1 Gauss 写像と Weingarten 写像
定義 1.1.Mを向きづけられた正則曲面とし、Nをその向きを与える単位法線ベクトル場(§E19.3 定義 4.2)とする。∥N(p)∥=1であるからNはMからS2への写像とみなすことができる。この写像N:M→S2を、MのGauss 写像 (Gauss map) という。
補題 1.2.定義 1.1のNは§E19.4 定義 2.2の意味で滑らかな写像M→R3である。さらに、正則パラメータ表示x:U→Mに対して、Uの上の局所定数な関数εで値が1または−1であるものが存在して
N∘x=ε∥xu×xv∥xu×xvが成り立つ。
証明.x:U→Mを正則パラメータ表示とする。xu×xvはxuとxvの両方に直交し、§E19.4 補題 1.5により∥xu×xv∥=EG−F2>0である。したがって
n=∥xu×xv∥xu×xvはUの上のC∞写像であり、各点でTx(q)Mに直交する単位ベクトルである。
q∈Uに対してN(x(q))もTx(q)Mに直交する単位ベクトルである。Tx(q)Mの直交補空間は一次元であるから、N(x(q))=ε(q)n(q)を満たすε(q)∈{1,−1}がただ一つ定まり、ε=⟨N∘x,n⟩と書くことができる。Nは連続でありnは連続であるからεは連続であり、値が{1,−1}に含まれるので局所的に定数である。したがってN∘x=εnはC∞である。パラメータ表示は任意であるから、Nは滑らかである。▨
補題 1.3.Mを向きづけられた正則曲面、Nをその Gauss 写像、p∈Mとする。すべてのX∈TpMについて
dNp(X)∈TpMが成り立つ。
証明.TpMはN(p)に直交する二次元線形部分空間であり、N(p)⊥も二次元であるからTpM=N(p)⊥である。
γをγ(0)=p、γ′(0)=Xを満たすMの中のC∞曲線とする(§E19.4 補題 2.3 (2))。すべてのtについて⟨N(γ(t)),N(γ(t))⟩=1であるから、両辺をtで微分してt=0と置くと
2⟨(N∘γ)′(0),N(p)⟩=0である。§E19.4 定義 2.2により(N∘γ)′(0)=dNp(X)であるからdNp(X)∈N(p)⊥=TpMである。▨
定義 1.4.Mを向きづけられた正則曲面、Nをその Gauss 写像、p∈Mとする。
Sp=−dNpをpにおけるWeingarten 写像 (Weingarten map) という。補題 1.3によりSpの値はTpMに属し、§E19.4 補題 2.3 (3)によりdNpは線形であるから、SpはTpMの線形変換である。点を動かすときは添字を省いてSと書く。
命題 1.5.x:U→Mを正則パラメータ表示とし、NをN∘xと同一視して、その偏導関数をNu、Nvと書く(§E19.4 注意 2.4)。このときUの各点で
S(xu)=−Nu,S(xv)=−Nvが成り立つ。
証明.§E19.4 注意 2.4によりdNp(xu)=Nu、dNp(xv)=Nvである。定義 1.4の定義S=−dNを適用すると主張を得る。▨
2 自己共役性
Weingarten 写像が自己共役であることは、第二基本形式を対称双線形形式として定義するための根拠であり、次の記事でスペクトル定理を適用するための唯一の入口でもある。証明の骨格は次のとおりである。示すべき等式はXとYについて双線形であるから、接平面の基底xu、xvの組についてだけ確かめれば足りる。単位法線が二つの座標接ベクトルの両方に直交するという関係式を、それぞれ別の変数で偏微分すると、どちらも⟨N,xuv⟩と⟨N,xvu⟩を与える。二階偏導関数の交換によってこの二つが一致する。
定理 2.1.Mを向きづけられた正則曲面、Nをその Gauss 写像、p∈Mとする。すべてのX,Y∈TpMについて
⟨Sp(X),Y⟩=⟨X,Sp(Y)⟩が成り立つ。すなわちSpは二次元実内積空間(TpM,Ip)の自己随伴作用素(§E3.35 定義 2.1)である。
