§E4.18曲線と線積分

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曲線に沿って量を積み上げるとき、曲線の形だけでなく、どの向きに進むかが値へ影響する場合がある。速さを重みとする線積分は向きを消す一方、接ベクトルを用いる線積分は向きを記録する。この違いは、勾配場では積分が始点と終点の値の差へ縮約される一方、局所的な回転の消失から同じ結論を得るには定義域の形が必要になるという対照につながる。本記事では、曲線と線積分の基本的な性質を定め、勾配場と保存場の関係、および星型領域での保存場の判定を扱う。

1 区分的に滑らかな曲線

定義 1.1.U⊂RnU\subset\mathbb R^nを開集合とする。連続写像γ ⁣:[a,b]→U\gamma\colon[a,b]\to Uに対して、分割

a=t0<t1<⋯<tN=ba=t_0<t_1<\cdots<t_N=b

が存在し、各制限γ∣[tj−1,tj]\gamma|_{[t_{j-1},t_j]}が端点における片側微分を含めてC1C^1級であるとき、γ\gammaを 区分的C1C^1曲線 (piecewiseC1C^1curve) という。γ(a)\gamma(a)を始点 (initial point)、γ(b)\gamma(b)を終点 (terminal point) という。

各開小区間上の導関数をγ′\gamma'と書く。区分点における導関数の値は、後で定義する積分へ影響しない。定数曲線も区分的C1C^1曲線である。

定義 1.2.γ ⁣:[a,b]→U\gamma\colon[a,b]\to Uを区分的C1C^1曲線とする。逆向きの曲線 (reversed curve)γ−\gamma^{-}を

γ−(t)=γ(a+b−t)(a≤t≤b)\gamma^{-}(t)=\gamma(a+b-t)\qquad(a\leq t\leq b)

で定める。

η ⁣:[c,d]→U\eta\colon[c,d]\to Uも区分的C1C^1曲線であり、γ(b)=η(c)\gamma(b)=\eta(c)を満たすとする。このとき、γ\gammaの後にη\etaを進む連結曲線 (concatenated curve)γ∗η ⁣:[a,b+d−c]→U\gamma*\eta\colon[a,b+d-c]\to Uを

(γ∗η)(t)={γ(t),a≤t≤b,η(c+t−b),b≤t≤b+d−c(\gamma*\eta)(t)= \begin{cases} \gamma(t),&a\leq t\leq b,\\ \eta(c+t-b),&b\leq t\leq b+d-c \end{cases}

で定める。接続点で導関数が一致する必要はないため、γ∗η\gamma*\etaは一般にはC1C^1級ではないが、区分的C1C^1曲線である。

2 二種類の線積分

定義 2.1.γ ⁣:[a,b]→U\gamma\colon[a,b]\to Uを区分的C1C^1曲線、f ⁣:U→Rf\colon U\to\mathbb Rを連続なスカラー場、F ⁣:U→RnF\colon U\to\mathbb R^nを連続なベクトル場とする。分割a=t0<⋯<tN=ba=t_0<\cdots<t_N=bを一つ取り、

∫γf ds:=∑j=1N∫tj−1tjf(γ(t))∥γ′(t)∥ dt,\int_\gamma f\,ds :=\sum_{j=1}^N\int_{t_{j-1}}^{t_j} f(\gamma(t))\lVert\gamma'(t)\rVert\,dt,∫γF⋅dr:=∑j=1N∫tj−1tjF(γ(t))⋅γ′(t) dt\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r :=\sum_{j=1}^N\int_{t_{j-1}}^{t_j} F(\gamma(t))\mathbin{\cdot}\gamma'(t)\,dt

と定める。第一式を スカラー場の線積分 (scalar line integral)、第二式を ベクトル場の線積分 (vector line integral) という。

注意 2.2 (型、正則性および向き). 二つの被積分関数は、各滑らかな小区間上で連続であるため、一変数の Riemann 積分をもつ。分割を細分しても積分の有限加法性によって和は変わらないので、定義は区分の選択に依存しない。曲線が同じ点に留まる小区間ではγ′=0\gamma'=0であり、その小区間はどちらの線積分にも寄与しない。

