§E10.8定数係数線形方程式

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定数係数線形方程式は、振動や減衰を記述する微分方程式の基本的な模型である。解空間が有限次元であることが分かっていても、その事実だけでは計算に用いる基本解系の具体的な形は定まらない。

指数関数は微分によって定数倍される。そのため、指数関数を定数係数線形方程式へ代入すると、指数に関する多項式方程式が得られる。この多項式を特性多項式と呼び、その根から基本解系を構成する。たとえば、方程式y′′−3y′+2y=0y''-3y'+2y=0では特性多項式の根1,21,2が二つの解et,e2te^t,e^{2t}を与える。微分方程式を多項式の根の問題へ移すこの対応は、定数係数線形方程式を具体的に解くための中心的な原理であり、非同次方程式を扱う際の土台にもなる。

本記事では、特性根から定数係数線形方程式の基本解系を構成し、実一般解を求める方法を解説する。

1 特性多項式

実定数a0,…,ana_0,\ldots,a_nがan≠0a_n\ne0を満たすとし、

any(n)+an−1y(n−1)+⋯+a1y′+a0y=0(1)a_n y^{(n)}+a_{n-1}y^{(n-1)}+\cdots+a_1y'+a_0y=0 \tag{1}

を考える。微分作用素をD=d/dtD=d/dtと書き、

P(λ)=anλn+an−1λn−1+⋯+a1λ+a0P(\lambda) =a_n\lambda^n+a_{n-1}\lambda^{n-1}+\cdots+a_1\lambda+a_0

を式 (1) の特性多項式という。式 (1) はP(D)y=0P(D)y=0と書くことができる。

指数関数y=eλty=e^{\lambda t}に対して

P(D)eλt=P(λ)eλtP(D)e^{\lambda t}=P(\lambda)e^{\lambda t}

である。したがって、P(λ)=0P(\lambda)=0ならばeλte^{\lambda t}は複素数値解である。重根の場合を扱うため、この計算を指数関数と多項式の積へ拡張する。

補題 1.1.P∈C[z]P\in\C[z]、λ∈C\lambda\in\C、q∈C[t]q\in\C[t]とする。このとき

P(D)(eλtq(t))=eλtP(D+λ)q(t)P(D)\bigl(e^{\lambda t}q(t)\bigr) =e^{\lambda t}P(D+\lambda)q(t)

である。

証明. 積の微分公式により

D(eλtq(t))=eλt(D+λ)q(t)D\bigl(e^{\lambda t}q(t)\bigr) =e^{\lambda t}(D+\lambda)q(t)

である。帰納法により

Dk(eλtq(t))=eλt(D+λ)kq(t)D^k\bigl(e^{\lambda t}q(t)\bigr) =e^{\lambda t}(D+\lambda)^kq(t)

が任意のk∈N≥0k\in\Nについて成り立つ。P(D)P(D)の各項へこの式を適用して加えると、主張の恒等式を得る。

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補題 1.2.d∈N≥0d\in\Nとし、VdV_dを次数がdd以下の複素係数多項式全体がなすベクトル空間とする。P∈C[z]P\in\C[z]、λ∈C\lambda\in\Cに対して、線形作用素

P(D+λ) ⁣:Vd⟶VdP(D+\lambda)\colon V_d\longrightarrow V_d

が可逆であることとP(λ)≠0P(\lambda)\ne0であることは同値である。

証明.VdV_dの基底1,t,…,td1,t,\ldots,t^dをこの順に取る。この基底に関するDDの行列表現は対角成分がすべて00である三角行列なので、D+λD+\lambdaの行列表現は対角成分がすべてλ\lambdaである三角行列である。したがってP(D+λ)P(D+\lambda)の行列表現も三角行列であり、その対角成分はすべてP(λ)P(\lambda)である。ゆえに、その行列式はP(λ)d+1P(\lambda)^{d+1}である。したがってP(D+λ)P(D+\lambda)が可逆であることとP(λ)≠0P(\lambda)\ne0であることは同値である。

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補題 1.3.qqを複素係数多項式、λ∈C\lambda\in\mathbb Cとする。このとき

P(D)(eλtq(t))=eλtP(D+λ)q(t)P(D)\bigl(e^{\lambda t}q(t)\bigr) =e^{\lambda t}P(D+\lambda)q(t)

