1 単調収束定理
証明では、積分値の増加極限を先に固定する。逆向きの評価を得るため、極限関数を下から抑える任意の非負単関数をとり、その単関数の定数倍をfnが上回る可測集合を考える。集合列に測度の下からの連続性を適用することにより、積分の定義に現れるすべての非負単関数を回収する。
定理 1.1 (単調収束定理).(X,F,μ)を測度空間とし、各n≥1に対してfn:X→[0,∞]を拡張実数値可測関数とする。すべてのx∈Xとn≥1に対して
fn(x)≤fn+1(x)が成り立つと仮定し、
f(x)=n≥1supfn(x)と定める。このとき、fは拡張実数値可測関数であり、
∫Xfndμ↑∫Xfdμが[0,∞]において成り立つ。
証明.§E9.5 定理 4.1により、fは拡張実数値可測関数である。§E9.6 命題 2.2により、数列(∫Xfndμ)n≥1は広義単調増加である。その極限を
L=n→∞lim∫Xfndμ∈[0,∞]とおく。各nに対してfn≤fであるから、
L≤∫Xfdμが成り立つ。
逆向きの不等式を示す。0≤φ≤fを満たす任意の非負単関数φと、0<c<1をとる。φの正の相異なる値をa1,…,akとし、Ai={φ=ai}とおく。φが正の値をとらない場合には∫Xφdμ=0≤Lであるから、以下ではk≥1とする。各n≥1に対して
En={x∈X∣fn(x)≥cφ(x)}とおく。集合Enは可測である。実際、
X∖En=q∈Q⋃({fn<q}∩{cφ>q})であり、右辺は可測集合の可算和である。また、fn≤fn+1であるからEn⊆En+1である。
x∈Xを固定する。φ(x)=0ならばx∈Enがすべてのnについて成り立つ。φ(x)>0ならば
f(x)≥φ(x)>cφ(x)であり、fn(x)↑f(x)であるから、x∈Enを満たす正の整数nが存在する。したがって、
En↑Xである。
関数cφ1Enは非負単関数であり、点ごとにcφ1En≤fnを満たす。積分の単調性と§E9.6 定義 1.1から、
∫Xfndμ≥∫Xcφ1Endμ=ci=1∑kaiμ(Ai∩En)を得る。各iについてAi∩En↑Aiであるから、§E9.2 定理 4.1の下からの連続性により
μ(Ai∩En)↑μ(Ai)である。すべてのμ(Ai)が有限ならば、通常の有限和の極限をとることができる。いずれかのμ(Ai)が無限大ならば、対応する一つの項が任意の有限値を超える。したがって、有限個の非負拡張実数の和について極限をとると、
L≥ci=1∑kaiμ(Ai)=c∫Xφdμを得る。
∫Xφdμ<∞ならば、cを1へ増加させることによりL≥∫Xφdμを得る。∫Xφdμ=∞ならば、任意のc∈(0,1)に対してc∫Xφdμ=∞であるため、L=∞である。したがって、いずれの場合にも
L≥∫Xφdμが成り立つ。0≤φ≤fを満たすすべての非負単関数について上限をとり、§E9.6 定義 2.1を用いると、
L≥∫Xfdμを得る。先に得た逆向きの不等式と合わせてL=∫Xfdμが成り立つ。▨
2 Fatou の補題
関数列の各末尾に対して点ごとの下限をとると、末尾下限はnとともに増加する。単調収束定理を末尾下限の列へ適用し、各末尾下限を元の各項と比較する。
補題 2.1 (Fatou の補題).(X,F,μ)を測度空間とし、各n≥1に対してfn:X→[0,∞]を拡張実数値可測関数とする。このとき、
∫Xn→∞liminffndμ≤n→∞liminf∫Xfndμが[0,∞]において成り立つ。
証明. 各n≥1に対して
gn=k≥ninffkとおく。§E9.5 定理 4.1により、各gnは非負拡張実数値可測関数である。また、gn≤gn+1であり、
n≥1supgn=n→∞liminffnが点ごとに成り立つ。したがって、定理 1.1により、
∫Xn→∞liminffndμ=n≥1sup∫Xgndμである。
固定したnとすべてのk≥nに対してgn≤fkである。§E9.6 命題 2.2により、
∫Xgndμ≤k≥ninf∫Xfkdμを得る。両辺についてnに関する上限をとると、
