1 半開直方体と体積集合関数
最初に、直方体とその有限非交和からなる集合族を定める。
定義 1.1. 整数d≥1を固定する。aj,bj∈Rとaj<bjを1≤j≤dについて仮定する。このとき、
Q=j=1∏d(aj,bj]をRdの半開直方体 (half-open box) という。半開直方体Qの体積 (volume of a half-open box) を
∣Q∣=j=1∏d(bj−aj)によって定める。また、空集合の体積を∣∅∣=0と定める。
定義 1.2. 整数d≥1を固定する。集合族Rdを、空集合と、
E=r=1⨆mQrと表示することができるRdの部分集合全体からなる集合族とする。ただし、m≥1であり、各Qrは半開直方体であり、Q1,…,Qmは二つずつ交わらない。
体積の well-defined 性は、同じ集合が異なる有限非交和表示をもつ場合に、体積の和が一致することを意味する。証明には、すべての端点を座標ごとに並べて作る共通の格子細分を用いる。
補題 1.3. 整数d≥1を固定し、有限個の半開直方体Q0,Q1,…,Qm⊆Rdをとる。各座標に現れる端点をすべて用いて格子細分を作ると、各Qiは有限個の格子セルの非交和になる。さらに、
Q0⊆i=1⋃mQiならば、
∣Q0∣≤i=1∑m∣Qi∣が成り立つ。
証明. 第j座標に現れる端点を相異なる順に
cj,0<cj,1<⋯<cj,Njと並べる。格子セルを
Pk1,…,kd=j=1∏d(cj,kj−1,cj,kj](1≤kj≤Nj)と定める。半開という端点の規約により、二つの格子セルは一致するか交わらない。また、各Qiに属するかどうかは一つの格子セル上で一定である。したがって、各QiはQiに含まれる格子セルの非交和である。
Qi=∏j(ai,j,bi,j]とする。第j座標でai,jからbi,jまでに現れる格子幅の和はbi,j−ai,jである。有限和に対する分配法則から、
∣Qi∣=j=1∏d(bi,j−ai,j)=Pk1,…,kd⊆Qi∑j=1∏d(cj,kj−cj,kj−1)を得る。右辺はQiに含まれる格子セルの体積の和である。
Q0⊆⋃i=1mQiを仮定する。Q0に含まれる各格子セルは、少なくとも一つのQiに含まれる。各格子セルに対して、その格子セルを含む一つのQiを選ぶ。選ばれた格子セルの体積をiごとに合計すると、その合計は∣Qi∣以下である。したがって、
∣Q0∣≤i=1∑m∣Qi∣が成り立つ。▨
格子細分は、有限非交和表示から独立した体積集合関数を与える。
命題 1.4. 整数d≥1を固定する。このとき、RdはRd上の集合環である。さらに、
E=r=1⨆mQr∈Rdに対して
vd(E)=r=1∑m∣Qr∣,vd(∅)=0と定めると、vd(E)は有限非交和表示に依存しない。集合関数vd:Rd→[0,∞)は有限加法的であり、単調である。
証明.E,F∈Rdの有限非交和表示に現れるすべての端点を用いて、補題 1.3の格子細分を作る。各半開直方体の共通部分は、空集合であるか半開直方体である。格子細分により、E∪F、E∩F、およびE∖Fは有限個の格子セルの非交和になる。したがって、Rdは有限和と差集合に対して閉じているため、集合環である。
次に、
E=r=1⨆mQr=s=1⨆nPsという二つの表示をとる。両方の表示に現れる端点から作った共通格子において、Eを構成する格子セルの集合は、どちらの表示から始めても同じである。補題 1.3の証明で得た体積の分割公式から、
r=1∑m∣Qr∣=C⊆E∑∣C∣=s=1∑n∣Ps∣を得る。したがって、vdは well-defined である。
E,F∈Rdが交わらないならば、Eの格子セルとFの格子セルも交わらない。共通格子上で体積を合計すると、
vd(E⊔F)=vd(E)+vd(F)を得る。有限個の集合に対する加法性は、この等式を帰納的に適用して得られる。E⊆FならばF=E⊔(F∖E)であるから、
