1 可積分係数をもつ線形系の全区間解
区間に含まれる端点で初期値を与える場合にも、解の値は積分表示によって定まる。以下のLloc1(I)は、Iに含まれる任意の有限閉区間上で可積分であることを表す。行列とベクトルについては有限個の成分ごとに考える。
定理 1.1.K∈{R,C}、d∈N≥1とし、I⊆Rを内部が空でない区間とする。
A∈Lloc1(I;Kd×d),b∈Lloc1(I;Kd)ならば、任意のt0∈Iとη∈Kdに対して、I全体で定義された一意な絶対連続解
x∈ACloc(I;Kd),x′=Ax+bほとんど至る所,x(t0)=ηが存在する。この解はすべてのt∈Iに対して
x(t)=η+∫t0t(A(s)x(s)+b(s))dsを満たす。t<t0の積分は向き付き積分とする。
証明.Kdにノルムを固定し、∥A∥を誘導される作用素ノルムとする。K=Cの場合は実部と虚部を実座標として扱う。A,bの可測な代表を取り、零集合上の値は有限な値に定める。任意の有限閉区間J⊆IとR>0について、f(t,u)=A(t)u+b(t)は時間について可測であり、状態について連続である。また、∥u∥≤Rならば
∥f(t,u)∥≤R∥A(t)∥+∥b(t)∥,∥f(t,u)−f(t,v)∥≤∥A(t)∥∥u−v∥が成り立つ。右辺の支配関数はいずれもJ上で可積分である。
Iが開区間の場合、§E10.5 定理 2.1により初期値を満たす最大絶対連続解x:(α,β)→Kdが存在する。βがIの内点であると仮定し、[t0,β]を内部に含む有限閉区間J⊆Iを取る。§E10.2 系 2.5と§E10.2 補題 1.3 (2)から、t0≤t<βに対して
∥x(t)∥≤∥η∥+∫t0t(∥A(s)∥∥x(s)∥+∥b(s)∥)dsとなる。任意のT∈(t0,β)について区間[t0,T]に§E10.6 定理 1.1を適用すると、
∥x(t)∥≤(∥η∥+∫J∥b(s)∥ds)exp(∫J∥A(s)∥ds)=:C(t0≤t≤T)を得る。CはTによらないので、解のグラフはt0≤t<βの範囲で
[t0,β]×{u:∥u∥≤C}というI×Kdのコンパクト部分集合に含まれる。§E10.5 定理 4.1によりβを越えて延長され、最大性に反する。従ってβはIの内点ではない。左端点αがIの内点ならば、[α,t0]を含む有限閉区間Jを取り、
∥x(t)∥≤∥η∥+∫tt0(∥A(s)∥∥x(s)∥+∥b(s)∥)dsに§E10.6 定理 1.1の左向き評価を適用する。このJに対して上と同じ式で定めるCによる有界性と、左端点の延長定理が最大性に反する。よって最大存在区間はIに等しい。
区間が開いているかどうかによらず、同じ初期値をもつ二つの絶対連続解の差zは
z(t)=∫t0tA(s)z(s)dsを満たす。任意のt∈Iとt0を端点とする閉区間に、§E10.6 定理 1.1の右向きまたは左向き評価を初期定数0、外力0として適用すると、z(t)=0を得る。これで一意性が従う。
一般の区間Iについて、t0を含む長さが正の有限閉区間J⊆Iを取る。A∣J,b∣JをJの外で零に延長すると、R上の局所可積分な係数と外力になる。開区間の場合の結論をRに適用し、得られた解をJへ制限する。二つの区間J1,J2から得た解は、共通部分が正の長さをもつときは直前の一意性により一致し、共通部分が{t0}のときも初期値が一致する。従って、これらの解はI上の一つの関数xを定める。任意の有限閉区間[a,b]⊆Iはt0も含むあるJ⊆Iに含まれるので、x∣[a,b]は絶対連続である。Iを可算個のそのようなJで覆うと、方程式の例外集合も零集合となる。各Jでの積分表示は、Iに含まれる端点を含めた全点の積分表示を与える。▨
系 1.2.I⊆Rを開区間、n∈N≥1とし、A:I→Rn×nを連続とする。任意のt0∈Iとη∈Rnに対して、初期値問題
Y′=A(t)Y,Y(t0)=ηはI全体で定義された一意なC1級の解をもつ。
証明.定理 1.1をK=R、b=0として適用する。得られた解Yは連続であり、AYも連続である。従って積分表示を通常の微積分の基本定理で微分すると、Y∈C1(I;Rn)と全点での微分方程式を得る。一意性も同定理から従う。▨
線形成長の評価は、各コンパクト時間区間上で解を有界に保つ。状態についての局所 Lipschitz 条件だけでは排除されない有限時間爆発が、線形系ではこの評価によって排除される。
2 絶対連続な基本行列
定義 2.1.K∈{R,C}、d∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、A∈Lloc1(I;Kd×d)とする。行列値関数Φ∈ACloc(I;Kd×d)が
