§E19.6主曲率・Gauss 曲率・平均曲率

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前の記事は、向きづけられた曲面の各点に、接平面の線形変換SpS_pと、それに対応する対称双線形形式IIp\mathrm{II}_pを与えた。単位接ベクトルXXに対する法曲率IIp(X,X)\mathrm{II}_p(X,X)は、方向とともに変化する。本記事はこの変化の全体を、二つの数へ還元する。

還元の根拠は、SpS_pが第一基本形式に関して自己共役であること(§E19.5 定理 2.1)と、有限次元実内積空間の自己随伴作用素が固有ベクトルからなる正規直交基底を持つこと(§E3.37 定理 3.1)である。この二つの事実から、SpS_pの固有値として主曲率が、固有ベクトルの方向として主方向が定まり、法曲率は二つの主曲率の間の値だけを取ることが従う。

本記事が示す範囲は次のとおりである。主曲率と主方向の存在、臍点における主方向の非一意性、法曲率の主曲率による表示、Gauss 曲率と平均曲率の定義と成分表示、向きの反転に対する符号の変化、楕円点・双曲点・放物点・平坦点への分類、漸近方向とその個数、ならびに球面、円柱、円環面、懸垂面および常螺旋面についての具体的な計算である。

本記事は Gauss 曲率を Weingarten 写像によって定めるので、その定義は曲面の空間への入り方を用いている。Gauss 曲率が第一基本形式とその二階までの微分だけで決まることは、「Gauss 方程式と Gauss の驚異の定理」が証明する。

以下では、M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3は向きづけられた正則曲面(§E19.3 定義 1.1、§E19.3 定義 4.2)、NNはその Gauss 写像、SSは Weingarten 写像(§E19.5 定義 1.4)、I\mathrm{I}とII\mathrm{II}は第一基本形式と第二基本形式を表す。⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangleはR3\mathbb{R}^3の標準内積である。TpMT_pMの一次元線形部分空間を、TpMT_pMの方向という。

1 主曲率と主方向

証明の方針を述べる。出発点は二つある。第一に、接平面が第一基本形式によって二次元の実内積空間になること(§E19.4 命題 1.2)であり、第二に、Weingarten 写像がその内積に関して自己共役であること(§E19.5 定理 2.1)である。中間目標は、この二つを「線形代数 II」の§E3.37 定理 3.1が要求する仮定へそのまま合わせることであり、同定理を適用するとSpS_pの固有ベクトルからなる正規直交基底が得られる。本質的な一手は、得られた固有値の対(κ1,κ2)(\kappa_1,\kappa_2)が、選んだ正規直交固有基底に依らないことを示す部分である。スペクトル定理が与える基底は一意ではないので、この確認を経なければ、対を点ppの量として名づけることができない。確認は、対角行列の固有多項式を書き下し、固有多項式が表現行列の相似変換で変わらないことによって行う。

命題 1.1.MMを向きづけられた正則曲面、p∈Mp\in Mとする。TpMT_pMの正規直交基底{E1,E2}\{E_1,E_2\}と実数κ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2が存在して

Sp(E1)=κ1E1,Sp(E2)=κ2E2S_p(E_1)=\kappa_1E_1,\qquad S_p(E_2)=\kappa_2E_2

が成り立つ。さらに、実数の対(κ1,κ2)(\kappa_1,\kappa_2)は基底{E1,E2}\{E_1,E_2\}の取り方に依らない。

証明.§E19.4 命題 1.2により(TpM,Ip)(T_pM,\mathrm{I}_p)は二次元実内積空間であり、§E19.5 定理 2.1によりSpS_pはこの内積空間の自己随伴作用素である。§E3.37 定理 3.1をV=TpMV=T_pM、T=SpT=S_pに適用すると、SpS_pの固有ベクトルからなる正規直交基底{E1,E2}\{E_1,E_2\}が存在する。対応する固有値をλ1,λ2\lambda_1,\lambda_2とすると、Ei∈TpME_i\in T_pMかつSp(Ei)∈TpMS_p(E_i)\in T_pMでありTpMT_pMは実線形空間であるから、λi\lambda_iは実数である。必要ならば添字を入れ替えてλ1≥λ2\lambda_1\ge\lambda_2としてよく、κi=λi\kappa_i=\lambda_iと置く。

基底に依らないことを示す。{E1,E2}\{E_1,E_2\}に関するSpS_pの表現行列はdiag⁡(κ1,κ2)\operatorname{diag}(\kappa_1,\kappa_2)であるから、SpS_pの固有多項式は(t−κ1)(t−κ2)(t-\kappa_1)(t-\kappa_2)である。固有多項式は表現行列の相似変換で変わらないので、基底の取り方に依らない。したがって重複を込めた根の組{κ1,κ2}\{\kappa_1,\kappa_2\}は定まり、大きい順に並べれば対(κ1,κ2)(\kappa_1,\kappa_2)が定まる。▨

定義 1.2.命題 1.1のκ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2を、MMのppにおける主曲率 (principal curvature) という。SpS_pの零でない固有ベクトルが張るTpMT_pMの方向を主方向 (principal direction) という。κ1=κ2\kappa_1=\kappa_2が成り立つ点ppを臍点 (umbilic point) という。

主曲率は単位法線の選び方に依存する。向きを反転したときの変化は命題 2.4が述べる。

主方向が何本あるかは、その点が臍点であるかどうかで分かれる。臍点ではTpMT_pMのすべての方向が主方向であり、主方向は一意に定まらない。臍点でない点では主方向はちょうど二つであり、互いに直交する。次の命題がこの二つを述べ、証明する。

命題 1.3.MMを向きづけられた正則曲面、p∈Mp\in Mとし、κ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2をppにおける主曲率とする。

  1. κ1=κ2\kappa_1=\kappa_2であることと、実数κ\kappaが存在してすべてのX∈TpMX\in T_pMについてSp(X)=κXS_p(X)=\kappa Xが成り立つことは同値である。このときTpMT_pMのすべての方向が主方向である。
  2. κ1>κ2\kappa_1>\kappa_2ならば、κ1\kappa_1とκ2\kappa_2の固有空間はいずれも一次元であり互いに直交する。主方向はこの二つの固有空間のちょうど二つである。

証明.(1)を示す。κ1=κ2=κ\kappa_1=\kappa_2=\kappaとすると、命題 1.1の基底に関する表現行列はκ\kappa倍の単位行列であるから、すべてのX∈TpMX\in T_pMについてSp(X)=κXS_p(X)=\kappa Xである。逆にSp=κ idS_p=\kappa\,\mathrm{id}ならば、どの正規直交基底についても表現行列はκ\kappa倍の単位行列であるからκ1=κ2=κ\kappa_1=\kappa_2=\kappaである。このとき零でないすべてのXXが固有ベクトルであるから、すべての方向が主方向である。

