§A5.17射影変換と無限遠直線

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射影変換とは、平面上の図を空間の一点から別の平面へ写す操作を有限回合成して得られる、平面から平面自身への変換です。

この変換は長さも角も保ちません。保つのは、点が直線上にあること、二直線が交わること、そして同一直線上の四点の複比(§A5.14 定義 1)です。保つものがこれだけであることは弱さではありません。保つものを絞ったぶん、変換で移すことのできる配置の幅が広がるので、証明したい主張が入射と複比だけで書かれているなら、扱いやすい配置へ移してから証明し、逆変換でもとへ戻すことができます。

この記事では、まず平行な直線の族ごとに一点を加えて平面を拡張します。拡張しておかないと、一点からの射影で像が定まらない点が現れ、変換が平面全体の写像になりません。

定義 1 (無限遠点と無限遠直線). 平面上で互いに平行な直線の全体を、一つの方向という。方向ごとに新しい点を一つ加え、その方向に属するすべての直線がその点を共有すると約束する。この新しい点を、その方向の無限遠点という。

無限遠点の全体を無限遠直線といい、これも一本の直線として扱う。もとの平面の点を有限点、もとの平面の直線に自分の方向の無限遠点を加えたものを有限直線と呼び、有限点と無限遠点を合わせた全体を拡張平面という。

定義 2 (一点からの射影と射影変換). 空間内の相異なる二平面π,π′\pi,\pi'と、そのどちらの上にもない点S\mathrm{S}をとる。π\piの拡張平面の点X\mathrm{X}に対して、次のようにπ′\pi'の拡張平面の点X′\mathrm{X}'を定める。

  • X\mathrm{X}が有限点であるとき、直線SX\mathrm{SX}がπ′\pi'と交わるならばその交点をX′\mathrm{X}'とし、交わらないならば直線SX\mathrm{SX}の方向の無限遠点をX′\mathrm{X}'とする。
  • X\mathrm{X}が方向ddの無限遠点であるとき、S\mathrm{S}を通り方向ddをもつ直線がπ′\pi'と交わるならばその交点をX′\mathrm{X}'とし、交わらないならば方向ddの無限遠点をX′\mathrm{X}'とする。

この対応X↦X′\mathrm{X}\mapsto\mathrm{X}'を、S\mathrm{S}を中心とするπ\piからπ′\pi'への一点からの射影という。

平面π\piから出発し、いくつかの平面を経由してπ\piへ戻る、一点からの射影の有限回の合成として得られる、π\piの拡張平面から自分自身への写像を射影変換という。

定理 3 (射影変換が保つもの(主定理)). 射影変換は拡張平面から自分自身への全単射であり、逆写像も射影変換である。射影変換は次を保つ。

  1. 直線を直線へ移す。点が直線上にあることと、その像が像の直線上にあることは同値である。
  2. 同一直線上の相異なる四点の複比を保つ。

とくに、二直線が平行であるという条件は、二直線の交点が無限遠点であるという入射の条件として書き直され、平行かどうかによる場合分けは、射影変換で配置を移すときに消える。

下の図は、直線上の四点が射影変換によって移る様子を示したものです。射影変換の強さを動かすことができます。

図で確かめることができるのは、有限個の位置について複比の値が一致することだけです。図を動かして値が一致して見えることは、すべての配置について複比が保たれることの証明ではありません。

主定理が述べる三つのこと、すなわち射影変換が拡張平面の全単射であって逆変換も射影変換であること、直線と入射関係を保つこと、複比を保つことは、以下の節で順に証明します。複比については、四点がすべて有限点である場合を先に扱い、無限遠点を含む場合を同次座標による節で扱います。

1 拡張平面では二直線がつねに一点で交わる

無限遠点を加えると、平面の点と直線の関係が場合分けなしに述べられるようになります。

定理 1.1 (二点を通る直線と、二直線の交点). 拡張平面において、相異なる二点を通る直線はただ一本あり、相異なる二直線の共有点はただ一点である。

証明. はじめに、相異なる二点X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}を通る直線を数える。

X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}がともに有限点であるとき、もとの平面で二点を通る直線がただ一本あり、それに自分の方向の無限遠点を加えた有限直線が二点を通る。無限遠直線は有限点を含まないので、条件を満たすのはこの一本だけである。

X\mathrm{X}が有限点で、Y\mathrm{Y}が方向ddの無限遠点であるとき、X\mathrm{X}を通り方向ddをもつ直線がただ一本あり、これはY\mathrm{Y}を含む。他の有限直線は方向がddと異なるのでY\mathrm{Y}を含まず、無限遠直線はX\mathrm{X}を含まない。

X,Y\mathrm{X},\mathrm{Y}がともに無限遠点であるとき、有限直線は無限遠点を一つしか含まないので、二点をともに含むのは無限遠直線だけである。

次に、相異なる二直線ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2の共有点を数える。

ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2がともに有限直線であるとき、平行でなければもとの平面でただ一点を共有し、方向が異なるので無限遠点は共有しない。平行であればもとの平面では共有点をもたず、方向が同じなので無限遠点をただ一つ共有する。

