§E9.7収束定理

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Lebesgue 積分では、関数列の極限と積分の順序を交換するために、関数列の符号、収束の型、および可積分な支配関数の有無を区別する必要がある。本記事では、非負関数の増加列に対する単調収束定理を積分の定義から証明し、その定理から Fatou の補題を導く。最後に、Fatou の補題を用いて優収束定理を証明する。

証明では、非負単関数の積分の定義§E9.6 定義 1.1、非負可測関数の積分の定義§E9.6 定義 2.1、積分の単調性§E9.6 命題 2.2、可積分関数の線形性§E9.6 定理 3.2、可積分な実関数の積分の単調性§E9.6 命題 3.3、およびほとんど至る所での一致に対する積分値の不変性§E9.6 定理 4.2を用いる。測度については下からの連続性§E9.2 定理 4.1を用い、関数の可測性については可算上限、可算下限、および点ごとの極限に関する閉性§E9.5 定理 4.1を用いる。

1 単調収束定理

証明では、積分値の増加極限を先に固定する。逆向きの評価を得るため、極限関数を下から抑える任意の非負単関数をとり、その単関数の定数倍をfnf_nが上回る可測集合を考える。集合列に測度の下からの連続性を適用することにより、積分の定義に現れるすべての非負単関数を回収する。

定理 1.1 (単調収束定理).(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、各n≥1n\geq1に対してfn:X→[0,∞]f_n:X\to[0,\infty]を拡張実数値可測関数とする。すべてのx∈Xx\in Xとn≥1n\geq1に対して

fn(x)≤fn+1(x)f_n(x)\leq f_{n+1}(x)

が成り立つと仮定し、

f(x)=sup⁡n≥1fn(x)f(x)=\sup_{n\geq1}f_n(x)

と定める。このとき、ffは拡張実数値可測関数であり、

∫Xfn dμ↑∫Xf dμ\int_X f_n\,d\mu\uparrow\int_X f\,d\mu

が[0,∞][0,\infty]において成り立つ。

証明.§E9.5 定理 4.1により、ffは拡張実数値可測関数である。§E9.6 命題 2.2により、数列(∫Xfn dμ)n≥1(\int_Xf_n\,d\mu)_{n\geq1}は広義単調増加である。その極限を

L=lim⁡n→∞∫Xfn dμ∈[0,∞]L=\lim_{n\to\infty}\int_Xf_n\,d\mu\in[0,\infty]

とおく。各nnに対してfn≤ff_n\leq fであるから、

L≤∫Xf dμL\leq\int_Xf\,d\mu

が成り立つ。

逆向きの不等式を示す。0≤φ≤f0\leq\varphi\leq fを満たす任意の非負単関数φ\varphiと、0<c<10<c<1をとる。φ\varphiの正の相異なる値をa1,…,aka_1,\dots,a_kとし、Ai={φ=ai}A_i=\{\varphi=a_i\}とおく。φ\varphiが正の値をとらない場合には∫Xφ dμ=0≤L\int_X\varphi\,d\mu=0\leq Lであるから、以下ではk≥1k\geq1とする。各n≥1n\geq1に対して

En={x∈X∣fn(x)≥cφ(x)}E_n=\{x\in X\mid f_n(x)\geq c\varphi(x)\}

とおく。集合EnE_nは可測である。実際、

X∖En=⋃q∈Q({fn<q}∩{cφ>q})X\setminus E_n =\bigcup_{q\in\mathbb{Q}} \bigl(\{f_n<q\}\cap\{c\varphi>q\}\bigr)

であり、右辺は可測集合の可算和である。また、fn≤fn+1f_n\leq f_{n+1}であるからEn⊆En+1E_n\subseteq E_{n+1}である。

x∈Xx\in Xを固定する。φ(x)=0\varphi(x)=0ならばx∈Enx\in E_nがすべてのnnについて成り立つ。φ(x)>0\varphi(x)>0ならば

f(x)≥φ(x)>cφ(x)f(x)\geq\varphi(x)>c\varphi(x)