vd(F)=vd(E)+vd(F∖E)≥vd(E)である。したがって、vdは単調である。▨
2 可算被覆評価と前測度
前測度の可算加法性を証明するためには、可算個の半開直方体による被覆の体積を評価する必要がある。有限部分被覆を得る箇所で、有限次元 Euclid 空間の閉有界集合がコンパクトであることを用いる。
補題 2.1. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。半開直方体Q,Q1,Q2,⋯⊆Rdが
Q⊆n=1⋃∞Qnを満たすならば、
∣Q∣≤n=1∑∞∣Qn∣が成り立つ。
証明.∑n∣Qn∣=∞の場合には結論が成り立つため、
n=1∑∞∣Qn∣<∞と仮定する。Q=∏j(aj,bj]とし、ε>0を固定する。積は各変数の連続関数であるから、十分小さいδ>0を選ぶと、
0<δ<1≤j≤dmin(bj−aj),j=1∏d(bj−aj−δ)>∣Q∣−εを満たすことができる。集合
Kδ=j=1∏d[aj+δ,bj]は閉かつ有界であるため、§E2.9 定理 4.3によりコンパクトである。
Qn=∏j(an,j,bn,j]とする。各nに対して、十分小さいηn>0を選ぶと、
Vn=j=1∏d(an,j−2ηn,bn,j+ηn]が
∣Vn∣≤∣Qn∣+2nεを満たす。さらに、
Un=j=1∏d(an,j−ηn,bn,j+ηn)とおくと、Qn⊆Un⊆Vnであり、Unは開集合である。従属選択公理から従う可算選択により、ηnをすべてのnについて同時に選ぶ。
Kδ⊆Q⊆⋃nUnである。Kδのコンパクト性から、有限集合I⊆Z≥1が存在して
Kδ⊆n∈I⋃Un⊆n∈I⋃Vnを満たす。半開直方体
Qδ=j=1∏d(aj+δ,bj]はKδに含まれる。補題 1.3の有限被覆評価から、
∣Q∣−ε<∣Qδ∣≤n∈I∑∣Vn∣≤n=1∑∞∣Qn∣+εを得る。ε>0は任意であるから、
∣Q∣≤n=1∑∞∣Qn∣が成り立つ。▨
半開直方体の評価を、集合環の元の可算被覆へ拡張する。
補題 2.2. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。E,E1,E2,⋯∈Rdが
E⊆n=1⋃∞Enを満たすならば、
vd(E)≤n=1∑∞vd(En)が成り立つ。
証明.E=∅ならばvd(E)=0であるため、主張した不等式が成り立つ。以下ではE=∅と仮定し、有限非交和表示
E=r=1⨆mQrをとる。各n≥1について、En=∅ならば有限非交和表示
En=s=1⨆knQn,sをとり、En=∅ならばkn=0と定めて、添字をもたない有限和を0と解釈する。従属選択公理から従う可算選択により、非空のEnに対する有限非交和表示をすべてのnについて同時に選ぶ。
各1≤r≤mに対して、空でない共通部分の添字集合を
Ir={(n,s)∣n≥1, 1≤s≤kn, Qr∩Qn,s=∅}と定める。被覆の仮定から、
Qr⊆(n,s)∈Ir⋃(Qr∩Qn,s)である。Irが有限集合ならば補題 1.3の有限被覆評価を適用する。Irが無限集合ならば、Irを列として並べて補題 2.1を適用する。いずれの場合にも、
∣Qr∣≤n=1∑∞s=1∑kn∣Qr∩Qn,s∣を得る。空の共通部分は、定義 1.1で定めた体積0の項として和の右辺へ加えている。
rについて加えると、
vd(E)=r=1∑m∣Qr∣≤n=1∑∞s=1∑knr=1∑m∣Qr∩Qn,s∣を得る。固定したn,sに対して、集合Qr∩Qn,sはrについて二つずつ交わらず、すべてQn,sに含まれる。命題 1.4の有限加法性と単調性から、
r=1∑m∣Qr∩Qn,s∣≤∣Qn,s∣である。したがって、
vd(E)≤n=1∑∞s=1∑kn∣Qn,s∣=n=1∑∞vd(En)を得る。▨
