1 巡回指標
以下、Gを有限群、Xを有限集合、n=∣X∣とし、GはXへ左から作用するものとする。§E7.10 定理 2.2により、この作用は群準同型
ρ:G⟶Sym(X)
と一対一に対応する。g∈Gに対し、ρ(g)が生成する巡回群⟨ρ(g)⟩のXへの作用の軌道をgの巡回軌道とよぶ(§E7.11 定義 2.1)。巡回軌道の個数をc(ρ(g))と書く。
定義 1.1.g∈Gと1≤j≤nに対し
cj(g)={B : B は g の巡回軌道であり ∣B∣=j}と定め、組(c1(g),…,cn(g))をgの 巡回型 (cycle type) とよぶ。
巡回型の成分の和は、次の二つの形で以後の計算に現れる。
命題 1.2. 各g∈Gに対し
j=1∑njcj(g)=n,j=1∑ncj(g)=c(ρ(g))が成り立つ。
証明.gの巡回軌道は⟨ρ(g)⟩のXへの作用の軌道であるから、§E7.10 命題 3.2により互いに素であり、その合併はXに等しい。各巡回軌道の大きさは1以上n以下であるから、大きさは1,…,nのいずれかである。
巡回軌道の全体を大きさによって分類すると、大きさjの類の要素数は定義 1.1によりcj(g)である。加法原理(§D2.2 定理 2.1)を巡回軌道の全体へ適用すると、巡回軌道の総数は∑j=1ncj(g)であり、これはc(ρ(g))にほかならない。
また、加法原理をXの分割へ適用するとn=∣X∣=∑B∣B∣である。ここでBは巡回軌道の全体を走る。この和を大きさによって分類すると、大きさjの巡回軌道はcj(g)個あり、それぞれがjを寄与するので∑B∣B∣=∑j=1njcj(g)である。▨
定義 1.3.GのXへの作用の巡回指標 (cycle index) とは、n個の不定元s1,…,snについての多項式
ZG(s1,…,sn)=∣G∣1g∈G∑ j=1∏nsjcj(g) ∈Q[s1,…,sn]のことをいう。
Rを有理数体Qを含む可換環とし、r1,…,rn∈Rとする。ZG(r1,…,rn)という記号は、sjへrjを代入して得られるRの元、すなわちZGの各単項式∏jsjejを∏jrjejへ置き換え、有理数係数をRの元として掛けたうえで和を取ったものを表す。この代入は、sj↦rjで定まるQ-代数の準同型Q[s1,…,sn]→Rによる像である。
2 彩色と重み
Cを有限集合とし、その元を色とよぶ。写像f:X→Cを彩色とよび、彩色の全体をCXと書く(§E7.11 定義 1.3)。GはCXへ
g⋅f=f∘ρ(g)−1
によって左から作用する(§E7.11 定義 1.4、§E7.11 命題 1.5)。
補題 2.1.g∈Gとf∈CXについて、g⋅f=fであることと、fがgのすべての巡回軌道の上で定数であることは同値である。
証明.g⋅f=fは、すべてのx∈Xについてf(ρ(g)−1(x))=f(x)が成り立つことを意味する。ρ(g)は全単射であるから、xをρ(g)(x)で置き換えると、この条件はすべてのxについてf(x)=f(ρ(g)(x))が成り立つことと同値である。
この条件が成り立つとする。整数m≥0についての帰納法により、すべてのxとmについてf(ρ(g)m(x))=f(x)である。xの巡回軌道は{ρ(g)m(x):m∈Z}であり、ρ(g)の位数をtとするとρ(g)−1=ρ(g)t−1であるから、この集合は{ρ(g)m(x):m≥0}に等しい。ゆえにfはxの巡回軌道の上で定数である。
逆にfが各巡回軌道の上で定数であるとする。xとρ(g)(x)は同じ巡回軌道に属するのでf(ρ(g)(x))=f(x)である。▨
定義 2.2.Rを有理数体Qを含む可換環とし、写像w:C→Rを重み (weight) とよぶ。彩色f∈CXの重みを
W(f)=x∈X∏w(f(x))∈Rと定める。
命題 2.3.g∈Gとf∈CXに対しW(g⋅f)=W(f)が成り立つ。したがって、CXの各G-軌道Oに対し、Oに属するすべての彩色に共通する重みが定まる。この値をW(O)と書く。
