§E19.18負曲率曲面と sine–Gordon 方程式

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「曲面論の基本定理」は、単連結な座標領域の上で、適合条件を満たす二つの形式の組から曲面が復元されることを示した。適合条件は、二つの基本形式の成分についての偏微分方程式系である。本記事は、この方程式系が一つの具体的な場合にどのような形を取るかを追う。Gauss 曲率が負の定数である曲面に、漸近方向に沿う特別な座標を取ると、適合条件のうち Codazzi–Mainardi の条件は恒等的に満たされ、Gauss 方程式だけが残って、座標曲線のなす角ω\omegaについての方程式

∂2ω∂u ∂v=sin⁡ω\frac{\partial^2\omega}{\partial u\,\partial v}=\sin\omega

になる。この方程式を sine–Gordon 方程式という。

本記事が実際に示すのは次の五つである。第一に、Gauss 曲率が負の定数である場合を、相似変換によってK≡−1K\equiv-1の場合へ帰着させることができることである。第二に、上の座標において二つの基本形式がω\omegaだけで書き表されることと、その二つの形式からK=−1K=-1が実際に出ることである。第三に、Codazzi–Mainardi の条件が恒等的に満たされ、Gauss 方程式が sine–Gordon 方程式と同値であることである。第四に、標構の微分方程式を行列に値を持つ一次微分形式で書いたとき、その可積分条件が同じ方程式を与えることである。第五に、擬球面がK≡−1K\equiv-1を満たし、sine–Gordon 方程式の一つの解に対応することである。

座標の存在は仮定として置き、証明しない。本記事の主張は、いずれも「漸近方向に沿う単位速度の座標が与えられている」という仮定のもとでのものである。そのような座標を取ることができることを証明したとは主張しない。

以下、V⊆R2V\subseteq\mathbb{R}^2を連結開集合、座標を(u,v)(u,v)と書く。x ⁣:V→R3\boldsymbol{x}\colon V\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みとし、NN、(E,F,G)(E,F,G)、(e,f,g)(e,f,g)を§E19.12 定義 2.1の単位法線と二つの基本形式の成分とする。I\mathrm{I}、II\mathrm{II}をそれぞれの対称二次形式とし、

K=eg−f2EG−F2K=\frac{eg-f^2}{EG-F^2}

と置く。x\boldsymbol{x}が正則曲面の正則パラメータ表示であるとき、このKKは像の Gauss 曲率に一致する(§E19.6 公式 2.3)。下付きのu,vu,vは偏微分を表す。「滑らか」はC∞C^\inftyを意味する。

1 曲率を−1-1に正規化する

命題 1.1.a>0a>0とし、x ⁣:V→R3\boldsymbol{x}\colon V\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みとする。

x~(u,v)=1a x(au,av)\tilde{\boldsymbol{x}}(u,v)=\frac1a\,\boldsymbol{x}(au,av)

と置き、その定義域をV~={(u,v):(au,av)∈V}\tilde V=\{(u,v):(au,av)\in V\}とする。x~\tilde{\boldsymbol{x}}に付随する量を波線つきで書くと、V~\tilde Vの上で次が成り立つ。

  1. E~(u,v)=E(au,av)\tilde E(u,v)=E(au,av)、F~(u,v)=F(au,av)\tilde F(u,v)=F(au,av)、G~(u,v)=G(au,av)\tilde G(u,v)=G(au,av)である。
  2. N~(u,v)=N(au,av)\tilde N(u,v)=N(au,av)であり、e~(u,v)=a e(au,av)\tilde e(u,v)=a\,e(au,av)、f~(u,v)=a f(au,av)\tilde f(u,v)=a\,f(au,av)、g~(u,v)=a g(au,av)\tilde g(u,v)=a\,g(au,av)である。
  3. K~(u,v)=a2 K(au,av)\tilde K(u,v)=a^2\,K(au,av)である。

とくにK≡−1/a2K\equiv-1/a^2ならばK~≡−1\tilde K\equiv-1である。また、e=g=0e=g=0ならばe~=g~=0\tilde e=\tilde g=0であり、E=G=1E=G=1ならばE~=G~=1\tilde E=\tilde G=1である。

証明. 以下、右辺の量はすべて点(au,av)(au,av)で評価する。x~u=1a⋅a xu=xu\tilde{\boldsymbol{x}}_u=\dfrac1a\cdot a\,\boldsymbol{x}_u=\boldsymbol{x}_u、x~v=xv\tilde{\boldsymbol{x}}_v=\boldsymbol{x}_vであるから(1)が従う。ベクトル積も等しいのでN~=N\tilde N=Nである。二階偏導関数はx~uu=1a⋅a2 xuu=a xuu\tilde{\boldsymbol{x}}_{uu}=\dfrac1a\cdot a^2\,\boldsymbol{x}_{uu}=a\,\boldsymbol{x}_{uu}であり、x~uv\tilde{\boldsymbol{x}}_{uv}、x~vv\tilde{\boldsymbol{x}}_{vv}についても同様であるから(2)が従う。したがって

K~=e~g~−f~2E~G~−F~2=a2(eg−f2)EG−F2=a2K\tilde K=\frac{\tilde e\tilde g-\tilde f^2}{\tilde E\tilde G-\tilde F^2}=\frac{a^2(eg-f^2)}{EG-F^2}=a^2K

である。最後の二つの主張は(1)と(2)から直ちに従う。▨

以後、K≡−1K\equiv-1の場合だけを扱う。命題 1.1により、Gauss 曲率が負の定数である一般の場合はこの場合へ帰着する。

2 漸近方向に沿う単位速度の座標

定義 2.1.x ⁣:V→R3\boldsymbol{x}\colon V\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みとする。座標(u,v)(u,v)がx\boldsymbol{x}の漸近 Chebyshev 座標 (asymptotic Chebyshev coordinates) であるとは、VVの全体で次の二つがともに成り立つことをいう。

  1. 漸近条件。e=0e=0かつg=0g=0である。すなわち、二つの座標曲線の族はいずれも各点で漸近方向(§E19.6 定義 3.3)を向く。
  2. 単位速度条件。E=1E=1かつG=1G=1である。すなわち、二つの座標曲線の族はいずれも単位速度である。

注意 2.2 (Chebyshev 網の正規化). 座標網が Chebyshev 網であるとは、二つの座標曲線の族のそれぞれについて、一方の座標を固定して他方を動かしたときの弧長が、固定した座標の値に依らないことをいう。この性質はEv=0E_v=0かつGu=0G_u=0と同値である。定義域が長方形であるときには、この条件のもとでEEはuuだけの関数、GGはvvだけの関数であるから、E\sqrt{E}のuuについての原始関数をu^\hat u、G\sqrt{G}のvvについての原始関数をv^\hat vと取ると、新しい座標についてE^=G^=1\hat E=\hat G=1になる。この取り替えは二つの座標を別々に狭義単調に変えるだけであり、座標曲線の向きを変えないので、定義 2.1 条件 (a)は保たれる。定義 2.1 条件 (b)は、Chebyshev 網をこの形に正規化したものである。

本記事は、定義 2.1 条件 (a)と定義 2.1 条件 (b)をともに満たす座標が存在することを証明しない。以下の主張は、そのような座標が与えられている場合についてのものである。K≡−1K\equiv-1を満たす曲面のどの点のまわりにもそのような座標を取ることができるという事実は成り立つが、その証明は本単元の範囲外であり、本記事のどの主張の根拠にも用いない。

