§E13.7Hamilton 閉路

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グラフのすべての辺をちょうど一度ずつ通る小道については、次数の偶奇による簡明な必要十分条件が知られている(§D2.7 定理 4.2)。これに対し、すべての頂点をちょうど一度ずつ通る閉路については、同種の必要十分条件が知られていない(§D2.7 注意 5.5)。

そこで、十分条件を求めることになる。本記事では、隣接しない二頂点の次数の和が頂点数以上であるという Ore の条件が、Hamilton 閉路の存在を保証することを証明する。さらに、最小次数が頂点数の半分以上であるという Dirac の条件が Ore の条件を含意することを計算で確かめ、Dirac の定理を系として導く。

グラフG=(V,E)G=(V,E)、次数deg⁡G(v)\deg_G(v)、最小次数δ(G)\delta(G)、道および閉路については§D2.7 定義 1.1と§D2.7 定義 2.1の定義を用いる。本記事では、断りのないかぎりGGは有限単純無向グラフとし、n=∣V∣n=\lvert V\rvertと書く。

1 Hamilton 道と Hamilton 閉路

定義 1.1.G=(V,E)G=(V,E)を有限単純無向グラフとし、n=∣V∣n=\lvert V\rvertとする。

  1. GGの道が Hamilton 道 (Hamiltonian path) であるとは、その道がVVのすべての頂点をちょうど一度ずつ通ることをいう。すなわち、頂点列x1,x2,…,xnx_1,x_2,\dots,x_nがVVの相異なる頂点をすべて尽くし、1≤i≤n−11\le i\le n-1についてxixi+1∈Ex_ix_{i+1}\in Eを満たすとき、この列をx1x_1からxnx_nへの Hamilton 道という。
  2. n≥3n\ge3とする。GGの閉路が Hamilton 閉路 (Hamiltonian cycle) であるとは、その閉路がVVのすべての頂点をちょうど一度ずつ通ることをいう。すなわち、頂点列x1,x2,…,xnx_1,x_2,\dots,x_nがVVの相異なる頂点をすべて尽くし、1≤i≤n−11\le i\le n-1についてxixi+1∈Ex_ix_{i+1}\in Eを満たし、さらにxnx1∈Ex_nx_1\in Eを満たすとき、x1,x2,…,xn,x1x_1,x_2,\dots,x_n,x_1をGGの Hamilton 閉路という。
  3. Hamilton 閉路をもつグラフを Hamilton グラフ (Hamiltonian graph) という。

閉路の長さは33以上であるから(§D2.7 定義 2.1)、Hamilton 閉路を論じるためにはn≥3n\ge3が必要である。以下、Hamilton 閉路を扱う主張ではつねにn≥3n\ge3を仮定する。

2 Ore の条件

定理 2.1 (Ore の定理).n≥3n\ge3とし、G=(V,E)G=(V,E)を∣V∣=n\lvert V\rvert=nの有限単純無向グラフとする。GGにおいて隣接しない任意の相異なる二頂点u,vu,v、すなわちu≠vu\ne vかつuv∉Euv\notin Eを満たす任意のu,v∈Vu,v\in Vに対しdeg⁡G(u)+deg⁡G(v)≥n\deg_G(u)+\deg_G(v)\ge nが成り立つならば、GGは Hamilton 閉路をもつ。

2.1 証明方針

背理法による。頂点集合VVを固定すると、その上の単純グラフは有限個であるから、Ore の条件を満たしながら Hamilton 閉路をもたないグラフのうち、辺数が最大のものを取ることができる。これをGGとする。

n≥3n\ge3の完全グラフは Hamilton 閉路をもつので、GGには隣接しない相異なる二頂点u,vu,vが存在する。辺uvuvを加えたグラフは Ore の条件を保ち、辺数が一つ大きいので Hamilton 閉路をもつ。その閉路は辺uvuvを通るから、辺uvuvを取り除けばGGにおけるuuからvvへの Hamilton 道x1=u,x2,…,xn=vx_1=u,x_2,\dots,x_n=vが得られる。

