§E19.2Frenet–Serret の公式と曲線論の基本定理

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前の記事「正則曲線と弧長」は、正則曲線を弧長で表すと単位速度になり、その表示がパラメータの平行移動と向きの反転を除いて一意であることを示した。単位速度の表示では速度ベクトルの大きさが情報を持たないので、曲線の情報は速度ベクトルの向きの変化に移る。本記事は、その変化を測る二つの関数を取り出し、その二つが曲線を合同変換を除いて決めることを示す。

本記事で実際に示すのは次の五つである。第一に、単位速度曲線の曲率を加速度の大きさとして定め、曲率が恒等的に零であることと曲線が直線であることが同値であることを示す。第二に、曲率が正である点で Frenet 標構を構成し、それが正の向きの正規直交基底になることを示す。第三に、標構の微分が満たす一階の連立方程式として Frenet–Serret の公式を導き、そこに現れる係数として捩率を定める。第四に、曲率が零になる点で標構が連続に延長しないことを、具体的な曲線によって示す。第五に、曲率が至るところ正であるとき、与えた曲率と捩率を持つ単位速度曲線が向きを保つ合同変換を除いて一意に存在することを、線形常微分方程式の解の一意存在から証明する。

R3\mathbb{R}^3の標準内積を⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangle、ノルムを∥ ∥\lVert\ \rVertと書く。断りのない「滑らか」はC∞C^\inftyを指す。

1 ベクトル積と正の向きの正規直交基底

標構の三本目のベクトルを作るためにベクトル積を用いる。以後の記事でも同じ記号を使う。

定義 1.1.u=(u1,u2,u3)u=(u_1,u_2,u_3)、v=(v1,v2,v3)∈R3v=(v_1,v_2,v_3)\in\mathbb{R}^3に対して

u×v=(u2v3−u3v2, u3v1−u1v3, u1v2−u2v1)u\times v=(u_2v_3-u_3v_2,\ u_3v_1-u_1v_3,\ u_1v_2-u_2v_1)

をuuとvvのベクトル積 (cross product) という。三つのベクトルu,v,w∈R3u,v,w\in\mathbb{R}^3を列に並べた33次正方行列の行列式をdet⁡(u,v,w)\det(u,v,w)と書く。

R3\mathbb{R}^3の基底(u,v,w)(u,v,w)が正の向き (positive orientation) であるとはdet⁡(u,v,w)>0\det(u,v,w)>0が成り立つことをいう。

補題 1.2.u,v,w∈R3u,v,w\in\mathbb{R}^3とする。

  1. ⟨u×v,w⟩=det⁡(u,v,w)\langle u\times v,w\rangle=\det(u,v,w)が成り立つ。
  2. u×vu\times vはuuともvvとも直交する。u×vu\times vはuuとvvのそれぞれについて線形であり、u×u=0u\times u=\boldsymbol{0}である。
  3. (u,v)(u,v)が正規直交の対であるとき、(u,v,u×v)(u,v,u\times v)は正の向きの正規直交基底である。逆に(u,v,w)(u,v,w)が正の向きの正規直交基底ならばw=u×vw=u\times vである。
  4. RRをRTR=IR^{\mathsf T}R=Iを満たす33次実行列とすると、(Ru)×(Rv)=det⁡R⋅R(u×v)(Ru)\times(Rv)=\det R\cdot R(u\times v)が成り立つ。ここでdet⁡R\det Rは11または−1-1である。

証明.(1)を示す。行列式を第三列について余因子展開すると

det⁡(u,v,w)=w1(u2v3−u3v2)+w2(u3v1−u1v3)+w3(u1v2−u2v1)\det(u,v,w)=w_1(u_2v_3-u_3v_2)+w_2(u_3v_1-u_1v_3)+w_3(u_1v_2-u_2v_1)

であり、右辺は⟨u×v,w⟩\langle u\times v,w\rangleに等しい。

(2)を示す。(1)でw=uw=uと置くと、同じ列を二つ持つ行列式は零であるから⟨u×v,u⟩=0\langle u\times v,u\rangle=0である。w=vw=vとしても同様である。線形性とu×u=0u\times u=\boldsymbol{0}は定義の式から直ちに従う。

(3)を示す。(u,v)(u,v)を正規直交の対とする。span(u,v)\mathrm{span}(u,v)の直交補空間は11次元であるから、そこに属する単位ベクトルw0w_0を取ることができる。(u,v,w0)(u,v,w_0)は正規直交基底であり、それを列に並べた行列PPはPTP=IP^{\mathsf T}P=Iを満たすので、§D3.4 定理 9.1により(det⁡P)2=1(\det P)^2=1、すなわちdet⁡P=±1\det P=\pm1である。必要ならばw0w_0を−w0-w_0に取り替えてdet⁡(u,v,w0)=1\det(u,v,w_0)=1としてよい。このとき(1)により

⟨u×v,u⟩=0,⟨u×v,v⟩=0,⟨u×v,w0⟩=det⁡(u,v,w0)=1\langle u\times v,u\rangle=0,\qquad \langle u\times v,v\rangle=0,\qquad \langle u\times v,w_0\rangle=\det(u,v,w_0)=1

である。(u,v,w0)(u,v,w_0)は正規直交基底であるからu×v=0⋅u+0⋅v+1⋅w0=w0u\times v=0\cdot u+0\cdot v+1\cdot w_0=w_0である。よってu×vu\times vは単位ベクトルであり、(u,v,u×v)(u,v,u\times v)は行列式が11の正規直交基底である。

逆に(u,v,w)(u,v,w)が正の向きの正規直交基底であるとする。上と同じ議論により、span(u,v)\mathrm{span}(u,v)の直交補空間に属する単位ベクトルは±w\pm wの二つであり、そのうちdet⁡(u,v,⋅)=1\det(u,v,\cdot)=1を満たすほうがu×vu\times vである。det⁡(u,v,w)\det(u,v,w)は±1\pm1のいずれかであって仮定より正であるからdet⁡(u,v,w)=1\det(u,v,w)=1であり、w=u×vw=u\times vである。

(4)を示す。RTR=IR^{\mathsf T}R=Iから§D3.4 定理 9.1により(det⁡R)2=1(\det R)^2=1であり、det⁡R=±1\det R=\pm1である。RRは可逆であるから、任意のx∈R3x\in\mathbb{R}^3に対してx=Rwx=Rwとなるwwが一意に存在する。ふたたび§D3.4 定理 9.1により

⟨(Ru)×(Rv), Rw⟩=det⁡(Ru,Rv,Rw)=det⁡R⋅det⁡(u,v,w)\langle (Ru)\times(Rv),\ Rw\rangle=\det(Ru,Rv,Rw)=\det R\cdot\det(u,v,w)

である。一方、RTR=IR^{\mathsf T}R=Iから内積が保たれるので

⟨det⁡R⋅R(u×v), Rw⟩=det⁡R⋅⟨u×v, w⟩=det⁡R⋅det⁡(u,v,w)\langle \det R\cdot R(u\times v),\ Rw\rangle=\det R\cdot\langle u\times v,\ w\rangle=\det R\cdot\det(u,v,w)

である。二つの値がすべてのwwについて一致し、RwRwはR3\mathbb{R}^3全体を動くから、(Ru)×(Rv)=det⁡R⋅R(u×v)(Ru)\times(Rv)=\det R\cdot R(u\times v)である。▨

2 曲率

定義 2.1.J⊆RJ\subseteq\mathbb{R}を開区間、β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を§E19.1 定義 2.1の意味の単位速度曲線とする。T=β′T=\beta'と置き、これを単位接ベクトル場 (unit tangent vector field) という。