証明.g⋅f=f∘ρ(g)−1であるから
W(g⋅f)=x∈X∏w(f(ρ(g)−1(x)))である。ρ(g)−1はXからXへの全単射であるから、y=ρ(g)−1(x)と置くと、xがXを走るときyもXを走る。Rは可換環であるから積の順序を入れ替えてよく、右辺は∏y∈Xw(f(y))=W(f)に等しい。
軌道Oの二つの元は§E7.10 命題 3.2によりf2=g⋅f1の形で結ばれるので、上の等式からWはOの上で一定である。▨
3 重み付きの数え上げ公式
3.1 証明方針
主定理は、軌道の重みの総和∑OW(O)を巡回指標で表す等式である。二段階で示す。
第一段階では、重み付きの Burnside の補題を導く。§E7.11 定理 3.1は軌道の個数についての主張であるから、そのままでは重みつきの和を与えない。そこで、重みの値ごとに元を分類する。この段階は彩色の集合に固有の性質を用いないので、有限な左G-集合Yと、各軌道の上で一定な写像W:Y→Rについて述べる。Wの値vに対しYv={y∈Y:W(y)=v}と置くと、Wが各軌道の上で一定であることからYvはGの作用で保たれるので、GはYvへ作用する。この作用へ Burnside の補題を適用し、両辺にvを掛けてvについて足し合わせる。Yが有限集合であるからWの値は有限個であり、FixY(g)はFixYv(g)たちの互いに素な合併であるから、和の順序を入れ替えることができる。本記事はこれをY=CXの場合へ適用する。この場合にWが各軌道の上で一定であることは命題 2.3が与える。
第二段階では、固定される彩色の重みの総和∑f∈Fix(g)W(f)を巡回型で表す。補題 2.1により、gが固定する彩色は各巡回軌道の上で定数な彩色にほかならない。したがって、そのような彩色は「各巡回軌道へ色を一つ割り当てる写像」と一対一に対応し、重みは各巡回軌道の色の重みをその軌道の大きさだけ掛けた積になる。有限個の因子への分配法則により、総和は巡回軌道ごとの和∑c∈Cw(c)∣B∣の積へ分解する。同じ大きさの巡回軌道をまとめると、sjへ∑cw(c)jを代入した形が現れる。
命題 3.1 (重み付き Burnside の補題).Gを有限群、Rを有理数体Qを含む可換環、Yを有限な左G-集合、W:Y→Rを各G-軌道の上で一定な写像とする。軌道O∈Y/Gに対し、Oに属するすべての元に共通するWの値をW(O)と書く。このとき
O∈Y/G∑W(O)=∣G∣1g∈G∑ y∈FixY(g)∑W(y)が成り立つ。ここでFixY(g)={y∈Y:g⋅y=y}である(§E7.11 定義 1.7)。
証明.Yは有限集合であるから、Wの値域V=W(Y)⊆Rは有限集合である。v∈Vに対しYv={y∈Y:W(y)=v}と置く。Wは各軌道の上で一定であるから、y∈Yvならばg⋅y∈Yvであり、Gの作用はYvへ制限されてYvへの左作用を定める。
YvたちはYを互いに素に分割し、各軌道はただ一つのYvに含まれる。ゆえにYの軌道の全体は、Yvの軌道の全体をv∈Vにわたって集めたものである。したがって
O∈Y/G∑W(O)=v∈V∑v⋅Yv/Gである。§E7.11 定理 3.1をGのYvへの作用へ適用すると
Yv/G=∣G∣1g∈G∑FixYv(g)であるから
O∈Y/G∑W(O)=∣G∣1v∈V∑ g∈G∑vFixYv(g)となる。右辺は有限和であるから和の順序を入れ替えてよい。gを固定すると、FixY(g)はFixYv(g)(v∈V)の互いに素な合併であり、FixYv(g)の各元yはW(y)=vを満たす。ゆえに
v∈V∑vFixYv(g)=y∈FixY(g)∑W(y)であり、主張を得る。▨
定理 3.2 (Pólya の数え上げ定理).Gを有限群、Xをn元の有限集合、Cを有限な色の集合、RをQを含む可換環、w:C→Rを重みとする。GがXへ作用し、CXへg⋅f=f∘ρ(g)−1で作用するとき