Φ′=AΦほとんど至る所,detΦ(t)=0(t∈I)を満たすとき、Φを同次系x′=Axの基本行列 (fundamental matrix) という。
定理 2.2.K∈{R,C}、d∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、A∈Lloc1(I;Kd×d)とする。同次系x′=AxのI上の絶対連続解全体をSA(I)と書く。この集合はKベクトル空間であり、任意のt0∈Iに対して評価写像
Et0:SA(I)⟶Kd,x⟼x(t0)は線形同型である。特に、dimKSA(I)=dであり、Φ(t0)=idを満たす基本行列がただ一つ存在する。
x1,…,xd∈SA(I)を列にもつ行列をΨとすると、次の条件は同値である。
- 列x1,…,xdはSA(I)の基底である。
- detΨ(t0)=0である。
- すべてのt∈IでdetΨ(t)=0である。
証明. 方程式の線形性と絶対連続関数の線形結合により、SA(I)はベクトル空間であり、Et0は線形である。定理 1.1の存在はEt0の全射性を、一意性は単射性を与える。従ってEt0は同型である。
任意のt∈Iで、Ψ(t)の各列はEtによるxjの像である。線形同型は基底を基底へ移すので、列が解空間の基底であることと、その時刻でΨ(t)が可逆であることは同値である。これにより三条件の同値を得る。
Kdの標準基底をe1,…,edとし、xj=Et0−1(ej)とおく。列を並べたΦはΦ(t0)=idを満たし、上の同値性から全点で可逆である。各列は同次解なのでΦは基本行列である。各列の初期値が指定されているため、この正規化を満たす基本行列は一意である。▨
3 Abel–Liouville の公式
定理 3.1 (Abel–Liouville の公式).K∈{R,C}、d∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、A∈Lloc1(I;Kd×d)とする。Φ∈ACloc(I;Kd×d)がΦ′=AΦをほとんど至る所で満たすならば、D=detΦは局所絶対連続であり、
D′=tr(A)Dほとんど至る所,D(t)=D(t0)exp(∫t0ttrA(s)ds)(t0,t∈I)が成り立つ。従ってDは恒等的に零であるか、全点で零でないかのいずれかである。
証明.Φの列をx1,…,xdとする。§E10.2 系 3.2 (3)によりDは局所絶対連続であり、ほとんど至る所で
D′=j=1∑ddet(x1,…,Axj,…,xd)となる。各時刻で、実変数hの多項式の恒等式
det((id+hA)Φ)=det(id+hA)detΦの一次係数を比較する。左辺の一次係数は上の和であり、右辺では行列式の展開からdet(id+hA)の一次係数が∑jAjj=trAとなる。従ってD′=tr(A)Dを得る。この比較はΦが特異である場合にも成立する。
t0∈Iを固定し、H(t)=∫t0ttrA(s)dsとおく。§E10.2 系 2.5、§E10.2 定理 3.1 (1)、§E10.2 定理 3.1 (2)によりe−HDは局所絶対連続であり、その導関数はほとんど至る所で
(e−HD)′=e−H(D′−H′D)=0となる。複素数値の場合も、指数関数を二つの実変数のC1写像として同じ合成則を適用する。全点積分表示からe−H(t)D(t)=D(t0)を得る。指数関数は零にならないので、最後の二者択一も従う。▨
4 高階方程式と一階連立系
命題 4.1.K∈{R,C}、n∈N≥1とし、I⊆Rを内部が空でない区間、p0,…,pn−1,r∈Lloc1(I;K)とする。n≥2の場合はy∈Cn−1(I;K)かつy(n−1)∈ACloc(I;K)、n=1の場合はy∈ACloc(I;K)を解の正則性とする。含まれる端点での古典導関数は片側導関数とする。
この正則性をもつyが
y(n)+j=0∑n−1pj(t)y(j)=r(t)ほとんど至る所を満たすことと、
Y=(y,y′,…,y(n−1))Tが次の伴随系の絶対連続解であることは同値である。
Y′=A(t)Y+b(t),A(t)=00⋮0−p0(t)10⋮0−p1(t)01⋮0−p2(t)⋯⋯⋱⋯⋯00⋮1−pn−1(t),b(t)=0⋮0r(t).n=1ではA=(−p0)、b=(r)とする。逆方向の対応はy=Y0である。特に任意のt0∈Iとη0,…,ηn−1∈Kに対し、y(j)(t0)=ηjを満たす解がI全体でただ一つ存在する。