∫Xn→∞liminffndμ≤n≥1supk≥ninf∫Xfkdμ=n→∞liminf∫Xfndμが成り立つ。▨
3 優収束定理
複素数値関数の場合にも積分の収束をL1収束から導くため、最初に積分の絶対値評価を確認する。
補題 3.1.(X,F,μ)を測度空間とし、u:X→Rまたはu:X→Cを可積分関数とする。このとき、
∫Xudμ≤∫X∣u∣dμが成り立つ。
証明.uが実数値関数ならば、−∣u∣≤u≤∣u∣が点ごとに成り立つ。§E9.6 命題 3.3を二度適用すると、
−∫X∣u∣dμ≤∫Xudμ≤∫X∣u∣dμを得る。したがって、主張が成り立つ。
uが複素数値関数である場合を考える。I=∫Xudμ=0ならば、左辺は0であり、右辺は非負であるから主張が成り立つ。I=0ならば
α=∣I∣Iとおく。∣α∣=1であり、§E9.6 定理 3.2と複素積分の定義から
∣I∣=Re(αI)=∫XRe(αu)dμである。点ごとにRe(αu)≤∣αu∣=∣u∣が成り立つため、§E9.6 命題 3.3により
∣I∣≤∫X∣u∣dμを得る。▨
優収束定理の証明では、収束が成り立たない零集合と、各支配不等式が成り立たない零集合との可算和を一つの零集合にまとめる。零集合上で関数を0に変更した後、2g−∣fn−f∣に Fatou の補題を適用する。この関数の積分は有限であるため、計算には未定義な∞−∞が現れない。
定理 3.2 (優収束定理).(X,F,μ)を測度空間とし、KをRまたはCとする。各n≥1に対してfn:X→Kを有限値可測関数とし、f:X→Kも有限値可測関数とする。次の二条件を仮定する。
- fn(x)→f(x)がμに関してほとんど至る所で成り立つ。
- 一つの非負可積分関数g:X→[0,∞)が存在し、すべてのn≥1に対して∣fn(x)∣≤g(x)がμに関してほとんど至る所で成り立つ。
このとき、すべてのfnとfは可積分であり、
n→∞lim∫X∣fn−f∣dμ=0が成り立つ。さらに、
n→∞lim∫Xfndμ=∫XfdμがKにおいて成り立つ。
証明.条件 (a)から、μ(N0)=0を満たす可測集合N0が存在し、X∖N0上でfn→fが点ごとに成り立つ。条件 (b)から、各n≥1に対してμ(Nn)=0を満たす可測集合Nnが存在し、X∖Nn上で∣fn∣≤gが成り立つ。
N=n=0⋃∞Nnとおく。測度の可算劣加法性§E9.2 命題 2.1からμ(N)=0である。
各n≥1に対して
fn(x)={fn(x),0,x∈X∖N,x∈N,f(x)={f(x),0,x∈X∖N,x∈Nと定める。実数値関数の場合にはfn=fn1X∖Nとf=f1X∖Nであるから、指示関数の可測性と§E9.5 命題 3.1により両関数は可測である。複素数値関数の場合にも、実部と虚部へ同じ議論を適用し、§E9.5 定理 6.1を用いると可測性を得る。したがって、fnとfは有限値可測関数である。すべてのx∈Xに対して
fn(x)→f(x),∣fn(x)∣≤g(x)が成り立つ。絶対値の連続性から∣f∣≤gも点ごとに成り立つ。
§E9.6 命題 2.2により、
∫X∣fn∣dμ≤∫Xgdμ<∞,∫X∣f∣dμ≤∫Xgdμ<∞.また、∣fn∣=∣fn∣および∣f∣=∣f∣がX∖N上で成り立つ。非負可測関数に対する§E9.6 定理 4.2により、
∫X∣fn∣dμ=∫X∣fn∣dμ,∫X∣f∣dμ=∫X∣f∣dμ.したがって、すべてのfnとfは可積分である。
hn=∣fn−f∣とおく。各hnは非負可測関数であり、点ごとにhn→0かつ0≤hn≤2gが成り立つ。積分の単調性から
∫Xhndμ≤2∫Xgdμ<∞であるため、各hnは可積分である。したがって、2g−hnは非負可積分関数であり、点ごとに2gへ収束する。補題 2.1を列(2g−hn)n≥1へ適用し、§E9.6 定理 3.2を用いると、