証明.x:U→Mをpを像に含む正則パラメータ表示とし、q=x−1(p)と置く。写像
(X,Y)⟼⟨Sp(X),Y⟩−⟨X,Sp(Y)⟩はTpM×TpMの上で双線形であり、X=Yのときは値が0である。したがって、基底{xu(q),xv(q)}の四つの組のうち、(xu,xv)の場合に値が0であることを示せば、双線形性から全体で0であることが従う。
Uの各点でNはTMに直交するので
⟨N,xu⟩=0,⟨N,xv⟩=0がUの上で恒等的に成り立つ。第二の等式をuで偏微分すると
⟨Nu,xv⟩+⟨N,xvu⟩=0であり、第一の等式をvで偏微分すると
⟨Nv,xu⟩+⟨N,xuv⟩=0である。xはC∞であるから、とくに各成分はC2であり、§E4.4 定理 2.1を三つの成分のそれぞれへ適用してxuv=xvuを得る。したがって二つの式の第二項は等しく
⟨Nu,xv⟩=−⟨N,xuv⟩=⟨Nv,xu⟩である。命題 1.5により
⟨S(xu),xv⟩=−⟨Nu,xv⟩=−⟨Nv,xu⟩=⟨xu,S(xv)⟩であるから、求める等式を得る。
最後の主張を確かめる。§E19.4 命題 1.2により(TpM,Ip)は二次元実内積空間であり、IpはR3の標準内積の制限であるから、上で示した等式はIp(Sp(X),Y)=Ip(X,Sp(Y))と同じである。これは§E3.35 定義 2.1の自己随伴性の条件である。▨
3 第二基本形式
証明.⟨N,xu⟩=0をuで偏微分すると⟨Nu,xu⟩+⟨N,xuu⟩=0である。命題 1.5により
e=⟨S(xu),xu⟩=−⟨Nu,xu⟩=⟨N,xuu⟩である。同じく⟨N,xu⟩=0をvで偏微分して⟨Nv,xu⟩=−⟨N,xuv⟩を得るので
f=⟨S(xu),xv⟩=⟨xu,S(xv)⟩=−⟨Nv,xu⟩=⟨N,xuv⟩である。ここで第二の等号は定理 2.1による。⟨N,xv⟩=0をvで偏微分すると、同様にg=⟨N,xvv⟩を得る。N∘xとxの二階偏導関数はいずれもC∞であるから、e、f、gはC∞である。
最後の等式はIIの双線形性と対称性から従う。▨
命題 3.3.命題 3.2の記号のもとで、S(xu)とS(xv)を基底{xu,xv}で
S(xu)=a11xu+a21xv,S(xv)=a12xu+a22xvと書き、A=(aij)と置く。このとき
A=I−1II=EG−F21(eG−fFfE−eFfG−gFgE−fF)が成り立つ。
証明.x1=xu、x2=xvと書く。S(xi)=∑kakixkであるから
IIij=II(xi,xj)=⟨S(xi),xj⟩=k∑aki⟨xk,xj⟩=k∑akiIkj=(ATI)ijである。§E19.4 命題 1.4によりIは可逆であるからAT=III−1であり、両辺を転置し、IとIIがともに対称であることを用いるとA=I−1IIを得る。
I−1=EG−F21(G−F−FE)を代入して積を計算すると、主張の行列表示を得る。▨
証明.N~=−Nは各点で単位ベクトルであり接平面に直交するから、単位法線ベクトル場である。§E19.4 定義 2.2の微分は各成分について線形であるからdN~p=−dNpであり、
S~p=−dN~p=dNp=−Spである。したがってIIp(X,Y)=⟨S~p(X),Y⟩=−⟨Sp(X),Y⟩=−IIp(X,Y)であり、成分についても符号が反転する。第一基本形式はR3の標準内積の接平面への制限であり、その定義にNが現れないので変わらない。▨
4 法曲率と法断面
補題 4.1.Mを向きづけられた正則曲面、Nをその Gauss 写像、p∈Mとする。γ:(−ε,ε)→Mをγ(0)=pを満たすC∞曲線とし、X=γ′(0)と置く。このとき
⟨γ′′(0),N(p)⟩=IIp(X,X)が成り立つ。とくに左辺は、γのうち速度ベクトルγ′(0)だけによって定まる。