(2)を示す。κ1≠κ2\kappa_1\ne\kappa_2とする。相異なる固有値に属する固有空間の共通部分は{0}\{0\}であり、E1E_1とE2E_2がそれぞれに属するので、二つの固有空間はいずれも一次元である。直交性を示す。XXをκ1\kappa_1の、YYをκ2\kappa_2の固有ベクトルとすると、§E19.5 定理 2.1により

κ1⟨X,Y⟩=⟨Sp(X),Y⟩=⟨X,Sp(Y)⟩=κ2⟨X,Y⟩\kappa_1\langle X,Y\rangle=\langle S_p(X),Y\rangle=\langle X,S_p(Y)\rangle=\kappa_2\langle X,Y\rangle

であるから(κ1−κ2)⟨X,Y⟩=0(\kappa_1-\kappa_2)\langle X,Y\rangle=0であり、κ1≠κ2\kappa_1\ne\kappa_2より⟨X,Y⟩=0\langle X,Y\rangle=0である。SpS_pの固有値はκ1\kappa_1とκ2\kappa_2の二つだけであるから、零でない固有ベクトルはいずれかの固有空間に属し、主方向はこの二つに限られる。▨

公式 1.4.MMを向きづけられた正則曲面、p∈Mp\in Mとし、κ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2を主曲率、{E1,E2}\{E_1,E_2\}を命題 1.1の正規直交固有基底とする。X∈TpMX\in T_pMが∥X∥=1\lVert X\rVert=1を満たすとき、X=cos⁡θ E1+sin⁡θ E2X=\cos\theta\,E_1+\sin\theta\,E_2を満たす実数θ\thetaが存在し、法曲率(§E19.5 定義 4.2)は

kN(X)=IIp(X,X)=κ1cos⁡2θ+κ2sin⁡2θk_N(X)=\mathrm{II}_p(X,X)=\kappa_1\cos^2\theta+\kappa_2\sin^2\theta

と表される。

証明.{E1,E2}\{E_1,E_2\}は正規直交基底であるからX=aE1+bE2X=aE_1+bE_2と書くと∥X∥2=a2+b2=1\lVert X\rVert^2=a^2+b^2=1であり、a=cos⁡θa=\cos\theta、b=sin⁡θb=\sin\thetaを満たす実数θ\thetaが存在する。SpS_pの線形性と固有値の関係から

Sp(X)=κ1cos⁡θ E1+κ2sin⁡θ E2S_p(X)=\kappa_1\cos\theta\,E_1+\kappa_2\sin\theta\,E_2

であり、{E1,E2}\{E_1,E_2\}の正規直交性から

IIp(X,X)=⟨Sp(X),X⟩=κ1cos⁡2θ+κ2sin⁡2θ\mathrm{II}_p(X,X)=\langle S_p(X),X\rangle =\kappa_1\cos^2\theta+\kappa_2\sin^2\theta

である。▨

系 1.5.公式 1.4の記号のもとで

κ2≤kN(X)≤κ1\kappa_2\le k_N(X)\le\kappa_1

がすべての単位接ベクトルX∈TpMX\in T_pMについて成り立ち、X=±E1X=\pm E_1で右側の等号、X=±E2X=\pm E_2で左側の等号が成り立つ。したがってκ1\kappa_1は法曲率の最大値、κ2\kappa_2は最小値である。

証明.cos⁡2θ+sin⁡2θ=1\cos^2\theta+\sin^2\theta=1であるから

kN(X)=κ2+(κ1−κ2)cos⁡2θk_N(X)=\kappa_2+(\kappa_1-\kappa_2)\cos^2\theta

である。κ1−κ2≥0\kappa_1-\kappa_2\ge0かつcos⁡2θ∈[0,1]\cos^2\theta\in[0,1]であるから、kN(X)k_N(X)はcos⁡2θ=0\cos^2\theta=0で最小値κ2\kappa_2、cos⁡2θ=1\cos^2\theta=1で最大値κ1\kappa_1を取る。cos⁡2θ=1\cos^2\theta=1はX=±E1X=\pm E_1、cos⁡2θ=0\cos^2\theta=0はX=±E2X=\pm E_2に対応する。▨

2 Gauss 曲率と平均曲率

定義 2.1.MMを向きづけられた正則曲面、p∈Mp\in Mとし、κ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2を主曲率とする。

K(p)=det⁡Sp=κ1κ2K(p)=\det S_p=\kappa_1\kappa_2

をppにおけるGauss 曲率 (Gaussian curvature)、

H(p)=12tr⁡Sp=12(κ1+κ2)H(p)=\tfrac12\operatorname{tr}S_p=\tfrac12(\kappa_1+\kappa_2)

をppにおける平均曲率 (mean curvature) という。平均曲率は主曲率の相加平均であって、和ではない。

二つの基本形式の成分による表示は公式 2.3が与える。向きを反転したときの変化は命題 2.4が述べる。

上の定義は、線形変換SpS_pの行列式と跡を主曲率の積と和に等しいと書いている。この二つの等式が成り立つこと、および値が固有基底の取り方に依らないことを、次の命題で確かめる。

命題 2.2.MMを向きづけられた正則曲面、p∈Mp\in Mとし、κ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2をppにおける主曲率とする。このとき

det⁡Sp=κ1κ2,tr⁡Sp=κ1+κ2\det S_p=\kappa_1\kappa_2,\qquad \operatorname{tr}S_p=\kappa_1+\kappa_2

が成り立つ。とくにK(p)K(p)とH(p)H(p)の値は、命題 1.1が与える正規直交固有基底の取り方に依らない。

証明.命題 1.1の正規直交固有基底{E1,E2}\{E_1,E_2\}を一つ取ると、この基底に関するSpS_pの表現行列はdiag⁡(κ1,κ2)\operatorname{diag}(\kappa_1,\kappa_2)である。線形変換の行列式と跡は表現行列の相似変換で変わらないから、det⁡Sp\det S_pとtr⁡Sp\operatorname{tr}S_pはこの対角行列の行列式と跡に等しく、二つの等式が従う。同じ理由で、これらの値は基底の取り方に依らない。また命題 1.1により対(κ1,κ2)(\kappa_1,\kappa_2)自身も基底の取り方に依らないので、右辺も基底によって変わらない。▨

公式 2.3.x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mを正則パラメータ表示とし、第一基本形式の成分をE,F,GE,F,G(§E19.4 定義 1.3)、第二基本形式の成分をe,f,ge,f,g(§E19.5 命題 3.2)とする。このときUUの各点で

K=eg−f2EG−F2,H=eG−2fF+gE2(EG−F2)K=\frac{eg-f^2}{EG-F^2},\qquad H=\frac{eG-2fF+gE}{2(EG-F^2)}

が成り立つ。

証明.§E19.5 命題 3.3により、基底{xu,xv}\{\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v\}に関するSSの表現行列はA=I−1IIA=\mathrm{I}^{-1}\mathrm{II}である。行列式の乗法性から