スカラー場の線積分では、∥γ′∥\lVert\gamma'\rVertが曲線の速さだけを残す。ベクトル場の線積分では、γ′\gamma'自身が接線方向を保持する。従って、前者は向きに依存せず、後者は向きに依存する。F⋅drF\mathbin{\cdot}d\boldsymbol rは記号全体でベクトル場の線積分を表し、ベクトル値の微小量を独立に積分しているのではない。

命題 2.3.γ\gammaとη\etaを定義 1.2の曲線とする。このとき

∫γ∗ηf ds=∫γf ds+∫ηf ds,∫γ∗ηF⋅dr=∫γF⋅dr+∫ηF⋅dr\int_{\gamma*\eta}f\,ds =\int_\gamma f\,ds+\int_\eta f\,ds, \qquad \int_{\gamma*\eta}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r +\int_\eta F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r

が成り立つ。また、

∫γ−f ds=∫γf ds,∫γ−F⋅dr=−∫γF⋅dr\int_{\gamma^-}f\,ds=\int_\gamma f\,ds, \qquad \int_{\gamma^-}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =-\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r

が成り立つ。

証明. 連結曲線の分割へ接続点bbを加えると、定義の和はγ\gamma上の和とη\eta上の和に分かれる。これにより、連結に関する二式を得る。

逆向きの曲線については(γ−)′(t)=−γ′(a+b−t)(\gamma^-)'(t)=-\gamma'(a+b-t)である。スカラー場の線積分ではノルムが負号を消し、ベクトル場の線積分では内積に負号が残る。各小区間で補題 3.1をu=a+b−tu=a+b-tに適用し、小区間の和を取ると、後半の二式を得る。▨

3 再パラメータ化

補題 3.1 (一変数の定積分の置換公式).mmを正の整数とし、h ⁣:[α,β]→Rmh\colon[\alpha,\beta]\to\mathbb R^mを連続とする。ψ ⁣:[p,q]→[α,β]\psi\colon[p,q]\to[\alpha,\beta]をC1C^1級とする。このとき、積分を成分ごとに定めると

∫pqh(ψ(u))ψ′(u) du=∫ψ(p)ψ(q)h(t) dt\int_p^q h(\psi(u))\psi'(u)\,du =\int_{\psi(p)}^{\psi(q)}h(t)\,dt

が成り立つ。ただし、上端が下端より小さい積分は符号を反転して定める。

証明.hhを[α,β][\alpha,\beta]の外側では端点値で延長し、その延長もhhと書く。H(x)=∫αxh(t) dtH(x)=\int_\alpha^x h(t)\,dtとおく。一変数の第一基本定理§D1.19 定理 1.1を成分ごとに適用するとH ⁣:R→RmH\colon\mathbb R\to\mathbb R^mはC1C^1級であり、H′=hH'=hである。連鎖律§E4.3 定理 1.1により

(H∘ψ)′(u)=h(ψ(u))ψ′(u)(H\circ\psi)'(u)=h(\psi(u))\psi'(u)

を得る。第二基本定理§D1.19 定理 2.1を成分ごとに適用すると

∫pqh(ψ(u))ψ′(u) du=H(ψ(q))−H(ψ(p))=∫ψ(p)ψ(q)h(t) dt\int_p^q h(\psi(u))\psi'(u)\,du =H(\psi(q))-H(\psi(p)) =\int_{\psi(p)}^{\psi(q)}h(t)\,dt

となる。▨

命題 3.2.γ ⁣:[a,b]→U\gamma\colon[a,b]\to Uを区分的C1C^1曲線とする。ϕ ⁣:[c,d]→[a,b]\phi\colon[c,d]\to[a,b]を区分的C1C^1級の同相写像とし、各滑らかな小区間の内部でϕ′\phi'は零にならないとする。

ϕ(c)=a\phi(c)=aかつϕ(d)=b\phi(d)=bならば、γ~=γ∘ϕ\widetilde\gamma=\gamma\circ\phiに対して

∫γ~f ds=∫γf ds,∫γ~F⋅dr=∫γF⋅dr\int_{\widetilde\gamma}f\,ds=\int_\gamma f\,ds, \qquad \int_{\widetilde\gamma}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r