であり、fn(x)↑f(x)f_n(x)\uparrow f(x)であるから、x∈Enx\in E_nを満たす正の整数nnが存在する。したがって、

En↑XE_n\uparrow X

である。

関数cφ1Enc\varphi\mathbf{1}_{E_n}は非負単関数であり、点ごとにcφ1En≤fnc\varphi\mathbf{1}_{E_n}\leq f_nを満たす。積分の単調性と§E9.6 定義 1.1から、

∫Xfn dμ≥∫Xcφ1En dμ=c∑i=1kaiμ(Ai∩En)\int_Xf_n\,d\mu \geq\int_Xc\varphi\mathbf{1}_{E_n}\,d\mu =c\sum_{i=1}^{k}a_i\mu(A_i\cap E_n)

を得る。各iiについてAi∩En↑AiA_i\cap E_n\uparrow A_iであるから、§E9.2 定理 4.1の下からの連続性により

μ(Ai∩En)↑μ(Ai)\mu(A_i\cap E_n)\uparrow\mu(A_i)

である。すべてのμ(Ai)\mu(A_i)が有限ならば、通常の有限和の極限をとることができる。いずれかのμ(Ai)\mu(A_i)が無限大ならば、対応する一つの項が任意の有限値を超える。したがって、有限個の非負拡張実数の和について極限をとると、

L≥c∑i=1kaiμ(Ai)=c∫Xφ dμL\geq c\sum_{i=1}^{k}a_i\mu(A_i) =c\int_X\varphi\,d\mu

を得る。

∫Xφ dμ<∞\int_X\varphi\,d\mu<\inftyならば、ccを11へ増加させることによりL≥∫Xφ dμL\geq\int_X\varphi\,d\muを得る。∫Xφ dμ=∞\int_X\varphi\,d\mu=\inftyならば、任意のc∈(0,1)c\in(0,1)に対してc∫Xφ dμ=∞c\int_X\varphi\,d\mu=\inftyであるため、L=∞L=\inftyである。したがって、いずれの場合にも

L≥∫Xφ dμL\geq\int_X\varphi\,d\mu

が成り立つ。0≤φ≤f0\leq\varphi\leq fを満たすすべての非負単関数について上限をとり、§E9.6 定義 2.1を用いると、

L≥∫Xf dμL\geq\int_Xf\,d\mu

を得る。先に得た逆向きの不等式と合わせてL=∫Xf dμL=\int_Xf\,d\muが成り立つ。▨

2 Fatou の補題

関数列の各末尾に対して点ごとの下限をとると、末尾下限はnnとともに増加する。単調収束定理を末尾下限の列へ適用し、各末尾下限を元の各項と比較する。

補題 2.1 (Fatou の補題).(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、各n≥1n\geq1に対してfn:X→[0,∞]f_n:X\to[0,\infty]を拡張実数値可測関数とする。このとき、

∫Xlim inf⁡n→∞fn dμ≤lim inf⁡n→∞∫Xfn dμ\int_X\liminf_{n\to\infty}f_n\,d\mu \leq \liminf_{n\to\infty}\int_Xf_n\,d\mu

が[0,∞][0,\infty]において成り立つ。

証明. 各n≥1n\geq1に対して

gn=inf⁡k≥nfkg_n=\inf_{k\geq n}f_k

とおく。§E9.5 定理 4.1により、各gng_nは非負拡張実数値可測関数である。また、gn≤gn+1g_n\leq g_{n+1}であり、

sup⁡n≥1gn=lim inf⁡n→∞fn\sup_{n\geq1}g_n=\liminf_{n\to\infty}f_n

が点ごとに成り立つ。したがって、定理 1.1により、

∫Xlim inf⁡n→∞fn dμ=sup⁡n≥1∫Xgn dμ\int_X\liminf_{n\to\infty}f_n\,d\mu =\sup_{n\geq1}\int_Xg_n\,d\mu

