§E13.8彩色多項式

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有限単純無向グラフGGの彩色数χ(G)\chi(G)は、正則な頂点彩色に必要な色の個数の最小値であった(§D2.12 定義 2.1)。彩色数は「彩色が存在するかどうか」だけを見る量である。これに対し、色の個数kkを与えたときの正則な彩色の個数そのものを考えると、kkについての多項式が現れる。

本記事では、この個数をχ(G;k)\chi(G;k)と書き、一本の辺を削除したグラフと縮約したグラフの間の漸化式χ(G;k)=χ(G−e;k)−χ(G/e;k)\chi(G;k)=\chi(G-e;k)-\chi(G/e;k)を証明する。この漸化式から、χ(G;k)\chi(G;k)がkkについての次数nnのモニック整数係数多項式であることを導き、木と閉路について具体的に計算する。

記号について注意する。χ(G)\chi(G)は彩色数、χ(G;k)\chi(G;k)は本記事で定める彩色多項式であり、両者は別の対象である。

1 縮約のための規約

辺を縮約すると、単純グラフから出発しても、途中の構成の段階では二頂点を結ぶ辺が複数現れることがある。この状況を正確に扱うために、多重辺とループを許すグラフを一時的に導入する。

定義 1.1. 多重グラフ (multigraph) とは、有限集合VV(頂点集合 (vertex set))、有限集合EE(辺集合 (edge set))、および各辺e∈Ee\in Eに対するVVの二つの頂点ueu_e、vev_eの非順序対の指定からなる組をいう。ue=veu_e=v_eである辺eeをループ (loop) という。e≠fe\ne fかつ{ue,ve}={uf,vf}\{u_e,v_e\}=\{u_f,v_f\}であるとき、eeとffは互いに平行 (parallel) であるという。ループをもたず、平行な辺の組ももたない多重グラフは、§D2.7 定義 1.1の意味の有限単純無向グラフと同一視することができる。

kkを正の整数とする。写像c ⁣:V→{1,…,k}c\colon V\to\{1,\dots,k\}が多重グラフGGの kk色による正則な彩色 (proper k-coloring) であるとは、すべての辺e∈Ee\in Eについてc(ue)≠c(ve)c(u_e)\ne c(v_e)が成り立つことをいう。GGのkk色による正則な彩色の個数をχ(G;k)\chi(G;k)と書く。

GGが単純グラフであるとき、この定義は§D2.12 定義 2.1の頂点彩色の定義と一致する。多重グラフに広げたことによる帰結は、次の二つである。この二つを、以下の主張より前に確定しておく。

命題 1.2.GGを多重グラフ、kkを正の整数とする。

  1. GGがループをもつならば、GGのkk色による正則な彩色は一つも存在しない。したがってχ(G;k)=0\chi(G;k)=0である。
  2. GGの平行な辺の組から一本だけを残して他をすべて取り除いて得られる多重グラフをG′G'とすると、GGの正則な彩色とG′G'の正則な彩色は写像として同じものであり、χ(G′;k)=χ(G;k)\chi(G';k)=\chi(G;k)が成り立つ。

証明.(1)を示す。eeをループとし、w=ue=vew=u_e=v_eと置く。c ⁣:V→{1,…,k}c\colon V\to\{1,\dots,k\}が正則な彩色であれば、辺eeについてc(ue)≠c(ve)c(u_e)\ne c(v_e)、すなわちc(w)≠c(w)c(w)\ne c(w)が成り立たなければならない。これはどの写像ccについても成り立たない。ゆえに正則な彩色は存在せず、その個数は00である。

(2)を示す。GGとG′G'は頂点集合が同じであり、G′G'の辺はGGの辺でもある。ccをGGの正則な彩色とすると、G′G'のすべての辺について条件が成り立つから、ccはG′G'の正則な彩色である。逆にccをG′G'の正則な彩色とし、eeをGGの任意の辺とする。G′G'の構成より、{uf,vf}={ue,ve}\{u_f,v_f\}=\{u_e,v_e\}を満たすG′G'の辺ffが存在する。ccはffについて条件を満たすからc(ue)≠c(ve)c(u_e)\ne c(v_e)である。ゆえにccはGGの正則な彩色である。二つの集合が一致するので、その元の個数も一致する。▨

