1 切り口測度関数
最初に、有限測度の長方形へ局所化した集合公式を証明する。有限性は、Dynkin 系の補集合に関する閉性を証明するときに、未定義な∞−∞を避けるために用いる。
1.1 証明方針
有限測度集合A∈ΣとB∈Tを固定する。E∩(A×B)について、二つの切り口測度関数が可測であり、その積分が積測度によるE∩(A×B)の測度に等しいようなEの集合族を考える。この集合族が Dynkin 系であり、可測長方形を含むことを証明する。可測長方形は π 系をなし、積シグマ加法族を生成するため、
π–λ 定理を適用することができる。
証明.DA,Bを、結論に述べた二つの切り口測度関数の可測性と二つの積分公式とをF=E∩(A×B)が満たすようなE∈Σ⊗T全体とする。DA,BがX×Y上の Dynkin 系であることを示す。
最初にE=X×Yとする。このときF=A×Bであり、
ν(Fx)=ν(B)1A(x),μ(Fy)=μ(A)1B(y)である。二つの関数は可測であり、非負単関数の積分の定義§E9.6 定義 1.1と積測度の長方形上の値から
∫Xν(Fx)dμ(x)=μ(A)ν(B)=ρ(A×B)=∫Yμ(Fy)dν(y)を得る。したがって、X×Y∈DA,Bである。
E∈DA,Bとし、F=E∩(A×B)とおく。E′=(X×Y)∖EおよびF′=E′∩(A×B)=(A×B)∖Fとする。各x∈Xに対して
ν(Fx′)=ν(B)1A(x)−ν(Fx)が成り立つ。右辺では0≤ν(Fx)≤ν(B)1A(x)<∞であるから、未定義な無限量どうしの差は現れない。したがって、x↦ν(Fx′)は可測である。各y∈Yに対して
μ((F′)y)=μ(A)1B(y)−μ(Fy)が成り立つ。0≤μ(Fy)≤μ(A)1B(y)<∞であるから、y↦μ((F′)y)も可測である。
ρ(A×B)=μ(A)ν(B)<∞であり、FとF′はA×Bを分割する。測度と積分の有限加法性により、
∫Xν(Fx′)dμ(x)=μ(A)ν(B)−∫Xν(Fx)dμ(x)=ρ(A×B)−ρ(F)=ρ(F′).第一の等号では、被積分関数が有限値の非負可測関数であり、両積分が有限であることを用いた。また、μ(A)ν(B)<∞とA×B=F⊔F′を用いると、
∫Yμ((F′)y)dν(y)=μ(A)ν(B)−∫Yμ(Fy)dν(y)=ρ(A×B)−ρ(F)=ρ(F′)を得る。ゆえに、E′∈DA,Bである。
E1,E2,⋯∈DA,Bが二つずつ交わらないとする。Fn=En∩(A×B)とE=⋃n≥1EnおよびF=E∩(A×B)とおく。集合列(Fn)n≥1も二つずつ交わらない。各x∈Xに対して切り口(Fn)xは二つずつ交わらず、
ν(Fx)=n=1∑∞ν((Fn)x)が成り立つ。右辺は可測関数の有限部分和の増加極限であるため、x↦ν(Fx)は可測である。単調収束定理と、各Enに対する積分公式から、
∫Xν(Fx)dμ(x)=n=1∑∞∫Xν((Fn)x)dμ(x)=n=1∑∞ρ(Fn)=ρ(F)を得る。各y∈Yに対して切り口(Fn)yは二つずつ交わらず、
μ(Fy)=n=1∑∞μ((Fn)y)が成り立つ。右辺は可測関数の有限部分和の増加極限であるため、y↦μ(Fy)は可測である。測度空間(Y,T,ν)上で単調収束定理を適用し、各Enに対する積分公式を用いると、
∫Yμ(Fy)dν(y)=n=1∑∞∫Yμ((Fn)y)dν(y)=n=1∑∞ρ(Fn)=ρ(F)を得る。したがって、E∈DA,Bである。以上により、DA,Bは Dynkin 系である。
任意の可測長方形E=C×Dに対して
