§E4.19有限局所化と 1 の分割

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コンパクト集合KKを有限個の開集合U1,…,UNU_1,\ldots,U_Nで覆うと、KKの各点の近くでは一つの局所的な計算を選ぶことができる。一方で、点ごとに選んだ計算を大域的な関数へまとめるには、選択の境界と重なりを制御する仕組みが必要になる。そこで、各UjU_jの内部に台をもつC1C^1級切断関数を有限個つくり、それらを正規化して、KKの近傍で総和が11となる局所化を得る。本記事では、その構成を証明し、後続の曲面積分と積分定理で局所的な計算を大域的な主張へまとめるための道具として位置づける。

1 台と切断関数

定義 1.1.f:Rn→Rf:\mathbb R^n\to\mathbb Rに対して

supp⁡f={x∈Rn:f(x)≠0}‾\operatorname{supp}f=\overline{\{x\in\mathbb R^n:f(x)\ne0\}}

をffの 台 (support) という。開集合U⊂RnU\subset\mathbb R^nに対して、supp⁡f\operatorname{supp}fがコンパクトであり、かつsupp⁡f⊂U\operatorname{supp}f\subset Uであるとき、ffの台はUUにコンパクトに含まれる (compactly contained) という。

定義 1.2.K⊂RnK\subset\mathbb R^nをコンパクト集合とし、U1,…,UNU_1,\ldots,U_NをKKの有限開被覆とする。非負なC1C^1級関数θ1,…,θM:Rn→R\theta_1,\ldots,\theta_M:\mathbb R^n\to\mathbb Rと写像σ:{1,…,M}→{1,…,N}\sigma:\{1,\ldots,M\}\to\{1,\ldots,N\}が次の条件を満たすとき、(θν)ν=1M(\theta_\nu)_{\nu=1}^MをKKに対する 有限局所化 (finite localization) という。

  1. 各supp⁡θν\operatorname{supp}\theta_\nuはコンパクトであり、Uσ(ν)U_{\sigma(\nu)}に含まれる。
  2. KKを含む開集合VVが存在し、x∈Vx\in Vならば∑ν=1Mθν(x)=1\sum_{\nu=1}^M\theta_\nu(x)=1である。

このとき、(θν)(\theta_\nu)はKKの近傍における、被覆(Uj)j=1N(U_j)_{j=1}^Nに従属する有限な 1 の分割 (finite partition of unity subordinate to a cover) であるともいう。

補題 1.3. 関数ρ:R→R\rho:\mathbb R\to\mathbb Rを

ρ(t)={1,t≤1,1−3s2+2s3,1≤t≤4,s=(t−1)/3,0,t≥4(1)\rho(t)= \begin{cases} 1,&t\leq1,\\ 1-3s^2+2s^3,&1\leq t\leq4,\quad s=(t-1)/3,\\ 0,&t\geq4 \end{cases} \tag{1}

と定める。このときρ\rhoは広義単調減少するC1C^1級関数であり、0≤ρ≤10\leq\rho\leq1である。

さらに、z∈Rnz\in\mathbb R^nとr>0r>0に対して

bz,r(x)=ρ(∥x−z∥2r2)(2)b_{z,r}(x)=\rho\left(\frac{\lVert x-z\rVert^2}{r^2}\right) \tag{2}

とおくと、bz,r:Rn→[0,1]b_{z,r}:\mathbb R^n\to[0,1]はC1C^1級であり、

bz,r=1on B(z,r)‾,supp⁡bz,r⊂B(z,2r)‾(3)b_{z,r}=1\quad\text{on }\overline{B(z,r)}, \qquad \operatorname{supp}b_{z,r}\subset\overline{B(z,2r)} \tag{3}

