1 方程式と、三角関数による解
定義 1.1 (単振動の方程式).ω>0とする。実数全体で定義され2回微分可能な関数xについての条件
x′′(t)=−ω2x(t)(すべての実数 t について)を単振動の方程式といい、この条件を満たす関数を単振動の方程式の解という。
cosとsinは、2回微分すると符号が変わってもとの形に戻ります。この性質から、解が一つ得られます。
定理 1.2 (三角関数の重ね合わせが解であること).ω>0とし、A、Bを実数とする。このとき
x(t)=Acosωt+Bsinωtは単振動の方程式の解である。
証明.xは実数全体で何回でも微分することができます。合成関数の微分により
x′(t)=−Aωsinωt+Bωcosωt,x′′(t)=−Aω2cosωt−Bω2sinωtです。第二の式の右辺は−ω2(Acosωt+Bsinωt)=−ω2x(t)に等しいので、xは単振動の方程式を満たします。▨
代入によって確かめたのは、この形の関数が解であることだけです。この形以外に解がないかどうかは、まだ分かりません。それを決めるために、解が満たす別の関係式を用意します。
2 速度の2乗と位置の2乗の重みつきの和
定理 2.1 (保存される量).xを単振動の方程式の解とし、
E(t)={x′(t)}2+ω2{x(t)}2と置く。このときEは定数関数である。
証明.xは2回微分可能なのでEは微分可能で、積の微分と合成関数の微分により
E′(t)=2x′(t)x′′(t)+2ω2x(t)x′(t)です。xは解なのでx′′(t)=−ω2x(t)であり、これを代入すると
E′(t)=2x′(t){−ω2x(t)}+2ω2x(t)x′(t)=0となります。導関数が実数全体で恒等的に0である関数は定数関数なので、Eは定数関数です。▨
Eは、速度にあたるx′の2乗と、位置にあたるxの2乗に重みω2を付けたものとの和です。この量が時間によらないことから、解の大きさに上からの評価が付きます。
定理 2.2 (解は有界である).xを単振動の方程式の解とし、Eを定理 2.1の定数とする。このとき、すべての実数tについて
∣x(t)∣≤ωE,∣x′(t)∣≤Eが成り立つ。
証明.{x′(t)}2≥0なのでω2{x(t)}2≤Eです。ω>0なので両辺をω2で割って平方根をとると、第一の不等式を得ます。同じくω2{x(t)}2≥0から{x′(t)}2≤Eとなり、第二の不等式を得ます。▨
3 初期条件によって解が定まる
保存される量は、二つの解の差についても定数です。この事実から、t=0における位置と速度が解を決めることが従います。
定理 3.1 (初期条件による解の決定).ω>0とし、x0、v0を実数とする。単振動の方程式の解でx(0)=x0かつx′(0)=v0を満たすものは
x(t)=x0cosωt+ωv0sinωtただ一つである。
証明. まず、この関数が条件を満たすことを確かめます。定理 1.2でA=x0、B=ωv0とすると解であり、x(0)=x0、x′(0)=−x0ωsin0+ωv0ωcos0=v0です。
次に、条件を満たす解が二つ以下であることを示します。xとyをともに解とし、x(0)=y(0)=x0、x′(0)=y′(0)=v0とします。u=x−yと置くと、uは2回微分可能で
u′′(t)=x′′(t)−y′′(t)=−ω2x(t)+ω2y(t)=−ω2u(t)なので、uも単振動の方程式の解です。u(0)=0、u′(0)=0なので、uについて定理 2.1の定数は
Eu={u′(0)}2+ω2{u(0)}2=0です。したがってすべてのtについて{u′(t)}2+ω2{u(t)}2=0であり、左辺は0以上の二つの数の和なので、両方が0です。ω>0からu(t)=0であり、x=yです。▨
4 振幅と周期
解を一つの三角関数にまとめると、保存される量が振幅と結び付きます。
証明.C>0であり、(CA)2+(CB)2=1なので、cosφ=CA、sinφ=CBを満たす実数φが存在します。余弦の加法定理により
Ccos(ωt−φ)=C(cosωtcosφ+sinωtsinφ)=Acosωt+Bsinωtとなります。▨
定理 4.2 (保存される量と振幅・周期の関係).xを単振動の方程式の解とし、x(0)=x0、x′(0)=v0、(x0,v0)=(0,0)とする。このとき定理 2.1の定数はE=v02+ω2x02であり、この解の振幅Cは
C=ωEである。またxは周期ω2πをもつ。
証明.Eの値はt=0における値{x′(0)}2+ω2{x(0)}2=v02+ω2x02です。定理 3.1によりA=x0、B=ωv0なので公式 4.1のCは
C=x02+ω2v02=ωω2x02+v02=ωEです。周期については、T=ω2πと置くとω(t+T)−φ=(ωt−φ)+2πであり、cosは周期2πをもつのでx(t+T)=x(t)となります。▨
定理 2.2が与えた上からの評価ωEは、振幅そのものです。すなわち、この評価には改善の余地がありません。
例 4.3 (初期条件から解を定める).ω=2、x(0)=1、x′(0)=−4とします。定理 3.1により
x(t)=cos2t+2−4sin2t=cos2t−2sin2tです。保存される量はE=(−4)2+22⋅12=20であり、振幅は220=5、周期は22π=πです。
検算として、Eを任意のtで計算します。x′(t)=−2sin2t−4cos2tなので
{x′(t)}2+4{x(t)}2=(2sin2t+4cos2t)2+4(cos2t−2sin2t)2です。展開するとsin2tcos2tを含む項が打ち消し合い、(4+16)sin22t+(16+4)cos22t=20となります。
5 符号が逆である場合