1 Lp空間の完備性
§E2.5 定義 1.1によれば、完備性を示すには、Lp(μ)の任意の Cauchy 列がLp(μ)の元へノルム収束することを示せばよい。有限なpとp=∞では、点ごとの極限を得る仕組みが異なる。有限なpでは差分の絶対値の級数を積分で制御し、p=∞では差分を同じ零集合の外で一様に制御する。
定理 1.1 (Riesz–Fischer の定理). 可算選択公理を仮定する。任意の測度空間(X,F,μ)、K∈{R,C}、および1≤p≤∞に対して、Lp(X,F,μ;K)は完備なノルム空間である。
可算選択公理を用いる箇所は、Lpの Cauchy 列の各同値類から有限値可測な代表元を一つずつ選ぶ箇所だけである。以下で用いる部分列の添字は、Cauchy 条件を満たす自然数の集合の最小元として定める。
証明.(un)n≥1をLp(μ;K)の Cauchy 列とする。可算選択公理により、各nに対してun=[fn]を満たす有限値可測関数fn:X→Kを同時に選ぶ。
最初に1≤p<∞とする。各k≥1に対して
Ak={r∈Z≥1 ∀m,n≥r, ∥um−un∥p<2−k}とおく。Cauchy 条件によりAkは空でない。n1=minA1とし、nkを定めた後に
nk+1=min{r∈Ak+1∣r>nk}と定める。右辺の集合は空でないから、この再帰的な定義は可能である。自然数の最小元を用いているため、この添字の構成は新たな選択公理を必要としない。nk∈Akかつnk+1>nkであるから、
∥unk+1−unk∥p<2−k.(1)可測関数
dk=∣fnk+1−fnk∣,SN=k=1∑Ndkを定める。有限和に対する Minkowski の不等式§E9.12 定理 5.1と (1) により、
∥SN∥p≤k=1∑N∥fnk+1−fnk∥p<k=1∑N2−k<1(2)である。SNpは非負可測関数の単調増加列である。単調収束定理§E9.7 定理 1.1と (2) を用いると、
∫X(k=1∑∞dk)pdμ=N→∞lim∫XSNpdμ≤1.(3)S=∑k=1∞dkとおく。(3) からS<∞がほとんど至る所で成り立つことを確認する。Z={x∈X∣S(x)=∞}とおけば、任意の正の整数qに対してq1Z≤Spである。積分の単調性により
qμ(Z)≤∫XSpdμ≤1であるから、μ(Z)=0である。
x∈X∖Zでは
k=1∑∞∣fnk+1(x)−fnk(x)∣<∞である。K=Rの場合には、差分の絶対値級数が収束するため(fnk(x))kは Cauchy 列であり、実数の完備性により収束する。K=Cの場合には、
k=1∑∞Re(fnk+1(x)−fnk(x))≤k=1∑∞∣fnk+1(x)−fnk(x)∣<∞が成り立ち、虚部についても同じ評価が成り立つ。したがって、実部の列と虚部の列はそれぞれ実数の
Cauchy 列であり、実数の完備性により収束する。ゆえに(fnk(x))kは複素数列として収束する。そこで
f(x)={k→∞limfnk(x),0,x∈X∖Z,x∈Zと定める。1X∖Zfnkは有限値可測関数であり、この列はXのすべての点でfへ収束する。実数値の場合は可測関数の極限に関する§E9.5 定理 4.1によりfは可測である。複素数値の場合は実部と虚部に同じ結果を適用し、§E9.5 定理 6.1を用いると、やはりfは可測である。
固定したj≥1に対して
Tj,N=k=j∑Ndk,Tj=k=j∑∞dkとおく。再び有限和の Minkowski の不等式と単調収束定理を用いると、
∫XTjpdμ=N→∞lim∫XTj,Npdμ≤k=j∑∞2−kp=2p(1−j).(4)X∖Z上の望遠鏡和から
∣f−fnj∣≤Tjである。零集合Zを無視して積分の単調性を適用し、(4) を用いると、