が成り立つ。ϕ(c)=b\phi(c)=bかつϕ(d)=a\phi(d)=aならば、

∫γ~f ds=∫γf ds,∫γ~F⋅dr=−∫γF⋅dr\int_{\widetilde\gamma}f\,ds=\int_\gamma f\,ds, \qquad \int_{\widetilde\gamma}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =-\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r

が成り立つ。

証明.γ\gammaとϕ\phiの区分点、およびγ\gammaの区分点のϕ\phiによる逆像を用いて[c,d][c,d]を細分する。各小区間では連鎖律§E4.3 定理 1.1により

(γ∘ϕ)′(u)=γ′(ϕ(u))ϕ′(u)(\gamma\circ\phi)'(u)=\gamma'(\phi(u))\phi'(u)

が成り立つ。ϕ\phiが向きを保つ場合にはϕ′(u)>0\phi'(u)>0であるから、

∥(γ∘ϕ)′(u)∥=∥γ′(ϕ(u))∥ϕ′(u).\lVert(\gamma\circ\phi)'(u)\rVert =\lVert\gamma'(\phi(u))\rVert\phi'(u).

二種類の線積分へ代入し、各小区間で一変数の定積分の置換公式補題 3.1をt=ϕ(u)t=\phi(u)に適用すると、向きを保つ二式を得る。

ϕ\phiが向きを反転する場合にはϕ′(u)<0\phi'(u)<0である。ノルムを含む式では∣ϕ′(u)∣|\phi'(u)|が現れるため符号は残らず、内積を含む式ではϕ′(u)\phi'(u)の符号が残る。補題 3.1における積分端点の順序も反転することを用いると、向きを反転する二式を得る。▨

例 3.3 (らせんに沿う線積分).F(x,y,z)=(y,−x,z)F(x,y,z)=(y,-x,z)とし、

γ(t)=(cos⁡t,sin⁡t,t),0≤t≤2π\gamma(t)=(\cos t,\sin t,t),\qquad 0\leq t\leq2\pi

とする。このとき

F(γ(t))⋅γ′(t)=−sin⁡2t−cos⁡2t+t=t−1F(\gamma(t))\mathbin{\cdot}\gamma'(t) =-\sin^2t-\cos^2t+t=t-1

である。従って

∫γF⋅dr=∫02π(t−1) dt=2π2−2π\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =\int_0^{2\pi}(t-1)\,dt=2\pi^2-2\pi

を得る。向きを反転すれば、積分値は−2π2+2π-2\pi^2+2\piになる。

4 勾配定理

定理 4.1 (勾配定理).U⊂RnU\subset\mathbb R^nを開集合、φ∈C1(U)\varphi\in C^1(U)とし、γ ⁣:[a,b]→U\gamma\colon[a,b]\to Uを区分的C1C^1曲線とする。このとき

∫γ∇φ⋅dr=φ(γ(b))−φ(γ(a))\int_\gamma\nabla\varphi\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =\varphi(\gamma(b))-\varphi(\gamma(a))

が成り立つ。

証明.γ\gammaがC1C^1級である各小区間[tj−1,tj][t_{j-1},t_j]では、連鎖律§E4.3 定理 1.1により

ddtφ(γ(t))=∇φ(γ(t))⋅γ′(t)\frac{d}{dt}\varphi(\gamma(t)) =\nabla\varphi(\gamma(t))\mathbin{\cdot}\gamma'(t)

が成り立つ。一変数の微積分学の基本定理§D1.19 定理 2.1を各小区間へ適用すると、

∫tj−1tj∇φ(γ(t))⋅γ′(t) dt=φ(γ(tj))−φ(γ(tj−1))\int_{t_{j-1}}^{t_j}\nabla\varphi(\gamma(t))\mathbin{\cdot}\gamma'(t)\,dt =\varphi(\gamma(t_j))-\varphi(\gamma(t_{j-1}))

