1 差の関数を因数分解した形で書く
二つのグラフが囲む部分の面積は、区間の上で上にある関数から下にある関数を引き、その差を積分して求めます。放物線と直線の場合、この差は2次関数であり、交点のx座標はその2次式の零点にあたります。そこで、差の関数を展開した形ではなく、零点による因数分解の形で書きます。
定理 1.1 (放物線と直線の差).a=0とする。放物線y=ax2+bx+cと直線y=mx+nが異なる2点で交わり、その交点のx座標をα、β(α<β)とする。このとき、すべての実数xについて
(ax2+bx+c)−(mx+n)=a(x−α)(x−β)が成り立つ。
証明.h(x)=(ax2+bx+c)−(mx+n)と置く。h(x)はxの2次式であり、x2の係数はaである。二つのグラフがx=αとx=βで交わることから、h(α)=h(β)=0である。α=βなので、因数定理によりh(x)は(x−α)(x−β)で割り切れる。h(x)と(x−α)(x−β)はともに
2次式なので、商は定数である。x2の係数を比べるとその定数はaであり、h(x)=a(x−α)(x−β)を得る。▨
この形が得られる根拠は、交点が2個あることと、a=0であることの二つだけです。放物線の位置や直線の傾きは、αとβの値には効きますが、因数分解の形には効きません。
2 因数分解した形のまま積分する
a(x−α)(x−β)を展開してから積分すると、原始関数へαとβを代入した値の差を整理する計算が残ります。因数分解した形のまま積分すると、次の一つの計算だけで済みます。
定理 2.1 (因数の積の定積分). 実数α、βについて
∫αβ(x−α)(x−β)dx=−6(β−α)3が成り立つ。
証明.L=β−αと置く。x−β=(x−α)−Lなので、被積分関数は
(x−α)(x−β)=(x−α)2−L(x−α)と書き直すことができる。(x−α)2の原始関数の一つは3(x−α)3、(x−α)の原始関数の一つは2(x−α)2である。x=αではどちらも値0、x=βではそれぞれ3L3、2L2をとるので
∫αβ(x−α)(x−β)dx=3L3−L⋅2L2=−6L3となる。L=β−αを戻すと結論を得る。▨
この計算ではα<βを使っていないので、上の等式はαとβの大小によらず成り立ちます。面積を求めるときには、ここへ絶対値をとる操作が加わります。
証明.α<x<βの範囲ではx−α>0かつx−β<0なので、定理 1.1の右辺a(x−α)(x−β)は、a>0のとき負、a<0のとき正である。すなわち、この範囲では二つのグラフの上下関係が入れ替わらず、a>0のときは直線が上、a<0のときは放物線が上にある。したがって、囲む部分の面積は
S=∫αβa(x−α)(x−β)dx=∣a∣∫αβ(x−α)(x−β)dxである。二つ目の等号では、被積分関数が積分区間の上で符号を変えないことを用いた。定理 2.1により右端の積分は−6(β−α)3であり、β−α>0なのでその絶対値は6(β−α)3である。▨
導出のどこで何を用いたかを整理すると、公式が成り立つ条件を読み取ることができます。
具体的な数で確かめます。
例 2.4 (放物線y=x2と直線y=x+2). 交点のx座標はx2=x+2、すなわち(x+1)(x−2)=0の解なので、α=−1、β=2である。a=1なので、公式により
S=61{2−(−1)}3=627=29である。展開して直接積分しても
∫−12{(x+2)−x2}dx=[2x2+2x−3x3]−12=310−(−67)=29となり、同じ値が得られる。
3 3次関数と接線が囲む部分
同じ筋道は、差の関数が因数分解した形で書き表される別の場合にも通ります。3次関数のグラフとその接線の差がその例です。ここでは、3次関数のグラフが1点に関して点対称であることを先に確かめ、その対称性によって式を簡単な形に直してから差を計算します。
定理 3.1 (3次関数のグラフの点対称性).a=0とし、f(x)=ax3+bx2+cx+d、m=−3abとする。このとき、ある実数pが存在して、すべての実数tについて
f(m+t)=at3+pt+f(m)が成り立つ。とくに、すべての実数tについてf(m+t)+f(m−t)=2f(m)が成り立ち、y=f(x)のグラフは点(m,f(m))に関して点対称である。