F=(A∩C)×(B∩D)である。このとき、
ν(Fx)=ν(B∩D)1A∩C(x),μ(Fy)=μ(A∩C)1B∩D(y)である。長方形Fに対する積測度の値と非負単関数の積分の定義により、E∈DA,Bである。可測長方形全体は共通部分に対して閉じる π 系であり、§E9.10 定義 1.1によってΣ⊗Tを生成する。§E9.1 定理 4.8を適用すると、
Σ⊗T⊆DA,Bを得る。ゆえに、任意のE∈Σ⊗Tに対して結論が成り立つ。▨
シグマ有限性を用いると、有限測度長方形を増加させて全空間を覆うことができる。切り口測度関数と積測度の双方で増加極限をとることにより、局所公式を全空間へ拡張する。
証明. シグマ有限性により、
X=n=1⋃∞Cn,Y=n=1⋃∞Dnかつμ(Cn)<∞、ν(Dn)<∞を満たす可測集合列をとる。
An=k=1⋃nCk,Bn=k=1⋃nDkとおくと、An↑XとBn↑Yが成り立ち、有限加法性と単調性からμ(An)<∞とν(Bn)<∞である。
En=E∩(An×Bn)とおく。補題 1.1により、
gn(x)=ν((En)x),hn(y)=μ((En)y)は可測であり、
∫Xgndμ=ρ(En)=∫Yhndνを満たす。集合列(En)n≥1は増加し、その和集合はEである。したがって、各x∈Xとy∈Yに対して
gn(x)↑ν(Ex),hn(y)↑μ(Ey)が測度の下からの連続性によって成り立つ。可測関数の点ごとの増加極限は可測であるため、x↦ν(Ex)とy↦μ(Ey)は可測である。
単調収束定理と測度の下からの連続性を適用すると、
∫Xν(Ex)dμ(x)=n→∞lim∫Xgndμ=n→∞limρ(En)=ρ(E).単調収束定理を(hn)n≥1へ適用し、ρ(En)↑ρ(E)を用いると、
∫Yμ(Ey)dν(y)=n→∞lim∫Yhndν=n→∞limρ(En)=ρ(E)を得る。▨
2 非負可測関数の切り口
積可測関数について一方の変数を固定した関数も可測である。この事実は、可測集合の切り口の可測性を、可測関数の逆像へ適用することから従う。
補題 2.1.(X,Σ,μ)と(Y,T,ν)をシグマ有限な正測度空間とし、(Z,G)を可測空間とする。
f:(X×Y,Σ⊗T)⟶(Z,G)を可測写像とする。各x∈Xとy∈Yに対して
fx(v)=f(x,v)(v∈Y),fy(u)=f(u,y)(u∈X)と定める。このとき、すべてのx∈Xに対してfx:(Y,T)→(Z,G)は可測であり、すべてのy∈Yに対してfy:(X,Σ)→(Z,G)は可測である。
証明.x∈XとG∈Gを固定する。fの可測性からf−1(G)∈Σ⊗Tである。また、
fx−1(G)=(f−1(G))xが成り立つ。§E9.10 命題 6.2により、右辺はTに属する。G∈Gは任意であるから、fxは可測である。
y∈Yを固定した場合には、
(fy)−1(G)=(f−1(G))y∈ΣがすべてのG∈Gについて成り立つ。したがって、fyも可測である。▨
指示関数に対する命題 1.2を有限個足し合わせると、非負単関数に対する反復積分公式が得られる。
命題 2.2. 可算選択公理を仮定する。(X,Σ,μ)と(Y,T,ν)をシグマ有限な正測度空間とし、ρ=μ⊗νとおく。s:X×Y→[0,∞)をΣ⊗Tに関する非負単関数とする。このとき、すべてのx∈Xとy∈Yに対してsxとsyは非負単関数である。関数
S(x)=∫Ysxdν,T(y)=∫Xsydμは、それぞれ(X,Σ)上および(Y,T)上の[0,∞]値可測関数であり、
∫X×Ysdρ=∫XSdμ=∫YTdνが成り立つ。
