§B3.3実数乗

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「有理数乗」は、a>0a>0と有理数rrに対してara^{r}を定めました。本記事は、指数を実数へ広げます。222^{\sqrt2}のように指数が無理数である値を、指数を無理数に近づけた有理数乗の極限として定めます。

方針は次のとおりです。まず、指数を少し動かしたときに有理数乗がどれだけ変わるかを、「ベルヌーイの不等式」で導いた評価によって上から押さえます。この評価から、実数xxに収束する有理数の列{rn}\{r_n\}をどのように取っても{arn}\{a^{r_n}\}が同じ値に収束することが分かるので、その極限をaxa^{x}と定めることができます。最後に、指数法則と狭義単調性が実数乗のままで成り立つことを、有理数の列を取って両辺で極限を取ることによって証明します。

本記事は、広義単調増加であって上に有界な数列が収束することを用います。この主張は「極限の存在について」が区間縮小法から証明しているので、認めごとではありません。認めて用いた箇所は注意 6.3にまとめます。

1 実数を有理数で近似する

指数を実数へ広げる作業は、実数を有理数で近似することから始まります。近似する列として、小数第nn位までを取った有限小数を用いることができます。

定理 1.1 (有限小数による近似).xxを実数とする。各正の整数nnについて、10nx10^{n}xを超えない最大の整数をknk_{n}とし、rn=kn10nr_{n} = \dfrac{k_{n}}{10^{n}}と定める。このとき次が成り立つ。

  1. rnr_{n}は有理数であり、rn≤x<rn+10−nr_{n} \le x < r_{n} + 10^{-n}を満たす。
  2. {rn}\{r_{n}\}は広義単調増加であり、xxに収束する。
  3. u<vu<vを満たす実数uu、vvに対して、u<r<vu<r<vを満たす有理数rrが存在する。

証明. 1 を示します。knk_{n}の取り方からkn≤10nx<kn+1k_{n} \le 10^{n}x < k_{n}+1です。各辺を正の数10n10^{n}で割るとrn≤x<rn+10−nr_{n} \le x < r_{n}+10^{-n}を得ます。knk_{n}は整数、10n10^{n}は正の整数ですからrnr_{n}は有理数です。

2 を示します。10n+1x=10⋅10nx≥10kn10^{n+1}x = 10\cdot 10^{n}x \ge 10k_{n}であり、10kn10k_{n}は整数です。kn+1k_{n+1}は10n+1x10^{n+1}xを超えない最大の整数ですからkn+1≥10knk_{n+1} \ge 10k_{n}であり、

rn+1=kn+110n+1≥10kn10n+1=rnr_{n+1} = \frac{k_{n+1}}{10^{n+1}} \ge \frac{10k_{n}}{10^{n+1}} = r_{n}

です。よって{rn}\{r_{n}\}は広義単調増加です。また 1 により0≤x−rn<10−n0 \le x-r_{n} < 10^{-n}であり、10−n10^{-n}はnnを限りなく大きくすると00に近づくので、はさみうちの原理(§B1.11 定理 1.1)によりrnr_{n}はxxに収束します。

3 を示します。10−n<v−u10^{-n} < v-uを満たす正の整数nnを取ります。1 を実数uuに適用して得られる有限小数をwwとすると、wwは有理数でw≤u<w+10−nw \le u < w+10^{-n}を満たします。r=w+10−nr = w+10^{-n}と置くと、rrは有理数であり、右側の不等式からu<ru<rであり、左側の不等式からr≤u+10−n<u+(v−u)=vr \le u+10^{-n} < u+(v-u) = vです。▨

2 指数を動かしたときの有理数乗の変動

a≥1a\ge1とし、指数を有理数の範囲で少しだけ動かします。値の変わり方は、§B3.2 定理 2.1によって上から押さえることができます。

定理 2.1 (有理数乗の変動の評価).a≥1a\ge1とし、NNを正の整数とする。r≤r′r \le r'かつr′−r≤1Nr'-r \le \dfrac1Nを満たす有理数rr、r′r'について

0≤ar′−ar≤ar⋅a−1N0 \le a^{r'} - a^{r} \le a^{r}\cdot\frac{a-1}{N}

が成り立つ。

証明.t=r′−rt = r'-rと置くと、ttは0≤t≤1N0 \le t \le \dfrac1Nを満たす有理数です。§B3.1 定理 4.1の 1 によりar′=arata^{r'} = a^{r}a^{t}ですから

ar′−ar=ar(at−1)a^{r'} - a^{r} = a^{r}\left(a^{t}-1\right)

