§E13.4Pólya の数え上げ

最終更新

正nn角形の頂点をkk色で塗り分ける方法はknk^{n}通りある。しかし、回転して重なる塗り分けを同じものとみなすなら、数えるべきは軌道の個数である。Burnside の補題(§E7.11 定理 3.1)は、軌道の個数を各群元の不動点の個数の平均として与える。

本記事は、この計数を「何色を何個使ったか」まで分けて数える形へ精密化する。各色に重みを与え、彩色の重みを各点の色の重みの積として定めると、重みは軌道の上で一定である。そこで軌道の重みの総和を求めれば、色の使用回数ごとの軌道の個数が一度に得られる。この総和が、群の巡回指標という一つの多項式へ色の重みのべき和を代入した値に等しいことが、本記事の主定理である。標準例として正多角形の頂点彩色を扱い、回転群を作用させる場合と二面体群を作用させる場合を区別して計算する。

群作用、軌道、安定化群および軌道安定化群定理は§E7.10 定義 2.1、§E7.10 定義 3.1、§E7.10 命題 3.2、§E7.10 定理 3.4が与える。Burnside の補題は§E7.11 定理 3.1が完全な証明つきで与えるので、本記事は再証明しない。

このうち§E7.10 定義 2.1、§E7.10 定義 3.1、§E7.10 命題 3.2、§E7.10 定理 3.4および次節で用いる§E7.10 定理 2.2は同一の記事に置かれており、その記事は記事全体としては完全証明を約束していない。同記事が証明せずに外部文献へ委ねているのは、立体射影によるS2S^{2}とCP1\mathbb{CP}^{1}の同一視のもとでSO⁡(3)\operatorname{SO}(3)がPSU⁡(2)\operatorname{PSU}(2)に対応することと、向きを反転する球面等長変換が反正則 Möbius 変換に対応することの二件だけであり、同記事はこの二件を後続の証明には用いないと明記している。本記事が用いる群作用、軌道、安定化群、軌道安定化群定理および群作用と対称群への準同型の対応は、いずれも同記事の本文で定義され、あるいは完全に証明されているので、この委譲とは交わらない。

1 巡回指標

以下、GGを有限群、XXを有限集合、n=∣X∣n=|X|とし、GGはXXへ左から作用するものとする。§E7.10 定理 2.2により、この作用は群準同型

ρ ⁣:G⟶Sym⁡(X)\rho\colon G\longrightarrow\operatorname{Sym}(X)

と一対一に対応する。g∈Gg\in Gに対し、ρ(g)\rho(g)が生成する巡回群⟨ρ(g)⟩\langle\rho(g)\rangleのXXへの作用の軌道をggの巡回軌道とよぶ(§E7.11 定義 2.1)。巡回軌道の個数をc(ρ(g))c(\rho(g))と書く。

定義 1.1.g∈Gg\in Gと1≤j≤n1\le j\le nに対し

cj(g)=∣{B : B は g の巡回軌道であり ∣B∣=j}∣c_j(g)=\bigl|\{B\ :\ B\ \text{は}\ g\ \text{の巡回軌道であり}\ |B|=j\}\bigr|

と定め、組(c1(g),…,cn(g))(c_1(g),\dots,c_n(g))をggの 巡回型 (cycle type) とよぶ。

巡回型の成分の和は、次の二つの形で以後の計算に現れる。

命題 1.2. 各g∈Gg\in Gに対し

∑j=1nj cj(g)=n,∑j=1ncj(g)=c(ρ(g))\sum_{j=1}^{n}j\,c_j(g)=n,\qquad \sum_{j=1}^{n}c_j(g)=c(\rho(g))

が成り立つ。

証明.ggの巡回軌道は⟨ρ(g)⟩\langle\rho(g)\rangleのXXへの作用の軌道であるから、§E7.10 命題 3.2により互いに素であり、その合併はXXに等しい。各巡回軌道の大きさは11以上nn以下であるから、大きさは1,…,n1,\dots,nのいずれかである。

巡回軌道の全体を大きさによって分類すると、大きさjjの類の要素数は定義 1.1によりcj(g)c_j(g)である。加法原理(§D2.2 定理 2.1)を巡回軌道の全体へ適用すると、巡回軌道の総数は∑j=1ncj(g)\sum_{j=1}^{n}c_j(g)であり、これはc(ρ(g))c(\rho(g))にほかならない。

また、加法原理をXXの分割へ適用するとn=∣X∣=∑B∣B∣n=|X|=\sum_{B}|B|である。ここでBBは巡回軌道の全体を走る。この和を大きさによって分類すると、大きさjjの巡回軌道はcj(g)c_j(g)個あり、それぞれがjjを寄与するので∑B∣B∣=∑j=1nj cj(g)\sum_{B}|B|=\sum_{j=1}^{n}j\,c_j(g)である。▨

定義 1.3.GGのXXへの作用の巡回指標 (cycle index) とは、nn個の不定元s1,…,sns_1,\dots,s_nについての多項式

ZG(s1,…,sn)=1∣G∣∑g∈G ∏j=1nsj cj(g) ∈Q[s1,…,sn]Z_G(s_1,\dots,s_n)=\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}\ \prod_{j=1}^{n}s_j^{\,c_j(g)}\ \in\mathbb Q[s_1,\dots,s_n]