証明.sの相異なる値をa1,…,am∈[0,∞)とし、
Ej={(x,y)∈X×Y∣s(x,y)=aj}とおく。集合E1,…,EmはX×Yの可測分割であり、
s=j=1∑maj1Ejである。固定したx∈Xに対して(Ej)xはYの可測分割をなし、
sx=j=1∑maj1(Ej)xである。したがって、sxは非負単関数である。第一座標の切り口についても、
sy=j=1∑maj1Ejyであるため、syは非負単関数である。
§E9.6 命題 1.2により、
S(x)=j=1∑majν((Ej)x).命題 1.2により各関数x↦ν((Ej)x)は可測である。§E9.6 命題 2.4を有限回適用すると、拡張非負実数値可測関数の有限個の非負線形結合は可測であるから、Sは可測である。非負可測関数の積分の線形性§E9.6 定理 2.5と命題 1.2により、
∫XSdμ=j=1∑maj∫Xν((Ej)x)dμ(x)=j=1∑majρ(Ej)=∫X×Ysdρ.係数ajが0でρ(Ej)=∞である場合には、非負単関数の積分で採用した0⋅∞=0の規約を用いる。
命題 1.2により、各関数y↦μ(Ejy)は可測である。したがって、
T(y)=j=1∑majμ(Ejy)は可測である。非負可測関数の積分の線形性と命題 1.2により、
∫YTdν=j=1∑maj∫Yμ(Ejy)dν(y)=j=1∑majρ(Ej)=∫X×Ysdρを得る。▨
一般の非負可測関数では、非負単関数の増加近似を三つの測度空間(X×Y,ρ)、(X,μ)、(Y,ν)上で順に用いる。
2.1 証明方針
積空間上でsn↑fを満たす非負単関数列をとる。命題 2.2により各snの内側積分は可測である。各切り口上の単調収束定理は、内側積分の列がfの切り口の積分へ増加することを与える。最後に外側の測度と積測度について単調収束定理を適用し、三つの積分を同じ増加極限として同定する。
定理 2.3 (Tonelli の定理). 可算選択公理を仮定する。(X,Σ,μ)と(Y,T,ν)をシグマ有限な正測度空間とし、ρ=μ⊗νとおく。f:X×Y→[0,∞]をΣ⊗Tに関する非負拡張実数値可測関数とする。このとき、すべてのx∈Xとy∈Yに対してfxとfyは非負拡張実数値可測関数である。関数
F(x)=∫Yfxdν,G(y)=∫Xfydμは、それぞれ(X,Σ)上および(Y,T)上の[0,∞]値可測関数であり、
∫X×Yfdρ=∫X(∫Yf(x,y)dν(y))dμ(x)=∫Y(∫Xf(x,y)dμ(x))dν(y)が[0,∞]において成り立つ。
証明.補題 2.1により、すべてのx∈Xとy∈Yに対してfxとfyは可測である。非負拡張実数値関数であることはfの値域から従う。
§E9.5 定理 5.3を可測空間(X×Y,Σ⊗T)上のfへ適用し、非負単関数列(sn)n≥1を
sn↑fが点ごとに成り立つようにとる。命題 2.2により、
Fn(x)=∫Y(sn)xdνはX上の非負拡張実数値可測関数である。各x∈Xを固定すると、(sn)x↑fxである。測度空間(Y,T,ν)上で§E9.7 定理 1.1を適用すると、
Fn(x)↑∫Yfxdν=F(x)を得る。したがって、Fは可測である。
積測度空間(X×Y,Σ⊗T,ρ)と測度空間(X,Σ,μ)に単調収束定理を適用し、非負単関数の場合の公式を用いると、
∫X×Yfdρ=n→∞lim∫X×Ysndρ=n→∞lim∫XFndμ=∫XFdμ.すべての等式は[0,∞]における等式であり、共通の値が∞である場合も含む。
第二座標について
