§D3.5数ベクトルと幾何的な意味

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平面や空間の点に座標を定めると、点をR2\mathbb{R}^2やR3\mathbb{R}^3の元として表すことができ、これらの元を列に並べた正方行列の行列式を考えることができます。行列式は実数を値にとる量ですが、その値や符号が平面や空間の点とどのように結びつくかは、行列式の定義だけからは読み取ることができません。本記事では、R2\mathbb{R}^2とR3\mathbb{R}^3の元を、原点を始点とする矢印として平面や空間の点に対応させ、この対応のもとで、列に並べた元に対して符号付き面積と符号付き体積を条件によって定め、行列式に一致することを示すとともに、行列が定める対応が向きを保つかどうかという性質を行列式の符号によって特徴づけます。行列式に幾何的な意味を与えるこの見方は、行列を扱ううえで基本的な道具の一つであり、たとえばR2\mathbb{R}^2の符号付き面積はただ一つ存在し、それは列に並べた行列の行列式に等しくなります。ここで得られる矢印による対応は、「ベクトル空間の公理と例」でも参照されます。基本的な性質や具体的な計算例について解説します。

1 数ベクトルの矢印表示

平面と空間の点に座標を与えると、R2\mathbb{R}^2とR3\mathbb{R}^3の元を、原点を始点とする矢印として読むことができます。

定義 1.1 (矢印表示). 平面に点OOを固定し、R2\mathbb{R}^2から平面への原点を保つアフィンな全単射を一つ固定する。x⃗∈R2\vec{x} \in \mathbb{R}^2に対応する点をPx⃗P_{\vec{x}}と書く。この対応はP0⃗=OP_{\vec{0}}=Oを満たし、OOを原点として平面に入る和と実数倍を保つ。すなわち、平面の点の和と実数倍についてPx⃗+Py⃗=Px⃗+y⃗P_{\vec{x}}+P_{\vec{y}}=P_{\vec{x}+\vec{y}}およびcPx⃗=Pcx⃗cP_{\vec{x}}=P_{c\vec{x}}が成り立つ。x⃗=(x1,x2)⊤\vec{x}=(x_1,x_2)^\top、y⃗=(y1,y2)⊤\vec{y}=(y_1,y_2)^\topに対し、点Px⃗P_{\vec{x}}と点Py⃗P_{\vec{y}}の距離を

(x1−y1)2+(x2−y2)2\sqrt{(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2}

で定める。

  1. x⃗∈R2\vec{x} \in \mathbb{R}^2に対し、OOを始点としPx⃗P_{\vec{x}}を終点とする有向線分OPx⃗→\overrightarrow{OP_{\vec{x}}}を、x⃗\vec{x}の 矢印表示 (arrow representation) という。
  2. x⃗,y⃗∈R2\vec{x}, \vec{y} \in \mathbb{R}^2とする。点OOから点Px⃗P_{\vec{x}}への座標の差と、点Py⃗P_{\vec{y}}から点Px⃗+y⃗P_{\vec{x}+\vec{y}}への座標の差は、ともにx⃗\vec{x}である。同じく、点OOから点Py⃗P_{\vec{y}}への座標の差と、点Px⃗P_{\vec{x}}から点Px⃗+y⃗P_{\vec{x}+\vec{y}}への座標の差は、ともにy⃗\vec{y}である。したがってOO、Px⃗P_{\vec{x}}、Py⃗P_{\vec{y}}が一直線上にないとき、4点OO、Px⃗P_{\vec{x}}、Px⃗+y⃗P_{\vec{x}+\vec{y}}、Py⃗P_{\vec{y}}はこの順に平行四辺形の頂点であり、x⃗+y⃗\vec{x}+\vec{y}の矢印表示は、この平行四辺形のOOを端点とする対角線である。
  3. x⃗∈R2\vec{x} \in \mathbb{R}^2をx⃗≠0⃗\vec{x} \ne \vec{0}である元とし、ccを実数とする。点OOから点Pcx⃗P_{c\vec{x}}への座標の差はcx⃗c\vec{x}であるから、Pcx⃗P_{c\vec{x}}はOOとPx⃗P_{\vec{x}}を通る直線の上にあり、逆にこの直線上の点はすべて、ある実数ttについてPtx⃗P_{t\vec{x}}と書ける。OOがこの直線を分ける二つの半直線はt>0t > 0の部分とt<0t < 0の部分であるから、c>0c > 0のときPcx⃗P_{c\vec{x}}はPx⃗P_{\vec{x}}と同じ側にあり、c<0c < 0のとき反対側にある。c=0c = 0のときPcx⃗=OP_{c\vec{x}} = Oである。また、座標平面の距離公式により、x⃗\vec{x}の矢印表示の長さをLLとすると、cx⃗c\vec{x}の矢印表示の長さは∣c∣L\lvert c\rvert Lである。
  4. 空間についても、点OOを固定し、R3\mathbb{R}^3から空間への原点を保つアフィンな全単射を固定したとき、同じ規定によってR3\mathbb{R}^3の元の矢印表示、和の矢印表示、実数倍の矢印表示を定める。二点の距離は、対応する座標の各成分の差の平方和の平方根で定める。

