§C4.15パップス・ギュルダンの定理

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回転体の体積を求める積分は、回転させる平面図形についての二つの量に分かれることがあります。一つは図形の面積、もう一つは図形の重心が回転によって動いた距離です。この二つの積が体積に等しいという主張がパップス・ギュルダンの定理です。図形の面積と重心が先に分かっている場合には、積分を実行せずに体積が定まり、体積を積分で求めた場合には、その値の検算に用いることができます。

この定理には、回転軸が図形を横切らないという仮定が要ります。軸が図形を横切ると、軸の両側にある部分が回転によって同じ場所へ重なり、面積と距離の積は立体の体積を与えません。本記事は、図形の重心を 1次のモーメントによって定め、定理を仮定つきで示し、仮定を外した場合に結論が崩れる例を挙げます。定積分による面積と回転体の体積の立式は「微積分」が扱い、本記事はそれらを用います。

1 図形の重心を1次のモーメントで定める

図形を、xx軸に垂直な細い短冊に分けて考えます。位置xxにある幅dxdxの短冊は、下端がg(x)g(x)、上端がf(x)f(x)の線分を幅dxdxに広げたもので、その面積は{f(x)−g(x)} dx\{f(x)-g(x)\}\,dx、その中点の座標は(x, f(x)+g(x)2)\left(x,\ \dfrac{f(x)+g(x)}{2}\right)です。短冊の面積と、その中点の座標との積を足し合わせた量を、図形のモーメントと呼びます。yy軸に関するモーメントは∫abx{f(x)−g(x)} dx\displaystyle\int_a^b x\{f(x)-g(x)\}\,dx、xx軸に関するモーメントは

∫abf(x)+g(x)2{f(x)−g(x)} dx=∫ab{f(x)}2−{g(x)}22 dx\int_a^b \frac{f(x)+g(x)}{2}\{f(x)-g(x)\}\,dx = \int_a^b \frac{\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2}{2}\,dx

です。この量を面積で割ると、座標の平均にあたる点が定まります。

定義 1.1 (上下を二つのグラフではさまれた図形の重心).a<ba<bとし、ffとggは[a,b][a,b]で連続で、[a,b][a,b]のすべてのxxについてg(x)≤f(x)g(x) \le f(x)とする。

D={(x,y)∣a≤x≤b, g(x)≤y≤f(x)}D = \{(x,y) \mid a \le x \le b,\ g(x) \le y \le f(x)\}

と置き、DDの面積をS=∫ab{f(x)−g(x)} dxS = \displaystyle\int_a^b \{f(x)-g(x)\}\,dxとする。S>0S > 0であるとき、

xˉ=1S∫abx{f(x)−g(x)} dx,yˉ=1S∫ab{f(x)}2−{g(x)}22 dx\bar x = \frac{1}{S}\int_a^b x\{f(x)-g(x)\}\,dx, \qquad \bar y = \frac{1}{S}\int_a^b \frac{\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2}{2}\,dx

で定まる点(xˉ,yˉ)(\bar x, \bar y)をDDの重心という。SxˉS\bar xをDDのyy軸に関する 1次のモーメント、SyˉS\bar yをDDのxx軸に関する1次のモーメントという。

この定義が、図形の中心と呼ぶにふさわしい点を与えることを、二つの例で確かめます。

例 1.2 (長方形と直角三角形の重心).p>0p>0、q>0q>0とします。長方形D1={0≤x≤p, 0≤y≤q}D_1 = \{0\le x\le p,\ 0\le y\le q\}についてはf(x)=qf(x)=q、g(x)=0g(x)=0、S=pqS = pqなので

xˉ=1pq∫0pxq dx=p2,yˉ=1pq∫0pq22 dx=q2\bar x = \frac{1}{pq}\int_0^p xq\,dx = \frac{p}{2}, \qquad \bar y = \frac{1}{pq}\int_0^p \frac{q^2}{2}\,dx = \frac{q}{2}

となり、重心は長方形の中心です。

3点(0,0)(0,0)、(p,0)(p,0)、(p,q)(p,q)を頂点とする直角三角形D2D_2についてはf(x)=qpxf(x) = \dfrac{q}{p}x、g(x)=0g(x)=0、S=pq2S = \dfrac{pq}{2}なので

xˉ=2pq∫0px⋅qpx dx=2p2⋅p33=23p,yˉ=2pq∫0p12(qpx)2dx=qp3⋅p33=q3\bar x = \frac{2}{pq}\int_0^p x\cdot\frac{q}{p}x\,dx = \frac{2}{p^2}\cdot\frac{p^3}{3} = \frac{2}{3}p, \qquad \bar y = \frac{2}{pq}\int_0^p \frac{1}{2}\left(\frac{q}{p}x\right)^2 dx = \frac{q}{p^3}\cdot\frac{p^3}{3} = \frac{q}{3}