この二つは、性格の異なる主張である。ループをもつグラフの正則な彩色の個数が零であることは、規約ではなく、定義から導かれる事実である((1))。これに対し、平行な辺を一本へまとめることは規約であり、その規約のもとで正則な彩色の個数が変わらないことを保証するのが(2)である。以下では、この平行辺の規約のもとで辺の縮約を定義する。削除と縮約による漸化式が成り立つためには、この規約が必要である。

2 辺の削除と縮約

定義 2.1.G=(V,E)G=(V,E)を有限単純無向グラフとし、e=uv∈Ee=uv\in Eとする。

  1. G−e=(V,E∖{e})G-e=(V,E\setminus\{e\})を、GGから辺eeを削除 (edge deletion) して得られるグラフという。
  2. wwをVVに属さない新しい頂点とし、V/e=(V∖{u,v})∪{w}V/e=(V\setminus\{u,v\})\cup\{w\}と置く。写像π ⁣:V→V/e\pi\colon V\to V/eをπ(u)=π(v)=w,π(x)=x  (x∈V∖{u,v})\pi(u)=\pi(v)=w,\qquad \pi(x)=x\ \ (x\in V\setminus\{u,v\})で定める。各f∈E∖{e}f\in E\setminus\{e\}の端点をxf,yfx_f,y_fとし、非順序対{π(xf),π(yf)}\{\pi(x_f),\pi(y_f)\}を端点の対とする辺を集める。ただし、端点の対が一致する辺は一本へまとめる。こうして得られる頂点集合V/eV/e上のグラフをG/eG/eと書き、GGから辺eeを縮約 (edge contraction) して得られるグラフという。

命題 2.2.G=(V,E)G=(V,E)を有限単純無向グラフとし、n=∣V∣n=\lvert V\rvert、m=∣E∣m=\lvert E\rvert、e=uv∈Ee=uv\in Eとする。このときG−eG-eとG/eG/eはいずれも有限単純無向グラフであり、∣V(G−e)∣=n,∣E(G−e)∣=m−1,∣V(G/e)∣=n−1,∣E(G/e)∣≤m−1\lvert V(G-e)\rvert=n,\quad\lvert E(G-e)\rvert=m-1,\qquad\lvert V(G/e)\rvert=n-1,\quad\lvert E(G/e)\rvert\le m-1が成り立つ。

証明.G−eG-eはGGと同じ頂点集合をもち、辺集合がEEの部分集合であるから単純グラフであり、辺数はm−1m-1である。

G/eG/eについて、まずループが生じないことを示す。f∈E∖{e}f\in E\setminus\{e\}についてπ(xf)=π(yf)\pi(x_f)=\pi(y_f)が成り立つとすると、π\piの定義よりxf≠yfx_f\ne y_fを満たすのは{xf,yf}={u,v}\{x_f,y_f\}=\{u,v\}の場合に限る。GGは単純グラフであるからuuとvvを結ぶ辺はeeだけであり、f≠ef\ne eに矛盾する。ゆえにG/eG/eはループをもたない。平行な辺は定義において一本へまとめているから、G/eG/eは単純グラフである。

頂点数は∣V/e∣=(n−2)+1=n−1\lvert V/e\rvert=(n-2)+1=n-1である。辺集合はE∖{e}E\setminus\{e\}の各元へ端点の対を対応させた結果を集めたものであるから、その個数は∣E∖{e}∣=m−1\lvert E\setminus\{e\}\rvert=m-1以下である。▨

3 削除と縮約による漸化式

3.1 証明方針

G−eG-eの正則な彩色を、辺eeの両端点u,vu,vに異なる色を与えるものと、同じ色を与えるものへ分ける。二つの部分は互いに素であり、合併がG−eG-eの正則な彩色の全体であるから、加法原理を適用することができる。

