§A5.1三角形の相似条件と、相似を使った証明

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三角形の相似条件と、相似を使った証明では、対応する角と辺の比によって二つの三角形が相似かどうかを判定し、平行線が作る相似から辺の比の等式を導きます。

1 この記事で証明すること

この記事では、非退化な三角形を扱い、通常の角を半直線がつくる0°0°以上180°180°以下の小さい方の角として、 AA と平行線による比を本文で証明します。

  • 三角形の相似条件:2角相等(AA)を本文で証明します。SAS・SSSは標準的な別結果として紹介しますが、この記事では完全証明を掲げません(定理 3.1)。
  • 平行線による辺の比:三角形の1辺に平行な直線を引くと、その平行線が両側の辺を切る比と、平行線どうしの辺の比がすべて等しくなります(定理 2.1)。

定理 1.1 (三角形の相似と平行線(主定理)). 非退化な△ABC\triangle\mathrm{ABC}の辺AB,AC\mathrm{AB},\mathrm{AC}の内部点をそれぞれD,E\mathrm{D},\mathrm{E}とする。∠ADE=∠ABC\angle\mathrm{ADE}=\angle\mathrm{ABC}かつ∠AED=∠ACB\angle\mathrm{AED}=\angle\mathrm{ACB}なら△ADE∼△ABC\triangle\mathrm{ADE}\sim\triangle\mathrm{ABC}。特にDE∥BC\mathrm{DE}\parallel\mathrm{BC}ならこの条件が成り立つ。

2 相似はどこから来るのか——平行線

相似を自分で作り出す、いちばん基本的な方法が平行線です。三角形の1辺に平行な直線を引くと、小さな相似三角形が切り出されます。

下の図で、スライダーを動かして平行線 DE を上下させてください。DE\mathrm{DE}がBC\mathrm{BC}と平行である限り、△ADE\triangle \mathrm{ADE}は△ABC\triangle \mathrm{ABC}と相似で、3つの比ADAB\dfrac{\mathrm{AD}}{\mathrm{AB}}、AEAC\dfrac{\mathrm{AE}}{\mathrm{AC}}、DEBC\dfrac{\mathrm{DE}}{\mathrm{BC}}はつねに等しく保たれます。

この図は0<AD/AB<10<\mathrm{AD}/\mathrm{AB}<1の範囲だけを表示しています。平行線と相似の関係を図から予想できますが、図を動かした有限個の配置は証明ではありません。まず、相似を使わずに平行線による比を証明します。

定理 2.1 (平行線による辺の比).△ABC\triangle \mathrm{ABC}の辺AB\mathrm{AB}の内部点D\mathrm{D}、辺AC\mathrm{AC}の内部点E\mathrm{E}について、DE∥BC\mathrm{DE} \parallel \mathrm{BC}ならばADAB=AEAC=DEBC.\frac{\mathrm{AD}}{\mathrm{AB}} = \frac{\mathrm{AE}}{\mathrm{AC}} = \frac{\mathrm{DE}}{\mathrm{BC}}.

証明. 平行線DE,BC\mathrm{DE},\mathrm{BC}から点B,C\mathrm{B},\mathrm{C}までの距離は等しい。三角形XYZ\mathrm{XYZ}の面積を[XYZ][\mathrm{XYZ}]と書く。△ADE\triangle \mathrm{ADE}と△BDE\triangle \mathrm{BDE}は直線AB\mathrm{AB}への高さが等しく、△ADE\triangle \mathrm{ADE}と△CDE\triangle \mathrm{CDE}は直線AC\mathrm{AC}への高さが等しい。また、DE∥BC\mathrm{DE}\parallel \mathrm{BC}だから、△BDE\triangle \mathrm{BDE}と△CDE\triangle \mathrm{CDE}は共通の底辺DE\mathrm{DE}に対する高さが等しい。したがって

ADDB=[ADE][BDE]=[ADE][CDE]=AEEC.\frac{\mathrm{AD}}{\mathrm{DB}} =\frac{[\mathrm{ADE}]}{[\mathrm{BDE}]} =\frac{[\mathrm{ADE}]}{[\mathrm{CDE}]} =\frac{\mathrm{AE}}{\mathrm{EC}}.