∥f−fnj∥p≤21−j⟶0(5)を得る。とくにf−fn1∈Lp(μ;K)である。fn1∈Lp(μ;K)と§E9.12 命題 3.4によりf∈Lp(μ;K)である。
部分列だけでなくもとの列が[f]へ収束することを示す。ε>0を任意にとる。(un)は Cauchy 列であるから、m,n≥Nなら∥um−un∥p<ε/2となるNが存在する。(5) により、nj≥Nかつ∥unj−[f]∥p<ε/2を満たすjを選ぶことができる。したがって、n≥Nならば
∥un−[f]∥p≤∥un−unj∥p+∥unj−[f]∥p<εである。よってun→[f]が成り立つ。
次にp=∞とする。有限なpの場合と同じ集合
Ak={r∈Z≥1 ∀m,n≥r, ∥um−un∥∞<2−k}を用い、n1=minA1、nk+1=min{r∈Ak+1∣r>nk}と定める。このとき
∥unk+1−unk∥∞<2−k.(6)§E9.12 補題 2.2をfnk+1−fnkへ適用すると、
∣fnk+1−fnk∣≤∥unk+1−unk∥∞<2−kがほとんど至る所で成り立つ。そこで、可測集合
Zk={x∈X ∣fnk+1(x)−fnk(x)∣≥2−k}を正準的に定める。直前のほとんど至る所での評価によりμ(Zk)=0であり、
∣fnk+1(x)−fnk(x)∣<2−k(x∈X∖Zk)(7)が成り立つ。Z=⋃k=1∞Zkとおく。測度の可算劣加法性§E9.2 命題 2.1によりμ(Z)=0である。(7) から、X∖Z上では(fnk)kは一様 Cauchy 列である。各点で実数または複素数の完備性を用い、有限なpの場合と同様に零集合Z上で値を0と定めると、有限値可測関数fを得る。さらに、x∈X∖Zに対して
∣f(x)−fnj(x)∣≤k=j∑∞2−k=21−j(8)である。(8) と§E9.12 補題 2.2から
∥f−fnj∥∞≤21−j⟶0(9)を得る。f−fn1∈L∞かつfn1∈L∞であるから、§E9.12 命題 3.4によりf∈L∞である。最後に、有限なpの場合と同じε/2の議論を (9) へ適用すると、もとの列全体が[f]へL∞ノルムで収束する。
以上により、すべての1≤p≤∞についてLp(μ;K)は完備である。▨
有限なpの証明では、単調収束定理が差分の級数を一つのLp関数として制御した。p=∞の証明では、可算個の例外零集合の合併を取り除くことによって、同じ役割を点ごとの一様評価が果たした。後者では積分の収束定理を用いていない。
2 単関数の稠密性
実数値の場合の単関数は§E9.5 定義 5.1で定めた。複素数値の場合にも、値域の有限性によって単関数を定める。
定義 2.1.(X,F)を可測空間とする。複素数値可測関数s:X→Cの像s(X)が有限集合であるとき、sを複素単関数 (complex simple function) という。この条件は、ResとImsがともに§E9.5 定義 5.1の実数値単関数であることと同値である。
定理 2.2.(X,F,μ)を任意の測度空間、K∈{R,C}とし、1≤p<∞とする。Lp(μ;K)に属するK値単関数全体はLp(μ;K)で稠密である。すなわち、任意の[f]∈Lp(μ;K)とε>0に対して、[s]∈Lp(μ;K)である単関数sが存在して
∥f−s∥p<εを満たす。この結論には、μ(X)<∞も、μのシグマ有限性も必要ない。
証明. 最初にK=Rとする。fの正部分と負部分を
f+=max{f,0},f−=max{−f,0}と書く。非負単関数による増加近似§E9.5 定理 5.3をf+とf−へ適用し、
0≤an↑f+,0≤bn↑f−を満たす非負単関数列をとる。sn=an−bnとおけば、snは実数値単関数であり、sn→fが各点で成り立つ。f+とf−は同じ点で同時に正にならず、an≤f+、bn≤f−であるから、
∣sn∣=an+bn≤f++f−=∣f∣(10)である。同様に、f−sn=(f+−an)−(f−−bn)であり、二つの括弧内の関数は同じ点で同時に正にならないため、