である。

証明.補題 1.1を式 (1) の特性多項式PPに適用すると、この恒等式を得る。

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2 特性根と基本解系

定理 2.1. 特性多項式を複素数上で

P(λ)=an∏j=1r(λ−λj)mj,λj∈C,mj∈N≥1,λj≠λℓ (j≠ℓ),∑j=1rmj=nP(\lambda) =a_n\prod_{j=1}^{r}(\lambda-\lambda_j)^{m_j}, \qquad \lambda_j\in\C,\quad m_j\in\NN, \qquad \lambda_j\ne\lambda_\ell\ (j\ne\ell), \qquad \sum_{j=1}^{r}m_j=n

と因数分解する。このとき、

tkeλjt,1≤j≤r,0≤k<mj(2)t^k e^{\lambda_j t}, \qquad 1\le j\le r,\quad 0\le k<m_j \tag{2}

は複素解空間の基本解系をなす。

証明. 根λj\lambda_jを一つ固定する。

P(z)=(z−λj)mjSj(z)P(z)=(z-\lambda_j)^{m_j}S_j(z)

と書くと、移動公式により

P(D)(eλjtq(t))=eλjtDmjSj(D+λj)q(t).P(D)\bigl(e^{\lambda_jt}q(t)\bigr) =e^{\lambda_jt}D^{m_j}S_j(D+\lambda_j)q(t).

q(t)=tkq(t)=t^kかつk<mjk<m_jならば、定係数微分作用素は可換であるから

DmjSj(D+λj)q=Sj(D+λj)Dmjq=0D^{m_j}S_j(D+\lambda_j)q =S_j(D+\lambda_j)D^{m_j}q =0

である。したがって、式 (2) の各関数は解である。

次数がmjm_j未満の多項式qjq_jを用いて

∑j=1reλjtqj(t)=0(3)\sum_{j=1}^{r}e^{\lambda_jt}q_j(t)=0 \tag{3}

と仮定する。jjを一つ固定し、空積を11と定めて

Rj(z)=∏ℓ≠j(z−λℓ)mℓR_j(z)=\prod_{\ell\ne j}(z-\lambda_\ell)^{m_\ell}

と置き、Rj(D)R_j(D)を式 (3) の両辺へ作用させる。ℓ≠j\ell\ne jに対して、補題 1.1により

Rj(D)(eλℓtqℓ(t))=eλℓtRj(D+λℓ)qℓ(t)R_j(D)\bigl(e^{\lambda_\ell t}q_\ell(t)\bigr) =e^{\lambda_\ell t}R_j(D+\lambda_\ell)q_\ell(t)

である。Rj(D+λℓ)R_j(D+\lambda_\ell)は因子DmℓD^{m_\ell}をもち、定数係数微分作用素は可換であり、deg⁡qℓ<mℓ\deg q_\ell<m_\ellであるから、この式の右辺は零である。したがって、式 (3) から

eλjtRj(D+λj)qj(t)=0e^{\lambda_jt}R_j(D+\lambda_j)q_j(t)=0

を得る。

根は相異なるため

Rj(λj)=∏ℓ≠j(λj−λℓ)mℓ≠0R_j(\lambda_j) =\prod_{\ell\ne j}(\lambda_j-\lambda_\ell)^{m_\ell} \ne0

である。補題 1.2をd=mj−1d=m_j-1、多項式RjR_j、λ=λj\lambda=\lambda_jに適用すると、Rj(D+λj)R_j(D+\lambda_j)は次数がmjm_j未満の多項式空間上で可逆である。指数関数は零にならないためRj(D+λj)qj=0R_j(D+\lambda_j)q_j=0であり、可逆性からqj=0q_j=0を得る。固定したjjは任意であるから、すべてのqjq_jは零であり、式 (2) の関数は線形独立である。

式 (2) に含まれる関数の総数は∑jmj=n\sum_jm_j=nである。初期値写像の複素数版は複素解空間をCn\mathbb C^nと同型にする。これは実部と虚部へ§E10.7 定理 5.2を適用すれば従う。したがって複素解空間の次元はnnであり、式 (2) は基本解系である。

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実係数多項式の非実根は共役な組で現れ、重複度も一致する。

系 2.2. 実特性根ρ\rhoの重複度がmmならば、

eρt, teρt,…,tm−1eρte^{\rho t},\ te^{\rho t},\ldots,t^{m-1}e^{\rho t}

を実基本解系に含めることができる。非実根α+iβ\alpha+i\betaの重複度がmmでβ>0\beta>0ならば、共役根の組に対応して

tkeαtcos⁡(βt),tkeαtsin⁡(βt),0≤k<mt^k e^{\alpha t}\cos(\beta t),\qquad t^k e^{\alpha t}\sin(\beta t), \qquad 0\le k<m