を得る。j=1,…,Nj=1,\ldots,Nについて加えると、中間の端点値が相殺し、始点と終点の値だけが残る。▨

系 4.2.φ∈C1(U)\varphi\in C^1(U)とし、γ\gammaをUU内の区分的C1C^1閉曲線とする。このとき

∫γ∇φ⋅dr=0\int_\gamma\nabla\varphi\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r=0

である。

証明. 閉曲線ではγ(a)=γ(b)\gamma(a)=\gamma(b)である。定理 4.1の右辺へ代入すると零を得る。▨

5 経路独立性とポテンシャル

定義 5.1.U⊂RnU\subset\mathbb R^nの任意の二点をUU内の区分的C1C^1曲線で結ぶことができるとき、UUは区分的C1C^1弧状連結 (piecewiseC1C^1path-connected) であるという。

定義 5.2.F ⁣:U→RnF\colon U\to\mathbb R^nを連続なベクトル場とする。あるφ∈C1(U)\varphi\in C^1(U)が存在してF=∇φF=\nabla\varphiを満たすとき、FFを 保存場 (conservative vector field)、φ\varphiをFFの ポテンシャル (potential function) という。

UU内の任意の二本の区分的C1C^1曲線が同じ始点と同じ終点をもつならば、それらに沿うFFの線積分が等しいとき、FFの線積分は 経路独立 (path-independent) であるという。

定理 5.3.U⊂RnU\subset\mathbb R^nを開かつ区分的C1C^1弧状連結な集合とし、F ⁣:U→RnF\colon U\to\mathbb R^nを連続とする。次の三条件は同値である。

  1. FFは保存場である。
  2. FFの線積分は経路独立である。
  3. UU内の任意の区分的C1C^1閉曲線γ\gammaに対して∫γF⋅dr=0\displaystyle\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r=0である。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。(1)を仮定し、F=∇φF=\nabla\varphiとする。同じ始点ppと終点qqをもつ任意の二曲線に対し、定理 4.1はいずれの線積分もφ(q)−φ(p)\varphi(q)-\varphi(p)に等しいことを与える。従って(2)を得る。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。(2)を仮定する。閉曲線と、その始点に留まる定数曲線は同じ始点と終点をもつ。定数曲線に沿う線積分は零であるから、(3)を得る。

(3)⇒\Rightarrow(2)を示す。(3)を仮定する。同じ始点と終点をもつ二曲線をγ\gammaとη\etaとする。γ∗η−\gamma*\eta^-は閉曲線であるから、命題 2.3により

0=∫γ∗η−F⋅dr=∫γF⋅dr−∫ηF⋅dr.0=\int_{\gamma*\eta^-}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r -\int_\eta F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r.

従って(2)を得る。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。最後に、U=∅U=\varnothingならば、空写像φ ⁣:U→R\varphi\colon U\to\mathbb RはC1C^1級であり、その勾配は空写像FFに等しいため、(1)が成り立つ。以下ではU≠∅U\ne\varnothingとする。基点x0∈Ux_0\in Uを固定する。各x∈Ux\in Uに対してx0x_0からxxへ至る区分的C1C^1曲線を取り、

φ(x):=∫x0xF⋅dr\varphi(x):=\int_{x_0}^{x}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r

と定める。右辺は選んだ曲線に沿う積分を表す。(2)により、その値は曲線の選択に依存しない。

x∈Ux\in Uと標準基底ベクトルeje_jを固定する。UUは開集合であるから、十分小さい∣h∣|h|に対してx+thej∈Ux+th e_j\in U(0≤t≤10\leq t\leq1)である。x0x_0からxxへの曲線へこの線分を連結し、経路独立性を用いると

φ(x+hej)−φ(x)=∫01F(x+thej)⋅(hej) dt=∫0hFj(x+sej) ds\varphi(x+he_j)-\varphi(x) =\int_0^1F(x+th e_j)\mathbin{\cdot}(he_j)\,dt =\int_0^hF_j(x+se_j)\,ds

を得る。h≠0h\ne0で割ってh→0h\to0とすると、FjF_jの連続性から∂jφ(x)=Fj(x)\partial_j\varphi(x)=F_j(x)となる。全てのFjF_jが連続であるから、§E4.2 系 2.2によりφ∈C1(U)\varphi\in C^1(U)であり、∇φ=F\nabla\varphi=Fである。従って(1)を得る。▨