κ(s)=∥T′(s)∥=∥β′′(s)∥(s∈J)\kappa(s)=\lVert T'(s)\rVert=\lVert\beta''(s)\rVert\qquad(s\in J)

をβ\betaの曲率 (curvature) という。

⟨T,T⟩≡1\langle T,T\rangle\equiv1を微分すると2⟨T′,T⟩=02\langle T',T\rangle=0であるから、T′(s)T'(s)はつねにT(s)T(s)と直交する。曲率はTTが方向を変える速さを測る量であり、速さの取り方には依存しない。

命題 2.2.JJを開区間、β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線、s0∈Js_0\in Jとする。κ≡0\kappa\equiv0であることと、単位ベクトルvvが存在して

β(s)=β(s0)+(s−s0) v(s∈J)\beta(s)=\beta(s_0)+(s-s_0)\,v\qquad(s\in J)

が成り立つことは同値である。

証明.κ≡0\kappa\equiv0とする。κ=∥T′∥\kappa=\lVert T'\rVertであるからT′≡0T'\equiv\boldsymbol{0}である。JJは凸な開集合であるから、§E4.3 系 2.3によりTTは定数写像である。その値をvvと書くと∥v∥=1\lVert v\rVert=1であり、β′≡v\beta'\equiv vである。s↦β(s)−β(s0)−(s−s0)vs\mapsto\beta(s)-\beta(s_0)-(s-s_0)vの導関数は恒等的に零であり、s=s0s=s_0で値が零であるから、ふたたび§E4.3 系 2.3によりこの写像は恒等的に零である。

逆にβ(s)=β(s0)+(s−s0)v\beta(s)=\beta(s_0)+(s-s_0)vならばβ′≡v\beta'\equiv v、β′′≡0\beta''\equiv\boldsymbol{0}であるからκ≡0\kappa\equiv0である。▨

3 Frenet 標構と Frenet–Serret の公式

定義 3.1.JJを開区間、β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線、T=β′T=\beta'、κ=∥T′∥\kappa=\lVert T'\rVertとする。κ(s)>0\kappa(s)>0を満たす点s∈Js\in Jにおいて

Nc(s)=T′(s)κ(s),B(s)=T(s)×Nc(s)N_{\mathrm{c}}(s)=\frac{T'(s)}{\kappa(s)},\qquad B(s)=T(s)\times N_{\mathrm{c}}(s)

と定める。NcN_{\mathrm{c}}を主法線ベクトル (principal normal vector)、BBを従法線ベクトル (binormal vector)、三つ組(T,Nc,B)(T,N_{\mathrm{c}},B)をFrenet 標構 (Frenet frame) という。

曲線の主法線をNcN_{\mathrm{c}}と書くのは、曲面の単位法線を表す記号NNと区別するためである。κ(s)=0\kappa(s)=0となる点ではNc(s)N_{\mathrm{c}}(s)とB(s)B(s)を定義しない。

命題 3.2.β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線とし、J+={s∈J∣κ(s)>0}J_{+}=\{s\in J\mid\kappa(s)>0\}と置く。J+J_{+}はJJの開集合であり、J+J_{+}の上でκ\kappa、NcN_{\mathrm{c}}、BBはC∞C^\inftyである。さらに各s∈J+s\in J_{+}について(T(s),Nc(s),B(s))(T(s),N_{\mathrm{c}}(s),B(s))はR3\mathbb{R}^3の正の向きの正規直交基底である。

証明.κ=∥T′∥=⟨T′,T′⟩\kappa=\lVert T'\rVert=\sqrt{\langle T',T'\rangle}であり、⟨T′,T′⟩\langle T',T'\rangleはC∞C^\inftyである。κ\kappaは連続であるからJ+=κ−1((0,∞))J_{+}=\kappa^{-1}((0,\infty))は開集合である。J+J_{+}の上では⟨T′,T′⟩>0\langle T',T'\rangle>0であり、平方根は(0,∞)(0,\infty)の上でC∞C^\inftyであるからκ\kappaはJ+J_{+}の上でC∞C^\inftyである。Nc=T′/κN_{\mathrm{c}}=T'/\kappaはC∞C^\infty写像の商であって分母が消えないからC∞C^\inftyであり、B=T×NcB=T\times N_{\mathrm{c}}は成分が積と差で書くことができるからC∞C^\inftyである。

s∈J+s\in J_{+}を取る。∥Nc∥=∥T′∥/κ=1\lVert N_{\mathrm{c}}\rVert=\lVert T'\rVert/\kappa=1であり、⟨T′,T⟩=0\langle T',T\rangle=0から⟨Nc,T⟩=0\langle N_{\mathrm{c}},T\rangle=0である。よって(T,Nc)(T,N_{\mathrm{c}})は正規直交の対であり、補題 1.2 (3)により(T,Nc,T×Nc)(T,N_{\mathrm{c}},T\times N_{\mathrm{c}})は正の向きの正規直交基底である。▨

Frenet–Serret の公式を導く方針は次のとおりである。各点で(T,Nc,B)(T,N_{\mathrm{c}},B)は正規直交基底であるから、T′T'、Nc′N_{\mathrm{c}}'、B′B'はいずれもこの基底で展開することができ、係数は基底ベクトルとの内積である。九つの内積のうち、対角成分にあたる三つは⟨T,T⟩=⟨Nc,Nc⟩=⟨B,B⟩=1\langle T,T\rangle=\langle N_{\mathrm{c}},N_{\mathrm{c}}\rangle=\langle B,B\rangle=1を微分して零になる。非対角成分は、対応する直交関係を微分すると符号を変えて対になる。したがって独立な係数は二つだけであり、一つは曲率の定義からκ\kappaであり、残る一つを捩率と名づける。

定義 3.3.β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線とし、s∈J+s\in J_{+}(すなわちκ(s)>0\kappa(s)>0)とする。

τ(s)=⟨Nc′(s), B(s)⟩\tau(s)=\bigl\langle N_{\mathrm{c}}'(s),\ B(s)\bigr\rangle

をβ\betaの捩率 (torsion) という。捩率を定義するのは曲率が正である点に限る。

定理 3.4 (Frenet–Serret の公式).JJを開区間、β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線、J+={s∈J∣κ(s)>0}J_{+}=\{s\in J\mid\kappa(s)>0\}とし、J+J_{+}の上で(T,Nc,B)(T,N_{\mathrm{c}},B)を Frenet 標構、τ\tauを捩率とする。J+J_{+}の各点で

T′=κNc,Nc′=−κT+τB,B′=−τNcT'=\kappa N_{\mathrm{c}},\qquad N_{\mathrm{c}}'=-\kappa T+\tau B,\qquad B'=-\tau N_{\mathrm{c}}

が成り立つ。

証明.J+J_{+}は開集合であるから、以下の微分はすべてJ+J_{+}の各点で意味を持つ。命題 3.2により各点で(T,Nc,B)(T,N_{\mathrm{c}},B)は正規直交基底であるから、R3\mathbb{R}^3の任意のベクトルxxは

x=⟨x,T⟩T+⟨x,Nc⟩Nc+⟨x,B⟩Bx=\langle x,T\rangle T+\langle x,N_{\mathrm{c}}\rangle N_{\mathrm{c}}+\langle x,B\rangle B

と書くことができる。命題 3.2により標構の三成分はJ+J_{+}の上でC∞C^\inftyであるから、以下に現れる導関数はすべて存在する。この展開の形でT′T'、Nc′N_{\mathrm{c}}'、B′B'の三つを順に決める。