定理 2.3.V⊆R2V\subseteq\mathbb{R}^2を連結開集合、x ⁣:V→R3\boldsymbol{x}\colon V\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みとし、(u,v)(u,v)が定義 2.1の漸近 Chebyshev 座標であり、VVの全体でK≡−1K\equiv-1であると仮定する。このとき次が成り立つ。

  1. FFの値は開区間(−1,1)(-1,1)に含まれ、ω=arccos⁡F\omega=\arccos FはVVの上のC∞C^\infty関数であって値は(0,π)(0,\pi)に含まれる。ω\omegaは、各点におけるxu\boldsymbol{x}_uとxv\boldsymbol{x}_vのなす角(§E19.4 定義 3.2)である。
  2. I=du2+2cos⁡ω du dv+dv2\mathrm{I}=du^2+2\cos\omega\,du\,dv+dv^2であり、EG−F2=sin⁡2ωEG-F^2=\sin^2\omegaである。
  3. e=g=0e=g=0であり、f=εsin⁡ωf=\varepsilon\sin\omegaを満たす定数ε∈{1,−1}\varepsilon\in\{1,-1\}が存在する。ε=−1\varepsilon=-1のときは、二つの座標を入れ替えた表示x′(u,v)=x(v,u)\boldsymbol{x}'(u,v)=\boldsymbol{x}(v,u)を取ることによってf=sin⁡ωf=\sin\omegaとすることができる。この取り替えは、パラメータ表示が定める単位法線を反転させ、E=G=1E=G=1、F=cos⁡ωF=\cos\omega、e=g=0e=g=0を保つ。
  4. 逆に、VVの上のC∞C^\infty関数ω\omegaが値を(0,π)(0,\pi)に持ち、二つの形式の成分が E=G=1,F=cos⁡ω,e=g=0,f=sin⁡ωE=G=1,\quad F=\cos\omega,\qquad e=g=0,\quad f=\sin\omega で与えられるならば、K≡−1K\equiv-1である。

証明.(1)を示す。x\boldsymbol{x}ははめ込みであるからEG−F2>0EG-F^2>0である(§E19.3 補題 1.4、§E19.4 補題 1.5)。E=G=1E=G=1であるから1−F2>01-F^2>0、すなわちFFの値は(−1,1)(-1,1)に含まれる。arccos⁡\arccosは(−1,1)(-1,1)の上でC∞C^\inftyであり値は(0,π)(0,\pi)に含まれるから、ω=arccos⁡F\omega=\arccos FはC∞C^\inftyである。§E19.4 定義 3.2によりxu\boldsymbol{x}_uとxv\boldsymbol{x}_vのなす角の余弦はF/EG=FF/\sqrt{EG}=Fであるから、そのなす角はω\omegaである。

(2)を示す。E=G=1E=G=1とF=cos⁡ωF=\cos\omegaを§E19.4 命題 1.4へ代入すれば第一の等式が得られる。EG−F2=1−cos⁡2ω=sin⁡2ωEG-F^2=1-\cos^2\omega=\sin^2\omegaである。

(3)を示す。仮定によりe=g=0e=g=0である。よって

−1=K=eg−f2EG−F2=−f2sin⁡2ω-1=K=\frac{eg-f^2}{EG-F^2}=\frac{-f^2}{\sin^2\omega}

であるからf2=sin⁡2ωf^2=\sin^2\omegaである。ω\omegaの値は(0,π)(0,\pi)に含まれるからsin⁡ω>0\sin\omega>0であり、したがってffはVVの上で零にならない。f/sin⁡ωf/\sin\omegaはVVの上の連続関数であり、値は{1,−1}\{1,-1\}に含まれ、VVは連結であるから、この値は定数ε\varepsilonである。

座標の入れ替えについて確かめる。x′(u,v)=x(v,u)\boldsymbol{x}'(u,v)=\boldsymbol{x}(v,u)と置く。以下、波線を付けない量はすべて点(v,u)(v,u)で評価し、ダッシュを付けた量は点(u,v)(u,v)で評価する。xu′=xv\boldsymbol{x}'_u=\boldsymbol{x}_v、xv′=xu\boldsymbol{x}'_v=\boldsymbol{x}_uであるから

xu′×xv′=xv×xu=−(xu×xv)\boldsymbol{x}'_u\times\boldsymbol{x}'_v=\boldsymbol{x}_v\times\boldsymbol{x}_u=-\bigl(\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\bigr)

である。ここで、ベクトル積が双線形でありz×z=0z\times z=\boldsymbol{0}を満たすこと(§E19.2 補題 1.2 (2))から従う交代性z2×z1=−(z1×z2)z_2\times z_1=-(z_1\times z_2)を用いた。したがってx′\boldsymbol{x}'が定める単位法線はN′=−NN'=-Nである。第一基本形式についてはE′=G=1E'=G=1、G′=E=1G'=E=1、F′=FF'=Fであり、したがってω′=arccos⁡F′=ω\omega'=\arccos F'=\omegaである。二階偏導関数についてはxuu′=xvv\boldsymbol{x}'_{uu}=\boldsymbol{x}_{vv}、xuv′=xuv\boldsymbol{x}'_{uv}=\boldsymbol{x}_{uv}、xvv′=xuu\boldsymbol{x}'_{vv}=\boldsymbol{x}_{uu}であるから

e′=⟨N′,xuu′⟩=−g=0,f′=⟨N′,xuv′⟩=−f,g′=⟨N′,xvv′⟩=−e=0e'=\langle N',\boldsymbol{x}'_{uu}\rangle=-g=0,\qquad f'=\langle N',\boldsymbol{x}'_{uv}\rangle=-f,\qquad g'=\langle N',\boldsymbol{x}'_{vv}\rangle=-e=0

である。したがってε=−1\varepsilon=-1のときf′=−εsin⁡ω=sin⁡ω′f'=-\varepsilon\sin\omega=\sin\omega'が成り立つ。

(4)を示す。EG−F2=sin⁡2ω>0EG-F^2=\sin^2\omega>0であるから商は定まり

K=0⋅0−sin⁡2ωsin⁡2ω=−1K=\frac{0\cdot0-\sin^2\omega}{\sin^2\omega}=-1

である。▨

例 2.4 (二つの形式からK=−1K=-1を書き下して確かめる).定理 2.3 (4)を、成分行列の形で確かめる。第一基本形式と第二基本形式の成分行列は

(EFFG)=(1cos⁡ωcos⁡ω1),(effg)=(0sin⁡ωsin⁡ω0)\begin{pmatrix}E&F\\F&G\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&\cos\omega\\\cos\omega&1\end{pmatrix}, \qquad \begin{pmatrix}e&f\\f&g\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&\sin\omega\\\sin\omega&0\end{pmatrix}

である。行列式はそれぞれ1−cos⁡2ω=sin⁡2ω1-\cos^2\omega=\sin^2\omegaと−sin⁡2ω-\sin^2\omegaであるから、§E19.6 公式 2.3によりK=−sin⁡2ω/sin⁡2ω=−1K=-\sin^2\omega/\sin^2\omega=-1である。同じ表から平均曲率も定まり

H=eG−2fF+gE2(EG−F2)=−2sin⁡ωcos⁡ω2sin⁡2ω=−cos⁡ωsin⁡ωH=\frac{eG-2fF+gE}{2(EG-F^2)}=\frac{-2\sin\omega\cos\omega}{2\sin^2\omega}=-\frac{\cos\omega}{\sin\omega}