可算被覆評価と有限加法性から、体積集合関数の可算加法性が従う。
定理 2.3. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。定義 1.2の集合環Rd上で、命題 1.4の集合関数
vd:Rd⟶[0,∞)は前測度である。さらに、
Cn=(−n,n]d∈Rd,vd(Cn)=(2n)d<∞,Rd=n=1⋃∞Cnが成り立つ。したがって、vdは§E9.3 定理 3.3と§E9.3 定理 4.1の仮定を満たす。
証明.命題 1.4からvd(∅)=0である。E1,E2,⋯∈Rdが二つずつ交わらず、
E=n=1⨆∞En∈Rdを満たすと仮定する。任意のN≥1に対して、有限加法性と単調性から、
n=1∑Nvd(En)=vd(n=1⨆NEn)≤vd(E)である。N→∞とすると、
n=1∑∞vd(En)≤vd(E)を得る。一方、E⊆⋃nEnであるから、補題 2.2により
vd(E)≤n=1∑∞vd(En)である。二つの不等式から可算加法性を得るため、vdは前測度である。
各Cn=(−n,n]dは半開直方体であり、表示した体積をもつ。任意のx=(x1,…,xd)∈Rdに対してn>maxj∣xj∣を満たす整数nが存在するため、x∈Cnである。したがって、(Cn)n≥1は有限な前測度をもつ集合環の元によるRdの可算被覆である。Carathéodory の拡張定理とシグマ有限な場合の一意性定理の仮定がすべて成り立つ。▨
3 Lebesgue 外測度と Borel 測度
半開直方体の可算被覆によって、Rdのすべての部分集合に外測度を定める。
定義 3.1. 整数d≥1を固定する。任意のA⊆Rdに対して、
λd∗(A)=inf{n=1∑∞∣Qn∣ Qn は半開直方体または空集合であり、 A⊆n=1⋃∞Qn}と定める。集合関数λd∗をRd上の
Lebesgue 外測度 (Lebesgue outer measure) という。空集合の体積は定義 1.1で定めた値を用いる。
集合環の元による被覆と、半開直方体による被覆とは、同じ外測度を与える。
補題 3.2. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。vdから§E9.3 定義 3.1によって構成した外測度の候補をρd∗とする。このとき、任意のA⊆Rdに対して
ρd∗(A)=λd∗(A)が成り立つ。とくに、λd∗はRd上の外測度である。
証明. 各半開直方体はRdに属し、そのvdによる値は体積に等しい。したがって、半開直方体による被覆は集合環の元による被覆でもあり、
ρd∗(A)≤λd∗(A)である。
反対向きの不等式を示す。集合環の元による任意の被覆
A⊆n=1⋃∞En,En∈Rdをとる。従属選択公理から従う可算選択により、各nに対して有限非交和表示
En=s=1⨆knQn,sを同時に選ぶ。ただし、En=∅の場合にはkn=1およびQn,1=∅と定める。二重に添字づけられた半開直方体または空集合は可算族であり、Aを被覆する。また、
n=1∑∞s=1∑kn∣Qn,s∣=n=1∑∞vd(En)である。したがって、
λd∗(A)≤n=1∑∞vd(En)である。すべての集合環被覆について下限をとると、λd∗(A)≤ρd∗(A)を得る。
定理 2.3により、vdは前測度であり、有限測度をもつCn=(−n,n]dがRdを可算被覆する。したがって、§E9.3 命題 3.2によりρd∗は外測度である。λd∗=ρd∗であるため、λd∗も外測度である。▨
次に、半開直方体が生成するシグマ加法族を Euclid 位相から定まる Borel 集合族と同定する。
定理 3.3. 整数d≥1を固定し、Rdに通常の Euclid 位相を入れる。このとき、
