§D3.2連立一次方程式と行基本変形

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未知数についての複数の等式を同時に満たす値を求める問題は、代数における基本的な問題の一つです。等式の本数や未知数の個数が増えると、解が存在するかどうか、存在するならただ一つに定まるかを見通すことは容易ではなく、体系的な手順が必要になります。この記事では、そのような等式の組を連立一次方程式と呼び、拡大係数行列と呼ばれる行列に対して行基本変形と呼ばれる操作を繰り返し施すことで解を求める手順を扱います。たとえば、二つの未知数についての二つの等式を同時に満たす値を求める問題も、連立一次方程式の一例です。拡大係数行列も行列の一種であり、前の記事で扱った行と列に対する記法をそのまま用います。行基本変形の性質や解の求め方について解説します。

1 連立一次方程式と拡大係数行列

定義 1.1.mmとnnを正の整数とし、実数aija_{ij}(1≤i≤m1 \le i \le m、1≤j≤n1 \le j \le n)と実数bib_i(1≤i≤m1 \le i \le m)が与えられているとする。未知数x1,…,xnx_1, \ldots, x_nについてのmm本の等式の組

{a11x1+a12x2+⋯+a1nxn=b1,⋮am1x1+am2x2+⋯+amnxn=bm\begin{cases} a_{11}x_1 + a_{12}x_2 + \cdots + a_{1n}x_n = b_1, \\ \vdots \\ a_{m1}x_1 + a_{m2}x_2 + \cdots + a_{mn}x_n = b_m \end{cases}

を、nn個の未知数についてのmm本の 連立一次方程式 (system of linear equations) という。(i,j)(i, j)成分がaija_{ij}であるm×nm \times n行列AAを、この連立一次方程式の 係数行列 (coefficient matrix) という。第ii成分がbib_iであるRm\mathbb{R}^mの元をb⃗\vec bと書き、AAの右に第n+1n+1列としてb⃗\vec bを並べて得られるm×(n+1)m \times (n+1)行列

[A∣b⃗]:=(a11a12⋯a1nb1⋮⋮⋮⋮am1am2⋯amnbm)[A \mid \vec b] := \left(\begin{array}{cccc|c} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} & b_1 \\ \vdots & \vdots & & \vdots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} & b_m \end{array}\right)

を、この連立一次方程式の 拡大係数行列 (augmented matrix) という。

Rn\mathbb{R}^nの元x⃗\vec xであって、その第jj成分をxjx_jとして上のmm本の等式がすべて成り立つものを、この連立一次方程式の 解 (solution) といい、解の全体からなるRn\mathbb{R}^nの部分集合を 解集合 (solution set) という。

b1=b2=⋯=bm=0b_1 = b_2 = \cdots = b_m = 0である連立一次方程式を 同次連立一次方程式 (homogeneous system of linear equations) という。同次連立一次方程式ではRn\mathbb{R}^nの零元0⃗\vec 0が解であり、これを 自明な解 (trivial solution) という。同次連立一次方程式の解であって0⃗\vec 0と異なるものを 非自明な解 (nontrivial solution) という。

x⃗∈Rn\vec x \in \mathbb{R}^nを列ベクトルとみなすと(§D3.1 定義 3.2)、積Ax⃗A\vec xが定まり、§D3.1 定義 3.1によりその第ii成分は∑j=1naijxj\sum_{j=1}^{n} a_{ij}x_jです。したがってx⃗\vec xが解であることとAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bが成り立つことは同値であり、以下では連立一次方程式をAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bと書きます。たとえば未知数x1,x2x_1, x_2についての連立一次方程式x1+2x2=5x_1 + 2x_2 = 5、3x1+4x2=63x_1 + 4x_2 = 6の拡大係数行列は、次の2×32 \times 3行列です。

(125346)\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 2 & 5 \\ 3 & 4 & 6 \end{array}\right)

2 行基本変形

定義 2.1.MMを実m×nm \times n行列とする。次の三種類の操作のそれぞれを、MMに対する 行基本変形 (elementary row operation) という。

  1. 相異なる行番号ppとqqを選び、第pp行と第qq行を入れ替える。
  2. 行番号ppと00でない実数ccを選び、第pp行のすべての成分をcc倍する。
  3. 相異なる行番号ppとqq、および実数ccを選び、第pp行の各成分に、第qq行の同じ列の成分のcc倍を加える。

いずれの操作の結果も実m×nm \times n行列である。

補題 2.2.MMを実m×nm \times n行列とし、MMに一回の行基本変形を施して得られる行列をM′M'とする。このとき、M′M'に施すとMMを与える同じ種類の行基本変形が存在する。すなわち、各行基本変形には同じ種類の逆操作が存在し、元の操作に続けて逆操作を施す合成は恒等になる。