である。HHはω\omegaの値によって定まり、ω=π/2\omega=\pi/2となる点でだけ零になる。したがって、この族の曲面は一般には極小曲面(§E19.16 定義 3.2)ではない。

3 標構・余標構・接続形式

命題 3.1.V⊆R2V\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、ω ⁣:V→(0,π)\omega\colon V\to(0,\pi)をC∞C^\infty関数とし、VVの上の二つの対称二次形式I\mathrm{I}、II\mathrm{II}の成分を

E=G=1,F=cos⁡ω,e=g=0,f=sin⁡ωE=G=1,\quad F=\cos\omega,\qquad e=g=0,\quad f=\sin\omega

と定める。§E19.12 定義 2.2が定める標構、余標構および接続形式は

e1=∂u,e2=∂v−cos⁡ω ∂usin⁡ω,e_1=\partial_u,\qquad e_2=\frac{\partial_v-\cos\omega\,\partial_u}{\sin\omega},ω1=du+cos⁡ω dv,ω2=sin⁡ω dv,\omega_1=du+\cos\omega\,dv,\qquad \omega_2=\sin\omega\,dv,ω12=−ωu du,ω13=sin⁡ω dv,ω23=du−cos⁡ω dv\omega_{12}=-\omega_u\,du,\qquad \omega_{13}=\sin\omega\,dv,\qquad \omega_{23}=du-\cos\omega\,dv

で与えられる。さらにω1∧ω2=sin⁡ω du∧dv\omega_1\wedge\omega_2=\sin\omega\ du\wedge dvである。

証明.E>0E>0とEG−F2=sin⁡2ω>0EG-F^2=\sin^2\omega>0が成り立つので、§E19.12 定義 2.2を適用することができる。§E19.12 定義 2.2 (1)の式へE=G=1E=G=1、F=cos⁡ωF=\cos\omegaを代入すると、e1e_1、e2e_2、ω1\omega_1、ω2\omega_2の式が得られる。

ω12\omega_{12}を求める。ω12\omega_{12}はdω1=ω12∧ω2d\omega_1=\omega_{12}\wedge\omega_2とdω2=−ω12∧ω1d\omega_2=-\omega_{12}\wedge\omega_1をともに満たす唯一の一次微分形式である(§E19.10 定理 3.2)。外微分を計算すると

dω1=d(cos⁡ω)∧dv=−sin⁡ω ωu du∧dv,dω2=d(sin⁡ω)∧dv=cos⁡ω ωu du∧dvd\omega_1=d(\cos\omega)\wedge dv=-\sin\omega\,\omega_u\ du\wedge dv,\qquad d\omega_2=d(\sin\omega)\wedge dv=\cos\omega\,\omega_u\ du\wedge dv

である。η=A du+B dv\eta=A\,du+B\,dv(A,BA,BはVV上の関数)と置くと

η∧ω2=Asin⁡ω du∧dv,−η∧ω1=(B−Acos⁡ω) du∧dv\eta\wedge\omega_2=A\sin\omega\ du\wedge dv,\qquad -\eta\wedge\omega_1=(B-A\cos\omega)\ du\wedge dv

である。第一の式をdω1d\omega_1と比べるとAsin⁡ω=−sin⁡ω ωuA\sin\omega=-\sin\omega\,\omega_uであり、sin⁡ω>0\sin\omega>0であるからA=−ωuA=-\omega_uである。第二の式をdω2d\omega_2と比べるとB−Acos⁡ω=cos⁡ω ωuB-A\cos\omega=\cos\omega\,\omega_uであり、A=−ωuA=-\omega_uを代入してB=0B=0である。よってω12=−ωu du\omega_{12}=-\omega_u\,duである。

ω13\omega_{13}とω23\omega_{23}を求める。§E19.12 定義 2.2 (3)によりhij=II(ei,ej)h_{ij}=\mathrm{II}(e_i,e_j)である。e1=∂ue_1=\partial_uであるからh11=e=0h_{11}=e=0である。

h12=II(∂u, ∂v−cos⁡ω ∂usin⁡ω)=f−cos⁡ω⋅esin⁡ω=sin⁡ωsin⁡ω=1,h_{12}=\mathrm{II}\Bigl(\partial_u,\ \frac{\partial_v-\cos\omega\,\partial_u}{\sin\omega}\Bigr)=\frac{f-\cos\omega\cdot e}{\sin\omega}=\frac{\sin\omega}{\sin\omega}=1,h22=II(∂v,∂v)−2cos⁡ω II(∂u,∂v)+cos⁡2ω II(∂u,∂u)sin⁡2ω=−2sin⁡ωcos⁡ωsin⁡2ω=−2cos⁡ωsin⁡ωh_{22}=\frac{\mathrm{II}(\partial_v,\partial_v)-2\cos\omega\,\mathrm{II}(\partial_u,\partial_v)+\cos^2\omega\,\mathrm{II}(\partial_u,\partial_u)}{\sin^2\omega} =\frac{-2\sin\omega\cos\omega}{\sin^2\omega}=-\frac{2\cos\omega}{\sin\omega}

である。よって

ω13=h11ω1+h12ω2=sin⁡ω dv,\omega_{13}=h_{11}\omega_1+h_{12}\omega_2=\sin\omega\,dv,ω23=h12ω1+h22ω2=(du+cos⁡ω dv)−2cos⁡ωsin⁡ω⋅sin⁡ω dv=du−cos⁡ω dv\omega_{23}=h_{12}\omega_1+h_{22}\omega_2=(du+\cos\omega\,dv)-\frac{2\cos\omega}{\sin\omega}\cdot\sin\omega\,dv=du-\cos\omega\,dv

である。

最後の等式を示す。ω1∧ω2=(du+cos⁡ω dv)∧(sin⁡ω dv)=sin⁡ω du∧dv\omega_1\wedge\omega_2=(du+\cos\omega\,dv)\wedge(\sin\omega\,dv)=\sin\omega\ du\wedge dvである。EG−F2=sin⁡ω\sqrt{EG-F^2}=\sin\omegaであるから、右辺は面積要素EG−F2 du∧dv\sqrt{EG-F^2}\,du\wedge dvに一致する。▨

4 sine–Gordon 方程式

証明方針を述べる。適合条件は三つの等式からなる(§E19.12 定義 2.4)。命題 3.1が五つの形式をω\omegaの式として与えているので、三つの等式の両辺をそれぞれ計算して比べればよい。Codazzi–Mainardi の第一の等式では両辺がともにcos⁡ω ωu du∧dv\cos\omega\,\omega_u\,du\wedge dvになり、第二の等式では両辺がともにsin⁡ω ωu du∧dv\sin\omega\,\omega_u\,du\wedge dvになる。すなわち、この二つはω\omegaに条件を課さずに成り立つ。残る Gauss 方程式では、左辺がωuv du∧dv\omega_{uv}\,du\wedge dv、右辺がsin⁡ω du∧dv\sin\omega\,du\wedge dvになり、両者が一致するという条件が sine–Gordon 方程式である。

定理 4.1.V⊆R2V\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、ω ⁣:V→(0,π)\omega\colon V\to(0,\pi)をC∞C^\infty関数とし、I\mathrm{I}、II\mathrm{II}と付随する形式を命題 3.1のとおりとする。