のことをいう。

RRを有理数体Q\mathbb Qを含む可換環とし、r1,…,rn∈Rr_1,\dots,r_n\in Rとする。ZG(r1,…,rn)Z_G(r_1,\dots,r_n)という記号は、sjs_jへrjr_jを代入して得られるRRの元、すなわちZGZ_Gの各単項式∏jsjej\prod_{j}s_j^{e_j}を∏jrjej\prod_{j}r_j^{e_j}へ置き換え、有理数係数をRRの元として掛けたうえで和を取ったものを表す。この代入は、sj↦rjs_j\mapsto r_jで定まるQ\mathbb Q-代数の準同型Q[s1,…,sn]→R\mathbb Q[s_1,\dots,s_n]\to Rによる像である。

注意 1.4 (規格化を落とさない). 巡回指標は1/∣G∣1/|G|を含む。単項式の和∑g∏jsjcj(g)\sum_{g}\prod_j s_j^{c_j(g)}と混同すると、以下のすべての公式が∣G∣|G|倍だけずれる。またZGZ_Gの係数は一般に整数ではなく有理数であるから、係数環は有理数体を含む必要がある。

2 彩色と重み

CCを有限集合とし、その元を色とよぶ。写像f ⁣:X→Cf\colon X\to Cを彩色とよび、彩色の全体をCXC^{X}と書く(§E7.11 定義 1.3)。GGはCXC^{X}へ

g⋅f=f∘ρ(g)−1g\cdot f=f\circ\rho(g)^{-1}

によって左から作用する(§E7.11 定義 1.4、§E7.11 命題 1.5)。

補題 2.1.g∈Gg\in Gとf∈CXf\in C^{X}について、g⋅f=fg\cdot f=fであることと、ffがggのすべての巡回軌道の上で定数であることは同値である。

証明.g⋅f=fg\cdot f=fは、すべてのx∈Xx\in Xについてf(ρ(g)−1(x))=f(x)f(\rho(g)^{-1}(x))=f(x)が成り立つことを意味する。ρ(g)\rho(g)は全単射であるから、xxをρ(g)(x)\rho(g)(x)で置き換えると、この条件はすべてのxxについてf(x)=f(ρ(g)(x))f(x)=f(\rho(g)(x))が成り立つことと同値である。

この条件が成り立つとする。整数m≥0m\ge0についての帰納法により、すべてのxxとmmについてf(ρ(g)m(x))=f(x)f(\rho(g)^{m}(x))=f(x)である。xxの巡回軌道は{ρ(g)m(x):m∈Z}\{\rho(g)^{m}(x):m\in\mathbb Z\}であり、ρ(g)\rho(g)の位数をttとするとρ(g)−1=ρ(g)t−1\rho(g)^{-1}=\rho(g)^{t-1}であるから、この集合は{ρ(g)m(x):m≥0}\{\rho(g)^{m}(x):m\ge0\}に等しい。ゆえにffはxxの巡回軌道の上で定数である。

逆にffが各巡回軌道の上で定数であるとする。xxとρ(g)(x)\rho(g)(x)は同じ巡回軌道に属するのでf(ρ(g)(x))=f(x)f(\rho(g)(x))=f(x)である。▨

定義 2.2.RRを有理数体Q\mathbb Qを含む可換環とし、写像w ⁣:C→Rw\colon C\to Rを重み (weight) とよぶ。彩色f∈CXf\in C^{X}の重みを

W(f)=∏x∈Xw(f(x))∈RW(f)=\prod_{x\in X}w(f(x))\in R

と定める。

命題 2.3.g∈Gg\in Gとf∈CXf\in C^{X}に対しW(g⋅f)=W(f)W(g\cdot f)=W(f)が成り立つ。したがって、CXC^{X}の各GG-軌道OOに対し、OOに属するすべての彩色に共通する重みが定まる。この値をW(O)W(O)と書く。

証明.g⋅f=f∘ρ(g)−1g\cdot f=f\circ\rho(g)^{-1}であるから

W(g⋅f)=∏x∈Xw(f(ρ(g)−1(x)))W(g\cdot f)=\prod_{x\in X}w\bigl(f(\rho(g)^{-1}(x))\bigr)

である。ρ(g)−1\rho(g)^{-1}はXXからXXへの全単射であるから、y=ρ(g)−1(x)y=\rho(g)^{-1}(x)と置くと、xxがXXを走るときyyもXXを走る。RRは可換環であるから積の順序を入れ替えてよく、右辺は∏y∈Xw(f(y))=W(f)\prod_{y\in X}w(f(y))=W(f)に等しい。

軌道OOの二つの元は§E7.10 命題 3.2によりf2=g⋅f1f_2=g\cdot f_1の形で結ばれるので、上の等式からWWはOOの上で一定である。▨

3 重み付きの数え上げ公式

3.1 証明方針

主定理は、軌道の重みの総和∑OW(O)\sum_{O}W(O)を巡回指標で表す等式である。二段階で示す。

第一段階では、重み付きの Burnside の補題を導く。§E7.11 定理 3.1は軌道の個数についての主張であるから、そのままでは重みつきの和を与えない。そこで、重みの値ごとに元を分類する。この段階は彩色の集合に固有の性質を用いないので、有限な左GG-集合YYと、各軌道の上で一定な写像W ⁣:Y→RW\colon Y\to Rについて述べる。WWの値vvに対しYv={y∈Y:W(y)=v}Y_v=\{y\in Y:W(y)=v\}と置くと、WWが各軌道の上で一定であることからYvY_vはGGの作用で保たれるので、GGはYvY_vへ作用する。この作用へ Burnside の補題を適用し、両辺にvvを掛けてvvについて足し合わせる。YYが有限集合であるからWWの値は有限個であり、Fix⁡Y(g)\operatorname{Fix}_{Y}(g)はFix⁡Yv(g)\operatorname{Fix}_{Y_v}(g)たちの互いに素な合併であるから、和の順序を入れ替えることができる。本記事はこれをY=CXY=C^{X}の場合へ適用する。この場合にWWが各軌道の上で一定であることは命題 2.3が与える。