証明.定義 2.1 (1)については同じ二つの行を入れ替える操作、定義 2.1 (2)については同じ行をc−1c^{-1}倍する操作、定義 2.1 (3)については第pp行に第qq行の−c-c倍を加える操作が逆操作を与える。これらが同じ種類の行基本変形であり、それぞれの合成がMMを与えることの成分による確認は演習とする(問題 5.2)。▨

命題 2.3.mmとnnを正の整数、A=(aij)A = (a_{ij})を実m×nm \times n行列、b⃗∈Rm\vec b \in \mathbb{R}^mとし、b⃗\vec bの第ii成分をbib_iと書く。拡大係数行列[A∣b⃗][A \mid \vec b]に一回の行基本変形を施して得られる行列の第11列から第nn列までを並べた行列をA′A'、第n+1n+1列をb⃗′\vec b'とする。このとき、Ax⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解集合とA′x⃗=b⃗′A'\vec x = \vec b'の解集合は一致する。[A∣b⃗][A \mid \vec b]に有限回の行基本変形を続けて得られる行列についても同じことが成り立つ。

証明.x⃗∈Rn\vec x \in \mathbb{R}^nをAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解とし、その第jj成分をxjx_jと書く。仮定より、1≤i≤m1 \le i \le mを満たすどのiiについても∑j=1naijxj=bi\sum_{j=1}^{n} a_{ij}x_j = b_iが成り立つ。A′A'の(i,j)(i, j)成分をaij′a'_{ij}、b⃗′\vec b'の第ii成分をbi′b'_iと書き、施した行基本変形の種類で分ける。

定義 2.1 (1)の場合、[A′∣b⃗′][A' \mid \vec b']の各行は[A∣b⃗][A \mid \vec b]の行を並べ替えたものであるから、1≤i≤m1 \le i \le mを満たす各iiに対して∑j=1naij′xj=bi′\sum_{j=1}^{n} a'_{ij}x_j = b'_iは[A∣b⃗][A \mid \vec b]のある行が与える等式であり、x⃗\vec xはそれを満たす。

定義 2.1 (2)の場合、第pp行をcc倍したとすると、i≠pi \ne pについてはaij′=aija'_{ij} = a_{ij}かつbi′=bib'_i = b_iであるから等式は成り立つ。i=pi = pについてはapj′=c apja'_{pj} = c\,a_{pj}かつbp′=c bpb'_p = c\,b_pであるから

∑j=1napj′xj=∑j=1nc apjxj=c∑j=1napjxj=c bp=bp′\sum_{j=1}^{n} a'_{pj}x_j = \sum_{j=1}^{n} c\,a_{pj}x_j = c\sum_{j=1}^{n} a_{pj}x_j = c\,b_p = b'_p

が成り立つ。

定義 2.1 (3)の場合、第pp行に第qq行のcc倍を加えたとすると、i≠pi \ne pについてはaij′=aija'_{ij} = a_{ij}かつbi′=bib'_i = b_iであるから等式は成り立つ。i=pi = pについてはapj′=apj+c aqja'_{pj} = a_{pj} + c\,a_{qj}かつbp′=bp+c bqb'_p = b_p + c\,b_qであるから

∑j=1napj′xj=∑j=1napjxj+c∑j=1naqjxj=bp+c bq=bp′\sum_{j=1}^{n} a'_{pj}x_j = \sum_{j=1}^{n} a_{pj}x_j + c\sum_{j=1}^{n} a_{qj}x_j = b_p + c\,b_q = b'_p

が成り立つ。以上より、いずれの場合もx⃗\vec xはA′x⃗=b⃗′A'\vec x = \vec b'の解である。

逆の包含を示す。補題 2.2により、施した行基本変形には、[A′∣b⃗′][A' \mid \vec b']へ施すと[A∣b⃗][A \mid \vec b]を与える逆操作が存在する。すでに示したことを[A′∣b⃗′][A' \mid \vec b']とこの逆操作へ適用すれば、A′x⃗=b⃗′A'\vec x = \vec b'の解はすべてAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解である。よって二つの解集合は一致する。

有限回の場合を、行基本変形の回数kkについての帰納法で示す。k=0k = 0のときは変形後の行列が[A∣b⃗][A \mid \vec b]自身であるから解集合は一致する。kk回続けて得られる行列を[A(k)∣b⃗(k)][A^{(k)} \mid \vec b^{(k)}]と書き、Ax⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解集合とA(k)x⃗=b⃗(k)A^{(k)}\vec x = \vec b^{(k)}の解集合が一致すると仮定する。k+1k+1回目の行基本変形について上で示したことを[A(k)∣b⃗(k)][A^{(k)} \mid \vec b^{(k)}]へ適用すると、A(k)x⃗=b⃗(k)A^{(k)}\vec x = \vec b^{(k)}の解集合とA(k+1)x⃗=b⃗(k+1)A^{(k+1)}\vec x = \vec b^{(k+1)}の解集合が一致する。よってAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解集合とA(k+1)x⃗=b⃗(k+1)A^{(k+1)}\vec x = \vec b^{(k+1)}の解集合が一致する。▨