です。a=1a=1のときは両辺とも00であり、主張の二つの不等式はいずれも等号で成り立ちます。

a>1a>1とします。§B3.1 定理 4.2の 1 により、0≤t≤1N0 \le t \le \dfrac1Nから1=a0≤at≤a1/N1 = a^{0} \le a^{t} \le a^{1/N}です。ar>0a^{r}>0ですから

0≤ar(at−1)≤ar(a1/N−1)0 \le a^{r}\left(a^{t}-1\right) \le a^{r}\left(a^{1/N}-1\right)

であり、§B3.2 定理 2.1によりa1/N−1≤a−1Na^{1/N}-1 \le \dfrac{a-1}{N}ですから、ar′−ar≤ar⋅a−1Na^{r'}-a^{r} \le a^{r}\cdot\dfrac{a-1}{N}を得ます。▨

3 有理数乗の列の極限

定理 3.1 (有理数の列に沿う有理数乗の収束).a≥1a\ge1とし、xxを実数とする。

  1. xxに収束する有理数の列{rn}\{r_{n}\}について、{arn}\{a^{r_{n}}\}は収束する。
  2. xxに収束する有理数の列{rn}\{r_{n}\}、{sn}\{s_{n}\}について、lim⁡n→∞arn=lim⁡n→∞asn\lim_{n\to\infty}a^{r_{n}} = \lim_{n\to\infty}a^{s_{n}}である。
  3. 1 の極限は正である。

証明.定理 1.1が実数xxに対して定める有限小数の列を{tn}\{t_{n}\}と書きます。はじめに、{atn}\{a^{t_{n}}\}が収束することを示します。{tn}\{t_{n}\}は広義単調増加ですから、§B3.1 定理 4.2とa≥1a\ge1により{atn}\{a^{t_{n}}\}も広義単調増加です。xxより大きい整数MMを一つ取ると、定理 1.1の 1 によりtn≤x<Mt_{n}\le x< Mですから、§B3.1 定理 4.2によりatn≤aMa^{t_{n}} \le a^{M}です。よって{atn}\{a^{t_{n}}\}は広義単調増加であって上に有界です。

ここで、広義単調増加であって上に有界な数列が収束することを用います。この主張は「極限の存在について」が§B1.8 定理 3.1として、区間縮小法から証明しています。L=lim⁡n→∞atnL = \lim_{n\to\infty}a^{t_{n}}と置きます。{atn}\{a^{t_{n}}\}は広義単調増加ですからL≥at1>0L \ge a^{t_{1}} > 0であり、3 が成り立ちます。

次に、xxに収束する任意の有理数の列{sn}\{s_{n}\}についてasna^{s_{n}}がLLに収束することを示します。これが示されれば、1 と 2 がともに従います。整数MMは上で取ったものを用います。正の整数NNを任意に取ります。{sn}\{s_{n}\}と{tn}\{t_{n}\}はともにxxに収束し、x<Mx<Mですから、ある番号n0n_{0}から先では∣sn−x∣≤12N|s_{n}-x| \le \dfrac{1}{2N}かつ∣tn−x∣≤12N|t_{n}-x|\le\dfrac{1}{2N}であり、かつsn≤Ms_{n} \le Mかつtn≤Mt_{n}\le Mです。n≥n0n \ge n_{0}とし、un=min⁡(sn,tn)u_{n}=\min(s_{n},t_{n})、vn=max⁡(sn,tn)v_{n}=\max(s_{n},t_{n})と置くと、unu_{n}とvnv_{n}は有理数で、un≤vn≤Mu_{n} \le v_{n} \le Mかつvn−un≤∣sn−x∣+∣x−tn∣≤1Nv_{n}-u_{n} \le |s_{n}-x|+|x-t_{n}| \le \dfrac1Nです。定理 2.1と§B3.1 定理 4.2により

∣asn−atn∣=avn−aun≤aun⋅a−1N≤aM⋅a−1N\left|a^{s_{n}}-a^{t_{n}}\right| = a^{v_{n}}-a^{u_{n}} \le a^{u_{n}}\cdot\frac{a-1}{N} \le a^{M}\cdot\frac{a-1}{N}