第二段階では、固定される彩色の重みの総和∑f∈Fix⁡(g)W(f)\sum_{f\in\operatorname{Fix}(g)}W(f)を巡回型で表す。補題 2.1により、ggが固定する彩色は各巡回軌道の上で定数な彩色にほかならない。したがって、そのような彩色は「各巡回軌道へ色を一つ割り当てる写像」と一対一に対応し、重みは各巡回軌道の色の重みをその軌道の大きさだけ掛けた積になる。有限個の因子への分配法則により、総和は巡回軌道ごとの和∑c∈Cw(c)∣B∣\sum_{c\in C}w(c)^{|B|}の積へ分解する。同じ大きさの巡回軌道をまとめると、sjs_jへ∑cw(c)j\sum_{c}w(c)^{j}を代入した形が現れる。

命題 3.1 (重み付き Burnside の補題).GGを有限群、RRを有理数体Q\mathbb Qを含む可換環、YYを有限な左GG-集合、W ⁣:Y→RW\colon Y\to Rを各GG-軌道の上で一定な写像とする。軌道O∈Y/GO\in Y/Gに対し、OOに属するすべての元に共通するWWの値をW(O)W(O)と書く。このとき

∑O∈Y/GW(O)=1∣G∣∑g∈G ∑y∈Fix⁡Y(g)W(y)\sum_{O\in Y/G}W(O)=\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}\ \sum_{y\in\operatorname{Fix}_{Y}(g)}W(y)

が成り立つ。ここでFix⁡Y(g)={y∈Y:g⋅y=y}\operatorname{Fix}_{Y}(g)=\{y\in Y:g\cdot y=y\}である(§E7.11 定義 1.7)。

証明.YYは有限集合であるから、WWの値域V=W(Y)⊆RV=W(Y)\subseteq Rは有限集合である。v∈Vv\in Vに対しYv={y∈Y:W(y)=v}Y_v=\{y\in Y:W(y)=v\}と置く。WWは各軌道の上で一定であるから、y∈Yvy\in Y_vならばg⋅y∈Yvg\cdot y\in Y_vであり、GGの作用はYvY_vへ制限されてYvY_vへの左作用を定める。

YvY_vたちはYYを互いに素に分割し、各軌道はただ一つのYvY_vに含まれる。ゆえにYYの軌道の全体は、YvY_vの軌道の全体をv∈Vv\in Vにわたって集めたものである。したがって

∑O∈Y/GW(O)=∑v∈Vv⋅∣Yv/G∣\sum_{O\in Y/G}W(O)=\sum_{v\in V}v\cdot\bigl|Y_v/G\bigr|

である。§E7.11 定理 3.1をGGのYvY_vへの作用へ適用すると

∣Yv/G∣=1∣G∣∑g∈G∣Fix⁡Yv(g)∣\bigl|Y_v/G\bigr|=\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}\bigl|\operatorname{Fix}_{Y_v}(g)\bigr|

であるから

∑O∈Y/GW(O)=1∣G∣∑v∈V ∑g∈Gv ∣Fix⁡Yv(g)∣\sum_{O\in Y/G}W(O)=\frac{1}{|G|}\sum_{v\in V}\ \sum_{g\in G}v\,\bigl|\operatorname{Fix}_{Y_v}(g)\bigr|

となる。右辺は有限和であるから和の順序を入れ替えてよい。ggを固定すると、Fix⁡Y(g)\operatorname{Fix}_{Y}(g)はFix⁡Yv(g)\operatorname{Fix}_{Y_v}(g)(v∈Vv\in V)の互いに素な合併であり、Fix⁡Yv(g)\operatorname{Fix}_{Y_v}(g)の各元yyはW(y)=vW(y)=vを満たす。ゆえに

∑v∈Vv ∣Fix⁡Yv(g)∣=∑y∈Fix⁡Y(g)W(y)\sum_{v\in V}v\,\bigl|\operatorname{Fix}_{Y_v}(g)\bigr|=\sum_{y\in\operatorname{Fix}_{Y}(g)}W(y)

であり、主張を得る。▨

定理 3.2 (Pólya の数え上げ定理).GGを有限群、XXをnn元の有限集合、CCを有限な色の集合、RRをQ\mathbb Qを含む可換環、w ⁣:C→Rw\colon C\to Rを重みとする。GGがXXへ作用し、CXC^{X}へg⋅f=f∘ρ(g)−1g\cdot f=f\circ\rho(g)^{-1}で作用するとき

∑O∈CX/GW(O)=ZG(∑c∈Cw(c), ∑c∈Cw(c)2, …, ∑c∈Cw(c)n)\sum_{O\in C^{X}/G}W(O) =Z_G\Bigl(\sum_{c\in C}w(c),\ \sum_{c\in C}w(c)^{2},\ \dots,\ \sum_{c\in C}w(c)^{n}\Bigr)

が成り立つ。

証明.CXC^{X}は有限集合であり、GGはCXC^{X}へ左から作用する(§E7.11 命題 1.5)。また命題 2.3によりW ⁣:CX→RW\colon C^{X}\to Rは各軌道の上で一定である。ゆえに命題 3.1をY=CXY=C^{X}として適用することができ、示すべきことは各g∈Gg\in Gについて

∑f∈Fix⁡CX(g)W(f)=∏j=1n(∑c∈Cw(c)j)cj(g)\sum_{f\in\operatorname{Fix}_{C^{X}}(g)}W(f)=\prod_{j=1}^{n}\Bigl(\sum_{c\in C}w(c)^{j}\Bigr)^{c_j(g)}