K=det⁡A=det⁡IIdet⁡I=eg−f2EG−F2K=\det A=\frac{\det\mathrm{II}}{\det\mathrm{I}}=\frac{eg-f^2}{EG-F^2}

である。§E19.5 命題 3.3の明示的な表示

A=1EG−F2(eG−fFfG−gFfE−eFgE−fF)A=\frac{1}{EG-F^2}\begin{pmatrix}eG-fF&fG-gF\\fE-eF&gE-fF\end{pmatrix}

から

tr⁡A=(eG−fF)+(gE−fF)EG−F2=eG−2fF+gEEG−F2\operatorname{tr}A=\frac{(eG-fF)+(gE-fF)}{EG-F^2}=\frac{eG-2fF+gE}{EG-F^2}

であるから、H=12tr⁡AH=\tfrac12\operatorname{tr}Aは主張の式である。▨

命題 2.4.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像とし、N~=−N\tilde N=-Nに取り替える。N~\tilde Nに関する主曲率をκ~1≥κ~2\tilde\kappa_1\ge\tilde\kappa_2、Gauss 曲率をK~\tilde K、平均曲率をH~\tilde Hと書くと、各点で

κ~1=−κ2,κ~2=−κ1,H~=−H,K~=K\tilde\kappa_1=-\kappa_2,\qquad\tilde\kappa_2=-\kappa_1,\qquad \tilde H=-H,\qquad \tilde K=K

が成り立つ。主方向は変わらない。

証明.§E19.5 命題 3.4によりS~p=−Sp\tilde S_p=-S_pである。Sp(Ei)=κiEiS_p(E_i)=\kappa_iE_iならばS~p(Ei)=−κiEi\tilde S_p(E_i)=-\kappa_iE_iであるから、{E1,E2}\{E_1,E_2\}はS~p\tilde S_pの正規直交固有基底でもあり、固有値は−κ1,−κ2-\kappa_1,-\kappa_2である。固有ベクトルが変わらないので主方向は変わらない。κ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2より−κ2≥−κ1-\kappa_2\ge-\kappa_1であるから、大きい順に並べるとκ~1=−κ2\tilde\kappa_1=-\kappa_2、κ~2=−κ1\tilde\kappa_2=-\kappa_1である。したがって

H~=12(−κ1−κ2)=−H,K~=(−κ1)(−κ2)=κ1κ2=K\tilde H=\tfrac12(-\kappa_1-\kappa_2)=-H,\qquad \tilde K=(-\kappa_1)(-\kappa_2)=\kappa_1\kappa_2=K

である。▨

注意 2.5 (Gauss 曲率は向きの選択を必要としない).命題 2.4により、KKは二つの単位法線のどちらを取っても同じ値である。単位法線は各点の近傍では必ず二つ存在するので、向きづけ可能でない曲面についても、各点の近傍で一方を選んでKKを計算すれば、選び方に依らない値が定まる。したがってKKは向きづけ可能性を仮定せずに曲面全体の上の関数として定まる。

一方、κ1\kappa_1、κ2\kappa_2およびHHは符号が反転するので、向きの選択を明示しないかぎり値が定まらない。本単元は、有界領域を囲む閉曲面には内向きの単位法線を取る。円柱、懸垂面、常螺旋面のように有界領域を囲まない曲面には内向きという語が意味を持たないので、向きを取るたびにどちらを取ったかを明示する。下の表は各行に取った向きを書いており、他の記事が反対の向きを取る場合には、上の符号の規則によって主曲率と平均曲率の符号が反転する。

3 点の分類と漸近方向

定義 3.1.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとし、ppの近傍で単位法線を一つ選んでSpS_p、K(p)K(p)を定める。ppを次のように分類する。

条件 呼び名
K(p)>0K(p)>0 楕円点 (elliptic point)
K(p)<0K(p)<0 双曲点 (hyperbolic point)
K(p)=0K(p)=0かつSp≠0S_p\ne0 放物点 (parabolic point)
Sp=0S_p=0 平坦点 (flat point)

この分類が意味を持つためには、四つの条件が互いに排反であってすべての点を尽くすことと、条件のどれを満たすかが単位法線の選び方に依らないことを確かめる必要がある。次の命題はこの二つを示し、あわせて主曲率による言い換えを与える。

命題 3.2.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとし、ppの近傍で選んだ単位法線に関する主曲率をκ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2とする。

  1. 楕円点はκ1\kappa_1とκ2\kappa_2が同符号でともに零でない点、双曲点は異符号の点、放物点はちょうど一方が零である点、平坦点は両方が零である点である。
  2. 定義 3.1の四つの条件は互いに排反であり、MMのすべての点がそのいずれか一つを満たす。
  3. どの条件を満たすかは、ppの近傍で選んだ単位法線の取り方に依らない。

証明.(1)を示す。命題 2.2によりK(p)=κ1κ2K(p)=\kappa_1\kappa_2である。積が正であることと二つが同符号でともに零でないことは同値であり、積が負であることと異符号であることは同値であり、積が零であることと少なくとも一方が零であることは同値である。一方、命題 1.1の正規直交固有基底に関するSpS_pの表現行列はdiag⁡(κ1,κ2)\operatorname{diag}(\kappa_1,\kappa_2)であるから、Sp=0S_p=0であることとκ1=κ2=0\kappa_1=\kappa_2=0であることは同値である。したがって、K(p)=0K(p)=0かつSp≠0S_p\ne0であることと、κ1\kappa_1とκ2\kappa_2のちょうど一方が零であることは同値である。

(2)を示す。実数K(p)K(p)についてK(p)>0K(p)>0、K(p)<0K(p)<0、K(p)=0K(p)=0の三つは互いに排反であり、この三つで尽くされる。第三の場合はさらにSp≠0S_p\ne0とSp=0S_p=0の二つへ排反に分かれる。よって四つの条件は互いに排反であり、これで尽くされる。

(3)を示す。単位法線を−N-Nへ取り替えると、命題 2.4によりKKは変わらず、§E19.5 命題 3.4によりSpS_pは−Sp-S_pに変わる。Sp=0S_p=0と−Sp=0-S_p=0は同値であるから、四つの条件はいずれも取り替えで変わらない。▨

定義 3.3.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとし、ppの近傍で単位法線を一つ選ぶ。零でないX∈TpMX\in T_pMが

IIp(X,X)=0\mathrm{II}_p(X,X)=0

を満たすとき、XXが張る方向をppにおける漸近方向 (asymptotic direction) という。IIp(tX,tX)=t2 IIp(X,X)\mathrm{II}_p(tX,tX)=t^2\,\mathrm{II}_p(X,X)であるから、この条件はXXが張る方向だけによって定まる。また§E19.5 命題 3.4によりII\mathrm{II}は向きの反転で符号だけが変わるので、漸近方向は単位法線の選び方に依らない。