∣f−sn∣=(f+−an)+(f−−bn)≤∣f∣である。したがって、
∣f−sn∣p⟶0,∣f−sn∣p≤∣f∣p(11)が点ごとに成り立つ。[f]∈Lpであるから∣f∣pは可積分である。優収束定理§E9.7 定理 3.2を (11) へ適用すると、
∥f−sn∥pp=∫X∣f−sn∣pdμ⟶0.(12)さらに、(10) と積分の単調性により
∫X∣sn∣pdμ≤∫X∣f∣pdμ<∞である。したがって、近似に用いた各sn自身がLp(μ;R)に属する。
(12) から、任意のε>0に対して所要のsnを選ぶことができる。
次にK=Cとする。f=u+ivと書く。§E9.5 定理 6.1によりuとvは実数値可測関数であり、∣u∣≤∣f∣、∣v∣≤∣f∣であるから、両者はLp(μ;R)に属する。前段落の構成をuとvに適用し、単関数列(an)、(bn)で
an→u,bn→v,∣an∣≤∣u∣,∣bn∣≤∣v∣,∣u−an∣≤∣u∣,∣v−bn∣≤∣v∣を満たすものをとる。sn=an+ibnとおくと、snは有限個の複素数だけを値としてとる可測関数であるから複素単関数であり、sn→fが各点で成り立つ。また、
∣sn∣≤∣an∣+∣bn∣≤∣u∣+∣v∣≤2∣f∣(13)であるため、各snはLp(μ;C)に属する。同じ評価を誤差へ適用すると、
∣f−sn∣p≤(∣u−an∣+∣v−bn∣)p≤(2∣f∣)p.(14)左辺は点ごとに0へ収束し、右辺は可積分である。優収束定理を (14) へ適用すると∥f−sn∥p→0を得る。
以上の証明では、非負単関数近似と優収束定理だけを用いた。とくに、Xを有限測度の可測集合で覆う操作は用いていないため、シグマ有限性は不要である。▨
後で指示関数へ帰着するために、Lpに属する単関数の非零レベル集合は有限測度であることを補題として記録する。
補題 2.3.(X,F,μ)を測度空間、K∈{R,C}、および1≤p<∞とする。s∈Lp(μ;K)をK値単関数とする。sの相異なる非零値をc1,…,cmとし、
Ej={x∈X∣s(x)=cj}とおく。このとき、各Ejは可測な有限測度集合であり、
s=j=1∑mcj1Ejが成り立つ。s=0の場合には右辺を空和とする。
証明.sは可測であり、各一元集合{cj}はKの Borel 集合であるから、Ej=s−1({cj})∈Fである。c1,…,cmはsの相異なる非零値をすべて列挙しているため、表示式は各点で成り立つ。さらに、
∫X∣s∣pdμ=j=1∑m∣cj∣pμ(Ej)<∞である。各∣cj∣pは正であるから、いずれかのμ(Ej)が無限大ならば右辺は無限大となり、s∈Lpに反する。したがって、すべてのEjは有限測度である。s=0の場合には非零値がなく、主張は空和について成り立つ。▨
3 台がコンパクトな連続関数の稠密性
以下ではd≥1を整数とし、Rdに Lebesgue 可測集合族Ldと Lebesgue 測度λdを入れる。近似に用いる関数空間を次のように定める。
定義 3.1.d≥1を整数とし、K∈{R,C}とする。関数f:Rd→Kの台 (support) を
suppf={x∈Rd∣f(x)=0}と定める。台がコンパクトであるK値連続関数全体をCc(Rd;K)と書く。さらに、台がコンパクトであるK値C∞級関数全体をCc∞(Rd;K)と書く。
最初に、有限測度の可測集合の指示関数を連続関数で近似する。距離関数を使うと、コンパクト集合上では1、有界開集合の外では0となる関数を直接構成することができる。
補題 3.2. 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数とする。E∈Ldとし、λd(E)<∞とする。任意のδ>0に対して、0≤φ≤1を満たすφ∈Cc(Rd;R)で