第一の部分は、定義をたどるとちょうどGGの正則な彩色の全体に一致する。第二の部分については、uuとvvが同じ色をもつことから、彩色は縮約後の頂点集合V/eV/e上の写像を経由して定まる。この対応がG/eG/eの正則な彩色との全単射になることを、辺ごとに条件を突き合わせて示す。二つの個数を加えて移項すれば、主張の漸化式を得る。

定理 3.1 (削除・縮約の漸化式).G=(V,E)G=(V,E)を有限単純無向グラフとし、e=uv∈Ee=uv\in Eとする。任意の正の整数kkに対しχ(G;k)=χ(G−e;k)−χ(G/e;k)\chi(G;k)=\chi(G-e;k)-\chi(G/e;k)が成り立つ。

証明.kkを正の整数とし、X\mathcal XをG−eG-eのkk色による正則な彩色の全体とする。X1={c∈X: c(u)≠c(v)},X2={c∈X: c(u)=c(v)}\mathcal X_1=\{c\in\mathcal X:\ c(u)\ne c(v)\},\qquad\mathcal X_2=\{c\in\mathcal X:\ c(u)=c(v)\}と置く。二つは互いに素であり、合併はX\mathcal Xに等しい。ゆえに§D2.2 定理 2.1よりχ(G−e;k)=∣X1∣+∣X2∣\chi(G-e;k)=\lvert\mathcal X_1\rvert+\lvert\mathcal X_2\rvertである。

∣X1∣=χ(G;k)\lvert\mathcal X_1\rvert=\chi(G;k)であること.GGの辺集合はEEであり、G−eG-eの辺集合はE∖{e}E\setminus\{e\}である。写像c ⁣:V→{1,…,k}c\colon V\to\{1,\dots,k\}がGGの正則な彩色であることは、E∖{e}E\setminus\{e\}のすべての辺について条件が成り立ち、かつ辺eeについてc(u)≠c(v)c(u)\ne c(v)が成り立つことと同値である。これはちょうどc∈X1c\in\mathcal X_1であることを意味する。

∣X2∣=χ(G/e;k)\lvert\mathcal X_2\rvert=\chi(G/e;k)であること.Y\mathcal YをG/eG/eのkk色による正則な彩色の全体とし、写像Φ ⁣:Y→{c ⁣:V→{1,…,k}},Φ(c′)=c′∘π\Phi\colon\mathcal Y\to\{c\colon V\to\{1,\dots,k\}\},\qquad\Phi(c')=c'\circ\piを考える。π\piは定義 2.1の写像である。

まずΦ(c′)∈X2\Phi(c')\in\mathcal X_2を示す。c=c′∘πc=c'\circ\piと置くとc(u)=c′(w)=c(v)c(u)=c'(w)=c(v)である。f∈E∖{e}f\in E\setminus\{e\}の端点をxf,yfx_f,y_fとすると、{π(xf),π(yf)}\{\pi(x_f),\pi(y_f)\}はG/eG/eのある辺の端点の対であるから、c′c'が正則であることよりc′(π(xf))≠c′(π(yf))c'(\pi(x_f))\ne c'(\pi(y_f))、すなわちc(xf)≠c(yf)c(x_f)\ne c(y_f)である。ゆえにccはG−eG-eの正則な彩色であり、c(u)=c(v)c(u)=c(v)を満たすからc∈X2c\in\mathcal X_2である。

Φ\Phiは単射である。実際、π\piは全射であるから、c′∘πc'\circ\piが定まればc′c'の各点での値が定まる。

Φ\PhiはX2\mathcal X_2の上への全射である。c∈X2c\in\mathcal X_2をとり、c′(w)=c(u)=c(v),c′(x)=c(x)  (x∈V∖{u,v})c'(w)=c(u)=c(v),\qquad c'(x)=c(x)\ \ (x\in V\setminus\{u,v\})によってc′ ⁣:V/e→{1,…,k}c'\colon V/e\to\{1,\dots,k\}を定めると、定義からc′∘π=cc'\circ\pi=cである。c′c'がG/eG/eの正則な彩色であることを示す。G/eG/eの任意の辺は、あるf∈E∖{e}f\in E\setminus\{e\}について{π(xf),π(yf)}\{\pi(x_f),\pi(y_f)\}を端点の対にもつ。ccはG−eG-eの正則な彩色であるからc(xf)≠c(yf)c(x_f)\ne c(y_f)であり、c′(π(xf))=c(xf)c'(\pi(x_f))=c(x_f)かつc′(π(yf))=c(yf)c'(\pi(y_f))=c(y_f)であるからc′(π(xf))≠c′(π(yf))c'(\pi(x_f))\ne c'(\pi(y_f))である。ゆえにc′∈Yc'\in\mathcal Yであり、Φ(c′)=c\Phi(c')=cである。

