§A5.6円の接線・接弦定理と、四点が同一円周上にある条件

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円の接線とは円とただ1点で交わる直線であり、円に内接する四角形とは4頂点が同一円周上にある四角形です。この記事では通常の角を半直線がつくる小さい方の角とし、四角形の主張では頂点を境界に沿ってA→B→C→D\mathrm{A}\to\mathrm{B}\to\mathrm{C}\to\mathrm{D}の順に並べた凸四角形を扱います。接線と弦の作る角を円周角へ読み替え、角の条件から「四点が同一円周上にある」と判定するのがこの記事の目標です。

定理 1 (接弦定理と四点共円(主定理)). 正の半径の円Γ\Gamma上の相異なる点A,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}と、A\mathrm{A}における接線ℓ\ellを考える。AB\mathrm{AB}に関するC\mathrm{C}と反対側の半直線上に点T\mathrm{T}をとれば∠TAB=∠ACB\angle\mathrm{TAB}=\angle\mathrm{ACB}。また、相異なる4点がこの順の凸四角形を作るとき、 4点が同一円周上にあることと∠ABC+∠CDA=180°\angle\mathrm{ABC}+\angle\mathrm{CDA}=180°は同値である。

1 この記事で証明すること

この記事では、次を証明します。

  • 接弦定理:接点で接線と弦が作る角は、その弦を反対側の弧から見込む円周角に等しいこと(定理 3.1)。
  • 円に内接する四角形の対角の和:四頂点が同一円周上にある四角形の向かい合う角の和は180°180°であること(定理 4.1)とその逆(定理 4.2)。
  • 四点共円の角による判定:基準の直線の同じ側では見込む角が等しく、反対側では和が180°180°になることが、4点が同一円周上にある条件であること(系 4.3)。

定義 1.1 (接線・弦・円に内接する四角形). 半径が正の円について、円とただ1点A\mathrm{A}だけを共有する直線を、その円の接線、A\mathrm{A}を接点という。円周上の相異なる2点を結ぶ線分を弦という。また、4つの相異なる頂点が1つの円周上にある四角形を、円に内接する四角形という。

接線は円を「横切らずに触れる」直線です。ただし、見た目の「触れる」ではなく、共有点がただ1つであることが定義です。まず、この定義を角の情報へ変えます。

補題 1.2 (接線と接点を通る半径). 中心O\mathrm{O}、半径r>0r>0の円周上の点A\mathrm{A}を通る直線ℓ\ellについて、次は同値である。

  1. ℓ\ellはA\mathrm{A}における円の接線である。
  2. OA⊥ℓ\mathrm{OA} \perp \ellである。

証明. まずℓ\ellが接線であるとする。O\mathrm{O}からℓ\ellに下ろした垂線の足をH\mathrm{H}とする。H≠A\mathrm{H} \ne \mathrm{A}なら、直角三角形△OHA\triangle \mathrm{OHA}でOH<OA=r\mathrm{OH}<\mathrm{OA}=rである。ℓ\ell上でH\mathrm{H}から両側へ

r2−OH2\sqrt{r^2-\mathrm{OH}^2}

だけ離れた2点は、三平方の定理によりどちらもO\mathrm{O}から距離rrにある。するとℓ\ellは円と2点で交わり、接線の定義に反する。よってH=A\mathrm{H}=\mathrm{A}、すなわちOA⊥ℓ\mathrm{OA}\perp\ellである。

逆にOA⊥ℓ\mathrm{OA}\perp\ellとする。ℓ\ell上のA\mathrm{A}でない任意の点X\mathrm{X}について、三平方の定理から

OX2=OA2+AX2>r2\mathrm{OX}^2=\mathrm{OA}^2+\mathrm{AX}^2>r^2

となる。したがってX\mathrm{X}は円周上にない。ℓ\ellと円の共有点はA\mathrm{A}だけなので、ℓ\ellはA\mathrm{A}における接線である。▨

2 動かして接弦定理を観察する

下の図で点P\mathrm{P}を円周上に沿ってドラッグしてください。接点A\mathrm{A}で接線ℓ\ellと弦AP\mathrm{AP}が作る角と、円周角∠AQP\angle \mathrm{AQP}には同じ印θ\thetaがついています。点P\mathrm{P}を直径の反対側まで動かしたときも比べてください。

図では2つの角が同じまま動きます。しかし、図の観察は証明ではありません。 ドラッグで調べられるのは選んだ有限個の配置だけです。すべての配置で等しい理由を、円周角の定理から示します。

3 接弦定理

定理 3.1 (接弦定理). 円周上の相異なる3点をA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}とし、ℓ\ellをA\mathrm{A}における接線とする。接線上のA\mathrm{A}と異なる点で、C\mathrm{C}と直線AB\mathrm{AB}の反対側にある点T\mathrm{T}をとる。このとき

∠TAB=∠ACB.\angle \mathrm{TAB}=\angle \mathrm{ACB}.