を満たす。特にsupp⁡bz,r\operatorname{supp}b_{z,r}はコンパクトである。

証明. 式 (1) の中間部分をp(s)=1−3s2+2s3p(s)=1-3s^2+2s^3と書くと、

p(0)=1,p(1)=0,p′(0)=p′(1)=0p(0)=1,\quad p(1)=0,\quad p'(0)=p'(1)=0

である。従って、中間部分の値と一階導関数はt=1,4t=1,4で両側の定数部分へ連続につながり、ρ\rhoはC1C^1級である。また

ddtp(t−13)=2s(s−1)≤0(0≤s≤1)\frac{d}{dt}p\left(\frac{t-1}{3}\right)=2s(s-1)\leq0 \qquad(0\leq s\leq1)

であるから、ρ\rhoは広義単調減少し、その値は[0,1][0,1]に含まれる。

関数q(x)=∥x−z∥2/r2q(x)=\lVert x-z\rVert^2/r^2はC1C^1級である。「連鎖律と勾配」の連鎖律§E4.3 定理 1.1によりbz,r=ρ∘qb_{z,r}=\rho\circ qはC1C^1級であり、

∇bz,r(x)=ρ′(q(x))2(x−z)r2\nabla b_{z,r}(x)=\rho'(q(x))\frac{2(x-z)}{r^2}

である。∥x−z∥≤r\lVert x-z\rVert\leq rならq(x)≤1q(x)\leq1なのでbz,r(x)=1b_{z,r}(x)=1であり、∥x−z∥≥2r\lVert x-z\rVert\geq2rならq(x)≥4q(x)\geq4なのでbz,r(x)=0b_{z,r}(x)=0である。従って式 (3) が成り立つ。「コンパクト空間」の Heine–Borel の定理§E2.9 定理 4.3により閉球B(z,2r)‾\overline{B(z,2r)}はコンパクトであり、その閉部分集合であるsupp⁡bz,r\operatorname{supp}b_{z,r}もコンパクトである。▨

2 有限開被覆に従属する局所化

定理 2.1.K⊂RnK\subset\mathbb R^nをコンパクト集合とし、U1,…,UNU_1,\ldots,U_NをKKの有限開被覆とする。ただしN≥1N\geq1とする。このとき、有限局所化(θν)ν=1M(\theta_\nu)_{\nu=1}^Mと写像σ\sigmaで、さらに

0≤∑ν=1Mθν(x)≤1(x∈Rn)(4)0\leq\sum_{\nu=1}^M\theta_\nu(x)\leq1 \qquad(x\in\mathbb R^n) \tag{4}

を満たすものが存在する。

証明.K=∅K=\varnothingの場合には、M=1M=1、θ1=0\theta_1=0、σ(1)=1\sigma(1)=1、V=∅V=\varnothingとすればよい。以下ではK≠∅K\ne\varnothingとする。

被覆要素内に台をもつ切断関数を有限個選び、全空間で正となる分母によって正規化した後、内側の球が覆う近傍では補積が零になることから総和が11であることを示す。

各z∈Kz\in Kに対し、z∈Uj(z)z\in U_{j(z)}となる添字j(z)j(z)を一つ選ぶ。Uj(z)U_{j(z)}は開集合であるから、あるrz>0r_z>0に対して

B(z,2rz)‾⊂Uj(z)(5)\overline{B(z,2r_z)}\subset U_{j(z)} \tag{5}

となる。球族(B(z,rz))z∈K(B(z,r_z))_{z\in K}はKKを覆う。コンパクト性§E2.19 命題 2.6により、有限個の点z1,…,zM∈Kz_1,\ldots,z_M\in Kを選んで

K⊂⋃ν=1MB(zν,rν),rν=rzν(6)K\subset\bigcup_{\nu=1}^M B(z_\nu,r_\nu), \qquad r_\nu=r_{z_\nu} \tag{6}

とすることができる。σ(ν)=j(zν)\sigma(\nu)=j(z_\nu)、bν=bzν,rνb_\nu=b_{z_\nu,r_\nu}とおく。

全空間上のC1C^1級関数

D(x)=∑μ=1Mbμ(x)+∏μ=1M(1−bμ(x))(7)D(x)=\sum_{\mu=1}^M b_\mu(x) +\prod_{\mu=1}^M(1-b_\mu(x)) \tag{7}