注意 2.4.命題 2.3は行に対する操作についての主張であり、列に対して同じ形の操作を行うと解集合は変わりうる。A=(1001)A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}、b⃗=(10)\vec b = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}とすると、Ax⃗=b⃗A\vec x = \vec bはx1=1x_1 = 1、x2=0x_2 = 0という連立一次方程式であり、その解集合は第11成分が11、第22成分が00であるR2\mathbb{R}^2の元だけからなる。拡大係数行列

(101010)\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \end{array}\right)

の第11列と第22列を入れ替えて得られる行列

(011100)\left(\begin{array}{cc|c} 0 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 0 \end{array}\right)

は、連立一次方程式x2=1x_2 = 1、x1=0x_1 = 0の拡大係数行列であり、その解集合は第11成分が00、第22成分が11であるR2\mathbb{R}^2の元だけからなる。二つの解集合は一致しない。

3 簡約階段形への変形

定義 3.1.M=(mij)M = (m_{ij})を実m×nm \times n行列とする。MMの第ii行のすべての成分が00であるとき、第ii行を 零行 (zero row) という。第ii行が零行でないとき、mij≠0m_{ij} \ne 0を満たす最小のjjを第ii行の主成分の列番号といい、その位置の成分mijm_{ij}を第ii行の 主成分 (pivot) という。MMの零行でない行の個数をrrとして、次の四条件を考える。

  1. 第11行から第rr行までのどの行も零行でなく、第r+1r+1行から第mm行までのどの行も零行である。
  2. 1≤i<r1 \le i < rを満たすどのiiについても、第ii行の主成分の列番号は第i+1i+1行の主成分の列番号より小さい。
  3. 零行でないどの行についても、その主成分は11である。
  4. 零行でないどの行についても、その主成分の列番号をjjとすると、第jj列の成分のうち主成分以外はすべて00である。

MMが条件 (a)と条件 (b)を満たすとき、MMを 行階段形 (row echelon form) という。MMが四つの条件をすべて満たすとき、MMを 簡約階段形 (reduced row echelon form) という。

定理 3.2.mmとnnを正の整数、MMを実m×nm \times n行列とする。有限回の行基本変形を続けてMMを簡約階段形へ変形することができる。

証明. はじめに、行基本変形の定義から従う二つの事実を述べる。第一に、三種類の操作はいずれも各列に同じ仕方で作用するので、MMの第ss列から第nn列までを取り出して並べた行列へ同じ行基本変形を施した結果は、変形後のMMの第ss列から第nn列までを取り出して並べた行列に等しい。とくに、すべての成分が00である列は、どの行基本変形によってもすべての成分が00である列へ移る。第二に、第22行から第mm行までだけに関わる行基本変形は、それらの行を取り出して並べた行列に対する同じ種類の行基本変形に対応し、第11行を変えない。

列の個数nnについての帰納法で示す。

n=1n = 1とする。MMのすべての成分が00であれば零行でない行が存在せず、r=0r = 0として四条件はいずれも空虚に成り立つので、MMは簡約階段形である。そうでない場合、mp1≠0m_{p1} \ne 0を満たすppを取り、p≠1p \ne 1ならば第11行と第pp行を入れ替え、続いて第11行をmp1−1m_{p1}^{-1}倍する。得られた行列の(i,1)(i, 1)成分をuiu_iと書くとu1=1u_1 = 1であり、2≤i≤m2 \le i \le mを満たす各iiについて第ii行に第11行の−ui-u_i倍を加えると、第ii行の第11列の成分はui−ui=0u_i - u_i = 0となる。これらの操作は第11行を変えないので、得られる行列は第11成分が11、他の成分が00である11列だけからなり、r=1r = 1として四条件を満たす。

n≥2n \ge 2とし、列の個数がn−1n-1である任意の実行列について主張が成り立つと仮定する。MMを実m×nm \times n行列とし、MMの第11列に00でない成分があるかどうかで分ける。

MMの第11列のすべての成分が00であるとする。MMの第22列から第nn列までを取り出して並べたm×(n−1)m \times (n-1)行列をNNとすると、帰納法の仮定より、有限回の行基本変形でNNを簡約階段形N′N'へ変形することができる。同じ行基本変形をMMへ施して得られる行列をM′M'とすると、第一の事実よりM′M'の第11列のすべての成分は00であり、M′M'の第22列から第nn列までを取り出して並べた行列はN′N'である。したがってM′M'の第ii行が零行であることとN′N'の第ii行が零行であることは同値であり、零行でない第ii行の主成分の列番号は、N′N'における列番号に11を加えたものである。N′N'が四条件を満たすことからM′M'も四条件を満たすので、M′M'は簡約階段形である。