ℓ1\ell_1が有限直線でℓ2\ell_2が無限遠直線であるとき、共有点はℓ1\ell_1の方向の無限遠点ただ一つである。以上より、いずれの場合も共有点はただ一点である。▨

定理 1.2 (平行であることは交点が無限遠点であること). 拡張平面の相異なる二本の有限直線について、次の二つは同値である。

  1. もとの平面で二直線は平行である。
  2. 拡張平面での二直線の共有点は無限遠点である。

平行であるとき、共有点は二直線に共通する方向の無限遠点である。

証明.定理 1.1の証明の後半で、二本の有限直線が平行である場合の共有点が共通の方向の無限遠点であること、平行でない場合の共有点がもとの平面の点であることを示した。もとの平面の点は有限点なので、二つの条件は同値である。▨

この定理によって、「二直線は交わるか、平行である」という二つの場合が、「二直線はただ一点で交わり、その交点は有限点であるか無限遠点である」という一つの言い方にまとまります。

2 射影変換は直線と入射関係を保つ

以下の証明では、空間における平面と直線の位置関係について、次の二つの事実を用います。一つは、一点とその点を通らない直線がただ一つの平面を定めることであり、もう一つは、相異なる二平面が交わらないか、または一本の直線で交わることです。本単元は空間図形そのものを扱わないので、この二つは証明せずに認めて用います。本単元の中に委ね先はありません。

定理 2.1 (射影変換は直線を直線へ移す). 一点からの射影は、拡張平面の直線を拡張平面の直線へ移し、点が直線上にあることを保つ。したがって射影変換も、直線を直線へ移し、点が直線上にあることを保つ。

証明.S\mathrm{S}を中心とするπ\piからπ′\pi'への一点からの射影をとる。π\piの拡張平面の直線mmを一つとる。

第1の場合(mmが有限直線であるとき)。S\mathrm{S}はπ\pi上にないのでmm上にもない。したがってS\mathrm{S}とmmはただ一つの平面σ\sigmaを定める。S\mathrm{S}はπ′\pi'上にないので、σ\sigmaとπ′\pi'は一致しない。

σ\sigmaとπ′\pi'が一本の直線m′m'で交わるとする。mm上の有限点X\mathrm{X}に対して、直線SX\mathrm{SX}はσ\sigmaに含まれるので、π′\pi'との交点があればそれはσ\sigmaとπ′\pi'の共有点、すなわちm′m'上の点である。交点がない場合、像は直線SX\mathrm{SX}の方向の無限遠点である。この方向はσ\sigmaに平行であり、π′\pi'とも交わらないのでπ′\pi'にも平行である。σ\sigmaとπ′\pi'の交線はm′m'なので、両方に平行な方向はm′m'の方向だけであり、像はm′m'の無限遠点である。mmの無限遠点についても、S\mathrm{S}を通りその方向をもつ直線がσ\sigmaに含まれるので、同じ議論が通る。よってmmの像はm′m'に含まれる。

逆にm′m'上の点Y′\mathrm{Y}'をとる。Y′\mathrm{Y}'が有限点なら直線SY′\mathrm{SY}'を、Y′\mathrm{Y}'が無限遠点ならS\mathrm{S}を通りその方向をもつ直線をとると、この直線はσ\sigmaに含まれる。S\mathrm{S}はπ\pi上にないのでσ≠π\sigma\ne\piであり、σ\sigmaとπ\piの交線はmmである。したがって、この直線がπ\piと交わるならば交点はmm上にあり、交わらないならばその方向はmmの方向であって、mmの無限遠点の像がY′\mathrm{Y}'である。いずれの場合もY′\mathrm{Y}'はmmの点の像である。したがってmmの像はちょうどm′m'である。

σ\sigmaとπ′\pi'が交わらないとする。このときmm上のどの点についても、S\mathrm{S}を通る対応する直線はσ\sigmaに含まれ、π′\pi'と交わらない。したがって像はすべて無限遠点であり、mmの像はπ′\pi'の無限遠直線に含まれる。σ\sigmaに平行な方向のうちπ′\pi'に平行なものの全体がちょうどπ′\pi'の無限遠直線を与えるので、mmの像は無限遠直線そのものである。

第2の場合(mmがπ\piの無限遠直線であるとき)。mmの点はπ\piに平行な方向であり、その像は、S\mathrm{S}を通りその方向をもつ直線とπ′\pi'との交点である。S\mathrm{S}を通りπ\piに平行な直線の全体は、S\mathrm{S}を通りπ\piに平行な一つの平面τ\tauを作る。τ\tauとπ′\pi'が一本の直線で交わればその直線が像であり、交わらなければ像はπ′\pi'の無限遠直線である。第1の場合と同じ議論により、いずれのときも像は一本の直線である。