である。

固定したnnとすべてのk≥nk\geq nに対してgn≤fkg_n\leq f_kである。§E9.6 命題 2.2により、

∫Xgn dμ≤inf⁡k≥n∫Xfk dμ\int_Xg_n\,d\mu \leq\inf_{k\geq n}\int_Xf_k\,d\mu

を得る。両辺についてnnに関する上限をとると、

∫Xlim inf⁡n→∞fn dμ≤sup⁡n≥1inf⁡k≥n∫Xfk dμ=lim inf⁡n→∞∫Xfn dμ\int_X\liminf_{n\to\infty}f_n\,d\mu \leq \sup_{n\geq1}\inf_{k\geq n}\int_Xf_k\,d\mu =\liminf_{n\to\infty}\int_Xf_n\,d\mu

が成り立つ。▨

3 優収束定理

複素数値関数の場合にも積分の収束をL1L^1収束から導くため、最初に積分の絶対値評価を確認する。

補題 3.1.(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、u:X→Ru:X\to\mathbb{R}またはu:X→Cu:X\to\mathbb{C}を可積分関数とする。このとき、

∣∫Xu dμ∣≤∫X∣u∣ dμ\left|\int_Xu\,d\mu\right| \leq\int_X|u|\,d\mu

が成り立つ。

証明.uuが実数値関数ならば、−∣u∣≤u≤∣u∣-|u|\leq u\leq|u|が点ごとに成り立つ。§E9.6 命題 3.3を二度適用すると、

−∫X∣u∣ dμ≤∫Xu dμ≤∫X∣u∣ dμ-\int_X|u|\,d\mu \leq\int_Xu\,d\mu \leq\int_X|u|\,d\mu

を得る。したがって、主張が成り立つ。

uuが複素数値関数である場合を考える。I=∫Xu dμ=0I=\int_Xu\,d\mu=0ならば、左辺は00であり、右辺は非負であるから主張が成り立つ。I≠0I\neq0ならば

α=I‾∣I∣\alpha=\frac{\overline{I}}{|I|}

とおく。∣α∣=1|\alpha|=1であり、§E9.6 定理 3.2と複素積分の定義から

∣I∣=Re⁡(αI)=∫XRe⁡(αu) dμ|I| =\operatorname{Re}(\alpha I) =\int_X\operatorname{Re}(\alpha u)\,d\mu

である。点ごとにRe⁡(αu)≤∣αu∣=∣u∣\operatorname{Re}(\alpha u)\leq|\alpha u|=|u|が成り立つため、§E9.6 命題 3.3により

∣I∣≤∫X∣u∣ dμ|I|\leq\int_X|u|\,d\mu

を得る。▨

優収束定理の証明では、収束が成り立たない零集合と、各支配不等式が成り立たない零集合との可算和を一つの零集合にまとめる。零集合上で関数を00に変更した後、2g−∣f~n−f~∣2g-|\widetilde f_n-\widetilde f|に Fatou の補題を適用する。この関数の積分は有限であるため、計算には未定義な∞−∞\infty-\inftyが現れない。

定理 3.2 (優収束定理).(X,F,μ)(X,\mathcal{F},\mu)を測度空間とし、K\mathbb{K}をR\mathbb{R}またはC\mathbb{C}とする。各n≥1n\geq1に対してfn:X→Kf_n:X\to\mathbb{K}を有限値可測関数とし、f:X→Kf:X\to\mathbb{K}も有限値可測関数とする。次の二条件を仮定する。

  1. fn(x)→f(x)f_n(x)\to f(x)がμ\muに関してほとんど至る所で成り立つ。
  2. 一つの非負可積分関数g:X→[0,∞)g:X\to[0,\infty)が存在し、すべてのn≥1n\geq1に対して∣fn(x)∣≤g(x)|f_n(x)|\leq g(x)がμ\muに関してほとんど至る所で成り立つ。