となります。これは、3頂点のxx座標の平均0+p+p3\dfrac{0+p+p}{3}と、yy座標の平均0+0+q3\dfrac{0+0+q}{3}に一致します。

注意 1.3 (本記事が重心を定める範囲).定義 1.1は、上下を二つの関数のグラフではさまれた図形についてだけ重心を定める。一般の平面図形に対する重心の定義と、その定義が座標軸の取り方によらないことは、本単元では扱わない。

2 定理と証明

重心を定めると、回転体の体積が面積と重心の位置だけで書き表されます。

定理 2.1 (パップス・ギュルダンの定理).DD、SS、xˉ\bar x、yˉ\bar yを定義 1.1のとおりとする。

  1. [a,b][a,b]のすべてのxxについて0≤g(x)0 \le g(x)であるとする。このとき、DDをxx軸のまわりに 1回転させてできる立体の体積VVはV=2πyˉ SV = 2\pi\bar y\,Sである。
  2. 0≤a0 \le aであるとする。このとき、DDをyy軸のまわりに1回転させてできる立体の体積VVはV=2πxˉ SV = 2\pi\bar x\,Sである。

いずれの仮定も、回転軸がDDを横切らないこと、すなわちDDが回転軸によって定まる二つの半平面の一方に含まれることを述べている。

証明. 1を示します。仮定0≤g(x)≤f(x)0 \le g(x) \le f(x)により、xxを固定したときにDDに属する点のxx軸からの距離はg(x)g(x)からf(x)f(x)まで動くので、xx軸に垂直な平面による回転体の断面は、内半径g(x)g(x)、外半径f(x)f(x)の円環です。したがって

V=π∫ab[{f(x)}2−{g(x)}2] dx=2π∫ab{f(x)}2−{g(x)}22 dxV = \pi\int_a^b \bigl[\{f(x)\}^2 - \{g(x)\}^2\bigr]\,dx = 2\pi\int_a^b \frac{\{f(x)\}^2-\{g(x)\}^2}{2}\,dx

です。右端の積分は定義 1.1によりSyˉS\bar yに等しいので、V=2πyˉ SV = 2\pi\bar y\,Sです。

2を示します。「円筒殻による回転体の体積」の§C4.12 公式 2.1はg=0g = 0の場合にあたります。その証明において、各小区間の上にある部分の高さをffの最小値・最大値ではなくf−gf-gの最小値・最大値にとると、同じ議論によって

V=2π∫abx{f(x)−g(x)} dxV = 2\pi\int_a^b x\{f(x)-g(x)\}\,dx

を得ます。ここで0≤a0 \le aという仮定は、xxがyy軸から点までの距離であることを保証するために用いています。右辺の積分は定義 1.1によりSxˉS\bar xに等しいので、V=2πxˉ SV = 2\pi\bar x\,Sです。▨

2πyˉ2\pi\bar yは、重心がxx軸のまわりの1回転で描く円の周の長さです。2πxˉ2\pi\bar xについても同様です。したがって定理は、回転体の体積が「図形の面積」と「重心が動いた距離」の積であることを述べています。

3 回転軸が図形を横切ってはならない

仮定を外すと結論は成り立ちません。

注意 3.1 (軸が図形を横切る場合).D={(x,y)∣0≤x≤1, −1≤y≤1}D = \{(x,y) \mid 0\le x\le 1,\ -1 \le y \le 1\}をxx軸のまわりに1回転させる。f(x)=1f(x)=1、g(x)=−1g(x)=-1なのでS=2S = 2であり、

Syˉ=∫0112−(−1)22 dx=0S\bar y = \int_0^1 \frac{1^2-(-1)^2}{2}\,dx = 0

からyˉ=0\bar y = 0である。したがって2πyˉ S=02\pi\bar y\,S = 0である。一方、回転させてできる立体は半径11、高さ11の円柱であり、その体積はπ\piである。0≠π0 \ne \piなので、定理 2.1の結論はこの場合には成り立たない。

原因は、xx軸より下にある部分と上にある部分が、回転によって同じ場所へ重なることである。この重なりのために、DDの点のxx軸からの距離は00から11までしか動かず、断面は内半径g(x)g(x)の円環にならない。同じ理由でπ∫ab[{f}2−{g}2] dx\pi\displaystyle\int_a^b [\{f\}^2-\{g\}^2]\,dxも体積を与えない。

注意 3.2 (境界が軸に含まれる場合は仮定を満たす).定理 2.1の1が要求するのは0≤g(x)0 \le g(x)であって0<g(x)0 < g(x)ではない。DDの境界の一部がxx軸に含まれていてもよく、半円板{x2+y2≤a2, y≥0}\{x^2+y^2\le a^2,\ y \ge 0\}はこの場合にあたる。軸が図形の境界に接することと、軸が図形を横切ることとは別である。