Gn(y)=∫X(sn)ydμとおく。命題 2.2により、各Gnは(Y,T)上の非負拡張実数値可測関数である。各y∈Yを固定すると(sn)y↑fyであるから、測度空間(X,Σ,μ)上の単調収束定理により、
Gn(y)↑∫Xfydμ=G(y)を得る。したがって、Gは可測である。積測度空間(X×Y,Σ⊗T,ρ)と測度空間(Y,T,ν)上で単調収束定理を適用し、非負単関数の場合の公式を用いると、
∫X×Yfdρ=n→∞lim∫X×Ysndρ=n→∞lim∫YGndν=∫YGdνを得る。二つの反復積分はともに∫X×Yfdρに等しい。▨
3 絶対可積分関数
Fubini の定理では、Tonelli の定理を∣f∣へ適用する。内側の絶対値の積分が有限である点では、切り口が可積分であり、正部分と負部分の積分の差を定めることができる。有限でない点の集合が零集合であることを、次の補題で確認する。
補題 3.1.(Z,A,λ)を測度空間とし、h:Z→[0,∞]を拡張実数値可測関数とする。
∫Zhdλ<∞ならば、
N={z∈Z∣h(z)=∞}は可測な零集合である。
証明.
N=m=1⋂∞{z∈Z∣h(z)>m}であるから、N∈Aである。任意の正の整数mに対してm1N≤hが点ごとに成り立つ。積分の単調性と非負単関数の積分の定義から
mλ(N)≤∫Zhdλ<∞を得る。λ(N)>0ならば、
m≥1supmλ(N)=∞である。これは∫Zhdλ<∞に反する。したがって、λ(N)=0である。▨
3.1 証明方針
実数値関数fでは、Tonelli の定理を∣f∣へ適用し、
HX(x)=∫Y∣fx∣dν,HY(y)=∫X∣fy∣dμ
を考える。二つの関数の積分は∫∣f∣に等しく有限であるため、HXとHYはほとんど至る所で有限である。可積分でない切り口上では内側積分を0と定める。f+とf−に Tonelli の定理を適用すると、この零集合上で0とした内側積分が可測かつ可積分であること、および外側積分が積測度積分に等しいことが従う。
複素数値関数では、実部と虚部へ実数値の場合を適用する。∣f∣に対する Tonelli の定理によって複素数値の切り口がほとんど至る所で可積分であることを確認し、実部と虚部の内側積分を合わせる。
定理 3.2 (Fubini の定理). 可算選択公理を仮定する。(X,Σ,μ)と(Y,T,ν)をシグマ有限な正測度空間とし、ρ=μ⊗νとおく。KをRまたはCとし、f:X×Y→Kを有限値のΣ⊗T可測関数とする。
∫X×Y∣f∣dρ<∞を仮定する。このとき、可測な零集合NX∈ΣとNY∈Tが存在し、次が成り立つ。
- すべてのx∈X∖NXに対してfxはνに関して可積分であり、すべてのy∈Y∖NYに対してfyはμに関して可積分である。
- 関数
I(x)=⎩⎨⎧∫Yf(x,y)dν(y),0,x∈X∖NX,x∈NX,J(y)=⎩⎨⎧∫Xf(x,y)dμ(x),0,y∈Y∖NY,y∈NY
は、それぞれμおよびνに関して可積分である。
- 等式
∫X×Yfdρ=∫XIdμ=∫YJdν
がKにおいて成り立つ。
証明.補題 2.1により、すべてのx∈Xとy∈Yに対してfxとfyは可測である。最初にK=Rの場合を証明する。
定理 2.3を非負可測関数∣f∣へ適用し、
HX(x)=∫Y∣fx∣dν,HY(y)=∫X∣fy∣dμとおく。HXとHYは非負拡張実数値可測関数であり、
∫XHXdμ=∫X×Y∣f∣dρ=∫YHYdν<∞を満たす。補題 3.1により、
NX={x∈X∣HX(x)=∞},NY={y∈Y∣HY(y)=∞}は、それぞれμとνに関する可測な零集合である。x∈X∖NXでは
