1 指数関数の定義
定義 1.1 (指数関数).a>0、a=1とする。実数xに対して§B3.3 定義 4.1が定める実数乗axを対応させる関数を、aを底とする指数関数という。定義域は実数全体であり、本記事ではこの関数をf(x)=axと書く。
2 グラフ
指数関数のグラフは、底が1より大きい場合と、0と1の間にある場合とで増減が異なります。次の図は、底が2の場合と21の場合を重ねたものです。
次の図は、底aを1より大きい範囲で動かしたものです。
どちらの図でも、グラフは点(0,1)を通ります。これは§B3.3 定理 4.2の 1 によりa0=1であることによります。底を逆数に取り替えたときにグラフがy軸に関して対称になることは、次の等式から従います。
定理 2.1 (底を逆数に取り替えたときのグラフ).a>0とする。すべての実数xについて
(a1)x=a−xである。したがって、点(x,y)がy=axのグラフ上にあることと、点(−x,y)がy=(a1)xのグラフ上にあることは同値である。すなわち、二つのグラフはy軸に関して対称である。
証明.§B3.3 定理 6.1の 2 によりaxa−x=a0であり、§B3.3 定理 4.2の 1 によりa0=1です。ax>0ですからa−x=ax1です。一方、§B3.3 定理 6.1の 3 と
5 により
ax(a1)x=(a⋅a1)x=1x=1ですから(a1)x=ax1です。二つの値はともにax1に等しいので、等式が成り立ちます。
点(x,y)がy=axのグラフ上にあることはy=axが成り立つことです。いま示した等式により、これはy=(a1)−xが成り立つことと同値であり、点(−x,y)がy=(a1)xのグラフ上にあることと同値です。▨
3 連続性
値域についての主張を中間値の定理から導くために、指数関数が連続であることを先に確かめます。
定理 3.1 (指数関数の連続性).a>0とする。どの実数tについてもx→tlimax=atである。すなわち、f(x)=axは実数全体で連続である。
証明.a>1の場合を先に扱います。t∈Rとε>0を任意に取ります。アルキメデスの性質(§D1.4 命題 2.1)により、
Nat(a−1)<εを満たす正の整数Nを取ることができます。∣x−t∣<1/Nとし、u=min{x,t}、v=max{x,t}とおきます。すると0≤v−u<1/Nです。§B3.3 定理 6.1の 2 と 5、および§B3.2 定理 2.1により、
∣ax−at∣=au(av−u−1)≤at(a1/N−1)≤Nat(a−1)<εです。したがってx→tのときax→atです。
0<a<1の場合はb=1/a>1とおきます。いま示した結果により、y→−tのときby→b−tです。x→tならば−x→−tであり、定理 2.1によりax=b−xですから、ax→b−t=atです。a=1の場合はax=1が一定なので明らかです。tは任意であるから、axは実数全体で連続です。▨
4 狭義単調性と値域
定理 4.1 (指数関数の狭義単調性と値域).a>0、a=1とし、f(x)=axとする。
- a>1のとき、x1<x2を満たす実数x1、x2についてf(x1)<f(x2)である。0<a<1のとき、x1<x2を満たす実数x1、x2についてf(x1)>f(x2)である。
- fは単射である。すなわち、f(x1)=f(x2)を満たす実数x1、x2についてx1=x2である。
- fの値域は正の数全体である。すなわち、どの正の数yについても、ax=yを満たす実数xがただ一つ存在する。
証明. 1 は§B3.3 定理 6.1の 5 そのものです。
2 を示します。実数x1、x2がx1=x2を満たすとすると、x1<x2とx2<x1のいずれかが成り立ちます。1 により、どちらの場合もf(x1)=f(x2)です。この対偶が 2 です。
3 を示します。a>1の場合を先に扱います。§B3.3 定理 6.1の 1 によりax>0ですから、値域は正の数全体に含まれます。逆に、正の数yを任意に取ります。h=a−1と置くとh>0です。§B3.2 定理 1.1により、正の整数nについてan=(1+h)n≥1+nhです。そこでnh>yかつnh>y1を満たす正の整数nを取ると、an>yかつan>y1です。後者とan>0からa−n=an1<yです。
