§C4.7チェビシェフ多項式

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加法定理からcos⁡2θ=2cos⁡2θ−1\cos 2\theta = 2\cos^2\theta - 1とcos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\thetaが得られます。どちらも右辺はcos⁡θ\cos\thetaだけの多項式です。同じことがnnを44、55と大きくしても起こるのか、起こるならその多項式がどのような形をしているのかを、本記事は扱います。

出発点は、加法定理から得られる一つの等式です。cos⁡(n+1)θ\cos(n+1)\thetaをcos⁡nθ\cos n\thetaとcos⁡(n−1)θ\cos(n-1)\thetaとcos⁡θ\cos\thetaだけで表す関係式を作ると、sin⁡θ\sin\thetaが消えます。この関係式を多項式についての漸化式として読み直すことで、cos⁡nθ\cos n\thetaを与える多項式の列が定まります。その列について、次数、最高次の係数、零点を求め、最後に、重みをつけた積分についてこれらの多項式がたがいに直交することを、置換によって確かめます。定積分と置換積分そのものは「微積分」が扱い、加法定理は「図形と方程式」が扱い、本記事はそれらを用います。

1 角をnn倍した余弦を与える多項式

はじめに、加法定理からsin⁡θ\sin\thetaを含まない関係式を作ります。

定理 1.1 (角を1つ進める関係式).nnを11以上の整数とする。すべての実数θ\thetaについて

cos⁡(n+1)θ=2cos⁡θ cos⁡nθ−cos⁡(n−1)θ\cos(n+1)\theta = 2\cos\theta\,\cos n\theta - \cos(n-1)\theta

が成り立つ。

証明. 加法定理により

cos⁡(n+1)θ=cos⁡nθ cos⁡θ−sin⁡nθ sin⁡θ,cos⁡(n−1)θ=cos⁡nθ cos⁡θ+sin⁡nθ sin⁡θ\cos(n+1)\theta = \cos n\theta\,\cos\theta - \sin n\theta\,\sin\theta, \qquad \cos(n-1)\theta = \cos n\theta\,\cos\theta + \sin n\theta\,\sin\theta

です。二つの式を足すと、sin⁡nθ sin⁡θ\sin n\theta\,\sin\thetaの項が打ち消し合って

cos⁡(n+1)θ+cos⁡(n−1)θ=2cos⁡nθ cos⁡θ\cos(n+1)\theta + \cos(n-1)\theta = 2\cos n\theta\,\cos\theta

となります。cos⁡(n−1)θ\cos(n-1)\thetaを右辺へ移すと、結論を得ます。▨

この関係式の右辺には、cos⁡nθ\cos n\theta、cos⁡(n−1)θ\cos(n-1)\theta、cos⁡θ\cos\thetaの三つしか現れません。そこで、cos⁡θ\cos\thetaを一つの変数xxとみなし、同じ形の漸化式によって多項式の列を定めます。

定義 1.2 (チェビシェフ多項式). 多項式の列T0,T1,T2,…T_0, T_1, T_2, \dotsを

T0(x)=1,T1(x)=x,Tn+1(x)=2x Tn(x)−Tn−1(x)(n≥1)T_0(x) = 1, \qquad T_1(x) = x, \qquad T_{n+1}(x) = 2x\,T_n(x) - T_{n-1}(x) \quad (n \ge 1)

によって定める。TnT_nをチェビシェフ多項式という。

この定め方は、定理 1.1の形をそのまま写したものです。したがって、xxにcos⁡θ\cos\thetaを代入した値がcos⁡nθ\cos n\thetaに一致します。

定理 1.3 (角をnn倍した余弦の多項式表示).nnを00以上の整数とする。すべての実数θ\thetaについて

cos⁡nθ=Tn(cos⁡θ)\cos n\theta = T_n(\cos\theta)

が成り立つ。

証明.nnについての数学的帰納法で示します。連続する二つのnnを仮定する形をとります。

n=0n=0のとき、左辺はcos⁡0=1\cos 0 = 1、右辺はT0(cos⁡θ)=1T_0(\cos\theta) = 1で一致します。n=1n=1のとき、左辺はcos⁡θ\cos\theta、右辺はT1(cos⁡θ)=cos⁡θT_1(\cos\theta) = \cos\thetaで一致します。