2 行列の列

m×nm \times n行列AAとRn\mathbb{R}^nの元x⃗\vec{x}に対し、x⃗\vec{x}をn×1n \times 1行列とみなして積Ax⃗A\vec{x}を取るとRm\mathbb{R}^mの元が得られます。AAの列は、この対応の値として現れます。

命題 2.1.m,nm, nを正の整数、A=(aij)A = (a_{ij})を実数を成分とするm×nm \times n行列とする。1≤j≤n1 \le j \le nに対し、e⃗j∈Rn\vec{e}_j \in \mathbb{R}^nを、第jj成分が11で他の成分が00である元とする。このときAe⃗jA\vec{e}_jはAAの第jj列に等しい。

証明.e⃗j\vec{e}_jをn×1n \times 1行列とみなす(§D3.1 定義 3.2)。§D3.1 定義 3.1によりAe⃗jA\vec{e}_jはm×1m \times 1行列であり、その第ii成分は∑k=1naik(e⃗j)k\sum_{k=1}^{n} a_{ik}(\vec{e}_j)_kである。(e⃗j)k(\vec{e}_j)_kはk=jk = jのとき11、k≠jk \ne jのとき00であるから、この和はaija_{ij}に等しい。aija_{ij}はAAの第jj列の第ii成分であるから、Ae⃗jA\vec{e}_jはAAの第jj列に等しい。▨

次の図は、2×22 \times 2行列AAの成分を動かしたときのAe⃗1A\vec{e}_1とAe⃗2A\vec{e}_2を表示します。

x⃗↦Ax⃗\vec{x} \mapsto A\vec{x}という対応どうしの合成が行列の積に対応することは、「線形写像と表現行列」で扱います。

3 符号付き面積と符号付き体積

平行四辺形の面積を辺の長さと内角から定める代わりに、面積が満たすべき性質を条件として書き下し、その条件を満たす関数として面積を定めます。以下では、u⃗1,…,u⃗n∈Rn\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n \in \mathbb{R}^nをこの順に列として並べたnn次正方行列を(u⃗1 ⋯ u⃗n)(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)と書きます。

定義 3.1 (符号付き面積と符号付き体積).n∈{2,3}n \in \{2,3\}とし、e⃗j∈Rn\vec{e}_j \in \mathbb{R}^nは、第jj成分が11で他の成分が00である元とする。関数W:(Rn)n→RW:(\mathbb{R}^n)^n\to\mathbb{R}に次の3条件を課す。

  1. 各引数について線形である。すなわち、任意のk∈{1,…,n}k\in\{1,\ldots,n\}について他の引数を固定すると、 W(…,αu⃗+βu⃗′,… )=αW(…,u⃗,… )+βW(…,u⃗′,… )W(\dots,\alpha\vec{u}+\beta\vec{u}',\dots) =\alpha W(\dots,\vec{u},\dots)+\beta W(\dots,\vec{u}',\dots) が任意のu⃗,u⃗′∈Rn\vec{u},\vec{u}'\in\mathbb{R}^nと任意の実数α,β\alpha,\betaに対して成り立つ。
  2. p≠qp\ne qであって第pp引数と第qq引数が等しいならば、値は00である。
  3. W(e⃗1,…,e⃗n)=1W(\vec{e}_1,\ldots,\vec{e}_n)=1である。

n=2n=2のとき、この3条件を満たすWWをR2\mathbb{R}^2の符号付き面積 (signed area) という。n=3n=3のとき、この3条件を満たすWWをR3\mathbb{R}^3の符号付き体積 (signed volume) という。

定理 3.2.n∈{2,3}n\in\{2,3\}とする。定義 3.1の3条件を満たす関数W:(Rn)n→RW:(\mathbb{R}^n)^n\to\mathbb{R}はただ一つ存在し、任意のu⃗1,…,u⃗n∈Rn\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n\in\mathbb{R}^nに対して

W(u⃗1,…,u⃗n)=det⁡(u⃗1 ⋯ u⃗n)W(\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n)=\det(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)

である。

証明.D:(Rn)n→RD:(\mathbb{R}^n)^n\to\mathbb{R}を

D(u⃗1,…,u⃗n)=det⁡(u⃗1 ⋯ u⃗n)D(\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n)=\det(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)

で定める。§D3.4 系 6.2によりDDは各引数について線形であり、二つの引数が等しければ値は00である。また(e⃗1 ⋯ e⃗n)=In(\vec{e}_1\ \cdots\ \vec{e}_n)=I_nであるから、§D3.4 定義 2.1によりD(e⃗1,…,e⃗n)=1D(\vec{e}_1,\ldots,\vec{e}_n)=1である。したがってDDは定義 3.1の3条件を満たす。