です。すなわち、どの正の整数NNについても、ある番号から先では∣asn−atn∣≤aM⋅a−1N\left|a^{s_{n}}-a^{t_{n}}\right| \le a^{M}\cdot\dfrac{a-1}{N}が成り立ちます。右辺はNNを大きくすると00に近づくので、asn−atna^{s_{n}}-a^{t_{n}}は00に収束します。したがってasn=atn+(asn−atn)a^{s_{n}} = a^{t_{n}} + \left(a^{s_{n}}-a^{t_{n}}\right)はLLに収束します。

この最後の段で用いた、どのNNについても差がaMa−1Na^{M}\dfrac{a-1}{N}以下であることから収束を結論する手続きを、ε\varepsilon-NN論法として精密に述べることは「ε-論法と基礎解析」が扱います。□

4 実数乗の定義

定義 4.1 (実数乗).a>0a>0とし、xxを実数とする。

  • a≥1a\ge1のとき、xxに収束する有理数の列{rn}\{r_{n}\}を一つ取り、 ax=lim⁡n→∞arna^{x} = \lim_{n\to\infty}a^{r_{n}} と定める。定理 3.1により、この極限は存在し、列{rn}\{r_{n}\}の取り方によらない。またax>0a^{x}>0である。
  • 0<a<10<a<1のとき、1a>1\dfrac1a>1であるから上の定め方によって(1a)x\left(\dfrac1a\right)^{x}が正の値として定まっている。そこで ax=1(1/a)xa^{x} = \frac{1}{(1/a)^{x}} と定める。

定理 4.2 (有理数乗との一致と、有理数の列による近似).a>0a>0とする。

  1. xxが有理数のとき、定義 4.1が定めるaxa^{x}は、§B3.1 定義 3.1が定める有理数乗の値に等しい。
  2. xxを実数とするとax>0a^{x}>0であり、xxに収束するどの有理数の列{rn}\{r_{n}\}についてもlim⁡n→∞arn=ax\lim_{n\to\infty}a^{r_{n}} = a^{x}である。

証明.a≥1a\ge1の場合を示します。定義 4.1は、xxに収束する有理数の列を一つ取り、その列に沿う極限をaxa^{x}と定めています。定理 3.1の 2 により、この極限は列の取り方によりませんから、xxに収束するどの有理数の列{rn}\{r_{n}\}についてもlim⁡n→∞arn=ax\lim_{n\to\infty}a^{r_{n}} = a^{x}です。正であることは定理 3.1の 3 によります。よって 2 が成り立ちます。1 については、xxが有理数ならば、すべての項がxxに等しい列はxxに収束する有理数の列ですから、その列で極限を取ると、値は有理数乗axa^{x}に等しくなります。

0<a<10<a<1の場合を示します。b=1ab=\dfrac1aと置くとb>1b>1です。有理数rrについて、§B3.1 定理 4.1の 3 によりarbr=(ab)r=1r=1a^{r}b^{r} = (ab)^{r} = 1^{r} = 1ですから、有理数乗についてはar=1bra^{r} = \dfrac{1}{b^{r}}です。いま{rn}\{r_{n}\}をxxに収束する有理数の列とすると、すでに示した場合によりbrnb^{r_{n}}はbxb^{x}に収束し、bx>0b^{x}>0です。極限の商の規則により

lim⁡n→∞arn=lim⁡n→∞1brn=1bx=ax\lim_{n\to\infty}a^{r_{n}} = \lim_{n\to\infty}\frac{1}{b^{r_{n}}} = \frac{1}{b^{x}} = a^{x}

であり、この値は正です。よって 2 が成り立ちます。xxが有理数のときは、すべての項がxxに等しい列を取ると、左辺の各項が有理数乗axa^{x}に等しいので、1 が成り立ちます。▨

注意 4.3 (記号の重なりについて).定理 4.2の 1 により、指数が有理数である場合には、有理数乗としての値と実数乗としての値が一致する。したがって、以後はara^{r}という記号を、rrが有理数であるかどうかで区別せずに用いる。

5 指数についての大小関係と連続性

定理 5.1 (指数についての大小関係と連続性).a>0a>0とする。

  1. a≥1a\ge1のとき、u≤vu\le vを満たす実数uu、vvについてau≤ava^{u} \le a^{v}である。
  2. 実数の列{tn}\{t_{n}\}が実数ttに収束するならば、lim⁡n→∞atn=at\lim_{n\to\infty}a^{t_{n}} = a^{t}である。

