§B4.13統計的推測

最終更新

標本から母集団について述べるときは、無作為抽出と正規近似の条件を明示します。

1 推定量と標準誤差

定義 1.1 (標準誤差). 推定量の標本抽出による標準偏差を標準誤差といいます。独立同分布な標本X1,…,XnX_1,\ldots,X_nの母標準偏差がσ\sigmaならば、標本平均Xˉ\bar Xの標準誤差はσ/n\sigma/\sqrt nです。

中心極限定理の標準的な条件のもとで、nnが大きいとき、標本平均の分布を正規分布で近似します。証明は「中心極限定理」へ委ねます。

2 母平均の信頼区間

公式 2.1 (母平均の95パーセント信頼区間). 独立同分布な無作為標本を取り、母標準偏差σ\sigmaが既知で、標本平均の分布を正規分布で近似することができるとします。このとき母平均μ\muの95パーセント信頼区間は

Xˉ−1.96σn≤μ≤Xˉ+1.96σn\bar X-1.96\frac{\sigma}{\sqrt n} \le\mu\le \bar X+1.96\frac{\sigma}{\sqrt n}

です。

95パーセントとは、同じ抽出と区間作成の手順を繰り返したとき、作った区間の約95パーセントが固定された母平均を含むという意味です。得られた一本の区間について、母平均が95パーセントの確率で入るという意味ではありません。

3 母比率の信頼区間

公式 3.1 (母比率の95パーセント信頼区間). 大きさnnの独立な無作為標本における成功数をXX、標本比率をp^=X/n\hat p=X/nとします。np^n\hat pとn(1−p^)n(1-\hat p)がともに十分大きいとき、母比率ppの近似的な95パーセント信頼区間を

p^−1.96p^(1−p^)n≤p≤p^+1.96p^(1−p^)n\hat p-1.96\sqrt{\frac{\hat p(1-\hat p)}{n}} \le p\le \hat p+1.96\sqrt{\frac{\hat p(1-\hat p)}{n}}

とします。

例 3.2 (母比率の区間推定). 無作為に選んだ400人のうち240人が賛成したとします。p^=0.60\hat p=0.60、標準誤差の推定値は

0.6⋅0.4400≈0.0245\sqrt{\frac{0.6\cdot0.4}{400}}\approx0.0245

です。近似的な95パーセント信頼区間は

0.60±1.96⋅0.02450.60\pm1.96\cdot0.0245

なので、およそ[0.552,0.648][0.552,0.648]です。

4 仮説検定

定義 4.1 (帰無仮説・対立仮説・検定統計量・p値). 検定で基準として仮定する主張を帰無仮説H0H_0、帰無仮説と比較して支持を調べる主張を対立仮説H1H_1といいます。標本から計算し、帰無仮説のもとでの分布が既知である量を検定統計量といいます。観測した検定統計量と同程度以上に対立仮説側へ外れた値が、帰無仮説のもとで現れる確率をp値といいます。

例 4.2 (母比率の両側検定).H0:p=0.5H_0:p=0.5、H1:p≠0.5H_1:p\ne0.5とします。n=400n=400人中224人が成功したのでp^=0.56\hat p=0.56です。帰無仮説のもとで

Z=p^−0.50.5(1−0.5)/400=2.4Z=\frac{\hat p-0.5}{\sqrt{0.5(1-0.5)/400}}=2.4

です。両側p値は標準正規分布についてP(∣Z∣≥2.4)P(|Z|\ge2.4)であり、約0.016です。有意水準5パーセントなら帰無仮説を棄却します。

帰無仮説を棄却しないことは、帰無仮説が正しいことの証明ではありません。p値は帰無仮説が正しい確率でも、効果の大きさでもありません。

5 演習

  1. 標本平均50、既知の母標準偏差12、標本数144のとき、母平均の95パーセント信頼区間を求めます。
  2. 母比率についてH0:p=0.3H_0:p=0.3、H1:p>0.3H_1:p>0.3を検定するときの検定統計量を式で示します。
  3. p値が0.03であることから述べることができる内容と、述べることができない内容を区別します。
  4. 母標準偏差が3である母集団から、独立同分布な無作為標本を100個取り、標本平均12を得たとします。標本平均を正規分布で近似することができるとして、母平均の95パーセント信頼区間を求め、その95パーセントの意味を説明します。