WWを3条件を満たす関数とし、a⃗1,…,a⃗n∈Rn\vec{a}_1,\ldots,\vec{a}_n\in\mathbb{R}^nをこの順に行として並べた行列を(a⃗1;…;a⃗n)(\vec{a}_1;\ldots;\vec{a}_n)と書く。関数F:(Rn)n→RF:(\mathbb{R}^n)^n\to\mathbb{R}をF(a⃗1;…;a⃗n)=W(a⃗1,…,a⃗n)F(\vec{a}_1;\ldots;\vec{a}_n)=W(\vec{a}_1,\ldots,\vec{a}_n)で定めると、FFは§D3.4 定義 2.1の3条件を満たす。§D3.4 定理 4.2によりF=det⁡F=\detである。(u⃗1;…;u⃗n)⊤=(u⃗1 ⋯ u⃗n)(\vec{u}_1;\ldots;\vec{u}_n)^\top=(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)であるから、§D3.4 命題 6.1により

W(u⃗1,…,u⃗n)=det⁡(u⃗1;…;u⃗n)=det⁡(u⃗1 ⋯ u⃗n)=D(u⃗1,…,u⃗n)W(\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n)=\det(\vec{u}_1;\ldots;\vec{u}_n)=\det(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)=D(\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n)

である。したがってDDが3条件を満たすただ一つの関数である。▨

定理 3.3.R2\mathbb{R}^2の符号付き面積はただ一つ存在し、それは(u⃗,v⃗)↦det⁡(u⃗ v⃗)(\vec{u}, \vec{v}) \mapsto \det(\vec{u}\ \vec{v})である。

証明.定理 3.2をn=2n=2として適用する。▨

定理 3.4.R3\mathbb{R}^3の符号付き体積はただ一つ存在し、それは(u⃗,v⃗,w⃗)↦det⁡(u⃗ v⃗ w⃗)(\vec{u}, \vec{v}, \vec{w}) \mapsto \det(\vec{u}\ \vec{v}\ \vec{w})である。

証明.定理 3.2をn=3n=3として適用する。▨

命題 3.5.u⃗,v⃗∈R2\vec{u},\vec{v}\in\mathbb{R}^2とする。4点OO、Pu⃗P_{\vec{u}}、Pu⃗+v⃗P_{\vec{u}+\vec{v}}、Pv⃗P_{\vec{v}}が定める平行四辺形の初等幾何による面積を、退化している場合は00と定める。この面積は

∣det⁡(u⃗ v⃗)∣\lvert\det(\vec{u}\ \vec{v})\rvert

に等しい。

証明.u⃗=(a,c)⊤\vec{u}=(a,c)^\top、v⃗=(b,d)⊤\vec{v}=(b,d)^\topとおく。u⃗=0⃗\vec{u}=\vec{0}ならば、平行四辺形は退化して面積は00であり、det⁡(u⃗ v⃗)=0\det(\vec{u}\ \vec{v})=0である。

u⃗≠0⃗\vec{u}\ne\vec{0}とする。座標平面の距離公式により、OOとPu⃗P_{\vec{u}}を通る直線cx−ay=0cx-ay=0と点Pv⃗P_{\vec{v}}との距離は

∣cb−ad∣a2+c2\frac{\lvert cb-ad\rvert}{\sqrt{a^2+c^2}}

である。また、線分OPu⃗OP_{\vec{u}}の長さはa2+c2\sqrt{a^2+c^2}である。平行四辺形の面積は底辺の長さと高さの積であるから

a2+c2⋅∣cb−ad∣a2+c2=∣ad−bc∣=∣det⁡(u⃗ v⃗)∣\sqrt{a^2+c^2}\cdot\frac{\lvert cb-ad\rvert}{\sqrt{a^2+c^2}} =\lvert ad-bc\rvert =\lvert\det(\vec{u}\ \vec{v})\rvert

である。▨

命題 3.6.u⃗,v⃗,w⃗∈R3\vec{u},\vec{v},\vec{w}\in\mathbb{R}^3とする。三辺u⃗,v⃗,w⃗\vec{u},\vec{v},\vec{w}が定める平行六面体の初等幾何による通常体積を、退化している場合は00と定める。この体積は

∣det⁡(u⃗ v⃗ w⃗)∣\lvert\det(\vec{u}\ \vec{v}\ \vec{w})\rvert

に等しい。

証明.u⃗=(a,d,g)⊤\vec{u}=(a,d,g)^\top、v⃗=(b,e,h)⊤\vec{v}=(b,e,h)^\top、w⃗=(c,f,i)⊤\vec{w}=(c,f,i)^\topとし、

Δ1=dh−eg,Δ2=gb−ah,Δ3=ae−db\Delta_1=dh-eg,\qquad \Delta_2=gb-ah,\qquad \Delta_3=ae-db

とおく。

Δ1,Δ2,Δ3\Delta_1,\Delta_2,\Delta_3の少なくとも一つが00でない場合を考える。座標x,y,zx,y,zに関する方程式

Δ1x+Δ2y+Δ3z=0\Delta_1x+\Delta_2y+\Delta_3z=0

の解集合は原点を通る平面である。また、

Δ1a+Δ2d+Δ3g=adh−aeg+dgb−dah+gae−gdb=0,Δ1b+Δ2e+Δ3h=bdh−beg+egb−eah+hae−hdb=0\begin{aligned} \Delta_1a+\Delta_2d+\Delta_3g &=adh-aeg+dgb-dah+gae-gdb=0,\\ \Delta_1b+\Delta_2e+\Delta_3h &=bdh-beg+egb-eah+hae-hdb=0 \end{aligned}