∫Y∣fx∣dν=HX(x)<∞であるから、fxは可積分である。y∈Y∖NYでは
∫X∣fy∣dμ=HY(y)<∞であるから、fyは可積分である。
f+=max{f,0}とf−=max{−f,0}とおく。二つの関数は非負可測であり、f=f+−f−および∣f∣=f++f−が点ごとに成り立つ。
Tonelli の定理により、
AX(x)=∫Y(f+)xdν,BX(x)=∫Y(f−)xdνは非負拡張実数値可測関数である。関数AX,BX:X→[0,∞)を
AX(x)={AX(x),0,x∈X∖NX,x∈NX,BX(x)={BX(x),0,x∈X∖NX,x∈NXと定める。例えば、任意のa≥0に対して
{AX>a}=(X∖NX)∩{AX>a}であるため、半直線による可測性の判定§E9.5 命題 2.3からAXは可測である。a<0に対して{AX>a}=Xであることも用いた。また、任意のa≥0に対して
{BX>a}=(X∖NX)∩{BX>a}であり、a<0に対して{BX>a}=Xであるため、BXも可測である。x∈X∖NXでは
AX(x)+BX(x)=HX(x)<∞であり、x∈NXでは二つの関数を0と定めた。したがって、AXとBXは有限値である。また、
0≤AX≤HX,0≤BX≤HXが点ごとに成り立つため、二つの関数は可積分である。
x∈X∖NXでは、実数値可積分関数の積分の定義§E9.6 定義 3.1から
∫Yfxdν=AX(x)−BX(x)である。x∈NXでは三つの関数をすべて0と定めたので、
I=AX−BXがX上で成り立つ。可積分関数の線形性§E9.6 定理 3.2により、Iは可積分である。
AXとAXはX∖NX上で一致し、BXとBXも同じ集合上で一致する。非負可測関数の積分のほとんど至る所での不変性§E9.6 定理 4.2と Tonelli の定理により、
∫XIdμ=∫XAXdμ−∫XBXdμ=∫XAXdμ−∫XBXdμ=∫X×Yf+dρ−∫X×Yf−dρ=∫X×Yfdρ.すべての差の各項は∫∣f∣dρ以下であり有限であるため、未定義な∞−∞は現れない。
Tonelli の定理により、
AY(y)=∫X(f+)ydμ,BY(y)=∫X(f−)ydμは非負拡張実数値可測関数である。関数AY,BY:Y→[0,∞)を
AY(y)={AY(y),0,y∈Y∖NY,y∈NY,BY(y)={BY(y),0,y∈Y∖NY,y∈NYと定める。任意のa≥0に対して
{AY>a}=(Y∖NY)∩{AY>a},{BY>a}=(Y∖NY)∩{BY>a}であり、a<0に対して二つの上側集合はともにYであるから、二つの関数は可測である。y∈Y∖NYでは
AY(y)+BY(y)=HY(y)<∞であり、NY上では二つの関数を0と定めた。したがって、AYとBYは有限値である。さらに、
0≤AY≤HY,0≤BY≤HYであり、∫YHYdν<∞であるから、二つの関数は可積分である。
y∈Y∖NYでは、実数値可積分関数の積分の定義から
∫Xfydμ=AY(y)−BY(y)である。NY上では各関数を0と定めたので、
J=AY−BYが成り立つ。したがって、Jは可積分である。AYとAY、およびBYとBYはY∖NY上でそれぞれ一致する。積分のほとんど至る所での不変性と
Tonelli の定理により、
∫YJdν=∫YAYdν−∫YBYdν=∫YAYdν−∫YBYdν=∫X×Yf+dρ−∫X×Yf−dρ=∫X×Yfdρ.以上により、実数値の場合の三つの主張を得る。
次にK=Cとする。
u=Ref,v=Imfとおく。uとvは有限実数値可測関数であり、