T′T'について。Nc=T′/κN_{\mathrm{c}}=T'/\kappaの定義からT′=κNcT'=\kappa N_{\mathrm{c}}である。これが第一の公式である。とくに⟨T′,T⟩=0\langle T',T\rangle=0、⟨T′,B⟩=κ⟨Nc,B⟩=0\langle T',B\rangle=\kappa\langle N_{\mathrm{c}},B\rangle=0である。

Nc′N_{\mathrm{c}}'について。⟨Nc,Nc⟩≡1\langle N_{\mathrm{c}},N_{\mathrm{c}}\rangle\equiv1を微分すると2⟨Nc′,Nc⟩=02\langle N_{\mathrm{c}}',N_{\mathrm{c}}\rangle=0であるから、NcN_{\mathrm{c}}成分は零である。⟨T,Nc⟩≡0\langle T,N_{\mathrm{c}}\rangle\equiv0を微分すると

⟨T′,Nc⟩+⟨T,Nc′⟩=0\langle T',N_{\mathrm{c}}\rangle+\langle T,N_{\mathrm{c}}'\rangle=0

であり、⟨T′,Nc⟩=κ⟨Nc,Nc⟩=κ\langle T',N_{\mathrm{c}}\rangle=\kappa\langle N_{\mathrm{c}},N_{\mathrm{c}}\rangle=\kappaであるから⟨Nc′,T⟩=−κ\langle N_{\mathrm{c}}',T\rangle=-\kappaである。BB成分は定義 3.3によりτ\tauである。よってNc′=−κT+τBN_{\mathrm{c}}'=-\kappa T+\tau Bである。

B′B'について。⟨B,B⟩≡1\langle B,B\rangle\equiv1を微分すると⟨B′,B⟩=0\langle B',B\rangle=0であるから、BB成分は零である。⟨T,B⟩≡0\langle T,B\rangle\equiv0を微分すると⟨T′,B⟩+⟨T,B′⟩=0\langle T',B\rangle+\langle T,B'\rangle=0であり、上で見たとおり⟨T′,B⟩=0\langle T',B\rangle=0であるから⟨B′,T⟩=0\langle B',T\rangle=0である。⟨Nc,B⟩≡0\langle N_{\mathrm{c}},B\rangle\equiv0を微分すると

⟨Nc′,B⟩+⟨Nc,B′⟩=0\langle N_{\mathrm{c}}',B\rangle+\langle N_{\mathrm{c}},B'\rangle=0

であり、⟨Nc′,B⟩=τ\langle N_{\mathrm{c}}',B\rangle=\tauであるから⟨B′,Nc⟩=−τ\langle B',N_{\mathrm{c}}\rangle=-\tauである。よってB′=−τNcB'=-\tau N_{\mathrm{c}}である。▨

単位速度でない曲線に対して曲率と捩率を計算するには、いったん単位速度へ直してから定義に戻ればよい。その手続きを一度実行して閉じた式にしておく。

公式 3.5.γ ⁣:I→R3\gamma\colon I\to\mathbb{R}^3を正則曲線、v=∥γ′∥v=\lVert\gamma'\rVertとし、§E19.1 定理 2.2が与える単位速度の表示をβ\beta、対応する点における曲率と捩率をκ\kappa、τ\tauと書く。このとき

∥γ′×γ′′∥=v3κ\lVert\gamma'\times\gamma''\rVert=v^{3}\kappa

が成り立つ。とくにκ>0\kappa>0であることとγ′×γ′′≠0\gamma'\times\gamma''\ne\boldsymbol{0}であることは同値であり、κ>0\kappa>0のとき

κ=∥γ′×γ′′∥v3,B=γ′×γ′′∥γ′×γ′′∥,τ=⟨γ′×γ′′, γ′′′⟩∥γ′×γ′′∥2\kappa=\frac{\lVert\gamma'\times\gamma''\rVert}{v^{3}}, \qquad B=\frac{\gamma'\times\gamma''}{\lVert\gamma'\times\gamma''\rVert}, \qquad \tau=\frac{\bigl\langle\gamma'\times\gamma'',\ \gamma'''\bigr\rangle}{\lVert\gamma'\times\gamma''\rVert^{2}}

が成り立つ。

証明.ssをγ\gammaの弧長関数とするとγ=β∘s\gamma=\beta\circ sでありs′=vs'=vである。連鎖律により

γ′=v T,γ′′=v′ T+v2 T′\gamma'=v\,T,\qquad \gamma''=v'\,T+v^{2}\,T'

である。ここでT=β′T=\beta'をssの関数と見て、ddtT(s(t))=T′(s(t)) v(t)\frac{d}{dt}T(s(t))=T'(s(t))\,v(t)を用いた。補題 1.2 (2)によりT×T=0T\times T=\boldsymbol{0}であるから

γ′×γ′′=v T×(v′T+v2T′)=v3 (T×T′)\gamma'\times\gamma''=v\,T\times\bigl(v'T+v^{2}T'\bigr)=v^{3}\,(T\times T')

である。T′T'はTTと直交する。T′=0T'=\boldsymbol{0}ならば両辺は零であり、主張の等式はκ=0\kappa=0とともに成り立つ。T′≠0T'\ne\boldsymbol{0}ならば(T, T′/∥T′∥)(T,\ T'/\lVert T'\rVert)は正規直交の対であるから、補題 1.2 (3)によりT×(T′/∥T′∥)T\times(T'/\lVert T'\rVert)は単位ベクトルであり

∥T×T′∥=∥T′∥=κ\lVert T\times T'\rVert=\lVert T'\rVert=\kappa

である。よって∥γ′×γ′′∥=v3κ\lVert\gamma'\times\gamma''\rVert=v^{3}\kappaである。v>0v>0であるから、κ>0\kappa>0とγ′×γ′′≠0\gamma'\times\gamma''\ne\boldsymbol{0}は同値である。

以下κ>0\kappa>0とする。T′=κNcT'=\kappa N_{\mathrm{c}}であるからT×T′=κ (T×Nc)=κBT\times T'=\kappa\,(T\times N_{\mathrm{c}})=\kappa Bであり

γ′×γ′′=v3κ B\gamma'\times\gamma''=v^{3}\kappa\,B

である。v3κ>0v^{3}\kappa>0であるからBBの表示を得る。

三階微分を計算する。γ′′=v′T+v2κNc\gamma''=v'T+v^{2}\kappa N_{\mathrm{c}}をふたたびttで微分すると、定理 3.4を用いて

γ′′′=v′′T+v′ v κNc+ddt(v2κ) Nc+v2κ⋅v (−κT+τB)\gamma'''=v''T+v'\,v\,\kappa N_{\mathrm{c}} +\frac{d}{dt}\bigl(v^{2}\kappa\bigr)\,N_{\mathrm{c}} +v^{2}\kappa\cdot v\,\bigl(-\kappa T+\tau B\bigr)

となる。ここでκ\kappa、NcN_{\mathrm{c}}、BBはいずれもs(t)s(t)における値であり、連鎖律によってttについての微分に因子vvが付く。BBとの内積を取ると、TTとNcN_{\mathrm{c}}の項は消えて

⟨γ′′′,B⟩=v3κτ\langle\gamma''',B\rangle=v^{3}\kappa\tau

である。したがって

⟨γ′×γ′′, γ′′′⟩=v3κ ⟨B,γ′′′⟩=v6κ2τ,∥γ′×γ′′∥2=v6κ2\bigl\langle\gamma'\times\gamma'',\ \gamma'''\bigr\rangle =v^{3}\kappa\,\langle B,\gamma'''\rangle=v^{6}\kappa^{2}\tau, \qquad \lVert\gamma'\times\gamma''\rVert^{2}=v^{6}\kappa^{2}