  1. Codazzi–Mainardi の条件は恒等的に満たされる。すなわちω\omegaに条件を課さずにVVの上で dω13=ω12∧ω23,dω23=ω21∧ω13d\omega_{13}=\omega_{12}\wedge\omega_{23},\qquad d\omega_{23}=\omega_{21}\wedge\omega_{13} が成り立つ。
  2. Gauss 方程式は sine–Gordon 方程式と同値である。すなわちVVの上でdω12=−ω13∧ω23d\omega_{12}=-\omega_{13}\wedge\omega_{23}が成り立つことと ωuv=sin⁡ω\omega_{uv}=\sin\omega がVVの上で成り立つことは同値である。
  3. 組(I,II)(\mathrm{I},\mathrm{II})が適合条件(§E19.12 定義 2.4)を満たすことと、ω\omegaが sine–Gordon 方程式を満たすことは同値である。
  4. x ⁣:V→R3\boldsymbol{x}\colon V\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みとし、(u,v)(u,v)が定義 2.1の漸近 Chebyshev 座標でありK≡−1K\equiv-1であるとする。定理 2.3のとおり単位法線を取ってf=sin⁡ωf=\sin\omegaとしたとき、ω\omegaは sine–Gordon 方程式を満たす。

証明.(1)を示す。命題 3.1の形式を代入して両辺を計算する。

dω13=d(sin⁡ω dv)=cos⁡ω(ωu du+ωv dv)∧dv=cos⁡ω ωu du∧dv,d\omega_{13}=d(\sin\omega\,dv)=\cos\omega\bigl(\omega_u\,du+\omega_v\,dv\bigr)\wedge dv=\cos\omega\,\omega_u\ du\wedge dv,ω12∧ω23=(−ωu du)∧(du−cos⁡ω dv)=ωucos⁡ω du∧dv\omega_{12}\wedge\omega_{23}=(-\omega_u\,du)\wedge(du-\cos\omega\,dv)=\omega_u\cos\omega\ du\wedge dv

であるから第一の等式が成り立つ。次に

dω23=d(du−cos⁡ω dv)=sin⁡ω(ωu du+ωv dv)∧dv=sin⁡ω ωu du∧dv,d\omega_{23}=d(du-\cos\omega\,dv)=\sin\omega\bigl(\omega_u\,du+\omega_v\,dv\bigr)\wedge dv=\sin\omega\,\omega_u\ du\wedge dv,ω21∧ω13=(ωu du)∧(sin⁡ω dv)=ωusin⁡ω du∧dv\omega_{21}\wedge\omega_{13}=(\omega_u\,du)\wedge(\sin\omega\,dv)=\omega_u\sin\omega\ du\wedge dv

であるから第二の等式が成り立つ。どちらの計算にもω\omegaについての条件は現れない。

(2)を示す。

dω12=d(−ωu du)=−ωuv dv∧du=ωuv du∧dvd\omega_{12}=d(-\omega_u\,du)=-\omega_{uv}\ dv\wedge du=\omega_{uv}\ du\wedge dv

であり

−ω13∧ω23=−(sin⁡ω dv)∧(du−cos⁡ω dv)=−sin⁡ω dv∧du=sin⁡ω du∧dv-\omega_{13}\wedge\omega_{23}=-(\sin\omega\,dv)\wedge(du-\cos\omega\,dv)=-\sin\omega\ dv\wedge du=\sin\omega\ du\wedge dv

である。du∧dvdu\wedge dvはVVの各点で二次交代形式の空間の基底であるから、二つが等しいこととωuv=sin⁡ω\omega_{uv}=\sin\omegaが各点で成り立つことは同値である。

(3)を示す。§E19.12 定義 2.4 条件 (a)は、(2)が扱った等式dω12=−ω13∧ω23d\omega_{12}=-\omega_{13}\wedge\omega_{23}である。§E19.12 定義 2.4 条件 (b)は、(1)の二つの等式である。(1)により§E19.12 定義 2.4 条件 (b)は常に成り立つので、適合条件が成り立つことと§E19.12 定義 2.4 条件 (a)が成り立つことは同値であり、(2)によりそれは sine–Gordon 方程式と同値である。

(4)を示す。定理 2.3 (1)⇒\Rightarrow(3)により、I\mathrm{I}とII\mathrm{II}の成分は命題 3.1の形をしている。「曲面論の基本定理」の§E19.12 命題 2.7により、はめ込みの二つの基本形式は適合条件を満たす。よって(3)によりω\omegaは sine–Gordon 方程式を満たす。▨

注意 4.2 (Gauss 方程式と Codazzi–Mainardi 方程式を書き分けること). 「Gauss–Codazzi の適合条件が sine–Gordon 方程式へ帰着する」と書いてはならない。定理 4.1 (1)が示すとおり、この座標では Codazzi–Mainardi の条件はω\omegaに何の条件も課さない。方程式を生むのは Gauss 方程式だけである。二つをまとめて書くと、Codazzi の側でも何かが起きているという誤った読み方を許すので、書き分ける。

同じ内容を内在的な形でも述べることができる。§E19.12 命題 2.5により、Gauss 方程式は、第一基本形式だけから定まる Gauss 曲率KIK_{\mathrm{I}}(§E19.11 定理 2.1)が二つの形式の行列式の比に等しいという条件である。命題 3.1のω12\omega_{12}とω1∧ω2\omega_1\wedge\omega_2から

dω12=ωuv du∧dv=−KI ω1∧ω2=−KIsin⁡ω du∧dvd\omega_{12}=\omega_{uv}\ du\wedge dv=-K_{\mathrm{I}}\,\omega_1\wedge\omega_2=-K_{\mathrm{I}}\sin\omega\ du\wedge dv

であるから

KI=−ωuvsin⁡ωK_{\mathrm{I}}=-\frac{\omega_{uv}}{\sin\omega}

である。すなわち、第一基本形式du2+2cos⁡ω du dv+dv2du^2+2\cos\omega\,du\,dv+dv^2の Gauss 曲率が−1-1であることと sine–Gordon 方程式は同値であり、この事実そのものは第二基本形式を用いずに述べることができる。

5 可積分条件

定理 5.1.V⊆R2V\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、ω ⁣:V→(0,π)\omega\colon V\to(0,\pi)をC∞C^\infty関数とし、ωij\omega_{ij}を命題 3.1のとおりとする。VVの上の三次正方行列に値を持つC∞C^\infty一次微分形式(「多様体入門」の§E17.13 定義 5.1)を

Ω=(ωij)1≤i,j≤3=(0−ωu dusin⁡ω dvωu du0du−cos⁡ω dv−sin⁡ω dv−du+cos⁡ω dv0)\Omega=\bigl(\omega_{ij}\bigr)_{1\le i,j\le3} =\begin{pmatrix} 0 & -\omega_u\,du & \sin\omega\,dv\\ \omega_u\,du & 0 & du-\cos\omega\,dv\\ -\sin\omega\,dv & -du+\cos\omega\,dv & 0 \end{pmatrix}

と定める。Ω\Omegaは交代行列に値を持つ。x ⁣:V→R3\boldsymbol{x}\colon V\to\mathbb{R}^3がC∞C^\inftyのはめ込みであって、その二つの基本形式の成分が命題 3.1の(E,F,G)(E,F,G)と(e,f,g)(e,f,g)に一致するとき、§E19.12 命題 2.6の標構(a1,a2,a3)(a_1,a_2,a_3)はVVの上で

dai=∑j=13ωij aj(i∈{1,2,3})da_i=\sum_{j=1}^{3}\omega_{ij}\,a_j\qquad(i\in\{1,2,3\})