が成り立つことである。

ggを固定し、ggの巡回軌道をB1,…,BrB_1,\dots,B_r(r=c(ρ(g))r=c(\rho(g)))とする。これらはXXの分割である(§E7.10 命題 3.2)。補題 2.1により、f∈Fix⁡CX(g)f\in\operatorname{Fix}_{C^{X}}(g)であることと、ffが各BiB_iの上で定数であることは同値である。ffに対しγi∈C\gamma_i\in CをBiB_i上の共通の値と定めると、対応f↦(γ1,…,γr)f\mapsto(\gamma_1,\dots,\gamma_r)はFix⁡CX(g)\operatorname{Fix}_{C^{X}}(g)からCrC^{r}への全単射である。実際、逆向きの対応は、与えられた(γ1,…,γr)(\gamma_1,\dots,\gamma_r)に対しx∈Bix\in B_iでf(x)=γif(x)=\gamma_iと定めるものであり、BiB_iがXXの分割であるからこれはXX上の写像を一意に定める。

ffの重みを計算する。X=⨆i=1rBiX=\bigsqcup_{i=1}^{r}B_iでありRRは可換であるから

W(f)=∏x∈Xw(f(x))=∏i=1r ∏x∈Biw(γi)=∏i=1rw(γi)∣Bi∣W(f)=\prod_{x\in X}w(f(x))=\prod_{i=1}^{r}\ \prod_{x\in B_i}w(\gamma_i)=\prod_{i=1}^{r}w(\gamma_i)^{|B_i|}

である。したがって

∑f∈Fix⁡CX(g)W(f)=∑(γ1,…,γr)∈Cr ∏i=1rw(γi)∣Bi∣=∏i=1r(∑c∈Cw(c)∣Bi∣)\sum_{f\in\operatorname{Fix}_{C^{X}}(g)}W(f) =\sum_{(\gamma_1,\dots,\gamma_r)\in C^{r}}\ \prod_{i=1}^{r}w(\gamma_i)^{|B_i|} =\prod_{i=1}^{r}\Bigl(\sum_{c\in C}w(c)^{|B_i|}\Bigr)

となる。最後の等号は、可換環における有限個の因子への分配法則である。実際、右辺の積を展開すると、各因子から色を一つずつ選ぶ選び方(γ1,…,γr)(\gamma_1,\dots,\gamma_r)ごとに項∏iw(γi)∣Bi∣\prod_i w(\gamma_i)^{|B_i|}が現れ、その総和になる。

最後に、iiを∣Bi∣|B_i|の値で分類する。∣Bi∣=j|B_i|=jとなるiiは定義 1.1によりcj(g)c_j(g)個であるから

∏i=1r(∑c∈Cw(c)∣Bi∣)=∏j=1n(∑c∈Cw(c)j)cj(g)\prod_{i=1}^{r}\Bigl(\sum_{c\in C}w(c)^{|B_i|}\Bigr)=\prod_{j=1}^{n}\Bigl(\sum_{c\in C}w(c)^{j}\Bigr)^{c_j(g)}

である。ggについて1/∣G∣1/|G|を付けて足し合わせると、定義 1.3の定義により右辺はZGZ_Gへsj=∑cw(c)js_j=\sum_{c}w(c)^{j}を代入した値である。▨

系 3.3.∣C∣=k|C|=kとすると

∣CX/G∣=ZG(k,k,…,k)=1∣G∣∑g∈Gk c(ρ(g))\bigl|C^{X}/G\bigr|=Z_G(k,k,\dots,k)=\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}k^{\,c(\rho(g))}

が成り立つ。

証明.R=QR=\mathbb Qとし、すべてのc∈Cc\in Cについてw(c)=1w(c)=1と定める。このときW(f)=1W(f)=1であるから、定理 3.2の左辺は軌道の個数に等しい。また∑c∈Cw(c)j=k\sum_{c\in C}w(c)^{j}=kであるから右辺はZG(k,…,k)Z_G(k,\dots,k)である。最後に、命題 1.2により∏jkcj(g)=k∑jcj(g)=kc(ρ(g))\prod_{j}k^{c_j(g)}=k^{\sum_j c_j(g)}=k^{c(\rho(g))}である。これは§E7.11 命題 2.2が与える不動点数と一致する。▨

4 正多角形の頂点彩色

正nn角形(n≥3n\ge3)の頂点をZ/nZ\mathbb Z/n\mathbb Zと同一視し、X=Z/nZX=\mathbb Z/n\mathbb Zとする。作用させる群として、回転群と二面体群の二つを区別して扱う。

定義 4.1.a∈Z/nZa\in\mathbb Z/n\mathbb Zに対し

πj(a)=a+j,τb(a)=b−a(j,b∈Z/nZ)\pi_j(a)=a+j,\qquad \tau_b(a)=b-a\qquad(j,b\in\mathbb Z/n\mathbb Z)

と定める。πj\pi_jを回転 (rotation)、τb\tau_bを鏡映 (reflection) とよぶ。Cn={πj:j∈Z/nZ}C_n=\{\pi_j:j\in\mathbb Z/n\mathbb Z\}を回転群 (rotation group)、D2n=Cn∪{τb:b∈Z/nZ}D_{2n}=C_n\cup\{\tau_b:b\in\mathbb Z/n\mathbb Z\}を二面体群 (dihedral group) とよび、いずれもSym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)の部分集合として、XXへの作用は写像の適用そのものとする。