σ(Rd)=B(Rd)が成り立つ。さらに、有理数を端点にもつ半開直方体全体は可算であり、Euclid 位相の各開集合は、その開集合に含まれる有理端点半開直方体の可算和である。
証明. 半開直方体Q=∏j(aj,bj]は
Q=j=1⋂d{x∈Rd:aj<xj}∩j=1⋂d{x∈Rd:xj≤bj}と表される。集合{x:aj<xj}は開集合であり、集合{x:xj≤bj}は閉集合である。したがって、各半開直方体は Borel 集合であり、
σ(Rd)⊆B(Rd)である。
反対向きの包含を示す。U⊆Rdを開集合とし、x∈Uをとる。あるr>0が存在して、Euclid 開球B(x,r)がUに含まれる。有理数の稠密性から、各jに対して有理数pj,qjを
xj−dr<pj<xj<qj<xj+drとなるように選ぶ。このとき、
x∈j=1∏d(pj,qj]⊆B(x,r)⊆Uである。有理端点半開直方体全体はQ2dの部分集合であるため可算である。したがって、UはUに含まれる有理端点半開直方体の可算和である。ゆえに、U∈σ(Rd)である。
すべての開集合がσ(Rd)に属するため、
B(Rd)⊆σ(Rd)を得る。二つの包含から結論が従う。▨
前測度のシグマ有限性は、拡張の存在だけでなく一意性も保証する。
定理 3.4. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。Rdには通常の Euclid
位相を入れる。このとき、B(Rd)上の測度λdBが一意に存在し、任意の半開直方体Q=∏j=1d(aj,bj]に対して
λdB(Q)=j=1∏d(bj−aj)を満たす。さらに、λdBはシグマ有限であり、任意のA∈B(Rd)に対して
λdB(A)=λd∗(A)が成り立つ。
証明.定理 2.3により、vdはRd上の前測度であり、Cn=(−n,n]dはRdを被覆する。したがって、§E9.3 定理 3.3を適用すると、σ(Rd)上の測度が存在し、Rd上でvdと一致する。定理 3.3により、
σ(Rd)=B(Rd)であるため、この測度をλdBと記す。
Carathéodory の拡張定理で得られる測度は、前測度が生成する外測度の Borel 集合族への制限である。補題 3.2により、この外測度はλd∗に等しい。したがって、任意の Borel 集合Aに対して
λdB(A)=λd∗(A)である。半開直方体上の値はvdの定義から従う。
各Cnは有限測度であり、Rd=⋃nCnであるため、λdBはシグマ有限である。別の Borel 測度νがすべての半開直方体上で同じ値をもつと仮定する。有限加法性から、νはRd上でvdと一致する。§E9.3 定理 4.1を適用すると、ν=λdBを得る。したがって、拡張は一意である。▨
定義 3.5. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。定理 3.4によってB(Rd)上に得られる一意な測度をd次元の Lebesgue Borel 測度 (Lebesgue Borel measure) といい、λdBと記す。
4 完備化と Lebesgue 可測集合
Lebesgue Borel 測度の定義域は Borel 集合族である。Lebesgue 測度は、Borel 零集合の任意の部分集合を可測集合として加えた完備化によって得られる。
定義 4.1. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。集合族
Nd={N⊆Rd∣ある Z∈B(Rd) が存在して N⊆Z, λdB(Z)=0}と
Ld={A∪N∣A∈B(Rd), N∈Nd}を定める。Ldの元を Lebesgue 可測集合 (Lebesgue measurable set) という。
測度λdBの§E9.2 定理 5.6による完備化を
