§B3.4指数関数

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「実数乗」は、a>0a>0とどの実数xxに対してもaxa^{x}の値を定め、指数法則と狭義単調性が実数乗のままで成り立つことを示しました。本記事は、底aaを固定して指数xxを動かす対応を関数として扱い、そのグラフと値の動き方を調べます。

示すことは三つです。第一に、a>1a>1のとき指数関数は狭義単調増加であり、0<a<10<a<1のとき狭義単調減少です。第二に、値域は正の数全体になります。すなわち、どの正の数yyに対してもax=ya^{x}=yを満たす実数xxがただ一つ存在します。第三に、この二つから、指数を含む方程式と不等式を、指数どうしの方程式と不等式へ直して解くことができます。

値域についての主張は、閉区間で連続な関数についての中間値の定理から導きます。中間値の定理そのものは「関数の極限」が扱い、その根拠である実数の連続性は「ε-論法と基礎解析」が扱います。本記事は、この定理を認めて用います。

1 指数関数の定義

定義 1.1 (指数関数).a>0a>0、a≠1a\ne1とする。実数xxに対して§B3.3 定義 4.1が定める実数乗axa^{x}を対応させる関数を、aaを底とする指数関数という。定義域は実数全体であり、本記事ではこの関数をf(x)=axf(x)=a^{x}と書く。

注意 1.2 (底に置く条件).a≤0a\le0の場合には、指数が有理数である段階ですでに累乗が定まらない(§B3.1 注意 1.3)。したがって底は正の数に限る。

a=1a=1の場合は、§B3.3 定理 6.1の 5 によりどの実数xxについても1x=11^{x}=1であり、値がxxによらない。以下で述べる狭義単調性も値域についての主張も成り立たないので、a=1a=1を底から除く。

2 グラフ

指数関数のグラフは、底が11より大きい場合と、00と11の間にある場合とで増減が異なります。次の図は、底が22の場合と12\dfrac12の場合を重ねたものです。

次の図は、底aaを11より大きい範囲で動かしたものです。

どちらの図でも、グラフは点(0,1)(0,1)を通ります。これは§B3.3 定理 4.2の 1 によりa0=1a^{0}=1であることによります。底を逆数に取り替えたときにグラフがyy軸に関して対称になることは、次の等式から従います。

定理 2.1 (底を逆数に取り替えたときのグラフ).a>0a>0とする。すべての実数xxについて

(1a)x=a−x\left(\frac1a\right)^{x} = a^{-x}

である。したがって、点(x,y)(x,y)がy=axy=a^{x}のグラフ上にあることと、点(−x,y)(-x,y)がy=(1a)xy=\left(\dfrac1a\right)^{x}のグラフ上にあることは同値である。すなわち、二つのグラフはyy軸に関して対称である。

証明.§B3.3 定理 6.1の 2 によりaxa−x=a0a^{x}a^{-x} = a^{0}であり、§B3.3 定理 4.2の 1 によりa0=1a^{0}=1です。ax>0a^{x}>0ですからa−x=1axa^{-x} = \dfrac{1}{a^{x}}です。一方、§B3.3 定理 6.1の 3 と 5 により

ax(1a)x=(a⋅1a)x=1x=1a^{x}\left(\frac1a\right)^{x} = \left(a\cdot\frac1a\right)^{x} = 1^{x} = 1

ですから(1a)x=1ax\left(\dfrac1a\right)^{x} = \dfrac{1}{a^{x}}です。二つの値はともに1ax\dfrac{1}{a^{x}}に等しいので、等式が成り立ちます。

点(x,y)(x,y)がy=axy=a^{x}のグラフ上にあることはy=axy=a^{x}が成り立つことです。いま示した等式により、これはy=(1a)−xy = \left(\dfrac1a\right)^{-x}が成り立つことと同値であり、点(−x,y)(-x,y)がy=(1a)xy=\left(\dfrac1a\right)^{x}のグラフ上にあることと同値です。▨