入射関係。いま示したとおり、直線mmの像は直線m′m'であり、対応はmmからm′m'の上への一対一の対応である。したがってX\mathrm{X}がmm上にあることと、X′\mathrm{X}'がm′m'上にあることは同値である。

射影変換は一点からの射影の有限回の合成なので、各段でこの性質が成り立ち、合成でも成り立つ。▨

定理 2.2 (逆変換も射影変換である). 一点からの射影は、拡張平面から拡張平面への全単射であり、その逆写像は、同じ点を中心とする逆向きの一点からの射影である。したがって射影変換は拡張平面の全単射であり、その逆写像も射影変換である。

証明.S\mathrm{S}を中心とするπ\piからπ′\pi'への一点からの射影をφ\varphi、S\mathrm{S}を中心とするπ′\pi'からπ\piへの一点からの射影をψ\psiとする。π\piの点X\mathrm{X}とその像X′=φ(X)\mathrm{X}'=\varphi(\mathrm{X})は、S\mathrm{S}を通る同一の直線の上にあるか、またはS\mathrm{S}を通る同一の方向に対応する。ψ\psiは同じ直線または同じ方向をたどってπ\piへ戻るので、ψ(X′)=X\psi(\mathrm{X}')=\mathrm{X}である。同じ理由でφ(ψ(Y′))=Y′\varphi(\psi(\mathrm{Y}'))=\mathrm{Y}'がπ′\pi'のすべての点について成り立つ。したがってφ\varphiは全単射であり、逆写像はψ\psiである。

射影変換T=φk∘⋯∘φ1T=\varphi_k\circ\cdots\circ\varphi_1に対して、ψ1∘⋯∘ψk\psi_1\circ\cdots\circ\psi_kが逆写像を与える。この写像も一点からの射影の有限回の合成であり、π\piから出発してπ\piへ戻るので、射影変換である。▨

3 射影変換は複比を保つ

複比の不変性は、一点からの射影を一本の直線へ制限すると、直線から直線への一点からの射影になることから従います。この段階で、複比の記事で証明した主定理をそのまま使うことができます。

定理 3.1 (射影変換は同一直線上の四点の複比を保つ).TTを射影変換とし、同一直線上の相異なる四点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}をとる。四点と、変換の各段での像がいずれも有限点であるならば

(T(A),T(B);T(C),T(D))=(A,B;C,D)(T(\mathrm{A}),T(\mathrm{B});T(\mathrm{C}),T(\mathrm{D})) =(\mathrm{A},\mathrm{B};\mathrm{C},\mathrm{D})

が成り立つ。

証明. 射影変換は一点からの射影の合成なので、一点からの射影について示せばよい。S\mathrm{S}を中心とするπ\piからπ′\pi'への一点からの射影をとり、四点を含むπ\piの有限直線をmm、その像をm′m'とする。定理 2.1の証明のとおり、m′m'はS\mathrm{S}とmmが定める平面σ\sigmaとπ′\pi'との交線である。

m=m′m=m'である場合、mmはπ\piとπ′\pi'の両方に含まれる。このときmm上の点X\mathrm{X}について、直線SX\mathrm{SX}とπ′\pi'の交点はX\mathrm{X}自身なので、四点は動かず、複比も変わらない。

m≠m′m\ne m'である場合、mmとm′m'はどちらも平面σ\sigmaに含まれる相異なる二直線であり、S\mathrm{S}はσ\sigmaに含まれ、π\pi上にもπ′\pi'上にもないのでmm上にもm′m'上にもない。mm上の点X\mathrm{X}の像は、直線SX\mathrm{SX}とm′m'の交点である。これは平面σ\sigmaの中でS\mathrm{S}を中心としてmmの点をm′m'へ写す、一点からの射影にほかならない。四点とその像がいずれも有限点であるという仮定のもとで、§A5.14 定理 2により複比は変わらない。▨

四点または像のいずれかが無限遠点である場合も複比は保たれます。この場合を扱うには、無限遠点を含む四点の複比を定める必要があるので、後半の同次座標による扱いへ回します。

4 平行な二直線を、有限の点で交わる二直線へ移す

射影変換で平行という条件が消える様子を、具体的に確かめます。

定理 4.1 (平行な二直線を交わる二直線へ移すことができる). 平面π\pi上の平行な相異なる二直線ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2に対して、ℓ1\ell_1の像とℓ2\ell_2の像が有限点で交わるような、π\piの射影変換が存在する。

証明.ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2の共通の方向をddとする。π\pi上にない点S1\mathrm{S}_1をとり、S1\mathrm{S}_1を通り方向ddをもつ直線をnnとする。nnはπ\piと交わらない。実際、nnがπ\piと交われば、nnはπ\piに平行でない方向をもつが、ddはπ\piに含まれる直線の方向なのでπ\piに平行であり、矛盾する。