∣u∣≤∣f∣,∣v∣≤∣f∣であるから、積測度ρに関して可積分である。すでに証明した実数値の場合をuとvへ適用する。得られた、例外零集合上で0とした内側積分関数を第一座標についてUX,VX、第二座標についてUY,VYと書く。これらは実数値可積分関数であり、
∫XUXdμ∫YUYdν=∫X×Yudρ,=∫X×Yudρ,∫XVXdμ∫YVYdν=∫X×Yvdρ,=∫X×Yvdρを満たす。
一方、Tonelli の定理を∣f∣へ適用し、
HX(x)=∫Y∣fx∣dν,HY(y)=∫X∣fy∣dμとおく。HXとHYは可測であり、
∫XHXdμ=∫X×Y∣f∣dρ=∫YHYdν<∞を満たす。補題 3.1により、
NX={x∈X∣HX(x)=∞},NY={y∈Y∣HY(y)=∞}は、それぞれμとνに関する零集合である。x∈X∖NXでは∫Y∣fx∣dν<∞であるから、fxは複素数値可積分関数である。さらに、このxではuxとvxも可積分であるため、
UX(x)+iVX(x)=∫Yuxdν+i∫Yvxdν=∫Yfxdνが成り立つ。実数値の場合におけるUXまたはVXの例外集合は、HX<∞である点を含まないため、上の等式では実際の内側積分が用いられている。
KX=UX+iVXとおく。複素数値写像の可測性§E9.5 定理 6.1と可積分関数の線形性により、KXは複素数値可積分関数である。IをX∖NX上でKX、NX上で0と定める。Iの実部はUX1X∖NX、虚部はVX1X∖NXである。指示関数の可測性と§E9.5 命題 3.1により二つの実数値関数は可測であり、§E9.5 定理 6.1によりIは可測である。また、I=KXがX∖NX上で成り立ち、NX上ではI=0であるから、∣I∣≤∣KX∣が点ごとに成り立つ。したがって、Iは可積分である。§E9.6 定理 4.2により、
∫XIdμ=∫XKXdμ=∫X×Yudρ+i∫X×Yvdρ=∫X×Yfdρを得る。
各y∈Y∖NYに対して
∫X∣fy∣dμ=HY(y)<∞であるから、fyは複素数値可積分関数である。このyではuyとvyも可積分であり、実数値の場合で構成したUY,VYは実際の内側積分に一致する。したがって、
UY(y)+iVY(y)=∫Xuydμ+i∫Xvydμ=∫Xfydμが成り立つ。
KY=UY+iVYとおく。§E9.5 定理 6.1と可積分関数の線形性により、KYは複素数値可積分関数である。JをY∖NY上でKY、NY上で0と定める。Jの実部はUY1Y∖NY、虚部はVY1Y∖NYであるから、二つの実数値関数は可測であり、Jは可測である。J=KYがY∖NY上で成り立ち、NY上ではJ=0であるから、∣J∣≤∣KY∣が点ごとに成り立つ。したがって、Jは可積分である。積分のほとんど至る所での不変性により、
∫YJdν=∫YKYdν=∫X×Yudρ+i∫X×Yvdρ=∫X×Yfdρを得る。したがって、複素数値の場合にも三つの主張が成り立つ。▨
二つの定理を一つの参照先から用いるため、非負の場合と絶対可積分な場合を次の系にまとめる。この系では、非負関数の内側積分はすべての点で定義されるが、符号をもつ関数または複素数値関数の内側積分は零集合を除いて定義されるという違いを保つ。
系 3.3 (Fubini–Tonelli の定理). 可算選択公理を仮定する。(X,Σ,μ)と(Y,T,ν)をシグマ有限な正測度空間とし、ρ=μ⊗νとおく。
- f:X×Y→[0,∞]が非負拡張実数値可測関数であるならば、二つの内側積分関数はすべての点で定義された非負拡張実数値可測関数であり、