を満たす。この方程式系の可積分条件について次が成り立つ。

  1. VVの上で dΩ−Ω∧Ω=(ωuv−sin⁡ω)(010−100000)du∧dvd\Omega-\Omega\wedge\Omega=\bigl(\omega_{uv}-\sin\omega\bigr) \begin{pmatrix}0&1&0\\-1&0&0\\0&0&0\end{pmatrix} du\wedge dv が成り立つ。
  2. したがって、可積分条件dΩ−Ω∧Ω=0d\Omega-\Omega\wedge\Omega=0がVVの上で成り立つことと、ω\omegaが sine–Gordon 方程式ωuv=sin⁡ω\omega_{uv}=\sin\omegaを満たすことは同値である。

証明.Ω\Omegaが交代行列に値を持つことは、ωji=−ωij\omega_{ji}=-\omega_{ij}とωii=0\omega_{ii}=0による。標構が上の方程式系を満たすことは§E19.12 命題 2.6 (3)である。

(Ω∧Ω)ij=∑k=13ωik∧ωkj(\Omega\wedge\Omega)_{ij}=\sum_{k=1}^{3}\omega_{ik}\wedge\omega_{kj}である(§E17.13 定義 5.1)。Ω\Omegaが交代行列に値を持つことから、対角成分については

(Ω∧Ω)ii=∑k=13ωik∧ωki=−∑k=13ωik∧ωik=0(\Omega\wedge\Omega)_{ii}=\sum_{k=1}^{3}\omega_{ik}\wedge\omega_{ki}=-\sum_{k=1}^{3}\omega_{ik}\wedge\omega_{ik}=0

であり、dωii=0d\omega_{ii}=0であるから対角成分は零である。また、非対角成分については

(Ω∧Ω)ji=∑k=13ωjk∧ωki=∑k=13(−ωkj)∧(−ωik)=−∑k=13ωik∧ωkj=−(Ω∧Ω)ij(\Omega\wedge\Omega)_{ji}=\sum_{k=1}^{3}\omega_{jk}\wedge\omega_{ki}=\sum_{k=1}^{3}(-\omega_{kj})\wedge(-\omega_{ik})=-\sum_{k=1}^{3}\omega_{ik}\wedge\omega_{kj}=-(\Omega\wedge\Omega)_{ij}

でありdωji=−dωijd\omega_{ji}=-d\omega_{ij}であるから、(i,j)(i,j)成分と(j,i)(j,i)成分は符号が反対である。したがって(1,2)(1,2)、(1,3)(1,3)、(2,3)(2,3)の三つを計算すれば足りる。

(1,2)(1,2)成分については(Ω∧Ω)12=ω13∧ω32=−ω13∧ω23(\Omega\wedge\Omega)_{12}=\omega_{13}\wedge\omega_{32}=-\omega_{13}\wedge\omega_{23}であり、定理 4.1 (2)の計算により

dω12−(−ω13∧ω23)=(ωuv−sin⁡ω) du∧dvd\omega_{12}-\bigl(-\omega_{13}\wedge\omega_{23}\bigr)=\bigl(\omega_{uv}-\sin\omega\bigr)\ du\wedge dv

である。(1,3)(1,3)成分については(Ω∧Ω)13=ω12∧ω23(\Omega\wedge\Omega)_{13}=\omega_{12}\wedge\omega_{23}であり、(2,3)(2,3)成分については(Ω∧Ω)23=ω21∧ω13(\Omega\wedge\Omega)_{23}=\omega_{21}\wedge\omega_{13}である。定理 4.1 (1)により、この二つでは差が零である。以上により(1)が従い、du∧dvdu\wedge dvが各点で二次交代形式の空間の基底であることから(2)が従う。▨

注意 5.2 (位置ベクトルを含めた系). 上の三次の系に位置ベクトルの方程式dx=ω1a1+ω2a2d\boldsymbol{x}=\omega_1a_1+\omega_2a_2を加えると、「曲面論の基本定理」の証明が用いた四次の系になる。同証明が確かめたとおり、追加された行に対する可積分条件は、第一構造方程式dω1=ω12∧ω2d\omega_1=\omega_{12}\wedge\omega_2、dω2=−ω12∧ω1d\omega_2=-\omega_{12}\wedge\omega_1と、II\mathrm{II}が対称であることの二つであり、いずれも命題 3.1の構成によって自動的に成り立つ。したがって、四次の系の可積分条件もまた sine–Gordon 方程式だけに帰着する。

系 5.3.V⊆R2V\subseteq\mathbb{R}^2を単連結な開集合、ω ⁣:V→(0,π)\omega\colon V\to(0,\pi)をC∞C^\infty関数であってVVの上でωuv=sin⁡ω\omega_{uv}=\sin\omegaを満たすものとする。このときC∞C^\inftyのはめ込みx ⁣:V→R3\boldsymbol{x}\colon V\to\mathbb{R}^3であって、第一基本形式の成分がE=G=1E=G=1、F=cos⁡ωF=\cos\omega、第二基本形式の成分がe=g=0e=g=0、f=sin⁡ωf=\sin\omegaであるものが存在する。x\boldsymbol{x}はR3\mathbb{R}^3の向きを保つ合同変換を除いて一意である。このx\boldsymbol{x}はK≡−1K\equiv-1を満たし、(u,v)(u,v)はその漸近 Chebyshev 座標である。

証明.E=1>0E=1>0かつEG−F2=sin⁡2ω>0EG-F^2=\sin^2\omega>0であるから、§E19.12 定理 4.1の仮定のうち形式についての部分が満たされる。定理 4.1 (3)により組(I,II)(\mathrm{I},\mathrm{II})は適合条件を満たす。VVは単連結であるから§E19.12 定理 4.1 (1)が存在を、§E19.12 定理 4.1 (2)が合同変換を除く一意性を与える。K≡−1K\equiv-1は定理 2.3 (4)であり、(u,v)(u,v)が漸近 Chebyshev 座標であることは成分の形から直ちに従う。▨

注意 5.4 (この零曲率表示はスペクトルパラメータを持たない).定理 5.1のΩ\Omegaは、一つの座標系における標構の微分方程式の係数であり、外部の助変数を含まない。可積分系の理論でいう零曲率表示は、助変数ζ\zeta(スペクトルパラメータ)に依存する一次微分形式の族Ωζ\Omega_\zetaであって、可積分条件dΩζ−Ωζ∧Ωζ=0d\Omega_\zeta-\Omega_\zeta\wedge\Omega_\zeta=0がすべてのζ\zetaについて同時に同じ非線形方程式と同値になるものを指す。本記事が構成したものと、この意味の零曲率表示を同一視してはならない。前者は後者のζ\zetaを一つ固定した断面にあたるが、逆散乱法や Bäcklund 変換が用いるのは、族がζ\zetaについて動くことである。

本単元は、スペクトルパラメータを含む Lax 表示、逆散乱法、Bäcklund 変換の一般論および soliton の階層を扱わない。扱うのは、一つの座標系における適合条件と、その解の検算までである。

注意 5.5 (可積分条件が満たされることと Gauss 曲率が零であることを混同しないこと). 「零曲率」という語は、V×R3V\times\mathbb{R}^3の上のd−Ωd-\Omegaという形の作用素の曲率、すなわちdΩ−Ω∧Ωd\Omega-\Omega\wedge\Omegaが消えることを指しており、曲面の Gauss 曲率とは別の量である。実際、定理 5.1の可積分条件が満たされる場合に得られる曲面の Gauss 曲率は−1-1であって00ではない。