次に、nnと一点V\mathrm{V}で交わり、S1\mathrm{S}_1を通らない平面π′\pi'をとる。π′\pi'はS1\mathrm{S}_1を通らず、π\piとも一致しない。S1\mathrm{S}_1を中心とするπ\piからπ′\pi'への一点からの射影で、ℓi\ell_iの像をℓi′\ell_i'とする。S1\mathrm{S}_1とℓi\ell_iが定める平面はnnを含むので、その平面とπ′\pi'の交線ℓi′\ell_i'はV\mathrm{V}を通る。したがってℓ1′\ell_1'とℓ2′\ell_2'はともにV\mathrm{V}を通る。二直線は相異なるので、定理 1.1により共有点はV\mathrm{V}ただ一点である。

最後に、π′\pi'からπ\piへ戻す。π′\pi'上になくπ\pi上にもない点S2\mathrm{S}_2を、直線S2V\mathrm{S}_2\mathrm{V}がπ\piと交わるように選ぶ。そのようなS2\mathrm{S}_2は存在する。実際、π\pi上の点W\mathrm{W}をV\mathrm{V}と異なるようにとり、直線VW\mathrm{VW}上でV\mathrm{V}ともW\mathrm{W}とも異なる点をS2\mathrm{S}_2とすればよい。ただしS2\mathrm{S}_2がπ\piにもπ′\pi'にも乗らないようにW\mathrm{W}を選ぶ。S2\mathrm{S}_2を中心とするπ′\pi'からπ\piへの一点からの射影で、V\mathrm{V}の像はW\mathrm{W}であり、これは有限点である。

二回の一点からの射影の合成はπ\piの射影変換であり、ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2の像は定理 2.1により直線であって、定理 2.2により相異なる。二つの像はともにW\mathrm{W}を通るので、有限点で交わる。▨

5 別の見方:同次座標と3次の行列

ここまでの証明は、平面と直線の位置関係だけを使い、座標を使っていません。同じ主張は、点に三つの数の組を割り当てる同次座標を導入すると、行列の計算として書き直すことができます。この書き直しによって、無限遠点を含む場合の複比まで一度に扱うことができます。この節の内容は主証明の代わりではなく、主証明の後に置く別の見方です。

定義 5.1 (実射影平面と同次座標).R3\mathbb{R}^3の00でないベクトルを、00でない実数倍の違いだけ同一視して得られる集合

P2(R)={[X:Y:Z]∣(X,Y,Z)≠(0,0,0), [X:Y:Z]=[λX:λY:λZ] (λ≠0)}\mathbb{P}^2(\mathbb{R}) =\{[X:Y:Z]\mid(X,Y,Z)\ne(0,0,0),\ [X:Y:Z]=[\lambda X:\lambda Y:\lambda Z]\ (\lambda\ne0)\}

を実射影平面といい、[X:Y:Z][X:Y:Z]を同次座標という。

空間に原点O\mathrm{O}を平面π\pi上にないようにとり、π\piがZ=1Z=1となるように座標を入れる。π\piの有限点(x,y)(x,y)に[x:y:1][x:y:1]を、方向(u,v)(u,v)の無限遠点に[u:v:0][u:v:0]を対応させると、π\piの拡張平面とP2(R)\mathbb{P}^2(\mathbb{R})は一対一に対応する。

この対応で、点の同次座標は、原点O\mathrm{O}から見たその点の方向を表します。Z≠0Z\ne0の同次座標[X:Y:Z][X:Y:Z]は[X/Z:Y/Z:1][X/Z:Y/Z:1]と書き直すことができるので有限点に対応し、Z=0Z=0のものはπ\piに平行な方向に対応するので無限遠点に対応します。原点O\mathrm{O}を通らない平面はどれも同じ方法でP2(R)\mathbb{P}^2(\mathbb{R})と対応するので、以下では平面を取り替えても同次座標をそのまま使います。

定義 5.2 (射影直線).(a,b,c)≠(0,0,0)(a,b,c)\ne(0,0,0)に対して

La,b,c={[X:Y:Z]∣aX+bY+cZ=0}L_{a,b,c}=\{[X:Y:Z]\mid aX+bY+cZ=0\}

を射影直線という。係数を00でない実数倍しても同じ集合である。

有限直線ax+by+c=0ax+by+c=0に対応するのはLa,b,cL_{a,b,c}です。実際、有限点[x:y:1][x:y:1]がこの集合に属することとax+by+c=0ax+by+c=0は同値であり、この直線の方向(b,−a)(b,-a)の無限遠点[b:−a:0][b:-a:0]についてはab+b(−a)+c⋅0=0ab+b(-a)+c\cdot0=0が成り立ちます。無限遠直線に対応するのはL0,0,1L_{0,0,1}です。逆に、どの射影直線もこのどちらかの形なので、拡張平面の直線と射影直線は一対一に対応します。