2∫Xgdμ=∫X2gdμ≤n→∞liminf∫X(2g−hn)dμ=2∫Xgdμ−n→∞limsup∫Xhndμ.を得る。最後の等号では、有限な実数Cと実数列(an)に対するliminfn(C−an)=C−limsupnanを用いた。∫Xgdμは有限であるため、この計算には無限量どうしの差が現れない。各∫Xhndμは非負であるから、
n→∞lim∫Xhndμ=0である。
∣fn−f∣=hnがX∖N上で成り立つ。非負可測関数に対する§E9.6 定理 4.2により、
∫X∣fn−f∣dμ=∫Xhndμである。したがって、
n→∞lim∫X∣fn−f∣dμ=0を得る。
§E9.6 定理 3.2と補題 3.1から、
∫Xfndμ−∫Xfdμ=∫X(fn−f)dμ≤∫X∣fn−f∣dμが成り立つ。右辺は0へ収束するため、
∫Xfndμ→∫Xfdμを得る。▨
次の例では、優収束定理の仮定を直接確認する。
例 3.3 (有界区間上の冪関数).[0,1]に Lebesgue 測度λを入れ、fn(x)=xnとする。各fnは可測であり、
fn(x)→{0,1,0≤x<1,x=1が点ごとに成り立つ。また、すべてのn≥1とx∈[0,1]に対して∣fn(x)∣≤1であり、定数関数1は[0,1]上で可積分である。定理 3.2と§E9.6 定理 4.2により、
n→∞lim∫[0,1]xndλ=0を得る。
支配関数の仮定を外すと、各点収束が成り立っても積分の収束は失敗しうる。
例 3.4 (可積分な共通支配関数が存在しない列).[0,1]に Lebesgue 測度λを入れ、
fn=n1(0,1/n)と定める。各n≥1に対して
∫[0,1]fndλ=1である。一方、x=0ではすべてのnについてfn(x)=0であり、x>0では十分大きいnに対してx∈/(0,1/n)である。したがって、fn→0が点ごとに成り立つ。
すべてのnに対してfn≤gがほとんど至る所で成り立つ非負可積分関数gが存在すると仮定する。各nの例外零集合の可算和をNとすると、λ(N)=0であり、[0,1]∖N上ではすべての支配不等式が同時に成り立つ。x∈(0,1/4]∖Nとし、
n=⌊2x1⌋とおく。n<1/xであるからx∈(0,1/n)であり、
g(x)≥fn(x)=n≥4x1である。
k≥2に対してIk=(2−(k+1),2−k]とおく。任意の正の整数M≥2に対して、非負単関数
sM=k=2∑M2k−21Ik∖NはsM≤gを満たす。また、λ(Ik∖N)=λ(Ik)=2−(k+1)であるから、
∫[0,1]gdλ≥∫[0,1]sMdλ=k=2∑M2k−22−(k+1)=8M−1.Mは任意であるため、∫gdλ=∞となり、gの可積分性に反する。したがって、この列を全項同時に抑える可積分関数は存在しない。実際、
n→∞lim∫[0,1]fndλ=1=0=∫[0,1]n→∞limfndλである。Fatou の補題の不等式では、この例の左辺は0、右辺は1となり、等号は成り立たない。
4 演習
問題 4.1.
- 定理 1.1の証明で0<c<1を固定する理由を説明せよ。また、∫Xφdμ=∞の場合にも下側評価が成立することを、証明中の不等式から示せ。
- 補題 2.1の証明で、gn=infk≥nfkが可測で広義単調増加であることを示し、積分の単調性を適用して結論までの不等式を再構成せよ。
- 定理 3.2の証明で、支配不等式の例外集合をnごとに別々のまま扱わず、一つの零集合へまとめる必要がある理由を説明せよ。さらに、Fatou の補題を2g−∣fn−f∣へ適用してL1収束を導け。
5 適用範囲
単調収束定理と Fatou の補題は、測度空間の有限性またはシグマ有限性を仮定しない。単調収束定理では点ごとの増加を仮定し、Fatou の補題では非負性だけを仮定する。優収束定理では、ほとんど至る所での収束と、一つの可積分関数による全項の支配との双方が必要である。
一様可積分性によって支配関数の仮定を置き換える収束定理と Vitali の収束定理は、本記事では扱わず、「測度論続論」で扱う。本記事の証明は、後続の関数列の収束概念を前提として用いない。