証明.§E19.4 補題 2.3 (1)により、すべてのtについてγ′(t)∈Tγ(t)Mであり、N(γ(t))はこの接平面に直交するから
⟨γ′(t),N(γ(t))⟩=0が成り立つ。両辺をtで微分してt=0と置くと
⟨γ′′(0),N(p)⟩+⟨γ′(0),(N∘γ)′(0)⟩=0である。§E19.4 定義 2.2により(N∘γ)′(0)=dNp(X)=−Sp(X)であるから
⟨γ′′(0),N(p)⟩=⟨X,Sp(X)⟩=⟨Sp(X),X⟩=IIp(X,X)である。ここで第二の等号はR3の標準内積の対称性による。右辺はXだけで定まる。▨
定義 4.2.Mを向きづけられた正則曲面、p∈Mとし、X∈TpMが∥X∥=1を満たすとする。値
kN(X)=IIp(X,X)を、pにおけるX方向の法曲率 (normal curvature) という。補題 4.1により、kN(X)はpを通りXを速度ベクトルとするMの中のどの曲線についても、その加速度のN(p)方向の成分に等しい。この値がX方向の法断面の符号つき曲率に等しいことは定理 4.4で示す。
法断面が正則曲線になることを示すために、曲面を接平面の上のグラフとして局所的に表す。
補題 4.3.Mを正則曲面、p∈Mとし、{e1,e2}をTpMの正規直交基底、e3をTpMに直交する単位ベクトルとする。アフィン写像
Ψ(a,b,c)=p+ae1+be2+ce3を考える。このときρ>0とC∞関数h:(−ρ,ρ)2→Rが存在して、次が成り立つ。
- h(0,0)=0かつha(0,0)=hb(0,0)=0である。
- y(a,b)=Ψ(a,b,h(a,b))はMの正則パラメータ表示であり、y(0,0)=pである。
- y((−ρ,ρ)2)はMの開集合である。
証明.{e1,e2,e3}はR3の正規直交基底であるから、Ψは全単射なアフィン写像であり、ΨとΨ−1はともにC∞である。Ψ−1の線形部分はTpMをR2×{0}へ写す。
x:U→Mをpを像に含む正則パラメータ表示、q=x−1(p)とする。pr:R3→R2を最初の二成分への射影とし
β=pr∘Ψ−1∘x:U→R2と置く。連鎖律(§E4.3 定理 1.1)によりDβ(q)=pr∘L∘Dx(q)である。ここでLはΨ−1の線形部分である。Dx(q)(R2)=TpM(§E19.3 定義 3.1)であり、L(TpM)=R2×{0}、prはこの部分空間の上で同型であるから、Dβ(q)は可逆である。§E4.7 定理 2.1と§E17.5 補題 1.1により、qの開近傍U1⊆Uとβ(q)=(0,0)の開近傍W1が存在してβ:U1→W1はC∞微分同相である。ρ>0を(−ρ,ρ)2⊆W1となるように取り、W=(−ρ,ρ)2、U0=β−1(W)と置く。
y=x∘(β∣U0)−1:W→Mと定める。x∣U0は正則パラメータ表示であり、(β∣U0)−1はC∞微分同相であるから、yは正則パラメータ表示でありy(0,0)=x(q)=pである。像y(W)=x(U0)がMの開集合であることは§E19.4 補題 2.1 (1)による。
Ψ−1∘yの最初の二成分はpr∘Ψ−1∘x∘(β∣U0)−1=β∘(β∣U0)−1であり、これはWの恒等写像である。第三成分をhと置くとhはC∞であり
Ψ−1(y(a,b))=(a,b,h(a,b)),すなわちy(a,b)=Ψ(a,b,h(a,b))である。y(0,0)=p=Ψ(0,0,0)であるからh(0,0)=0である。
偏微分すると
ya=e1+hae3,yb=e2+hbe3である。(a,b)=(0,0)ではya(0,0),yb(0,0)∈TpMであり、TpMはe3に直交するので、e3との内積を取るとha(0,0)=hb(0,0)=0を得る。▨