3 連続性

値域についての主張を中間値の定理から導くために、指数関数が連続であることを先に確かめます。

定理 3.1 (指数関数の連続性).a>0a>0とする。どの実数ttについてもlim⁡x→tax=at\displaystyle\lim_{x\to t}a^{x} = a^{t}である。すなわち、f(x)=axf(x)=a^{x}は実数全体で連続である。

証明.a>1a>1の場合を先に扱います。t∈Rt\in\mathbb Rとε>0\varepsilon>0を任意に取ります。アルキメデスの性質(§D1.4 命題 2.1)により、

at(a−1)N<ε\frac{a^t(a-1)}{N}<\varepsilon

を満たす正の整数NNを取ることができます。∣x−t∣<1/N|x-t|<1/Nとし、u=min⁡{x,t}u=\min\{x,t\}、v=max⁡{x,t}v=\max\{x,t\}とおきます。すると0≤v−u<1/N0\le v-u<1/Nです。§B3.3 定理 6.1の 2 と 5、および§B3.2 定理 2.1により、

∣ax−at∣=au(av−u−1)≤at(a1/N−1)≤at(a−1)N<ε\begin{aligned} |a^x-a^t| &=a^u\bigl(a^{v-u}-1\bigr)\\ &\le a^t\left(a^{1/N}-1\right) \le \frac{a^t(a-1)}{N} <\varepsilon \end{aligned}

です。したがってx→tx\to tのときax→ata^x\to a^tです。

0<a<10<a<1の場合はb=1/a>1b=1/a>1とおきます。いま示した結果により、y→−ty\to-tのときby→b−tb^y\to b^{-t}です。x→tx\to tならば−x→−t-x\to-tであり、定理 2.1によりax=b−xa^x=b^{-x}ですから、ax→b−t=ata^x\to b^{-t}=a^tです。a=1a=1の場合はax=1a^x=1が一定なので明らかです。ttは任意であるから、axa^xは実数全体で連続です。▨

4 狭義単調性と値域

定理 4.1 (指数関数の狭義単調性と値域).a>0a>0、a≠1a\ne1とし、f(x)=axf(x)=a^{x}とする。

  1. a>1a>1のとき、x1<x2x_{1}<x_{2}を満たす実数x1x_{1}、x2x_{2}についてf(x1)<f(x2)f(x_{1})<f(x_{2})である。0<a<10<a<1のとき、x1<x2x_{1}<x_{2}を満たす実数x1x_{1}、x2x_{2}についてf(x1)>f(x2)f(x_{1})>f(x_{2})である。
  2. ffは単射である。すなわち、f(x1)=f(x2)f(x_{1})=f(x_{2})を満たす実数x1x_{1}、x2x_{2}についてx1=x2x_{1}=x_{2}である。
  3. ffの値域は正の数全体である。すなわち、どの正の数yyについても、ax=ya^{x}=yを満たす実数xxがただ一つ存在する。

証明. 1 は§B3.3 定理 6.1の 5 そのものです。

2 を示します。実数x1x_{1}、x2x_{2}がx1≠x2x_{1}\ne x_{2}を満たすとすると、x1<x2x_{1}<x_{2}とx2<x1x_{2}<x_{1}のいずれかが成り立ちます。1 により、どちらの場合もf(x1)≠f(x2)f(x_{1})\ne f(x_{2})です。この対偶が 2 です。

3 を示します。a>1a>1の場合を先に扱います。§B3.3 定理 6.1の 1 によりax>0a^{x}>0ですから、値域は正の数全体に含まれます。逆に、正の数yyを任意に取ります。h=a−1h=a-1と置くとh>0h>0です。§B3.2 定理 1.1により、正の整数nnについてan=(1+h)n≥1+nha^{n} = (1+h)^{n} \ge 1+nhです。そこでnh>ynh > yかつnh>1ynh > \dfrac1yを満たす正の整数nnを取ると、an>ya^{n} > yかつan>1ya^{n} > \dfrac1yです。後者とan>0a^{n}>0からa−n=1an<ya^{-n} = \dfrac{1}{a^{n}} < yです。