MMの第11列に00でない成分があるとする。n=1n = 1の場合と同じ操作を施して、第11列が第11成分だけ11で他の成分が00である行列M1M_1を得る。m=1m = 1ならば、M1M_1は零行でない行を第11行だけもち、その主成分は第11列の11であって第11列に他の成分はないので、M1M_1は簡約階段形である。以下m≥2m \ge 2とする。M1M_1の第22行から第mm行まで、かつ第22列から第nn列までを取り出して並べた(m−1)×(n−1)(m-1) \times (n-1)行列をNNとすると、帰納法の仮定より、有限回の行基本変形でNNを簡約階段形N′N'へ変形することができる。第二の事実により、対応する行基本変形をM1M_1の第22行から第mm行へ施すことができ、その結果をM2M_2と書く。これらの操作は第11行を変えず、M1M_1の第11列の第22成分から第mm成分までがすべて00であることから、M2M_2の第11列はM1M_1の第11列に等しい。また第一と第二の事実より、M2M_2の第22行から第mm行まで、かつ第22列から第nn列までを取り出して並べた行列はN′N'である。

N′N'の零行でない行の個数をssとし、N′N'の第kk行(1≤k≤s1 \le k \le s)の主成分の列番号をlkl_kとする。M2M_2の第11行は第11列に11をもつので零行でなく、M2M_2の第k+1k+1行(1≤k≤m−11 \le k \le m-1)は第11列の成分が00であるから、その行が零行であることとN′N'の第kk行が零行であることは同値である。よってM2M_2の零行でない行の個数はs+1s+1であり、M2M_2は定義 3.1 条件 (a)を満たす。M2M_2の第11行の主成分の列番号は11であり、第k+1k+1行(1≤k≤s1 \le k \le s)の主成分の列番号はlk+1≥2l_k + 1 \ge 2であって、l1<⋯<lsl_1 < \cdots < l_sであるから、M2M_2は定義 3.1 条件 (b)を満たす。主成分はいずれも11であるから、M2M_2は定義 3.1 条件 (c)を満たす。

M2M_2の(1,lk+1)(1, l_k+1)成分をwkw_kと書き、k=1,…,sk = 1, \ldots, sについて順に、第11行に第k+1k+1行の−wk-w_k倍を加える。N′N'が定義 3.1 条件 (d)を満たすことから、M2M_2の第lk+1l_k+1列の成分は第k+1k+1行が11、第11行以外の他の行が00であり、またM2M_2の第k+1k+1行は第11列の成分が00、k′≠kk' \ne kに対する第lk′+1l_{k'}+1列の成分が00である。したがってこれらの操作は第22行から第mm行までを変えず、第11列と第lk′+1l_{k'}+1列(k′≠kk' \ne k)の成分も変えず、第lk+1l_k+1列の第11成分をwk−wk=0w_k - w_k = 0にする。得られる行列をM3M_3とすると、M3M_3の第11行は第11列に11をもつので零行でなく、主成分の列番号は11のままであるから、M3M_3は定義 3.1 条件 (a)、定義 3.1 条件 (b)、定義 3.1 条件 (c)を満たし、さらに主成分を含む各列は主成分以外の成分がすべて00であるから定義 3.1 条件 (d)を満たす。よってM3M_3は簡約階段形である。

以上により、列の個数がnnの場合にも主張が成り立つ。▨

定義 3.3. 行列に有限回の行基本変形を施し、行階段形へ変形する手順を 掃き出し法 (Gaussian elimination) という。定理 3.2により、任意の実行列を簡約階段形へ変形する掃き出し法が存在する。

4 主成分による解の分類

定理 4.1.mmとnnを正の整数、AAを実m×nm \times n行列、b⃗∈Rm\vec b \in \mathbb{R}^mとする。[A∣b⃗][A \mid \vec b]に有限回の行基本変形を続けて得られる簡約階段形を一つ取り、その第11列から第nn列までを並べた行列をR=(rij)R = (r_{ij})、第n+1n+1列をd⃗\vec dとし、d⃗\vec dの第ii成分をdid_iと書く。[R∣d⃗][R \mid \vec d]の零行でない行の個数をss、第ii行(1≤i≤s1 \le i \le s)の主成分の列番号をjij_iとし、P={j1,…,js}P = \{j_1, \ldots, j_s\}、F={1,…,n}∖PF = \{1, \ldots, n\} \setminus Pとおく。このとき次の三つの場合のうちちょうど一つが起こり、それぞれについて次が成り立つ。

  1. n+1∈Pn+1 \in Pである場合。このときAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解集合は空集合である。
  2. n+1∉Pn+1 \notin PかつF=∅F = \emptysetである場合。このときs=ns = nであり、Ax⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解は、第ii成分がdid_i(1≤i≤n1 \le i \le n)であるRn\mathbb{R}^nの元ただ一つである。
  3. n+1∉Pn+1 \notin PかつF≠∅F \ne \emptysetである場合。このとき、FFの各元jjに対して実数tjt_jをどのように与えても、j∈Fj \in Fについて第jj成分がtjt_jに等しいAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解がただ一つ存在する。とくにAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解集合は無限集合である。