定義 5.3 (直線上の四点の複比(同次座標による表示)). 拡張平面の一本の直線LLをとる。LLに対応するR3\mathbb{R}^3の22次元部分空間の基底を一つ固定し、LL上の点の代表ベクトルを、その基底に関する成分によってR2\mathbb{R}^2のベクトルとして表す。R2\mathbb{R}^2の二つのベクトルに対して[u,v]=u0v1−u1v0[\boldsymbol u,\boldsymbol v]=u_0v_1-u_1v_0と書く。

LL上の相異なる四点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}の代表ベクトルをa,b,c,d\boldsymbol a,\boldsymbol b,\boldsymbol c,\boldsymbol dとするとき、複比を

(A,B;C,D)=[a,c][b,d][a,d][b,c](\mathrm{A},\mathrm{B};\mathrm{C},\mathrm{D}) =\frac{[\boldsymbol a,\boldsymbol c][\boldsymbol b,\boldsymbol d]} {[\boldsymbol a,\boldsymbol d][\boldsymbol b,\boldsymbol c]}

と定める。四点が相異なるので分母は00でない。

代表ベクトルをλ\lambda倍すると、分子と分母がともにλ\lambda倍になるので、値は代表ベクトルの選び方によりません。基底を取り替えると、四つの行列式がすべて同じ因子倍になり、分子と分母で相殺するので、値は基底の選び方にもよりません。四点がすべて有限点であるときは、基底を選んで代表ベクトルを(t,1)(t,1)の形にとると、[a,c]=a−c[\boldsymbol a,\boldsymbol c]=a-cなどから

(A,B;C,D)=(a−c)(b−d)(a−d)(b−c)=(c−a)(d−b)(c−b)(d−a)(\mathrm{A},\mathrm{B};\mathrm{C},\mathrm{D}) =\frac{(a-c)(b-d)}{(a-d)(b-c)} =\frac{(c-a)(d-b)}{(c-b)(d-a)}

となり、§A5.14 定義 1と同じ値になります。四点のうちに無限遠点があっても、この定義はそのまま使うことができます。

5.1 一点からの射影を行列で書く

定理 5.4 (一点からの射影を表す行列). 原点O\mathrm{O}を通らない空間の平面は、00でないベクトルm\boldsymbol mによって{v∣m⋅v=1}\{\boldsymbol v\mid\boldsymbol m\cdot\boldsymbol v=1\}と表される。相異なる二平面π,π′\pi,\pi'に対応するベクトルをm,m′\boldsymbol m,\boldsymbol m'とし、π\pi上にもπ′\pi'上にもない点S\mathrm{S}の位置ベクトルをs\boldsymbol sとする。

n=m′−m,c=1−m′⋅s\boldsymbol n=\boldsymbol m'-\boldsymbol m,\qquad c=1-\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol s

とおくと、S\mathrm{S}を中心とするπ\piからπ′\pi'への一点からの射影は、同次座標では

[v]⟼[Av],Av=c v+(n⋅v) s[\boldsymbol v]\longmapsto[A\boldsymbol v], \qquad A\boldsymbol v=c\,\boldsymbol v+(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v)\,\boldsymbol s

と表される。AAは可逆である。

証明. まずc≠0c\ne0である。c=0c=0はm′⋅s=1\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol s=1、すなわちS\mathrm{S}がπ′\pi'上にあることを意味するからである。同様にc+n⋅s=1−m⋅s≠0c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol s=1-\boldsymbol m\cdot\boldsymbol s\ne0である。

可逆性。Bv=1c(v−(n⋅v)sc+n⋅s)\displaystyle B\boldsymbol v=\frac1c\left(\boldsymbol v-\frac{(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v)\boldsymbol s}{c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol s}\right)とおく。α=(n⋅v)/(c+n⋅s)\alpha=(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v)/(c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol s)と書くとBv=(v−αs)/cB\boldsymbol v=(\boldsymbol v-\alpha\boldsymbol s)/cであり、

n⋅Bv=1c(n⋅v−α(n⋅s))=1c⋅(n⋅v) cc+n⋅s=α\boldsymbol n\cdot B\boldsymbol v =\frac1c\left(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v-\alpha(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol s)\right) =\frac1c\cdot\frac{(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v)\,c}{c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol s} =\alpha

となるので、A(Bv)=c⋅(v−αs)/c+αs=vA(B\boldsymbol v)=c\cdot(\boldsymbol v-\alpha\boldsymbol s)/c+\alpha\boldsymbol s=\boldsymbol vである。よってAAは可逆で、逆行列はBBである。