であるから、この平面はPu⃗P_{\vec{u}}とPv⃗P_{\vec{v}}を含む。さらに、Δj≠0\Delta_j\ne0であるjjに対応する二つの座標について、u⃗\vec{u}とv⃗\vec{v}の成分が作る22次行列の行列式はΔj\Delta_jまたは−Δj-\Delta_jである。したがってu⃗\vec{u}とv⃗\vec{v}は実数倍の関係になく、この平面はOO、Pu⃗P_{\vec{u}}、Pv⃗P_{\vec{v}}が定める平面である。

L2=a2+d2+g2L^2=a^2+d^2+g^2、M2=b2+e2+h2M^2=b^2+e^2+h^2、q=ab+de+ghq=ab+de+ghとおく。u⃗\vec{u}とv⃗\vec{v}は実数倍の関係にないためL>0L>0である。OOとPu⃗P_{\vec{u}}を通る直線上の点Ptu⃗P_{t\vec{u}}とPv⃗P_{\vec{v}}との距離の平方は

(b−ta)2+(e−td)2+(h−tg)2=L2t2−2qt+M2=L2(t−qL2)2+M2−q2L2\begin{aligned} (b-ta)^2+(e-td)^2+(h-tg)^2 &=L^2t^2-2qt+M^2\\ &=L^2\left(t-\frac{q}{L^2}\right)^2+M^2-\frac{q^2}{L^2} \end{aligned}

である。したがって、底辺OPu⃗OP_{\vec{u}}に対するPv⃗P_{\vec{v}}の高さはM2−q2/L2\sqrt{M^2-q^2/L^2}であり、底面の平行四辺形の面積の平方はL2M2−q2L^2M^2-q^2である。一方、成分を展開すると

Δ12+Δ22+Δ32=(dh−eg)2+(gb−ah)2+(ae−db)2=d2h2−2degh+e2g2+g2b2−2abgh+a2h2+a2e2−2abde+d2b2=(a2+d2+g2)(b2+e2+h2)−(ab+de+gh)2=L2M2−q2\begin{aligned} \Delta_1^2+\Delta_2^2+\Delta_3^2 &=(dh-eg)^2+(gb-ah)^2+(ae-db)^2\\ &=d^2h^2-2degh+e^2g^2+g^2b^2-2abgh+a^2h^2\\ &\quad+a^2e^2-2abde+d^2b^2\\ &=(a^2+d^2+g^2)(b^2+e^2+h^2)-(ab+de+gh)^2\\ &=L^2M^2-q^2 \end{aligned}

となる。ゆえに底面積はΔ12+Δ22+Δ32\sqrt{\Delta_1^2+\Delta_2^2+\Delta_3^2}である。

点と平面の距離公式により、Pw⃗P_{\vec{w}}から底面を含む平面までの距離、すなわち平行六面体の高さは

∣Δ1c+Δ2f+Δ3i∣Δ12+Δ22+Δ32\frac{\lvert\Delta_1c+\Delta_2f+\Delta_3i\rvert}{\sqrt{\Delta_1^2+\Delta_2^2+\Delta_3^2}}

である。通常体積は底面積と高さの積であるから、

Vol⁡=∣Δ1c+Δ2f+Δ3i∣=∣cdh−ceg+fgb−fah+iae−idb∣=∣aei+bfg+cdh−ceg−bdi−afh∣=∣det⁡(u⃗ v⃗ w⃗)∣\begin{aligned} \operatorname{Vol} &=\lvert\Delta_1c+\Delta_2f+\Delta_3i\rvert\\ &=\lvert cdh-ceg+fgb-fah+iae-idb\rvert\\ &=\lvert aei+bfg+cdh-ceg-bdi-afh\rvert\\ &=\lvert\det(\vec{u}\ \vec{v}\ \vec{w})\rvert \end{aligned}

である。最後の等式は§D3.4 定理 4.2の Leibniz 表示を33次の場合に書き下したものである。

Δ1=Δ2=Δ3=0\Delta_1=\Delta_2=\Delta_3=0の場合を考える。u⃗=0⃗\vec{u}=\vec{0}ならば、三辺が定める平行六面体は退化している。u⃗≠0⃗\vec{u}\ne\vec{0}ならば、a,d,ga,d,gの少なくとも一つは00でない。a≠0a\ne0ならばΔ3=0\Delta_3=0とΔ2=0\Delta_2=0からe=db/ae=db/aとh=gb/ah=gb/aを得るのでv⃗=(b/a)u⃗\vec{v}=(b/a)\vec{u}である。d≠0d\ne0ならばΔ3=0\Delta_3=0とΔ1=0\Delta_1=0からb=ae/db=ae/dとh=ge/dh=ge/dを得るのでv⃗=(e/d)u⃗\vec{v}=(e/d)\vec{u}である。g≠0g\ne0ならばΔ2=0\Delta_2=0とΔ1=0\Delta_1=0からb=ah/gb=ah/gとe=dh/ge=dh/gを得るのでv⃗=(h/g)u⃗\vec{v}=(h/g)\vec{u}である。いずれの場合もu⃗\vec{u}とv⃗\vec{v}は実数倍の関係にあるため、平行六面体は退化しており、通常体積は00である。また、上の Leibniz 表示から

det⁡(u⃗ v⃗ w⃗)=Δ1c+Δ2f+Δ3i=0\det(\vec{u}\ \vec{v}\ \vec{w})=\Delta_1c+\Delta_2f+\Delta_3i=0