漸近方向の個数は点の分類だけで決まる。その内容は命題 3.5が述べる。

正則パラメータ表示を取ると、漸近方向であるという条件は第二基本形式の成分についての二次方程式になる。とくに、二つの座標曲線がともに漸近方向を向くという条件は、対角成分eeとggがともに消えることとして書かれる。この形は、Gauss 曲率が負の定数である曲面を漸近方向に沿う座標で記述するときに用いられる。

命題 3.4.MMを正則曲面、x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mを正則パラメータ表示とし、UUの上で単位法線を一つ選んで第二基本形式の成分をe,f,ge,f,g(§E19.5 命題 3.2)とする。

  1. q∈Uq\in U、p=x(q)p=\boldsymbol{x}(q)とし、零でない接ベクトルをX=axu(q)+bxv(q)X=a\boldsymbol{x}_u(q)+b\boldsymbol{x}_v(q)と書く。XXが張る方向がppにおける漸近方向であることと e(q)a2+2f(q)ab+g(q)b2=0e(q)a^2+2f(q)ab+g(q)b^2=0 が成り立つことは同値である。ここで(a,b)≠(0,0)(a,b)\ne(0,0)である。
  2. 二つの座標曲線の方向がUUのすべての点で漸近方向であることと、UUの上でe≡0e\equiv0かつg≡0g\equiv0が成り立つことは同値である。

証明.(1)を示す。xu(q)\boldsymbol{x}_u(q)とxv(q)\boldsymbol{x}_v(q)は一次独立であるから、X≠0X\ne0であることと(a,b)≠(0,0)(a,b)\ne(0,0)であることは同値である。§E19.5 命題 3.2の最後の等式でY=XY=X、すなわち(c,d)=(a,b)(c,d)=(a,b)と取ると

IIp(X,X)=e(q)a2+2f(q)ab+g(q)b2\mathrm{II}_p(X,X)=e(q)a^2+2f(q)ab+g(q)b^2

である。したがってIIp(X,X)=0\mathrm{II}_p(X,X)=0と主張の等式は同値である。

(2)を示す。uu方向の座標曲線t↦x(q+(t,0))t\mapsto\boldsymbol{x}(q+(t,0))の速度ベクトルはxu\boldsymbol{x}_uであり、(a,b)=(1,0)(a,b)=(1,0)に対応する。vv方向の座標曲線の速度ベクトルはxv\boldsymbol{x}_vであり、(a,b)=(0,1)(a,b)=(0,1)に対応する。1 の等式へ代入すると、前者が漸近方向であることはe(q)=0e(q)=0と、後者が漸近方向であることはg(q)=0g(q)=0と同値である。q∈Uq\in Uは任意であるから主張が従う。▨

命題 3.5.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとする。ppにおける漸近方向の個数は次のとおりである。

  1. ppが楕円点ならば、漸近方向は存在しない。
  2. ppが双曲点ならば、漸近方向はちょうど二つである。
  3. ppが放物点ならば、漸近方向はちょうど一つであり、それは主曲率が00である主方向に一致する。
  4. ppが平坦点ならば、TpMT_pMのすべての方向が漸近方向である。

証明.ppの近傍で単位法線を一つ選び、主曲率をκ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2、命題 1.1の正規直交固有基底を{E1,E2}\{E_1,E_2\}とする。TpMT_pMの方向は、単位ベクトルX=cos⁡θ E1+sin⁡θ E2X=\cos\theta\,E_1+\sin\theta\,E_2(θ∈[0,π)\theta\in[0,\pi))と一対一に対応する。実際、θ\thetaとθ+π\theta+\piは同じ方向を与え、[0,π)[0,\pi)の相異なる二つの値は相異なる方向を与える。公式 1.4により、その方向が漸近方向であることは

κ1cos⁡2θ+κ2sin⁡2θ=0(1)\kappa_1\cos^2\theta+\kappa_2\sin^2\theta=0 \tag{1}

と同値である。

(1)を示す。楕円点ではκ1\kappa_1とκ2\kappa_2が同符号でともに零でない。cos⁡2θ\cos^2\thetaとsin⁡2θ\sin^2\thetaは非負であり和が11であるから、少なくとも一方は正である。したがって式 (1) の左辺はκ1\kappa_1と同じ符号を持ち、零でない。

(2)を示す。双曲点ではκ1κ2<0\kappa_1\kappa_2<0であり、κ1≥κ2\kappa_1\ge\kappa_2からκ1>0>κ2\kappa_1>0>\kappa_2である。θ=π/2\theta=\pi/2とすると式 (1) の左辺はκ2≠0\kappa_2\ne0であるから、解はcos⁡θ≠0\cos\theta\ne0を満たす。両辺をcos⁡2θ\cos^2\thetaで割ると

κ1+κ2tan⁡2θ=0,すなわちtan⁡2θ=−κ1κ2>0\kappa_1+\kappa_2\tan^2\theta=0,\qquad\text{すなわち}\qquad \tan^2\theta=-\frac{\kappa_1}{\kappa_2}>0

である。c=−κ1/κ2>0c=\sqrt{-\kappa_1/\kappa_2}>0と置くと、条件はtan⁡θ=c\tan\theta=cまたはtan⁡θ=−c\tan\theta=-cである。tan⁡\tanは[0,π/2)[0,\pi/2)から[0,∞)[0,\infty)への全単射であり、(π/2,π)(\pi/2,\pi)から(−∞,0)(-\infty,0)への全単射であるから、[0,π)[0,\pi)における解はtan⁡θ=c\tan\theta=cに対する一つとtan⁡θ=−c\tan\theta=-cに対する一つの、ちょうど二つである。

(3)を示す。放物点ではκ1\kappa_1とκ2\kappa_2のちょうど一方が零である。κ2=0\kappa_2=0かつκ1≠0\kappa_1\ne0の場合、式 (1) はκ1cos⁡2θ=0\kappa_1\cos^2\theta=0、すなわちθ=π/2\theta=\pi/2と同値であり、対応する方向はE2E_2が張る方向である。E2E_2は固有値00の固有ベクトルであるから、この方向は主曲率が00である主方向である。κ1=0\kappa_1=0かつκ2≠0\kappa_2\ne0の場合も同様に、解はθ=0\theta=0の一つであり、対応する方向はE1E_1が張る方向である。

(4)を示す。平坦点ではSp=0S_p=0であるからIIp\mathrm{II}_pは零形式であり、すべての零でない接ベクトルが条件を満たす。▨

4 標準的な曲面の曲率

命題 4.1.§E19.4 命題 6.1の仮定と記号のもとで、w=φ′2+ψ′2>0w=\sqrt{\varphi'^2+\psi'^2}>0と置く。パラメータ表示x\boldsymbol{x}が定める向き(§E19.3 定義 4.2)は

N=1w(−ψ′cos⁡v, −ψ′sin⁡v, φ′)N=\frac{1}{w}\bigl(-\psi'\cos v,\ -\psi'\sin v,\ \varphi'\bigr)