証明. 1 を示します。a≥1a\ge1とします。はじめに、実数zzと有理数rrについて、r≤zr\le zならばar≤aza^{r}\le a^{z}であり、z≤rz\le rならばaz≤ara^{z}\le a^{r}であることを示します。zzに収束する有理数の列{cn}\{c_{n}\}を一つ取ります。r≤zr\le zの場合、dn=max⁡(r,cn)d_{n}=\max(r,c_{n})は有理数であり、∣max⁡(r,cn)−max⁡(r,z)∣≤∣cn−z∣\left|\max(r,c_{n})-\max(r,z)\right| \le |c_{n}-z|がmax⁡\maxの定め方から成り立ちますから、{dn}\{d_{n}\}はmax⁡(r,z)=z\max(r,z)=zに収束します。dn≥rd_{n}\ge rと§B3.1 定理 4.2によりadn≥ara^{d_{n}}\ge a^{r}であり、定理 4.2の 2 によりadna^{d_{n}}はaza^{z}に収束しますから、az≥ara^{z}\ge a^{r}です。z≤rz\le rの場合は、min⁡(r,cn)\min(r,c_{n})を取って同じ議論を行います。

実数u≤vu\le vとします。u=vu=vのときは両辺が等しいです。u<vu<vのときは、定理 1.1の 3 によりu<r<vu<r<vを満たす有理数rrを取ることができ、いま示したことからau≤ar≤ava^{u}\le a^{r}\le a^{v}です。

2 を示します。a=1a=1のときは、有理数rrについて1r=11^{r}=1ですから、定義 4.1により実数ttについても1t=11^{t}=1であり、1tn=1t=11^{t_{n}}=1^{t}=1です。0<a<10<a<1のときは、b=1a>1b=\dfrac1a>1について 2 が成り立てば、定義 4.1と極限の商の規則によりatn=1btna^{t_{n}} = \dfrac{1}{b^{t_{n}}}は1bt=at\dfrac{1}{b^{t}} = a^{t}に収束します。よってa>1a>1の場合を示せば足ります。

a>1a>1とします。正の整数NNを任意に取ります。{tn}\{t_{n}\}はttに収束するので、ある番号n0n_{0}から先では∣tn−t∣≤14N|t_{n}-t| \le \dfrac{1}{4N}です。定理 1.1の 3 により、t−12N<α<t−14Nt-\dfrac{1}{2N} < \alpha < t-\dfrac{1}{4N}を満たす有理数α\alphaと、t+14N<β<t+12Nt+\dfrac{1}{4N} < \beta < t+\dfrac{1}{2N}を満たす有理数β\betaを取ることができます。n≥n0n\ge n_{0}のとき、tnt_{n}とttはいずれもα\alpha以上β\beta以下ですから、1 により

aα≤atn≤aβ,aα≤at≤aβa^{\alpha} \le a^{t_{n}} \le a^{\beta}, \qquad a^{\alpha} \le a^{t} \le a^{\beta}

であり、∣atn−at∣≤aβ−aα\left|a^{t_{n}}-a^{t}\right| \le a^{\beta}-a^{\alpha}です。α\alphaとβ\betaは有理数でβ−α<1N\beta-\alpha < \dfrac1Nですから、定理 2.1により

aβ−aα≤aα⋅a−1N≤at⋅a−1Na^{\beta}-a^{\alpha} \le a^{\alpha}\cdot\frac{a-1}{N} \le a^{t}\cdot\frac{a-1}{N}

です。最後の不等号は、α<t\alpha<tと 1 によります。したがって、どの正の整数NNについても、ある番号から先では∣atn−at∣≤at⋅a−1N\left|a^{t_{n}}-a^{t}\right| \le a^{t}\cdot\dfrac{a-1}{N}が成り立ちます。右辺はNNを大きくすると00に近づくので、atna^{t_{n}}はata^{t}に収束します。