を考える。あるbμ(x)b_\mu(x)が正ならば式 (7) の和の部分が正である。全てのbμ(x)b_\mu(x)が零ならば積の部分が11である。従って

D(x)>0(x∈Rn)(8)D(x)>0\qquad(x\in\mathbb R^n) \tag{8}

である。そこで

θν(x)=bν(x)D(x)(1≤ν≤M)(9)\theta_\nu(x)=\frac{b_\nu(x)}{D(x)} \qquad(1\leq\nu\leq M) \tag{9}

と定める。式 (8) により1/D1/Dは全空間上でC1C^1級であり、各θν\theta_\nuもC1C^1級である。またθν≥0\theta_\nu\geq0である。

式 (9) から、θν(x)≠0\theta_\nu(x)\ne0ならばbν(x)≠0b_\nu(x)\ne0である。従って

supp⁡θν⊂supp⁡bν⊂B(zν,2rν)‾⊂Uσ(ν).(10)\operatorname{supp}\theta_\nu \subset\operatorname{supp}b_\nu \subset\overline{B(z_\nu,2r_\nu)} \subset U_{\sigma(\nu)}. \tag{10}

台はコンパクト集合B(zν,2rν)‾\overline{B(z_\nu,2r_\nu)}の閉部分集合なのでコンパクトである。

式 (7) と式 (9) により

∑ν=1Mθν(x)=∑ν=1Mbν(x)∑ν=1Mbν(x)+∏ν=1M(1−bν(x)).(11)\sum_{\nu=1}^M\theta_\nu(x) =\frac{\sum_{\nu=1}^M b_\nu(x)} {\sum_{\nu=1}^M b_\nu(x)+\prod_{\nu=1}^M(1-b_\nu(x))}. \tag{11}

分子と積の部分はともに非負なので、式 (4) が従う。

V=⋃ν=1MB(zν,rν)V=\bigcup_{\nu=1}^M B(z_\nu,r_\nu)とおく。式 (6) によりVVはKKを含む開集合である。x∈Vx\in Vならば、あるν\nuについて∥x−zν∥<rν\lVert x-z_\nu\rVert<r_\nuであり、式 (3) からbν(x)=1b_\nu(x)=1である。従って式 (11) の分母に現れる積は零になり、∑ν=1Mθν(x)=1\sum_{\nu=1}^M\theta_\nu(x)=1を得る。▨

分母に∏ν(1−bν)\prod_\nu(1-b_\nu)を加える理由は、全てのbνb_\nuが零になる被覆の外側でも分母を正に保つためである。KKの近傍では少なくとも一つのbνb_\nuが11になるため、この補助項は零になり、通常の正規化と同じく総和が11になる。

系 2.2.K⊂RnK\subset\mathbb R^nをコンパクト集合とし、W⊂RnW\subset\mathbb R^nをKKを含む開集合とする。このとき、C1C^1級関数η:Rn→[0,1]\eta:\mathbb R^n\to[0,1]で、supp⁡η\operatorname{supp}\etaがコンパクトかつWWに含まれ、KKのある開近傍でη=1\eta=1となるものが存在する。

証明.定理 2.1を一つの開集合U1=WU_1=Wからなる被覆へ適用し、得られた局所化を(θν)ν=1M(\theta_\nu)_{\nu=1}^Mとする。η=∑ν=1Mθν\eta=\sum_{\nu=1}^M\theta_\nuとおく。定理の式 (4) により0≤η≤10\leq\eta\leq1であり、KKのある開近傍でη=1\eta=1である。また

supp⁡η⊂⋃ν=1Msupp⁡θν⊂W.\operatorname{supp}\eta \subset\bigcup_{\nu=1}^M\operatorname{supp}\theta_\nu \subset W.