命題 4.2.n≥3n\ge3とすると、CnC_nはSym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)の位数nnの部分群であり、D2nD_{2n}はSym⁡(X)\operatorname{Sym}(X)の位数2n2nの部分群である。

証明.πj\pi_jはπ−j\pi_{-j}を逆写像にもつので全単射であり、τb\tau_bはτb∘τb=id\tau_b\circ\tau_b=\mathrm{id}を満たすので全単射である。合成を計算すると

πj∘πj′=πj+j′,πj∘τb=τb+j,τb∘πj=τb−j,τb∘τb′=πb−b′\pi_j\circ\pi_{j'}=\pi_{j+j'},\quad \pi_j\circ\tau_b=\tau_{b+j},\quad \tau_b\circ\pi_j=\tau_{b-j},\quad \tau_b\circ\tau_{b'}=\pi_{b-b'}

である。たとえば第三の式は(τb∘πj)(a)=b−(a+j)=(b−j)−a(\tau_b\circ\pi_j)(a)=b-(a+j)=(b-j)-aによる。ゆえにCnC_nとD2nD_{2n}はいずれも合成について閉じ、恒等写像π0\pi_0を含み、πj−1=π−j\pi_j^{-1}=\pi_{-j}、τb−1=τb\tau_b^{-1}=\tau_bであるから部分群である。

位数を数える。j≠j′j\ne j'ならばπj(0)=j≠j′=πj′(0)\pi_j(0)=j\ne j'=\pi_{j'}(0)であるから、πj\pi_jたちは相異なるnn個の元である。同様にτb(0)=b\tau_b(0)=bによりτb\tau_bたちも相異なる。回転と鏡映が一致しないことを示す。πj=τb\pi_j=\tau_bとすると、a=0a=0からj=bj=bを得、a=1a=1から1+j=b−11+j=b-1を得るので1+j=j−11+j=j-1、すなわち2≡0(modn)2\equiv0\pmod nとなる。n≥3n\ge3に反する。ゆえに∣D2n∣=2n|D_{2n}|=2nである。▨

命題 4.3.j∈Z/nZj\in\mathbb Z/n\mathbb Zの代表を0≤j≤n−10\le j\le n-1に取り、d=gcd⁡(n,j)d=\gcd(n,j)(ただしj=0j=0のときd=nd=n)と置く。回転πj\pi_jの巡回軌道はすべて大きさn/dn/dをもち、その個数はddである。したがって

ZCn(s1,…,sn)=1n∑j=0n−1s n/gcd⁡(n,j) gcd⁡(n,j)Z_{C_n}(s_1,\dots,s_n)=\frac{1}{n}\sum_{j=0}^{n-1}s_{\,n/\gcd(n,j)}^{\ \gcd(n,j)}

が成り立つ。

証明.H=⟨πj⟩H=\langle\pi_j\rangleと置く。HHのXXへの作用の安定化群を調べる。πjm(a)=a+mj\pi_j^{m}(a)=a+mjであるから、πjm\pi_j^{m}がaaを固定することとmj≡0(modn)mj\equiv0\pmod nであることは同値であり、この条件はaaに依存しない。ゆえにπjm\pi_j^{m}が或る点を固定すればすべての点を固定し、πjm=id\pi_j^{m}=\mathrm{id}である。したがって各aaの安定化群HaH_aは単位元だけからなる。§E7.10 定理 3.4により、すべての軌道の大きさは∣H∣|H|に等しい。

次に∣H∣|H|を求める。以下、jjは代表として取った整数0≤j≤n−10\le j\le n-1を表す。前段で見たとおりπjm=id\pi_j^{m}=\mathrm{id}であることとn∣mjn\mid mjであることは同値であり、m=nm=nはこれを満たすので、n∣mjn\mid mjを満たす正整数が存在する。その最小のものをttと置く。

このとき∣H∣=t|H|=tである。実際、任意の整数mmをm=qt+sm=qt+s(0≤s<t0\le s<t)と書くとπjm=(πjt)q∘πjs=πjs\pi_j^{m}=(\pi_j^{t})^{q}\circ\pi_j^{s}=\pi_j^{s}であるからH={πj0,πj1,…,πjt−1}H=\{\pi_j^{0},\pi_j^{1},\dots,\pi_j^{t-1}\}である。また0≤s′<s≤t−10\le s'<s\le t-1についてπjs=πjs′\pi_j^{s}=\pi_j^{s'}とするとπjs−s′=id\pi_j^{s-s'}=\mathrm{id}となり、0<s−s′<t0<s-s'<tがttの最小性に反する。ゆえにこれらtt個の元は相異なる。

t≤n/dt\le n/dである。実際、ddはnnとjjの公約数であるから(j=0j=0のときはd=nd=nという約束によりd∣nd\mid nかつd∣jd\mid jが成り立つ)、n/dn/dは正の整数でありj/dj/dは非負整数である。(n/d) j=n (j/d)(n/d)\,j=n\,(j/d)であるからn∣(n/d) jn\mid(n/d)\,jが成り立ち、ttの最小性によりt≤n/dt\le n/dを得る。

t∣nt\mid nである。実際、n=qt+sn=qt+s(qqは整数、0≤s<t0\le s<t)と書くと、n∣njn\mid njとn∣tjn\mid tjからn∣(n−qt) j=sjn\mid(n-qt)\,j=sjが従う。s>0s>0とするとttの最小性に反するのでs=0s=0であり、ttはnnを割り切る。