である。したがって退化している場合にも、通常体積は行列式の絶対値に等しい。▨

4 向きと拡大率

定義 4.1 (枠と向き).nnを正の整数とする。

  1. Rn\mathbb{R}^nの元の組(u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n)であって、nn次正方行列U=(u⃗1 ⋯ u⃗n)U = (\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)が正則であるものを、Rn\mathbb{R}^nの枠 (frame) という。
  2. (u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n)と(v⃗1,…,v⃗n)(\vec{v}_1, \dots, \vec{v}_n)をRn\mathbb{R}^nの枠とし、U=(u⃗1 ⋯ u⃗n)U = (\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)、U′=(v⃗1 ⋯ v⃗n)U' = (\vec{v}_1\ \cdots\ \vec{v}_n)とおく。UUは正則であるからUB=BU=IUB = BU = Iを満たすnn次正方行列BBが存在し、P=U′BP = U'BはPU=U′BU=U′PU = U'BU = U'を満たす。またPU=U′PU = U'を満たすnn次正方行列PPに対してはP=PUB=U′BP = PUB = U'Bが成り立つ。よってPU=U′PU = U'を満たすnn次正方行列PPはただ一つである。このPPがdet⁡P>0\det P > 0を満たすとき、二つの枠は 同じ向きをもつ (have the same orientation) という。
  3. 上の記号のもとで、§D3.4 定理 9.1によりdet⁡U′=det⁡P⋅det⁡U\det U' = \det P \cdot \det Uであり、§D3.4 定理 10.1によりdet⁡U≠0\det U \ne 0かつdet⁡U′≠0\det U' \ne 0であるから、二つの枠が同じ向きをもつことと、det⁡U\det Uとdet⁡U′\det U'がともに正またはともに負であることは同値である。同符号であるという関係は反射的、対称的かつ推移的であるから、同じ向きをもつという関係はRn\mathbb{R}^nの枠の全体の上の同値関係である。この同値関係による同値類をRn\mathbb{R}^nの向き (orientation) という。
  4. AAをnn次の正則な実正方行列とする。Rn\mathbb{R}^nの枠(u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n)とU=(u⃗1 ⋯ u⃗n)U = (\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)に対し、§D3.1 命題 3.5 (1)により(Au⃗1 ⋯ Au⃗n)=AU(A\vec{u}_1\ \cdots\ A\vec{u}_n) = AUであり、§D3.4 定理 9.1によりdet⁡(AU)=det⁡A⋅det⁡U≠0\det(AU) = \det A \cdot \det U \ne 0であるから、(Au⃗1,…,Au⃗n)(A\vec{u}_1, \dots, A\vec{u}_n)もまたRn\mathbb{R}^nの枠である。Rn\mathbb{R}^nのすべての枠(u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n)について(Au⃗1,…,Au⃗n)(A\vec{u}_1, \dots, A\vec{u}_n)が(u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n)と同じ向きをもつとき、対応x⃗↦Ax⃗\vec{x} \mapsto A\vec{x}は 向きを保つ (orientation-preserving) という。

命題 4.2.nnを正の整数とする。次が成り立つ。

  1. Rn\mathbb{R}^nの向きはちょうど二つであり、(e⃗1,…,e⃗n)(\vec{e}_1,\ldots,\vec{e}_n)の向きと(−e⃗1,e⃗2,…,e⃗n)(-\vec{e}_1,\vec{e}_2,\ldots,\vec{e}_n)の向きである。
  2. SSをR2\mathbb{R}^2の符号付き面積とし、(u⃗,v⃗)(\vec{u},\vec{v})をR2\mathbb{R}^2の枠とする。このときS(u⃗,v⃗)>0S(\vec{u},\vec{v})>0であることと(u⃗,v⃗)(\vec{u},\vec{v})が(e⃗1,e⃗2)(\vec{e}_1,\vec{e}_2)と同じ向きをもつことは同値である。また、S(u⃗,v⃗)<0S(\vec{u},\vec{v})<0であることと(u⃗,v⃗)(\vec{u},\vec{v})が(−e⃗1,e⃗2)(-\vec{e}_1,\vec{e}_2)と同じ向きをもつことは同値である。

証明.(1)を示す。Rn\mathbb{R}^nの枠(u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n)に対し、U=(u⃗1 ⋯ u⃗n)U=(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)とおく。UUは正則であるからdet⁡U≠0\det U\ne0である。定義 4.1 (3)より、det⁡U>0\det U>0ならばこの枠は(e⃗1,…,e⃗n)(\vec{e}_1,\ldots,\vec{e}_n)と同じ向きをもち、det⁡U<0\det U<0ならば(−e⃗1,e⃗2,…,e⃗n)(-\vec{e}_1,\vec{e}_2,\ldots,\vec{e}_n)と同じ向きをもつ。二つの代表を列に並べた行列の行列式はそれぞれ11と−1-1であるから、§D3.4 定理 10.1により両方とも枠であり、定義 4.1 (3)により異なる向きをもつ。