であり、v6κ2>0v^{6}\kappa^{2}>0で割るとτ\tauの表示を得る。▨

例 3.6 (常螺旋の曲率と捩率).a>0a>0、b∈Rb\in\mathbb{R}、c=a2+b2c=\sqrt{a^{2}+b^{2}}とし、§E19.1 例 4.2で求めた常螺旋の単位速度の表示

β(s)=(acos⁡sc, asin⁡sc, bsc)\beta(s)=\Bigl(a\cos\frac{s}{c},\ a\sin\frac{s}{c},\ \frac{bs}{c}\Bigr)

を取る。θ=s/c\theta=s/cと書く。

T(s)=β′(s)=(−acsin⁡θ, accos⁡θ, bc),T′(s)=(−ac2cos⁡θ, −ac2sin⁡θ, 0)T(s)=\beta'(s)=\Bigl(-\frac{a}{c}\sin\theta,\ \frac{a}{c}\cos\theta,\ \frac{b}{c}\Bigr), \qquad T'(s)=\Bigl(-\frac{a}{c^{2}}\cos\theta,\ -\frac{a}{c^{2}}\sin\theta,\ 0\Bigr)

であるから

κ=∥T′∥=ac2=aa2+b2>0\kappa=\lVert T'\rVert=\frac{a}{c^{2}}=\frac{a}{a^{2}+b^{2}}>0

である。よって Frenet 標構が定まり

Nc(s)=(−cos⁡θ, −sin⁡θ, 0)N_{\mathrm{c}}(s)=(-\cos\theta,\ -\sin\theta,\ 0)

である。従法線を計算すると

B=T×Nc=(accos⁡θ⋅0−bc⋅(−sin⁡θ), bc⋅(−cos⁡θ)−(−acsin⁡θ)⋅0, acsin⁡2θ+accos⁡2θ)B=T\times N_{\mathrm{c}} =\Bigl(\frac{a}{c}\cos\theta\cdot0-\frac{b}{c}\cdot(-\sin\theta),\ \frac{b}{c}\cdot(-\cos\theta)-\Bigl(-\frac{a}{c}\sin\theta\Bigr)\cdot0,\ \frac{a}{c}\sin^{2}\theta+\frac{a}{c}\cos^{2}\theta\Bigr)

すなわち

B(s)=(bcsin⁡θ, −bccos⁡θ, ac)B(s)=\Bigl(\frac{b}{c}\sin\theta,\ -\frac{b}{c}\cos\theta,\ \frac{a}{c}\Bigr)

である。∥B∥2=(b2+a2)/c2=1\lVert B\rVert^{2}=(b^{2}+a^{2})/c^{2}=1であり、検算が合う。

捩率は

Nc′(s)=(1csin⁡θ, −1ccos⁡θ, 0),τ=⟨Nc′,B⟩=bc2sin⁡2θ+bc2cos⁡2θ=ba2+b2N_{\mathrm{c}}'(s)=\Bigl(\frac{1}{c}\sin\theta,\ -\frac{1}{c}\cos\theta,\ 0\Bigr), \qquad \tau=\langle N_{\mathrm{c}}',B\rangle=\frac{b}{c^{2}}\sin^{2}\theta+\frac{b}{c^{2}}\cos^{2}\theta=\frac{b}{a^{2}+b^{2}}

である。別の経路としてB′(s)=(bc2cos⁡θ, bc2sin⁡θ, 0)=−bc2NcB'(s)=\bigl(\frac{b}{c^{2}}\cos\theta,\ \frac{b}{c^{2}}\sin\theta,\ 0\bigr)=-\frac{b}{c^{2}}N_{\mathrm{c}}を計算しても、定理 3.4の第三式から同じτ=b/c2\tau=b/c^{2}を得る。

b=0b=0の場合は半径aaの円であり、κ=1/a\kappa=1/a、τ=0\tau=0である。aaを固定してb→∞b\to\inftyとするとκ→0\kappa\to0かつτ→0\tau\to0であり、螺旋は直線に近づく。bbの符号を変えるとτ\tauの符号が変わり、κ\kappaは変わらない。

命題 3.7.JJを開区間、β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線とし、κ(s)>0\kappa(s)>0がすべてのs∈Js\in Jで成り立つとする。τ≡0\tau\equiv0であることと、単位ベクトルnnと実数ddが存在して⟨β(s),n⟩=d\langle\beta(s),n\rangle=dがすべてのs∈Js\in Jで成り立つことは同値である。

証明.τ≡0\tau\equiv0とする。定理 3.4によりB′=−τNc≡0B'=-\tau N_{\mathrm{c}}\equiv\boldsymbol{0}であるから、§E4.3 系 2.3によりBBは定数写像である。その値をnnと書くと∥n∥=1\lVert n\rVert=1である。s↦⟨β(s),n⟩s\mapsto\langle\beta(s),n\rangleの導関数は⟨T,B⟩=0\langle T,B\rangle=0であるから、この関数は定数である。その値をddとすればよい。

逆に⟨β(s),n⟩≡d\langle\beta(s),n\rangle\equiv d(∥n∥=1\lVert n\rVert=1)とする。両辺を微分して⟨T,n⟩≡0\langle T,n\rangle\equiv0を得る。もう一度微分して⟨T′,n⟩≡0\langle T',n\rangle\equiv0、すなわちκ⟨Nc,n⟩≡0\kappa\langle N_{\mathrm{c}},n\rangle\equiv0を得る。κ>0\kappa>0であるから⟨Nc,n⟩≡0\langle N_{\mathrm{c}},n\rangle\equiv0である。よってnnはTTともNcN_{\mathrm{c}}とも直交する単位ベクトルであり、命題 3.2によりspan(T,Nc)\mathrm{span}(T,N_{\mathrm{c}})の直交補空間はBBが張る11次元空間であるから、各ssで⟨B(s),n⟩∈{1,−1}\langle B(s),n\rangle\in\{1,-1\}である。s↦⟨B(s),n⟩s\mapsto\langle B(s),n\rangleは連続であり、区間JJの上で値が二点集合に入るから定数である。したがってBBは定数写像±n\pm nでありB′≡0B'\equiv\boldsymbol{0}である。B′=−τNcB'=-\tau N_{\mathrm{c}}と∥Nc∥=1\lVert N_{\mathrm{c}}\rVert=1からτ≡0\tau\equiv0である。▨

4 曲率が零になる点では標構が定まらない

定義 3.1はκ(s)=0\kappa(s)=0の点でNcN_{\mathrm{c}}とBBを定義しない。この除外は、記述を簡単にするための便宜ではない。次の例が示すとおり、標構は零点を越えて連続に延長しない。

例 4.1 (曲率が一点で零になる曲線). 「多様体入門」の§E17.2 補題 1.1が与えるC∞C^\infty関数

h(t)={e−1/t(t>0)0(t≤0)h(t)=\begin{cases}e^{-1/t}&(t>0)\\ 0&(t\le0)\end{cases}

を用いて、α ⁣:R→R3\alpha\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}^3を

α(t)=(t, h(t), h(−t))\alpha(t)=\bigl(t,\ h(t),\ h(-t)\bigr)