右辺の最初の有限和はコンパクトであり、supp⁡η\operatorname{supp}\etaはその閉部分集合なのでコンパクトである。▨

3 構成の具体例

例 3.1 (二つの切断関数の正規化).K=[−1,1]⊂RK=[-1,1]\subset\mathbb Rとし、

U1=(−3,11/10),U2=(−11/10,3)U_1=(-3,11/10),\qquad U_2=(-11/10,3)

とする。z1=−1/2z_1=-1/2、z2=1/2z_2=1/2、r1=r2=3/4r_1=r_2=3/4とおけば、B(zν,2rν)‾⊂Uν\overline{B(z_\nu,2r_\nu)}\subset U_\nuであり、B(z1,r1)∪B(z2,r2)B(z_1,r_1)\cup B(z_2,r_2)はKKを含む。

bν=bzν,rνb_\nu=b_{z_\nu,r_\nu}とすると、二関数の場合の分母は

D=b1+b2+(1−b1)(1−b2)=1+b1b2D=b_1+b_2+(1-b_1)(1-b_2)=1+b_1b_2

である。従って

θ1=b11+b1b2,θ2=b21+b1b2.\theta_1=\frac{b_1}{1+b_1b_2}, \qquad \theta_2=\frac{b_2}{1+b_1b_2}.

KKの各点では少なくとも一方のbνb_\nuが11なのでθ1+θ2=1\theta_1+\theta_2=1である。両方が11になる重なりではθ1=θ2=1/2\theta_1=\theta_2=1/2となり、二つの被覆要素へ寄与が対称に分かれる。

4 演習

問題 4.1 (積型による有限局所化).定理 2.1の証明で選んだb1,…,bMb_1,\ldots,b_Mに対して

θ~1=b1,θ~ν=bν∏μ<ν(1−bμ)(2≤ν≤M)\widetilde\theta_1=b_1, \qquad \widetilde\theta_\nu=b_\nu\prod_{\mu<\nu}(1-b_\mu) \quad(2\leq\nu\leq M)

と定める。この関数族も同じ被覆に従属する有限局所化であり、全空間で総和が11以下になることを証明せよ。また、この構成と式 (9) の構成の違いを一つ述べよ。

解答.

各θ~ν\widetilde\theta_\nuは非負のC1C^1級関数であり、

supp⁡θ~ν⊂supp⁡bν⊂Uσ(ν)\operatorname{supp}\widetilde\theta_\nu \subset\operatorname{supp}b_\nu \subset U_{\sigma(\nu)}

である。この台はコンパクトである。

1≤m≤M1\leq m\leq Mに対して

∑ν=1mθ~ν=1−∏ν=1m(1−bν)(12)\sum_{\nu=1}^m\widetilde\theta_\nu =1-\prod_{\nu=1}^m(1-b_\nu) \tag{12}

を帰納法で示す。m=1m=1では両辺がb1b_1である。式 (12) がmmで成り立つならば、θ~m+1=bm+1∏ν=1m(1−bν)\widetilde\theta_{m+1}=b_{m+1}\prod_{\nu=1}^m(1-b_\nu)を加えることにより

1−∏ν=1m(1−bν)+bm+1∏ν=1m(1−bν)=1−∏ν=1m+1(1−bν)1-\prod_{\nu=1}^m(1-b_\nu) +b_{m+1}\prod_{\nu=1}^m(1-b_\nu) =1-\prod_{\nu=1}^{m+1}(1-b_\nu)

を得る。各1−bν1-b_\nuは[0,1][0,1]に値をもつため、全空間で0≤∑νθ~ν≤10\leq\sum_\nu\widetilde\theta_\nu\leq1となる。KKを含む開集合VVでは少なくとも一つのbνb_\nuが11であり、式 (12) の積が零になるので総和は11である。

式 (9) の構成はbνb_\nuの番号を入れ替えても対応するθν\theta_\nuが入れ替わるだけである。一方、積型では前に置いた切断関数の因子が後の全ての関数へ現れるため、一般に番号の順序によって各局所化関数が変わる。▨

参考文献

  1. Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1976.コンパクト集合の有限開被覆に従属する有限局所化の構成を参考にした。
  2. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.積分定理の証明に用いる有限局所化の役割を参考にした。

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