(2)を示す。定理 3.3によりS(u⃗,v⃗)=det⁡(u⃗ v⃗)S(\vec{u},\vec{v})=\det(\vec{u}\ \vec{v})である。したがって、二つの同値は(1)のn=2n=2の場合から従う。▨

定理 4.3.nnを正の整数、AAをnn次の正則な実正方行列とする。x⃗↦Ax⃗\vec{x} \mapsto A\vec{x}が向きを保つこととdet⁡A>0\det A > 0であることは同値である。

証明.e⃗1,…,e⃗n∈Rn\vec{e}_1, \dots, \vec{e}_n \in \mathbb{R}^nを、e⃗j\vec{e}_jの第jj成分が11で他の成分が00である元とすると、(e⃗1 ⋯ e⃗n)(\vec{e}_1\ \cdots\ \vec{e}_n)はnn次単位行列であるから、(e⃗1,…,e⃗n)(\vec{e}_1, \dots, \vec{e}_n)はRn\mathbb{R}^nの枠である。

(u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n)をRn\mathbb{R}^nの枠とし、U=(u⃗1 ⋯ u⃗n)U = (\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)とおく。§D3.1 命題 3.5 (1)により(Au⃗1 ⋯ Au⃗n)=AU(A\vec{u}_1\ \cdots\ A\vec{u}_n) = AUである。PU=AUPU = AUを満たすnn次正方行列PPは定義 4.1 (2)によりただ一つであり、P=AP = Aはこれを満たす。よって(Au⃗1,…,Au⃗n)(A\vec{u}_1, \dots, A\vec{u}_n)が(u⃗1,…,u⃗n)(\vec{u}_1, \dots, \vec{u}_n)と同じ向きをもつことはdet⁡A>0\det A > 0であることと同値であり、この条件は枠の取り方によらない。

したがって、det⁡A>0\det A > 0であればRn\mathbb{R}^nのすべての枠についてこの条件が成り立つのでx⃗↦Ax⃗\vec{x} \mapsto A\vec{x}は向きを保ち、逆にx⃗↦Ax⃗\vec{x} \mapsto A\vec{x}が向きを保つならば、枠(e⃗1,…,e⃗n)(\vec{e}_1, \dots, \vec{e}_n)についてこの条件が成り立つのでdet⁡A>0\det A > 0である。▨

例 4.4.

R=(0−110),H=(−1001)R=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix},\qquad H=\begin{pmatrix}-1&0\\0&1\end{pmatrix}

とする。det⁡R=1\det R=1、det⁡H=−1\det H=-1であるから、§D3.4 定理 10.1によりRRとHHは正則である。Re⃗1=e⃗2R\vec{e}_1=\vec{e}_2、Re⃗2=−e⃗1R\vec{e}_2=-\vec{e}_1であり、定理 4.3によりx⃗↦Rx⃗\vec{x}\mapsto R\vec{x}は向きを保つ。一方、He⃗1=−e⃗1H\vec{e}_1=-\vec{e}_1、He⃗2=e⃗2H\vec{e}_2=\vec{e}_2であり、同じ定理によりx⃗↦Hx⃗\vec{x}\mapsto H\vec{x}は向きを保たない。実際、命題 4.2 (1)により(−e⃗1,e⃗2)(-\vec{e}_1,\vec{e}_2)は(e⃗1,e⃗2)(\vec{e}_1,\vec{e}_2)と異なる向きをもつ。

系 4.5.n∈{2,3}n\in\{2,3\}とし、W:(Rn)n→RW:(\mathbb{R}^n)^n\to\mathbb{R}を定義 3.1の3条件を満たす関数、AAをnn次実正方行列とする。任意のu⃗1,…,u⃗n∈Rn\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n\in\mathbb{R}^nに対して

W(Au⃗1,…,Au⃗n)=det⁡A⋅W(u⃗1,…,u⃗n)W(A\vec{u}_1,\ldots,A\vec{u}_n)=\det A\cdot W(\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n)

が成り立つ。

証明.§D3.1 命題 3.5 (1)により

(Au⃗1 ⋯ Au⃗n)=A(u⃗1 ⋯ u⃗n)(A\vec{u}_1\ \cdots\ A\vec{u}_n)=A(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)

である。定理 3.2と§D3.4 定理 9.1により

W(Au⃗1,…,Au⃗n)=det⁡(A(u⃗1 ⋯ u⃗n))=det⁡A⋅det⁡(u⃗1 ⋯ u⃗n)=det⁡A⋅W(u⃗1,…,u⃗n)W(A\vec{u}_1,\ldots,A\vec{u}_n) =\det\bigl(A(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n)\bigr) =\det A\cdot\det(\vec{u}_1\ \cdots\ \vec{u}_n) =\det A\cdot W(\vec{u}_1,\ldots,\vec{u}_n)

が成り立つ。▨

系 4.6.n∈{2,3}n\in\{2,3\}とし、W:(Rn)n→RW:(\mathbb{R}^n)^n\to\mathbb{R}を定義 3.1の3条件を満たす関数、AAをnn次実正方行列とする。このとき