定理 3.1によりfは閉区間[−n,n]で連続であり、f(−n)<y<f(n)です。中間値の定理により、f(x)=yを満たす実数xが−n<x<nの範囲に存在します。このxがただ一つであることは 2 によります。
0<a<1の場合は、b=a1>1について 3 が成り立つことと、定理 2.1によります。正の数yに対してbz=yを満たす実数zがただ一つ存在し、ax=b−xですから、ax=yを満たす実数はx=−zただ一つです。
本記事は、中間値の定理を認めて用いました。中間値の定理そのものは「関数の極限」が扱い、その根拠である実数の連続性は「ε-論法と基礎解析」が扱います。□
5 指数を含む方程式と不等式
定理 4.1の 1 と 2 から、底が同じ二つの累乗の大小と、指数どうしの大小が対応することが分かります。方程式と不等式を解くときは、次の形で用います。
証明. 1 について、p=qならばap=aqです。逆は定理 4.1の 2 です。
2 について、a>1とします。p<qならば定理 4.1の 1 によりap<aqです。逆にap<aqとすると、p=qならば両辺が等しくなり、p>qならば同じく 1 によりap>aqとなって、いずれも仮定に反します。よってp<qです。
3 も、0<a<1の場合の定理 4.1の 1 を用いて同じ手順で示します。
不等号を≤に取り替えた主張は、1 と、いま示した 2 および 3 を合わせると得られます。たとえばa>1の場合、ap≤aqであることは「ap<aqまたはap=aq」であることであり、これは「p<qまたはp=q」すなわちp≤qと同値です。▨
例 5.2 (指数を含む方程式). 方程式4x=8を解く。4=22、8=23であるから、§B3.3 定理 6.1の 4 により4x=(22)x=22xである。したがって方程式は22x=23となり、公式 5.1の 1 により2x=3、すなわちx=23である。
検算すると、43/2=(4)3=23=8である。
例 5.3 (指数を含む不等式). 不等式(31)x≥9を解く。定理 2.1により(31)x=3−xであり、9=32であるから、不等式は3−x≥32と書き直すことができる。底は3>1であるから、公式 5.1の 2 により、これは−x≥2すなわちx≤−2と同値である。
底を31のまま比べることもできる。9=(31)−2であるから、不等式は(31)x≥(31)−2となり、底は0<31<1であるから、公式 5.1の 3 によりx≤−2である。どちらの手順でも同じ解を得る。
例 5.4 (置き換えて解く方程式). 方程式9x−4⋅3x+3=0を解く。§B3.3 定理 6.1の 4 により9x=(32)x=(3x)2であるから、t=3xと置くと方程式はt2−4t+3=0となる。左辺を因数分解すると(t−1)(t−3)=0であるからt=1またはt=3である。
定理 4.1の 3 により、tが動く範囲は正の数全体であり、正の数tに対して3x=tを満たす実数xはただ一つである。t=1=30からx=0、t=3=31からx=1を得る。よって解はx=0とx=1である。
閑話休題:一定の倍率で増える量の大きさ 底が1より大きい指数関数では、指数が1増えるたびに値が同じ倍率で大きくなります。倍率が2の場合、指数が10増えると値は約1000倍、20増えると約100万倍になります。210=1024と220=1048576がその値です。
たとえば、最初の項を1とし、項が一つ進むたびに2倍になる数列では、第64項は263です。210=1024を用いると、263=8(210)6ですから、第64項が8×1018より大きいことを、近似値に頼らず確かめることができます。
倍率が1より小さい場合は、同じ形で値が小さくなります。最初の量をAとし、時間がTだけ進むごとに量が半分になるという規則を仮定すると、経過時間tにおける量は
A(21)t/Tと表されます。この式は「各区間で必ず半分になる」という仮定を数式へ移したモデルです。現実の量へ適用するときは、対象がこの仮定を満たす時間範囲を、測定と対象分野の知識によって別に確かめる必要があります。