1 方程式と二つの定数解
定義 1.1 (ロジスティック方程式).k>0、K>0とする。区間Iで微分可能な関数yについての条件
y′(t)=ky(t)(1−Ky(t))(I のすべての t について)をロジスティック方程式といい、この条件を満たす関数を、この方程式の解という。
右辺をKky(K−y)と書き直すと、右辺が0になるのはy=0またはy=Kのときに限ることが読み取れます。この二つの値は、値の変わらない解を与えます。
定理 1.2 (二つの定数解). 実数全体で定義され、恒等的に0である関数と、恒等的にKである関数は、いずれもロジスティック方程式の解である。
証明.y(t)=0(すべてのtについて)とするとy′(t)=0であり、右辺もk⋅0⋅(1−K0)=0なので、方程式が成り立ちます。y(t)=Kとするとy′(t)=0であり、右辺はk⋅K⋅(1−KK)=0なので、やはり方程式が成り立ちます。▨
2 変数分離と部分分数分解
以下では、解の値が0とKの間にある場合を扱います。この場合にはy(K−y)>0なので、両辺をy(K−y)で割ることができます。積分するために、まずy(K−y)1を二つの分数の和へ分けます。
定理 2.1 (部分分数分解).K>0とする。y=0かつy=Kを満たすすべての実数yについて
y(K−y)1=K1(y1+K−y1)が成り立つ。
証明. 右辺を通分すると
K1⋅y(K−y)(K−y)+y=K1⋅y(K−y)K=y(K−y)1となります。▨
定理 2.2 (変数分離による解の形).yを区間Iでのロジスティック方程式の解とし、Iのすべてのtについて0<y(t)<Kとする。このとき、正の定数Aが存在して、Iのすべてのtについて
y(t)=1+Ae−ktKが成り立つ。
証明. 方程式をy′(t)=Kky(t){K−y(t)}と書き直します。仮定によりy(t)>0、K−y(t)>0なので、両辺をy(t){K−y(t)}で割ることができ、定理 2.1により
K1(y(t)y′(t)+K−y(t)y′(t))=Kkです。両辺にKを掛けてtについて積分します。y(t)>0なのでy(t)y′(t)の原始関数の一つはlogy(t)であり、K−y(t)>0なのでK−y(t)y′(t)の原始関数の一つは−log{K−y(t)}です。したがって、ある定数cについて
logy(t)−log{K−y(t)}=kt+c,すなわちlogK−y(t)y(t)=kt+cです。両辺の指数をとると、B=ec>0と置いて
K−y(t)y(t)=Bektとなります。この式をy(t)について解きます。y(t)=Bekt{K−y(t)}からy(t){1+Bekt}=KBektであり、1+Bekt>0なので
y(t)=1+BektKBekt=1+B1e−ktKです。A=B1>0と置くと結論を得ます。▨
証明.A=y0K−y0と置くとA>0であり、分母と分子をy0で割るとy(t)=1+Ae−ktKです。A>0、e−kt>0なので分母は1より大きく、0<y(t)<Kが成り立ちます。とくに分母は0にならないので、この関数は実数全体で定義され、何回でも微分することができます。t=0とするとy(0)=1+AK=y0+(K−y0)Ky0=y0です。
方程式を満たすことを確かめます。u(t)=1+Ae−ktと置くとu′(t)=−kAe−ktであり、
y′(t)=−u(t)2Ku′(t)=u(t)2kKAe−ktです。一方
ky(t)(1−Ky(t))=k⋅u(t)K⋅(1−u(t)1)=k⋅u(t)K⋅u(t)u(t)−1=u(t)2kK{u(t)−1}であり、u(t)−1=Ae−ktなので、二つは一致します。▨
3 解の形
定理 3.1 (狭義単調性、極限、凹凸).0<y0<Kとし、yを公式 2.3の解、A=y0K−y0とする。このとき次が成り立つ。
- yは実数全体で狭義単調増加であり、t→−∞limy(t)=0、t→∞limy(t)=Kである。
- t1=k1logAと置くと、y(t1)=2Kであり、t<t1でy′′(t)>0、t>t1でy′′(t)<0である。すなわち点(t1,2K)は変曲点である。
- y′はt=t1で最大値4kKをとる。
証明. 1を示します。公式 2.3により0<y(t)<Kなのでy′(t)=Kky(t){K−y(t)}>0であり、yは狭義単調増加です。y(t)=1+Ae−ktKにおいて、t→−∞のときe−kt→∞なので分母は∞へ向かいy(t)→0、t→∞のときe−kt→0なので分母は1へ向かいy(t)→Kです。
2を示します。y′=ky−Kky2の両辺をtで微分すると
y′′=ky′−K2kyy′=ky′(1−K2y)です。y′>0、k>0なのでy′′の符号は1−K2yの符号、すなわちyと2Kの大小で決まります。y(t)=2Kは1+Ae−kt=2、すなわちAe−kt=1と同値であり、これを満たすtはt1=k1logAただ一つです。yは狭義単調増加なので、t<t1ではy(t)<2Kでy′′(t)>0、t>t1ではy(t)>2Kでy′′(t)<0です。
3を示します。2によりy′はt<t1で増加しt>t1で減少するので、t=t1で最大値をとります。その値はy(t1)=2Kをy′=Kky(K−y)へ代入してKk⋅2K⋅2K=4kKです。▨
グラフは、下に凸な部分から上に凸な部分へ変曲点で移り、二つの水平な直線y=0とy=Kにはさまれた形になります。これがSの字の形と呼ばれる形です。
定理 3.2 (量が小さいうちの増え方と、上限への近づき方).定理 3.1と同じ設定のもとで
t→−∞limy(t)e−kt=AK=K−y0Ky0,t→∞lim{K−y(t)}ekt=KA=y0K(K−y0)が成り立つ。
証明. 第一の等式について、
y(t)e−kt=1+Ae−ktK⋅e−kt=ekt+AKです。t→−∞のときekt→0なので、この値はAKへ収束します。
第二の等式について、
K−y(t)=K−1+Ae−ktK=1+Ae−ktKAe−ktなので
{K−y(t)}ekt=1+Ae−ktKAです。t→∞のときe−kt→0なので、この値はKAへ収束します。▨
第一の等式は、tが十分小さいところでy(t)がAKektに近いこと、すなわち量が小さいうちは指数関数的に増えることを述べています。第二の等式は、上限との差が指数関数的に小さくなることを述べています。y(t)→Kからy′(t)=ky(t)(1−Ky(t))→0となるので、増加そのものは止まります。
4 初期値が0とKの間にない場合