定理 3.1によりffは閉区間[−n, n][-n,\,n]で連続であり、f(−n)<y<f(n)f(-n) < y < f(n)です。中間値の定理により、f(x)=yf(x)=yを満たす実数xxが−n<x<n-n<x<nの範囲に存在します。このxxがただ一つであることは 2 によります。

0<a<10<a<1の場合は、b=1a>1b=\dfrac1a>1について 3 が成り立つことと、定理 2.1によります。正の数yyに対してbz=yb^{z}=yを満たす実数zzがただ一つ存在し、ax=b−xa^{x} = b^{-x}ですから、ax=ya^{x}=yを満たす実数はx=−zx=-zただ一つです。

本記事は、中間値の定理を認めて用いました。中間値の定理そのものは「関数の極限」が扱い、その根拠である実数の連続性は「ε-論法と基礎解析」が扱います。□

注意 4.2 (値域が正の数全体であることの使い道).定理 4.1の 3 は、指数関数が正の数全体から実数全体への逆向きの対応を持つことを述べている。この対応が「対数関数」で定める対数であり、逆の対応が定まる根拠が全単射性であることは「単射・全射・全単射と逆写像」が扱う。

また 3 は、axa^{x}が00や負の値を取らないことも述べている。方程式ax=0a^{x}=0とax=−1a^{x}=-1は実数の解を持たない。

5 指数を含む方程式と不等式

定理 4.1の 1 と 2 から、底が同じ二つの累乗の大小と、指数どうしの大小が対応することが分かります。方程式と不等式を解くときは、次の形で用います。

公式 5.1 (底をそろえて指数を比べる).a>0a>0、a≠1a\ne1とし、pp、qqを実数とする。

  1. ap=aqa^{p}=a^{q}であることとp=qp=qであることは同値である。
  2. a>1a>1のとき、ap<aqa^{p}<a^{q}であることとp<qp<qであることは同値である。
  3. 0<a<10<a<1のとき、ap<aqa^{p}<a^{q}であることとp>qp>qであることは同値である。

2 と 3 で不等号を≤\leに取り替えた主張も成り立つ。すなわち、a>1a>1のときap≤aqa^{p}\le a^{q}であることとp≤qp\le qであることは同値であり、0<a<10<a<1のときap≤aqa^{p}\le a^{q}であることとp≥qp\ge qであることは同値である。

証明. 1 について、p=qp=qならばap=aqa^{p}=a^{q}です。逆は定理 4.1の 2 です。

2 について、a>1a>1とします。p<qp<qならば定理 4.1の 1 によりap<aqa^{p}<a^{q}です。逆にap<aqa^{p}<a^{q}とすると、p=qp=qならば両辺が等しくなり、p>qp>qならば同じく 1 によりap>aqa^{p}>a^{q}となって、いずれも仮定に反します。よってp<qp<qです。

3 も、0<a<10<a<1の場合の定理 4.1の 1 を用いて同じ手順で示します。

不等号を≤\leに取り替えた主張は、1 と、いま示した 2 および 3 を合わせると得られます。たとえばa>1a>1の場合、ap≤aqa^{p}\le a^{q}であることは「ap<aqa^{p}<a^{q}またはap=aqa^{p}=a^{q}」であることであり、これは「p<qp<qまたはp=qp=q」すなわちp≤qp\le qと同値です。▨

例 5.2 (指数を含む方程式). 方程式4x=84^{x}=8を解く。4=224=2^{2}、8=238=2^{3}であるから、§B3.3 定理 6.1の 4 により4x=(22)x=22x4^{x} = \left(2^{2}\right)^{x} = 2^{2x}である。したがって方程式は22x=232^{2x}=2^{3}となり、公式 5.1の 1 により2x=32x=3、すなわちx=32x=\dfrac32である。

検算すると、43/2=(4)3=23=84^{3/2} = \left(\sqrt{4}\right)^{3} = 2^{3} = 8である。

例 5.3 (指数を含む不等式). 不等式(13)x≥9\left(\dfrac13\right)^{x} \ge 9を解く。定理 2.1により(13)x=3−x\left(\dfrac13\right)^{x} = 3^{-x}であり、9=329=3^{2}であるから、不等式は3−x≥323^{-x} \ge 3^{2}と書き直すことができる。底は3>13>1であるから、公式 5.1の 2 により、これは−x≥2-x \ge 2すなわちx≤−2x \le -2と同値である。