証明. 上の正則性をもつyからYを作る。n≥2ならば、各有限閉区間でy,…,y(n−2)は連続な導関数をもつため絶対連続であり、最後の成分も仮定により絶対連続である。最初のn−1成分の微分は次の成分に等しく、最後の成分の微分は高階方程式により伴随系の最後の式を満たす。n=1では二つの方程式は同じである。
逆に伴随系の絶対連続解Y=(Y0,…,Yn−1)Tを取る。n≥2の場合、§E10.2 系 2.5により、0≤j<n−1と任意のt,t0∈Iに対して
Yj(t)=Yj(t0)+∫t0tYj+1(s)dsである。Yj+1は連続なので、通常の微積分の基本定理によりYjはC1級であり、Yj′=Yj+1が全点で成り立つ。含まれる端点では片側微分となる。従ってy=Y0はCn−1級であり、y(j)=Yjである。y(n−1)=Yn−1は局所絶対連続であり、最後の成分の微分方程式は所要の高階方程式になる。n=1ではy=Y0自身が絶対連続解である。
A,bは局所可積分なので、定理 1.1を初期ベクトル(η0,…,ηn−1)Tに適用する。上の双方向の対応により、高階方程式の全区間存在と一意性を得る。▨
最高階係数を含む式
any(n)+j=0∑n−1ajy(j)=g
を扱う場合、an=0がほとんど至る所で成り立ち、すべての商aj/anとg/anが局所可積分ならば、pj=aj/an、r=g/anとして前命題を適用することができる。商の可積分性はan=0だけからは従わない。連続な実係数でan(t)=0が全点で成り立つ場合には、すべての係数商は連続である。
系 4.2.I⊆Rを開区間、n∈N≥1とし、a0,…,an:I→Rを連続関数、an(t)=0を全点での仮定とする。pj=aj/anとおく。y∈Cn(I;R)が正規化した方程式
y(n)+j=0∑n−1pj(t)y(j)=0(1)の解であることと、Y=(y,y′,…,y(n−1))Tが、直前の命題の伴随行列Aに対する
Y′=A(t)Y(2)の古典解であることは同値である。逆に式 (2) の任意の古典解の第一成分は、式 (1) のCn級の解である。
証明.命題 4.1をK=R、r=0として適用する。連続なAに対してAYは連続なので、伴随系の絶対連続解は積分表示からC1級となる。特にy(n−1)=Yn−1はC1級であり、y∈Cn(I;R)を得る。微分方程式も全点で成立する。▨
系 4.3.I⊆Rを開区間、n∈N≥1、p0,…,pn−1:I→Rを連続関数とする。式 (1) について、任意のt0∈Iとη0,…,ηn−1∈Rに対して
y(t0)=η0,y′(t0)=η1,…,y(n−1)(t0)=ηn−1を満たすCn級の解がI全体でただ一つ存在する。
5 解空間と基本解系
定義 5.1.K∈{R,C}、n∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、p0,…,pn−1∈Lloc1(I;K)とする。斉次方程式
y(n)+j=0∑n−1pjy(j)=0ほとんど至る所について、命題 4.1に記した正則性をもつI全体の解の集合をS(I)と書く。関数の和とKの元による定数倍を演算として、S(I)を解空間 (solution space) という。K=Rで係数が連続な場合、S(I)は式 (1) の実数値古典解全体である。
定理 5.2.K∈{R,C}、n∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、p0,…,pn−1∈Lloc1(I;K)に対する斉次方程式の解空間をS(I)とする。任意のt0∈Iに対して、写像
Et0:S(I)→Kn,Et0(y)=(y(t0),y′(t0),…,y(n−1)(t0))は線形同型である。従ってdimKS(I)=nである。
証明.命題 4.1の対応y↦(y,y′,…,y(n−1))Tは、スカラー方程式の解空間と伴随系の解空間の線形全単射である。この対応に定理 2.2の評価同型を合成するとEt0を得る。▨
定義 5.3.K∈{R,C}、n∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、S(I)を局所可積分係数p0,…,pn−1をもつ斉次n階方程式の解空間とする。n個の解y1,…,yn∈S(I)に対して、Wronskian (Wronskian) を
W(y1,…,yn)(t)=dety1(t)y1′(t)⋮y1(n−1)(t)⋯⋯⋯yn(t)yn′(t)⋮yn(n−1)(t)と定める。y1,…,ynが解空間の基底をなすとき、これらを基本解系 (fundamental system of solutions) という。