すなわち、接点A\mathrm{A}で接線と弦AB\mathrm{AB}が作る角は、直線AB\mathrm{AB}に関して接線半直線AT\mathrm{AT}と反対側の弧に頂点をもつ円周角に等しい。

証明の方針。 小さい方の中心角をφ\varphiとおきます。二等辺三角形△OAB\triangle \mathrm{OAB}から弦と半径の角を求め、半径と接線の直角を使って接弦角へ変えます。一方、円周角は§A5.5 定理 1.1により弧の中心角の半分です。点C\mathrm{C}が小さい弧と大きい弧のどちらにあるかで、両辺が同時に補角へ変わることまで確かめます。

証明. 円の中心をO\mathrm{O}とし、小さい方の中心角∠AOB\angle \mathrm{AOB}をφ\varphiとする。まずAB\mathrm{AB}が直径でない場合、0<φ<180°0<\varphi<180°である。OA=OB\mathrm{OA}=\mathrm{OB}より△OAB\triangle \mathrm{OAB}は二等辺三角形だから

∠OAB=180°−φ2=90°−φ2.\angle \mathrm{OAB}=\frac{180°-\varphi}{2}=90°-\frac{\varphi}{2}.

補題 1.2よりOA⊥ℓ\mathrm{OA}\perp\ellである。

C\mathrm{C}が大きい方の弧AB\mathrm{AB}上にあるとき、条件で選んだ半直線AT\mathrm{AT}と弦AB\mathrm{AB}の角は小さい方なので

∠TAB=90°−∠OAB=φ2.\angle \mathrm{TAB}=90°-\angle \mathrm{OAB}=\frac{\varphi}{2}.

また、∠ACB\angle \mathrm{ACB}が見込むのはC\mathrm{C}を含まない小さい方の弧AB\mathrm{AB}だから、§A5.5 定理 1.1より∠ACB=φ2\angle \mathrm{ACB}=\dfrac{\varphi}{2}である。

C\mathrm{C}が小さい方の弧AB\mathrm{AB}上にあるときは、指定された半直線AT\mathrm{AT}が反対向きになり、接弦角は先ほどの角の補角

∠TAB=180°−φ2\angle \mathrm{TAB}=180°-\frac{\varphi}{2}

となる。円周角が見込む弧も大きい方へ替わり、その中心角は360°−φ360°-\varphiなので、§A5.5 定理 1.1より

∠ACB=360°−φ2=180°−φ2.\angle \mathrm{ACB}=\frac{360°-\varphi}{2}=180°-\frac{\varphi}{2}.

よってこの場合も2角は等しい。

AB\mathrm{AB}が直径ならφ=180°\varphi=180°である。接線は直径AB\mathrm{AB}に垂直なので∠TAB=90°\angle \mathrm{TAB}=90°、また§A5.5 系 3.1より∠ACB=90°\angle \mathrm{ACB}=90°である。以上ですべての場合を尽くした。▨

接弦定理は円周角の定理と別々の暗記項目ではありません。半径と接線の直角を1つ挟むことで、円周角の一方の頂点を接点まで移した形になっています。ただし「移した極限だから」と言うだけでは証明にならず、上の二等辺三角形の角計算がその根拠です。

4 円に内接する四角形

定理 4.1 (内接四角形の対角の和). 相異なる4点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}がこの順に1つの円周上にあるなら、四角形ABCD\mathrm{ABCD}の対角の和は

∠ABC+∠CDA=180°,∠BAD+∠BCD=180°\angle \mathrm{ABC}+\angle \mathrm{CDA}=180°,\qquad \angle \mathrm{BAD}+\angle \mathrm{BCD}=180°

である。

証明の方針。 1つの対角が見込む弧と、もう1つの対角が見込む弧を合わせると円周全体になります。円周角は対応する弧の中心角の半分なので、和は360°360°の半分です。

証明.∠ABC\angle \mathrm{ABC}が見込む、B\mathrm{B}を含まない弧ADC\mathrm{ADC}の中心角の大きさをα\alpha、∠CDA\angle \mathrm{CDA}が見込む、D\mathrm{D}を含まない弧CBA\mathrm{CBA}の中心角の大きさをβ\betaとする。 2つの弧は円周全体を分けるのでα+β=360°\alpha+\beta=360°である。§A5.5 定理 1.1より

∠ABC+∠CDA=α2+β2=360°2=180°.\angle \mathrm{ABC}+\angle \mathrm{CDA} =\frac{\alpha}{2}+\frac{\beta}{2} =\frac{360°}{2}=180°.