1の答えは50±1.9650\pm1.96、すなわちおよそ[48.04,51.96][48.04,51.96]です。2の統計量は

p^−0.30.3⋅0.7/n\frac{\hat p-0.3}{\sqrt{0.3\cdot0.7/n}}

です。3では、帰無仮説のもとで観測結果と同程度以上に対立仮説側へ外れる確率が0.03であると述べることができます。帰無仮説が正しい確率が0.03であること、または効果が大きいことは結論することができません。4では標準誤差は3/100=0.33/\sqrt{100}=0.3なので、区間は12±1.96⋅0.312\pm1.96\cdot0.3、すなわち約[11.412,12.588][11.412,12.588]です。95パーセントは、同じ標本抽出と区間構成を繰り返したときに、作られた区間が母平均を含む長期的割合を表します。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

標準正規分布について P(−1.96 ≤\le Z ≤\le 1.96) == 0.95 を用いてよい。次の問いに答えよ。

解法の型母平均の95%信頼区間: x̄ − 1.96σ/1.96\sigma/√n ≤\leμ\mu≤\le x̄ + 1.96σ/1.96\sigma/√n。母比率: p̂ ± 1.96√(p̂(1−p̂)/n)。有意水準5%の両側検定の棄却域: |z| > 1.96

  1. 母標準偏差が 40 である母集団から大きさ 400 の標本を無作為に取ったところ、標本平均は 79 であった。母平均 μ\mu の95%信頼区間を求めよ。

    n=400,xˉ=79,σ=40n = 400,\quad \bar{x} = 79,\quad \sigma = 40
  2. ある母集団から大きさ 900 の標本を無作為に取ったところ、810 個が特性 A を持っていた。母比率 p の95%信頼区間を求めよ。

    n=900,p^=810900=0.9n = 900,\quad \hat{p} = \dfrac{810}{900} = 0.9
  3. あるコインを 400 回投げたところ、表が 216 回出た。このコインの表の出る確率は 1/2 でないといえるか。有意水準5%で両側検定せよ。

    n=400,表の回数=216,z=216−200400⋅12⋅12n = 400,\quad \text{表の回数} = 216,\quad z = \dfrac{216 - 200}{\sqrt{400 \cdot \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2}}}
  4. 母標準偏差 100 の母集団について「母平均は 80 である」という帰無仮説を立てる。大きさ 400 の標本の標本平均が 87 であったとき、有意水準5%で両側検定せよ。

    n=400,xˉ=87,σ=100,μ0=80,z=xˉ−μ0σ/nn = 400,\quad \bar{x} = 87,\quad \sigma = 100,\quad \mu_0 = 80,\quad z = \dfrac{\bar{x} - \mu_0}{\sigma/\sqrt{n}}
  5. 母標準偏差が 30 である母集団から大きさ 100 の標本を無作為に取ったところ、標本平均は 64 であった。母平均 μ\mu の95%信頼区間を求めよ。

    n=100,xˉ=64,σ=30n = 100,\quad \bar{x} = 64,\quad \sigma = 30
  6. ある母集団から大きさ 400 の標本を無作為に取ったところ、80 個が特性 A を持っていた。母比率 p の95%信頼区間を求めよ。

    n=400,p^=80400=0.2n = 400,\quad \hat{p} = \dfrac{80}{400} = 0.2
  7. あるコインを 100 回投げたところ、表が 43 回出た。このコインの表の出る確率は 1/2 でないといえるか。有意水準5%で両側検定せよ。

    n=100,表の回数=43,z=43−50100⋅12⋅12n = 100,\quad \text{表の回数} = 43,\quad z = \dfrac{43 - 50}{\sqrt{100 \cdot \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2}}}
  8. 母標準偏差 50 の母集団について「母平均は 120 である」という帰無仮説を立てる。大きさ 100 の標本の標本平均が 129 であったとき、有意水準5%で両側検定せよ。

    n=100,xˉ=129,σ=50,μ0=120,z=xˉ−μ0σ/nn = 100,\quad \bar{x} = 129,\quad \sigma = 50,\quad \mu_0 = 120,\quad z = \dfrac{\bar{x} - \mu_0}{\sigma/\sqrt{n}}
  9. 母標準偏差が 40 である母集団から大きさ 400 の標本を無作為に取ったところ、標本平均は 92 であった。母平均 μ\mu の95%信頼区間を求めよ。

    n=400,xˉ=92,σ=40n = 400,\quad \bar{x} = 92,\quad \sigma = 40
  10. ある母集団から大きさ 900 の標本を無作為に取ったところ、90 個が特性 A を持っていた。母比率 p の95%信頼区間を求めよ。

    n=900,p^=90900=0.1n = 900,\quad \hat{p} = \dfrac{90}{900} = 0.1

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

標準正規分布について P(−1.96 ≤\le Z ≤\le 1.96) == 0.95 を用いてよい。次の問いに答えよ。

演習を読み込み中…

前提記事