λd({x∈Rd∣1E(x)=φ(x)})<2δを満たすものが存在する。したがって、任意の1≤p<∞に対して
∥1E−φ∥pp<2δである。
証明. Lebesgue 測度の内側正則性§E9.4 定理 7.1により、コンパクト集合K⊆Eで
λd(E∖K)<δ(15)を満たすものをとる。K=∅ならば (15) からλd(E)<δであるため、φ=0とすれば結論が成り立つ。以下ではK=∅とする。
外側正則性§E9.4 定理 6.2により、E⊆Uを満たす開集合Uで
λd(U∖E)<δ(16)となるものをとる。Kは有界であるから、K⊆B(0,R)を満たすR>0が存在する。
G=U∩B(0,R)とおくと、GはKを含む有界開集合であり、G∖E⊆U∖Eである。
閉集合Rd∖Gまでの距離を
h(x)=dist(x,Rd∖G)=inf{∣x−y∣∣y∈Rd∖G}とおく。任意のx,x′∈Rdに対し、三角不等式から
∣h(x)−h(x′)∣≤∣x−x′∣であるため、hは連続である。また、x∈GならばGの開性によりh(x)>0である。Kは空でないコンパクト集合でありK⊆Gであるから、hはK上で正の最小値
a=x∈Kminh(x)>0をもつ。そこで
φ(x)=min{1,ah(x)}と定める。φは連続であり、0≤φ≤1を満たし、K上でφ=1、Rd∖G上でφ=0である。さらにsuppφ⊆Gであり、Gは閉かつ有界であるから
Heine–Borel の定理によりコンパクトである。よってφ∈Cc(Rd)である。
K上では1E=φ=1であり、Rd∖(E∪G)上では1E=φ=0である。したがって、
{x∣1E(x)=φ(x)}⊆(E∖K)∪(G∖E).(15)、(16)、および測度の劣加法性により、この集合の測度は2δ未満である。∣1E−φ∣≤1であるから、
∥1E−φ∥pp=∫{1E=φ}∣1E−φ∣pdλd≤λd({1E=φ})<2δ.▨
定理 3.3. 従属選択公理を仮定する。d≥1、K∈{R,C}、および1≤p<∞とする。Cc(Rd;K)はLp(Rd,Ld,λd;K)で稠密である。
証明.[f]∈Lp(Rd;K)とε>0を任意にとる。定理 2.2により、Lpに属するK値単関数sで
∥f−s∥p<2ε(17)を満たすものが存在する。s=0ならばg=0∈Cc(Rd;K)とすればよい。s=0とし、補題 2.3により
s=j=1∑mcj1Ej,cj∈K∖{0},λd(Ej)<∞(18)と書く。C=∑j=1m∣cj∣>0とおく。補題 3.2により、各jに対して0≤φj≤1を満たすφj∈Cc(Rd;R)で
∥1Ej−φj∥p<2Cε(19)となるものをとる。この操作は有限個の集合だけを対象とするため、可算選択を必要としない。
g=∑j=1mcjφjとおく。gはK値連続関数であり、その台は有限個のsuppφjの和集合に含まれる。この和集合はコンパクトであるからg∈Cc(Rd;K)である。Minkowski の不等式と (19) により、
∥s−g∥p≤j=1∑m∣cj∣∥1Ej−φj∥p<2ε.(20)(17)、(20)、および三角不等式から
∥f−g∥p≤∥f−s∥p+∥s−g∥p<εを得る。▨
4 台がコンパクトな滑らかな関数の稠密性
Cc(Rd)の関数を滑らかにするために、台が小さい非負関数で平均を取る。ここでは一般の畳み込み理論を引用せず、mollifier の構成、平均の滑らかさ、台の評価、および一様近似を順に証明する。
補題 4.1. 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数とする。任意のr>0に対して、次の条件を満たすηr∈Cc∞(Rd;R)が存在する。
ηr≥0,suppηr=B(0,r),ηr(−x)=ηr(x),∫Rdηrdλd=1.
