1 三つの収束概念
以下では、KはRまたはCを表すものとする。関数はすべてKに有限値をとる。
最初の収束概念は、零集合を除いた各点における通常の数列の収束である。
定義 1.1.(X,F,μ)を測度空間とし、各正の整数nに対してfn:X→Kを可測関数とする。また、f:X→Kを可測関数とする。関数列(fn)n≥1がfに μに関してほとんど至る所で収束する (converge almost everywhere with respect toμ) とは、性質
n→∞limfn(x)=f(x)が§E9.2 定義 3.2の意味でμ-a.e. に成り立つことをいう。すなわち、ある可測零集合Z∈Fが存在して、すべてのx∈X∖Zに対してfn(x)→f(x)が成り立つことをいう。
測度収束では、各正数εに対して、偏差がε以上となる点の集合を測る。測度収束を定義する前に、偏差集合が可測であることを確認する。
命題 1.2.(X,F)を可測空間とし、g,h:X→Kを有限値可測関数とする。任意のε>0に対して、
{x∈X∣∣g(x)−h(x)∣≥ε}∈Fが成り立つ。
証明.K=Rの場合には、§E9.5 命題 3.1により∣g−h∣は実数値可測関数である。区間[ε,∞)は Borel 集合であるから、
{x∈X∣∣g(x)−h(x)∣≥ε}=∣g−h∣−1([ε,∞))∈Fである。
K=Cの場合を考える。§E9.5 定理 6.1により、Reg、Img、Reh、およびImhは実数値可測関数である。§E9.5 命題 3.1によって両座標の差も可測であるため、もう一度§E9.5 定理 6.1を適用すると、g−hは複素数値可測関数である。
絶対値写像
∣⋅∣:C⟶Rは連続である。したがって、§E9.5 命題 1.4と§E9.5 命題 1.2により∣g−h∣は実数値可測関数である。実数値の場合と同じ逆像の表示から、偏差集合は可測である。▨
偏差集合の測度がすべての正の精度で零へ近づくことを、測度収束という。
定義 1.3.(X,F,μ)を測度空間とし、各正の整数nに対してfn:X→Kを有限値可測関数とする。また、f:X→Kを有限値可測関数とする。関数列(fn)n≥1がfに μに関して測度収束する (converge in measure with respect toμ) とは、任意のε>0に対して
n→∞limμ({x∈X∣∣fn(x)−f(x)∣≥ε})=0が成り立つことをいう。この収束をfn→fin measure とも書く。
ほとんど一様な収束では、あらかじめ任意に指定した小さい測度の例外集合を除き、残りの集合上で一様収束することを要求する。例外集合は指定した測度に応じて選んでよい。
三つの定義では、量化の順序が異なる。ほとんど至る所での収束では、一つの零集合を除いた後、点ごとに収束を判定する。測度収束では、精度εを固定した後、偏差集合の測度をnとともに零へ近づける。ほとんど一様な収束では、測度が任意に小さい一つの例外集合を除いた後、残りのすべての点に共通する番号Nを選ぶ。
2 Egorov の定理
有限測度空間では、ほとんど至る所での収束から、測度が任意に小さい例外集合の外における一様収束を導くことができる。
2.1 証明方針
正の整数mに対して精度1/mを固定する。n番目以降に偏差が1/m以上となる点を一つの可測集合En,mに集める。ほとんど至る所での収束から、nに関する減少列(En,m)n≥1の共通部分は零集合になる。全空間の有限性と測度の上からの連続性を用いて、mごとにμ(En,m)を十分小さくする番号を選ぶ。選んだ集合をmについて可算和すると、可算劣加法性が例外集合の測度を制御し、補集合上の一様収束が得られる。
定理 2.1 (Egorov の定理).(X,F,μ)を有限測度空間、すなわち
μ(X)<∞を満たす測度空間とする。各正の整数nに対してfn:X→Kを有限値可測関数とし、f:X→Kも有限値可測関数とする。関数列(fn)n≥1がfにμに関してほとんど至る所で収束するならば、(fn)n≥1はfにμに関してほとんど一様に収束する。
証明.定義 1.1により、ある可測零集合Z∈Fが存在して、すべてのx∈X∖Zに対してfn(x)→f(x)が成り立つ。
正の整数n,mに対して
En,m=k=n⋃∞{x∈X∣∣fk(x)−f(x)∣≥1/m}と定める。命題 1.2とシグマ加法族の可算和に対する閉性により、各En,mは可測である。mを固定すると、
E1,m⊇E2,m⊇⋯が成り立つ。