定理 4.4.Mを向きづけられた正則曲面、Nをその Gauss 写像、p∈Mとし、X∈TpMが∥X∥=1を満たすとする。Π={p+sX+tN(p):s,t∈R}を、pを通りXとN(p)が張る平面とする。このとき、R3の開集合O∋pと、0を含む開区間(s−,s+)の上で定義された単位速度のC∞曲線β:(s−,s+)→R3が存在して、次が成り立つ。
- βの像はM∩Π∩Oに等しく、β(0)=p、β′(0)=Xである。この曲線を、pにおけるX方向の法断面という。
- β′′(0)=IIp(X,X)N(p)が成り立つ。
とくに、法断面のpにおける曲率(§E19.2 定義 3.1の意味)は∣IIp(X,X)∣に等しく、IIp(X,X)>0であることとβ′′(0)がN(p)と同じ向きであることは同値である。
証明.e1=X、e2=N(p)×X、e3=N(p)と置く。XとN(p)はともに単位ベクトルであり互いに直交するから、e2は単位ベクトルでありe1とe3の両方に直交する。したがって{e1,e2}はTpMの正規直交基底である。
補題 4.3をこの基底に適用し、ρ、h、y、W=(−ρ,ρ)2を得る。y(W)はMの開集合であるから、R3の開集合OでM∩O=y(W)を満たすものが存在する。
Ψを補題 4.3のアフィン写像とするとΠ=Ψ({(a,0,c):a,c∈R})である。y(a,b)∈ΠであることはΨ−1(y(a,b))=(a,b,h(a,b))の第二成分が0であること、すなわちb=0であることと同値である。したがって
M∩Π∩O=y(W)∩Π={y(a,0):∣a∣<ρ}である。
α(a)=y(a,0)=Ψ(a,0,h(a,0))と置くとαはC∞であり
α′(a)=e1+ha(a,0)e3=0であるから、αは正則曲線(§E19.1 定義 1.1)である。ha(0,0)=0よりα(0)=p、α′(0)=e1=X、∥α′(0)∥=1である。
a=0を基点とする弧長関数s(a)=∫0a∥α′(τ)∥dτ(§E19.1 定義 2.1)を取る。§E19.1 定理 2.2によりsは(−ρ,ρ)から開区間(s−,s+)=s((−ρ,ρ))への狭義単調増加なC∞微分同相であり、s(0)=0であるからs−<0<s+である。β=α∘s−1は単位速度のC∞曲線であり、αと像が同じであるから、その像はM∩Π∩Oに等しい。β(0)=α(0)=pであり、∥α′(0)∥=1からβ′(0)=α′(0)/∥α′(0)∥=Xである。以上で(1)が成り立つ。
(2)を示す。βの像はΠに含まれるから、すべてのtについてβ(t)−p∈span(e1,e3)である。この部分空間は線形部分空間であり、微分は差分商の極限であるからβ′(t)とβ′′(t)もこの部分空間に属する。とくにβ′′(0)∈span(X,N(p))である。
∥β′(t)∥2=1をtで微分すると⟨β′′(t),β′(t)⟩=0であり、t=0ではβ′′(0)⊥Xである。したがってβ′′(0)∈span(N(p))であり
β′′(0)=⟨β′′(0),N(p)⟩N(p)である。βはMの中のC∞曲線でありβ(0)=p、β′(0)=Xであるから、補題 4.1により⟨β′′(0),N(p)⟩=IIp(X,X)である。よって(2)が成り立つ。
最後の主張を確かめる。βは単位速度であるから、§E19.2 定義 3.1によりβのpにおける曲率は∥β′′(0)∥であり、(2)からこれは∣IIp(X,X)∣に等しい。符号についての主張も(2)から直ちに従う。▨
5 例
例 5.3 (円柱).r>0とし、§E19.4 例 6.3のパラメータ表示x(u,v)=(rcosv, rsinv, u)を取る。
xu=(0,0,1),xv=r(−sinv, cosv, 0)であるから
xu×xv=r(−cosv, −sinv, 0),∥xu×xv∥=rであり、この表示が定める向きはN=(−cosv, −sinv, 0)である。これは回転軸へ向かう向き、すなわち円柱が囲む領域から見て内向きである。