命題 5.4.K∈{R,C}、n∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、S(I)を局所可積分係数の同じ斉次n階方程式の解空間とする。y1,…,yn∈S(I)とt0∈Iに対して、次の三条件は同値である。
- y1,…,ynは基本解系である。
- W(y1,…,yn)(t0)=0である。
- 任意のt∈IでW(y1,…,yn)(t)=0である。
証明.yjを伴随系の列解(yj,yj′,…,yj(n−1))Tに対応させる。この対応は命題 4.1により線形同型であり、列を並べた行列の行列式はWである。従って定理 2.2の三条件の同値が、上の三条件の同値を与える。▨
証明. 各yjに対応する伴随系の列解を並べると、行列式はWであり、伴随行列のトレースは−pn−1である。定理 3.1に代入すると表示式と二者択一を得る。▨
6 既知の解による二階方程式の次数低下
定理 6.1.K∈{R,C}、I⊆Rを内部が空でない区間とし、P,Q∈Lloc1(I;K)とする。方程式
y′′+P(t)y′+Q(t)y=0ほとんど至る所(3)の解はy∈C1(I;K)、y′∈ACloc(I;K)とする。y1をI上のすべての点で零にならない既知の解とし、t∗∈Iとする。このとき
y2(t)=y1(t)∫t∗ty1(s)2exp(−∫t∗sP(r)dr)dsは式 (3) の解であり、y1,y2は基本解系をなす。連続な実係数の場合は、両解はC2級の古典解である。
証明.命題 4.1により、z(t∗)=0、z′(t∗)=1/y1(t∗)を満たす式 (3) の解zを取る。このときW(y1,z)(t∗)=1であるから、系 5.5により
W(y1,z)(t)=exp(−∫t∗tP(r)dr)である。y1,zはC1級であり、y1は零にならないので、商の微分から全点で
(y1z)′(t)=y1(t)2y1(t)z′(t)−y1′(t)z(t)=y1(t)2exp(−∫t∗tP(r)dr)となる。右辺は連続である。t∗からtまで積分し、z(t∗)=0を用いるとz(t)=y2(t)を得る。従って表示した関数は所要の正則性をもつ解である。またW(y1,y2)は全点で零でないため、命題 5.4により基本解系をなす。P,Qが連続ならば、各解について−Py′−Qyは連続である。y′の全点積分表示を微分すると、含まれる端点も片側でy′′=−Py′−Qyが成り立ち、C2正則性を得る。▨
基本解系が得られれば、斉次方程式の任意の解はその線形結合として一意に表される。次の記事では定数係数方程式について基本解系を特性多項式から構成し、その次の記事では非同次方程式の特解を基本解系から構成する。
7 演習
問題 7.1 (大域存在から解空間の次元まで).Iを開区間とする。I上で係数が連続な正規形のn階線形斉次方程式について、解空間の次元がnであることを示す証明を、次の順序で再構成せよ。
- 方程式を伴随行列による一階連立系へ変換する。
- 最大存在区間の有限な内点端点を仮定し、Grönwall の不等式と延長定理から矛盾を導く。
- 初期値写像が単射かつ全射であることを示す。
解答.
Y=(y,y′,…,y(n−1))Tと置くと、方程式はY′=A(t)Yとなる。最大解の右端点βがIの内点であると仮定する。[t0,β]を含むコンパクト区間上でM=max∥A(t)∥と置けば、積分方程式と Grönwall の不等式から
∥Y(t)∥≤∥Y(t0)∥eM(t−t0)(t0≤t<β)を得る。したがって解のグラフはI×Rnのあるコンパクト部分集合に含まれ、有限端点を越えて延長することができる。これは最大性に反する。左端点にも同じ議論を適用することにより、任意の初期値に対する解はI全体で存在する。
t0∈Iを固定し、
Et0(y)=(y(t0),y′(t0),…,y(n−1)(t0))と定める。この写像は線形である。Et0(y)=0ならば、初期値の一意性によりy=0であるため、Et0は単射である。任意のη∈Rnに対して、大域的な初期値解がEt0(y)=ηを満たすため、Et0は全射である。よって解空間はRnと線形同型であり、その次元はnである。▨
問題 7.2 (既知の解による次数低下). 区間(0,∞)上の方程式
y′′−t2y′+t22y=0には既知の解y1(t)=tがある。次数低下の公式を用いて、y1と独立な解を一つ求めよ。得られた二つの解が基本解系をなすことを Wronskian により確認せよ。
解答.
