§B4.10確率変数の期待値・分散

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試行の結果そのものと、結果へ数を対応させた確率変数と、その値の確率分布を区別します。

1 確率変数と確率分布

定義 1.1 (確率変数と確率分布). 有限標本空間Ω\Omega上の確率変数とは、各結果ω∈Ω\omega\in\Omegaに実数X(ω)X(\omega)を対応させる関数です。XXがとりうる値をx1,…,xmx_1,\ldots,x_mとするとき、

pi=P(X=xi)p_i=P(X=x_i)

を並べたものをXXの確率分布といいます。各pi≥0p_i\ge0であり、∑i=1mpi=1\sum_{i=1}^{m}p_i=1が成り立ちます。

2 期待値と分散

定義 2.1 (期待値・分散・標準偏差). 有限個の値x1,…,xmx_1,\ldots,x_mをとる確率変数XXの期待値、分散、標準偏差を

E[X]=∑i=1mxipi,V[X]=E[(X−E[X])2],σX=V[X]E[X]=\sum_{i=1}^{m}x_ip_i,\qquad V[X]=E[(X-E[X])^2],\qquad \sigma_X=\sqrt{V[X]}

と定義します。

期待値は多数回の平均の理論値ですが、一回の試行で実際に得る値とは限りません。公平な六面体サイコロの期待値は3.53.5ですが、一回で3.53.5の目は出ません。

公式 2.2 (分散の計算公式).

V[X]=E[X2]−E[X]2.V[X]=E[X^2]-E[X]^2.

証明.(X−E[X])2=X2−2E[X]X+E[X]2(X-E[X])^2=X^2-2E[X]X+E[X]^2の期待値を取り、定数E[X]E[X]を用いて整理すると公式を得ます。▨

3 期待値の線形性

定理 3.1 (期待値の線形性). 同じ有限標本空間上の確率変数X,YX,Yと実数a,ba,bについて、

E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y]E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y]

が成り立ちます。X,YX,Yの独立性は仮定しません。

証明.X=xi,Y=yjX=x_i,Y=y_jとなる同時確率をpijp_{ij}とすると、

E[aX+bY]=∑i,j(axi+byj)pij.E[aX+bY]=\sum_{i,j}(ax_i+by_j)p_{ij}.

和を分け、∑jpij=P(X=xi)\sum_jp_{ij}=P(X=x_i)と∑ipij=P(Y=yj)\sum_ip_{ij}=P(Y=y_j)を用いると結論を得ます。▨

4 共分散と分散の加法性

定義 4.1 (共分散). 有限個の値をとる確率変数X,YX,Yの共分散を

Cov⁡(X,Y)=E[(X−E[X])(Y−E[Y])]\operatorname{Cov}(X,Y)=E[(X-E[X])(Y-E[Y])]

と定義します。

公式 4.2 (和の分散).

V[X+Y]=V[X]+V[Y]+2Cov⁡(X,Y).V[X+Y]=V[X]+V[Y]+2\operatorname{Cov}(X,Y).

したがって、Cov⁡(X,Y)=0\operatorname{Cov}(X,Y)=0ならばV[X+Y]=V[X]+V[Y]V[X+Y]=V[X]+V[Y]が成り立ちます。

証明.(X+Y−E[X+Y])2(X+Y-E[X+Y])^2を展開し、期待値の線形性を用いると公式を得ます。▨

定義 4.3 (確率変数の独立). 有限個の値をとる確率変数X,YX,Yが、すべての実数x,yx,yについて

P(X=x,Y=y)=P(X=x)P(Y=y)P(X=x,Y=y)=P(X=x)P(Y=y)

を満たすとき、XXとYYは独立であるといいます。

定理 4.4 (独立な確率変数の共分散).X,YX,Yが独立で、有限個の値をとるならば、Cov⁡(X,Y)=0\operatorname{Cov}(X,Y)=0です。

証明. 独立性から同時確率が積に分かれるのでE[XY]=E[X]E[Y]E[XY]=E[X]E[Y]です。共分散をE[XY]−E[X]E[Y]E[XY]-E[X]E[Y]と書けば0になります。▨

独立性は分散の加法性の十分条件ですが、必要条件ではありません。

例 4.5 (独立でないが共分散が0である例).XXが−1,0,1-1,0,1をそれぞれ確率1/31/3でとり、Y=X2Y=X^2とします。YYはXXから決まるので独立ではありません。一方、E[X]=0E[X]=0かつE[XY]=E[X3]=0E[XY]=E[X^3]=0なので、Cov⁡(X,Y)=0\operatorname{Cov}(X,Y)=0です。

例 4.6 (表を1、裏を0とする確率変数). 表の確率がppである硬貨について、表ならばX=1X=1、裏ならばX=0X=0とします。このとき

E[X]=p,V[X]=p(1−p)E[X]=p,\qquad V[X]=p(1-p)

です。

5 演習

  1. P(X=0)=1/4P(X=0)=1/4、P(X=2)=3/4P(X=2)=3/4のとき、期待値と分散を求めます。
  2. V[X+Y]=V[X]+V[Y]V[X+Y]=V[X]+V[Y]が成り立つために、独立性が必要条件ではない理由を説明します。
  3. 期待値の線形性の証明で独立性を使わない箇所を、同時分布の和から確認します。

1の答えはE[X]=3/2E[X]=3/2、V[X]=3/4V[X]=3/4です。2では共分散が0であれば十分であり、上のY=X2Y=X^2の例は独立でない反例です。3では同時確率の和をXXの周辺確率とYYの周辺確率へ分けるだけであり、pijp_{ij}を積へ分解していません。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

次の確率分布に従う確率変数 X について、期待値 E[X] と分散 V(X) を求めよ。

解法の型E[X] ==Σ\Sigmax⋅P(X=x)x\cdot P(X=x)、V(X) == E[X²] − (E[X])²、E[aX+b] == aE[X]+b、V(aX+b) == a²V(X)

  1. 10 本のくじがあり、得点が 0 点のものが 5 本、1 点のものが 1 本、2 点のものが 3 本、3 点のものが 1 本ある。この中から1本を無作為に引いたときの得点を X とする。Y == 3X - 6 とおくとき、Y の期待値 E[Y] と分散 V(Y) を求めよ。

    X0123計P121103101101Y=3X−6\begin{array}{c|cccc|c} X & 0 & 1 & 2 & 3 & \text{計} \\\hline P & \dfrac{1}{2} & \dfrac{1}{10} & \dfrac{3}{10} & \dfrac{1}{10} & 1 \end{array} \qquad Y = 3X - 6
  2. 10 本のくじがあり、得点が 1 点のものが 2 本、2 点のものが 1 本、3 点のものが 2 本、4 点のものが 5 本ある。この中から1本を無作為に引いたときの得点を X とする。X の期待値 E[X] と分散 V(X) を求めよ。

    X1234計P1511015121\begin{array}{c|cccc|c} X & 1 & 2 & 3 & 4 & \text{計} \\\hline P & \dfrac{1}{5} & \dfrac{1}{10} & \dfrac{1}{5} & \dfrac{1}{2} & 1 \end{array}

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

次の確率分布に従う確率変数 X について、期待値 E[X] と分散 V(X) を求めよ。

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