さらに、可積分条件が満たされること自体は、この族に固有の性質ではない。§E19.12 命題 2.7により、R3\mathbb{R}^3へのすべてのはめ込みについて、対応する係数は可積分条件を満たす。本記事の内容は、この一般的な事実が、いま扱っている座標と曲率の条件のもとで一つの非線形偏微分方程式へ書き換えられるということである。

6 擬球面

定義 6.1.t>0t>0に対して

φ(t)=e−t,c(t)=1−e−2t,ψ(t)=arctanh⁡ c(t)−c(t)\varphi(t)=e^{-t},\qquad c(t)=\sqrt{1-e^{-2t}},\qquad \psi(t)=\operatorname{arctanh}\,c(t)-c(t)

と置く。平面曲線σ(t)=(φ(t),ψ(t))\sigma(t)=\bigl(\varphi(t),\psi(t)\bigr)を曳航線 (tractrix) という。J⊆RJ\subseteq\mathbb{R}を長さ2π2\piの開区間とし

p(t,θ)=(e−tcos⁡θ, e−tsin⁡θ, ψ(t)),(t,θ)∈(0,∞)×J\boldsymbol{p}(t,\theta)=\bigl(e^{-t}\cos\theta,\ e^{-t}\sin\theta,\ \psi(t)\bigr),\qquad(t,\theta)\in(0,\infty)\times J

と定める。p\boldsymbol{p}の像を擬球面 (pseudosphere) という。

命題 6.2.定義 6.1の記号のもとで、次が成り立つ。

  1. ccとψ\psiは(0,∞)(0,\infty)の上でC∞C^\inftyであり、ψ′=c\psi'=c、φ′=−e−t\varphi'=-e^{-t}、φ′2+ψ′2=1\varphi'^2+\psi'^2=1である。すなわち曳航線は単位速度である。
  2. p\boldsymbol{p}は像の正則パラメータ表示であり、第一基本形式の成分は Er=1,Fr=0,Gr=e−2tE_{\mathrm{r}}=1,\qquad F_{\mathrm{r}}=0,\qquad G_{\mathrm{r}}=e^{-2t} である。以下、添字r\mathrm{r}は、座標(t,θ)(t,\theta)に関する成分であることを表す。
  3. 曳航線の各点における接線が、その点からzz軸と交わる点まで切り取る線分の長さは11である。この性質が「曳航線」という名の由来である。
  4. 擬球面の Gauss 曲率は恒等的に−1-1である。
  5. パラメータ表示p\boldsymbol{p}が定める単位法線に関する第二基本形式の成分は er=−e−tc,fr=0,gr=e−tce_{\mathrm{r}}=-\frac{e^{-t}}{c},\qquad f_{\mathrm{r}}=0,\qquad g_{\mathrm{r}}=e^{-t}c である。

以下で引用する「主曲率・Gauss 曲率・平均曲率」および「第一基本形式と面積要素」の回転面についての主張は、母線のパラメータをuu、回転角をvvと書いている。本記事では母線のパラメータをtt、回転角をθ\thetaと書くので、その対応で読む。

証明.(1)を示す。t>0t>0で1−e−2t∈(0,1)1-e^{-2t}\in(0,1)であるからccはC∞C^\inftyで値は(0,1)(0,1)に含まれ、arctanh⁡\operatorname{arctanh}は(−1,1)(-1,1)の上でC∞C^\inftyである。よってψ\psiはC∞C^\inftyである。

c′=e−2tc=1−c2c,ddtarctanh⁡c=c′1−c2=1cc'=\frac{e^{-2t}}{c}=\frac{1-c^2}{c},\qquad \frac{d}{dt}\operatorname{arctanh}c=\frac{c'}{1-c^2}=\frac1c

であるからψ′=1c−1−c2c=c\psi'=\dfrac1c-\dfrac{1-c^2}{c}=cである。φ′=−e−t\varphi'=-e^{-t}であるから

φ′2+ψ′2=e−2t+(1−e−2t)=1\varphi'^2+\psi'^2=e^{-2t}+\bigl(1-e^{-2t}\bigr)=1

である。

(2)を示す。φ(t)=e−t>0\varphi(t)=e^{-t}>0でありφ′2+ψ′2=1>0\varphi'^2+\psi'^2=1>0であるから、§E19.4 命題 6.1の仮定が満たされる。さらにφ\varphiは狭義単調減少であるから、σ\sigmaの第一成分によってttが定まり、その対応は連続である。したがってσ\sigmaは(0,∞)(0,\infty)から像への同相写像であり、同命題によりp\boldsymbol{p}は正則パラメータ表示である。同命題が与える第一基本形式の成分は

Er=φ′2+ψ′2=1,Fr=0,Gr=φ2=e−2tE_{\mathrm{r}}=\varphi'^2+\psi'^2=1,\qquad F_{\mathrm{r}}=0,\qquad G_{\mathrm{r}}=\varphi^2=e^{-2t}

である。

(3)を示す。点σ(t)\sigma(t)における接線はs↦σ(t)+s σ′(t)=(e−t−se−t, ψ(t)+sc(t))s\mapsto\sigma(t)+s\,\sigma'(t)=\bigl(e^{-t}-se^{-t},\ \psi(t)+sc(t)\bigr)である。第一成分が零になるのはs=1s=1のときであり、σ′(t)\sigma'(t)は単位ベクトルであるから、σ(t)\sigma(t)からその点までの距離は11である。

(4)を示す。曳航線は単位速度であるから§E19.6 系 4.2を適用することができ、φ′′=e−t=φ\varphi''=e^{-t}=\varphiであるから

K=−φ′′φ=−1K=-\frac{\varphi''}{\varphi}=-1

である。

(5)を示す。§E19.6 命題 4.1をw=φ′2+ψ′2=1w=\sqrt{\varphi'^2+\psi'^2}=1として適用する。φ′=−e−t\varphi'=-e^{-t}、φ′′=e−t\varphi''=e^{-t}、ψ′=c\psi'=c、ψ′′=c′=1−c2c=e−2tc\psi''=c'=\dfrac{1-c^2}{c}=\dfrac{e^{-2t}}{c}であるから

er=φ′ψ′′−φ′′ψ′=−e−t⋅e−2tc−e−tc=−e−t(e−2t+c2)c=−e−tc,e_{\mathrm{r}}=\varphi'\psi''-\varphi''\psi'=-e^{-t}\cdot\frac{e^{-2t}}{c}-e^{-t}c=-\frac{e^{-t}\bigl(e^{-2t}+c^2\bigr)}{c}=-\frac{e^{-t}}{c},fr=0,gr=φψ′=e−tcf_{\mathrm{r}}=0,\qquad g_{\mathrm{r}}=\varphi\psi'=e^{-t}c

である。ここでe−2t+c2=1e^{-2t}+c^2=1を用いた。検算として

ergr−fr2ErGr−Fr2=−e−2te−2t=−1\frac{e_{\mathrm{r}}g_{\mathrm{r}}-f_{\mathrm{r}}^2}{E_{\mathrm{r}}G_{\mathrm{r}}-F_{\mathrm{r}}^2}=\frac{-e^{-2t}}{e^{-2t}}=-1

であり、4 と一致する。▨

例 6.3 (擬球面の漸近 Chebyshev 座標と対応する解).命題 6.2の記号のもとで、擬球面に漸近 Chebyshev 座標を取り、対応する sine–Gordon 方程式の解を書き下す。