有限点の像。p\boldsymbol pをπ\piの有限点の位置ベクトルとするとm⋅p=1\boldsymbol m\cdot\boldsymbol p=1である。直線SP\mathrm{S}\mathrm{P}の点はs+t(p−s)\boldsymbol s+t(\boldsymbol p-\boldsymbol s)と書くことができる。これがπ′\pi'上にある条件はt m′⋅(p−s)=ct\,\boldsymbol m'\cdot(\boldsymbol p-\boldsymbol s)=cである。

m′⋅(p−s)≠0\boldsymbol m'\cdot(\boldsymbol p-\boldsymbol s)\ne0のとき、t=c/{m′⋅(p−s)}t=c/\{\boldsymbol m'\cdot(\boldsymbol p-\boldsymbol s)\}であり、像の位置ベクトルをm′⋅(p−s)\boldsymbol m'\cdot(\boldsymbol p-\boldsymbol s)倍すると

(m′⋅p−m′⋅s)s+c(p−s)=c p+(m′⋅p−1)s=c p+(n⋅p)s(\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p-\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol s)\boldsymbol s +c(\boldsymbol p-\boldsymbol s) =c\,\boldsymbol p+(\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p-1)\boldsymbol s =c\,\boldsymbol p+(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol p)\boldsymbol s

となる。最後の等号ではm⋅p=1\boldsymbol m\cdot\boldsymbol p=1を使った。同次座標は00でない実数倍を同一視するので、像の同次座標は[Ap][A\boldsymbol p]である。

m′⋅(p−s)=0\boldsymbol m'\cdot(\boldsymbol p-\boldsymbol s)=0のとき、直線SP\mathrm{SP}はπ′\pi'と交わらず、像は方向p−s\boldsymbol p-\boldsymbol sの無限遠点、すなわち[p−s][\boldsymbol p-\boldsymbol s]である。このときn⋅p=m′⋅p−1=m′⋅s−1=−c\boldsymbol n\cdot\boldsymbol p=\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p-1 =\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol s-1=-cなのでAp=c(p−s)A\boldsymbol p=c(\boldsymbol p-\boldsymbol s)であり、やはり像の同次座標は[Ap][A\boldsymbol p]である。

無限遠点の像。p\boldsymbol pをπ\piに平行な00でないベクトルとするとm⋅p=0\boldsymbol m\cdot\boldsymbol p=0であり、n⋅p=m′⋅p\boldsymbol n\cdot\boldsymbol p=\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol pである。S\mathrm{S}を通り方向p\boldsymbol pをもつ直線の点はs+tp\boldsymbol s+t\boldsymbol pであり、π′\pi'上にある条件はt m′⋅p=ct\,\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p=cである。m′⋅p≠0\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p\ne0のとき、像の位置ベクトルをm′⋅p\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p倍すると(m′⋅p)s+c p=Ap(\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p)\boldsymbol s+c\,\boldsymbol p=A\boldsymbol pとなる。m′⋅p=0\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol p=0のとき、像は方向p\boldsymbol pの無限遠点であり、Ap=c pA\boldsymbol p=c\,\boldsymbol pなので同じ点を表す。▨

5.2 射影変換と可逆な3次行列

定理 5.5 (射影変換と可逆な3次行列). 拡張平面から自分自身への写像TTについて、次の二つは同値である。

  1. TTは射影変換である。
  2. ある可逆な実3次行列MMがあって、TTは同次座標で[v]↦[Mv][\boldsymbol v]\mapsto[M\boldsymbol v]と表される。

証明. 1 から 2。定理 5.4により、一点からの射影は可逆な行列が定める写像で表される。合成は行列の積が定める写像であり、可逆な行列の積は可逆である。

2 から 1。まず、可逆な行列は基本行列の積として書くことができる。これは行列の基本変形の性質であり、本記事は証明せずに用いる。この事実は「線形代数 I」が扱う。次に、3次の基本行列は、単位行列をEEとして、いずれもcE+w tncE+\boldsymbol w\,{}^t\boldsymbol nの形、すなわち

v⟼c v+(n⋅v) w\boldsymbol v\longmapsto c\,\boldsymbol v+(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v)\,\boldsymbol w

の形をしている。実際、第ii行と第jj行を入れ替える行列はw=ej−ei\boldsymbol w=\boldsymbol e_j-\boldsymbol e_i、n=ei−ej\boldsymbol n=\boldsymbol e_i-\boldsymbol e_j、c=1c=1として得られ、第ii行をλ\lambda倍する行列はw=(λ−1)ei\boldsymbol w=(\lambda-1)\boldsymbol e_i、n=ei\boldsymbol n=\boldsymbol e_i、c=1c=1として得られ、第jj行のκ\kappa倍を第ii行へ加える行列はw=κei\boldsymbol w=\kappa\boldsymbol e_i、n=ej\boldsymbol n=\boldsymbol e_j、c=1c=1として得られる。