そこでu=n/tu=n/tと置く。uuは正整数であり、n∣tjn\mid tjはtu∣tjtu\mid tjと書き直すことができるので、t>0t>0よりu∣ju\mid jである。またu∣nu\mid nである。ゆえにuuはnnとjjの正の公約数であり、u≤du\le dである(j=0j=0のときは、d=nd=nという約束とu∣nu\mid nによりu≤n=du\le n=dが成り立つ)。したがってt=n/u≥n/dt=n/u\ge n/dである。

以上の二つの不等式からt=n/dt=n/d、すなわち∣H∣=n/d|H|=n/dである。ゆえに各巡回軌道の大きさはn/dn/dである。巡回軌道はXXを分割するので、加法原理(§D2.2 定理 2.1)により(軌道の個数)× (n/d)=n\times\,(n/d)=nであり、軌道の個数はddである。

ゆえにπj\pi_jの巡回型はcn/d(πj)=dc_{n/d}(\pi_j)=d、他のci(πj)=0c_i(\pi_j)=0であり、定義 1.3の定義から主張の等式を得る。▨

命題 4.4.n≥3n\ge3とし、b∈Z/nZb\in\mathbb Z/n\mathbb Zとする。鏡映τb\tau_bの巡回軌道は、τb\tau_bの不動点と、大きさ22の軌道からなる。不動点の個数は次のとおりである。

  1. nnが奇数のとき、bbによらずちょうど11個である。したがって巡回型はs1s2(n−1)/2s_1s_2^{(n-1)/2}に対応する。
  2. nnが偶数のとき、bbが偶数の剰余類であればちょうど22個であり、巡回型はs12s2(n−2)/2s_1^{2}s_2^{(n-2)/2}に対応する。bbが奇数の剰余類であれば00個であり、巡回型はs2n/2s_2^{n/2}に対応する。

証明.τb∘τb=id\tau_b\circ\tau_b=\mathrm{id}であるから⟨τb⟩={id,τb}\langle\tau_b\rangle=\{\mathrm{id},\tau_b\}であり、aaの巡回軌道は{a,b−a}\{a,b-a\}である。この軌道の大きさは、a=b−aa=b-aすなわち2a=b2a=bのとき11、そうでないとき22である。

(1)を示す。nnが奇数のとき、2⋅n+12=n+1≡1(modn)2\cdot\frac{n+1}{2}=n+1\equiv1\pmod nであるから22はZ/nZ\mathbb Z/n\mathbb Zの可逆元であり、その逆元は(n+1)/2(n+1)/2の剰余類である。ゆえに2a=b2a=bはただ一つの解a=n+12ba=\frac{n+1}{2}bをもつ。不動点は11個であり、残るn−1n-1個の点は大きさ22の軌道へ分かれるので、その軌道は(n−1)/2(n-1)/2個である。

(2)を示す。nnが偶数とする。任意のaaに対し2a2aは偶数の剰余類であるから、bbが奇数の剰余類ならば2a=b2a=bは解をもたず、不動点は存在しない。このときnn個の点はすべて大きさ22の軌道へ分かれるので、その軌道はn/2n/2個である。bbが偶数の剰余類ならばb=2cb=2cと書くことができ、a=ca=cは解である。他の解を求めると、2a=2c2a=2cはn∣2(a−c)n\mid2(a-c)と同値であり、n=2⋅(n/2)n=2\cdot(n/2)であるからこれは(n/2)∣(a−c)(n/2)\mid(a-c)と同値である。Z/nZ\mathbb Z/n\mathbb Zの中でこれを満たすaaはccとc+n/2c+n/2の二つである。不動点は22個であり、残るn−2n-2個の点は(n−2)/2(n-2)/2個の大きさ22の軌道へ分かれる。▨

系 4.5.n≥3n\ge3とする。nnが奇数のとき

ZD2n(s1,…,sn)=12n(∑j=0n−1s n/gcd⁡(n,j) gcd⁡(n,j)+n s1s2(n−1)/2)Z_{D_{2n}}(s_1,\dots,s_n)=\frac{1}{2n}\Bigl(\sum_{j=0}^{n-1}s_{\,n/\gcd(n,j)}^{\ \gcd(n,j)}+n\,s_1s_2^{(n-1)/2}\Bigr)

であり、nnが偶数のとき

ZD2n(s1,…,sn)=12n(∑j=0n−1s n/gcd⁡(n,j) gcd⁡(n,j)+n2 s12s2(n−2)/2+n2 s2n/2)Z_{D_{2n}}(s_1,\dots,s_n)=\frac{1}{2n}\Bigl(\sum_{j=0}^{n-1}s_{\,n/\gcd(n,j)}^{\ \gcd(n,j)}+\frac n2\,s_1^{2}s_2^{(n-2)/2}+\frac n2\,s_2^{n/2}\Bigr)

である。

証明.命題 4.2により∣D2n∣=2n|D_{2n}|=2nであり、D2nD_{2n}の元はnn個の回転とnn個の鏡映である。回転の寄与は命題 4.3の証明で求めた巡回型による。鏡映の寄与は命題 4.4による。nnが偶数のとき、偶数の剰余類bbはn/2n/2個、奇数の剰余類bbはn/2n/2個であるから、二種類の鏡映がそれぞれn/2n/2個ずつある。定義 1.3の定義に代入すると主張の等式を得る。▨

例 4.6 (正六角形の頂点を二色で塗る(回転群)).n=6n=6とし、X=Z/6ZX=\mathbb Z/6\mathbb Z、C={C=\{赤,,青}\}、R=Q[tr,tb]R=\mathbb Q[t_{\mathrm r},t_{\mathrm b}]、w(w(赤)=tr)=t_{\mathrm r}、w(w(青)=tb)=t_{\mathrm b}とする。

まず命題 4.3により巡回指標を求める。gcd⁡(6,j)\gcd(6,j)はj=0,1,2,3,4,5j=0,1,2,3,4,5に対して順に6,1,2,3,2,16,1,2,3,2,1であるから、n/gcd⁡(6,j)n/\gcd(6,j)は順に1,6,3,2,3,61,6,3,2,3,6である。ゆえに

ZC6(s1,…,s6)=16(s16+2s6+2s32+s23).Z_{C_6}(s_1,\dots,s_6)=\frac16\bigl(s_1^{6}+2s_6+2s_3^{2}+s_2^{3}\bigr).