漸近方向を求める。X=a ∂t+b ∂θX=a\,\partial_t+b\,\partial_\thetaが漸近方向であることは、§E19.6 定義 3.3により

era2+2frab+grb2=−e−tca2+e−tc b2=0,e_{\mathrm{r}}a^2+2f_{\mathrm{r}}ab+g_{\mathrm{r}}b^2=-\frac{e^{-t}}{c}a^2+e^{-t}c\,b^2=0,

すなわちa2=c2b2a^2=c^2b^2と同値である。よって漸近方向はX±=±c ∂t+∂θX_{\pm}=\pm c\,\partial_t+\partial_\thetaが張る二つである。Fr=0F_{\mathrm{r}}=0であるから、第一基本形式の成分により

I(X±,X±)=(±c)2Er+Gr=c2+e−2t=(1−e−2t)+e−2t=1\mathrm{I}(X_{\pm},X_{\pm})=(\pm c)^2E_{\mathrm{r}}+G_{\mathrm{r}}=c^2+e^{-2t}=\bigl(1-e^{-2t}\bigr)+e^{-2t}=1

である。すなわちX+X_+とX−X_-はすでに単位ベクトルである。また

I(X+,X−)=(c)(−c)Er+Gr=−c2+e−2t=2e−2t−1\mathrm{I}(X_+,X_-)=(c)(-c)E_{\mathrm{r}}+G_{\mathrm{r}}=-c^2+e^{-2t}=2e^{-2t}-1

である。

座標を取り替える。α(t)=arctanh⁡c(t)\alpha(t)=\operatorname{arctanh}c(t)と置く。命題 6.2の証明によりα′=1/c>0\alpha'=1/c>0であり、t→0+t\to0^{+}でα→0\alpha\to0、t→∞t\to\inftyでα→∞\alpha\to\inftyであるから、α\alphaは(0,∞)(0,\infty)から(0,∞)(0,\infty)へのC∞C^\infty微分同相である。

u=θ+α(t)2,v=θ−α(t)2u=\frac{\theta+\alpha(t)}{2},\qquad v=\frac{\theta-\alpha(t)}{2}

と定めると、θ=u+v\theta=u+v、α=u−v\alpha=u-vから逆写像がC∞C^\inftyに定まるので、この対応は(0,∞)×J(0,\infty)\times Jから

V~={(u,v) : u+v∈J, u−v>0}\widetilde V=\bigl\{(u,v)\ :\ u+v\in J,\ u-v>0\bigr\}

へのC∞C^\infty微分同相である。V~\widetilde Vは三つの半平面の共通部分であるから凸であり、とくに単連結である。逆写像の偏微分はtu=1/α′=ct_u=1/\alpha'=c、θu=1\theta_u=1、tv=−ct_v=-c、θv=1\theta_v=1であるから、(u,v)(u,v)を径数とする表示x(u,v)=p(t(u,v),θ(u,v))\boldsymbol{x}(u,v)=\boldsymbol{p}\bigl(t(u,v),\theta(u,v)\bigr)について

∂u=xu=c pt+pθ=X+,∂v=xv=−c pt+pθ=X−\partial_u=\boldsymbol{x}_u=c\,\boldsymbol{p}_t+\boldsymbol{p}_\theta=X_+,\qquad \partial_v=\boldsymbol{x}_v=-c\,\boldsymbol{p}_t+\boldsymbol{p}_\theta=X_-

である。さらに

xu×xv=(tuθv−tvθu) pt×pθ=2c (pt×pθ)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=\bigl(t_u\theta_v-t_v\theta_u\bigr)\,\boldsymbol{p}_t\times\boldsymbol{p}_\theta=2c\,\bigl(\boldsymbol{p}_t\times\boldsymbol{p}_\theta\bigr)

であり2c>02c>0であるから、x\boldsymbol{x}が定める単位法線はp\boldsymbol{p}が定めるものに一致する。したがって第二基本形式の成分は、命題 6.2 (5)のer,fr,gre_{\mathrm{r}},f_{\mathrm{r}},g_{\mathrm{r}}が定める同じ双線形形式II\mathrm{II}を、新しい座標基底で読んだものである。

二つの基本形式を書き下す。上の計算により

E=I(X+,X+)=1,G=I(X−,X−)=1,F=I(X+,X−)=2e−2t−1E=\mathrm{I}(X_+,X_+)=1,\qquad G=\mathrm{I}(X_-,X_-)=1,\qquad F=\mathrm{I}(X_+,X_-)=2e^{-2t}-1

である。第二基本形式については

e=II(X+,X+)=c2er+gr=−e−tc+e−tc=0,e=\mathrm{II}(X_+,X_+)=c^2e_{\mathrm{r}}+g_{\mathrm{r}}=-e^{-t}c+e^{-t}c=0,g=II(X−,X−)=c2er+gr=0,f=II(X+,X−)=−c2er+gr=2e−tcg=\mathrm{II}(X_-,X_-)=c^2e_{\mathrm{r}}+g_{\mathrm{r}}=0, \qquad f=\mathrm{II}(X_+,X_-)=-c^2e_{\mathrm{r}}+g_{\mathrm{r}}=2e^{-t}c

である。したがって(u,v)(u,v)は定義 2.1の漸近 Chebyshev 座標である。

角ω\omegaを求める。cos⁡ω=F=2e−2t−1\cos\omega=F=2e^{-2t}-1である。半角の関係1−cos⁡ω=2sin⁡2(ω/2)1-\cos\omega=2\sin^2(\omega/2)から

2sin⁡2ω2=2−2e−2t=2c22\sin^2\frac\omega2=2-2e^{-2t}=2c^2

であり、ω∈(0,π)\omega\in(0,\pi)であるからsin⁡(ω/2)=c\sin(\omega/2)=cである。c=tanh⁡α=tanh⁡(u−v)c=\tanh\alpha=\tanh(u-v)であるから

ω(u,v)=2arcsin⁡(tanh⁡(u−v))\omega(u,v)=2\arcsin\bigl(\tanh(u-v)\bigr)

である。cos⁡(ω/2)=1−c2=e−t\cos(\omega/2)=\sqrt{1-c^2}=e^{-t}であるからsin⁡ω=2c e−t=f\sin\omega=2c\,e^{-t}=fであり、定理 2.3 (3)が要求する形になっている。すなわち、この場合にはε=1\varepsilon=1であり、二つの座標を入れ替える必要はない。

sine–Gordon 方程式を満たすことを直接確かめる。α=u−v\alpha=u-vと置く。sin⁡(ω/2)=tanh⁡α\sin(\omega/2)=\tanh\alphaをuuで偏微分すると

12cos⁡ω2⋅ωu=1cosh⁡2α\frac12\cos\frac\omega2\cdot\omega_u=\frac{1}{\cosh^2\alpha}

であり、cos⁡(ω/2)=1−tanh⁡2α=1/cosh⁡α\cos(\omega/2)=\sqrt{1-\tanh^2\alpha}=1/\cosh\alphaであるから

ωu=2cosh⁡α\omega_u=\frac{2}{\cosh\alpha}

である。これをvvで偏微分すると、∂α/∂v=−1\partial\alpha/\partial v=-1であるから

ωuv=2sinh⁡αcosh⁡2α\omega_{uv}=\frac{2\sinh\alpha}{\cosh^2\alpha}

である。一方

sin⁡ω=2sin⁡ω2cos⁡ω2=2tanh⁡α⋅1cosh⁡α=2sinh⁡αcosh⁡2α\sin\omega=2\sin\frac\omega2\cos\frac\omega2=2\tanh\alpha\cdot\frac{1}{\cosh\alpha}=\frac{2\sinh\alpha}{\cosh^2\alpha}

