標本から母集団について述べるときは、無作為抽出と正規近似の条件を明示します。
1 推定量と標準誤差
定義 1.1 (標準誤差). 推定量の標本抽出による標準偏差を標準誤差といいます。独立同分布な標本の母標準偏差がならば、標本平均の標準誤差はです。
中心極限定理の標準的な条件のもとで、が大きいとき、標本平均の分布を正規分布で近似します。証明は「中心極限定理」へ委ねます。
2 母平均の信頼区間
公式 2.1 (母平均の95パーセント信頼区間). 独立同分布な無作為標本を取り、母標準偏差が既知で、標本平均の分布を正規分布で近似することができるとします。このとき母平均の95パーセント信頼区間は
です。
95パーセントとは、同じ抽出と区間作成の手順を繰り返したとき、作った区間の約95パーセントが固定された母平均を含むという意味です。得られた一本の区間について、母平均が95パーセントの確率で入るという意味ではありません。
3 母比率の信頼区間
公式 3.1 (母比率の95パーセント信頼区間). 大きさの独立な無作為標本における成功数を、標本比率をとします。とがともに十分大きいとき、母比率の近似的な95パーセント信頼区間を
とします。
例 3.2 (母比率の区間推定). 無作為に選んだ400人のうち240人が賛成したとします。、標準誤差の推定値は
です。近似的な95パーセント信頼区間は
なので、およそです。
4 仮説検定
定義 4.1 (帰無仮説・対立仮説・検定統計量・p値). 検定で基準として仮定する主張を帰無仮説、帰無仮説と比較して支持を調べる主張を対立仮説といいます。標本から計算し、帰無仮説のもとでの分布が既知である量を検定統計量といいます。観測した検定統計量と同程度以上に対立仮説側へ外れた値が、帰無仮説のもとで現れる確率をp値といいます。
例 4.2 (母比率の両側検定).、とします。人中224人が成功したのでです。帰無仮説のもとで
です。両側p値は標準正規分布についてであり、約0.016です。有意水準5パーセントなら帰無仮説を棄却します。
帰無仮説を棄却しないことは、帰無仮説が正しいことの証明ではありません。p値は帰無仮説が正しい確率でも、効果の大きさでもありません。
5 演習
- 標本平均50、既知の母標準偏差12、標本数144のとき、母平均の95パーセント信頼区間を求めます。
- 母比率について、を検定するときの検定統計量を式で示します。
- p値が0.03であることから述べることができる内容と、述べることができない内容を区別します。
- 母標準偏差が3である母集団から、独立同分布な無作為標本を100個取り、標本平均12を得たとします。標本平均を正規分布で近似することができるとして、母平均の95パーセント信頼区間を求め、その95パーセントの意味を説明します。
1の答えは、すなわちおよそです。2の統計量は
です。3では、帰無仮説のもとで観測結果と同程度以上に対立仮説側へ外れる確率が0.03であると述べることができます。帰無仮説が正しい確率が0.03であること、または効果が大きいことは結論することができません。4では標準誤差はなので、区間は、すなわち約です。95パーセントは、同じ標本抽出と区間構成を繰り返したときに、作られた区間が母平均を含む長期的割合を表します。