定理 3.2によりsjs_jへtr j+tb jt_{\mathrm r}^{\,j}+t_{\mathrm b}^{\,j}を代入すると、軌道の重みの総和は

16[(tr+tb)6+2(tr6+tb6)+2(tr3+tb3)2+(tr2+tb2)3]\frac16\Bigl[(t_{\mathrm r}+t_{\mathrm b})^{6}+2(t_{\mathrm r}^{6}+t_{\mathrm b}^{6})+2(t_{\mathrm r}^{3}+t_{\mathrm b}^{3})^{2}+(t_{\mathrm r}^{2}+t_{\mathrm b}^{2})^{3}\Bigr]

である。

検算。各単項式の係数を手で計算する。tr6t_{\mathrm r}^{6}の係数は16(1+2+2+1)=1\frac16(1+2+2+1)=1、tr5tbt_{\mathrm r}^{5}t_{\mathrm b}の係数は16((65))=16⋅6=1\frac16\bigl(\binom65\bigr)=\frac16\cdot6=1、tr4tb2t_{\mathrm r}^{4}t_{\mathrm b}^{2}の係数は16((64)+3)=16(15+3)=3\frac16\bigl(\binom64+3\bigr)=\frac16(15+3)=3、tr3tb3t_{\mathrm r}^{3}t_{\mathrm b}^{3}の係数は16((63)+2⋅2)=16(20+4)=4\frac16\bigl(\binom63+2\cdot2\bigr)=\frac16(20+4)=4である((tr3+tb3)2(t_{\mathrm r}^{3}+t_{\mathrm b}^{3})^{2}の中央の項が2tr3tb32t_{\mathrm r}^{3}t_{\mathrm b}^{3}であることによる)。残りは赤と青を入れ替えて3,1,13,1,1である。総和は1+1+3+4+3+1+1=141+1+3+4+3+1+1=14である。

系 3.3によりtr=tb=1t_{\mathrm r}=t_{\mathrm b}=1と置くと軌道の総数が得られ、

16(26+2⋅2+2⋅22+23)=64+4+8+86=846=14\frac16\bigl(2^{6}+2\cdot2+2\cdot2^{2}+2^{3}\bigr)=\frac{64+4+8+8}{6}=\frac{84}{6}=14

であって上の合計と一致する。この値は§E7.11 定理 4.5をn=6n=6、k=2k=2として計算した16∑d∣6φ(d)26/d=16(64+8+2⋅4+2⋅2)=14\frac16\sum_{d\mid6}\varphi(d)2^{6/d}=\frac16(64+8+2\cdot4+2\cdot2)=14とも一致する。

赤を三個、青を三個使う塗り分けの軌道が44個であることを直接に確かめる。赤の位置の集合をZ/6Z\mathbb Z/6\mathbb Zの三元部分集合として表すと、回転で移り合うものを同一視した代表は

{0,1,2},{0,1,3},{0,2,4},{0,1,4}\{0,1,2\},\quad\{0,1,3\},\quad\{0,2,4\},\quad\{0,1,4\}

の四つである。実際、三元部分集合は全部で(63)=20\binom63=20個あり、{0,2,4}\{0,2,4\}の軌道は{0,2,4}\{0,2,4\}と{1,3,5}\{1,3,5\}の二つ、他の三つの代表の軌道はそれぞれ大きさ66である。2+6+6+6=202+6+6+6=20であるから、これら四つで尽きている。

例 4.7 (正六角形の頂点を二色で塗る(二面体群)). 同じ設定で、群を二面体群D12D_{12}に取り替える。n=6n=6は偶数であるから、系 4.5により

ZD12(s1,…,s6)=112(s16+2s6+2s32+s23+3s12s22+3s23)=112(s16+2s6+2s32+4s23+3s12s22)Z_{D_{12}}(s_1,\dots,s_6)=\frac1{12}\bigl(s_1^{6}+2s_6+2s_3^{2}+s_2^{3}+3s_1^{2}s_2^{2}+3s_2^{3}\bigr) =\frac1{12}\bigl(s_1^{6}+2s_6+2s_3^{2}+4s_2^{3}+3s_1^{2}s_2^{2}\bigr)

である。

検算.tr=tb=1t_{\mathrm r}=t_{\mathrm b}=1と置くと

112(64+2⋅2+2⋅4+4⋅8+3⋅4⋅4)=64+4+8+32+4812=15612=13\frac1{12}\bigl(64+2\cdot2+2\cdot4+4\cdot8+3\cdot4\cdot4\bigr)=\frac{64+4+8+32+48}{12}=\frac{156}{12}=13

である。§E7.11 定理 5.1をn=6n=6、k=2k=2として用いるとR6(2)=62(24+23)=3⋅24=72R_6(2)=\frac62(2^{4}+2^{3})=3\cdot24=72であり、112(84+72)=15612=13\frac1{12}(84+72)=\frac{156}{12}=13となって一致する。