ここからが本質的な一手である。x1x_1がxix_iと隣接するような添字iiの集合をII、xi−1x_{i-1}がxnx_nと隣接するような添字iiの集合をJJとすると、∣I∣=deg⁡G(u)\lvert I\rvert=\deg_G(u)、∣J∣=deg⁡G(v)\lvert J\rvert=\deg_G(v)であり、いずれも{2,…,n}\{2,\dots,n\}に含まれる。Ore の条件は∣I∣+∣J∣≥n\lvert I\rvert+\lvert J\rvert\ge nを与えるが、{2,…,n}\{2,\dots,n\}の元はn−1n-1個しかないので、IIとJJは共通の元iiをもつ。このiiに対して、Hamilton 道の前半をそのままたどり、辺xi−1xnx_{i-1}x_nで後半へ飛び移って逆向きにたどり、辺xix1x_ix_1で出発点へ戻ると、Hamilton 閉路が得られる。これはGGの取り方に矛盾する。

証明.n≥3n\ge3を固定し、∣V∣=n\lvert V\rvert=nである集合VVを固定する。Ore の条件を満たしながら Hamilton 閉路をもたないVV上の有限単純無向グラフが存在すると仮定する。VV上の単純グラフは辺集合がVVの二元部分集合の集合の部分集合として定まるので有限個であり、そのようなグラフの全体は空でない有限集合である。ゆえに、そのうち辺数が最大のものを一つ取ることができる。これをG=(V,E)G=(V,E)とする。

隣接しない二頂点の存在.GGは完全グラフではない。実際、VVの頂点を任意にy1,…,yny_1,\dots,y_nと並べると、完全グラフではyiyi+1y_iy_{i+1}とyny1y_ny_1がすべて辺であるから、n≥3n\ge3よりy1,…,yn,y1y_1,\dots,y_n,y_1は Hamilton 閉路になる。これはGGが Hamilton 閉路をもたないことに反する。ゆえにu≠vu\ne vかつuv∉Euv\notin Eを満たすu,v∈Vu,v\in Vが存在する。

辺を一本加える.G+=(V,E∪{uv})G^{+}=(V,E\cup\{uv\})と置く。G+G^{+}も Ore の条件を満たす。実際、G+G^{+}で隣接しない相異なる二頂点y,zy,zはGGでも隣接せず、辺を加えても次数は減らないのでdeg⁡G+(y)+deg⁡G+(z)≥deg⁡G(y)+deg⁡G(z)≥n\deg_{G^{+}}(y)+\deg_{G^{+}}(z)\ge\deg_{G}(y)+\deg_{G}(z)\ge nが成り立つ。G+G^{+}の辺数はGGの辺数より11大きいので、GGの取り方よりG+G^{+}は Hamilton 閉路をもたないグラフではない。すなわちG+G^{+}は Hamilton 閉路HHをもつ。

Hamilton 道を取り出す.HHは辺uvuvを通る。実際、HHが辺uvuvを通らなければHHの辺はすべてEEに属し、HHはGGの Hamilton 閉路になって、GGが Hamilton 閉路をもたないことに反する。HHから辺uvuvを取り除くと、GGにおけるuuからvvへの Hamilton 道が得られる。これをu=x1, x2, …, xn=vu=x_1,\ x_2,\ \dots,\ x_n=vと書く。x1,…,xnx_1,\dots,x_nはVVの頂点をちょうど一度ずつ尽くし、1≤i≤n−11\le i\le n-1についてxixi+1∈Ex_ix_{i+1}\in Eである。

二つの添字集合. 次の集合を定める。I={i: 2≤i≤n, x1xi∈E},J={i: 2≤i≤n, xi−1xn∈E}.I=\{i:\ 2\le i\le n,\ x_1x_i\in E\},\qquad J=\{i:\ 2\le i\le n,\ x_{i-1}x_n\in E\}.

写像i↦xii\mapsto x_iは{2,…,n}\{2,\dots,n\}からV∖{x1}V\setminus\{x_1\}への全単射であり、x1x_1に隣接する頂点はV∖{x1}V\setminus\{x_1\}に属する。ゆえに§D2.2 命題 1.5より∣I∣=deg⁡G(x1)=deg⁡G(u)\lvert I\rvert=\deg_G(x_1)=\deg_G(u)である。同様に、写像i↦xi−1i\mapsto x_{i-1}は{2,…,n}\{2,\dots,n\}からV∖{xn}V\setminus\{x_n\}への全単射であるから∣J∣=deg⁡G(xn)=deg⁡G(v)\lvert J\rvert=\deg_G(x_n)=\deg_G(v)である。

