正の底に対する指数は、整数から有理数へ、さらに実数へと広がりました。こうして定まったを関数とみなし、その逆関数として対数関数を定めると、指数法則、逆関数の関係、微分公式が一つの体系に結び付きます。ただし、この道筋には、本文で証明した事実と、実数の連続性に関わる認めごとが含まれます。
指数関数と対数関数の対応は、本単元の計算を支える基本的な構造です。本記事では、指数を広げた道筋をの定め方と二つの関数の関係に沿って整理し、得られた導関数と、認めて用いた事実の位置を明らかにします。
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正の底に対する指数は、整数から有理数へ、さらに実数へと広がりました。こうして定まったを関数とみなし、その逆関数として対数関数を定めると、指数法則、逆関数の関係、微分公式が一つの体系に結び付きます。ただし、この道筋には、本文で証明した事実と、実数の連続性に関わる認めごとが含まれます。
指数関数と対数関数の対応は、本単元の計算を支える基本的な構造です。本記事では、指数を広げた道筋をの定め方と二つの関数の関係に沿って整理し、得られた導関数と、認めて用いた事実の位置を明らかにします。
出発点は整数乗です。でない実数と整数に対してを定め(§B3.1 定義 1.1)、指数法則が整数の範囲で成り立つことを確かめました(§B3.1 定理 1.2)。
指数を有理数へ広げる段で、底を正の数に限りました。では負の指数が定まらず、では分母が偶数である既約分数の指数に対応する累乗根が実数の範囲にありません。既約分数の分母が奇数である有理数だけなら部分的に定めることができますが、同じ定義式を有理数全体へ適用することはできないからです(§B3.1 注意 1.3)。正の数と正の整数に対して乗するとになる正の数がただ一つ存在すること(§B3.1 定理 2.1)を根拠に累乗根を定め(§B3.1 定義 2.2)、と定めました(§B3.1 定義 3.1)。ここで確かめたのは、値が分数の表し方によらないこと(§B3.1 定理 3.2)と、指数法則および狭義単調性が有理数を指数とする場合にも成り立つこと(§B3.1 定理 4.1、§B3.1 定理 4.2)です。さらに、積・商・合成関数の微分法を用いて、の範囲でを導きました(§B3.1 定理 5.2)。
指数を実数へ広げる段では、指数を少し動かしたときに有理数乗がどれだけ変わるかを押さえる必要がありました。その評価を与えたのがベルヌーイの不等式です。と正の整数について(§B3.2 定理 2.1)を導き、これを用いて、指数の差が以下であるときの有理数乗の差を上から押さえました(§B3.3 定理 2.1)。この評価から、実数に収束する有理数の列をどのように取っても対応する有理数乗の列が同じ値に収束すること(§B3.3 定理 3.1)が従い、その極限としてを定めました(§B3.3 定義 4.1)。定めたあとに、指数が有理数であるときは従来の有理数乗と一致すること(§B3.3 定理 4.2)、指数について連続であること(§B3.3 定理 5.1)、および指数法則と狭義単調性(§B3.3 定理 6.1)を確かめました。
こうして実数全体で定まったを、底を固定して指数を動かす関数とみなしたものが指数関数です(§B3.4 定義 1.1)。狭義単調性と、値域が正の数全体になることを示し(§B3.4 定理 4.1)、この二つから指数を含む方程式と不等式を解く形を得ました(§B3.4 公式 5.1)。
この道筋では、指数を広げるたびに、指数法則と狭義単調性が広げた範囲でも成り立つことを確かめました。したがって、の意味を広げる段階ごとに、定義だけでなく、その範囲で成り立つ性質も改めて示しています。
導関数の定義に従っての差の商を書き下すと、指数法則によってが括り出され、残るのはをに近づけたときのの極限だけです(§B3.7 定理 1.1)。この極限はによらず、底だけで決まります。この極限がになる底としてを定めました(§B3.7 定理 2.1、§B3.7 定義 2.3)。
この定義と差の商の式から、が従います(§B3.8 定理 1.1)。
別の定め方では、数列の極限をとします。本単元では、その極限値が上のように定めたに一致することを、定理として示しました(§B3.7 定理 3.1)。変数を実数まで広げた場合も同じ値になること(§B3.7 定理 3.2)と、底がに近づき指数が限りなく大きくなる形の極限が式ごとに異なること(§B3.7 注意 3.3)も確かめました。二つの定め方の関係は§B3.7 注意 3.4にあります。