であり、この向きに関する第二基本形式の成分は

e=φ′ψ′′−φ′′ψ′w,f=0,g=φψ′we=\frac{\varphi'\psi''-\varphi''\psi'}{w},\qquad f=0,\qquad g=\frac{\varphi\psi'}{w}

である。xu\boldsymbol{x}_u(子午線方向)とxv\boldsymbol{x}_v(緯線方向)はSSの固有ベクトルであり、対応する固有値は

κm=φ′ψ′′−φ′′ψ′w3,κp=ψ′φ w\kappa_{\mathrm{m}}=\frac{\varphi'\psi''-\varphi''\psi'}{w^3},\qquad \kappa_{\mathrm{p}}=\frac{\psi'}{\varphi\,w}

である。したがって主曲率の組は{κm,κp}\{\kappa_{\mathrm{m}},\kappa_{\mathrm{p}}\}であり

K=κmκp=ψ′(φ′ψ′′−φ′′ψ′)φ w4,H=12(κm+κp)K=\kappa_{\mathrm{m}}\kappa_{\mathrm{p}}=\frac{\psi'\bigl(\varphi'\psi''-\varphi''\psi'\bigr)}{\varphi\,w^4}, \qquad H=\frac{1}{2}\bigl(\kappa_{\mathrm{m}}+\kappa_{\mathrm{p}}\bigr)

である。

証明.§E19.4 命題 6.1の証明で計算したとおり

xu=(φ′cos⁡v, φ′sin⁡v, ψ′),xv=φ (−sin⁡v, cos⁡v, 0)\boldsymbol{x}_u=(\varphi'\cos v,\ \varphi'\sin v,\ \psi'),\qquad \boldsymbol{x}_v=\varphi\,(-\sin v,\ \cos v,\ 0)

である。ベクトル積を成分で計算すると

xu×xv=φ(−ψ′cos⁡v, −ψ′sin⁡v, φ′)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=\varphi\bigl(-\psi'\cos v,\ -\psi'\sin v,\ \varphi'\bigr)

であり、φ>0\varphi>0であるから∥xu×xv∥=φ w\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert=\varphi\,wである。よってNNは主張の式のとおりである。

二階偏導関数は

xuu=(φ′′cos⁡v, φ′′sin⁡v, ψ′′),xuv=(−φ′sin⁡v, φ′cos⁡v, 0),xvv=(−φcos⁡v, −φsin⁡v, 0)\boldsymbol{x}_{uu}=(\varphi''\cos v,\ \varphi''\sin v,\ \psi''),\qquad \boldsymbol{x}_{uv}=(-\varphi'\sin v,\ \varphi'\cos v,\ 0),\qquad \boldsymbol{x}_{vv}=(-\varphi\cos v,\ -\varphi\sin v,\ 0)

である。§E19.5 命題 3.2により

e=⟨N,xuu⟩=−ψ′φ′′cos⁡2v−ψ′φ′′sin⁡2v+φ′ψ′′w=φ′ψ′′−φ′′ψ′w,e=\langle N,\boldsymbol{x}_{uu}\rangle =\frac{-\psi'\varphi''\cos^2v-\psi'\varphi''\sin^2v+\varphi'\psi''}{w} =\frac{\varphi'\psi''-\varphi''\psi'}{w},f=⟨N,xuv⟩=ψ′φ′cos⁡vsin⁡v−ψ′φ′sin⁡vcos⁡vw=0,f=\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangle =\frac{\psi'\varphi'\cos v\sin v-\psi'\varphi'\sin v\cos v}{w}=0,g=⟨N,xvv⟩=ψ′φcos⁡2v+ψ′φsin⁡2vw=φψ′wg=\langle N,\boldsymbol{x}_{vv}\rangle =\frac{\psi'\varphi\cos^2v+\psi'\varphi\sin^2v}{w}=\frac{\varphi\psi'}{w}

である。

§E19.4 命題 6.1によりE=w2E=w^2、F=0F=0、G=φ2G=\varphi^2である。F=0F=0かつf=0f=0であるから、§E19.5 命題 3.3の行列は

A=I−1II=(w−200φ−2)(e00g)=(e/w200g/φ2)A=\mathrm{I}^{-1}\mathrm{II} =\begin{pmatrix}w^{-2}&0\\0&\varphi^{-2}\end{pmatrix} \begin{pmatrix}e&0\\0&g\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}e/w^2&0\\0&g/\varphi^2\end{pmatrix}

である。すなわちS(xu)=(e/E)xuS(\boldsymbol{x}_u)=(e/E)\boldsymbol{x}_u、S(xv)=(g/G)xvS(\boldsymbol{x}_v)=(g/G)\boldsymbol{x}_vであり、xu\boldsymbol{x}_uとxv\boldsymbol{x}_vは固有ベクトルである。固有値は

eE=φ′ψ′′−φ′′ψ′w3=κm,gG=φψ′wφ2=ψ′φw=κp\frac{e}{E}=\frac{\varphi'\psi''-\varphi''\psi'}{w^3}=\kappa_{\mathrm{m}},\qquad \frac{g}{G}=\frac{\varphi\psi'}{w\varphi^2}=\frac{\psi'}{\varphi w}=\kappa_{\mathrm{p}}

である。AAは対角行列であるから、その固有値の組がそのまま主曲率の組であり、定義 2.1によりKKとHHは主張の式で与えられる。▨

系 4.2.命題 4.1の設定に加えて、母線が単位速度である、すなわちUUの上でφ′2+ψ′2=1\varphi'^2+\psi'^2=1が成り立つと仮定する。このとき

K=−φ′′φK=-\frac{\varphi''}{\varphi}

が成り立つ。

証明. 仮定からw≡1w\equiv1である。φ′2+ψ′2=1\varphi'^2+\psi'^2=1をuuで微分すると2φ′φ′′+2ψ′ψ′′=02\varphi'\varphi''+2\psi'\psi''=0、すなわちψ′ψ′′=−φ′φ′′\psi'\psi''=-\varphi'\varphi''である。命題 4.1の式に代入すると

K=ψ′φ′ψ′′−φ′′ψ′2φ=φ′(ψ′ψ′′)−φ′′ψ′2φ=−φ′2φ′′−φ′′ψ′2φ=−φ′′(φ′2+ψ′2)φ=−φ′′φK=\frac{\psi'\varphi'\psi''-\varphi''\psi'^2}{\varphi} =\frac{\varphi'(\psi'\psi'')-\varphi''\psi'^2}{\varphi} =\frac{-\varphi'^2\varphi''-\varphi''\psi'^2}{\varphi} =\frac{-\varphi''(\varphi'^2+\psi'^2)}{\varphi} =-\frac{\varphi''}{\varphi}