を実基本解系に含めることができる。

証明. 実根に対応する関数は実数値である。非実根については

tke(α+iβ)t=tkeαt(cos⁡(βt)+isin⁡(βt))t^ke^{(\alpha+i\beta)t} =t^ke^{\alpha t}\bigl(\cos(\beta t)+i\sin(\beta t)\bigr)

の実部と虚部を取る。係数が実数であるため、複素解の実部と虚部はともに実解である。

複素基本解系において、共役な二つの関数をその実部と虚部へ取り替える操作は、可逆な複素線形変換である。したがって線形独立性は保たれる。実解の個数はnnであり、実解空間の次元もnnであるから、これらは実基本解系をなす。

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3 二階方程式の三分類

正規化した二階方程式

y′′+ay′+by=0(4)y''+ay'+by=0 \tag{4}

の特性多項式は

P(λ)=λ2+aλ+bP(\lambda)=\lambda^2+a\lambda+b

である。判別式をΔ=a2−4b\Delta=a^2-4bとすると、実一般解は次のように分類される。

定理 3.1. 式 (4) の実数値解は、任意定数C1,C2∈RC_1,C_2\in\mathbb Rを用いて次の形に表される。

  1. Δ>0\Delta>0のとき、相異なる実根λ1,2=(−a±Δ)/2\lambda_{1,2}=(-a\pm\sqrt\Delta)/2に対して y=C1eλ1t+C2eλ2t.y=C_1e^{\lambda_1t}+C_2e^{\lambda_2t}.
  2. Δ=0\Delta=0のとき、重根λ=−a/2\lambda=-a/2に対して y=(C1+C2t)eλt.y=(C_1+C_2t)e^{\lambda t}.
  3. Δ<0\Delta<0のとき、α=−a/2\alpha=-a/2、β=−Δ/2>0\beta=\sqrt{-\Delta}/2>0に対して y=eαt(C1cos⁡(βt)+C2sin⁡(βt)).y=e^{\alpha t} \bigl(C_1\cos(\beta t)+C_2\sin(\beta t)\bigr).

証明. 三つの場合は、それぞれ相異なる二実根、重複度二の実根、共役な二つの非実根に対応する。系 2.2を適用すると、表示した二関数が実基本解系になる。解空間は二次元であるから、任意の実解はその一意な線形結合である。

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例 3.2 (相異なる二実根の場合). 初期値問題

y′′−3y′+2y=0,y(0)=1,y′(0)=0y''-3y'+2y=0,\qquad y(0)=1,\qquad y'(0)=0

を考える。特性多項式は

λ2−3λ+2=(λ−1)(λ−2)\lambda^2-3\lambda+2=(\lambda-1)(\lambda-2)

であるから、一般解は

y=C1et+C2e2ty=C_1e^t+C_2e^{2t}

である。初期条件から

C1+C2=1,C1+2C2=0C_1+C_2=1,\qquad C_1+2C_2=0

となり、C1=2C_1=2、C2=−1C_2=-1を得る。したがって

y(t)=2et−e2t.y(t)=2e^t-e^{2t}.

直接微分すると

y′′−3y′+2y=(2et−4e2t)−3(2et−2e2t)+2(2et−e2t)=0y''-3y'+2y =(2e^t-4e^{2t})-3(2e^t-2e^{2t})+2(2e^t-e^{2t}) =0

であり、二つの初期条件も満たす。

例 3.3 (高階方程式の重根). 方程式

(D−1)3(D2+4)y=0(D-1)^3(D^2+4)y=0

の特性根は、重複度三の11と、重複度一の2i,−2i2i,-2iである。したがって実一般解は

y(t)=et(C0+C1t+C2t2)+C3cos⁡(2t)+C4sin⁡(2t)y(t) =e^t(C_0+C_1t+C_2t^2) +C_3\cos(2t)+C_4\sin(2t)

である。五つの関数は五階方程式の基本解系をなす。

特性多項式は斉次方程式の基本解系を決める。非同次項が加わると、すべての解はこの斉次解空間を平行移動した集合になる。次の記事では、基本解系による定数変化法と、定数係数方程式に対する未定係数法を導く。

4 演習

問題 4.1 (重根と複素根からの基本解系). 四階方程式

(D−1)2(D2+4)y=0(D-1)^2(D^2+4)y=0

の実一般解を求めよ。重根に対応する関数へ因子ttが現れる理由を特性根の重複度から説明し、各因子に対応する関数が元の微分作用素で消えることを確認せよ。

解答.