で定める。α\alphaはC∞C^\inftyであり、α′(t)=(1, h′(t), −h′(−t))\alpha'(t)=\bigl(1,\ h'(t),\ -h'(-t)\bigr)の第一成分が11であるからα′(t)≠0\alpha'(t)\ne\boldsymbol{0}であり、α\alphaは正則曲線である。

t>0t>0のときh(−t)=0h(-t)=0かつh′(−t)=0h'(-t)=0であるから

α′(t)=(1, h′(t), 0),α′′(t)=(0, h′′(t), 0),α′×α′′=(0, 0, h′′(t))\alpha'(t)=\bigl(1,\ h'(t),\ 0\bigr),\qquad \alpha''(t)=\bigl(0,\ h''(t),\ 0\bigr),\qquad \alpha'\times\alpha''=\bigl(0,\ 0,\ h''(t)\bigr)

である。t<0t<0のときh(t)=0h(t)=0かつh′(t)=0h'(t)=0であるから

α′(t)=(1, 0, −h′(−t)),α′′(t)=(0, 0, h′′(−t)),α′×α′′=(0, −h′′(−t), 0)\alpha'(t)=\bigl(1,\ 0,\ -h'(-t)\bigr),\qquad \alpha''(t)=\bigl(0,\ 0,\ h''(-t)\bigr),\qquad \alpha'\times\alpha''=\bigl(0,\ -h''(-t),\ 0\bigr)

である。t=0t=0ではhhのすべての階数の導関数が消えるのでα′′(0)=0\alpha''(0)=\boldsymbol{0}であり、公式 3.5によりκ(0)=0\kappa(0)=0である。

t>0t>0に対してh′(t)=t−2e−1/th'(t)=t^{-2}e^{-1/t}、h′′(t)=(t−4−2t−3)e−1/th''(t)=(t^{-4}-2t^{-3})e^{-1/t}であるから、0<t<1/20<t<1/2ではh′′(t)>0h''(t)>0である。したがって0<t<1/20<t<1/2ではκ(t)>0\kappa(t)>0であり、公式 3.5により

B(t)=(0, 0, h′′(t))h′′(t)=(0, 0, 1)B(t)=\frac{(0,\ 0,\ h''(t))}{h''(t)}=(0,\ 0,\ 1)

である。同じく−1/2<t<0-1/2<t<0ではh′′(−t)>0h''(-t)>0であるからκ(t)>0\kappa(t)>0であり

B(t)=(0, −h′′(−t), 0)h′′(−t)=(0, −1, 0)B(t)=\frac{(0,\ -h''(-t),\ 0)}{h''(-t)}=(0,\ -1,\ 0)

である。

よってlim⁡t→0+B(t)=(0,0,1)\lim_{t\to0^{+}}B(t)=(0,0,1)、lim⁡t→0−B(t)=(0,−1,0)\lim_{t\to0^{-}}B(t)=(0,-1,0)であり、BBはt=0t=0で連続な延長を持たない。NcN_{\mathrm{c}}についても同様である。t>0t>0の側ではα\alphaはxyxy平面に含まれ、t<0t<0の側ではxzxz平面に含まれるので、接触平面がt=0t=0で不連続に切り替わっている。

この例は、κ\kappaの零点が孤立していても標構が延長しないことを示している。したがって、曲率が零になる点を無視して Frenet 標構を定義することはできない。捩率も同じ理由で、κ>0\kappa>0の点でしか意味を持たない。

注意 4.2 (標構が定まらない三つの場合). 標構と捩率が定まらない、あるいは情報を持たない場合を三つに分けて整理する。

直線。κ≡0\kappa\equiv0の場合であり、命題 2.2のとおり曲線は直線である。NcN_{\mathrm{c}}もBBも定義されず、捩率も定義されない。一方で曲線そのものは始点と向きだけで決まるので、標構を作る必要がない。

曲率が孤立した零点を持つ場合。例 4.1のとおり、零点の両側で標構は定まるが、零点を越えて連続に延長しない。曲線論の基本定理はこの場合を扱わない。κ\kappaを至るところ正であると仮定するのは、この場合を除くためである。

平面曲線。κ>0\kappa>0であって曲線が一つの平面に含まれる場合であり、命題 3.7のとおりτ≡0\tau\equiv0に同値である。このとき標構は定まるが、BBは定数であり、捩率は情報を持たない。平面曲線を平面の中で扱うときは、向きを固定して符号つきの曲率を定義するほうが情報が多い。その符号つきの曲率は本記事のκ=∥T′∥≥0\kappa=\lVert T'\rVert\ge0とは別の量であり、記事「平面曲線の回転指数と回転定理」が扱う。

5 曲線論の基本定理

証明の方針は次のとおりである。存在については、まず曲線そのものではなく標構を作る。Frenet–Serret の公式は、未知関数を(T,Nc,B)(T,N_{\mathrm{c}},B)の九つの成分とする一階の線形常微分方程式系であり、係数はκ\kappaとτ\tauだけで書くことができる。連続な係数を持つ線形系は区間全体で一意な解を持つので、初期条件として正の向きの正規直交基底を与えれば標構の候補が得られる。次に、その候補が各点で正規直交であることを示す。ここが要点であり、内積gij=⟨Yi,Yj⟩g_{ij}=\langle Y_i,Y_j\rangleの満たす方程式もまた線形常微分方程式系であって、定数関数gij=δijg_{ij}=\delta_{ij}がその解であることから、解の一意性によって正規直交性が従う。回転群に値を持つ方程式として扱うのではなく、線形系の解の一意性だけを使う。最後にTTを積分して曲線を作り、それが与えたκ\kappa、τ\tauを持つことを確かめる。

一意性については、二つの曲線の標構を始点で一致させる向きを保つ合同変換を取る。合同変換が曲率と捩率を保つことを先に示しておけば、移した後の二つの標構は同じ線形系の同じ初期値の解になるので一致し、TTが一致することから曲線も一致する。

命題 5.1.RRをRTR=IR^{\mathsf T}R=Iかつdet⁡R=1\det R=1を満たす33次実行列、b∈R3b\in\mathbb{R}^3とし、Φ(x)=Rx+b\Phi(x)=Rx+bと置く。β ⁣:J→R3\beta\colon J\to\mathbb{R}^3を単位速度曲線とすると、β~=Φ∘β\tilde\beta=\Phi\circ\betaも単位速度曲線であり、その曲率はβ\betaの曲率に等しい。κ(s)>0\kappa(s)>0となる点では

T~=RT,N~c=RNc,B~=RB\tilde T=RT,\qquad \tilde N_{\mathrm{c}}=RN_{\mathrm{c}},\qquad \tilde B=RB

が成り立ち、捩率もβ\betaの捩率に等しい。

一方、det⁡R=−1\det R=-1の場合には曲率は変わらないが捩率の符号が反転する。

証明.β~′(s)=Rβ′(s)=RT(s)\tilde\beta'(s)=R\beta'(s)=RT(s)である。RRは内積を保つので∥β~′∥=∥T∥=1\lVert\tilde\beta'\rVert=\lVert T\rVert=1であり、β~\tilde\betaは単位速度である。T~=RT\tilde T=RTでありT~′=RT′\tilde T'=RT'であるから

κ~=∥RT′∥=∥T′∥=κ\tilde\kappa=\lVert RT'\rVert=\lVert T'\rVert=\kappa

である。κ>0\kappa>0の点ではN~c=T~′/κ~=RT′/κ=RNc\tilde N_{\mathrm{c}}=\tilde T'/\tilde\kappa=RT'/\kappa=RN_{\mathrm{c}}である。補題 1.2 (4)により

B~=T~×N~c=(RT)×(RNc)=det⁡R⋅R(T×Nc)=RB\tilde B=\tilde T\times\tilde N_{\mathrm{c}}=(RT)\times(RN_{\mathrm{c}})=\det R\cdot R(T\times N_{\mathrm{c}})=RB