である。▨

命題 4.3. 次の五つの曲面について、指定した単位法線に関する主曲率、Gauss 曲率および平均曲率は下表のとおりである。

曲面 取った単位法線 主曲率 KK HH
半径rrの球面 内向き 1r, 1r\dfrac1r,\ \dfrac1r 1r2\dfrac{1}{r^2} 1r\dfrac1r
半径rrの円柱 回転軸へ向かう向き 1r, 0\dfrac1r,\ 0 00 12r\dfrac{1}{2r}
円環面Ta,bT_{a,b} 芯の円へ向かう向き 1b, cos⁡ua+bcos⁡u\dfrac1b,\ \dfrac{\cos u}{a+b\cos u} cos⁡ub(a+bcos⁡u)\dfrac{\cos u}{b(a+b\cos u)} a+2bcos⁡u2b(a+bcos⁡u)\dfrac{a+2b\cos u}{2b(a+b\cos u)}
懸垂面(母数c>0c>0) 回転軸へ向かう向き ±1ccosh⁡2(u/c)\pm\dfrac{1}{c\cosh^2(u/c)} −1c2cosh⁡4(u/c)-\dfrac{1}{c^2\cosh^4(u/c)} 00
常螺旋面(母数c>0c>0) パラメータ表示が定める向き ±cu2+c2\pm\dfrac{c}{u^2+c^2} −c2(u2+c2)2-\dfrac{c^2}{(u^2+c^2)^2} 00

ここで円環面は§E19.4 例 6.4のTa,bT_{a,b}(0<b<a0<b<a)、懸垂面は母線φ(u)=ccosh⁡(u/c)\varphi(u)=c\cosh(u/c)、ψ(u)=u\psi(u)=uの回転面、常螺旋面はx(u,v)=(ucos⁡v, usin⁡v, cv)\boldsymbol{x}(u,v)=(u\cos v,\ u\sin v,\ cv)((u,v)∈R2(u,v)\in\mathbb{R}^2)の像である。表の主曲率の欄は、二つの値を大小の順に並べずに組として挙げている。円環面と懸垂面のuuは、それぞれ§E19.4 例 6.4と上の母線のパラメータである。

球面については、外向きの単位法線を取ると主曲率はいずれも−1/r-1/r、平均曲率は−1/r-1/rになり、Gauss 曲率は1/r21/r^2のままである。円柱については、外向きの単位法線を取ると主曲率は−1/r-1/rと00、平均曲率は−1/(2r)-1/(2r)になり、Gauss 曲率は00のままである。

証明. 球面、円柱、円環面および懸垂面はいずれも回転面であるから、命題 4.1を適用する。

球面。§E19.4 例 6.2のとおりφ(u)=rsin⁡u\varphi(u)=r\sin u、ψ(u)=rcos⁡u\psi(u)=r\cos u、u∈(0,π)u\in(0,\pi)である。φ′=rcos⁡u\varphi'=r\cos u、ψ′=−rsin⁡u\psi'=-r\sin u、φ′′=−rsin⁡u\varphi''=-r\sin u、ψ′′=−rcos⁡u\psi''=-r\cos u、w=rw=rである。パラメータ表示が定める向きは

N=1r(rsin⁡ucos⁡v, rsin⁡usin⁡v, rcos⁡u)=xrN=\frac1r\bigl(r\sin u\cos v,\ r\sin u\sin v,\ r\cos u\bigr)=\frac{\boldsymbol{x}}{r}

であり、これは外向きである。この向きについて

φ′ψ′′−φ′′ψ′=(rcos⁡u)(−rcos⁡u)−(−rsin⁡u)(−rsin⁡u)=−r2\varphi'\psi''-\varphi''\psi'=(r\cos u)(-r\cos u)-(-r\sin u)(-r\sin u)=-r^2

であるからκm=−r2/r3=−1/r\kappa_{\mathrm{m}}=-r^2/r^3=-1/rであり、κp=(−rsin⁡u)/(rsin⁡u⋅r)=−1/r\kappa_{\mathrm{p}}=(-r\sin u)/(r\sin u\cdot r)=-1/rである。よって外向きの単位法線に関してK=1/r2K=1/r^2、H=−1/rH=-1/rである。内向きの単位法線に取り替えると、命題 2.4により主曲率はいずれも1/r1/r、H=1/rH=1/rとなり、K=1/r2K=1/r^2は変わらない。この結果は§E19.5 例 5.2の直接の計算と一致する。すべての点で二つの主曲率が等しいので、球面のすべての点は臍点であり、K>0K>0であるから楕円点である。

円柱。§E19.4 例 6.3のとおりφ(u)=r\varphi(u)=r、ψ(u)=u\psi(u)=u、w=1w=1である。パラメータ表示が定める向きは

N=(−cos⁡v, −sin⁡v, 0)N=\bigl(-\cos v,\ -\sin v,\ 0\bigr)

であり、これは回転軸へ向かう向きである。φ′=φ′′=0\varphi'=\varphi''=0、ψ′=1\psi'=1、ψ′′=0\psi''=0であるからκm=0\kappa_{\mathrm{m}}=0、κp=1/r\kappa_{\mathrm{p}}=1/rである。よってK=0K=0、H=1/(2r)H=1/(2r)である。S≠0S\ne0かつK=0K=0であるからすべての点が放物点であり、命題 3.5により漸近方向はちょうど一つ、すなわち母線方向xu\boldsymbol{x}_uである。外向きの単位法線に取り替えると、命題 2.4により主曲率は−1/r-1/rと00、H=−1/(2r)H=-1/(2r)になる。

円環面。§E19.4 例 6.4のとおりφ(u)=a+bcos⁡u\varphi(u)=a+b\cos u、ψ(u)=bsin⁡u\psi(u)=b\sin uであり、φ′=−bsin⁡u\varphi'=-b\sin u、ψ′=bcos⁡u\psi'=b\cos u、φ′′=−bcos⁡u\varphi''=-b\cos u、ψ′′=−bsin⁡u\psi''=-b\sin u、w=bw=bである。パラメータ表示が定める向きは

N=(−cos⁡ucos⁡v, −cos⁡usin⁡v, −sin⁡u)N=\bigl(-\cos u\cos v,\ -\cos u\sin v,\ -\sin u\bigr)

である。芯の円上の点(acos⁡v, asin⁡v, 0)(a\cos v,\ a\sin v,\ 0)からx(u,v)\boldsymbol{x}(u,v)へ向かうベクトルはb(cos⁡ucos⁡v, cos⁡usin⁡v, sin⁡u)b(\cos u\cos v,\ \cos u\sin v,\ \sin u)であるから、NNは芯の円へ向かう向きである。

φ′ψ′′−φ′′ψ′=(−bsin⁡u)(−bsin⁡u)−(−bcos⁡u)(bcos⁡u)=b2\varphi'\psi''-\varphi''\psi'=(-b\sin u)(-b\sin u)-(-b\cos u)(b\cos u)=b^2

であるからκm=b2/b3=1/b\kappa_{\mathrm{m}}=b^2/b^3=1/bであり

κp=bcos⁡u(a+bcos⁡u) b=cos⁡ua+bcos⁡u\kappa_{\mathrm{p}}=\frac{b\cos u}{(a+b\cos u)\,b}=\frac{\cos u}{a+b\cos u}

