Tπ)\boldsymbol c(\partial T_\pi)上の線積分に等しい。円弧辺AπA_\piは人工境界であり、式 (9) からその寄与は零である。二本の半径辺について補題 2.3を適用すると

∬S(curl⁡Fν)⋅n dS=∮∂SFν⋅dr.(11)\iint_S(\operatorname{curl}F_\nu)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dS =\oint_{\partial S}F_\nu\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r. \tag{11}

内部チャートについても両辺が零なので式 (11) が成り立つ。式 (11) を有限個のν\nuについて加え、式 (8) と線積分・流束の線形性を用いると式 (5) を得る。▨

注意 3.2 (定理の仮定と証明道具). 定理は特定のチャート族や局所化関数を仮定しない。各点のC2C^2級チャートは正則曲面の定義から、有限部分被覆はコンパクト性から、局所化関数は§E4.19 定理 2.1から得られる。定理の両辺は、曲面、向き、およびベクトル場から内在的に定まる。

4 有限個の角点をもつ境界

定理 4.1.W⊂R3W\subset\mathbb R^3を開集合とし、S⊂WS\subset Wを有限個の角点を許す境界をもつコンパクトなC2C^2級正則曲面とする。角点間の境界弧と各角点の扇形チャートはC2C^2級であるとする。SSに向きn\boldsymbol nを与え、F∈C1(W;R3)F\in C^1(W;\mathbb R^3)とする。このとき式 (5) が成り立つ。左辺は、有限個のC2C^2級境界弧に沿う誘導向き付き線積分の和とする。

証明. 内部点には閉円板、滑らかな境界点にはTπT_\pi、角点にはTθT_\theta(0<θ<2π0<\theta<2\pi,θ≠π\theta\neq\pi)を閉モデルとするチャートを選ぶ。補題 1.4によって全チャートをn\boldsymbol nと整合させる。コンパクト性で有限被覆を取り、§E4.19 定理 2.1によって式 (7) を満たすFν=θνFF_\nu=\theta_\nu Fへ分ける。

内部チャートと滑らかな境界チャートでは、前定理の局所化片の証明がそのまま適用される。角点チャートc:Tθ→S\boldsymbol c:T_\theta\to Sに対応する局所化片では、§E4.21 命題 3.4、補題 1.2、および補題 2.1から

∬S(curl⁡Fν)⋅n dS=∮c(∂Tθ)Fν⋅dr(12)\iint_S(\operatorname{curl}F_\nu)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dS =\oint_{\boldsymbol c(\partial T_\theta)}F_\nu\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r \tag{12}

を得る。FνF_\nuの曲面上の台はc(Tθ∗)\boldsymbol c(T_\theta^*)にコンパクトに含まれるので、円弧辺AθA_\thetaの寄与は零である。二本の半径辺には補題 2.3を適用できる。したがって式 (12) の右辺は∂S\partial S上のFνF_\nuの線積分に等しい。全局所化片について加えれば式 (5) を得る。▨

注意 4.2 (角点を平面領域で扱うこと). 扇形チャートを用いると、曲面上で角点を切り落として極限を取る必要がない。§E4.22 定理 4.1は有限個の角点をもつ正則領域に適用できるため、角点の処理はパラメータ平面上で完結する。角点そのものでは接ベクトルと外向き余法線を一意に定めないが、一点は線積分へ寄与しない。

5 計算例

例 5.1 (放物面の上の Stokes の公式). 上向きに向きづけた放物面

S={(x,y,1−x2−y2):x2+y2≤1}S=\{(x,y,1-x^2-y^2):x^2+y^2\leq1\}

とベクトル場

F(x,y,z)=(−y2,x2,0)F(x,y,z)=\left(-\frac y2,\frac x2,0\right)

を考える。r(x,y)=(x,y,1−x2−y2)\boldsymbol r(x,y)=(x,y,1-x^2-y^2)とおけば

rx×ry=(2x,2y,1),curl⁡F=(0,0,1).\boldsymbol r_x\times\boldsymbol r_y=(2x,2y,1), \qquad \operatorname{curl}F=(0,0,1).

§E4.21 命題 3.2により

∬S(curl⁡F)⋅n dS=∬x2+y2≤11 dx dy=π.\iint_S(\operatorname{curl}F)\boldsymbol\cdot\boldsymbol n\,dS =\iint_{x^2+y^2\leq1}1\,dx\,dy=\pi.

誘導境界向きは上から見て反時計回りである。γ(t)=(cos⁡t,sin⁡t,0)\gamma(t)=(\cos t,\sin t,0)(0≤t≤2π0\leq t\leq2\pi)とすると

F(γ(t))⋅γ′(t)=12F(\gamma(t))\boldsymbol\cdot\gamma'(t)=\frac12

であるから

∮∂SF⋅dr=∫02π12 dt=π.\oint_{\partial S}F\boldsymbol\cdot d\boldsymbol r =\int_0^{2\pi}\frac12\,dt=\pi.