6 星型領域における保存場の判定

定義 6.1.U⊂RnU\subset\mathbb R^nとa∈Ua\in Uに対し、任意のx∈Ux\in Uと0≤t≤10\leq t\leq1について

a+t(x−a)∈Ua+t(x-a)\in U

が成り立つとき、UUはaaに関して 星型 (star-shaped) であるという。

定理 6.2.U⊂R3U\subset\mathbb R^3をa∈Ua\in Uに関して星型な開集合とする。F=(F1,F2,F3)∈C1(U;R3)F=(F_1,F_2,F_3)\in C^1(U;\mathbb R^3)が§E4.17 定義 1.2の回転について

curl⁡F=0\operatorname{curl}F=0

を満たすならば、

φ(x):=∫01F(a+t(x−a))⋅(x−a) dt\varphi(x):=\int_0^1F(a+t(x-a))\mathbin{\cdot}(x-a)\,dt

はFFのポテンシャルである。

証明.x∈Ux\in Uとj∈{1,2,3}j\in\{1,2,3\}を固定する。UUは開集合であるから、xjx_jを内部に含む有界閉区間JJを十分小さく取り、xxの第jj座標をs∈Js\in Jへ置き換えた点x(s)x(s)が全てUUに属するようにすることができる。UUはaaに関して星型であるから、a+t(x(s)−a)a+t(x(s)-a)は全ての(t,s)∈[0,1]×J(t,s)\in[0,1]\times JについてUUに属する。

FFとその一階偏導関数は連続であり、[0,1]×J[0,1]\times Jはコンパクトである。§E2.9 定理 5.1により、以下の被積分関数とそのssに関する偏導関数はこの長方形上で一様連続である。従って、有限区間上のパラメータ積分の微分公式§D1.26 補題 2.1を適用することができる。s=xjs=x_jとすると

∂jφ(x)=∫01[Fj(a+t(x−a))+t∑k=13∂jFk(a+t(x−a))(xk−ak)]dt\partial_j\varphi(x) =\int_0^1\left[ F_j(a+t(x-a)) +t\sum_{k=1}^3\partial_jF_k(a+t(x-a))(x_k-a_k) \right]dt

を得る。

curl⁡F=0\operatorname{curl}F=0は、全てのj,k∈{1,2,3}j,k\in\{1,2,3\}に対する∂jFk=∂kFj\partial_jF_k=\partial_kF_jと同値である。従って

∂jφ(x)=∫01[Fj(a+t(x−a))+t∑k=13∂kFj(a+t(x−a))(xk−ak)]dt=∫01ddt[tFj(a+t(x−a))]dt=Fj(x).\begin{aligned} \partial_j\varphi(x) &=\int_0^1\left[ F_j(a+t(x-a)) +t\sum_{k=1}^3\partial_kF_j(a+t(x-a))(x_k-a_k) \right]dt\\ &=\int_0^1\frac{d}{dt} \left[tF_j(a+t(x-a))\right]dt\\ &=F_j(x). \end{aligned}

従って全てのjjについて∂jφ=Fj\partial_j\varphi=F_jである。FjF_jは連続であるから§E4.2 系 2.2によりφ∈C1(U)\varphi\in C^1(U)であり、∇φ=F\nabla\varphi=Fとなる。▨

注意 6.3 (局所条件と定義域の形).curl⁡F=0\operatorname{curl}F=0は各点の近くで確認する微分条件である。星型性は、全ての点を同じ基点からの線分で結び、ポテンシャルを一つの式で定める大域的な条件である。前者だけでは閉曲線に沿う積分を制御しない。従って、星型性のような定義域の条件を除いて逆向きを主張することはできない。

例 6.4 (穴のある領域における反例).