∫X×Yfdρ=∫X(∫Yf(x,y)dν(y))dμ(x)=∫Y(∫Xf(x,y)dμ(x))dν(y)
が[0,∞]において成り立つ。
- KがRまたはCであり、f:X×Y→Kが有限値可測関数で
∫X×Y∣f∣dρ<∞
を満たすならば、fxとfyはそれぞれほとんど至る所で可積分である。可積分でない切り口上の内側積分を0と定めると、二つの内側積分関数は可積分であり、
∫X×Yfdρ=∫X(∫Yf(x,y)dν(y))dμ(x)=∫Y(∫Xf(x,y)dμ(x))dν(y)
がKにおいて成り立つ。
4 有限原子空間での計算
有限集合上では、反復積分を有限和として直接計算し、Tonelli の定理の三つの積分を比較することができる。
例 4.1 (有限原子測度に対する Tonelli の定理).X={1,2}とY={a,b}に冪集合からなるシグマ加法族を入れる。一点集合の測度を
μ({1})=2,μ({2})=1,ν({a})=1,ν({b})=3と定める。関数f:X×Y→[0,∞)を
f(1,a)=1,f(1,b)=2,f(2,a)=4,f(2,b)=0によって定める。二つの測度は有限であり、fは非負可測関数である。
Yについて先に積分すると、
∫Yf(1,y)dν(y)=1⋅1+2⋅3=7,∫Yf(2,y)dν(y)=4⋅1+0⋅3=4である。したがって、
∫X(∫Yf(x,y)dν(y))dμ(x)=7⋅2+4⋅1=18.Xについて先に積分すると、
∫Xf(x,a)dμ(x)=1⋅2+4⋅1=6,∫Xf(x,b)dμ(x)=2⋅2+0⋅1=4である。ゆえに、
∫Y(∫Xf(x,y)dμ(x))dν(y)=6⋅1+4⋅3=18.積測度積分も一点長方形の有限非交和により
∫X×Yfd(μ⊗ν)=1⋅2⋅1+2⋅2⋅3+4⋅1⋅1=18となり、三つの値が一致する。
5 仮定を外した場合
シグマ有限性を外すと、非負可測関数であっても二つの反復積分が一致しない場合がある。次の例では、対角集合が積シグマ加法族に属することも可算集合演算によって確認する。
例 5.1 (シグマ有限でない数え上げ測度).X=Y=[0,1]とする。Xには Borel シグマ加法族Σと Lebesgue 測度μを入れ、Yには冪集合T=P(Y)と数え上げ測度νを入れる。すなわち、C⊆Yが有限集合ならばν(C)はその要素数であり、Cが無限集合ならばν(C)=∞である。
νはシグマ有限でない。実際、ν(C)<∞を満たす集合Cは有限集合であり、可算個の有限集合の和集合は可算集合である。非可算集合[0,1]を、そのような集合列で覆うことはできない。
対角集合
D={(x,y)∈[0,1]2∣x=y}がΣ⊗Tに属することを確認する。各n≥1に対して、[0,1]を長さが2−n以下の Borel 集合
In,k={[k2−n,(k+1)2−n),[(2n−1)2−n,1],0≤k<2n−1,k=2n−1へ分割する。このとき、
D=n=1⋂∞k=0⋃2n−1(In,k×In,k)である。右辺は可測長方形の有限和と可算共通部分からなるため、D∈Σ⊗Tである。等式の右辺に属する(x,y)でx=yならば、2−n<∣x−y∣を満たすnにおいてxとyが同じIn,kに属することができず、矛盾する。これにより集合の等式も検証される。
f=1Dとおく。すべてのx∈Xに対してDx={x}であるから、
∫Yf(x,y)dν(y)=ν({x})=1.したがって、
∫X(∫Yf(x,y)dν(y))dμ(x)=μ([0,1])=1.一方、すべてのy∈Yに対してDy={y}であり、μ({y})=0である。ゆえに、