O∈CX/G∑W(O)=ZG(c∈C∑w(c), c∈C∑w(c)2, …, c∈C∑w(c)n)が成り立つ。
証明.CXは有限集合であり、GはCXへ左から作用する(§E7.11 命題 1.5)。また命題 2.3によりW:CX→Rは各軌道の上で一定である。ゆえに命題 3.1をY=CXとして適用することができ、示すべきことは各g∈Gについて
f∈FixCX(g)∑W(f)=j=1∏n(c∈C∑w(c)j)cj(g)が成り立つことである。
gを固定し、gの巡回軌道をB1,…,Br(r=c(ρ(g)))とする。これらはXの分割である(§E7.10 命題 3.2)。補題 2.1により、f∈FixCX(g)であることと、fが各Biの上で定数であることは同値である。fに対しγi∈CをBi上の共通の値と定めると、対応f↦(γ1,…,γr)はFixCX(g)からCrへの全単射である。実際、逆向きの対応は、与えられた(γ1,…,γr)に対しx∈Biでf(x)=γiと定めるものであり、BiがXの分割であるからこれはX上の写像を一意に定める。
fの重みを計算する。X=⨆i=1rBiでありRは可換であるから
W(f)=x∈X∏w(f(x))=i=1∏r x∈Bi∏w(γi)=i=1∏rw(γi)∣Bi∣である。したがって
f∈FixCX(g)∑W(f)=(γ1,…,γr)∈Cr∑ i=1∏rw(γi)∣Bi∣=i=1∏r(c∈C∑w(c)∣Bi∣)となる。最後の等号は、可換環における有限個の因子への分配法則である。実際、右辺の積を展開すると、各因子から色を一つずつ選ぶ選び方(γ1,…,γr)ごとに項∏iw(γi)∣Bi∣が現れ、その総和になる。
最後に、iを∣Bi∣の値で分類する。∣Bi∣=jとなるiは定義 1.1によりcj(g)個であるから
i=1∏r(c∈C∑w(c)∣Bi∣)=j=1∏n(c∈C∑w(c)j)cj(g)である。gについて1/∣G∣を付けて足し合わせると、定義 1.3の定義により右辺はZGへsj=∑cw(c)jを代入した値である。▨
系 3.3.∣C∣=kとすると
CX/G=ZG(k,k,…,k)=∣G∣1g∈G∑kc(ρ(g))が成り立つ。
証明.R=Qとし、すべてのc∈Cについてw(c)=1と定める。このときW(f)=1であるから、定理 3.2の左辺は軌道の個数に等しい。また∑c∈Cw(c)j=kであるから右辺はZG(k,…,k)である。最後に、命題 1.2により∏jkcj(g)=k∑jcj(g)=kc(ρ(g))である。これは§E7.11 命題 2.2が与える不動点数と一致する。▨
4 正多角形の頂点彩色
正n角形(n≥3)の頂点をZ/nZと同一視し、X=Z/nZとする。作用させる群として、回転群と二面体群の二つを区別して扱う。
定義 4.1.a∈Z/nZに対し
πj(a)=a+j,τb(a)=b−a(j,b∈Z/nZ)と定める。πjを回転 (rotation)、τbを鏡映 (reflection) とよぶ。Cn={πj:j∈Z/nZ}を回転群 (rotation group)、D2n=Cn∪{τb:b∈Z/nZ}を二面体群 (dihedral group) とよび、いずれもSym(X)の部分集合として、Xへの作用は写像の適用そのものとする。
命題 4.2.n≥3とすると、CnはSym(X)の位数nの部分群であり、D2nはSym(X)の位数2nの部分群である。
証明.πjはπ−jを逆写像にもつので全単射であり、τbはτb∘τb=idを満たすので全単射である。合成を計算すると
πj∘πj′=πj+j′,πj∘τb=τb+j,τb∘πj=τb−j,τb∘τb′=πb−b′である。たとえば第三の式は(τb∘πj)(a)=b−(a+j)=(b−j)−aによる。ゆえにCnとD2nはいずれも合成について閉じ、恒等写像π0を含み、πj−1=π−j、τb−1=τbであるから部分群である。