U=R2∖{(0,0)},F(x,y)=(−yx2+y2,xx2+y2)U=\mathbb R^2\setminus\{(0,0)\},\qquad F(x,y)=\left(-\frac{y}{x^2+y^2},\frac{x}{x^2+y^2}\right)

とおく。FFはUU上でC1C^1級であり、直接微分すると

∂xF2=y2−x2(x2+y2)2=∂yF1\partial_xF_2=\frac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2} =\partial_yF_1

を得る。従って二次元の回転∂xF2−∂yF1\partial_xF_2-\partial_yF_1は零である。

一方、単位円を反時計回りに回る曲線γ(t)=(cos⁡t,sin⁡t)\gamma(t)=(\cos t,\sin t)(0≤t≤2π0\leq t\leq2\pi)に対して

F(γ(t))=(−sin⁡t,cos⁡t)=γ′(t)F(\gamma(t))=(-\sin t,\cos t)=\gamma'(t)

であるから

∫γF⋅dr=∫02π1 dt=2π.\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =\int_0^{2\pi}1\,dt=2\pi.

定理 5.3により、FFはUU全体では保存場でない。

7 演習

問題 7.1 (二種類の線積分と向き).γ(t)=(cos⁡t,sin⁡t)\gamma(t)=(\cos t,\sin t)(0≤t≤π0\leq t\leq\pi)、f(x,y)=xf(x,y)=x、F(x,y)=(−y,x)F(x,y)=(-y,x)とする。∫γf ds\int_\gamma f\,dsと∫γF⋅dr\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol rを求めよ。また、γ\gammaの向きを反転したとき、二つの値がどのように変わるかを定義から確認せよ。

解答.

∥γ′(t)∥=1\lVert\gamma'(t)\rVert=1であるから

∫γf ds=∫0πcos⁡t dt=0.\int_\gamma f\,ds=\int_0^\pi\cos t\,dt=0.

また、F(γ(t))=(−sin⁡t,cos⁡t)=γ′(t)F(\gamma(t))=(-\sin t,\cos t)=\gamma'(t)であるから

∫γF⋅dr=∫0π∥γ′(t)∥2 dt=π.\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r =\int_0^\pi\lVert\gamma'(t)\rVert^2\,dt=\pi.

逆向きでは導関数に負号が付く。速さのノルムは変わらないため第一の値は00のままであり、接ベクトルとの内積は符号を変えるため第二の値は−π-\piになる。▨

問題 7.2 (星型領域におけるポテンシャルの構成).U=R3U=\mathbb R^3とし、

F(x,y,z)=(2xy+z,x2,x)F(x,y,z)=(2xy+z,x^2,x)

とする。curl⁡F=0\operatorname{curl}F=0を確認し、基点を原点として定理 6.2の構成からポテンシャルを求めよ。さらに、原点から(1,2,3)(1,2,3)へ至る任意の区分的C1C^1曲線に沿うFFの線積分を求めよ。

解答.

直接計算すると

curl⁡F=(∂yx−∂zx2,∂z(2xy+z)−∂xx,∂xx2−∂y(2xy+z))=(0,0,0)\operatorname{curl}F =(\partial_yx-\partial_zx^2,\partial_z(2xy+z)-\partial_xx, \partial_xx^2-\partial_y(2xy+z))=(0,0,0)

である。また、

φ(x,y,z)=∫01F(tx,ty,tz)⋅(x,y,z) dt=∫01(3t2x2y+2txz) dt=x2y+xz.\begin{aligned} \varphi(x,y,z) &=\int_0^1F(tx,ty,tz)\mathbin{\cdot}(x,y,z)\,dt\\ &=\int_0^1(3t^2x^2y+2txz)\,dt =x^2y+xz. \end{aligned}

実際に∇φ=(2xy+z,x2,x)=F\nabla\varphi=(2xy+z,x^2,x)=Fである。従って定理 4.1により、求める線積分は

φ(1,2,3)−φ(0,0,0)=2+3=5\varphi(1,2,3)-\varphi(0,0,0)=2+3=5

であり、経路に依存しない。▨

参考文献

  1. Jerrold E. Marsden and Anthony J. Tromba, Vector Calculus, 6th ed., W. H. Freeman, 2012.線積分、勾配定理、保存場の判定の定式化を参考にした。
  2. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.曲線積分の再パラメータ化とポテンシャルの構成を参考にした。

前提記事