以上よりΦ\PhiはY\mathcal YからX2\mathcal X_2への全単射であり、§D2.2 命題 1.5より∣X2∣=∣Y∣=χ(G/e;k)\lvert\mathcal X_2\rvert=\lvert\mathcal Y\rvert=\chi(G/e;k)である。

したがってχ(G−e;k)=χ(G;k)+χ(G/e;k)\chi(G-e;k)=\chi(G;k)+\chi(G/e;k)であり、移項して主張を得る。▨

4 彩色多項式の存在

彩色多項式を一意に定まる対象として扱うために、多項式についての基本的な事実を先に示しておく。上流に引用することのできる主張が無いので、本記事が証明する。

補題 4.1. 有理数を係数とする一変数多項式hhが、すべての正の整数kkに対しh(k)=0h(k)=0を満たすならば、hhは零多項式である。

証明. まず、次の主張を次数ddについての累積帰納法(§D2.1 命題 1.2)で示す。

次数ddの零でない多項式ggに対し、g(a)=0g(a)=0を満たす有理数aaは高々dd個である。

d=0d=0のときggは零でない定数であるから、g(a)=0g(a)=0を満たすaaは存在しない。

d≥1d\ge1とする。g(a)=0g(a)=0を満たすaaが存在しなければ主張は成り立つ。存在するとして、その一つをaaとする。j≥1j\ge1に対する恒等式Xj−aj=(X−a)∑i=0j−1a j−1−iXiX^{j}-a^{j}=(X-a)\sum_{i=0}^{j-1}a^{\,j-1-i}X^{i}をg(X)=∑j=0dcjXjg(X)=\sum_{j=0}^{d}c_jX^{j}の各項へ適用すると、g(a)=0g(a)=0よりg(X)=g(X)−g(a)=∑j=0dcj(Xj−aj)=(X−a) q(X),q(X)=∑j=1dcj∑i=0j−1a j−1−iXig(X)=g(X)-g(a)=\sum_{j=0}^{d}c_j\left(X^{j}-a^{j}\right)=(X-a)\,q(X),\qquad q(X)=\sum_{j=1}^{d}c_j\sum_{i=0}^{j-1}a^{\,j-1-i}X^{i}と書くことができる。qqにおけるXd−1X^{d-1}の係数はj=dj=d、i=d−1i=d-1の項だけから生じてcdc_dに等しく、cd≠0c_d\ne0であるからqqは次数d−1d-1の零でない多項式である。b≠ab\ne aがg(b)=0g(b)=0を満たすならば(b−a)q(b)=0(b-a)q(b)=0かつb−a≠0b-a\ne0であるからq(b)=0q(b)=0である。帰納法の仮定よりq(b)=0q(b)=0を満たすbbは高々d−1d-1個であるから、g(a)=0g(a)=0を満たすaaは高々dd個である。

さてhhが零多項式ではないとし、その次数をddとする。上の主張よりh(a)=0h(a)=0を満たす有理数aaは高々dd個である。しかし仮定よりhhはすべての正の整数でこの条件を満たし、正の整数は無限に存在するから、矛盾である。ゆえにhhは零多項式である。▨