証明. 一変数関数θ:R→Rを
θ(t)={e−1/t,0,t>0,t≤0と定める。θが滑らかであり、θ(m)(0)=0がすべてのm≥0について成り立つことを確認する。t>0では、帰納法により、各mに対してある多項式Pmが存在して
θ(m)(t)=Pm(1/t)e−1/t(21)と書くことができる。実際、(21) の右辺を微分すると、再び1/tの多項式とe−1/tの積になる。また、任意の非負整数Nに対して、指数関数の冪級数から
es≥(N+1)!sN+1(s>0)であるため、
0≤sNe−s≤s(N+1)!⟶0(s→∞)(22)である。(21) の多項式の各項へ (22) を適用すると、limt↓0θ(m)(t)=0を得る。t<0ではθとすべての導関数が0である。ここで、θ(m−1)(0)=0まで構成済みであるとする。t>0に対する
tθ(m−1)(t)−θ(m−1)(0)=t−1Pm−1(1/t)e−1/tは (22) によりt↓0で0へ収束し、t<0に対する差商は0である。したがって、θ(m)(0)は存在して0に等しい。この議論をm=1から帰納的に繰り返すと、θはR上でC∞級であり、すべての階数の導関数が0で連結する。
固定したr>0に対して
qr(x)=θ(r2−∣x∣2)とおく。θの滑らかさと多項式写像x↦r2−∣x∣2の滑らかさからqr∈C∞(Rd)である。qrはB(0,r)上で正であり、その外で0であるから、
suppqr=B(0,r).さらに、0≤qr≤1であり、台は[−r,r]dに含まれるため、
∫Rdqrdλd<∞.この積分が正であることも確認する。半開立方体
Q=(−2dr,2dr]dでは∣x∣≤r/2であるから、
qr(x)≥θ(3r2/4)>0.§E9.4 定義 1.1によるQの測度は(r/d)d>0である。したがって、
0<θ(3r2/4)λd(Q)≤∫Rdqrdλd<∞.正の定数
cr=(∫Rdqrdλd)−1を定め、ηr=crqrとおく。ηrは非負で滑らかであり、台はB(0,r)である。qrが∣x∣だけに依存することからηrは偶関数であり、定数crの定義から積分は1である。▨
補題 4.2. 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数、K∈{R,C}とする。φ∈Cc(Rd;K)とし、r>0とする。補題 4.1のηrを用いて
(Mrφ)(x)=∫Rdφ(z)ηr(x−z)dλd(z)(23)と定める。このときMrφ∈Cc∞(Rd;K)である。さらに、
∥Mrφ−φ∥∞⟶0(r↓0)(24)であり、任意の1≤p<∞に対して
∥Mrφ−φ∥p⟶0(r↓0)(25)が成り立つ。
証明.φ=0ならば、すべてのr>0に対してMrφ=0であり、滑らかさ、台、および二つの収束はいずれも直ちに成り立つ。以下ではφ=0とする。
K=suppφとおく。このときKは空でないコンパクト集合であるから、φは有界であり、Kは有限 Lebesgue 測度をもつ。(23) の被積分関数はz∈/Kで0となり、K上で有界である。したがって、各xに対して (23) の積分は絶対収束する。
最初に滑らかさを証明する。ejを第j座標方向の単位ベクトルとする。固定したxとjに対して、
h(Mrφ)(x+hej)−(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)hηr(x+hej−z)−ηr(x−z)dλd(z).(26)∣h∣≤1のとき、差商に現れる点はコンパクト集合
{x+tej−z∣∣t∣≤1, z∈K}に属する。∂jηrはこの集合上で一様連続である。したがって、一変数の平均値の定理をt↦ηr(x+tej−z)へ適用すると、(26) の差商は∂jηr(x−z)へz∈Kについて一様に収束する。ゆえに
∫Kφ(z)(hηr(x+hej−z)−ηr(x−z)−∂jηr(x−z))dλd(z)≤∥φ∥∞λd(K)z∈Ksuphηr(x+hej−z)−ηr(x−z)−∂jηr(x−z)⟶0.したがって、
∂j(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)∂jηr(x−z)dλd(z).(27)任意の多重指数αに対して∂αηrは連続である。同じ議論を (27) へ繰り返すと、
∂α(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)∂αηr(x−z)dλd(z)(28)を得る。(28) の右辺の連続性も、∂αηrのコンパクト集合上一様連続性と同じ積分評価から従う。よってMrφはC∞級である。
x∈/K+B(0,r)ならば、すべてのz∈Kに対してx−z∈/B(0,r)であり、ηr(x−z)=0である。したがって、
supp(Mrφ)⊆K+B(0,r).(29)右辺はコンパクト集合K×B(0,r)の連続像であるからコンパクトである。(28) と (29) によりMrφ∈Cc∞(Rd;K)である。