このとき、すべてのfnf_nとffは可積分であり、

lim⁡n→∞∫X∣fn−f∣ dμ=0\lim_{n\to\infty}\int_X|f_n-f|\,d\mu=0

が成り立つ。さらに、

lim⁡n→∞∫Xfn dμ=∫Xf dμ\lim_{n\to\infty}\int_Xf_n\,d\mu=\int_Xf\,d\mu

がK\mathbb{K}において成り立つ。

証明.条件 (a)から、μ(N0)=0\mu(N_0)=0を満たす可測集合N0N_0が存在し、X∖N0X\setminus N_0上でfn→ff_n\to fが点ごとに成り立つ。条件 (b)から、各n≥1n\geq1に対してμ(Nn)=0\mu(N_n)=0を満たす可測集合NnN_nが存在し、X∖NnX\setminus N_n上で∣fn∣≤g|f_n|\leq gが成り立つ。

N=⋃n=0∞NnN=\bigcup_{n=0}^{\infty}N_n

とおく。測度の可算劣加法性§E9.2 命題 2.1からμ(N)=0\mu(N)=0である。

各n≥1n\geq1に対して

f~n(x)={fn(x),x∈X∖N,0,x∈N,f~(x)={f(x),x∈X∖N,0,x∈N\widetilde f_n(x)= \begin{cases} f_n(x),&x\in X\setminus N,\\ 0,&x\in N, \end{cases} \qquad \widetilde f(x)= \begin{cases} f(x),&x\in X\setminus N,\\ 0,&x\in N \end{cases}

と定める。実数値関数の場合にはf~n=fn1X∖N\widetilde f_n=f_n\mathbf{1}_{X\setminus N}とf~=f1X∖N\widetilde f=f\mathbf{1}_{X\setminus N}であるから、指示関数の可測性と§E9.5 命題 3.1により両関数は可測である。複素数値関数の場合にも、実部と虚部へ同じ議論を適用し、§E9.5 定理 6.1を用いると可測性を得る。したがって、f~n\widetilde f_nとf~\widetilde fは有限値可測関数である。すべてのx∈Xx\in Xに対して

f~n(x)→f~(x),∣f~n(x)∣≤g(x)\widetilde f_n(x)\to\widetilde f(x), \qquad |\widetilde f_n(x)|\leq g(x)

が成り立つ。絶対値の連続性から∣f~∣≤g|\widetilde f|\leq gも点ごとに成り立つ。

§E9.6 命題 2.2により、

∫X∣f~n∣ dμ≤∫Xg dμ<∞,∫X∣f~∣ dμ≤∫Xg dμ<∞.\int_X|\widetilde f_n|\,d\mu\leq\int_Xg\,d\mu<\infty, \qquad \int_X|\widetilde f|\,d\mu\leq\int_Xg\,d\mu<\infty.

また、∣fn∣=∣f~n∣|f_n|=|\widetilde f_n|および∣f∣=∣f~∣|f|=|\widetilde f|がX∖NX\setminus N上で成り立つ。非負可測関数に対する§E9.6 定理 4.2により、

∫X∣fn∣ dμ=∫X∣f~n∣ dμ,∫X∣f∣ dμ=∫X∣f~∣ dμ.\int_X|f_n|\,d\mu=\int_X|\widetilde f_n|\,d\mu, \qquad \int_X|f|\,d\mu=\int_X|\widetilde f|\,d\mu.