∫Y(∫Xf(x,y)dμ(x))dν(y)=∫Y0dν=0.二つの反復積分は一致しない。この計算は、シグマ有限性を外した測度空間へ定理 2.3の結論をそのまま拡張することができないことを示す。
二つの測度がシグマ有限であっても、符号をもつ関数について絶対可積分性を外すと、反復積分の順序によって値が変わる場合がある。
例 5.2 (絶対可積分でない二重数列).X=Y=Z≥1にそれぞれ冪集合を入れ、X上の数え上げ測度をμ、Y上の数え上げ測度をνと書く。二つの測度は、一点集合の増加列が全空間を覆うためシグマ有限である。関数a:X×Y→Rを
a(m,n)=⎩⎨⎧1,−1,0,m=n,m=n+1,それ以外と定める。X×Yは可算集合であり、一点集合は可測長方形であるから、すべての部分集合は可測である。したがって、aは積可測関数である。
固定したm=1に対する行の和は1である。固定したm≥2に対する行には、n=mの項1とn=m−1の項−1だけが存在するため、その行の和は0である。したがって、
m=1∑∞(n=1∑∞a(m,n))=1.固定した任意のn≥1に対する列には、m=nの項1とm=n+1の項−1だけが存在するため、その列の和は0である。したがって、
n=1∑∞(m=1∑∞a(m,n))=0.各内側の和は有限個の非零項しかもたず、外側の二つの関数も可積分である。それにもかかわらず、二つの反復積分は異なる。
絶対値をとると、対角線上とその直下に値1が可算無限個ずつ存在するので、
∫X×Y∣a∣d(μ⊗ν)=m=1∑∞n=1∑∞∣a(m,n)∣=∞.したがって、aは積測度に関して絶対可積分ではなく、Fubini の定理の仮定を満たさない。
6 演習
問題 6.1.
- 補題 1.1の証明で、E∈DA,Bから(X×Y)∖E∈DA,Bを導く二つの切り口の等式を書き、μ(A)<∞とν(B)<∞が差の積分を定義するために必要であることを示せ。
- 非負単関数s=∑j=1maj1Ejについて、命題 1.2から命題 2.2の三つの積分の等式を再構成せよ。係数が0で対応する集合の測度が∞である場合も処理せよ。
- 定理 2.3の証明で用いた増加単関数列(sn)n≥1について、内側積分関数の可測性と、内側および外側の単調収束定理の適用条件を両方の積分順序で確認せよ。
- 定理 3.2の実数値の場合について、NXが零集合であることを証明し、I=AX−BXの可積分性と∫XIdμ=∫X×Yfd(μ⊗ν)を導け。
- 例 5.2では、各内側積分と二つの外側積分が定義されるにもかかわらず Fubini の定理を適用することができない。欠けている仮定を特定し、正部分と負部分の積測度積分をそれぞれ計算せよ。
7 まとめ
積可測集合Eの切り口ExとEyが可測であることに加えて、シグマ有限性のもとではx↦ν(Ex)とy↦μ(Ey)も可測であり、その積分は(μ⊗ν)(E)に等しい。証明では、有限測度長方形上の π–λ 論法と、有限測度長方形による増加被覆を用いた。
集合の公式を有限加法によって非負単関数へ拡張し、増加単関数近似と単調収束定理を適用すると、非負可測関数に対する Tonelli の定理が得られる。Tonelli の定理は積分値に∞を許す。絶対可積分な実数値関数では正部分と負部分を別々に Tonelli の定理へ適用し、複素数値関数では実部と虚部へ実数値の場合を適用する。絶対可積分性は、ほとんどすべての切り口の可積分性を保証し、正部分と負部分の積分の差を有限な実数として定める。