例 5.2 (二つの部分曲面へ分けた放物面). 前の放物面に対しF(x,y,z)=(0,0,y)F(x,y,z)=(0,0,y)とする。curl⁡F=(1,0,0)\operatorname{curl}F=(1,0,0)である。閉円板を

D+={(x,y):x2+y2≤1, x≥0},D−={(x,y):x2+y2≤1, x≤0}D_+=\{(x,y):x^2+y^2\leq1,\ x\geq0\}, \qquad D_-=\{(x,y):x^2+y^2\leq1,\ x\leq0\}

へ分け、S±=r(D±)S_\pm=\boldsymbol r(D_\pm)とおく。各部分曲面上の流束は

∬D±2x dx dy={4/3,+ の場合,−4/3,− の場合\iint_{D_\pm}2x\,dx\,dy =\begin{cases}4/3,&+\text{ の場合},\\-4/3,&-\text{ の場合} \end{cases}

である。

共有弧はx=0x=0の像である。D+D_+の正の境界向きではvvが11から−1-1へ動き、

F(r(0,v))⋅ddvr(0,v)=−2v2F(\boldsymbol r(0,v))\boldsymbol\cdot\frac{d}{dv}\boldsymbol r(0,v) =-2v^2

なので寄与は4/34/3である。D−D_-からの寄与は−4/3-4/3である。この符号関係の一般的な根拠は§E4.21 命題 4.1である。外側の半円ではz=0z=0かつFFは鉛直方向を向くので線積分は零である。したがって、二部分曲面の公式を加えると共有弧が消え、曲面全体の両辺はともに零になる。

6 一般化された Stokes の定理

注意 6.1 (微分形式による統一と後続の単元). 本記事の定理はR3\mathbb R^3の二次元曲面に対する古典的な形である。微分形式を用いると、Green の定理、古典的な Stokes の定理、および「Gauss の発散定理」は

∫Mdω=∫∂Mω\int_Md\omega=\int_{\partial M}\omega

という一つの等式に統合される。向きづけられた境界付き多様体と台がコンパクトな微分形式に対する完全な定式化と証明は、「多様体入門」の§E17.16 定理 1.1が扱う。本記事は微分形式を導入せず、Euclid 三次元空間の曲面に対する公式で証明を閉じる。

7 演習

問題 7.1 (局所公式の六項と共有境界).r=(x,y,z)\boldsymbol r=(x,y,z)、F=(P,Q,R)F=(P,Q,R)とする。

  1. (DF(r)ru)⋅rv−(DF(r)rv)⋅ru(DF(\boldsymbol r)\boldsymbol r_u)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_v-(DF(\boldsymbol r)\boldsymbol r_v)\boldsymbol\cdot\boldsymbol r_uを展開し、式 (3) を導け。
  2. 同じ向きをもつ二つの曲面片へ Stokes の公式を適用したとき、共有する滑らかな境界弧の寄与が相殺する根拠となる既出命題を示せ。
解答.

対角成分から生じるPxxuxv,Qyyuyv,RzzuzvP_xx_ux_v,Q_yy_uy_v,R_zz_uz_vは差の中で相殺する。残る項を同じ外積成分ごとにまとめると

(Ry−Qz)(yuzv−zuyv)+(Pz−Rx)(zuxv−xuzv)+(Qx−Py)(xuyv−yuxv)\begin{aligned} &(R_y-Q_z)(y_uz_v-z_uy_v)\\ &\quad +(P_z-R_x)(z_ux_v-x_uz_v)\\ &\quad +(Q_x-P_y)(x_uy_v-y_ux_v) \end{aligned}

となる。これはcurl⁡F\operatorname{curl}Fとru×rv\boldsymbol r_u\times\boldsymbol r_vの内積である。

共有境界弧の相殺には§E4.21 命題 4.1をそのまま適用する。▨

問題 7.2 (有限局所化による大域化).定理 3.1の証明で、Fν=θνFF_\nu=\theta_\nu Fと置く理由を、次の三点に分けて説明せよ。

  1. FFとcurl⁡F\operatorname{curl}Fを有限和へ戻す条件。
  2. 一つの局所化片を一つのチャートで計算できる理由。
  3. 人工境界上の線積分が消える理由。
解答.

∑νθν=1\sum_\nu\theta_\nu=1がSSの近傍で成り立つため、F=∑νFνF=\sum_\nu F_\nuである。両辺を微分するか、積の微分で∑ν∇θν=0\sum_\nu\nabla\theta_\nu=0を用いると、curl⁡F=∑νcurl⁡Fν\operatorname{curl}F=\sum_\nu\operatorname{curl}F_\nuも得る。

各supp⁡θν\operatorname{supp}\theta_\nuは一つのUσ(ν)U_{\sigma(\nu)}にコンパクトに含まれ、S∩Uσ(ν)S\cap U_{\sigma(\nu)}は対応するチャートの有効部分に含まれる。したがってFνF_\nuとcurl⁡Fν\operatorname{curl}F_\nuの曲面上の台は一つのチャートの有効部分にコンパクトに含まれ、局所流束公式を適用できる。

閉円板または閉扇形の円弧辺は有効部分の外にある。局所化片はその近傍で零であるため、人工境界に沿う線積分は零になる。境界チャートでは半径辺の像だけが曲面の真の境界として残る。▨

参考文献

  1. Jerrold E. Marsden and Anthony J. Tromba, Vector Calculus, 6th ed., W. H. Freeman, 2012.三次元 Stokes の定理、境界の誘導向き、および古典的な計算例を参考にした。
  2. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.パッチ上の公式を Green の定理へ帰着し、有限局所化によって大域化する証明を参考にした。

前提記事