したがって、すべてのfnf_nとffは可積分である。

hn=∣f~n−f~∣h_n=|\widetilde f_n-\widetilde f|

とおく。各hnh_nは非負可測関数であり、点ごとにhn→0h_n\to0かつ0≤hn≤2g0\leq h_n\leq2gが成り立つ。積分の単調性から

∫Xhn dμ≤2∫Xg dμ<∞\int_Xh_n\,d\mu\leq2\int_Xg\,d\mu<\infty

であるため、各hnh_nは可積分である。したがって、2g−hn2g-h_nは非負可積分関数であり、点ごとに2g2gへ収束する。補題 2.1を列(2g−hn)n≥1(2g-h_n)_{n\geq1}へ適用し、§E9.6 定理 3.2を用いると、

2∫Xg dμ=∫X2g dμ≤lim inf⁡n→∞∫X(2g−hn) dμ=2∫Xg dμ−lim sup⁡n→∞∫Xhn dμ.\begin{aligned} 2\int_Xg\,d\mu &=\int_X2g\,d\mu\\ &\leq\liminf_{n\to\infty}\int_X(2g-h_n)\,d\mu\\ &=2\int_Xg\,d\mu-\limsup_{n\to\infty}\int_Xh_n\,d\mu. \end{aligned}

を得る。最後の等号では、有限な実数CCと実数列(an)(a_n)に対するlim inf⁡n(C−an)=C−lim sup⁡nan\liminf_n(C-a_n)=C-\limsup_na_nを用いた。∫Xg dμ\int_Xg\,d\muは有限であるため、この計算には無限量どうしの差が現れない。各∫Xhn dμ\int_Xh_n\,d\muは非負であるから、

lim⁡n→∞∫Xhn dμ=0\lim_{n\to\infty}\int_Xh_n\,d\mu=0

である。

∣fn−f∣=hn|f_n-f|=h_nがX∖NX\setminus N上で成り立つ。非負可測関数に対する§E9.6 定理 4.2により、

∫X∣fn−f∣ dμ=∫Xhn dμ\int_X|f_n-f|\,d\mu=\int_Xh_n\,d\mu

である。したがって、

lim⁡n→∞∫X∣fn−f∣ dμ=0\lim_{n\to\infty}\int_X|f_n-f|\,d\mu=0

を得る。

§E9.6 定理 3.2と補題 3.1から、

∣∫Xfn dμ−∫Xf dμ∣=∣∫X(fn−f) dμ∣≤∫X∣fn−f∣ dμ\left|\int_Xf_n\,d\mu-\int_Xf\,d\mu\right| =\left|\int_X(f_n-f)\,d\mu\right| \leq\int_X|f_n-f|\,d\mu

が成り立つ。右辺は00へ収束するため、

∫Xfn dμ→∫Xf dμ\int_Xf_n\,d\mu\to\int_Xf\,d\mu

を得る。▨

次の例では、優収束定理の仮定を直接確認する。

例 3.3 (有界区間上の冪関数).[0,1][0,1]に Lebesgue 測度λ\lambdaを入れ、fn(x)=xnf_n(x)=x^nとする。各fnf_nは可測であり、

fn(x)→{0,0≤x<1,1,x=1f_n(x)\to \begin{cases} 0,&0\leq x<1,\\ 1,&x=1 \end{cases}

が点ごとに成り立つ。また、すべてのn≥1n\geq1とx∈[0,1]x\in[0,1]に対して∣fn(x)∣≤1|f_n(x)|\leq1であり、定数関数11は[0,1][0,1]上で可積分である。定理 3.2と§E9.6 定理 4.2により、

lim⁡n→∞∫[0,1]xn dλ=0\lim_{n\to\infty}\int_{[0,1]}x^n\,d\lambda=0

を得る。

支配関数の仮定を外すと、各点収束が成り立っても積分の収束は失敗しうる。

例 3.4 (可積分な共通支配関数が存在しない列).[0,1][0,1]に Lebesgue 測度λ\lambdaを入れ、

fn=n1(0,1/n)f_n=n\mathbf{1}_{(0,1/n)}

と定める。各n≥1n\geq1に対して

∫[0,1]fn dλ=1\int_{[0,1]}f_n\,d\lambda=1

である。一方、x=0x=0ではすべてのnnについてfn(x)=0f_n(x)=0であり、x>0x>0では十分大きいnnに対してx∉(0,1/n)x\notin(0,1/n)である。したがって、fn→0f_n\to0が点ごとに成り立つ。