である。二つは一致する。したがって擬球面は sine–Gordon 方程式の解ω=2arcsin⁡(tanh⁡(u−v))\omega=2\arcsin(\tanh(u-v))に対応する。この解は、ωu\omega_uの式を積分した形ω=4arctan⁡(eu−v)−π\omega=4\arctan\bigl(e^{u-v}\bigr)-\piとも書かれる。実際、右辺のuuによる偏微分は4eu−v/(1+e2(u−v))=2/cosh⁡(u−v)4e^{u-v}/(1+e^{2(u-v)})=2/\cosh(u-v)であり、u−v=0u-v=0での値は4⋅(π/4)−π=04\cdot(\pi/4)-\pi=0であるから、二つの表示は一致する。

座標が縁で退化すること。t→0+t\to0^{+}のときc→0c\to0であるからω→0\omega\to0となり、sin⁡ω→0\sin\omega\to0、すなわちEG−F2→0EG-F^2\to0である。曳航線はt→0+t\to0^{+}のとき点(1,0)(1,0)へ近づき、その極限における接線の方向(−1,0)(-1,0)はzz軸に直交する。擬球面は、この極限において半径11の円を縁として持つ。縁の点は擬球面に属さず、漸近 Chebyshev 座標は縁まで延びない。

注意 6.4 (完備な曲面の非存在は扱わない).系 5.3が与えるのは、単連結な座標領域の上のはめ込みである。§E19.12 注意 4.2のとおり、そのはめ込みは単射とは限らず、像が正則曲面であるとも限らない。大域的な埋め込みの存在について、本記事は何も主張しない。

実際、三次元 Euclid 空間には、Gauss 曲率が負の定数である完備な曲面が存在しない。この事実を Hilbert の定理という。本単元はこの定理を証明せず、その主張を本文のどの根拠にも用いない。完備性の定義と完備曲面の大域論は「Riemann 幾何 II」が扱う。擬球面(定義 6.1)はこの定理と矛盾しない。曳航線は単位速度であるから、t→0+t\to0^{+}とすると有限の長さで縁に達し、擬球面はその先へ延びないからである。

7 演習

問題 7.1.

  1. 命題 1.1の証明を再現する。相似変換だけではE=G=1E=G=1が保たれない理由を述べ、座標の定数倍を合わせて行う必要があることを説明する。
  2. 定理 2.3 (3)の証明を再現する。VVが連結であるという仮定を落とすとε\varepsilonを一つの定数に取ることができなくなる理由を述べる。
  3. 例 2.4の計算を独立に行い、K=−1K=-1とH=−cos⁡ω/sin⁡ωH=-\cos\omega/\sin\omegaを確かめる。この族の曲面が一般には極小曲面でないことを、§E19.16 定義 3.2に照らして述べる。
  4. 命題 3.1のω12\omega_{12}を求める部分を再現する。§E19.10 定理 3.2が二つの構造方程式の両方を要求することが、B=0B=0を導く段でどのように用いられているかを指摘する。
  5. 定理 4.1 (1)と定理 4.1 (2)を、それぞれ計算し直す。Codazzi–Mainardi の二つの等式でω\omegaについての条件が現れない理由を、両辺に現れる因子に即して述べる。
  6. 定理 4.1の主張を「Gauss–Codazzi の適合条件が sine–Gordon 方程式へ帰着する」と書き換えると、どの点で読者を誤らせるかを、注意 4.2に即して述べる。
  7. 定理 5.1 (1)を計算し直す。(1,3)(1,3)成分と(2,3)(2,3)成分が恒等的に零になることと、定理 4.1 (1)との対応を述べる。
  8. 定理 5.1のΩ\Omegaが交代行列に値を持つことを、(Ω∧Ω)(\Omega\wedge\Omega)の対角成分の計算にどのように用いたかを述べる。この性質を用いずに九つの成分をすべて計算した場合との違いを説明する。
  9. 注意 5.4を読み、本記事の可積分条件と、スペクトルパラメータを含む零曲率表示との違いを、助変数の有無と、条件が課される対象の違いの二点から述べる。
  10. 命題 6.2 (4)と命題 6.2 (5)を再現する。§E19.6 系 4.2を適用するために確かめた仮定を挙げ、それが命題 6.2 (1)のどの部分で示されているかを指摘する。
  11. 例 6.3の座標の取り替えを再現する。∂u=X+\partial_u=X_+と∂v=X−\partial_v=X_-が成り立つことを、逆写像の偏微分から確かめる。
  12. 例 6.3の解ω=2arcsin⁡(tanh⁡(u−v))\omega=2\arcsin(\tanh(u-v))が sine–Gordon 方程式を満たすことを、本文とは独立にω=4arctan⁡(eu−v)−π\omega=4\arctan(e^{u-v})-\piの形から確かめる。

8 境界と次

座標の存在を仮定として置いたこと。本記事のすべての主張は、定義 2.1の座標が与えられているという仮定のもとにある。注意 2.2が述べたとおり、そのような座標を取ることができるという事実は成り立つが、本記事はその証明を持たない。したがって本記事は、「Gauss 曲率が負の定数であるすべての曲面が sine–Gordon 方程式の解に対応する」とは主張しない。主張するのは、そのような座標を持つ曲面についての対応である。

局所的な主張であること。系 5.3は単連結な座標領域の上の存在定理であり、§E19.12 注意 4.2の限定をそのまま引き継ぐ。得られるのははめ込みであって、単射性も、像が正則曲面であることも、大域的な埋め込みの存在も主張しない。注意 6.4のとおり、Gauss 曲率が負の定数である完備な曲面は三次元 Euclid 空間に存在しない。この事実は「Riemann 幾何 II」が扱う。

可積分系の一般論を扱わないこと。注意 5.4のとおり、本記事の可積分条件はスペクトルパラメータを持たない。逆散乱法、Bäcklund 変換の一般論、soliton の階層、および一般の Lax 表示は本単元の範囲外である。sine–Gordon 方程式の解の族の構造、および解から解を作る変換は、これらの理論に属する。

次の記事へ渡すもの。定理 2.3、定理 4.1、定理 5.1および命題 6.2は「零曲率条件と sine–Gordon 方程式の数値検算」が用いる。同記事は、既知の解について方程式の残差を評価し、定理 5.1の行列dΩ−Ω∧Ωd\Omega-\Omega\wedge\Omegaの成分が零へ簡約されることを確かめ、擬球面の Gauss 曲率を数値的に検算する。

参考文献

  1. Colin Rogers and Wolfgang K. Schief, Bäcklund and Darboux Transformations: Geometry and Modern Applications in Soliton Theory, Cambridge Texts in Applied Mathematics 30, Cambridge University Press, 2002.Gauss 曲率が負の定数である曲面の漸近 Chebyshev 座標と、Gauss 方程式が sine–Gordon 方程式になることを参考にした。
  2. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.漸近曲線、Chebyshev 網、擬球面、および Hilbert の定理の主張の形を参考にした。
  3. Michael Spivak, A Comprehensive Introduction to Differential Geometry, 3rd ed., vol. 3, Publish or Perish, Inc., Houston, 1999.曲率が負の定数である曲面の標構による扱いと、Hilbert の定理の位置づけを参考にした。
  4. Chuu-Lian Terng and Karen Uhlenbeck, Geometry of solitons, Notices of the American Mathematical Society 47 (2000), no. 1, 17–25.スペクトルパラメータを含む零曲率表示と、一つの座標系における適合条件との違いを参考にした。

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