λd:Ld⟶[0,∞]と記し、d次元の Lebesgue 測度 (Lebesgue measure) という。
完備化定理は、完備性だけでなく、完備化後の測度が表示に依存しないことも保証する。
定理 4.2. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。このとき、次の性質が成り立つ。
- B(Rd)⊆Ldである。
- E⊆RdがLdに属するための必要十分条件は、あるA,Z∈B(Rd)が存在して
λdB(Z)=0,E△A⊆Z
を満たすことである。
- A∈B(Rd)ならば、λd(A)=λdB(A)である。
- (2)においてE△A⊆Zならば、λd(E)=λdB(A)である。
- (Rd,Ld,λd)は完備な測度空間である。
証明.§E9.2 定理 5.6を測度空間
(Rd,B(Rd),λdB)へ適用する。完備化されたシグマ加法族はLdであり、完備化された測度はλdである。同定義と同定理から、(1)、(3)、および(5)が従う。
(2)を示す。E=A∪N、A∈B(Rd)、N⊆Z、λdB(Z)=0と表示することができるならば、
E△A⊆N⊆Zである。反対に、E△A⊆Zを仮定すると、
E=(A∖Z)∪(E∖(A∖Z))である。A∖Zは Borel 集合であり、E∖(A∖Z)⊆Zであるから、E∈Ldである。したがって、(2)が成り立つ。
(2)の仮定を満たすとき、B=A∖Zとおくと、E=B∪Nと表示することができる。ただし、
N=E∖B⊆Zである。完備化後の測度の定義からλd(E)=λdB(B)である。また、A=B⊔(A∩Z)かつλdB(A∩Z)=0であるため、
λd(E)=λdB(B)=λdB(A)を得る。したがって、(4)も成り立つ。▨
完備化は、Borel 零集合に含まれる任意の集合を Lebesgue 可測にする。
例 4.3 (零集合の任意の部分集合). 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定し、
H={x∈[−1,1]d∣x1=0}とする。このとき、Hは Borel 集合であり、λdB(H)=0である。したがって、任意の部分集合N⊆Hは Lebesgue 可測であり、λd(N)=0である。Nが Borel 集合であるという仮定は必要ない。
証明. 集合Hは閉集合であるため Borel 集合である。任意のn≥1に対して、
H⊆(−n1,0]×j=2∏d(−2,1]である。d=1の場合には、右辺の第2座標以降の積を一点からなる空積として解釈する。半開直方体上の値と単調性から、
0≤λdB(H)≤n3d−1を得る。n→∞とすると、λdB(H)=0である。定理 4.2の完備性から、任意のN⊆Hは
Lebesgue 可測であり、測度0をもつ。▨
5 平行移動不変性
半開直方体の体積は平行移動で変わらない。シグマ有限な拡張の一意性を用いると、この性質を
Borel 集合へ拡張することができる。完備化による表示は、さらにすべての Lebesgue 可測集合への拡張を与える。
定理 5.1. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1とベクトルt∈Rdを固定する。このとき、任意のE∈Ldに対してE+t∈Ldであり、
λd(E+t)=λd(E)が成り立つ。とくに、任意のA∈B(Rd)に対してA+t∈B(Rd)であり、
λdB(A+t)=λdB(A)が成り立つ。
証明. 平行移動x↦x+tは Euclid 位相の同相写像であるため、Borel 集合を Borel 集合へ移す。B(Rd)上の集合関数
νt(A)=λdB(A+t)を定める。平行移動は可算和と差集合を保つため、νtは Borel 測度である。半開直方体Q=∏j(aj,bj]に対して、
Q+t=j=1∏d(aj+tj,bj+tj]であり、