である。したがって

K=cos⁡ub(a+bcos⁡u),H=12(1b+cos⁡ua+bcos⁡u)=(a+bcos⁡u)+bcos⁡u2b(a+bcos⁡u)=a+2bcos⁡u2b(a+bcos⁡u)K=\frac{\cos u}{b(a+b\cos u)},\qquad H=\frac12\Bigl(\frac1b+\frac{\cos u}{a+b\cos u}\Bigr) =\frac{(a+b\cos u)+b\cos u}{2b(a+b\cos u)} =\frac{a+2b\cos u}{2b(a+b\cos u)}

である。

懸垂面。φ(u)=ccosh⁡(u/c)\varphi(u)=c\cosh(u/c)、ψ(u)=u\psi(u)=u、u∈Ru\in\mathbb{R}とするとφ>0\varphi>0であり

φ′=sinh⁡uc,φ′′=1ccosh⁡uc,ψ′=1,ψ′′=0\varphi'=\sinh\frac{u}{c},\qquad \varphi''=\frac1c\cosh\frac{u}{c},\qquad \psi'=1,\qquad\psi''=0

であるからw2=sinh⁡2(u/c)+1=cosh⁡2(u/c)w^2=\sinh^2(u/c)+1=\cosh^2(u/c)、すなわちw=cosh⁡(u/c)>0w=\cosh(u/c)>0である。母線u↦(ccosh⁡(u/c), u)u\mapsto(c\cosh(u/c),\ u)は第二成分によってuuが定まるので、像への同相写像である。したがって§E19.4 命題 6.1により正則パラメータ表示が得られる。パラメータ表示が定める向きは

N=1cosh⁡(u/c)(−cos⁡v, −sin⁡v, sinh⁡uc)N=\frac{1}{\cosh(u/c)}\Bigl(-\cos v,\ -\sin v,\ \sinh\frac{u}{c}\Bigr)

であり、水平成分が回転軸へ向かうので、回転軸へ向かう向きである。

φ′ψ′′−φ′′ψ′=−1ccosh⁡uc\varphi'\psi''-\varphi''\psi'=-\frac1c\cosh\frac{u}{c}

であるから

κm=−1ccosh⁡(u/c)cosh⁡3(u/c)=−1ccosh⁡2(u/c),κp=1ccosh⁡(u/c)⋅cosh⁡(u/c)=1ccosh⁡2(u/c)\kappa_{\mathrm{m}}=\frac{-\frac1c\cosh(u/c)}{\cosh^3(u/c)}=-\frac{1}{c\cosh^2(u/c)},\qquad \kappa_{\mathrm{p}}=\frac{1}{c\cosh(u/c)\cdot\cosh(u/c)}=\frac{1}{c\cosh^2(u/c)}

である。二つは絶対値が等しく符号が反対であるからH=0H=0であり

K=−1c2cosh⁡4(u/c)<0K=-\frac{1}{c^2\cosh^4(u/c)}<0

である。すべての点が双曲点である。

常螺旋面。c>0c>0としΛ(x,y,z)=xsin⁡(z/c)−ycos⁡(z/c)\Lambda(x,y,z)=x\sin(z/c)-y\cos(z/c)と置くと、常螺旋面はΛ−1(0)\Lambda^{-1}(0)である。実際、x(u,v)\boldsymbol{x}(u,v)についてΛ(x(u,v))=ucos⁡vsin⁡v−usin⁡vcos⁡v=0\Lambda(\boldsymbol{x}(u,v))=u\cos v\sin v-u\sin v\cos v=0であり、逆にΛ(x,y,z)=0\Lambda(x,y,z)=0ならばv=z/cv=z/c、u=xcos⁡v+ysin⁡vu=x\cos v+y\sin vと置くと

ucos⁡v=xcos⁡2v+ysin⁡vcos⁡v=xcos⁡2v+xsin⁡2v=x,usin⁡v=xcos⁡vsin⁡v+ysin⁡2v=ycos⁡2v+ysin⁡2v=yu\cos v=x\cos^2v+y\sin v\cos v=x\cos^2v+x\sin^2v=x,\qquad u\sin v=x\cos v\sin v+y\sin^2v=y\cos^2v+y\sin^2v=y

である。ここでxsin⁡v=ycos⁡vx\sin v=y\cos vを用いた。Λ\Lambdaのxxとyyについての偏導関数はsin⁡(z/c)\sin(z/c)と−cos⁡(z/c)-\cos(z/c)であり同時に00にならないので、00はΛ\Lambdaの正則値である。§E17.5 定理 4.3により常螺旋面は正則曲面である。x\boldsymbol{x}は単射であり(zzからvvが、次にuuが定まる)、逆写像(x,y,z)↦(xcos⁡(z/c)+ysin⁡(z/c), z/c)(x,y,z)\mapsto(x\cos(z/c)+y\sin(z/c),\ z/c)は連続であるから、x\boldsymbol{x}は正則パラメータ表示である。

xu=(cos⁡v, sin⁡v, 0)\boldsymbol{x}_u=(\cos v,\ \sin v,\ 0)、xv=(−usin⁡v, ucos⁡v, c)\boldsymbol{x}_v=(-u\sin v,\ u\cos v,\ c)であるから

E=1,F=0,G=u2+c2E=1,\qquad F=0,\qquad G=u^2+c^2

である。ベクトル積はxu×xv=(csin⁡v, −ccos⁡v, u)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=(c\sin v,\ -c\cos v,\ u)であり、ノルムはu2+c2\sqrt{u^2+c^2}であるから、パラメータ表示が定める向きは

N=(csin⁡v, −ccos⁡v, u)u2+c2N=\frac{(c\sin v,\ -c\cos v,\ u)}{\sqrt{u^2+c^2}}

である。二階偏導関数はxuu=0\boldsymbol{x}_{uu}=0、xuv=(−sin⁡v, cos⁡v, 0)\boldsymbol{x}_{uv}=(-\sin v,\ \cos v,\ 0)、xvv=(−ucos⁡v, −usin⁡v, 0)\boldsymbol{x}_{vv}=(-u\cos v,\ -u\sin v,\ 0)であるから

e=0,f=−csin⁡2v−ccos⁡2vu2+c2=−cu2+c2,g=−ucsin⁡vcos⁡v+uccos⁡vsin⁡vu2+c2=0e=0,\qquad f=\frac{-c\sin^2v-c\cos^2v}{\sqrt{u^2+c^2}}=\frac{-c}{\sqrt{u^2+c^2}},\qquad g=\frac{-uc\sin v\cos v+uc\cos v\sin v}{\sqrt{u^2+c^2}}=0

である。公式 2.3により

K=0−f2u2+c2=−c2/(u2+c2)u2+c2=−c2(u2+c2)2,H=0−0+02(u2+c2)=0K=\frac{0-f^2}{u^2+c^2}=\frac{-c^2/(u^2+c^2)}{u^2+c^2}=-\frac{c^2}{(u^2+c^2)^2}, \qquad H=\frac{0-0+0}{2(u^2+c^2)}=0