すべてのnnに対してfn≤gf_n\leq gがほとんど至る所で成り立つ非負可積分関数ggが存在すると仮定する。各nnの例外零集合の可算和をNNとすると、λ(N)=0\lambda(N)=0であり、[0,1]∖N[0,1]\setminus N上ではすべての支配不等式が同時に成り立つ。x∈(0,1/4]∖Nx\in(0,1/4]\setminus Nとし、

n=⌊12x⌋n=\left\lfloor\frac{1}{2x}\right\rfloor

とおく。n<1/xn<1/xであるからx∈(0,1/n)x\in(0,1/n)であり、

g(x)≥fn(x)=n≥14xg(x)\geq f_n(x)=n\geq\frac{1}{4x}

である。

k≥2k\geq2に対してIk=(2−(k+1),2−k]I_k=(2^{-(k+1)},2^{-k}]とおく。任意の正の整数M≥2M\geq2に対して、非負単関数

sM=∑k=2M2k−21Ik∖Ns_M=\sum_{k=2}^{M}2^{k-2}\mathbf{1}_{I_k\setminus N}

はsM≤gs_M\leq gを満たす。また、λ(Ik∖N)=λ(Ik)=2−(k+1)\lambda(I_k\setminus N)=\lambda(I_k)=2^{-(k+1)}であるから、

∫[0,1]g dλ≥∫[0,1]sM dλ=∑k=2M2k−22−(k+1)=M−18.\int_{[0,1]}g\,d\lambda \geq\int_{[0,1]}s_M\,d\lambda =\sum_{k=2}^{M}2^{k-2}2^{-(k+1)} =\frac{M-1}{8}.

MMは任意であるため、∫g dλ=∞\int g\,d\lambda=\inftyとなり、ggの可積分性に反する。したがって、この列を全項同時に抑える可積分関数は存在しない。実際、

lim⁡n→∞∫[0,1]fn dλ=1≠0=∫[0,1]lim⁡n→∞fn dλ\lim_{n\to\infty}\int_{[0,1]}f_n\,d\lambda=1 \neq0=\int_{[0,1]}\lim_{n\to\infty}f_n\,d\lambda

である。Fatou の補題の不等式では、この例の左辺は00、右辺は11となり、等号は成り立たない。

4 演習

問題 4.1.

  1. 定理 1.1の証明で0<c<10<c<1を固定する理由を説明せよ。また、∫Xφ dμ=∞\int_X\varphi\,d\mu=\inftyの場合にも下側評価が成立することを、証明中の不等式から示せ。
  2. 補題 2.1の証明で、gn=inf⁡k≥nfkg_n=\inf_{k\geq n}f_kが可測で広義単調増加であることを示し、積分の単調性を適用して結論までの不等式を再構成せよ。
  3. 定理 3.2の証明で、支配不等式の例外集合をnnごとに別々のまま扱わず、一つの零集合へまとめる必要がある理由を説明せよ。さらに、Fatou の補題を2g−∣f~n−f~∣2g-|\widetilde f_n-\widetilde f|へ適用してL1L^1収束を導け。

5 適用範囲

単調収束定理と Fatou の補題は、測度空間の有限性またはシグマ有限性を仮定しない。単調収束定理では点ごとの増加を仮定し、Fatou の補題では非負性だけを仮定する。優収束定理では、ほとんど至る所での収束と、一つの可積分関数による全項の支配との双方が必要である。

一様可積分性によって支配関数の仮定を置き換える収束定理と Vitali の収束定理は、本記事では扱わず、「測度論続論」で扱う。本記事の証明は、後続の関数列の収束概念を前提として用いない。

参考文献

  1. Donald L. Cohn, Measure Theory, 2nd ed., Birkhäuser Advanced Texts Basler Lehrbücher, Birkhäuser, 2013.
  2. Gerald B. Folland, Real Analysis, 2nd ed., Wiley, 1999.

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