νt(Q)=j=1∏d((bj+tj)−(aj+tj))=∣Q∣である。定理 3.4のシグマ有限一意性から、νt=λdBを得る。したがって、Borel 集合上で平行移動不変性が成り立つ。
E∈Ldをとる。定理 4.2により、Borel 集合A,Zが存在して
λdB(Z)=0,E△A⊆Zを満たす。Borel 集合に対する平行移動不変性から、A+tとZ+tは Borel 集合であり、
λdB(Z+t)=0である。また、
(E+t)△(A+t)=(E△A)+t⊆Z+tである。したがって、E+t∈Ldである。完備化後の測度の定義と
Borel 集合上の不変性から、
λd(E+t)=λdB(A+t)=λdB(A)=λd(E)を得る。▨
6 外側正則性
完備化後の集合に対しても、Lebesgue 外測度と Lebesgue 測度の値は一致する。
補題 6.1. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。任意のE∈Ldに対して、
λd(E)=λd∗(E)が成り立つ。
証明.定理 4.2により、Borel 集合A,Zが存在して
λdB(Z)=0,E△A⊆Zを満たす。Borel 集合上ではλdB=λd∗であるため、λd∗(Z)=0である。包含
E⊆A∪Z,A⊆E∪Zと外測度の単調性および可算劣加法性から、
λd∗(E)≤λd∗(A)+λd∗(Z)=λdB(A)および
λdB(A)=λd∗(A)≤λd∗(E)+λd∗(Z)=λd∗(E)を得る。したがって、
λd∗(E)=λdB(A)=λd(E)である。▨
半開直方体による外測度の定義から、開集合による外側近似を構成する。
定理 6.2. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。任意のE∈Ldに対して、λd(E)=∞の場合も含めて
λd(E)=inf{λd(G)∣E⊆G, G⊆Rd は開集合}が成り立つ。
証明.E⊆Gならば測度の単調性からλd(E)≤λd(G)である。したがって、
λd(E)≤inf{λd(G)∣E⊆G, G は開集合}が成り立つ。
最初にλd(E)<∞と仮定し、ε>0を固定する。補題 6.1と外測度の定義から、半開直方体または空集合からなる列(Qn)n≥1を選んで
E⊆n=1⋃∞Qn,n=1∑∞∣Qn∣<λd(E)+2εを満たすことができる。ただし、各Qnは半開直方体または空集合である。添字集合
I={n≥1∣Qn=∅}を定める。各n∈IについてQn=∏j(an,j,bn,j]と表し、ηn>0を十分小さく選び、
Un=j=1∏d(an,j−2ηn,bn,j+2ηn),Vn=j=1∏d(an,j−ηn,bn,j+ηn]とおくと、
Qn⊆Un⊆Vn,∣Vn∣<∣Qn∣+2n+1εを満たすことができる。従属選択公理から従う可算選択により、ηnをすべてのn∈Iについて同時に選ぶ。
集合
G=n∈I⋃UnはEを含む開集合である。Gは Borel 集合であり、(Vn)n∈IはGを被覆するため、
λd(G)=λdB(G)=λd∗(G)≤n∈I∑∣Vn∣<λd(E)+ε.したがって、λd(E)<∞の場合には、開集合による測度の下限はλd(E)以下である。
λd(E)=∞と仮定する。Eを含む任意の開集合Gに対して、単調性から
λd(G)≥λd(E)=∞である。したがって、すべての候補の測度が∞であり、下限も∞である。有限測度の場合と無限測度の場合を合わせると、主張した等式を得る。▨
7 内側正則性
有限測度の集合に対する内側近似では、集合を大きな閉立方体で切り取る。切り取った集合の補集合を開集合で外側近似すると、閉立方体からその開集合を除いたコンパクト集合が得られる。
定理 7.1. 従属選択公理を仮定し、整数d≥1を固定する。任意のE∈Ldに対して、λd(E)=∞の場合も含めて
