1 定義
定義 1.1 (通常母関数). 数列(an)n≥0に対して、形式的なべき級数
A(x)=n≥0∑anxnを数列の通常母関数といいます。本記事では収束を仮定せず、同じ次数の係数を比較します。
例 1.2 (選び方を積で表す). 赤玉を0個から2個、青玉を0個から3個選ぶとします。合計n個を選ぶ方法の個数は
(1+x+x2)(1+x+x2+x3)のxnの係数です。各因子で選んだ次数の和が合計個数を表します。
2 漸化式を方程式へ変える
フィボナッチ数列をF0=0,F1=1,Fn+2=Fn+1+Fnで定めます。
定理 2.1 (フィボナッチ数列の母関数). 形式的なべき級数F(x)=∑n≥0Fnxnは
F(x)=1−x−x2xを満たします。
証明. 漸化式へxn+2を掛けてn≥0について足すと、
n≥0∑Fn+2xn+2=xn≥0∑Fn+1xn+1+x2n≥0∑Fnxnです。F0=0,F1=1を用いると
F(x)−x=xF(x)+x2F(x)なので、(1−x−x2)F(x)=xを得ます。形式的べき級数1−x−x2の定数項は1なので逆数が存在し、結論を得ます。▨
3 一般項まで導く
α=(1+5)/2、β=(1−5)/2とします。このとき1−x−x2=(1−αx)(1−βx)です。
証明. 部分分数分解により
(1−αx)(1−βx)x=51(1−αx1−1−βx1)です。形式的等比級数
1−cx1=n≥0∑cnxnを用いると、
F(x)=n≥0∑5αn−βnxn.同じ次数の係数を比較すると結論を得ます。▨
4 演習
- a0=1、an+1=2anの母関数を求めます。
- 1/(1−x)2のxnの係数がn+1であることを、1/(1−x)の形式的等比級数を二つ掛けて示します。
- フィボナッチ数列の母関数の証明で、初期条件がどの項に現れたかを説明します。
- a0=2、an+1=3anで定める数列の通常母関数A(x)=∑n≥0anxnを求め、係数から一般項を示します。
1の答えは1/(1−2x)です。2では係数はi+j=nを満たす非負整数の組の個数なのでn+1です。3では左辺の添字をずらしたときにF0とF1xが分離し、F0=0,F1=1から左辺がF(x)−xになります。4では漸化式へxn+1を掛けて足すとA(x)−2=3xA(x)なので、A(x)=2/(1−3x)です。形式的等比級数を用いるとA(x)=2∑n≥03nxnなので、an=2⋅3nです。