、とすると、指数関数は全単射です(§B3.5 定理 1.1)。したがって、全単射である写像には逆写像が定まること(§B2.7 定理 3.1)を用い、その逆写像として対数関数を定めました(§B3.5 定義 1.2)。この定義により、であることとであることは同値です。そこで、指数法則を読み替えて、積・商・累乗についての対数の性質(§B3.5 定理 2.1)と底の変換公式(§B3.5 公式 2.2)を導きました。また、指数関数の狭義単調性を逆関数に移すことで、対数関数の狭義単調性を得ました(§B3.5 定理 3.1)。
底をに取ると常用対数であり、以上の数の桁数(§B3.6 定理 1.1)と、より小さい正の数を小数で表したときにでない数字が最初に現れる位(§B3.6 定理 2.1)が、どちらもを超えない最大の整数から求まります。底をに取ると自然対数であり(§B3.9 定義 1.1)、とが互いに逆の対応であること(§B3.9 定理 1.3)と、一般の底の対数を自然対数の商へ直す形(§B3.9 公式 2.1)を得ました。
自然対数の導関数は、逆関数の微分法を証明経路には用いません。の連続性を先に示し、正の数における差の商を
へ直接書き直すことでを証明しました(§B3.10 定理 2.1)。証明後に逆関数の微分法(§B3.10 定理 1.1)を適用すると同じ値が得られ、この一致は§B3.10 注意 2.2が確かめています。
注意 3.1 (底の条件と真数条件). 本単元が扱った主張には、次の条件が伴う。式を変形する前に、これらを書き出す。
本単元が求めた導関数を並べます。いずれも既に各記事が証明したものであり、ここでの一覧は再掲です。
公式 4.1 (本単元で求めた導関数).
2 のは、「指数関数の微分」の段階ではを満たす実数として書かれていました(§B3.8 公式 2.2)。対数を定めたあとでであることを確かめ、という形に到達しました(§B3.10 公式 4.1)。
積、商、累乗が入り混じった式や、指数に変数が現れる式は、両辺の対数をとってから微分します(§B3.10 公式 5.1)。
本単元は、証明せずに認めて用いた事実を、そのつど各記事で明示してきました。以下がその一覧です。
注意 5.1 (本単元が認めて用いた事実と、その委ね先). 本単元が用いた事実のうち、中間値の定理(正の数の乗根が存在すること§B3.1 定理 2.1の 2 と、指数関数の値域が正の数全体になること§B3.4 定理 4.1の 3 の証明で用いた)と、広義単調増加であって上に有界な数列が収束すること(有理数乗の列の収束§B3.3 定理 3.1で用いた)は、認めごとではない。どちらも「極限の存在について」と「関数の極限」が、区間縮小法から証明している。自然対数が微分可能であることも認めごとではなく、「対数関数の微分」が、差の商をの形へ書き直して直接示している。そこで用いるの連続性は、中間値の定理から得られる全射性と§B3.10 定理 1.2による。区間縮小法は、その単元が実数の連続性について認める唯一の事実である。
次の三つは、本単元が認めて用いたものであり、本論の証明のなかで用いた。
次の一つは、話題として述べただけであり、本単元の以後の主張の根拠には用いていない。
認めて用いたのではなく、証明そのものを別の記事が与えているものもあります。ベルヌーイの不等式(§B3.2 定理 1.1)の証明は「数学的帰納法」の§B1.6 定理 3.1にあり、本単元はそれを応用しました。導関数の定義、積・商・合成関数の微分法(§B2.10 定理 2.1、§B2.10 定理 3.1、§B2.10 定理 4.1)、および全単射である写像に逆写像が定まること(§B2.7 定理 3.1)は「関数の性質」が証明しており、本単元はそれらを指数関数と対数関数へ適用しました。
とをともに満たす関数がのほかに無いことも、この型にあたります。「指数関数の微分」は§B3.8 注意 1.3でこの主張を述べるだけにとどめましたが、証明は同じ単元の「諸外国における指数関数の取り扱い」が§B3.12 定理 10.1として与えています。フランスの課程がこの特徴づけを指数関数の定義に採るため、各国の立場を比べる文脈で証明を置いたものです。
本単元が認めた実数の連続性と、を用いた収束の議論は「ε-論法と基礎解析」が扱います。同単元は、指数関数をべき級数として定義し直し、対数関数をその逆関数として定めることで、本単元が認めた事実に証明を与えます。
本単元が求めた導関数を出発点として、の不定積分や、指数関数と対数関数を含む定積分と面積の計算は「微積分」が扱います。変数を複素数まで広げた指数関数と対数は「複素解析」が扱います。また、平均と標準偏差だけで形が定まる分布として正規分布を扱う「場合の数と確率統計」は、そのグラフを与える式にを底とする指数関数を含むので、本単元の内容を前提とします。