共通の添字の存在.uuとvvはGGで隣接しないから、Ore の条件より∣I∣+∣J∣=deg⁡G(u)+deg⁡G(v)≥n\lvert I\rvert+\lvert J\rvert=\deg_G(u)+\deg_G(v)\ge nである。一方I∪J⊆{2,…,n}I\cup J\subseteq\{2,\dots,n\}であり、∣{2,…,n}∣=n−1\lvert\{2,\dots,n\}\rvert=n-1である。もしI∩J=∅I\cap J=\varnothingならば§D2.2 定理 2.1より∣I∣+∣J∣=∣I∪J∣≤n−1<n\lvert I\rvert+\lvert J\rvert=\lvert I\cup J\rvert\le n-1<nとなって矛盾する。ゆえにI∩J≠∅I\cap J\ne\varnothingであり、i∈I∩Ji\in I\cap Jを一つ取ることができる。

このiiは22ではない。実際、2∈J2\in Jとするとx1xn∈Ex_{1}x_n\in E、すなわちuv∈Euv\in Eとなり、uuとvvが隣接しないことに反する。ゆえに3≤i≤n3\le i\le nである。

閉路の構成. 頂点列x1, x2, …, xi−1, xn, xn−1, …, xi, x1x_1,\ x_2,\ \dots,\ x_{i-1},\ x_n,\ x_{n-1},\ \dots,\ x_i,\ x_1を考える。この列に現れる頂点はx1,…,xi−1x_1,\dots,x_{i-1}とxi,…,xnx_i,\dots,x_nであり、あわせてVVのすべての頂点をちょうど一度ずつ尽くす。連続する対がいずれもEEに属することを確かめる。

  • 1≤j≤i−21\le j\le i-2に対する対xjxj+1x_jx_{j+1}は Hamilton 道の辺であるからEEに属する。
  • 対xi−1xnx_{i-1}x_nはi∈Ji\in JであることからEEに属する。
  • i≤j≤n−1i\le j\le n-1に対する対xj+1xjx_{j+1}x_jは Hamilton 道の辺xjxj+1x_jx_{j+1}と同じであるからEEに属する。列xn,xn−1,…,xix_n,x_{n-1},\dots,x_iはこれらの対を逆順にたどったものである。
  • 対xix1x_ix_1はi∈Ii\in IであることからEEに属する。

現れる対は(i−2)+1+(n−i)+1=n(i-2)+1+(n-i)+1=n個であり、n≥3n\ge3であるから、この列はGGの Hamilton 閉路である。これはGGが Hamilton 閉路をもたないことに反する。

以上より仮定は誤りであり、n≥3n\ge3かつ Ore の条件を満たす有限単純無向グラフはすべて Hamilton 閉路をもつ。▨

3 Dirac の条件

最小次数についての条件は、Ore の条件よりも確かめやすい形をしている。

系 3.1 (Dirac の定理).n≥3n\ge3とし、G=(V,E)G=(V,E)を∣V∣=n\lvert V\rvert=nの有限単純無向グラフとする。δ(G)≥n/2\delta(G)\ge n/2が成り立つならば、GGは Hamilton 閉路をもつ。

証明.GGが Ore の条件を満たすことを示す。u≠vu\ne vかつuv∉Euv\notin Eを満たすu,v∈Vu,v\in Vを任意に取る。最小次数の定義よりdeg⁡G(u)≥δ(G)\deg_G(u)\ge\delta(G)かつdeg⁡G(v)≥δ(G)\deg_G(v)\ge\delta(G)であるからdeg⁡G(u)+deg⁡G(v)≥2δ(G)≥2⋅n2=n\deg_G(u)+\deg_G(v)\ge2\delta(G)\ge2\cdot\frac n2=nが成り立つ。隣接しない相異なる二頂点が存在しない場合、Ore の条件は空虚に成り立つ。いずれの場合もGGは Ore の条件を満たすから、定理 2.1よりGGは Hamilton 閉路をもつ。▨

注意 3.2 (整数の条件としての Dirac の条件). 次数は整数であるから、nnが奇数のときδ(G)≥n/2\delta(G)\ge n/2はδ(G)≥(n+1)/2\delta(G)\ge(n+1)/2と同値である。実際、nnが奇数ならばn/2n/2は整数ではなく、n/2n/2以上の最小の整数は(n+1)/2(n+1)/2である。nnが偶数のときはn/2n/2が整数であるから、δ(G)≥n/2\delta(G)\ge n/2がそのまま整数についての条件になる。