位数を数える。j=j′ならばπj(0)=j=j′=πj′(0)であるから、πjたちは相異なるn個の元である。同様にτb(0)=bによりτbたちも相異なる。回転と鏡映が一致しないことを示す。πj=τbとすると、a=0からj=bを得、a=1から1+j=b−1を得るので1+j=j−1、すなわち2≡0(modn)となる。n≥3に反する。ゆえに∣D2n∣=2nである。▨
命題 4.3.j∈Z/nZの代表を0≤j≤n−1に取り、d=gcd(n,j)(ただしj=0のときd=n)と置く。回転πjの巡回軌道はすべて大きさn/dをもち、その個数はdである。したがって
ZCn(s1,…,sn)=n1j=0∑n−1sn/gcd(n,j) gcd(n,j)が成り立つ。
証明.H=⟨πj⟩と置く。HのXへの作用の安定化群を調べる。πjm(a)=a+mjであるから、πjmがaを固定することとmj≡0(modn)であることは同値であり、この条件はaに依存しない。ゆえにπjmが或る点を固定すればすべての点を固定し、πjm=idである。したがって各aの安定化群Haは単位元だけからなる。§E7.10 定理 3.4により、すべての軌道の大きさは∣H∣に等しい。
次に∣H∣を求める。以下、jは代表として取った整数0≤j≤n−1を表す。前段で見たとおりπjm=idであることとn∣mjであることは同値であり、m=nはこれを満たすので、n∣mjを満たす正整数が存在する。その最小のものをtと置く。
このとき∣H∣=tである。実際、任意の整数mをm=qt+s(0≤s<t)と書くとπjm=(πjt)q∘πjs=πjsであるからH={πj0,πj1,…,πjt−1}である。また0≤s′<s≤t−1についてπjs=πjs′とするとπjs−s′=idとなり、0<s−s′<tがtの最小性に反する。ゆえにこれらt個の元は相異なる。
t≤n/dである。実際、dはnとjの公約数であるから(j=0のときはd=nという約束によりd∣nかつd∣jが成り立つ)、n/dは正の整数でありj/dは非負整数である。(n/d)j=n(j/d)であるからn∣(n/d)jが成り立ち、tの最小性によりt≤n/dを得る。
t∣nである。実際、n=qt+s(qは整数、0≤s<t)と書くと、n∣njとn∣tjからn∣(n−qt)j=sjが従う。s>0とするとtの最小性に反するのでs=0であり、tはnを割り切る。
そこでu=n/tと置く。uは正整数であり、n∣tjはtu∣tjと書き直すことができるので、t>0よりu∣jである。またu∣nである。ゆえにuはnとjの正の公約数であり、u≤dである(j=0のときは、d=nという約束とu∣nによりu≤n=dが成り立つ)。したがってt=n/u≥n/dである。
以上の二つの不等式からt=n/d、すなわち∣H∣=n/dである。ゆえに各巡回軌道の大きさはn/dである。巡回軌道はXを分割するので、加法原理(§D2.2 定理 2.1)により(軌道の個数)×(n/d)=nであり、軌道の個数はdである。
ゆえにπjの巡回型はcn/d(πj)=d、他のci(πj)=0であり、定義 1.3の定義から主張の等式を得る。▨
命題 4.4.n≥3とし、b∈Z/nZとする。鏡映τbの巡回軌道は、τbの不動点と、大きさ2の軌道からなる。不動点の個数は次のとおりである。
- nが奇数のとき、bによらずちょうど1個である。したがって巡回型はs1s2(n−1)/2に対応する。
- nが偶数のとき、bが偶数の剰余類であればちょうど2個であり、巡回型はs12s2(n−2)/2に対応する。bが奇数の剰余類であれば0個であり、巡回型はs2n/2に対応する。
証明.τb∘τb=idであるから⟨τb⟩={id,τb}であり、aの巡回軌道は{a,b−a}である。この軌道の大きさは、a=b−aすなわち2a=bのとき1、そうでないとき2である。