特性根は重複度二の11と、重複度一の2i,−2i2i,-2iである。したがって実一般解は

y(t)=et(C0+C1t)+C2cos⁡(2t)+C3sin⁡(2t)y(t)=e^t(C_0+C_1t)+C_2\cos(2t)+C_3\sin(2t)

である。根11の重複度が二であるため、ete^tに加えてtette^tが必要になる。移動公式から

(D−1)2(etq(t))=etD2q(t)(D-1)^2\bigl(e^tq(t)\bigr)=e^tD^2q(t)

である。q(t)=1,tq(t)=1,tでは右辺が零になるため、ete^tとtette^tは(D−1)2(D-1)^2で消える。また、

(D2+4)cos⁡(2t)=0,(D2+4)sin⁡(2t)=0(D^2+4)\cos(2t)=0,\qquad (D^2+4)\sin(2t)=0

であるから、余弦関数と正弦関数はD2+4D^2+4で消える。これら四つの実解は特性根の重複度から得られる基本解系である。四階方程式の解空間は四次元であるため、上の線形結合がすべての実解を与える。▨

問題 4.2 (特性根の合流と重根).λ∈R\lambda\in\Rを固定し、ε∈R∖{0}\varepsilon\in\R\setminus\{0\}に対して

uε(t)=e(λ+ε)t−eλtεu_\varepsilon(t) =\frac{e^{(\lambda+\varepsilon)t}-e^{\lambda t}}{\varepsilon}

と置く。任意の固定したt∈Rt\in\Rに対して

lim⁡ε→0uε(t)=teλt\lim_{\varepsilon\to0}u_\varepsilon(t)=te^{\lambda t}

であることを示せ。uεu_\varepsilonが満たす二階方程式はε\varepsilonに依存することを確認したうえで、極限として得た関数teλtte^{\lambda t}を重根の方程式

(D−λ)2y=0(D-\lambda)^2y=0

へ直接代入せよ。さらに、eλte^{\lambda t}とteλtte^{\lambda t}の Wronskian を計算し、この二関数が基本解系をなすことを示せ。

解答.

固定したt∈Rt\in\Rに対して、関数s↦ests\mapsto e^{st}のs=λs=\lambdaにおける微分係数から

lim⁡ε→0e(λ+ε)t−eλtε=eλtlim⁡ε→0eεt−1ε=teλt\lim_{\varepsilon\to0} \frac{e^{(\lambda+\varepsilon)t}-e^{\lambda t}}{\varepsilon} =e^{\lambda t}\lim_{\varepsilon\to0}\frac{e^{\varepsilon t}-1}{\varepsilon} =te^{\lambda t}

である。

eλte^{\lambda t}とe(λ+ε)te^{(\lambda+\varepsilon)t}は、それぞれ特性根λ\lambdaとλ+ε\lambda+\varepsilonに対応するため、uεu_\varepsilonは線形性により

(D−λ)(D−λ−ε)uε=0(D-\lambda)(D-\lambda-\varepsilon)u_\varepsilon=0

を満たす。この方程式はε\varepsilonに依存するので、上の点ごとの極限だけから極限関数が(D−λ)2y=0(D-\lambda)^2y=0を満たすと結論することはできない。

y(t)=teλty(t)=te^{\lambda t}と置くと

(D−λ)y=eλt,(D−λ)2y=(D−λ)eλt=0(D-\lambda)y=e^{\lambda t}, \qquad (D-\lambda)^2y=(D-\lambda)e^{\lambda t}=0

である。したがってteλtte^{\lambda t}は重根の方程式の解である。また、

W(eλt,teλt)(t)=∣eλtteλtλeλt(1+λt)eλt∣=e2λt≠0W(e^{\lambda t},te^{\lambda t})(t) = \begin{vmatrix} e^{\lambda t}&te^{\lambda t}\\ \lambda e^{\lambda t}&(1+\lambda t)e^{\lambda t} \end{vmatrix} =e^{2\lambda t}\ne0

が任意のt∈Rt\in\Rで成り立つ。よってeλte^{\lambda t}とteλtte^{\lambda t}は線形独立である。重根の方程式の実解空間は二次元であるから、この二関数は基本解系をなす。▨

参考文献

  1. Earl A. Coddington, An Introduction to Ordinary Differential Equations, Dover Publications, 1989, originally published 1961.定数係数線形方程式の特性多項式と重根に対応する解を参考にした。
  2. Gerald Teschl, Ordinary Differential Equations and Dynamical Systems, American Mathematical Society, Providence, Rhode Island, 2012.定係数作用素、複素基本解、実基本解への変換を参考にした。

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