4 検算と、重心を求めることへの利用

定理は、体積と重心のうち一方が分かっているときに、もう一方を与えます。二つの向きの使い方を一つずつ示します。

例 4.1 (円環体の体積).0<r<R0 < r < Rとし、DDを円(x−R)2+y2=r2(x-R)^2+y^2 = r^2の周と内部とします。f(x)=r2−(x−R)2f(x) = \sqrt{r^2-(x-R)^2}、g(x)=−f(x)g(x) = -f(x)、a=R−ra = R-r、b=R+rb = R+rであり、S=πr2S = \pi r^2です。0<R−r=a0 < R-r = aなので定理 2.1の2の仮定が成り立ちます。

重心を求めます。u=x−Ru = x-Rと置換すると

Sxˉ=∫R−rR+r2xr2−(x−R)2 dx=2R∫−rrr2−u2 du+2∫−rrur2−u2 duS\bar x = \int_{R-r}^{R+r} 2x\sqrt{r^2-(x-R)^2}\,dx = 2R\int_{-r}^{r}\sqrt{r^2-u^2}\,du + 2\int_{-r}^{r} u\sqrt{r^2-u^2}\,du

です。第一の積分は半径rrの半円板の面積πr22\dfrac{\pi r^2}{2}です。第二の被積分関数は奇関数であり、積分区間が原点について対称なので、その積分は00です。したがってSxˉ=πr2RS\bar x = \pi r^2 Rであり、xˉ=R\bar x = Rです。円の中心が重心であることが確かめられました。定理により

V=2πR⋅πr2=2π2Rr2V = 2\pi R \cdot \pi r^2 = 2\pi^2 R r^2

です。

この値を、別の立式で検算します。yy軸に垂直な平面で切ると、∣y∣≤r|y| \le rのとき断面は外半径R+r2−y2R+\sqrt{r^2-y^2}、内半径R−r2−y2R-\sqrt{r^2-y^2}の円環です。w=r2−y2w = \sqrt{r^2-y^2}と置くと断面積はπ{(R+w)2−(R−w)2}=4πRw\pi\{(R+w)^2-(R-w)^2\} = 4\pi Rwなので

V=∫−rr4πRr2−y2 dy=4πR⋅πr22=2π2Rr2V = \int_{-r}^{r} 4\pi R\sqrt{r^2-y^2}\,dy = 4\pi R\cdot\frac{\pi r^2}{2} = 2\pi^2 R r^2

となり、同じ値が得られます。

例 4.2 (半円板の重心).a>0a>0とし、D={(x,y)∣x2+y2≤a2, y≥0}D = \{(x,y) \mid x^2+y^2 \le a^2,\ y \ge 0\}とします。f(x)=a2−x2f(x) = \sqrt{a^2-x^2}、g(x)=0g(x) = 0であり、0≤g(x)0 \le g(x)なので定理 2.1の1の仮定が成り立ちます(注意 3.2)。S=πa22S = \dfrac{\pi a^2}{2}です。

DDをxx軸のまわりに1回転させてできる立体は半径aaの球であり、その体積は43πa3\dfrac{4}{3}\pi a^3です。定理により43πa3=2πyˉ⋅πa22\dfrac{4}{3}\pi a^3 = 2\pi\bar y\cdot\dfrac{\pi a^2}{2}なので

yˉ=4πa3/3π2a2=4a3π\bar y = \frac{4\pi a^3/3}{\pi^2 a^2} = \frac{4a}{3\pi}

です。定義から直接計算しても

yˉ=2πa2∫−aaa2−x22 dx=1πa2⋅4a33=4a3π\bar y = \frac{2}{\pi a^2}\int_{-a}^{a}\frac{a^2-x^2}{2}\,dx = \frac{1}{\pi a^2}\cdot\frac{4a^3}{3} = \frac{4a}{3\pi}

となり、同じ値が得られます。

注意 4.3 (回転軸を平行に動かす場合). 直線y=cy = c(ただし[a,b][a,b]のすべてのxxについてc≤g(x)c \le g(x))のまわりの回転については、yy軸の向きに−c-cだけ平行移動して定理 2.1の1へ帰着する。平行移動によって図形の面積は変わらず、重心は同じだけ移るのでV=2π(yˉ−c)SV = 2\pi(\bar y - c)Sである。直線x=cx = c(ただしc≤ac \le a)についても同様にV=2π(xˉ−c)SV = 2\pi(\bar x - c)Sである。回転軸が座標軸に平行でない場合は、本記事では扱わない。

注意 4.4 (本記事が扱う範囲). 本記事は、回転体の体積を図形の面積と重心が動いた距離の積として表すところを扱う。円筒の側面を積分する立式そのものは「円筒殻による回転体の体積」が扱い、本記事の定理 2.1の 2はその立式を用いる。回転軸が座標軸に平行でない場合の立式は「斜軸回転体の体積」が、回転体でない立体の体積は「断面を追う立体の体積」が扱う。

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