証明.命題 2.3によりAx⃗=b⃗A\vec x = \vec bの解集合はRx⃗=d⃗R\vec x = \vec dの解集合に等しいので、以下では後者を調べる。[R∣d⃗][R \mid \vec d]は簡約階段形であるから、定義 3.1 条件 (a)より第s+1s+1行から第mm行までは零行であり、これらの行が与える等式は0=00 = 0であって、どのx⃗∈Rn\vec x \in \mathbb{R}^nについても成り立つ。よってx⃗\vec xがRx⃗=d⃗R\vec x = \vec dの解であることは、1≤i≤s1 \le i \le sを満たすどのiiについても∑j=1nrijxj=di\sum_{j=1}^{n} r_{ij}x_j = d_iが成り立つことと同値である。またP⊆{1,…,n+1}P \subseteq \{1, \ldots, n+1\}であるから、n+1∈Pn+1 \in P、n+1∉Pn+1 \notin PかつF=∅F = \emptyset、n+1∉Pn+1 \notin PかつF≠∅F \ne \emptysetのうちちょうど一つが起こる。

(1)を示す。n+1∈Pn+1 \in Pとすると、定義 3.1 条件 (b)よりjs=n+1j_s = n+1である。第ss行の主成分の列番号がn+1n+1であることから、1≤j≤n1 \le j \le nについてrsj=0r_{sj} = 0であり、定義 3.1 条件 (c)よりds=1d_s = 1である。よって第ss行が与える等式は0=10 = 1であって、これを満たすx⃗\vec xは存在しない。したがって解集合は空集合である。

(2)を示す。n+1∉Pn+1 \notin PかつF=∅F = \emptysetとするとP={1,…,n}P = \{1, \ldots, n\}であり、PPの元の個数はssであるからs=ns = nである。j1<⋯<jnj_1 < \cdots < j_nであることからji=ij_i = i(1≤i≤n1 \le i \le n)となる。定義 3.1 条件 (c)よりrii=1r_{ii} = 1であり、第ii列は第ii行の主成分を含むので定義 3.1 条件 (d)よりi≠i′i \ne i'のときri′i=0r_{i'i} = 0である。よって第ii行が与える等式はxi=dix_i = d_iであり、Rx⃗=d⃗R\vec x = \vec dの解は、第ii成分がdid_iであるRn\mathbb{R}^nの元ただ一つである。

(3)を示す。n+1∉Pn+1 \notin PかつF≠∅F \ne \emptysetとし、1≤i≤s1 \le i \le sを取る。定義 3.1 条件 (c)よりriji=1r_{i j_i} = 1であり、i′≠ii' \ne iを満たすi′i'について第ji′j_{i'}列は第i′i'行の主成分を含むので定義 3.1 条件 (d)よりriji′=0r_{i j_{i'}} = 0である。またj<jij < j_iを満たすjjについては、主成分の列番号がjij_iであることからrij=0r_{ij} = 0である。よって第ii行が与える等式は

xji+∑j∈F, j>jirijxj=dix_{j_i} + \sum_{j \in F,\ j > j_i} r_{ij}x_j = d_i

と同値である。

FFの各元jjに対して実数tjt_jを与える。{1,…,n}\{1, \ldots, n\}はFFとPPの交わらない和であるから、j∈Fj \in Fについて第jj成分がtjt_jであり、1≤i≤s1 \le i \le sについて第jij_i成分がdi−∑j∈F, j>jirijtjd_i - \sum_{j \in F,\ j > j_i} r_{ij}t_jであるRn\mathbb{R}^nの元x⃗\vec xがただ一つ定まる。上で得た同値により、このx⃗\vec xは1≤i≤s1 \le i \le sを満たすどのiiについても第ii行の等式を満たすのでRx⃗=d⃗R\vec x = \vec dの解である。逆に、Rx⃗=d⃗R\vec x = \vec dの解であってj∈Fj \in Fについて第jj成分がtjt_jであるものを取ると、同じ同値により第jij_i成分はdi−∑j∈F, j>jirijtjd_i - \sum_{j \in F,\ j > j_i} r_{ij}t_jに等しいので、いま定めたx⃗\vec xに一致する。よって条件を満たす解はただ一つである。

F≠∅F \ne \emptysetであるからj0∈Fj_0 \in Fを取ることができる。実数ttに対してtj0=tt_{j_0} = t、j∈F∖{j0}j \in F \setminus \{j_0\}についてtj=0t_j = 0と与えると、相異なるttに対して第j0j_0成分が相異なる解が得られる。よって解集合は無限集合である。▨

(3)の場合に、FFに属する番号jjについての未知数xjx_jを自由変数といいます。

系 4.2.nnを正の整数、AAをnn次実正方行列とし、AAに有限回の行基本変形を続けて得られる簡約階段形を一つ取り、RRと書く。このとき次の三条件は同値である。