A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}を1つずつ巡回させれば、もう一組の対角についても同じである。▨

逆も成り立ちます。ここで「四角形」を凸四角形に限定することが、点の並びと内角を曖昧にしないために重要です。

定理 4.2 (内接四角形の対角和の逆).A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}をこの順に頂点とする凸四角形について、

∠ABC+∠CDA=180°\angle \mathrm{ABC}+\angle \mathrm{CDA}=180°

ならば、4点A,B,C,D\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C},\mathrm{D}は同一円周上にある。

証明の方針。 まずA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}を通る円を描き、D\mathrm{D}と同じ側の弧に補助点D′\mathrm{D}'をとります。順方向の定理から∠AD′C\angle \mathrm{AD'C}を計算すると∠ADC\angle \mathrm{ADC}と等しくなります。最後に円周角の定理の逆を使って、D\mathrm{D}もその円へ戻します。

証明. 凸四角形なのでA,B,C\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}は同一直線上になく、この3点を通る円Γ\Gammaがただ1つ存在する。実際、辺AB\mathrm{AB}とBC\mathrm{BC}の垂直二等分線は平行でないので1点で交わり、その交点が3点から等距離にある。中心はこの2直線の交点でなければならないから一意でもある。

凸性よりB\mathrm{B}とD\mathrm{D}は直線AC\mathrm{AC}の反対側にある。円Γ\GammaのD\mathrm{D}側の弧AC\mathrm{AC}上に点D′\mathrm{D}'をとる。定理 4.1と仮定から

∠AD′C=180°−∠ABC=∠ADC.\angle \mathrm{AD'C}=180°-\angle \mathrm{ABC}=\angle \mathrm{ADC}.

D=D′\mathrm{D}=\mathrm{D}'なら結論は明らかである。そうでなければD,D′\mathrm{D},\mathrm{D}'は直線AC\mathrm{AC}の同じ側にあり、線分AC\mathrm{AC}を見込む角が等しい。したがって§A5.5 定理 4.1よりA,C,D,D′\mathrm{A},\mathrm{C},\mathrm{D},\mathrm{D}'は同一円周上にある。その円は相異なる3点A,C,D′\mathrm{A},\mathrm{C},\mathrm{D}'を通るので、一意性によりΓ\Gammaである。よってD\mathrm{D}もΓ\Gamma上にある。▨

系 4.3 (四点共円の角による判定). 相異なる2点A,B\mathrm{A},\mathrm{B}と、直線AB\mathrm{AB}上にない相異なる2点P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}をとる。

  • P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}が直線AB\mathrm{AB}の同じ側にあるとき、4点が同一円周上にあるための必要十分条件は∠APB=∠AQB\angle \mathrm{APB}=\angle \mathrm{AQB}である。
  • P,Q\mathrm{P},\mathrm{Q}が直線AB\mathrm{AB}の反対側にあるとき、4点が同一円周上にあるための必要十分条件は∠APB+∠AQB=180°\angle \mathrm{APB}+\angle \mathrm{AQB}=180°である。

証明. 同じ側の場合、必要性は§A5.5 定理 1.1、十分性は§A5.5 定理 4.1そのものである。

反対側の場合、4点が同一円周上なら2角が見込む2つの弧AB\mathrm{AB}は円周全体を分けるので、§A5.5 定理 1.1により和は180°180°である。逆に和が180°180°なら、A,B,P\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P}を通る円のQ\mathrm{Q}側の弧に点Q′\mathrm{Q}'をとる。順方向から

∠AQ′B=180°−∠APB=∠AQB.\angle \mathrm{AQ'B}=180°-\angle \mathrm{APB}=\angle \mathrm{AQB}.

Q,Q′\mathrm{Q},\mathrm{Q}'は直線AB\mathrm{AB}の同じ側なので、両点が異なるときは§A5.5 定理 4.1によりQ\mathrm{Q}もこの円周上にある。両点が一致するときは初めから円周上にある。▨

5 適用条件と縮退

  • 接弦定理では、接点が弦の一端A\mathrm{A}と一致することが標準の配置です。これは縮退ではありません。ただし他端B\mathrm{B}までA\mathrm{A}と一致すると弦の長さが00になり、接線との角も定義できません。
  • 弦AB\mathrm{AB}が直径になる配置は除外しません。証明で分けたとおり、接弦角と円周角はともに90°90°です。
  • 円周角の頂点C\mathrm{C}がA\mathrm{A}またはB\mathrm{B}と一致すると、角を作る半直線の一方が定まらないため、接弦定理は適用できません。
  • 正の半径を仮定しています。半径00の「円」では、接線をただ1本に決める議論が成立しません。
  • 対角和の逆は、4点が相異なり、この順で凸四角形を作る場合の主張です。点の一致、3点の一直線上、自己交差する並べ方では「対角」「内角」の意味が変わるので、そのまま適用しません。一般の配置では系 4.3の同じ側・反対側の判定を使います。

7 もう少し先へ

接線は、この先の射影幾何で現れる極線の出発点です。非退化な円錐曲線では、曲線上の点の極線がその点での接線になります。ここで使った「接点・弦・四点共円」の関係は、方べき、極と極線、さらに射影変換へ進むと、点と直線の対応としてまとめ直されます。

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