そこで、Nv=c v+(n⋅v)wN\boldsymbol v=c\,\boldsymbol v+(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v)\boldsymbol wが可逆であるとして、NNが定める写像が二回の一点からの射影の合成として得られることを示す。c=0c=0ならばNvN\boldsymbol vはつねにw\boldsymbol wの実数倍になって可逆でないので、c≠0c\ne0である。またc+n⋅w=0c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w=0とすると、w=0\boldsymbol w=\boldsymbol 0のときはc=0c=0となって矛盾するのでw≠0\boldsymbol w\ne\boldsymbol 0であり、Nw=(c+n⋅w)w=0N\boldsymbol w=(c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w)\boldsymbol w=\boldsymbol 0となってNNが可逆であることに反する。よってc+n⋅w≠0c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w\ne0である。

π\piをm\boldsymbol mに対応する平面とする。原点O\mathrm{O}はどの平面{m′′⋅v=1}\{\boldsymbol m''\cdot\boldsymbol v=1\}の上にもないので、O\mathrm{O}を中心とするπ\piから別の平面π′\pi'への一点からの射影を考えることができる。この射影では、点とその像が原点から見て同じ方向にあるので、同次座標は変わらない。すなわち、この射影が定める行列は単位行列である。

次に、π′\pi'をm′=m−tn\boldsymbol m'=\boldsymbol m-t\boldsymbol n(t≠0t\ne0)に対応する平面とし、s=λw/t\boldsymbol s=\lambda\boldsymbol w/tを位置ベクトルとする点S\mathrm{S}を中心として、π′\pi'からπ\piへ射影する。定理 5.4を、始めの平面がπ′\pi'、行き先の平面がπ\piである場合に用いると、この射影が定める写像は

v⟼c2 v+{(m−m′)⋅v}s=c2 v+λ(n⋅v)w,c2=1−m⋅s\boldsymbol v\longmapsto c_2\,\boldsymbol v+\{(\boldsymbol m-\boldsymbol m')\cdot\boldsymbol v\}\boldsymbol s =c_2\,\boldsymbol v+\lambda(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol v)\boldsymbol w, \qquad c_2=1-\boldsymbol m\cdot\boldsymbol s

である。これがλN\lambda Nと一致することはc2=λcc_2=\lambda cと同値であり、c2=1−λ(m⋅w)/tc_2=1-\lambda(\boldsymbol m\cdot\boldsymbol w)/tだから、条件はλ(ct+m⋅w)=t\lambda(ct+\boldsymbol m\cdot\boldsymbol w)=tと書き直される。

そこでttを、t≠0t\ne0、ct+m⋅w≠0ct+\boldsymbol m\cdot\boldsymbol w\ne0、m−tn≠0\boldsymbol m-t\boldsymbol n\ne\boldsymbol 0を満たすように選ぶ。除かれるttの値は有限個なので、このようなttが存在する。λ=t/(ct+m⋅w)\lambda=t/(ct+\boldsymbol m\cdot\boldsymbol w)とおくとλ≠0\lambda\ne0であり、c2=λcc_2=\lambda cが成り立つ。

S\mathrm{S}がπ\pi上にもπ′\pi'上にもないことを確かめる。m⋅s=1−c2=1−λc\boldsymbol m\cdot\boldsymbol s=1-c_2=1-\lambda cであり、λ≠0\lambda\ne0、c≠0c\ne0なのでm⋅s≠1\boldsymbol m\cdot\boldsymbol s\ne1である。またn⋅s=λ(n⋅w)/t\boldsymbol n\cdot\boldsymbol s=\lambda(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w)/tだから

m′⋅s=m⋅s−t(n⋅s)=1−λc−λ(n⋅w)=1−λ(c+n⋅w)\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol s =\boldsymbol m\cdot\boldsymbol s-t(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol s) =1-\lambda c-\lambda(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w) =1-\lambda(c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w)

であり、c+n⋅w≠0c+\boldsymbol n\cdot\boldsymbol w\ne0なのでm′⋅s≠1\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol s\ne1である。π≠π′\pi\ne\pi'もtn≠0t\boldsymbol n\ne\boldsymbol 0から従う。

以上により、π\piからπ′\pi'へ原点を中心として射影し、次にπ′\pi'からπ\piへS\mathrm{S}を中心として射影する合成が、NNが定める写像に一致する。可逆な行列MMを基本行列の積M=E1E2⋯ErM=E_1E_2\cdots E_rと書き、各EiE_iについてこの二回の射影を用意して順に合成すれば、MMが定める写像が射影変換であることが得られる。▨

この定理によって、行列を書き下すことで射影変換を作ることができるようになります。回転や平行移動を表す可逆な行列も、この定理により射影変換を定めます。

5.3 複比の不変性の別証明

定理 5.6 (射影変換による複比の保存(行列による別証明)). 可逆な実3次行列MMが定める射影変換が、同一直線上の相異なる四点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}をそれぞれA′,B′,C′,D′\mathrm{A}',\mathrm{B}',\mathrm{C}',\mathrm{D}'へ移すとき

(A′,B′;C′,D′)=(A,B;C,D)(\mathrm{A}',\mathrm{B}';\mathrm{C}',\mathrm{D}')=(\mathrm{A},\mathrm{B};\mathrm{C},\mathrm{D})