減少列の共通部分を調べる。x∈X∖Zとすると、fk(x)→f(x)であるから、ある正の整数nが存在して、すべてのk≥nに対して
∣fk(x)−f(x)∣<1/mが成り立つ。したがって、x∈/En,mであり、
n=1⋂∞En,m⊆Zを得る。共通部分は可測であり、測度の単調性から
μ(n=1⋂∞En,m)=0が成り立つ。
E1,m⊆Xとμ(X)<∞からμ(E1,m)<∞である。§E9.2 定理 4.1の上からの連続性を減少列(En,m)n≥1に適用すると、
n→∞limμ(En,m)=μ(n=1⋂∞En,m)=0を得る。
任意のδ>0を固定する。各正の整数mに対して、正の整数nmを
μ(Enm,m)<2mδが成り立つように選び、
E=m=1⋃∞Enm,mと定める。集合Eは可測である。§E9.2 命題 2.1の可算劣加法性から
μ(E)≤m=1∑∞μ(Enm,m)<m=1∑∞2mδ=δを得る。
x∈X∖Eと正の整数mをとる。x∈/Enm,mであるから、すべてのk≥nmに対して
∣fk(x)−f(x)∣<1/mが成り立つ。任意のε>0に対して1/m<εを満たす正の整数mを選ぶと、すべてのk≥nmとすべてのx∈X∖Eに対して
∣fk(x)−f(x)∣<1/m<εが成り立つ。したがって、fk∣X∖Eはf∣X∖Eに一様収束する。δ>0は任意であるから、(fn)n≥1はfにほとんど一様に収束する。▨
全空間の有限性を除くと、Egorov の定理の結論は一般には成り立たない。
例 2.2 (Egorov の定理における有限性).X=Z≥1、F=P(X)とし、Xに数え上げ測度κを入れる。数え上げ測度の定義は§E9.2 例 1.3による。各正の整数nに対して
An={n,n+1,n+2,…},fn=1Anと定める。各r∈Xに対して、n>rならばfn(r)=0であるから、fn→0はXのすべての点で成り立つ。
δ=1/2とする。可測集合E⊆Xがκ(E)<1/2を満たすならば、κ(E)=0であり、したがってE=∅である。しかし、すべての正の整数nに対して
r∈X∖Esup∣fn(r)∣=r∈Xsupfn(r)=1である。ゆえに、fnは0にほとんど一様に収束しない。
3 ほとんど一様な収束から測度収束へ
ほとんど一様な収束では、偏差集合を測度が任意に小さい一つの例外集合に含めることができる。この含意には、全空間の測度が有限であるという仮定は必要でない。
証明. 任意のε>0と任意のη>0を固定する。ほとんど一様な収束の定義により、ある可測集合E∈Fが存在して
μ(E)<ηが成り立ち、fn∣X∖Eはf∣X∖Eに一様収束する。したがって、ある正の整数Nが存在して、すべてのn≥Nとすべてのx∈X∖Eに対して
∣fn(x)−f(x)∣<εが成り立つ。ゆえに、すべてのn≥Nに対して
{x∈X∣∣fn(x)−f(x)∣≥ε}⊆Eである。測度の単調性から
μ({x∈X∣∣fn(x)−f(x)∣≥ε})≤μ(E)<ηを得る。
η>0は任意であるから、偏差集合の測度はn→∞のとき零へ収束する。ε>0も任意であるため、(fn)n≥1はfに測度収束する。▨
4 測度収束列から選ぶ部分列
測度収束では、各精度に対する偏差集合の測度が零へ収束する。精度と測度の上界を同時に幾何級数の速さで小さくする項を選ぶと、選んだ部分列の偏差集合の測度の総和が有限になる。
4.1 証明方針
k番目の部分列項では、偏差の精度と偏差集合の測度の上界をともに2−kとする。測度収束の定義を用いて、条件を満たす添字を直前の添字より大きく選ぶ。偏差集合の上極限を末尾の和集合の共通部分として表し、可算劣加法性によって上極限が零集合であることを直接示す。上極限の外では、各点が十分大きいすべての偏差集合に属さないため、部分列が点ごとに収束する。
定理 4.1.(X,F,μ)を測度空間とする。各正の整数nに対してfn:X→Kを有限値可測関数とし、f:X→Kも有限値可測関数とする。関数列(fn)n≥1がfにμに関して測度収束するならば、正の整数の厳密な増加列
n1<n2<⋯が存在して、部分列(fnk)k≥1はfにμに関してほとんど至る所で収束する。
証明.n0=0とおく。k≥1とし、n0,…,nk−1が選ばれているとする。測度収束の定義をε=2−kに適用すると、ある正の整数Nkが存在して、すべてのn≥Nkに対して
μ({x∈X∣∣fn(x)−f(x)∣≥2−k})<2−kが成り立つ。正の整数nkを