4 具体例

例 4.1 (Ore の定理の証明に現れる回転の実行).V={1,2,3,4,5}V=\{1,2,3,4,5\}とし、EEをVVの二元部分集合全体から{1,2}\{1,2\}と{3,4}\{3,4\}を除いたものとする。すなわちE={13,14,15,23,24,25,35,45}E=\{13,14,15,23,24,25,35,45\}であり、∣E∣=(52)−2=8\lvert E\rvert=\binom52-2=8である。次数はdeg⁡(1)=∣{3,4,5}∣=3,deg⁡(2)=3,deg⁡(3)=∣{1,2,5}∣=3,deg⁡(4)=3,deg⁡(5)=∣{1,2,3,4}∣=4\deg(1)=\lvert\{3,4,5\}\rvert=3,\quad\deg(2)=3,\quad\deg(3)=\lvert\{1,2,5\}\rvert=3,\quad\deg(4)=3,\quad\deg(5)=\lvert\{1,2,3,4\}\rvert=4である。次数の総和は3+3+3+3+4=16=2⋅83+3+3+3+4=16=2\cdot8であり、§D2.7 定理 1.2と一致する。

隣接しない相異なる二頂点は{1,2}\{1,2\}と{3,4}\{3,4\}の二組だけであり、次数の和はいずれも3+3=6≥5=n3+3=6\ge5=nである。ゆえに Ore の条件が成り立つ。

証明の手順をたどる。隣接しない二頂点としてu=1u=1、v=2v=2を取る。G+=G+12G^{+}=G+12において、1,2,3,5,4,11,2,3,5,4,1は Hamilton 閉路である。実際、辺1212(新たに加えた辺)、2323、3535、5454、4141はいずれもG+G^{+}の辺である。この閉路から辺1212を取り除くと、11から22への Hamilton 道x1=1,x2=4,x3=5,x4=3,x5=2x_1=1,\quad x_2=4,\quad x_3=5,\quad x_4=3,\quad x_5=2を得る。実際、1414、4545、5353、3232はいずれもEEに属する。

添字集合を計算する。x1=1x_1=1であるからI={i: 2≤i≤5, 1xi∈E}={2,3,4}I=\{i:\ 2\le i\le5,\ 1x_i\in E\}=\{2,3,4\}である(x2=4x_2=4で14∈E14\in E、x3=5x_3=5で15∈E15\in E、x4=3x_4=3で13∈E13\in E、x5=2x_5=2で12∉E12\notin E)。∣I∣=3=deg⁡(1)\lvert I\rvert=3=\deg(1)である。x5=2x_5=2であるからJ={i: 2≤i≤5, xi−12∈E}={3,4,5}J=\{i:\ 2\le i\le5,\ x_{i-1}2\in E\}=\{3,4,5\}である(x1=1x_1=1で12∉E12\notin E、x2=4x_2=4で24∈E24\in E、x3=5x_3=5で25∈E25\in E、x4=3x_4=3で23∈E23\in E)。∣J∣=3=deg⁡(2)\lvert J\rvert=3=\deg(2)である。

∣I∣+∣J∣=6≥5=n\lvert I\rvert+\lvert J\rvert=6\ge5=nであり、∣{2,3,4,5}∣=4=n−1\lvert\{2,3,4,5\}\rvert=4=n-1であるから、I∩J={3,4}I\cap J=\{3,4\}は空でない。i=3i=3を取ると、証明が与える閉路はx1, x2, x5, x4, x3, x1,すなわち1, 4, 2, 3, 5, 1x_1,\ x_2,\ x_5,\ x_4,\ x_3,\ x_1,\qquad\text{すなわち}\qquad1,\ 4,\ 2,\ 3,\ 5,\ 1である。用いる辺は1414、4242、2323、3535、5151であり、いずれもEEに属する。55頂点をすべて一度ずつ通るので、これはGGの Hamilton 閉路である。i=4i=4を取ると閉路1,4,5,2,3,11,4,5,2,3,1が得られ、用いる辺1414、4545、5252、2323、3131もすべてEEに属する。