  1. Ax⃗=0⃗A\vec x = \vec 0の解は0⃗\vec 0のみである。
  2. 1≤j≤n1 \le j \le nを満たすどのjjも、RRのある行の主成分の列番号である。
  3. R=InR = I_nである。

証明.AAをRRへ移す行基本変形の列を[A∣0⃗][A \mid \vec 0]へ施して得られる行列を考える。行基本変形はすべての成分が00である列をすべての成分が00である列へ移し、また各列に同じ仕方で作用するので、得られる行列は[R∣0⃗][R \mid \vec 0]である。[R∣0⃗][R \mid \vec 0]の第ii行が零行であることとRRの第ii行が零行であることは同値であり、零行でない行の主成分も両者で一致するから、[R∣0⃗][R \mid \vec 0]は簡約階段形であって、その主成分の列番号の集合PPはRRの主成分の列番号の集合に等しく、とくにn+1∉Pn+1 \notin Pである。

(1)⇒\Rightarrow(2)を対偶で示す。F:={1,…,n}∖P≠∅F := \{1, \ldots, n\} \setminus P \ne \emptysetとし、j0∈Fj_0 \in Fを取る。定理 4.1 (3)を[R∣0⃗][R \mid \vec 0]へ適用すると、第j0j_0成分が11、j∈F∖{j0}j \in F \setminus \{j_0\}について第jj成分が00であるAx⃗=0⃗A\vec x = \vec 0の解が存在する。この解は0⃗\vec 0と異なるので(1)は成り立たない。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。P={1,…,n}P = \{1, \ldots, n\}であるから、RRの零行でない行の個数はnnであり、RRはnn行しかもたないので、主成分の列番号を小さい順にj1<⋯<jnj_1 < \cdots < j_nと並べるとji=ij_i = i(1≤i≤n1 \le i \le n)となる。定義 3.1 条件 (c)よりRRの(i,i)(i, i)成分は11であり、第ii列は第ii行の主成分を含むので定義 3.1 条件 (d)よりi≠i′i \ne i'のとき(i′,i)(i', i)成分は00である。§D3.1 定義 3.6の定めるInI_nと成分がすべて一致するので、§D3.1 定義 1.1によりR=InR = I_nである。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。R=InR = I_nとすると、1≤j≤n1 \le j \le nを満たす各jjについて第jj行の主成分の列番号はjjであるからP={1,…,n}P = \{1, \ldots, n\}であり、F=∅F = \emptysetかつn+1∉Pn+1 \notin Pである。定理 4.1 (2)を[R∣0⃗][R \mid \vec 0]へ適用するとAx⃗=0⃗A\vec x = \vec 0の解はただ一つであり、0⃗\vec 0がその解であるから、解は0⃗\vec 0のみである。▨

系 4.3.mmとnnを正の整数、AAを実m×nm \times n行列とする。[A∣0⃗][A \mid \vec 0]に有限回の行基本変形を続けて得られる簡約階段形を一つ取り、その零行でない行の個数をrrとする。r<nr < nならば、同次連立一次方程式Ax⃗=0⃗A\vec x = \vec 0は非自明な解をもつ。とくにm<nm < nならば、Ax⃗=0⃗A\vec x = \vec 0は非自明な解をもつ。

証明. 取った簡約階段形を[R∣d⃗][R \mid \vec d]と書く。行基本変形はすべての成分が00である列をすべての成分が00である列へ移すのでd⃗=0⃗\vec d = \vec 0であり、第n+1n+1列はどの行の主成分も含まない。よって主成分の列番号の集合PPは{1,…,n}\{1, \ldots, n\}に含まれ、その元の個数はrrである。

r<nr < nとするとF={1,…,n}∖PF = \{1, \ldots, n\} \setminus Pは空でない。j0∈Fj_0 \in Fを取り、定理 4.1 (3)を適用すると、第j0j_0成分が11、j∈F∖{j0}j \in F \setminus \{j_0\}について第jj成分が00であるAx⃗=0⃗A\vec x = \vec 0の解が存在する。この解は0⃗\vec 0と異なるので非自明な解である。

m<nm < nとする。rrは[R∣d⃗][R \mid \vec d]の零行でない行の個数であり、行の個数mm以下であるからr≤m<nr \le m < nが成り立つ。よってすでに示したことからAx⃗=0⃗A\vec x = \vec 0は非自明な解をもつ。▨

例 4.4.