4.1 証明方針

辺数mmについての累積帰納法による。辺をもたないグラフでは、各頂点を独立に塗ることができるので彩色の個数はknk^{n}であり、これはkkの次数nnのモニック多項式である。辺が一本以上あるときは、辺eeを一本取り、定理 3.1を用いる。G−eG-eは頂点数がnn、辺数がm−1m-1であり、G/eG/eは頂点数がn−1n-1、辺数がm−1m-1以下である。帰納法の仮定から前者は次数nn、後者は次数n−1n-1のモニック多項式で表され、差を取ると次数nnのモニック多項式が残る。G/eG/eの辺数はm−1m-1とは限らないので、ここで用いる帰納法は累積帰納法である(§D2.1 命題 1.2)。

定理 4.2.G=(V,E)G=(V,E)を有限単純無向グラフとし、n=∣V∣≥1n=\lvert V\rvert\ge1とする。整数を係数とする一変数多項式pGp_Gであって、すべての正の整数kkに対しχ(G;k)=pG(k)\chi(G;k)=p_G(k)を満たすものが存在する。pGp_Gは次数nnのモニック多項式であり、この条件を満たす多項式は一意である。

証明. 一意性.ppとqqがともに条件を満たすとすると、多項式h=p−qh=p-qはすべての正の整数kkに対しh(k)=χ(G;k)−χ(G;k)=0h(k)=\chi(G;k)-\chi(G;k)=0を満たす。補題 4.1よりhhは零多項式であり、p=qp=qである。

存在. 辺数m=∣E∣m=\lvert E\rvertについての累積帰納法(§D2.1 命題 1.2)で示す。

m=0m=0のとき、辺についての条件は空であるから、VVから{1,…,k}\{1,\dots,k\}への写像はすべて正則な彩色である。§D2.2 定理 2.3より、その個数はknk^{n}である。pG(X)=Xnp_G(X)=X^{n}と置けば、これは次数nnのモニック整数係数多項式である。

m≥1m\ge1とし、辺数がmmより小さいすべての有限単純無向グラフについて主張が成り立つと仮定する。辺e=uv∈Ee=uv\in Eを一つ取る。辺が存在するのでn≥2n\ge2である。命題 2.2より、G−eG-eはnn頂点m−1m-1辺の単純グラフ、G/eG/eはn−1n-1頂点で辺数がm−1m-1以下の単純グラフである。n−1≥1n-1\ge1であるから、いずれにも帰納法の仮定を適用することができ、次数nnのモニック整数係数多項式pG−ep_{G-e}と次数n−1n-1のモニック整数係数多項式pG/ep_{G/e}が存在する。

pG=pG−e−pG/ep_G=p_{G-e}-p_{G/e}と置く。整数係数多項式の差であるからpGp_Gは整数係数である。deg⁡pG−e=n>n−1=deg⁡pG/e\deg p_{G-e}=n>n-1=\deg p_{G/e}であるから、pGp_Gの次数はnnであり、XnX^{n}の係数はpG−ep_{G-e}のそれに等しく11である。すなわちpGp_Gは次数nnのモニック多項式である。

任意の正の整数kkに対し、定理 3.1と帰納法の仮定よりχ(G;k)=χ(G−e;k)−χ(G/e;k)=pG−e(k)−pG/e(k)=pG(k)\chi(G;k)=\chi(G-e;k)-\chi(G/e;k)=p_{G-e}(k)-p_{G/e}(k)=p_G(k)が成り立つ。以上で存在が示された。▨

一意性により、この多項式はGGだけから定まる。この多項式をGGの彩色多項式といい、正の整数における値と一致することから、同じ記号χ(G;k)\chi(G;k)で表す。

命題 4.3.GGを有限単純無向グラフとする。χ(G)\chi(G)は、χ(G;k)>0\chi(G;k)>0を満たす最小の正の整数kkに等しい。

証明.§D2.12 定義 2.1より、χ(G)\chi(G)はGGがkk色による正則な彩色をもつような最小の正の整数kkである。GGがkk色による正則な彩色をもつことと、その個数χ(G;k)\chi(G;k)が正であることは同値である。ゆえに二つの最小値は一致する。▨

5 木と閉路の彩色多項式

命題 5.1.TTをnn頂点の木(n≥1n\ge1)とすると、任意の正の整数kkに対しχ(T;k)=k(k−1)n−1\chi(T;k)=k(k-1)^{n-1}が成り立つ。