である。最後の等号でdet⁡R=1\det R=1を用いた。捩率は

τ~=⟨N~c′,B~⟩=⟨RNc′,RB⟩=⟨Nc′,B⟩=τ\tilde\tau=\langle\tilde N_{\mathrm{c}}',\tilde B\rangle=\langle RN_{\mathrm{c}}',RB\rangle=\langle N_{\mathrm{c}}',B\rangle=\tau

である。

det⁡R=−1\det R=-1の場合もT~=RT\tilde T=RT、κ~=κ\tilde\kappa=\kappa、N~c=RNc\tilde N_{\mathrm{c}}=RN_{\mathrm{c}}は同じである。補題 1.2 (4)により(RT)×(RNc)=det⁡R⋅R(T×Nc)=−RB(RT)\times(RN_{\mathrm{c}})=\det R\cdot R(T\times N_{\mathrm{c}})=-RBであるからB~=−RB\tilde B=-RBである。よってτ~=⟨RNc′, −RB⟩=−⟨Nc′,B⟩=−τ\tilde\tau=\langle RN_{\mathrm{c}}',\ -RB\rangle=-\langle N_{\mathrm{c}}',B\rangle=-\tauである。▨

補題 5.2.IIを開区間、κ,τ ⁣:I→R\kappa,\tau\colon I\to\mathbb{R}を連続関数とし、

Ω(s)=(0κ(s)0−κ(s)0τ(s)0−τ(s)0)\Omega(s)=\begin{pmatrix}0&\kappa(s)&0\\ -\kappa(s)&0&\tau(s)\\ 0&-\tau(s)&0\end{pmatrix}

と置く。C1C^1写像Y1,Y2,Y3 ⁣:I→R3Y_1,Y_2,Y_3\colon I\to\mathbb{R}^3が

Yi′(s)=∑j=13Ωij(s) Yj(s)(i=1,2,3)Y_i'(s)=\sum_{j=1}^{3}\Omega_{ij}(s)\,Y_j(s)\qquad(i=1,2,3)

を満たし、あるs0∈Is_0\in Iで(Y1(s0),Y2(s0),Y3(s0))(Y_1(s_0),Y_2(s_0),Y_3(s_0))が正の向きの正規直交基底であるとする。このとき、すべてのs∈Is\in Iで(Y1(s),Y2(s),Y3(s))(Y_1(s),Y_2(s),Y_3(s))は正の向きの正規直交基底である。

証明.gij(s)=⟨Yi(s),Yj(s)⟩g_{ij}(s)=\langle Y_i(s),Y_j(s)\rangleと置く。内積の双線形性と積の微分により

gij′=⟨Yi′,Yj⟩+⟨Yi,Yj′⟩=∑k=13Ωik gkj+∑k=13Ωjk gikg_{ij}'=\langle Y_i',Y_j\rangle+\langle Y_i,Y_j'\rangle =\sum_{k=1}^{3}\Omega_{ik}\,g_{kj}+\sum_{k=1}^{3}\Omega_{jk}\,g_{ik}

が成り立つ。右辺はg11,…,g33g_{11},\dots,g_{33}の九つの成分についての一次形式であり、その係数はκ(s)\kappa(s)とτ(s)\tau(s)の一次式であるからssについて連続である。したがって(gij)(g_{ij})は、R9\mathbb{R}^{9}に値を持つ連続な係数の線形常微分方程式系の解である。

定数関数g^ij≡δij\hat g_{ij}\equiv\delta_{ij}(δ\deltaは Kronecker の記号)も同じ系の解である。実際

∑kΩikδkj+∑kΩjkδik=Ωij+Ωji=0\sum_{k}\Omega_{ik}\delta_{kj}+\sum_{k}\Omega_{jk}\delta_{ik}=\Omega_{ij}+\Omega_{ji}=0

であり、Ω\Omegaが交代行列であることからこれは零に等しく、g^ij′=0\hat g_{ij}'=0と合う。

仮定よりgij(s0)=δijg_{ij}(s_0)=\delta_{ij}であるから、(gij)(g_{ij})と(g^ij)(\hat g_{ij})は同じ初期値を持つ。「常微分方程式」の§E10.7 系 1.2により、連続な係数を持つ線形系の初期値問題の解は区間II全体で一意であるからgij≡δijg_{ij}\equiv\delta_{ij}である。すなわち(Y1,Y2,Y3)(Y_1,Y_2,Y_3)は各点で正規直交である。

向きについては、d(s)=det⁡(Y1(s),Y2(s),Y3(s))d(s)=\det(Y_1(s),Y_2(s),Y_3(s))と置く。ddは成分の多項式であるから連続である。各ssで(Y1,Y2,Y3)(Y_1,Y_2,Y_3)を列に並べた行列P(s)P(s)はP(s)TP(s)=IP(s)^{\mathsf T}P(s)=Iを満たすから、§D3.4 定理 9.1によりd(s)2=1d(s)^{2}=1、すなわちd(s)∈{1,−1}d(s)\in\{1,-1\}である。IIは区間でありd(s0)=1d(s_0)=1であるから、中間値の定理によりd≡1d\equiv1である。▨

定理 5.3 (曲線論の基本定理).IIを開区間、κ ⁣:I→R\kappa\colon I\to\mathbb{R}とτ ⁣:I→R\tau\colon I\to\mathbb{R}をC∞C^\infty関数であって、すべてのs∈Is\in Iでκ(s)>0\kappa(s)>0が成り立つものとする。

存在。κ\kappaを曲率、τ\tauを捩率とする単位速度曲線β ⁣:I→R3\beta\colon I\to\mathbb{R}^3が存在する。

一意性。β1,β2 ⁣:I→R3\beta_1,\beta_2\colon I\to\mathbb{R}^3がともに単位速度曲線であって曲率がκ\kappa、捩率がτ\tauであるならば、RTR=IR^{\mathsf T}R=Iかつdet⁡R=1\det R=1を満たす33次実行列RRとb∈R3b\in\mathbb{R}^3が存在して、すべてのs∈Is\in Iで

β2(s)=R β1(s)+b\beta_2(s)=R\,\beta_1(s)+b

が成り立つ。

証明. 存在。s0∈Is_0\in I、p0∈R3p_0\in\mathbb{R}^3を取り、R3\mathbb{R}^3の正の向きの正規直交基底(T0,N0,B0)(T_0,N_0,B_0)を一つ固定する。補題 5.2のΩ\Omegaを用いて、未知写像Y=(Y1,Y2,Y3) ⁣:I→R9Y=(Y_1,Y_2,Y_3)\colon I\to\mathbb{R}^{9}についての方程式

Y1′=κY2,Y2′=−κY1+τY3,Y3′=−τY2Y_1'=\kappa Y_2,\qquad Y_2'=-\kappa Y_1+\tau Y_3,\qquad Y_3'=-\tau Y_2

を考える。これはY′=A(s)YY'=A(s)Yの形の線形系であり、99次正方行列A(s)A(s)の成分は00、±κ(s)\pm\kappa(s)、±τ(s)\pm\tau(s)のいずれかであるから連続である。§E10.7 系 1.2により、初期条件Y(s0)=(T0,N0,B0)Y(s_0)=(T_0,N_0,B_0)を満たす解がII全体で一意に存在する。

YYがC∞C^\inftyであることを示す。YYは解であるからC1C^1である。YYがCkC^{k}であると仮定すると、AAがC∞C^\inftyであることからY′=AYY'=AYの右辺はCkC^{k}であり、YYはCk+1C^{k+1}である。k=1k=1から始めて繰り返すと、すべての正の整数kkについてYYはCkC^{k}であり、したがってC∞C^\inftyである。