が成り立つ。四点または像のうちに無限遠点があっても成り立つ。

証明. 四点を含む直線に対応するR3\mathbb{R}^3の22次元部分空間をUUとし、その基底をe0,e1\boldsymbol e_0,\boldsymbol e_1とする。MMは可逆なのでM(U)M(U)も22次元部分空間であり、Me0,Me1M\boldsymbol e_0,M\boldsymbol e_1はその基底である。像の四点はこの部分空間に対応する直線の上にある。

UUの点の代表をa=uAe0+vAe1\boldsymbol a=u_A\boldsymbol e_0+v_A\boldsymbol e_1のように書くと、その像の代表はMa=uA(Me0)+vA(Me1)M\boldsymbol a=u_A(M\boldsymbol e_0)+v_A(M\boldsymbol e_1)である。すなわち、基底Me0,Me1M\boldsymbol e_0,M\boldsymbol e_1に関する成分は、もとの成分(uA,vA)(u_A,v_A)と同じである。したがって定義 5.3に現れる四つの行列式は、変換の前後で同じ値になり、複比も同じ値になる。像の直線で別の基底を選んだ場合は、四つの行列式がすべて同じ因子倍になり、分子と分母で相殺する。

この計算は、点が有限点であるか無限遠点であるかを一度も使っていないので、無限遠点を含む場合もそのまま成り立つ。▨

定理 5.7 (平行な二直線を有限の点で交わる二直線へ移す行列).s≠0s\ne0とし、

Ms=(1000100s1)M_s=\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&s&1\end{pmatrix}

とする。MsM_sは可逆なので射影変換を定める。アフィン座標で直線x=ax=a(a∈Ra\in\mathbb{R})の像は直線x+asy=ax+asy=aであり、aaの値が異なるこれらの像は、いずれも有限点

Qs=(0,1/s)\mathrm{Q}_s=(0,1/s)

を通る。もとの直線の族に共通する無限遠点[0:1:0][0:1:0]の像がQs\mathrm{Q}_sである。

証明.MsM_sは下三角行列であって対角成分がすべて11なので、行列式は11であり可逆である。よって定理 5.5により射影変換を定める。

直線x=ax=aに対応する射影直線はX−aZ=0X-aZ=0である。像の点を(X′,Y′,Z′)=Ms(X,Y,Z)(X',Y',Z')=M_s(X,Y,Z)と書くとX′=XX'=X、Y′=YY'=Y、Z′=sY+ZZ'=sY+Zなので、Z=Z′−sY′Z=Z'-sY'を代入して

X′+asY′−aZ′=0X'+asY'-aZ'=0

を得る。Z′≠0Z'\ne0のアフィン座標で割ると、像の直線はx+asy=ax+asy=aである。ここへQs=(0,1/s)\mathrm{Q}_s=(0,1/s)を代入すると0+as(1/s)=a0+as(1/s)=aとなるので、aaの値によらずQs\mathrm{Q}_sを通る。

もとの直線の族に共通する無限遠点は[0:1:0][0:1:0]であり、Ms[0:1:0]=[0:1:s]=[0:1/s:1]M_s[0:1:0]=[0:1:s]=[0:1/s:1]なので、その像はQs\mathrm{Q}_sである。▨

下の図は、この変換で二本の平行な直線が有限の点で交わる二直線へ移る様子を示したものです。

この図は、一つの行列についての実演です。図で二直線が同じ点を通って見えることは、すべてのssについて共点になることの証明ではありません。根拠は上の証明です。

6 扱いやすい配置へ移して証明する手順

射影変換で保たれるものが分かったので、証明を配置ごと移すことができます。

定理 6.1 (入射と複比の主張は射影変換で運ぶことができる). ある配置についての主張が、「指定した点が指定した直線上にある」「指定した二直線が指定した点で交わる」および「指定した四点の複比が指定した値である」という事実の組み合わせだけで書かれているとする。射影変換で移した配置でその主張が成り立つならば、もとの配置でも成り立つ。

証明.定理 2.2により、射影変換は拡張平面の全単射であり、逆写像も射影変換である。定理 2.1により、射影変換とその逆変換は直線を直線へ移し、点が直線上にあることを保つ。二直線の交点についても、定理 1.1により共有点はただ一点なので、交点の像は像の交点である。また定理 5.6により、同一直線上の相異なる四点の複比は、無限遠点を含む場合も保たれる。

したがって、移した配置で成り立つ各事実に逆変換を施すと、もとの配置の対応する事実が得られる。▨

この運び方を使うときは、移した先で何が保たれるかを最初に確かめてください。長さ、角の大きさ、二直線が平行であることは、一般の射影変換では保たれないので、これらを含む結論をもとの配置へ戻すことはできません。円が円へ移ることも一般には成り立ちません。

参考文献

  1. H. S. M. Coxeter, Projective Geometry, 2nd ed., Springer, New York, 1987.

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