証明.nnについての帰納法による。

n=1n=1のとき、TTは辺をもたない一頂点のグラフであるからχ(T;k)=k=k(k−1)0\chi(T;k)=k=k(k-1)^{0}である。

n≥2n\ge2とする。§D2.7 補題 3.2よりTTは次数11の頂点vvをもつ。vvの唯一の隣接頂点をuuとし、T−vT-vをTTから頂点vvと辺uvuvを取り除いて得られるグラフとする。

T−vT-vはn−1n-1頂点の木である。実際、T−vT-vはTTの部分グラフであるから閉路をもたない。連結性については、x,y∈V(T)∖{v}x,y\in V(T)\setminus\{v\}を結ぶTTの道を取ると、vvはその道の内部の頂点ではない。内部の頂点は道の中で二本の辺に接続するのでTTにおける次数が22以上になり、deg⁡T(v)=1\deg_T(v)=1に反するからである。またvvは端点でもないので、この道はT−vT-vに残る。ゆえにT−vT-vは連結であり、§D2.7 定義 3.1より木である。

TTのkk色による正則な彩色ccを、T−vT-vへの制限c∣V∖{v}c|_{V\setminus\{v\}}によって分類する。ccがTTの正則な彩色であることは、c∣V∖{v}c|_{V\setminus\{v\}}がT−vT-vの正則な彩色であり、かつc(v)≠c(u)c(v)\ne c(u)が成り立つことと同値である。実際、TTの辺はT−vT-vの辺と辺uvuvからなる。

したがって、T−vT-vの正則な彩色c0c_0を一つ固定すると、c0c_0を制限としてもつTTの正則な彩色は、c(v)∈{1,…,k}∖{c0(u)}c(v)\in\{1,\dots,k\}\setminus\{c_0(u)\}の選び方に一対一に対応し、ちょうどk−1k-1個である。相異なるc0c_0に対応する彩色の集合は互いに素であり、それらの合併がTTの正則な彩色の全体であるから、§D2.2 定理 2.1よりχ(T;k)=(k−1) χ(T−v;k)\chi(T;k)=(k-1)\,\chi(T-v;k)が成り立つ。帰納法の仮定よりχ(T−v;k)=k(k−1)n−2\chi(T-v;k)=k(k-1)^{n-2}であるからχ(T;k)=(k−1)⋅k(k−1)n−2=k(k−1)n−1\chi(T;k)=(k-1)\cdot k(k-1)^{n-2}=k(k-1)^{n-1}を得る。▨

閉路の彩色多項式を求める際に道が現れるので、道の場合を系として取り出しておく。

系 5.2.n≥1n\ge1とし、PnP_nをnn頂点の道、すなわち相異なる頂点v1,…,vnv_1,\dots,v_nと辺v1v2,…,vn−1vnv_1v_2,\dots,v_{n-1}v_nからなるグラフとする。このとき任意の正の整数kkに対しχ(Pn;k)=k(k−1)n−1\chi(P_n;k)=k(k-1)^{n-1}が成り立つ。

証明.PnP_nは連結であり、閉路をもたない。ゆえに§D2.7 定義 3.1よりPnP_nは木である。頂点数はnnであるから、命題 5.1より主張を得る。▨

命題 5.3.n≥3n\ge3とし、CnC_nを長さnnの閉路そのものからなるグラフ、すなわち頂点v1,…,vnv_1,\dots,v_nと辺v1v2,…,vn−1vn,vnv1v_1v_2,\dots,v_{n-1}v_n,v_nv_1からなるグラフとする。このとき任意の正の整数kkに対しχ(Cn;k)=(k−1)n+(−1)n(k−1)\chi(C_n;k)=(k-1)^{n}+(-1)^{n}(k-1)が成り立つ。