P(t)=−2/tである。基点をt∗=1とすると、
exp(−∫1sP(r)dr)=s2であり、これをy1(s)2=s2で割った被積分関数は1になる。したがって次数低下の公式はy2(t)=t(t−1)を与える。既知の解の定数倍を加えても独立性は変わらないため、y2(t)=y2(t)+y1(t)=t2を第二の解として取ることができる。実際、
y2′′−t2y2′+t22y2=2−4+2=0であり、
W(y1,y2)(t)=t1t22t=t2=0が(0,∞)上で成り立つ。ゆえにt,t2は基本解系をなす。▨
問題 7.3.P,Qが連続な実数値関数の場合に、定理 6.1の表示を、y=y1vという置換から再構成せよ。具体的には、w=v′が満たす一次線形方程式を導き、積分因子によってwを求め、得られたy2を式 (3) へ直接代入せよ。さらに、W(y1,y2)を直接計算してy1,y2が基本解系をなすことを示せ。
解答.
y=y1vと置くと
y′=y1′v+y1v′,y′′=y1′′v+2y1′v′+y1v′′である。式 (3) の左辺へ代入すると
y′′+Py′+Qy=(y1′′+Py1′+Qy1)v+(2y1′+Py1)v′+y1v′′となる。y1は式 (3) の解であるから、yが式 (3) の解であるための条件は
y1v′′+(2y1′+Py1)v′=0である。w=v′と置き、y1がI上で零にならないことを用いてy1で割ると
w′+(2y1y1′+P)w=0を得る。この一次線形方程式の積分因子は、零でない定数倍を除いて
y1(t)2exp(∫t∗tP(r)dr)である。したがって、積分定数を選ぶことにより
w(t)=y1(t)2exp(−∫t∗tP(r)dr)を得る。実際、分子をE(t)と書けばE′=−PEであり、
w′=−Pw−2y1y1′wであるから、このwは上の一次線形方程式を満たす。
そこで
v(t)=∫t∗tw(s)ds,y2(t)=y1(t)v(t)と置く。v′=wであり、wの方程式にy1を掛けると
y1v′′+(2y1′+Py1)v′=0となる。したがって、先に得た代入式の右辺は零であり、y2は式 (3) の解である。
さらに
W(y1,y2)=y1(y1′v+y1v′)−y1′(y1v)=y12v′=exp(−∫t∗tP(r)dr)=0が任意のt∈Iで成り立つ。よって命題 5.4によりy1,y2は基本解系をなす。▨
問題 7.4.f(t)=t3、g(t)=∣t∣3を実数全体で定義し、区間[−1,1]への制限を考える。f,gがともにC2級であることを示せ。W(f,g)=fg′−f′gと定めるとき、W(f,g)が恒等的に零であること、およびf,gが[−1,1]上で線形独立であることも示せ。さらに、[−1,1]を含む開区間上でf,gが同じ連続係数の正規形二階線形斉次方程式の解ではあり得ない理由を、零初期値に対する一意性を用いて説明せよ。
解答.
fは多項式であるからC2級である。gについては
g′(t)=3t∣t∣,g′′(t)=6∣t∣が成り立つ。右辺はt=0でも連続であるから、gもC2級である。
t>0ではg=fであり、t<0ではg=−fである。したがってt=0ではW(f,g)(t)=0である。またf(0)=g(0)=f′(0)=g′(0)=0であるから、W(f,g)(0)=0でもある。よってW(f,g)は[−1,1]上で恒等的に零である。
af+bg=0が[−1,1]上で成り立つと仮定する。t=1を代入するとa+b=0であり、t=−1を代入すると−a+b=0である。これらの二式からa=b=0を得るため、f,gは線形独立である。
区間[−1,1]を含む開区間I上の連続関数P,Q:I→Rに対して、fとgがともに
y′′+P(t)y′+Q(t)y=0の解であると仮定する。特にfはf(0)=f′(0)=0を満たす。この初期値をもつ解は一意であり、零解も同じ初期値をもつから、fは[−1,1]上で零解に一致しなければならない。しかしf(1)=1であるため、この結論と両立しない。したがってf,gは同じ連続係数の正規形二階線形斉次方程式の解ではない。Wronskian が恒等的に零であることから線形従属性を導く命題 5.4は、同じ方程式の解に対する主張である。▨