証明.f(m+t)をtについて展開すると
f(m+t)=at3+(3am+b)t2+(3am2+2bm+c)t+f(m)である。m=−3abから3am+b=0なので、t2の項が消える。p=3am2+2bm+cと置くと、はじめの等式が得られる。この表示でtを−tに変えるとf(m−t)=−at3−pt+f(m)となるので、二つを足してf(m+t)+f(m−t)=2f(m)を得る。この等式は、点(m+t,f(m+t))と点(m−t,f(m−t))の中点が、tによらず(m,f(m))であることを述べている。▨
点対称性が与える表示f(m+t)=at3+pt+f(m)にはt2の項がありません。この形で接線との差をとると、差が因数分解した形のまま出てきます。
定理 3.3 (3次関数と接線の差).a=0とし、f(x)=ax3+bx2+cx+d、m=−3abとする。αを実数とし、点(α,f(α))におけるy=f(x)の接線をy=g(x)とする。β=3m−2αと置くと、すべての実数xについて
f(x)−g(x)=a(x−α)2(x−β)が成り立つ。α=mのときβ=αであり、このとき接線は接点のほかにもう1点(β,f(β))でグラフと交わる。
証明.x=m+t、s=α−mと置くと、定理 3.1により
f(m+t)=at3+pt+f(m),f′(m+t)=3at2+pである。接点はt=sにあたるので、接線は
g(m+t)=f(m+s)+f′(m+s)(t−s)=as3+ps+f(m)+(3as2+p)(t−s)と書ける。差をとるとpを含む項が打ち消し合い、
f(m+t)−g(m+t)=a(t3−s3)−3as2(t−s)=a(t−s)(t2+st+s2−3s2)=a(t−s)(t2+st−2s2)となる。t2+st−2s2=(t−s)(t+2s)なので、f(m+t)−g(m+t)=a(t−s)2(t+2s)である。ここでt=x−m、s=α−mを戻すとt−s=x−αであり、
t+2s=(x−m)+2(α−m)=x−(3m−2α)=x−βなので、結論の等式を得る。またβ−α=3m−3α=−3sなので、s=0ならばβ=αである。▨
放物線の場合と同じく、因数分解した形のまま積分します。指数が一つ上がるだけで、計算の手順は同じです。
定理 3.4 (2乗の因数を含む積の定積分). 実数α、βについて
∫αβ(x−α)2(x−β)dx=−12(β−α)4が成り立つ。
証明.L=β−αと置き、x−β=(x−α)−Lを用いると、被積分関数は(x−α)3−L(x−α)2と書き直すことができる。x=αでともに値0をとる原始関数4(x−α)4と3(x−α)3を用いて
∫αβ(x−α)2(x−β)dx=4L4−L⋅3L3=−12L4となる。L4=(β−α)4なので結論を得る。▨
証明.定理 3.3によりf(x)−g(x)=a(x−α)2(x−β)である。αとβを両端とする区間の内部では(x−α)2>0であり、x−βは符号を変えない。したがってf−gはこの区間の内部で符号を変えず、面積は
S=∫αβa(x−α)2(x−β)dxである。定理 3.4によりこの値は∣a∣⋅12(β−α)4である。指数が偶数なので、αとβのどちらが大きいかによらず、この式は同じ値を与える。▨
例 3.6 (f(x)=x3−3xとx=1における接線).b=0なのでm=0である。α=1とするとβ=3⋅0−2⋅1=−2である。f′(x)=3x2−3からf′(1)=0、f(1)=−2なので、接線はy=−2である。実際に差をとると
f(x)−(−2)=x3−3x+2=(x−1)2(x+2)となり、定理 3.3の形になっている。公式により
S=121(−2−1)4=1281=427である。直接積分しても、−2≤x≤1で(x−1)2(x+2)≥0なので
∫−21(x3−3x+2)dx=[4x4−23x2+2x]−21=43−(−6)=427となり、同じ値が得られる。
二つの公式に共通しているのは、差の関数が零点による因数分解の形で書き表されることです。その形が分かれば、積分は定理 2.1または定理 3.4の一度の計算で済み、面積は最高次の係数と零点の差だけで定まります。逆に、差の関数がこの形をとらない場合には、面積は個別に積分して求めることになります。