補題 5.2により、(Y1(s),Y2(s),Y3(s))(Y_1(s),Y_2(s),Y_3(s))は各ssで正の向きの正規直交基底である。

β(s)=p0+∫s0sY1(σ) dσ(s∈I)\beta(s)=p_0+\int_{s_0}^{s}Y_1(\sigma)\,d\sigma\qquad(s\in I)

と定める。成分ごとに§D1.19 定理 1.1を適用するとβ′=Y1\beta'=Y_1であり、Y1Y_1がC∞C^\inftyであるからβ\betaはC∞C^\inftyである。∥Y1∥=1\lVert Y_1\rVert=1であるからβ\betaは単位速度曲線であり、その単位接ベクトル場はT=Y1T=Y_1である。

β\betaの曲率は∥T′∥=∥κY2∥=κ\lVert T'\rVert=\lVert\kappa Y_2\rVert=\kappaである。仮定よりκ>0\kappa>0であるから Frenet 標構が定まり

Nc=T′κ=Y2N_{\mathrm{c}}=\frac{T'}{\kappa}=Y_2

である。補題 1.2 (3)により、正の向きの正規直交基底(Y1,Y2,Y3)(Y_1,Y_2,Y_3)に対してY3=Y1×Y2Y_3=Y_1\times Y_2であるからB=T×Nc=Y3B=T\times N_{\mathrm{c}}=Y_3である。捩率は

⟨Nc′,B⟩=⟨−κY1+τY3, Y3⟩=τ\langle N_{\mathrm{c}}',B\rangle=\langle-\kappa Y_1+\tau Y_3,\ Y_3\rangle=\tau

である。よってβ\betaはκ\kappaを曲率、τ\tauを捩率とする単位速度曲線である。

一意性。β1\beta_1、β2\beta_2を仮定のとおりとし、それぞれの Frenet 標構を(T1,N1,B1)(T_1,N_1,B_1)、(T2,N2,B2)(T_2,N_2,B_2)と書く。s0∈Is_0\in Iを取り、(Ti(s0),Ni(s0),Bi(s0))(T_i(s_0),N_i(s_0),B_i(s_0))を列に並べた行列をPiP_iと書く。命題 3.2によりPiP_iはPiTPi=IP_i^{\mathsf T}P_i=Iかつdet⁡Pi=1\det P_i=1を満たす。R=P2P1−1R=P_2P_1^{-1}と置くとRTR=IR^{\mathsf T}R=Iであり、§D3.4 定理 9.1によりdet⁡R=det⁡P2/det⁡P1=1\det R=\det P_2/\det P_1=1である。さらにb=β2(s0)−Rβ1(s0)b=\beta_2(s_0)-R\beta_1(s_0)と置き、Φ(x)=Rx+b\Phi(x)=Rx+b、β~=Φ∘β1\tilde\beta=\Phi\circ\beta_1とする。

命題 5.1により、β~\tilde\betaは単位速度曲線であり、曲率はκ\kappa、捩率はτ\tauであって、その Frenet 標構は(RT1,RN1,RB1)(RT_1,RN_1,RB_1)である。s=s0s=s_0ではRRの定め方から

(RT1(s0), RN1(s0), RB1(s0))=(T2(s0), N2(s0), B2(s0))\bigl(RT_1(s_0),\ RN_1(s_0),\ RB_1(s_0)\bigr)=\bigl(T_2(s_0),\ N_2(s_0),\ B_2(s_0)\bigr)

であり、bbの定め方からβ~(s0)=β2(s0)\tilde\beta(s_0)=\beta_2(s_0)である。

β~\tilde\betaの標構とβ2\beta_2の標構は、いずれも定理 3.4により同じ線形系Y′=A(s)YY'=A(s)Yを満たし、s0s_0で同じ値を取る。§E10.7 系 1.2の一意性により、二つの標構はII全体で一致する。とくにβ~′=β2′\tilde\beta'=\beta_2'である。s↦β~(s)−β2(s)s\mapsto\tilde\beta(s)-\beta_2(s)の導関数は恒等的に零であり、s0s_0での値が零であるから、§E4.3 系 2.3によりこの写像は恒等的に零である。よってβ2=β~=Rβ1+b\beta_2=\tilde\beta=R\beta_1+bである。▨

例 5.4 (曲率と捩率が定数である曲線).κ0>0\kappa_0>0とτ0∈R\tau_0\in\mathbb{R}を定数とし、I=RI=\mathbb{R}の上でκ≡κ0\kappa\equiv\kappa_0、τ≡τ0\tau\equiv\tau_0とする。定理 5.3により、これらを曲率と捩率に持つ単位速度曲線が向きを保つ合同変換を除いて一意に存在する。

具体的な解を一つ書き下す。例 3.6により、a>0a>0、b∈Rb\in\mathbb{R}、c=a2+b2c=\sqrt{a^{2}+b^{2}}の常螺旋の曲率と捩率は

κ=aa2+b2,τ=ba2+b2\kappa=\frac{a}{a^{2}+b^{2}},\qquad \tau=\frac{b}{a^{2}+b^{2}}

である。κ0>0\kappa_0>0、τ0\tau_0が与えられたとき、κ02+τ02>0\kappa_0^{2}+\tau_0^{2}>0であるから

a=κ0κ02+τ02,b=τ0κ02+τ02a=\frac{\kappa_0}{\kappa_0^{2}+\tau_0^{2}},\qquad b=\frac{\tau_0}{\kappa_0^{2}+\tau_0^{2}}

と置くとa>0a>0であり、a2+b2=1/(κ02+τ02)a^{2}+b^{2}=1/(\kappa_0^{2}+\tau_0^{2})であるから

aa2+b2=κ0,ba2+b2=τ0\frac{a}{a^{2}+b^{2}}=\kappa_0,\qquad \frac{b}{a^{2}+b^{2}}=\tau_0

となる。よってこの(a,b)(a,b)の常螺旋が解である。一意性により、曲率と捩率が定数κ0>0\kappa_0>0、τ0\tau_0である単位速度曲線は、この常螺旋を向きを保つ合同変換で移したものに限る。τ0=0\tau_0=0の場合はb=0b=0であり、半径1/κ01/\kappa_0の円である。

6 演習

問題 6.1 (Frenet 標構と曲線論の基本定理の確認). 次の各問に答えよ。

  1. 補題 1.2 (3)の証明を再現せよ。とくに、span(u,v)\mathrm{span}(u,v)の直交補空間から単位ベクトルを取るときに、符号の選択が必要になる理由を述べよ。
  2. 定理 3.4の証明を再現せよ。九つの内積のうち、どれが直交関係の微分から得られ、どれが定義から得られるかを表にまとめよ。
  3. 定理 3.4の証明でκ>0\kappa>0を用いた箇所をすべて挙げよ。κ\kappaが零になる点でこの証明のどこが成り立たなくなるかを、例 4.1と対応させて述べよ。
  4. 補題 5.2の証明を再現せよ。Ω\Omegaが交代行列であることを用いた箇所を明示し、Ω\Omegaが交代行列でない場合にg^ij≡δij\hat g_{ij}\equiv\delta_{ij}が解にならないことを確かめよ。
  5. 定理 5.3の存在の証明で、標構の正規直交性を「回転群に値を持つ方程式の解であること」から結論しようとすると何が必要になるかを述べよ。本記事がその経路を採らない理由を、引用することができる上流の主張の範囲から説明せよ。
  6. 命題 5.1のdet⁡R=−1\det R=-1の場合を再現し、鏡映R=diag(1,1,−1)R=\mathrm{diag}(1,1,-1)を例 3.6の常螺旋へ適用して、捩率の符号が反転することを直接の計算で確かめよ。
  7. γ(t)=(t, t2, t3)\gamma(t)=(t,\ t^{2},\ t^{3})について公式 3.5を用い、t=0t=0における曲率と捩率を求めよ。
  8. 命題 3.7の逆向きの証明で、⟨B(s),n⟩\langle B(s),n\rangleが定数であることを導く議論を再現せよ。JJが区間でないとき、この議論のどこが成り立たなくなるかを述べよ。
解答 (演習の解答).