定理 3.1の証明と同じく、この最後の段をε\varepsilon-NN論法として精密に述べることは「ε-論法と基礎解析」が扱います。□

6 指数法則と狭義単調性

定理 6.1 (実数乗の指数法則と狭義単調性).a>0a>0、b>0b>0とし、xx、yyを実数とする。このとき次が成り立つ。

  1. ax>0a^{x}>0である。
  2. ax+y=axaya^{x+y} = a^{x}a^{y}である。
  3. (ab)x=axbx(ab)^{x} = a^{x}b^{x}である。
  4. (ax)y=axy\left(a^{x}\right)^{y} = a^{xy}である。
  5. x<yx<yとする。a>1a>1ならばax<aya^{x}<a^{y}、a=1a=1ならば1x=1y=11^{x}=1^{y}=1、0<a<10<a<1ならばax>aya^{x}>a^{y}である。

証明. 1 は定理 4.2の 2 です。

2 を示します。xxに収束する有理数の列{rn}\{r_{n}\}と、yyに収束する有理数の列{sn}\{s_{n}\}を取ります。{rn+sn}\{r_{n}+s_{n}\}は有理数の列で、x+yx+yに収束します。§B3.1 定理 4.1の 1 によりarn+sn=arnasna^{r_{n}+s_{n}} = a^{r_{n}}a^{s_{n}}です。定理 4.2の 2 により、左辺はax+ya^{x+y}に収束し、右辺は極限の積の規則によりaxaya^{x}a^{y}に収束します。収束する数列の極限は一つに定まるのでax+y=axaya^{x+y}=a^{x}a^{y}です。

3 を示します。同じく{rn}\{r_{n}\}をxxに収束する有理数の列とすると、§B3.1 定理 4.1の 3 により(ab)rn=arnbrn(ab)^{r_{n}} = a^{r_{n}}b^{r_{n}}です。両辺で極限を取ると(ab)x=axbx(ab)^{x}=a^{x}b^{x}を得ます。

5 を示します。a>1a>1とし、x<yx<yとします。定理 1.1の 3 を二度用いて、x<r<yx<r<yを満たす有理数rrと、r<s<yr<s<yを満たす有理数ssを取ります。定理 5.1の 1 によりax≤ara^{x}\le a^{r}かつas≤aya^{s}\le a^{y}であり、§B3.1 定理 4.2の 1 によりar<asa^{r}<a^{s}ですからax<aya^{x}<a^{y}です。a=1a=1のときは、有理数rrについて1r=11^{r}=1ですから、定義 4.1により1x=1y=11^{x}=1^{y}=1です。0<a<10<a<1のときは、b=1a>1b=\dfrac1a>1についてbx<byb^{x}<b^{y}であり、両辺は正ですから、逆数を取ると不等号の向きが変わってax=1bx>1by=aya^{x} = \dfrac{1}{b^{x}} > \dfrac{1}{b^{y}} = a^{y}です。

4 を示します。三つの段に分けます。

第一段として、実数zzと整数kkについて(az)k=akz\left(a^{z}\right)^{k} = a^{kz}を示します。ここで左辺は、正の数aza^{z}の整数乗(§B3.1 定義 1.1)です。kkが正の整数のときはkkについての数学的帰納法によります。k=1k=1のときは両辺ともaza^{z}です。(az)k=akz\left(a^{z}\right)^{k}=a^{kz}を仮定すると、2 により(az)k+1=(az)kaz=akzaz=a(k+1)z\left(a^{z}\right)^{k+1} = \left(a^{z}\right)^{k}a^{z} = a^{kz}a^{z} = a^{(k+1)z}です。k=0k=0のときは、左辺は11であり、右辺は定理 4.2の 1 によりa0=1a^{0}=1です。kkが負の整数のときは、k=−lk=-l(llは正の整数)と置きます。2 によりaza−z=a0=1a^{z}a^{-z}=a^{0}=1ですからa−z=1aza^{-z}=\dfrac{1}{a^{z}}であり、

(az)−l=1(az)l=1alz=a−lz\left(a^{z}\right)^{-l} = \frac{1}{\left(a^{z}\right)^{l}} = \frac{1}{a^{lz}} = a^{-lz}

です。

第二段として、実数xxと有理数s=pqs=\dfrac{p}{q}(ppは整数、qqは正の整数)について(ax)s=axs\left(a^{x}\right)^{s} = a^{xs}を示します。第一段により(ax/q)q=ax\left(a^{x/q}\right)^{q} = a^{x}であり、ax/q>0a^{x/q}>0ですから、§B3.1 定理 2.1の一意性によりax/q=axqa^{x/q} = \sqrt[q]{a^{x}}です。したがって、§B3.1 定義 3.1と第一段により