W(Ae⃗1,…,Ae⃗n)=det⁡AW(A\vec{e}_1,\ldots,A\vec{e}_n)=\det A

である。n=2n=2では単位正方形の像の符号付き面積がdet⁡A\det Aであり、n=3n=3では単位立方体の像の符号付き体積がdet⁡A\det Aである。

証明.系 4.5にu⃗j=e⃗j\vec{u}_j=\vec{e}_jを代入し、W(e⃗1,…,e⃗n)=1W(\vec{e}_1,\ldots,\vec{e}_n)=1を用いる。▨

例 4.7.A=(aij)A = (a_{ij})をdet⁡A=0\det A = 0である22次実正方行列とし、その第11列をa⃗1\vec{a}_1、第22列をa⃗2\vec{a}_2とする。x⃗∈R2\vec{x} \in \mathbb{R}^2の第11成分をx1x_1、第22成分をx2x_2とすると、§D3.1 定義 3.1によりAx⃗A\vec{x}の第ii成分はx1ai1+x2ai2x_1 a_{i1} + x_2 a_{i2}であるから、Ax⃗=x1a⃗1+x2a⃗2A\vec{x} = x_1\vec{a}_1 + x_2\vec{a}_2である。よって

{Ax⃗∣x⃗∈R2}={x1a⃗1+x2a⃗2∣x1,x2∈R}\{A\vec{x} \mid \vec{x} \in \mathbb{R}^2\} = \{x_1\vec{a}_1 + x_2\vec{a}_2 \mid x_1, x_2 \in \mathbb{R}\}

である。

a⃗1=a⃗2=0⃗\vec{a}_1 = \vec{a}_2 = \vec{0}の場合、この集合は{0⃗}\{\vec{0}\}であり、対応する点はOOだけである。

a⃗1\vec{a}_1とa⃗2\vec{a}_2の少なくとも一方が0⃗\vec{0}でない場合を考える。a⃗1\vec{a}_1とa⃗2\vec{a}_2を入れ替えても上の集合は変わらないので、a⃗1≠0⃗\vec{a}_1 \ne \vec{0}としてよい。a⃗1\vec{a}_1の成分をp,qp, q、a⃗2\vec{a}_2の成分をr,sr, sとするとdet⁡A=ps−qr=0\det A = ps - qr = 0である。p≠0p \ne 0のときc=r/pc = r/pとおくとr=cpr = cpであり、ps=qr=cqpps = qr = cqpの両辺をppで割ってs=cqs = cqを得る。q≠0q \ne 0のときc=s/qc = s/qとおくとs=cqs = cqであり、ps=qrps = qrすなわちcpq=qrcpq = qrの両辺をqqで割ってr=cpr = cpを得る。a⃗1\vec{a}_1は0⃗\vec{0}でないのでp≠0p \ne 0とq≠0q \ne 0の少なくとも一方が成り立ち、いずれの場合もa⃗2=ca⃗1\vec{a}_2 = c\vec{a}_1である。したがって

{x1a⃗1+x2a⃗2∣x1,x2∈R}={(x1+cx2)a⃗1∣x1,x2∈R}={ta⃗1∣t∈R}\{x_1\vec{a}_1 + x_2\vec{a}_2 \mid x_1, x_2 \in \mathbb{R}\} = \{(x_1 + cx_2)\vec{a}_1 \mid x_1, x_2 \in \mathbb{R}\} = \{t\vec{a}_1 \mid t \in \mathbb{R}\}

であり、定義 1.1 (3)により、対応する点の全体はOOとPa⃗1P_{\vec{a}_1}を通る直線である。

いずれの場合も、SSをR2\mathbb{R}^2の符号付き面積とすると、系 4.5により、任意のu⃗,v⃗∈R2\vec{u}, \vec{v} \in \mathbb{R}^2に対してS(Au⃗,Av⃗)=0S(A\vec{u}, A\vec{v}) = 0である。

5 演習

問題 5.1.R3\mathbb{R}^3の元

u⃗=(123),v⃗=(014),w⃗=(560)\vec{u} = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \\ 3 \end{pmatrix}, \qquad \vec{v} = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 4 \end{pmatrix}, \qquad \vec{w} = \begin{pmatrix} 5 \\ 6 \\ 0 \end{pmatrix}

と、R3\mathbb{R}^3の符号付き体積VVについて、V(u⃗,v⃗,w⃗)V(\vec{u}, \vec{v}, \vec{w})の値を求めよ。また

B=(110011101)B = \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \end{pmatrix}

に対してV(Bu⃗,Bv⃗,Bw⃗)V(B\vec{u}, B\vec{v}, B\vec{w})の値を求めよ。

解答.