(1)を示す。nが奇数のとき、2⋅2n+1=n+1≡1(modn)であるから2はZ/nZの可逆元であり、その逆元は(n+1)/2の剰余類である。ゆえに2a=bはただ一つの解a=2n+1bをもつ。不動点は1個であり、残るn−1個の点は大きさ2の軌道へ分かれるので、その軌道は(n−1)/2個である。
(2)を示す。nが偶数とする。任意のaに対し2aは偶数の剰余類であるから、bが奇数の剰余類ならば2a=bは解をもたず、不動点は存在しない。このときn個の点はすべて大きさ2の軌道へ分かれるので、その軌道はn/2個である。bが偶数の剰余類ならばb=2cと書くことができ、a=cは解である。他の解を求めると、2a=2cはn∣2(a−c)と同値であり、n=2⋅(n/2)であるからこれは(n/2)∣(a−c)と同値である。Z/nZの中でこれを満たすaはcとc+n/2の二つである。不動点は2個であり、残るn−2個の点は(n−2)/2個の大きさ2の軌道へ分かれる。▨
系 4.5.n≥3とする。nが奇数のとき
ZD2n(s1,…,sn)=2n1(j=0∑n−1sn/gcd(n,j) gcd(n,j)+ns1s2(n−1)/2)であり、nが偶数のとき
ZD2n(s1,…,sn)=2n1(j=0∑n−1sn/gcd(n,j) gcd(n,j)+2ns12s2(n−2)/2+2ns2n/2)である。
証明.命題 4.2により∣D2n∣=2nであり、D2nの元はn個の回転とn個の鏡映である。回転の寄与は命題 4.3の証明で求めた巡回型による。鏡映の寄与は命題 4.4による。nが偶数のとき、偶数の剰余類bはn/2個、奇数の剰余類bはn/2個であるから、二種類の鏡映がそれぞれn/2個ずつある。定義 1.3の定義に代入すると主張の等式を得る。▨
例 4.6 (正六角形の頂点を二色で塗る(回転群)).n=6とし、X=Z/6Z、C={赤,青}、R=Q[tr,tb]、w(赤)=tr、w(青)=tbとする。
まず命題 4.3により巡回指標を求める。gcd(6,j)はj=0,1,2,3,4,5に対して順に6,1,2,3,2,1であるから、n/gcd(6,j)は順に1,6,3,2,3,6である。ゆえに
ZC6(s1,…,s6)=61(s16+2s6+2s32+s23).定理 3.2によりsjへtrj+tbjを代入すると、軌道の重みの総和は
61[(tr+tb)6+2(tr6+tb6)+2(tr3+tb3)2+(tr2+tb2)3]である。
検算。各単項式の係数を手で計算する。tr6の係数は61(1+2+2+1)=1、tr5tbの係数は61((56))=61⋅6=1、tr4tb2の係数は61((46)+3)=61(15+3)=3、tr3tb3の係数は61((36)+2⋅2)=61(20+4)=4である((tr3+tb3)2の中央の項が2tr3tb3であることによる)。残りは赤と青を入れ替えて3,1,1である。総和は1+1+3+4+3+1+1=14である。
系 3.3によりtr=tb=1と置くと軌道の総数が得られ、
61(26+2⋅2+2⋅22+23)=664+4+8+8=684=14であって上の合計と一致する。この値は§E7.11 定理 4.5をn=6、k=2として計算した61∑d∣6φ(d)26/d=61(64+8+2⋅4+2⋅2)=14とも一致する。
赤を三個、青を三個使う塗り分けの軌道が4個であることを直接に確かめる。赤の位置の集合をZ/6Zの三元部分集合として表すと、回転で移り合うものを同一視した代表は
{0,1,2},{0,1,3},{0,2,4},{0,1,4}の四つである。実際、三元部分集合は全部で(36)=20個あり、{0,2,4}の軌道は{0,2,4}と{1,3,5}の二つ、他の三つの代表の軌道はそれぞれ大きさ6である。2+6+6+6=20であるから、これら四つで尽きている。
例 4.7 (正六角形の頂点を二色で塗る(二面体群)). 同じ設定で、群を二面体群D12に取り替える。n=6は偶数であるから、系 4.5により