11以上の整数nnについて、cos⁡(n−1)θ=Tn−1(cos⁡θ)\cos(n-1)\theta = T_{n-1}(\cos\theta)とcos⁡nθ=Tn(cos⁡θ)\cos n\theta = T_n(\cos\theta)がすべての実数θ\thetaで成り立つと仮定します。定理 1.1と定義 1.2により

cos⁡(n+1)θ=2cos⁡θ cos⁡nθ−cos⁡(n−1)θ=2cos⁡θ Tn(cos⁡θ)−Tn−1(cos⁡θ)=Tn+1(cos⁡θ)\cos(n+1)\theta = 2\cos\theta\,\cos n\theta - \cos(n-1)\theta = 2\cos\theta\,T_n(\cos\theta) - T_{n-1}(\cos\theta) = T_{n+1}(\cos\theta)

となり、n+1n+1の場合が成り立ちます。

数学的帰納法により、00以上のすべての整数nnについて結論が成り立ちます。▨

例 1.4 (小さい次数のチェビシェフ多項式).定義 1.2の漸化式を順に用いると

T2(x)=2x⋅x−1=2x2−1,T3(x)=2x(2x2−1)−x=4x3−3xT_2(x) = 2x\cdot x - 1 = 2x^2-1, \qquad T_3(x) = 2x(2x^2-1) - x = 4x^3-3xT4(x)=2x(4x3−3x)−(2x2−1)=8x4−8x2+1,T5(x)=2x(8x4−8x2+1)−(4x3−3x)=16x5−20x3+5xT_4(x) = 2x(4x^3-3x) - (2x^2-1) = 8x^4-8x^2+1, \qquad T_5(x) = 2x(8x^4-8x^2+1) - (4x^3-3x) = 16x^5-20x^3+5x

です。T2T_2とT3T_3は、加法定理から直接得られるcos⁡2θ=2cos⁡2θ−1\cos 2\theta = 2\cos^2\theta-1とcos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\thetaに対応しています。

2 次数と最高次の係数

漸化式は、右辺でTnT_nに2x2xを掛けています。掛けるたびに次数が1つ上がり、最高次の係数が 2倍になります。引く側のTn−1T_{n-1}は次数が低いので、最高次の項には影響しません。

定理 2.1 (次数と最高次の係数).nnを11以上の整数とする。TnT_nはnn次の多項式であり、そのxnx^nの係数は2n−12^{n-1}である。

証明.nnについての数学的帰納法で示します。

n=1n=1のとき、T1(x)=xT_1(x)=xは1次であり、x1x^1の係数は1=201 = 2^0です。n=2n=2のとき、T2(x)=2x2−1T_2(x)=2x^2-1は2次であり、x2x^2の係数は2=212 = 2^1です。

22以上の整数nnについて、Tn−1T_{n-1}がn−1n-1次、TnT_nがnn次でxnx^nの係数が2n−12^{n-1}であると仮定します。定義 1.2によりTn+1(x)=2x Tn(x)−Tn−1(x)T_{n+1}(x) = 2x\,T_n(x) - T_{n-1}(x)です。2x Tn(x)2x\,T_n(x)はn+1n+1次であり、xn+1x^{n+1}の係数は2⋅2n−1=2n2\cdot 2^{n-1} = 2^nです。Tn−1T_{n-1}の次数はn−1n-1であり、n−1<n+1n-1 < n+1なので、引いてもxn+1x^{n+1}の係数は変わりません。したがってTn+1T_{n+1}はn+1n+1次であり、xn+1x^{n+1}の係数は2n2^nです。

数学的帰納法により、11以上のすべての整数nnについて結論が成り立ちます。▨

3 零点

TnT_nの零点は、定理 1.3を通してcos⁡nθ=0\cos n\theta = 0となるθ\thetaから求めます。nn次の多項式の零点は多くともnn個なので、相異なる零点をnn個見つければ、それがすべてです。

定理 3.1 (零点).nnを11以上の整数とする。TnT_nは

xj=cos⁡(2j+1)π2n(j=0,1,…,n−1)x_j = \cos\frac{(2j+1)\pi}{2n} \qquad (j = 0, 1, \dots, n-1)

という相異なるnn個の零点をもち、TnT_nの零点はこれ以外にない。これらはすべて−1<xj<1-1 < x_j < 1を満たす。したがって

Tn(x)=2n−1∏j=0n−1(x−xj)T_n(x) = 2^{n-1}\prod_{j=0}^{n-1}(x - x_j)