例 4.2 (条件の下限). Ore の条件のnnをn−1n-1へ下げることはできない.V={a1,a2}⊔{b1,b2,b3}V=\{a_1,a_2\}\sqcup\{b_1,b_2,b_3\}とし、aia_iとbjb_jをすべて結んだ完全二部グラフK2,3K_{2,3}を考える。n=5n=5、deg⁡(ai)=3\deg(a_i)=3、deg⁡(bj)=2\deg(b_j)=2であり、辺数は66である。隣接しない相異なる二頂点は、同じ部に属する二頂点である。{a1,a2}\{a_1,a_2\}の次数の和は3+3=6≥53+3=6\ge5であり、{bi,bj}\{b_i,b_j\}の次数の和は2+2=42+2=4である。したがって、隣接しない二頂点の次数の和の最小値は4=n−14=n-1である。

一方、K2,3K_{2,3}は Hamilton 閉路をもたない。K2,3K_{2,3}は二部グラフであるから§D2.7 定理 5.3より奇数長の閉路をもたないが、55頂点の Hamilton 閉路は長さ55で奇数だからである。ゆえに、Ore の条件の右辺をn−1n-1へ下げると結論は成り立たない。

Dirac の条件のn/2n/2を下げることはできない.n=6n=6とし、V={1,2,3}⊔{4,5,6}V=\{1,2,3\}\sqcup\{4,5,6\}の各部を完全グラフにし、部の間には辺を張らないグラフGGを考える。各頂点の次数は22であるからδ(G)=2=n/2−1\delta(G)=2=n/2-1である。しかし11と44は互いに到達可能ではなく、GGは連結ではない(§D2.7 定義 2.3)。Hamilton 閉路が存在すれば、その閉路に沿って任意の二頂点の間に歩道が得られてGGは連結になるから、GGは Hamilton 閉路をもたない。ゆえに、Dirac の条件をδ(G)≥n/2−1\delta(G)\ge n/2-1へ弱めると結論は成り立たない。

十分条件であって必要条件ではない. 長さ55の閉路C5C_5は Hamilton 閉路(C5C_5自身)をもつが、すべての頂点の次数が22であり、隣接しない二頂点の次数の和は4<5=n4<5=nである。ゆえに Ore の条件は成り立たない。

5 演習

問題 5.1.

  1. 定理 2.1の証明で、辺数が最大の反例を取る段階を、頂点集合を固定する理由まで含めて書き下せ。頂点集合を固定しないと、最大値の存在をどのように保証することができなくなるかを述べよ。
  2. 定理 2.1の証明でI∩J≠∅I\cap J\ne\varnothingを導く一手を、IIとJJの元の個数と、{2,…,n}\{2,\dots,n\}の元の個数を明示して書き下せ。さらに、IIとJJをいずれも{1,…,n}\{1,\dots,n\}の部分集合として定義した場合に、この一手が成り立たなくなる理由を述べよ。
  3. 定理 2.1の証明で構成した閉路について、i∈I∩Ji\in I\cap Jのiiが22になり得ないことを示す議論を再現せよ。もしi=2i=2を許すと、構成した列がどの点で閉路にならないかを述べよ。
  4. 定理 2.1の結論を「GGは Hamilton 道をもつ」に弱めた主張を、Ore の条件の右辺をn−1n-1にした仮定のもとで証明せよ。証明では、GGに新しい頂点wwを加えてVVのすべての頂点と結んだグラフへ定理 2.1を適用する道筋を用いてよい。
  5. 系 3.1の証明を、nnが奇数の場合と偶数の場合に分けて、次数が整数であることをどこで用いるかまで含めて書き直せ。
  6. n=6n=6の有限単純グラフで、Ore の条件を満たすが Dirac の条件を満たさないものを一つ構成し、定理 2.1が与える Hamilton 閉路を実際に一つ書き下せ。

7 扱った範囲と次の記事

本記事では、Ore の条件から Hamilton 閉路の存在を完全に証明し、Dirac の条件をその系として導いた。Hamilton 閉路をもつことの必要十分条件、閉包による一般化、Hamilton 閉路を求めるアルゴリズムおよびその計算量は扱っていない。次の記事では、頂点彩色の個数を数える関数を定め、辺の削除と縮約による漸化式からその多項式表示を導く。

参考文献

  1. Reinhard Diestel, Graph Theory, 6th ed., Graduate Texts in Mathematics 173, Springer, Berlin, 2025.Hamilton 閉路に関する次数条件の定式化と、Ore の条件から Dirac の条件を導く関係を参考にした。
  2. Douglas B. West, Introduction to Graph Theory, 2nd ed., Prentice Hall, 2001.辺数最大の反例を取る方法と、Hamilton 道からの回転による証明の構成を参考にした。

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