証明.nnについての帰納法による。以下、e=v1v2e=v_1v_2とする。Cn−eC_n-eは頂点v2,v3,…,vn,v1v_2,v_3,\dots,v_n,v_1をこの順に結ぶnn頂点の道であるから、系 5.2よりχ(Cn−e;k)=k(k−1)n−1\chi(C_n-e;k)=k(k-1)^{n-1}である。

n=3n=3のとき.C3/eC_3/eを求める。v1v_1とv2v_2を同一視して得られる頂点をwwとすると、辺v2v3v_2v_3とv3v1v_3v_1はいずれも{w,v3}\{w,v_3\}を端点の対にもつので一本へまとめられる。ゆえにC3/eC_3/eは二頂点w,v3w,v_3と一本の辺からなるグラフであり、これは22頂点の木である。命題 5.1よりχ(C3/e;k)=k(k−1)\chi(C_3/e;k)=k(k-1)である。定理 3.1よりχ(C3;k)=k(k−1)2−k(k−1)=k(k−1)(k−2)\chi(C_3;k)=k(k-1)^{2}-k(k-1)=k(k-1)(k-2)である。一方(k−1)3+(−1)3(k−1)=(k−1)((k−1)2−1)=(k−1)(k2−2k)=k(k−1)(k−2)(k-1)^{3}+(-1)^{3}(k-1)=(k-1)\bigl((k-1)^{2}-1\bigr)=(k-1)(k^{2}-2k)=k(k-1)(k-2)であるから、n=3n=3で主張が成り立つ。

n≥4n\ge4のとき.Cn/eC_n/eを求める。v1v_1とv2v_2を同一視して得られる頂点をwwとすると、辺v2v3v_2v_3は{w,v3}\{w,v_3\}、辺vnv1v_nv_1は{vn,w}\{v_n,w\}を端点の対にもち、n≥4n\ge4よりv3≠vnv_3\ne v_nであるから、この二本は平行ではない。残る辺v3v4,…,vn−1vnv_3v_4,\dots,v_{n-1}v_nはπ\piで変わらない。ゆえにCn/eC_n/eは頂点w,v3,v4,…,vnw,v_3,v_4,\dots,v_nをこの順に結んでwwへ戻る長さn−1n-1の閉路であり、n−1≥3n-1\ge3であるからCn−1C_{n-1}と同型である。

定理 3.1と帰納法の仮定より

χ(Cn;k)=k(k−1)n−1−χ(Cn−1;k)=k(k−1)n−1−(k−1)n−1−(−1)n−1(k−1)=(k−1)n−1(k−1)+(−1)n(k−1)=(k−1)n+(−1)n(k−1)\begin{aligned} \chi(C_n;k)&=k(k-1)^{n-1}-\chi(C_{n-1};k)\\ &=k(k-1)^{n-1}-(k-1)^{n-1}-(-1)^{n-1}(k-1)\\ &=(k-1)^{n-1}(k-1)+(-1)^{n}(k-1)\\ &=(k-1)^{n}+(-1)^{n}(k-1) \end{aligned}

を得る。▨

6 具体例

例 6.1 (小さなグラフでの再計算). 星グラフ. 中心uuと三つの葉v1,v2,v3v_1,v_2,v_3からなる木TT(n=4n=4)を考える。命題 5.1よりχ(T;k)=k(k−1)3\chi(T;k)=k(k-1)^{3}であり、k=3k=3では3⋅23=243\cdot2^{3}=24である。直接数えると、uuの色は33通り、各葉の色はuuの色を除く22通りで、葉どうしには辺がないから独立に選ぶことができ、3⋅2⋅2⋅2=243\cdot2\cdot2\cdot2=24である。両者は一致する。

三角形.C3=K3C_3=K_3について命題 5.3はχ(C3;k)=k(k−1)(k−2)\chi(C_3;k)=k(k-1)(k-2)を与え、k=3k=3では3⋅2⋅1=63\cdot2\cdot1=6である。直接数えると、三頂点に相異なる三色を割り当てる方法の総数は3!=63!=6であり、一致する。

四角形.C4C_4について命題 5.3はχ(C4;k)=(k−1)4+(k−1)\chi(C_4;k)=(k-1)^{4}+(k-1)を与え、k=3k=3では24+2=182^{4}+2=18である。直接数える。頂点をv1,v2,v3,v4v_1,v_2,v_3,v_4とし、この順に隣接しv4v_4とv1v_1も隣接するとする。v1v_1の色は33通り、v2v_2の色はv1v_1と異なる22通りである。v3v_3の色はv2v_2と異なる22通りであり、そのうち一つはv1v_1と同じ色、もう一つはv1v_1とも異なる色である。