次に一様近似を証明する。Lebesgue 測度の平行移動不変性§E9.4 定理 5.1は、非負可測関数hに対して
∫Rdh(z−x)dλd(z)=∫Rdh(z)dλd(z)(30)を与える。実際、指示関数に対する (30) は集合の平行移動不変性そのものであり、非負単関数へ有限線形性で拡張した後、§E9.5 定理 5.3と§E9.7 定理 1.1により任意の非負可測関数へ拡張することができる。ηrは偶関数であるから、(30) により
∫Rdηr(x−z)dλd(z)=∫Rdηr(z−x)dλd(z)=1.(31)(23) と (31) から
∣(Mrφ)(x)−φ(x)∣≤∫Rd∣φ(z)−φ(x)∣ηr(x−z)dλd(z).(32)台がコンパクトな連続関数はRd上で一様連続である。実際、台を含む閉球を一つ固定し、その半径を1だけ増やした閉球上では Heine–Cantor の定理を用いることができる。この閉球の外にある点を含む十分近い二点については、両方の関数値が0である。この二つの場合を合わせると全空間での一様連続性を得る。したがって、
ωφ(r)=sup{∣φ(z)−φ(x)∣∣x,z∈Rd, ∣x−z∣≤r}⟶0(r↓0).ηr(x−z)=0ならば∣x−z∣<rであるため、(32) と (31) から
∥Mrφ−φ∥∞≤ωφ(r)⟶0を得る。これが (24) である。
0<r≤1とする。(29) により、φとMrφの台はともに固定したコンパクト集合
L=K+B(0,1)に含まれる。λd(L)<∞であるから、
∥Mrφ−φ∥pp≤λd(L)∥Mrφ−φ∥∞p⟶0.したがって、(25) が成り立つ。以上の議論では Fubini の定理を用いていない。▨
定理 4.3. 従属選択公理を仮定する。d≥1、K∈{R,C}、および1≤p<∞とする。Cc∞(Rd;K)はLp(Rd,Ld,λd;K)で稠密である。
証明.[f]∈Lp(Rd;K)とε>0を任意にとる。定理 3.3により、φ∈Cc(Rd;K)で
∥f−φ∥p<2εを満たすものが存在する。補題 4.2により、十分小さいr>0に対して
∥φ−Mrφ∥p<2εであり、Mrφ∈Cc∞(Rd;K)である。三角不等式から
∥f−Mrφ∥p≤∥f−φ∥p+∥φ−Mrφ∥p<εを得る。▨
5 適用範囲と演習
三つの稠密性定理はいずれも1≤p<∞に対する主張である。本記事はp=∞について完備性だけを主張する。Cc(Rd)の稠密性がp=∞では成り立たないことは、次の例から分かる。
例 5.1 (Cc(Rd;R)はL∞で稠密でない). 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数とする。Rd上の実数値定数関数1はL∞(Rd,Ld,λd;R)に属する。一方、任意のg∈Cc(Rd;R)はコンパクトな台の外で0であるため、∥1−g∥∞≥1である。よって、Cc(Rd;R)はL∞(Rd,Ld,λd;R)で稠密でない。この例により、有限なpの証明で用いた有限測度の台による評価をp=∞へ移すことはできない。
例 5.2 (シグマ有限でない測度空間での単関数近似). 可算選択公理を仮定する。1≤p<∞とし、K∈{R,C}とする。Iを非可算集合とし、P(I)上に数え上げ測度
μ(A)={∣A∣,∞,A が有限集合である,A が無限集合であるを入れる。この測度空間はシグマ有限ではない。実際、有限測度集合は有限集合であり、可算選択公理のもとでは可算個の有限集合の和集合は高々可算であるから、非可算集合Iを覆うことができない。この箇所で可算選択公理を用いる。
それにもかかわらず、定理 2.2により、任意のf∈Lp(I,P(I),μ;K)はLp(I,P(I),μ;K)に属するK値単関数で近似することができる。この場合、n≥1に対して
Fn={i∈I∣∣f(i)∣≥1/n}は有限集合である。もし無限集合ならば∑i∈I∣f(i)∣p≥∑i∈Fnn−p=∞となるからである。Fnは有限であるからf1Fnは単関数である。また、∣f−f1Fn∣p≤∣f∣pであり、左辺は各点で0へ収束するため、優収束定理により∥f−f1Fn∥p→0である。この例は、単関数の稠密性にシグマ有限性が不要であることを示している。
- 定理 1.1の有限なpの証明で、差分の級数∑k∣fnk+1−fnk∣が有限であることを各点で直接仮定せず、単調収束定理からほとんど至る所で導いた箇所を説明せよ。
- p=∞の証明で、各差分に対応する零集合Zkを一つの集合⋃kZkへまとめなければならない理由を述べよ。
- 複素数値関数に対する定理 2.2の証明で、近似単関数自身がLpに属することを
(13) から証明せよ。
- 補題 3.2で、有界開集合Gを用いることが cutoff の台のコンパクト性に必要である理由を説明せよ。
- 補題 4.2の微分公式 (28) が Fubini の定理を必要としない理由と、一様収束からLp収束を得る際に共通の有限測度集合Lが必要である理由をそれぞれ述べよ。