と書き表される。

証明.θj=(2j+1)π2n\theta_j = \dfrac{(2j+1)\pi}{2n}と置きます。jjが00からn−1n-1まで動くとき、2j+12j+1は11から2n−12n-1までの奇数を動くので0<θj<π0 < \theta_j < \piです。cos⁡\cosは閉区間[0,π][0,\pi]で単調減少なので、θ0<θ1<⋯<θn−1\theta_0 < \theta_1 < \cdots < \theta_{n-1}からx0>x1>⋯>xn−1x_0 > x_1 > \cdots > x_{n-1}となり、nn個の値は相異なります。また0<θj<π0<\theta_j<\piから−1<xj<1-1 < x_j < 1です。

nθj=(2j+1)π2n\theta_j = \dfrac{(2j+1)\pi}{2}はπ2\dfrac{\pi}{2}の奇数倍なのでcos⁡nθj=0\cos n\theta_j = 0です。定理 1.3によりTn(xj)=cos⁡nθj=0T_n(x_j) = \cos n\theta_j = 0であり、xjx_jはTnT_nの零点です。

定理 2.1によりTnT_nはnn次なので、零点は多くともnn個です。いま相異なる零点をnn個見つけたので、これがすべてです。nn次の多項式は、最高次の係数とnn個の零点によってTn(x)=2n−1∏j=0n−1(x−xj)T_n(x) = 2^{n-1}\prod_{j=0}^{n-1}(x-x_j)と分解します。▨

例 3.2 (T2T_2の零点).n=2n=2のとき、定理 3.1の与える零点は

x0=cos⁡π4=12,x1=cos⁡3π4=−12x_0 = \cos\frac{\pi}{4} = \frac{1}{\sqrt2}, \qquad x_1 = \cos\frac{3\pi}{4} = -\frac{1}{\sqrt2}

です。実際、T2(x)=2x2−1T_2(x) = 2x^2-1を解くとx=±12x = \pm\dfrac{1}{\sqrt2}となり、一致します。分解の形は2x2−1=2(x−12)(x+12)2x^2-1 = 2\left(x-\dfrac{1}{\sqrt2}\right)\left(x+\dfrac{1}{\sqrt2}\right)です。

4 変数の置き換えによる書き換え

TnT_nは、置き換える変数を変えると別の形に書き直されます。ここでは二通りの置き換えを扱います。第一は、余弦を2倍した値を変数にとる置き換えです。この置き換えのもとでは、最高次の係数が11になります。

定理 4.1 (余弦を2倍した値を変数とする表示). 多項式の列C0,C1,C2,…C_0, C_1, C_2, \dotsを

C0(u)=2,C1(u)=u,Cn+1(u)=u Cn(u)−Cn−1(u)(n≥1)C_0(u) = 2, \qquad C_1(u) = u, \qquad C_{n+1}(u) = u\,C_n(u) - C_{n-1}(u) \quad (n\ge 1)

によって定める。このとき、00以上のすべての整数nnとすべての実数θ\thetaについて

2cos⁡nθ=Cn(2cos⁡θ)2\cos n\theta = C_n(2\cos\theta)

が成り立つ。11以上の整数nnについて、CnC_nはnn次であり、unu^nの係数は11である。

証明.u=2cos⁡θu = 2\cos\thetaと置きます。定理 1.1の両辺を2倍すると

2cos⁡(n+1)θ=(2cos⁡θ) (2cos⁡nθ)−2cos⁡(n−1)θ2\cos(n+1)\theta = (2\cos\theta)\,(2\cos n\theta) - 2\cos(n-1)\theta

です。この式は、CnC_nを定める漸化式でCn(u)C_n(u)を2cos⁡nθ2\cos n\thetaに置き換えたものと同じ形です。n=0n=0ではC0(u)=2=2cos⁡0C_0(u)=2=2\cos 0、n=1n=1ではC1(u)=u=2cos⁡θC_1(u)=u=2\cos\thetaなので、定理 1.3と同じ形の数学的帰納法により、すべてのnnで2cos⁡nθ=Cn(2cos⁡θ)2\cos n\theta = C_n(2\cos\theta)が成り立ちます。

次数と最高次の係数も、nnについての数学的帰納法で示します。C1(u)=uC_1(u)=uは1次で係数は11、C2(u)=u⋅u−2=u2−2C_2(u) = u\cdot u - 2 = u^2-2は2次で係数は11です。Cn−1C_{n-1}がn−1n-1次、CnC_nがnn次でunu^nの係数が11であると仮定すると、u Cn(u)u\,C_n(u)はn+1n+1次でun+1u^{n+1}の係数が11であり、Cn−1C_{n-1}の次数n−1n-1はn+1n+1より小さいので、Cn+1C_{n+1}はn+1n+1次でun+1u^{n+1}の係数は11です。▨