  • v3v_3の色がv1v_1と同じ場合、v4v_4はv3v_3とv1v_1の色(同じ色である)を避ければよいから22通りである。
  • v3v_3の色がv1v_1と異なる場合、v4v_4は相異なる二色を避けるから11通りである。

ゆえにv1,v2v_1,v_2の各選び方に対してv3,v4v_3,v_4の選び方は1⋅2+1⋅1=31\cdot2+1\cdot1=3通りであり、総数は3⋅2⋅3=183\cdot2\cdot3=18である。多項式の値と一致する。

漸化式の検算.C4C_4の辺eeを一本取ると、C4−eC_4-eは44頂点の道であるから、系 5.2よりχ(C4−e;3)=3⋅23=24\chi(C_4-e;3)=3\cdot2^{3}=24であり、C4/e≅C3C_4/e\cong C_3であるからχ(C4/e;3)=6\chi(C_4/e;3)=6である。定理 3.1はχ(C4;3)=24−6=18\chi(C_4;3)=24-6=18を与え、上の直接計算と一致する。

彩色数との関係.χ(C4;1)=0+0=0\chi(C_4;1)=0+0=0、χ(C4;2)=1+1=2\chi(C_4;2)=1+1=2であるから、命題 4.3よりχ(C4)=2\chi(C_4)=2である。同様にχ(C3;1)=0\chi(C_3;1)=0、χ(C3;2)=2⋅1⋅0=0\chi(C_3;2)=2\cdot1\cdot0=0、χ(C3;3)=6>0\chi(C_3;3)=6>0であるからχ(C3)=3\chi(C_3)=3である。

7 演習

問題 7.1.

  1. 定理 3.1の証明で、X2\mathcal X_2からG/eG/eの正則な彩色を作る向きの構成を書き下し、その写像が正則性を保つことを、G/eG/eの辺ごとに確かめよ。
  2. 定理 3.1はGGが単純グラフであることをどこで用いているか。単純性を落としてuuとvvを結ぶ辺が二本ある多重グラフに対して同じ主張を述べると、どの段階で命題 1.2の規約が必要になるかを説明せよ。
  3. 定理 4.2の証明を、辺数についての帰納法から頂点数についての帰納法へ置き換えることを試み、置き換えることができない理由を、G−eG-eの頂点数に注目して述べよ。
  4. 定理 4.2の帰納法を強めて、pGp_GのXn−1X^{n-1}の係数が−m-mに等しいことを証明せよ。ここでmmはGGの辺数である。
  5. 命題 5.1の証明を、葉を取り除く代わりに定理 3.1を用いる形へ設計し直せ。木の辺eeについてT−eT-eが二つの木に分かれることと、T/eT/eがn−1n-1頂点の木であることを用いてよい。
  6. 命題 5.3の証明において、n=3n=3を別扱いにした理由を述べよ。n=3n=3でC3/eC_3/eが長さ22の閉路にならないことを、命題 1.2の規約に照らして説明せよ。

9 扱った範囲と次の記事

本記事では、正則な彩色の個数に対する削除・縮約の漸化式、彩色多項式の存在と一意性、および木と閉路の彩色多項式を証明した。彩色多項式の係数の符号の交代、零点の位置、Tutte 多項式への一般化、および負の整数における値の組合せ的解釈は扱っていない。次の記事では、彩色から極値問題へ移り、完全グラフを部分グラフとして含まないという条件のもとで辺数の最大値を決定する。

参考文献

  1. Norman L. Biggs, Algebraic Graph Theory, 2nd ed., Cambridge University Press, Cambridge, 1993.彩色多項式の定義、削除と縮約による漸化式、および木と閉路の彩色多項式を参考にした。
  2. Reinhard Diestel, Graph Theory, 6th ed., Graduate Texts in Mathematics 173, Springer, Berlin, 2025.頂点彩色と彩色数の定式化を参考にした。

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