(1)span(u,v)\mathrm{span}(u,v)の直交補空間は11次元であるから、そこに属する単位ベクトルはw0w_0と−w0-w_0の二つである。(u,v,w0)(u,v,w_0)を列とする行列PPはPTP=IP^{\mathsf T}P=Iを満たすのでdet⁡P=±1\det P=\pm1であり、どちらになるかはw0w_0の符号で決まる。det⁡=1\det=1を満たすほうを選ぶ必要があるので、符号の選択が要る。(2)定義から得られるのはT′T'のNcN_{\mathrm{c}}成分(κ\kappa)とNc′N_{\mathrm{c}}'のBB成分(τ\tau)である。⟨T,T⟩\langle T,T\rangle、⟨Nc,Nc⟩\langle N_{\mathrm{c}},N_{\mathrm{c}}\rangle、⟨B,B⟩\langle B,B\rangleの微分から三つの対角成分が零であること、⟨T,Nc⟩\langle T,N_{\mathrm{c}}\rangle、⟨T,B⟩\langle T,B\rangle、⟨Nc,B⟩\langle N_{\mathrm{c}},B\rangleの微分から残る三対の非対角成分が符号を変えて対になることが得られる。(3)κ>0\kappa>0は、Nc=T′/κN_{\mathrm{c}}=T'/\kappaが定義されること、κ\kappaがC∞C^\inftyであること、および(T,Nc,B)(T,N_{\mathrm{c}},B)が基底になることのすべてに使われる。κ\kappaが零になる点ではNcN_{\mathrm{c}}が定義されず、例 4.1のとおり片側からの極限も一致しないので、展開の基底そのものが存在しない。(4)本文のとおりである。Ω\Omegaが交代行列であることはΩij+Ωji=0\Omega_{ij}+\Omega_{ji}=0の形で用いる。Ω\Omegaが交代行列でなければg^ij′=0\hat g_{ij}'=0とΩij+Ωji\Omega_{ij}+\Omega_{ji}が食い違うので、定数関数δij\delta_{ij}は解にならない。実際、正規直交性が保たれるのは係数行列が交代行列である場合に限る。(5)標構を回転群SO(3)\mathrm{SO}(3)に値を持つ写像として扱うには、SO(3)\mathrm{SO}(3)の多様体としての構造、交代行列の指数関数、およびそれらに対する常微分方程式の解の存在が必要である。「線形代数 II」はこれらを供給しておらず、「常微分方程式」も回転群に値を持つ方程式を扱っていない。本記事が引用することができるのは、連続な係数を持つ線形系の大域的な一意存在(§E10.7 系 1.2)だけである。そこで、正規直交性を Gram 行列が満たす線形系の解の一意性として導いた。(6)R=diag(1,1,−1)R=\mathrm{diag}(1,1,-1)はRTR=IR^{\mathsf T}R=Iを満たしdet⁡R=−1\det R=-1である。例 3.6のβ\betaに適用するとRβ(s)=(acos⁡θ, asin⁡θ, −bs/c)R\beta(s)=\bigl(a\cos\theta,\ a\sin\theta,\ -bs/c\bigr)であり、これはbbを−b-bに取り替えた常螺旋である。ただしパラメータの規格化はccが変わらないので保たれる。よって曲率はa/c2a/c^{2}のまま、捩率は−b/c2-b/c^{2}になり、符号が反転する。(7)γ′=(1,2t,3t2)\gamma'=(1,2t,3t^{2})、γ′′=(0,2,6t)\gamma''=(0,2,6t)、γ′′′=(0,0,6)\gamma'''=(0,0,6)である。t=0t=0ではγ′=(1,0,0)\gamma'=(1,0,0)、γ′′=(0,2,0)\gamma''=(0,2,0)、γ′′′=(0,0,6)\gamma'''=(0,0,6)であるから

γ′×γ′′=(0,0,2),v=1,κ=21=2\gamma'\times\gamma''=(0,0,2),\qquad v=1,\qquad \kappa=\frac{2}{1}=2

であり

τ=⟨(0,0,2),(0,0,6)⟩22=124=3\tau=\frac{\langle(0,0,2),(0,0,6)\rangle}{2^{2}}=\frac{12}{4}=3

である。(8)nnがTTともNcN_{\mathrm{c}}とも直交することから、各点でn=±B(s)n=\pm B(s)であり⟨B(s),n⟩∈{1,−1}\langle B(s),n\rangle\in\{1,-1\}である。この関数は連続であり、連結なJJの連続像は連結であるから、値は一点に限られる。JJが二つの互いに交わらない開区間の合併であれば連結でないので、成分ごとに符号が異なることが起こりうる。そのときはBBが定数写像になるとは限らない。▨

7 仮定と後続記事の境界

曲率の正値性は結論を変える仮定である。定義 3.1、定理 3.4、定理 5.3のすべてがκ>0\kappa>0を仮定する。例 4.1は、κ\kappaの零点が孤立していても標構が延長しないことを示しており、この仮定を弱めることはできない。曲率が恒等的に零である場合は命題 2.2のとおり直線であり、標構を作るまでもなく曲線が決まる。

一意性は向きを保つ合同変換を除いた一意性である。命題 5.1のとおり、det⁡R=−1\det R=-1の合同変換は捩率の符号を反転する。したがって、向きを反転する合同変換まで許すと定理 5.3の一意性は成り立たない。

定義域は開区間に限る。定理 5.3の存在部分は§E10.7 系 1.2を用いるが、その主張は開区間の上で述べられている。閉区間や半開区間へ拡張するには、端点における片側微分を扱う形の主張が別に要る。本記事はそれを主張しない。

曲線の大域的な性質は扱わない。全曲率に関する定理と四頂点定理は本単元の守備範囲の外にある。結び目と絡み目の不変量は「結び目理論」が扱う。

定理 3.4は、発展の記事「曲線と Frenet 標構の実装」が数値積分の対象とする方程式である。そこで観察されるのは有限精度の計算であって、定理 5.3の証明ではない。

曲面の側では、単位法線をNNと書く。曲線の主法線NcN_{\mathrm{c}}と記号が衝突しないように添字を付けているので、曲面上の曲線を扱う記事では両方が同時に現れる。曲面上の曲線については、加速度の接平面成分を測る測地曲率という別の量を「測地線・測地曲率・エネルギーの第一変分」が定義する。本記事のκ\kappaは三次元空間の中で測った量であり、両者は一致しない。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.曲率と捩率の定義、Frenet 標構の構成、および曲線論の基本定理の主張と証明の組み立て方を参考にした。
  2. Barrett O'Neill, Elementary Differential Geometry, 2 (revised) ed., Academic Press, 2006.Frenet–Serret の公式を正規直交標構の微分として導く扱い方と、合同変換に対する曲率と捩率の振る舞いを参考にした。
  3. Sebastián Montiel and Antonio Ros, Curves and Surfaces, 2nd ed., Graduate Studies in Mathematics 69, American Mathematical Society, Providence, 2009.曲率が零になる点で Frenet 標構が定まらないことの扱いと、曲線論の基本定理を線形常微分方程式へ帰着させる筋道を参考にした。

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