二階偏導関数はxuu=0、xuv=0、xvv=r(−cosv, −sinv, 0)であるから、命題 3.2により
e=0,f=0,g=⟨N,xvv⟩=r(cos2v+sin2v)=rである。§E19.4 例 6.3のE=1、F=0、G=r2と合わせて、命題 3.3により
A=I−1II=(100r−2)(000r)=(000r−1)である。すなわちS(xu)=0、S(xv)=xv/rである。
法曲率を二つの方向で確かめる。母線方向の単位接ベクトルxuについてはII(xu,xu)=e=0である。実際、この方向の法断面は円柱の母線そのものであり、直線の曲率は0である。緯線方向の単位接ベクトルxv/rについては
II(rxv,rxv)=r2g=r1である。この方向の法断面は半径rの円周であり、その加速度ベクトルは円の中心へ向かうのでNと同じ向きである。定理 4.4の符号の規約と一致する。
例 5.4 (関数のグラフ).W⊆R2を開集合、h:W→RをC∞関数とし、M={(u,v,h(u,v)):(u,v)∈W}と置く。「正則曲面・接平面・向き」の§E19.3 命題 2.1により、Mは正則曲面であり、x(u,v)=(u,v,h(u,v))はその正則パラメータ表示である。
xu=(1,0,hu),xv=(0,1,hv)であるから
E=1+hu2,F=huhv,G=1+hv2,EG−F2=1+hu2+hv2である。またxu×xv=(−hu,−hv,1)であり、この表示が定める向きは
N=1+hu2+hv2(−hu, −hv, 1)である。二階偏導関数はxuu=(0,0,huu)、xuv=(0,0,huv)、xvv=(0,0,hvv)であるから、命題 3.2により
e=1+hu2+hv2huu,f=1+hu2+hv2huv,g=1+hu2+hv2hvvである。
とくにhu(q)=hv(q)=0を満たす点qではE=G=1、F=0であり、N=(0,0,1)、
(effg)=(huuhuvhuvhvv)となる。すなわち、その点における第二基本形式の成分行列はhの二階偏導関数の行列に一致する。補題 4.3により、正則曲面のどの点についても、適当な直交座標を取ればこの形の表示が得られる。したがって、その点における第二基本形式の成分は、接平面からの高さを表す関数の二階偏導関数である。
6 演習
7 境界と次
第二基本形式は単位法線の選び方に依存する。命題 3.4のとおり、向きを反転するとSとIIの符号は反転する。したがって、第二基本形式の値を述べるときは、二つの単位法線のどちらを取ったかを必ず明示しなければならない。本単元は閉曲面に内向きの単位法線を取り、その約束のもとで半径rの球面の法曲率がすべての方向で1/rになる(例 5.2)。次の記事で定める Gauss 曲率は、この符号の反転に影響されない量である。
向きづけ可能でない曲面には大域的な単位法線ベクトル場が存在しない(§E19.3 定義 4.2)。本記事の主張のうち、単位法線を大域的に選ぶことを前提とするものは、そのような曲面には適用しない。一方、SとIIは各正則パラメータ表示の像の上では定まるので、符号の反転に影響されない量については、向きづけ可能性を仮定せずに扱うことができる。
定理 2.1は、次の記事でスペクトル定理を適用するための前提である。自己共役性を経ずに「第二基本形式を第一基本形式に関して対角化する」という形で主曲率を導入する道筋もあるが、その道筋は、一方が正定値である二つの二次形式を同時に対角化することができるという主張を要求する。本単元はその主張を証明しないので、自己共役性とスペクトル定理を経る道筋だけを採る。
定理 4.4は、単位接ベクトル一つに対して一つの数を対応させる。この対応が接平面の上でどのような形をしているか、すなわち法曲率の最大値と最小値がどこで実現されるかは、次の記事が主曲率として答える。