例 4.2 (CnC_nの具体形). 漸化式からC2(u)=u2−2C_2(u) = u^2-2、C3(u)=u(u2−2)−u=u3−3uC_3(u) = u(u^2-2)-u = u^3-3u、C4(u)=u(u3−3u)−(u2−2)=u4−4u2+2C_4(u) = u(u^3-3u)-(u^2-2) = u^4-4u^2+2です。u=2xu=2xと置くとC2(2x)=4x2−2=2T2(x)C_2(2x) = 4x^2-2 = 2T_2(x)、C3(2x)=8x3−6x=2T3(x)C_3(2x) = 8x^3-6x = 2T_3(x)となり、Cn(2x)=2Tn(x)C_n(2x) = 2T_n(x)という対応が確かめられます。

第二は、角を2倍した余弦を変数にとる置き換えです。cos⁡2θ\cos 2\thetaを新しい変数と読むと、T2nT_{2n}がTnT_nとT2T_2の合成として書き直されます。

定理 4.3 (合成による表示).mm、nnを00以上の整数とする。多項式として

Tm(Tn(x))=Tmn(x)T_m\bigl(T_n(x)\bigr) = T_{mn}(x)

が成り立つ。とくにnnを00以上の整数とすると、y=T2(x)=2x2−1y = T_2(x) = 2x^2-1についてT2n(x)=Tn(y)T_{2n}(x) = T_n(y)である。

証明. 実数θ\thetaを任意にとります。定理 1.3を2回用いると

Tm(Tn(cos⁡θ))=Tm(cos⁡nθ)=cos⁡(mnθ)=Tmn(cos⁡θ)T_m\bigl(T_n(\cos\theta)\bigr) = T_m(\cos n\theta) = \cos(mn\theta) = T_{mn}(\cos\theta)

です。θ\thetaが実数全体を動くときcos⁡θ\cos\thetaは−1-1以上11以下のすべての値をとるので、二つの多項式Tm∘TnT_m\circ T_nとTmnT_{mn}は無限個のxxの値で同じ値をとります。二つの多項式が無限個の値で一致すればそれらは多項式として等しいので、Tm∘Tn=TmnT_m\circ T_n = T_{mn}です。この等式で、外側の添字をnn、内側の添字を22にとるとTn(T2(x))=T2n(x)T_n\bigl(T_2(x)\bigr) = T_{2n}(x)となり、y=T2(x)=2x2−1y = T_2(x) = 2x^2-1についての主張を得ます。▨

例 4.4 (T4T_4をT2T_2の合成として書く).y=2x2−1y = 2x^2-1と置くと

T2(y)=2y2−1=2(2x2−1)2−1=2(4x4−4x2+1)−1=8x4−8x2+1T_2(y) = 2y^2-1 = 2(2x^2-1)^2-1 = 2(4x^4-4x^2+1)-1 = 8x^4-8x^2+1

となり、例 1.4で求めたT4(x)T_4(x)に一致します。

5 重みをつけた積分についての直交性

TmT_mとTnT_nの積をそのまま−1-1から11まで積分しても、簡単な形にはなりません。被積分関数に11−x2\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}を掛けてから積分すると、x=cos⁡θx = \cos\thetaという置き換えによって1−x2\sqrt{1-x^2}が置換で現れる因子と打ち消し合い、余弦の積の積分に変わります。

この重みをつけた被積分関数は、x=1x = 1とx=−1x = -1では分母が00になるため定義されません。そこで、この積分は端点を除いた区間の上の積分の極限として定めます。

定義 5.1 (重みをつけた積分).ggを閉区間[−1,1][-1,1]で連続な関数とする。

∫−11g(x)1−x2 dx=lim⁡a→−1+0∫a0g(x)1−x2 dx+lim⁡b→1−0∫0bg(x)1−x2 dx\int_{-1}^{1}\frac{g(x)}{\sqrt{1-x^2}}\,dx = \lim_{a\to -1+0}\int_a^0 \frac{g(x)}{\sqrt{1-x^2}}\,dx + \lim_{b\to 1-0}\int_0^b \frac{g(x)}{\sqrt{1-x^2}}\,dx

と定める。ただし、右辺の二つの極限がともに存在する場合にかぎる。−1<a<0<b<1-1 < a < 0 < b < 1の範囲では1−x2>0\sqrt{1-x^2} > 0なので、右辺の二つの積分はいずれも連続な関数の定積分である。

