連続的な値をとる確率変数について、確率を密度曲線の下の面積として表します。面積の厳密な定義を Lebesgue 積分として与える一般理論は、E9「測度と積分」の「Lebesgue 積分」へ委ねます。
1 正規分布
定義 1.1 (正規分布). 実数と正の実数に対して、密度関数
をもつ確率分布を、平均、分散の正規分布といい、と書きます。
この密度関数が全実数上で1に規格化され、平均、分散をもつことの証明は「基本的な確率分布」へ委ねます。
区間に入る確率は、からまでの密度曲線の下の面積です。連続分布では一点の面積が0なので、です。
2 標準化
標準化は正規分布だけに定義される操作ではありません。
定理 2.1 (線形標準化). 有限な平均と正の標準偏差をもつ確率変数に対して、
とおくと、、が成り立ちます。さらにならばです。
証明. 期待値の線形性と分散の定数倍の公式から、
を得ます。正規分布の場合には、という変数変換により密度関数が標準正規分布の密度へ移ります。この密度変換の証明は「確率変数の変換と密度変換」へ委ねます。□
例 2.2 (の確率を標準化して求める).とします。
です。標準正規分布表から最後の確率を求めます。
偏差値も線形標準化の一種です。この変換で平均が50、標準偏差が10になることは、元の分布が正規分布でなくても成り立ちます。正規性が必要になるのは、変換後の確率を正規分布表で計算するときです。
3 中心極限定理と二項分布の近似
定理 3.1 (中心極限定理の使用形). 独立で同じ分布に従い、有限な平均と正で有限な分散をもつ確率変数について、標本数が大きいとき、
の分布を標準正規分布で近似することができます。
本記事では中心極限定理を証明せず、「中心極限定理」へ委ねます。標本が独立でない場合、同じ分布に従わない場合、分散が有限でない場合には、この形をそのまま適用することはできません。
注意 3.2 (二項分布の正規近似).でとがともに十分大きいとき、を平均、分散の正規分布で近似することができます。目安として両者が10以上であることを用いる場合があります。整数値の区間を連続分布で近似するときは、例えばをで近似する連続補正を用います。
4 演習
- 平均70、標準偏差8の確率変数を標準化したとき、値82は標準化後にいくつになりますか。
- 線形標準化によって平均0、分散1になるために正規性が不要であることを証明します。
- を正規分布で近似するときの平均、分散、に用いる連続補正後の区間を答えます。
- 平均40、分散25の確率変数について、の標準化後の値を求めます。また、が正規分布に従うことを仮定しなくても、この線形標準化後の平均と分散について何を述べることができるかを示します。
1の答えはです。2では期待値の線形性と分散の定数倍の公式だけを用いて、を得るので、正規性を用いません。3では平均20、分散16、連続補正後の区間はです。4では標準偏差は5なので、標準化後の値はです。分布の形を仮定しなくても、平均が有限で分散が25ならば、標準化後の平均は0、分散は1です。標準正規分布表による確率計算には、正規性または適切な正規近似が別に必要です。