λd(E)=sup{λd(K)∣K⊆E, K⊆Rd はコンパクト}が成り立つ。
証明.K⊆Eならば測度の単調性からλd(K)≤λd(E)である。したがって、右辺の上限はλd(E)以下である。
最初にλd(E)<∞と仮定し、ε>0を固定する。閉立方体
Cm=[−m,m]d(m≥1)を考える。集合列E∩CmはEへ増加するため、§E9.2 定理 4.1の下からの連続性から
λd(E)=m→∞limλd(E∩Cm)を得る。したがって、あるm≥1が存在して
λd(E∩Cm)>λd(E)−2εを満たす。
Cmは半開直方体(−m−1,m]dに含まれるため、λd(Cm)<∞である。
Lebesgue 可測集合
H=Cm∖Eに定理 6.2を適用すると、H⊆Gを満たす開集合Gで
λd(G)<λd(H)+2εとなるものが存在する。集合
K=Cm∖Gは閉かつ有界であるため、§E2.9 定理 4.3によりコンパクトである。H⊆Gであるから、
K⊆Cm∖H=E∩Cm⊆Eである。
集合Cmの測度が有限であることと、
Cm=(E∩Cm)⊔H=K⊔(Cm∩G)から、
λd(E∩Cm)−λd(K)=λd(Cm∩G)−λd(H)≤λd(G)−λd(H)<2εを得る。したがって、
λd(K)>λd(E∩Cm)−2ε>λd(E)−ε.任意のε>0に対して、この条件を満たすコンパクト集合K⊆Eが存在する。ゆえに、λd(E)<∞の場合には主張した上限の等式が成り立つ。
次にλd(E)=∞と仮定する。下からの連続性から
m→∞limλd(E∩Cm)=∞である。任意のM>0に対して、あるmが存在して
λd(E∩Cm)>M+1を満たす。集合E∩Cmは有限測度をもつため、すでに証明した有限測度の場合をE∩Cmと誤差1に適用すると、コンパクト集合K⊆E∩Cmが存在して
λd(K)>λd(E∩Cm)−1>Mを満たす。M>0は任意であるから、Eに含まれるコンパクト集合の測度の上限は∞である。有限測度の場合と無限測度の場合を合わせると、主張した等式を得る。▨
8 Borel 測度と完備化を区別する
9 演習
問題 9.1.
- 二つの半開直方体の有限非交和表示が同じ集合を表すと仮定する。両方の表示に現れる端点から共通格子を作り、命題 1.4の well-defined 性の証明を再構成せよ。
- 補題 2.1の証明で、閉直方体Kδ、開直方体Un、半開直方体Vnの三種類を用いる理由を、それぞれが満たす包含関係とともに説明せよ。
- s>0とE∈Ldに対してsE={sx:x∈E}と定める。半開直方体上の体積とシグマ有限一意性を用いてλd(sE)=sdλd(E)を証明せよ。Borel 集合に対する証明と完備化後の証明を分けよ。
- λd(E)<∞を満たすE∈Ldについて、定理 7.1の証明から、任意のε>0に対してコンパクト集合Kと開集合Gが存在してK⊆E⊆Gかつλd(G∖K)<εを満たすことを導け。
10 まとめ
半開直方体の有限非交和は集合環をなし、格子細分によって定まる体積集合関数は well-defined かつ有限加法的である。コンパクト性を用いた可算被覆評価により、この体積集合関数は前測度になる。
Carathéodory の拡張定理とシグマ有限な場合の一意性は、半開直方体の体積を一意な Borel 測度λdBへ拡張する。
Borel 測度λdBの完備化は、Lebesgue 可測集合族Ldと完備 Lebesgue 測度λdを与える。直方体前測度の平行移動不変性は、Borel 集合上の一意性と完備化表示によって、すべての Lebesgue 可測集合へ拡張される。Lebesgue 外測度による開集合近似と、閉有界集合のコンパクト性を用いた補集合の近似から、すべての Lebesgue 可測集合に対する外側正則性と内側正則性が得られる。