定理 5.2 (チェビシェフ多項式の直交性).mm、nnを00以上の整数とする。定義 5.1の意味で

∫−11Tm(x) Tn(x)1−x2 dx={0(m≠n)π2(m=n≥1)π(m=n=0)\int_{-1}^{1}\frac{T_m(x)\,T_n(x)}{\sqrt{1-x^2}}\,dx = \begin{cases} 0 & (m \ne n) \\[2pt] \dfrac{\pi}{2} & (m = n \ge 1) \\[4pt] \pi & (m = n = 0) \end{cases}

が成り立つ。とくにm≠nm \ne nのとき、TmT_mとTnT_nはこの重みをつけた積分について直交する。

証明.−1<a<b<1-1 < a < b < 1とし、a=cos⁡αa = \cos\alpha、b=cos⁡βb = \cos\betaを満たすα\alpha、β\betaを0<β<α<π0 < \beta < \alpha < \piの範囲でとります。cos⁡\cosは[0,π][0,\pi]で単調減少なので、このようなα\alpha、β\betaはただ一組定まります。

x=cos⁡θx = \cos\thetaと置くとdxdθ=−sin⁡θ\dfrac{dx}{d\theta} = -\sin\thetaです。0≤θ≤π0 \le \theta \le \piではsin⁡θ≥0\sin\theta \ge 0なので1−x2=1−cos⁡2θ=sin⁡θ\sqrt{1-x^2} = \sqrt{1-\cos^2\theta} = \sin\thetaであり、β≤θ≤α\beta \le \theta \le \alphaではsin⁡θ>0\sin\theta > 0です。定理 1.3によりTm(cos⁡θ)=cos⁡mθT_m(\cos\theta) = \cos m\theta、Tn(cos⁡θ)=cos⁡nθT_n(\cos\theta)=\cos n\thetaなので

∫abTm(x)Tn(x)1−x2 dx=∫αβcos⁡mθ cos⁡nθsin⁡θ (−sin⁡θ) dθ=∫βαcos⁡mθ cos⁡nθ dθ\int_a^b \frac{T_m(x)T_n(x)}{\sqrt{1-x^2}}\,dx = \int_{\alpha}^{\beta}\frac{\cos m\theta\,\cos n\theta}{\sin\theta}\,(-\sin\theta)\,d\theta = \int_{\beta}^{\alpha}\cos m\theta\,\cos n\theta\,d\theta

です。cos⁡mθ cos⁡nθ\cos m\theta\,\cos n\thetaは閉区間[0,π][0,\pi]で連続なので、その定積分は積分の端点について連続に変わります。b→1−0b \to 1-0はβ→+0\beta \to +0にあたり、a→−1+0a \to -1+0はα→π−0\alpha \to \pi-0にあたるので、aaとbbをそれぞれ独立に動かした二つの極限はともに存在し、その和は∫0πcos⁡mθ cos⁡nθ dθ\displaystyle\int_0^{\pi}\cos m\theta\,\cos n\theta\,d\thetaです。

積を和へ直すとcos⁡mθ cos⁡nθ=12(cos⁡(m+n)θ+cos⁡(m−n)θ)\cos m\theta\,\cos n\theta = \dfrac{1}{2}\bigl(\cos(m+n)\theta + \cos(m-n)\theta\bigr)です。00でない整数kkについて∫0πcos⁡kθ dθ=[sin⁡kθk]0π=0\displaystyle\int_0^{\pi}\cos k\theta\,d\theta = \left[\frac{\sin k\theta}{k}\right]_0^{\pi} = 0であり、k=0k=0については∫0π1 dθ=π\displaystyle\int_0^{\pi}1\,d\theta = \piです。

m≠nm \ne nのときはm−n≠0m-n \ne 0であり、mmとnnの少なくとも一方が00でないのでm+n≠0m+n \ne 0です。したがって積分は00です。m=n≥1m=n\ge 1のときはm−n=0m-n=0、m+n=2m≠0m+n=2m\ne 0なので積分は12π=π2\dfrac{1}{2}\pi = \dfrac{\pi}{2}です。m=n=0m=n=0のときはm+n=m−n=0m+n = m-n = 0なので積分は12(π+π)=π\dfrac{1}{2}(\pi+\pi) = \piです。▨

注意 5.3 (本記事が扱う範囲). 本記事は、定義 1.2で定めた多項式の列について、直交することを積分の計算として確かめるところまでを扱う。重みをつけた積分について直交する多項式の列を一般に定義し、その列が三項の漸化式を満たすこと、零点が区間の内部にあること、関数の近似に用いることといった一般論は、本単元では扱わない。x=±1x=\pm1で定義されない被積分関数について、定義 5.1のような極限が存在するかどうかを一般に判定する方法も、本単元では扱わない。

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