  1. 連立一次方程式x1+2x2=5x_1 + 2x_2 = 5、3x1+4x2=63x_1 + 4x_2 = 6の拡大係数行列に、第22行に第11行の−3-3倍を加える操作、第22行を−12-\frac{1}{2}倍する操作、第11行に第22行の−2-2倍を加える操作を順に施すと (125346)→(1250−2−9)→(1250192)→(10−40192)\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 2 & 5 \\ 3 & 4 & 6 \end{array}\right) \to \left(\begin{array}{cc|c} 1 & 2 & 5 \\ 0 & -2 & -9 \end{array}\right) \to \left(\begin{array}{cc|c} 1 & 2 & 5 \\ 0 & 1 & \frac{9}{2} \end{array}\right) \to \left(\begin{array}{cc|c} 1 & 0 & -4 \\ 0 & 1 & \frac{9}{2} \end{array}\right) となる。最後の行列は簡約階段形であり、主成分の列番号は11と22であるからP={1,2}P = \{1, 2\}、F=∅F = \emptysetであってn+1=3∉Pn+1 = 3 \notin Pである。定理 4.1 (2)により解はただ一つであり、第11成分が−4-4、第22成分が92\frac{9}{2}であるR2\mathbb{R}^2の元である。
  2. 連立一次方程式x1+x2=1x_1 + x_2 = 1、2x1+2x2=32x_1 + 2x_2 = 3の拡大係数行列に、第22行に第11行の−2-2倍を加える操作、第11行に第22行の−1-1倍を加える操作を順に施すと (111223)→(111001)→(110001)\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 1 & 1 \\ 2 & 2 & 3 \end{array}\right) \to \left(\begin{array}{cc|c} 1 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 1 \end{array}\right) \to \left(\begin{array}{cc|c} 1 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array}\right) となる。最後の行列は簡約階段形であり、主成分の列番号は11と33であるからP={1,3}P = \{1, 3\}であってn+1=3∈Pn+1 = 3 \in Pである。定理 4.1 (1)により解集合は空集合である。
  3. 連立一次方程式x1+x2+x3=2x_1 + x_2 + x_3 = 2、2x1+2x2+3x3=52x_1 + 2x_2 + 3x_3 = 5の拡大係数行列に、第22行に第11行の−2-2倍を加える操作、第11行に第22行の−1-1倍を加える操作を順に施すと (11122235)→(11120011)→(11010011)\left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 1 & 1 & 2 \\ 2 & 2 & 3 & 5 \end{array}\right) \to \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 1 & 1 & 2 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{array}\right) \to \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 1 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{array}\right) となる。最後の行列は簡約階段形であり、P={1,3}P = \{1, 3\}、F={2}F = \{2\}であってn+1=4∉Pn+1 = 4 \notin Pである。定理 4.1 (3)により、実数ttごとに第22成分がttである解がただ一つ定まり、それは第11成分が1−t1 - t、第33成分が11であるR3\mathbb{R}^3の元である。

5 演習

問題 5.1. 次の二つの連立一次方程式のそれぞれについて、拡大係数行列を簡約階段形へ変形し、定理 4.1のどの場合に当たるかを判定して解集合を求めよ。

  1. x1+2x2−x3=1x_1 + 2x_2 - x_3 = 1、2x1+4x2+x3=52x_1 + 4x_2 + x_3 = 5、−x1−2x2+2x3=1-x_1 - 2x_2 + 2x_3 = 1
  2. x1+2x2−x3=1x_1 + 2x_2 - x_3 = 1、2x1+4x2+x3=52x_1 + 4x_2 + x_3 = 5、3x1+6x2=63x_1 + 6x_2 = 6
解答.

第一の連立一次方程式の拡大係数行列をM1M_1とする。第22行に第11行の−2-2倍を加え、続いて第33行に第11行の11倍を加えるとM2M_2が得られ、さらに第22行を13\frac{1}{3}倍し、続いて第33行に第22行の−1-1倍を加えるとM3M_3が得られる。

M1=(12−112415−1−221),M2=(12−1100330012),M3=(12−1100110001)M_1 = \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & -1 & 1 \\ 2 & 4 & 1 & 5 \\ -1 & -2 & 2 & 1 \end{array}\right), \quad M_2 = \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & -1 & 1 \\ 0 & 0 & 3 & 3 \\ 0 & 0 & 1 & 2 \end{array}\right), \quad M_3 = \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & -1 & 1 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{array}\right)

M3M_3の第11行に第22行の11倍を加え、続いて第11行に第33行の−2-2倍を加え、続いて第22行に第33行の−1-1倍を加えると

(120000100001)\left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{array}\right)

が得られ、これは簡約階段形である。主成分の列番号は11、33、44であり、n+1=4n+1 = 4がその中にあるので、定理 4.1 (1)により解集合は空集合である。

第二の連立一次方程式の拡大係数行列をN1N_1とする。第22行に第11行の−2-2倍を加え、続いて第33行に第11行の−3-3倍を加えるとN2N_2が得られ、さらに第22行を13\frac{1}{3}倍し、続いて第33行に第22行の−3-3倍を加え、続いて第11行に第22行の11倍を加えるとN3N_3が得られる。