E\mathrm{E}を通ってAB\mathrm{AB}に平行な直線とBC\mathrm{BC}との交点をF\mathrm{F}とする。同じ面積比の議論を△CBA\triangle \mathrm{CBA}に用いるとCEEA=CFFB\frac{\mathrm{CE}}{\mathrm{EA}}=\frac{\mathrm{CF}}{\mathrm{FB}}となる。r=AD/DBr=\mathrm{AD}/\mathrm{DB}とおけば、以上の二つの等式からr=AE/EC=FB/FCr=\mathrm{AE}/\mathrm{EC}=\mathrm{FB}/\mathrm{FC}を得る。一方、四角形DBFE\mathrm{DBFE}は平行四辺形だからDE=BF\mathrm{DE}=\mathrm{BF}である。ゆえに

ABAD=r+1r=ACAE=BCDE.\frac{\mathrm{AB}}{\mathrm{AD}} =\frac{r+1}{r} =\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{AE}} =\frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{DE}}.

各比の逆数をとれば結論を得る。▨

DE∥BC\mathrm{DE} \parallel \mathrm{BC}なら、平行線の同位角から∠ADE=∠ABC\angle \mathrm{ADE} = \angle \mathrm{ABC}、∠AED=∠ACB\angle \mathrm{AED} = \angle \mathrm{ACB}です。次に、この角の情報と、いま証明した辺の比を用いて AA を証明します。

3 相似条件

三角形が相似かどうかは、6つの要素(3辺・3角)を全部調べなくても、次のどれか1つで判定できます。

定理 3.1 (三角形の相似条件). 2つの非退化な三角形について、2組の通常の角がそれぞれ等しければ、それらは相似である(AA)。

SAS(2辺の比と間の角)および SSS(3辺の比)も相似判定条件として知られているが、この記事ではその完全証明を行わず、以下の証明と問題ではAAだけを使う。

証明. 非退化な△ABC\triangle \mathrm{ABC}と△A1B1C1\triangle \mathrm{A_1B_1C_1}について∠A=∠A1\angle \mathrm{A}=\angle \mathrm{A_1}、∠B=∠B1\angle \mathrm{B}=\angle \mathrm{B_1}とする。二つの三角形を必要なら入れ替えてAB≥A1B1\mathrm{AB}\geq \mathrm{A_1B_1}としてよい。AB=A1B1\mathrm{AB}=\mathrm{A_1B_1}なら、角辺角の合同条件により二つの三角形は合同だから結論を得る。

AB>A1B1\mathrm{AB}>\mathrm{A_1B_1}の場合、辺AB\mathrm{AB}の内部にAD=A1B1\mathrm{AD}=\mathrm{A_1B_1}となる点D\mathrm{D}をとり、D\mathrm{D}を通ってBC\mathrm{BC}に平行な直線とAC\mathrm{AC}との交点をE\mathrm{E}とする。平行線の同位角と仮定から

∠DAE=∠B1A1C1,∠ADE=∠A1B1C1.\angle \mathrm{DAE}=\angle \mathrm{B_1A_1C_1},\qquad \angle \mathrm{ADE}=\angle \mathrm{A_1B_1C_1}.

したがって角辺角の合同条件により△ADE≡△A1B1C1\triangle \mathrm{ADE}\equiv\triangle \mathrm{A_1B_1C_1}であり、AE=A1C1\mathrm{AE}=\mathrm{A_1C_1}、DE=B1C1\mathrm{DE}=\mathrm{B_1C_1}となる。定理 2.1を用いると

ABA1B1=ABAD=ACAE=BCDE=ACA1C1=BCB1C1.\frac{\mathrm{AB}}{\mathrm{A_1B_1}} =\frac{\mathrm{AB}}{\mathrm{AD}} =\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{AE}} =\frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{DE}} =\frac{\mathrm{AC}}{\mathrm{A_1C_1}} =\frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{B_1C_1}}.

また、内角の和は180°180°だから残る角も等しい。対応する角と辺の比がそれぞれ等しいので、定義により△ABC∼△A1B1C1\triangle \mathrm{ABC}\sim\triangle \mathrm{A_1B_1C_1}である。▨

合同条件(SSS・SAS・ASA)と見比べてください。合同では「2辺と間の角」でしたが、相似では「2辺の比と間の角」。長さそのものを比に置き換えると、合同条件がそのまま相似条件になります。とくに AA が最強です。角は2つ分かれば3つめは自動で決まる(内角の和が180°180°)ので、実戦では「2つの角が等しい」を見つけにいくのが定石になります。

4 相似を使った証明

相似の使いどころは、「等しい」を「比」に、あるいは「比」を「長さ」に翻訳するときです。上で証明した定理 2.1は、次項の中点連結定理や面積比の基礎になります。対応をA↔A\mathrm{A} \leftrightarrow \mathrm{A}、D↔B\mathrm{D} \leftrightarrow \mathrm{B}、E↔C\mathrm{E} \leftrightarrow \mathrm{C}の順に保つと、三つの比を正しく読み取ることができます。

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