底を13\dfrac13のまま比べることもできる。9=(13)−29 = \left(\dfrac13\right)^{-2}であるから、不等式は(13)x≥(13)−2\left(\dfrac13\right)^{x} \ge \left(\dfrac13\right)^{-2}となり、底は0<13<10<\dfrac13<1であるから、公式 5.1の 3 によりx≤−2x \le -2である。どちらの手順でも同じ解を得る。

例 5.4 (置き換えて解く方程式). 方程式9x−4⋅3x+3=09^{x} - 4\cdot 3^{x} + 3 = 0を解く。§B3.3 定理 6.1の 4 により9x=(32)x=(3x)29^{x} = \left(3^{2}\right)^{x} = \left(3^{x}\right)^{2}であるから、t=3xt=3^{x}と置くと方程式はt2−4t+3=0t^{2}-4t+3=0となる。左辺を因数分解すると(t−1)(t−3)=0(t-1)(t-3)=0であるからt=1t=1またはt=3t=3である。

定理 4.1の 3 により、ttが動く範囲は正の数全体であり、正の数ttに対して3x=t3^{x}=tを満たす実数xxはただ一つである。t=1=30t=1=3^{0}からx=0x=0、t=3=31t=3=3^{1}からx=1x=1を得る。よって解はx=0x=0とx=1x=1である。

注意 5.5 (置き換えた変数の範囲).例 5.4でt=3xt=3^{x}と置いたとき、ttが満たす条件はt>0t>0である。ttについての方程式が00以下の解を持つ場合、その解に対応する実数xxは存在しないので、解として採用しない。たとえば9x+2⋅3x−3=09^{x}+2\cdot3^{x}-3=0ではt2+2t−3=0t^{2}+2t-3=0からt=1t=1、t=−3t=-3を得るが、t=−3t=-3はt>0t>0を満たさないので捨て、t=1t=1からx=0x=0だけが解になる。

閑話休題:一定の倍率で増える量の大きさ 底が11より大きい指数関数では、指数が11増えるたびに値が同じ倍率で大きくなります。倍率が22の場合、指数が1010増えると値は約10001000倍、2020増えると約100100万倍になります。210=10242^{10}=1024と220=10485762^{20}=1048576がその値です。

たとえば、最初の項を11とし、項が一つ進むたびに22倍になる数列では、第64項は2632^{63}です。210=10242^{10}=1024を用いると、263=8(210)62^{63}=8(2^{10})^6ですから、第64項が8×10188\times10^{18}より大きいことを、近似値に頼らず確かめることができます。

倍率が11より小さい場合は、同じ形で値が小さくなります。最初の量をAAとし、時間がTTだけ進むごとに量が半分になるという規則を仮定すると、経過時間ttにおける量は

A(12)t/TA\left(\frac12\right)^{t/T}

と表されます。この式は「各区間で必ず半分になる」という仮定を数式へ移したモデルです。現実の量へ適用するときは、対象がこの仮定を満たす時間範囲を、測定と対象分野の知識によって別に確かめる必要があります。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の方程式を解け。

解法の型底をそろえて指数を比較する

  1. 例題 1

    4x=2x4^{x} = 2^{x}
  2. 例題 2

    3x−1=33^{x - 1} = 3
  3. 例題 3

    32x+2=13^{2x + 2} = 1
  4. 例題 4

    9x=3x+39^{x} = 3^{x + 3}
  5. 例題 5

    22x+3=22^{2x + 3} = 2
  6. 例題 6

    3x+3=343^{x + 3} = 3^{4}
  7. 例題 7

    2x+1=222^{x + 1} = 2^{2}
  8. 例題 8

    2x+2=22^{x + 2} = 2
  9. 例題 9

    3x+2=323^{x + 2} = 3^{2}
  10. 例題 10

    4x=2x−34^{x} = 2^{x - 3}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の方程式を解け。

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