N1=(12−1124153606),N2=(12−1100330033),N3=(120200110000)N_1 = \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & -1 & 1 \\ 2 & 4 & 1 & 5 \\ 3 & 6 & 0 & 6 \end{array}\right), \quad N_2 = \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & -1 & 1 \\ 0 & 0 & 3 & 3 \\ 0 & 0 & 3 & 3 \end{array}\right), \quad N_3 = \left(\begin{array}{ccc|c} 1 & 2 & 0 & 2 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{array}\right)

N3N_3は簡約階段形である。主成分の列番号は11と33であり、n+1=4n+1 = 4はその中にないのでP={1,3}P = \{1, 3\}、F={2}F = \{2\}である。定理 4.1 (3)により、実数ttごとに第22成分がttである解がただ一つ定まる。第11行の等式x1+2x2=2x_1 + 2x_2 = 2と第22行の等式x3=1x_3 = 1から、その解は第11成分が2−2t2 - 2t、第22成分がtt、第33成分が11であるR3\mathbb{R}^3の元である。解集合はこれらすべてからなる。▨

問題 5.2.補題 2.2の証明を完成させよ。すなわち、実m×nm \times n行列MMと三種類の行基本変形のそれぞれについて、変形後の行列へ施すとMMを与える同じ種類の行基本変形を挙げ、成分の計算によってそのことを確かめよ。

解答.

M=(mij)M = (m_{ij})とし、MMに一回の行基本変形を施して得られる行列をM′=(mij′)M' = (m'_{ij})、M′M'にさらに行基本変形を施して得られる行列をM′′=(mij′′)M'' = (m''_{ij})と書く。いずれの場合もMM、M′M'、M′′M''は実m×nm \times n行列であるから、§D3.1 定義 1.1により、すべてのiiとjjについてmij′′=mijm''_{ij} = m_{ij}が成り立つことを示せばよい。

定義 2.1 (1)の場合。相異なるppとqqについて第pp行と第qq行を入れ替えると、mpj′=mqjm'_{pj} = m_{qj}、mqj′=mpjm'_{qj} = m_{pj}であり、i≠pi \ne pかつi≠qi \ne qのときmij′=mijm'_{ij} = m_{ij}である。M′M'に対して同じppとqqについて第pp行と第qq行を入れ替えると、mpj′′=mqj′=mpjm''_{pj} = m'_{qj} = m_{pj}、mqj′′=mpj′=mqjm''_{qj} = m'_{pj} = m_{qj}であり、i≠pi \ne pかつi≠qi \ne qのときmij′′=mij′=mijm''_{ij} = m'_{ij} = m_{ij}である。よってM′′=MM'' = Mである。

定義 2.1 (2)の場合。00でない実数ccについて第pp行をcc倍すると、mpj′=c mpjm'_{pj} = c\,m_{pj}であり、i≠pi \ne pのときmij′=mijm'_{ij} = m_{ij}である。c≠0c \ne 0であるからc−1c^{-1}が定まり、c−1≠0c^{-1} \ne 0であるから、M′M'の第pp行をc−1c^{-1}倍する操作は定義 2.1 (2)の形の行基本変形である。この操作によりmpj′′=c−1(c mpj)=mpjm''_{pj} = c^{-1}(c\,m_{pj}) = m_{pj}であり、i≠pi \ne pのときmij′′=mij′=mijm''_{ij} = m'_{ij} = m_{ij}である。よってM′′=MM'' = Mである。

定義 2.1 (3)の場合。相異なるppとqq、および実数ccについて第pp行に第qq行のcc倍を加えると、mpj′=mpj+c mqjm'_{pj} = m_{pj} + c\,m_{qj}であり、i≠pi \ne pのときmij′=mijm'_{ij} = m_{ij}である。とくにq≠pq \ne pであるからmqj′=mqjm'_{qj} = m_{qj}である。M′M'の第pp行に第qq行の−c-c倍を加えると

mpj′′=mpj′+(−c)mqj′=mpj+c mqj−c mqj=mpjm''_{pj} = m'_{pj} + (-c)m'_{qj} = m_{pj} + c\,m_{qj} - c\,m_{qj} = m_{pj}

であり、i≠pi \ne pのときmij′′=mij′=mijm''_{ij} = m'_{ij} = m_{ij}である。よってM′′=MM'' = Mである。▨

参考文献

  1. 齋藤正彦『線型代数入門』基礎数学 1, 東京大学出版会, 1966.連立一次方程式を拡大係数行列へ翻訳し、行に対する操作だけで解く順序を参考にしました。
  2. Kenneth Hoffman and Ray Kunze, Linear Algebra, 2nd ed., Prentice Hall, Englewood Cliffs, N.J., 1971.行階段形と簡約階段形の定義、簡約階段形へ変形することができることの証明、および主成分の位置による解の分類を参考にしました。
  3. Serge Lang, Linear Algebra, 3rd ed., Springer, New York, 1987.同次連立一次方程式が非自明な解をもつための条件の述べ方を参考にしました。

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