である。主曲率はκ1κ2=K\kappa_1\kappa_2=Kかつκ1+κ2=2H=0\kappa_1+\kappa_2=2H=0を満たすから、κ1=−κ2\kappa_1=-\kappa_2かつ−κ12=K-\kappa_1^2=Kであり

κ1=cu2+c2,κ2=−cu2+c2\kappa_1=\frac{c}{u^2+c^2},\qquad \kappa_2=-\frac{c}{u^2+c^2}

である。K<0K<0であるからすべての点が双曲点である。e=g=0e=g=0であるから、定義 3.3により二本の座標曲線の方向はいずれも漸近方向であり、命題 3.5 (2)によりこれが漸近方向のすべてである。▨

注意 4.4 (三次元空間の円環面では曲率の符号が場所によって変わる).命題 4.3の円環面の式において、0<b<a0<b<aからa+bcos⁡u>0a+b\cos u>0であるから、KKの符号はcos⁡u\cos uの符号に一致する。したがって次が成り立つ。

  • 外側の赤道u=0u=0ではK=1b(a+b)>0K=\dfrac{1}{b(a+b)}>0であり、楕円点である。
  • 内側の赤道u=πu=\piではK=−1b(a−b)<0K=-\dfrac{1}{b(a-b)}<0であり、双曲点である。
  • 上下の円u=±π/2u=\pm\pi/2ではK=0K=0かつκm=1/b≠0\kappa_{\mathrm{m}}=1/b\ne0であるから、放物点である。

すなわち、R3\mathbb{R}^3の中のこの円環面には、正の Gauss 曲率を持つ点と負の Gauss 曲率を持つ点がともに存在する。この現象がR3\mathbb{R}^3に埋め込まれたすべての円環面について成り立つこと、および第一基本形式だけを与えた抽象的な曲面まで許すと Gauss 曲率が恒等的に00である円環面が存在することは、「大域 Gauss–Bonnet と Euler 標数」が扱う。本記事が示したのは、上のパラメータ表示で与えた一つの円環面についての計算である。

5 演習

問題 5.1.

  1. 命題 1.1の証明で§E3.37 定理 3.1を適用するために確かめた二つの条件、すなわち(TpM,Ip)(T_pM,\mathrm{I}_p)が有限次元実内積空間であることとSpS_pが自己随伴であることが、それぞれどの主張から得られたかを述べる。実内積空間ではなく複素内積空間についてのスペクトル定理を引用したとすると、どの段階が曲面の設定に合わなくなるかを述べる。
  2. 命題 1.3 (2)の直交性の証明を再現し、κ1≠κ2\kappa_1\ne\kappa_2という仮定をどこで用いたかを特定する。臍点でこの議論が結論を与えない理由を述べる。
  3. 公式 1.4と系 1.5を用いて、κ1=3\kappa_1=3、κ2=−1\kappa_2=-1である点における法曲率の値域を求め、漸近方向に対応するθ\thetaを命題 3.5 (2)の計算に従って書き下す。
  4. 命題 3.5 (2)の証明では、方向とθ∈[0,π)\theta\in[0,\pi)の一対一の対応を用いた。θ\thetaの範囲を[0,2π)[0,2\pi)に取ると、漸近方向の個数の数え方がどのように変わるかを述べる。
  5. 公式 2.3のHHの式を、§E19.5 命題 3.3の行列の跡から導く手順を再現する。次に、F=0F=0かつf=0f=0の場合にこの式が12(e/E+g/G)\frac12(e/E+g/G)になることを確かめ、命題 4.1の結果と照合する。
  6. 命題 4.1の証明のうち、xu\boldsymbol{x}_uとxv\boldsymbol{x}_vがSSの固有ベクトルであることを示した部分を再現する。F=0F=0とf=0f=0の両方が必要である理由を、§E19.5 命題 3.3の行列の形に即して述べる。
  7. 命題 4.3の球面の計算を、内向きの単位法線を最初から取った形で書き直す。すなわち、命題 4.1のNNの代わりに−N-Nを用いたときにee、gg、κm\kappa_{\mathrm{m}}、κp\kappa_{\mathrm{p}}がどう変わるかを追い、H=1/rH=1/rを直接得る。
  8. 命題 4.3の常螺旋面について、主曲率を§E19.5 命題 3.3の行列AAの固有多項式から直接求め、本文がKKとHHから逆算して得た値と一致することを確かめる。
  9. 系 4.2を用いて、半径rrの球面の母線を弧長でパラメータづけ、K=1/r2K=1/r^2を再導出する。母線が単位速度でない表示にこの系を適用すると何が誤りになるかを述べる。

6 境界と次

主曲率と主方向は、各点ごとの線形代数によって定まる。したがって、主曲率が点について連続または滑らかに変化するか、主方向が滑らかなベクトル場を与えるかは、別に調べるべき問題である。臍点では主方向が一意に定まらない(命題 1.3)ので、臍点を含む領域の上で主方向の滑らかな場を取ることは一般にはできない。本記事はこの問題を扱わない。

Gauss 曲率は単位法線の選び方に影響されない(注意 2.5)。この事実は、KKが曲面の外側の情報に依存しない量である可能性を示唆するが、本記事の定義はKKを Weingarten 写像、すなわち空間への入り方を通じて定めているので、その可能性は本記事では結論されない。KKが第一基本形式とその二階までの微分だけで決まることは「Gauss 方程式と Gauss の驚異の定理」が証明する。

平均曲率は向きの反転で符号が変わるので、曲面の外側の情報に依存する量である。H≡0H\equiv0という条件は符号の反転に影響されず、この条件を満たす曲面は「面積の第一変分と極小曲面」で、面積汎関数の臨界点として特徴づけられる。命題 4.3の懸垂面と常螺旋面はこの条件を満たす。

漸近方向は、双曲点でちょうど二つ存在する(命題 3.5)。Gauss 曲率が負の定数である曲面では、二本の座標曲線がともに漸近方向を向くような座標を取ることによって、二つの基本形式を座標曲線のなす角だけで書き表すことができる。この構成と、そこから現れる非線形の偏微分方程式は「負曲率曲面と sine–Gordon 方程式」が扱う。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.主曲率と主方向、Euler の公式、点の分類、漸近方向、Gauss 曲率と平均曲率の成分表示、および回転面の曲率の計算を参考にした。
  2. Barrett O'Neill, Elementary Differential Geometry, 2 (revised) ed., Academic Press, 2006.shape operator の固有値として主曲率を導入する扱いと、常螺旋面および懸垂面の計算を参考にした。
  3. Sebastián Montiel and Antonio Ros, Curves and Surfaces, 2nd ed., Graduate Studies in Mathematics 69, American Mathematical Society, Providence, 2009.主曲率の存在にスペクトル定理を用いる扱いと、臍点の定義を参考にした。

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