(ax)s=(axq)p=(ax/q)p=apx/q=axs\left(a^{x}\right)^{s} = \left(\sqrt[q]{a^{x}}\right)^{p} = \left(a^{x/q}\right)^{p} = a^{px/q} = a^{xs}

です。

第三段として、実数yyの場合を示します。yyに収束する有理数の列{sn}\{s_{n}\}を取ります。定理 4.2の 2 を底axa^{x}に適用すると、(ax)sn\left(a^{x}\right)^{s_{n}}は(ax)y\left(a^{x}\right)^{y}に収束します。第二段により(ax)sn=axsn\left(a^{x}\right)^{s_{n}} = a^{x s_{n}}です。実数の列{xsn}\{x s_{n}\}はxyxyに収束するので、定理 5.1の 2 によりaxsna^{x s_{n}}はaxya^{xy}に収束します。極限は一つに定まるので(ax)y=axy\left(a^{x}\right)^{y} = a^{xy}です。▨

例 6.2 (222^{\sqrt2}の近似).2=1.41421356…\sqrt2 = 1.41421356\dotsの小数第nn位までを取った有限小数の列

1,1.4,1.41,1.414,…1,\quad 1.4,\quad 1.41,\quad 1.414,\quad \dots

は、定理 1.1が与える列である。対応する有理数乗の値は

21=2,21.4=2.63901…,21.41=2.65737…,21.414=2.66474…2^{1} = 2, \quad 2^{1.4} = 2.63901\dots, \quad 2^{1.41} = 2.65737\dots, \quad 2^{1.414} = 2.66474\dots

であり、22=2.66514…2^{\sqrt2} = 2.66514\dotsに近づいている。ここで21.412^{1.41}は2141/100=(2100)1412^{141/100} = \left(\sqrt[100]{2}\right)^{141}という有理数乗である。

誤差の大きさは定理 2.1から評価することができる。1.414≤2≤1.414+10−31.414 \le \sqrt2 \le 1.414+10^{-3}であり、2\sqrt2より大きい有理数r′r'を1.414≤r′≤1.4151.414 \le r' \le 1.415の範囲で取ると0≤2r′−21.414≤21.414⋅2−11000≤0.002670 \le 2^{r'}-2^{1.414} \le 2^{1.414}\cdot\dfrac{2-1}{1000} \le 0.00267である。定理 5.1の 1 により21.414≤22≤2r′2^{1.414} \le 2^{\sqrt2} \le 2^{r'}であるから、222^{\sqrt2}と21.4142^{1.414}の差は0.002670.00267以下である。実際の差は0.00040.0004程度である。

注意 6.3 (本記事が認めて用いたもの). 本記事が認めて用いたのは、次の一つである。

  • どの正の整数NNについても、ある番号から先では二つの数列の差がある定数の1N\dfrac1N倍以下である、という状況から差が00に収束することを結論する手続き(定理 3.1と定理 5.1の証明)。この手続きをε\varepsilon-NN論法として精密に述べることは「ε-論法と基礎解析」が扱う。

定理 3.1の証明は、広義単調増加であって上に有界な数列が収束することも用いている。これは認めごとではない。「極限の存在について」が、縮んでいく閉区間の列に共通する実数がただ一つ存在するという区間縮小法から証明している。同じく、正の数のNN乗根が存在することは「有理数乗」が中間値の定理から証明しており、中間値の定理そのものは「関数の極限」が、やはり区間縮小法から証明している。実数の連続性について認めているのは、遡ればこの区間縮小法の一点だけである。これら以外の主張は、本文で証明した。

7 演習

  1. a≥1a\ge1とし、実数xxに収束する二つの有理数列{rn}\{r_n\}、{sn}\{s_n\}に対して、定理 2.1と§B1.11 定理 1.1を用い、∣arn−asn∣→0\lvert a^{r_n}-a^{s_n}\rvert\to0を証明してください。
  2. 定理 4.2の証明を、a≥1a\ge1の場合と0<a<10<a<1の場合に分けて再構成してください。
  3. 定理 6.1の 4 について、指数を整数、有理数、実数の順に広げる各段で、どの定理を用いているかを示してください。

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