赤を三個、青を三個使う場合の係数を求める。tr3tb3t_{\mathrm r}^{3}t_{\mathrm b}^{3}の係数は、(tr+tb)6(t_{\mathrm r}+t_{\mathrm b})^{6}から(63)=20\binom63=20、2(tr3+tb3)22(t_{\mathrm r}^{3}+t_{\mathrm b}^{3})^{2}から2⋅2=42\cdot2=4、4(tr2+tb2)34(t_{\mathrm r}^{2}+t_{\mathrm b}^{2})^{3}からは奇数べきが現れないので00、2(tr6+tb6)2(t_{\mathrm r}^{6}+t_{\mathrm b}^{6})からも00、3(tr+tb)2(tr2+tb2)23(t_{\mathrm r}+t_{\mathrm b})^{2}(t_{\mathrm r}^{2}+t_{\mathrm b}^{2})^{2}からは、第二因子の単項式がtr4, 2tr2tb2, tb4t_{\mathrm r}^{4},\,2t_{\mathrm r}^{2}t_{\mathrm b}^{2},\,t_{\mathrm b}^{4}であり第一因子の単項式がtr2, 2trtb, tb2t_{\mathrm r}^{2},\,2t_{\mathrm r}t_{\mathrm b},\,t_{\mathrm b}^{2}であることから、積がtr3tb3t_{\mathrm r}^{3}t_{\mathrm b}^{3}になる組合せは2trtb⋅2tr2tb22t_{\mathrm r}t_{\mathrm b}\cdot2t_{\mathrm r}^{2}t_{\mathrm b}^{2}だけであり寄与は3⋅4=123\cdot4=12である。合計して

20+4+0+0+1212=3612=3\frac{20+4+0+0+12}{12}=\frac{36}{12}=3

である。回転群のときの44個の代表のうち、{0,1,3}\{0,1,3\}と{0,1,4}\{0,1,4\}は鏡映によって移り合う。実際τ0({0,1,3})={0,−1,−3}={0,3,5}\tau_0(\{0,1,3\})=\{0,-1,-3\}=\{0,3,5\}であり、これを11だけ回転すると{1,4,0}={0,1,4}\{1,4,0\}=\{0,1,4\}である。残る二つの回転軌道は鏡映で閉じている。実際τ2({0,1,2})={2,1,0}={0,1,2}\tau_2(\{0,1,2\})=\{2,1,0\}=\{0,1,2\}であり、τ0({0,2,4})={0,4,2}={0,2,4}\tau_0(\{0,2,4\})=\{0,4,2\}=\{0,2,4\}である。ゆえに二面体群による軌道は33個であり、係数33と一致する。

5 演習

問題 5.1.

  1. 命題 3.1の証明を再現せよ。とくに、§E7.11 定理 3.1をそのままYYへ適用するのではなく、重みの値ごとの部分集合YvY_vへ適用する必要がある理由を、Burnside の補題の主張の形に即して述べよ。
  2. 定理 3.2の証明のうち、∑f∈Fix⁡(g)W(f)\sum_{f\in\operatorname{Fix}(g)}W(f)を巡回軌道ごとの和の積へ分解する段階を、分配法則を明示的に書き下して再現せよ。巡回軌道がXXの分割であることをどこで用いたかを述べよ。
  3. 補題 2.1の証明で、g⋅f=fg\cdot f=fをf=f∘ρ(g)f=f\circ\rho(g)へ書き換えた。彩色への作用をg⋅f=f∘ρ(g)g\cdot f=f\circ\rho(g)と定めた場合に左作用の公理が破れることを確かめ、§E7.11 命題 1.5の証明と対応させよ。
  4. 命題 4.3の証明では、安定化群が単位群であることから軌道の大きさがすべて等しいことを導いた。この段階を用いずに、軌道の大きさが等しいことを直接に示す議論を書け。
  5. n=5n=5について系 4.5からZD10Z_{D_{10}}を求め、三色による正五角形の頂点彩色の軌道数を計算せよ。さらに§E7.11 定理 5.1による値と一致することを確かめよ。
  6. 正六角形の頂点を三色で塗り、二面体群で同一視する場合の軌道数を系 4.5から計算し、§E7.11 例 5.2の値9292と一致することを確かめよ。さらに、三色のうち一色をちょうど二回使う塗り分けの軌道数を、重み付きの形から求めよ。

6 扱った範囲と次の記事

有限集合へ作用する有限群の巡回型と巡回指標を定義し、重み付き Burnside の補題を Burnside の補題から導いたうえで、重み付き彩色の数え上げ公式を完全に証明した。標準例として正多角形の頂点彩色を扱い、回転群と二面体群の巡回指標を決定し、正六角形について手計算で検算した。

Burnside の補題、軌道による分割および軌道安定化群定理は先行単元の結果を参照し、再証明していない。二つの群作用のもとでの数え上げ、辺や面の彩色、および巡回指標の合成による木や化学構造の数え上げは扱っていない。次の記事では、有限半順序集合の鎖と反鎖を主題として、鎖分割の最小本数と反鎖の最大濃度を結ぶ Dilworth の定理を扱う。

参考文献

  1. J. H. van Lint and R. M. Wilson, A Course in Combinatorics, 2nd ed., Cambridge University Press, 2001.巡回指標と Pólya の数え上げ定理の定式化を参考にした。
  2. Martin Aigner, A Course in Enumeration, Graduate Texts in Mathematics 238, Springer, Berlin, 2007.重み付き Burnside の補題と巡回群・二面体群の巡回指標を参考にした。
  3. Richard P. Stanley, Enumerative Combinatorics, vol. 2, Cambridge University Press, Cambridge, 1999.巡回指標と対称性のもとでの重み付き数え上げの記法を参考にした。

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