定理 3.4によりV(u⃗,v⃗,w⃗)=det⁡(u⃗ v⃗ w⃗)V(\vec{u}, \vec{v}, \vec{w}) = \det(\vec{u}\ \vec{v}\ \vec{w})である。§D3.4 定理 4.2の与える表示を33次の場合に書き下すと、33次正方行列(cij)(c_{ij})の行列式はc11c22c33+c12c23c31+c13c21c32−c13c22c31−c11c23c32−c12c21c33c_{11}c_{22}c_{33} + c_{12}c_{23}c_{31} + c_{13}c_{21}c_{32} - c_{13}c_{22}c_{31} - c_{11}c_{23}c_{32} - c_{12}c_{21}c_{33}である。(u⃗ v⃗ w⃗)(\vec{u}\ \vec{v}\ \vec{w})の成分を代入すると

det⁡(105216340)=0+0+5⋅2⋅4−5⋅1⋅3−1⋅6⋅4−0=40−15−24=1\det\begin{pmatrix} 1 & 0 & 5 \\ 2 & 1 & 6 \\ 3 & 4 & 0 \end{pmatrix} = 0 + 0 + 5 \cdot 2 \cdot 4 - 5 \cdot 1 \cdot 3 - 1 \cdot 6 \cdot 4 - 0 = 40 - 15 - 24 = 1

であるからV(u⃗,v⃗,w⃗)=1V(\vec{u}, \vec{v}, \vec{w}) = 1である。同じ表示をBBに用いると

det⁡B=1⋅1⋅1+1⋅1⋅1+0−0−1⋅1⋅0−1⋅0⋅1=2\det B = 1 \cdot 1 \cdot 1 + 1 \cdot 1 \cdot 1 + 0 - 0 - 1 \cdot 1 \cdot 0 - 1 \cdot 0 \cdot 1 = 2

である。よって系 4.5によりV(Bu⃗,Bv⃗,Bw⃗)=det⁡B⋅V(u⃗,v⃗,w⃗)=2V(B\vec{u}, B\vec{v}, B\vec{w}) = \det B \cdot V(\vec{u}, \vec{v}, \vec{w}) = 2である。▨

問題 5.2.e⃗1,e⃗2,e⃗3∈R3\vec{e}_1, \vec{e}_2, \vec{e}_3 \in \mathbb{R}^3を、e⃗j\vec{e}_jの第jj成分が11で他の成分が00である元とする。(e⃗2,e⃗3,e⃗1)(\vec{e}_2, \vec{e}_3, \vec{e}_1)がR3\mathbb{R}^3の枠であることを確かめ、これが(e⃗1,e⃗2,e⃗3)(\vec{e}_1, \vec{e}_2, \vec{e}_3)と同じ向きをもつかどうかを判定せよ。また

A=(0−1010000−1)A = \begin{pmatrix} 0 & -1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & -1 \end{pmatrix}

について、x⃗↦Ax⃗\vec{x} \mapsto A\vec{x}が向きを保つかどうかを判定せよ。

解答.

U=(e⃗2 e⃗3 e⃗1)U = (\vec{e}_2\ \vec{e}_3\ \vec{e}_1)とおく。UUは33次単位行列IIの第11列と第22列を入れ替え、続いて第22列と第33列を入れ替えて得られるから、§D3.4 系 6.2によりdet⁡U=(−1)2det⁡I=1\det U = (-1)^2 \det I = 1である。よって§D3.4 定理 10.1によりUUは正則であり、(e⃗2,e⃗3,e⃗1)(\vec{e}_2, \vec{e}_3, \vec{e}_1)はR3\mathbb{R}^3の枠である。(e⃗1 e⃗2 e⃗3)=I(\vec{e}_1\ \vec{e}_2\ \vec{e}_3) = IでありPI=UPI = Uを満たす行列はP=UP = Uであるから、det⁡P=1>0\det P = 1 > 0となり、(e⃗2,e⃗3,e⃗1)(\vec{e}_2, \vec{e}_3, \vec{e}_1)は(e⃗1,e⃗2,e⃗3)(\vec{e}_1, \vec{e}_2, \vec{e}_3)と同じ向きをもつ。

AAについては、成分のうち00でないものは第(1,2)(1,2)成分−1-1、第(2,1)(2,1)成分11、第(3,3)(3,3)成分−1-1だけである。§D3.4 定理 4.2の与える表示のうち、これら3つの成分だけを因子にもつ項は、11を22へ、22を11へ、33を33へ移す置換に対応する項だけであり、この置換の符号は−1-1である。よってその項の値は(−1)⋅(−1)⋅1⋅(−1)=−1(-1) \cdot (-1) \cdot 1 \cdot (-1) = -1であり、det⁡A=−1\det A = -1である。§D3.4 定理 10.1によりAAは正則であり、det⁡A<0\det A < 0であるから、定理 4.3によりx⃗↦Ax⃗\vec{x} \mapsto A\vec{x}は向きを保たない。▨

参考文献

  1. 齋藤正彦『線型代数入門』基礎数学 1, 東京大学出版会, 1966.行列式の絶対値を面積および体積へ対応させる説明の順序を参考にしました。
  2. Kenneth Hoffman and Ray Kunze, Linear Algebra, 2nd ed., Prentice Hall, Englewood Cliffs, N.J., 1971.交代多重線形形式の一意性から面積を与える関数を特徴づける議論を参考にしました。
  3. Michael Artin, Algebra, 2nd ed., Pearson, Boston, 2011.行列式の符号によって向きを定める定式化を参考にしました。

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