ZD12(s1,…,s6)=121(s16+2s6+2s32+s23+3s12s22+3s23)=121(s16+2s6+2s32+4s23+3s12s22)である。
検算.tr=tb=1と置くと
121(64+2⋅2+2⋅4+4⋅8+3⋅4⋅4)=1264+4+8+32+48=12156=13である。§E7.11 定理 5.1をn=6、k=2として用いるとR6(2)=26(24+23)=3⋅24=72であり、121(84+72)=12156=13となって一致する。
赤を三個、青を三個使う場合の係数を求める。tr3tb3の係数は、(tr+tb)6から(36)=20、2(tr3+tb3)2から2⋅2=4、4(tr2+tb2)3からは奇数べきが現れないので0、2(tr6+tb6)からも0、3(tr+tb)2(tr2+tb2)2からは、第二因子の単項式がtr4,2tr2tb2,tb4であり第一因子の単項式がtr2,2trtb,tb2であることから、積がtr3tb3になる組合せは2trtb⋅2tr2tb2だけであり寄与は3⋅4=12である。合計して
1220+4+0+0+12=1236=3である。回転群のときの4個の代表のうち、{0,1,3}と{0,1,4}は鏡映によって移り合う。実際τ0({0,1,3})={0,−1,−3}={0,3,5}であり、これを1だけ回転すると{1,4,0}={0,1,4}である。残る二つの回転軌道は鏡映で閉じている。実際τ2({0,1,2})={2,1,0}={0,1,2}であり、τ0({0,2,4})={0,4,2}={0,2,4}である。ゆえに二面体群による軌道は3個であり、係数3と一致する。
5 演習
問題 5.1.
- 命題 3.1の証明を再現せよ。とくに、§E7.11 定理 3.1をそのままYへ適用するのではなく、重みの値ごとの部分集合Yvへ適用する必要がある理由を、Burnside の補題の主張の形に即して述べよ。
- 定理 3.2の証明のうち、∑f∈Fix(g)W(f)を巡回軌道ごとの和の積へ分解する段階を、分配法則を明示的に書き下して再現せよ。巡回軌道がXの分割であることをどこで用いたかを述べよ。
- 補題 2.1の証明で、g⋅f=fをf=f∘ρ(g)へ書き換えた。彩色への作用をg⋅f=f∘ρ(g)と定めた場合に左作用の公理が破れることを確かめ、§E7.11 命題 1.5の証明と対応させよ。
- 命題 4.3の証明では、安定化群が単位群であることから軌道の大きさがすべて等しいことを導いた。この段階を用いずに、軌道の大きさが等しいことを直接に示す議論を書け。
- n=5について系 4.5からZD10を求め、三色による正五角形の頂点彩色の軌道数を計算せよ。さらに§E7.11 定理 5.1による値と一致することを確かめよ。
- 正六角形の頂点を三色で塗り、二面体群で同一視する場合の軌道数を系 4.5から計算し、§E7.11 例 5.2の値92と一致することを確かめよ。さらに、三色のうち一色をちょうど二回使う塗り分けの軌道数を、重み付きの形から求めよ。
6 扱った範囲と次の記事
有限集合へ作用する有限群の巡回型と巡回指標を定義し、重み付き Burnside の補題を Burnside の補題から導いたうえで、重み付き彩色の数え上げ公式を完全に証明した。標準例として正多角形の頂点彩色を扱い、回転群と二面体群の巡回指標を決定し、正六角形について手計算で検算した。
Burnside の補題、軌道による分割および軌道安定化群定理は先行単元の結果を参照し、再証明していない。二つの群作用のもとでの数え上げ、辺や面の彩色、および巡回指標の合成による木や化学構造の数え上げは扱っていない。次の記事では、有限半順序集合の鎖と反鎖を主題として、鎖分割の最小本数と反鎖の最大濃度を結ぶ Dilworth の定理を扱う。