nk≥max{Nk,nk−1+1}を満たすように選ぶ。この帰納的な選択により、(nk)k≥1は厳密な増加列である。
各正の整数kに対して
Ak={x∈X∣∣fnk(x)−f(x)∣≥2−k}とおく。命題 1.2によりAk∈Fであり、選び方から
μ(Ak)<2−kである。偏差集合に無限回属する点の集合を
L=m=1⋂∞k=m⋃∞Akと定める。集合Lは可測である。
各正の整数mに対して
Bm=k=m⋃∞Akとおく。可算劣加法性から
μ(Bm)≤k=m∑∞μ(Ak)≤k=m∑∞2−k=21−mを得る。L⊆Bmであるから、測度の単調性により
0≤μ(L)≤21−mがすべての正の整数mに対して成り立つ。m→∞とすると
μ(L)=0を得る。
x∈X∖Lとする。x∈/Lであるから、ある正の整数mが存在してx∈/Bmが成り立つ。したがって、すべてのk≥mに対してx∈/Akであり、
∣fnk(x)−f(x)∣<2−kが成り立つ。右辺はk→∞のとき零へ収束するため、
k→∞limfnk(x)=f(x)を得る。可測零集合Lの外のすべての点で収束するので、定義 1.1により、部分列(fnk)k≥1はfにμに関してほとんど至る所で収束する。▨
証明では、偏差集合の上極限が零集合であることを、可算劣加法性と幾何級数の評価だけから示した。したがって、確率論の結果を前提として用いる必要はない。
5 収束する部分列の存在は元の列の測度収束を導かない
ほとんど至る所で収束する部分列が一つ存在しても、選ばれなかった項の挙動は制約されない。次の一点測度空間上の列は、収束する部分列をもつが、元の列はどの関数にも測度収束しない。
例 5.1 (ほとんど至る所で収束する部分列をもつ非収束列).X={x0}、F=P(X)とし、μ=δx0を点x0における
Dirac 測度とする。Dirac 測度の定義は§E9.2 例 1.3による。各正の整数nに対して、可測関数fn:X→Rを
fn(x0)={0,1,n が偶数である場合,n が奇数である場合によって定める。偶数番目の部分列は恒等的に零であるから、
f2k⟶0がXのすべての点で成り立つ。
部分列の極限である零関数を元の列の候補極限とし、ε=1/2とする。このとき、
μ({x∈X∣∣fn(x)−0∣≥1/2})={0,1,n が偶数である場合,n が奇数である場合である。したがって、元の列は零関数へ測度収束しない。
さらに、元の列が別の有限値可測関数g:X→Kへ測度収束する可能性もない。a=g(x0)とおくと、三角不等式から
1≤∣a∣+∣1−a∣であるため、∣a∣≥1/2または∣1−a∣≥1/2が成り立つ。前者では、すべての偶数nに対して
μ({x∈X∣∣fn(x)−g(x)∣≥1/2})=1である。後者では、同じ等式がすべての奇数nに対して成り立つ。いずれの場合も偏差集合の測度は零へ収束しない。ゆえに、元の列(fn)n≥1はどの有限値可測関数にも測度収束しない。
有限測度空間における含意と、一般の測度空間における部分列の結論をまとめる。
6 演習
問題 6.1.
- 定義 1.1、定義 1.3、および定義 1.4の量化の順序を、零集合、精度、例外集合、添字、および点の順序が分かる形で書き下せ。
- 定理 2.1の証明で、En,mが可測な減少列であることと、⋂nEn,mが零集合であることを証明せよ。続いて、μ(X)<∞を測度の上からの連続性へ適用する箇所を特定せよ。
- ほとんど一様な収束から測度収束を導く証明を、任意のε>0とη>0に対して偏差集合を一つの例外集合に含める方法によって再構成せよ。
- 正数列(ak)k≥1と(bk)k≥1がak→0と∑kbk<∞を満たすとする。測度収束する列からμ({∣fnk−f∣≥ak})<bkを満たす厳密な増加添字列を選び、定理 4.1の証明を一般化せよ。
- 例 5.1の一点測度空間を二点集合へ置き換え、同じ性質をもつ関数列を構成せよ。候補極限を任意にとった場合にも測度収束しないことを証明せよ。
7 適用範囲
本記事の関数は、実数または複素数に有限値をとる可測関数である。正負の無限大を値としてとる関数列は扱わない。
Egorov の定理はμ(X)<∞を必要とする。例 2.2は、全空間の有限性を除いた場合に結論が成り立たないことを示す。一方、ほとんど一様な収束から測度収束への含意と、測度収束列から部分列を選ぶ定理には、全空間の有限性、シグマ有限性、または測度の完備性を用いていない。
本記事は、確率変数列、Lp収束、一様可積分性、および測度の弱収束を扱わない。