§A1.17不定元と変数の区別

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同じ文字を用いた式でも、係数列として扱う多項式と、数を代入して値を得る関数とでは、等号が比較する対象が異なります。本記事は、不定元をもつ多項式・評価値・実数上の関数を区別し、実数係数多項式では係数の一致と対応する関数の値の一致が同値であることを証明します。

1 2つの文字は別の役割を持つ

定義 1.1 (形式的な多項式).nnを非負整数、a0,a1,…,ana_0,a_1,\ldots,a_nを実数とする。式

P(X)=a0+a1X+⋯+anXnP(X)=a_0+a_1X+\cdots+a_nX^n

を、係数列(a0,a1,…,an,0,0,…)(a_0,a_1,\ldots,a_n,0,0,\ldots)によって定まる実数係数多項式といい、XXを不定元という。二つの多項式が等しいとは、すべての次数で対応する係数が等しいことをいう。したがって、末尾に係数00の項を書き加えても同じ多項式を表す。

公式 1.2 (実数での評価). 実数係数多項式

P(X)=a0+a1X+⋯+anXnP(X)=a_0+a_1X+\cdots+a_nX^n

と実数aaに対して

P(a)=a0+a1a+⋯+ananP(a)=a_0+a_1a+\cdots+a_na^n

と定める。P(X)P(X)は係数列で定まる多項式であり、P(a)P(a)は一つの実数である。

例 1.3 (同じ式表示が表す三つの対象). 多項式

P(X)=X2−3X+2P(X)=X^2-3X+2

は、係数列(2,−3,1,0,0,…)(2,-3,1,0,0,\ldots)で定まる形式的な対象である。この多項式をX=0X=0で評価すると実数P(0)=2P(0)=2を得て、X=1X=1で評価すると実数P(1)=0P(1)=0を得る。

一方

f(x)=x2−3x+2f(x)=x^2-3x+2

と書いてffを実数上の関数とすると、xxは入力される実数を表し、ffは各実数xxに実数f(x)f(x)を対応させる。P(X)P(X)は多項式、P(1)P(1)は評価によって得た実数、ffは実数を実数へ対応させる関数であり、三者の種類は異なる。

定理 1.4 (多項式の等号と対応する関数の等号).P(X),Q(X)P(X),Q(X)を実数係数多項式とし、対応する実数上の関数を

f(x)=P(x),g(x)=Q(x)f(x)=P(x),\qquad g(x)=Q(x)

とする。このとき、P(X)=Q(X)P(X)=Q(X)であることと、すべての実数xxでf(x)=g(x)f(x)=g(x)であることは同値である。

証明.P(X)=Q(X)P(X)=Q(X)とする。対応する係数はすべて等しいので、任意の実数xxを各項へ代入するとP(x)=Q(x)P(x)=Q(x)となる。したがって、すべての実数xxでf(x)=g(x)f(x)=g(x)である。

逆に、すべての実数xxでf(x)=g(x)f(x)=g(x)とする。この仮定は、すべての実数xxでP(x)=Q(x)P(x)=Q(x)が成り立つことを意味する。§A1.9 定理 1.2によりPPとQQの対応する係数はすべて等しいので、P(X)=Q(X)P(X)=Q(X)である。▨

2 なぜ区別するのか

  • 係数比較では、両辺を実数係数多項式として整理します。すべての実数で値が一致する場合には、§A1.9 定理 1.2を用いて係数の一致へ進みます。
  • 整式の除法では、係数を用いて商と余りを求めます。このときのXXは特定の実数を表さない不定元です。
  • 方程式x2=4x^2=4では、等式を満たす実数xxを求めます。x=2x=2やx=−2x=-2で等式が成り立つことは、二つの多項式の係数が一致することを意味しません。

例題

条件と何を求めるかを確認してから、式と答えの対応を見比べてください。

整式(多項式)の文字は「不定元」(係数を操作するための形式的な記号)、関数・方程式の文字は「変数」(値を代入する対象)である。この区別をふまえて次の問いに答えよ。

解法の型多項式として等しい == 係数がすべて一致。関数として等しい == すべての値で一致。R\mathbb{R} 上ではこの2つは同値だが、有限体 F_p では xpx^p − x が反例になる(関数としては零、多項式としては零でない)

  1. 次の主張の真偽を判定せよ。主張: 整式(多項式)として f == g とは、対応する係数がすべて一致することである

    整式(多項式)として f=g とは、対応する係数がすべて一致することである\text{整式(多項式)として } f = g \ \text{とは、対応する係数がすべて一致することである}
  2. 有限体 F_2(元は 0, 1 の 2 個で、法 2 で計算する体)を考える。f(x) ==x2x^2 − x について、F_2 のすべての元 a における値 f(a) を計算せよ。そのうえで、f が多項式として零多項式かどうかを判定せよ。

    F2 上でf(x)=x2−x\mathbb{F}_{2} \ \text{上で} \quad f(x) = x^{2} - x
  3. 次の主張の真偽を判定せよ。主張: F2F_{2} 上で x² と x は多項式として等しい

    F2 上で x2 と x は多項式として等しい\mathbb{F}_{2} \ \text{上で } x^{2} \ \text{と } x \ \text{は多項式として等しい}
  4. f(x) と g(x) が次で与えられるとき、f + g の次数と fg の次数を求めよ。

    f(x)=2x2+3x−1,g(x)=−2x2−x−3f(x) = 2x^{2}+3x-1,\qquad g(x) = -2x^{2}-x-3
  5. f(x) と g(x) が次で与えられるとき、f + g の次数と fg の次数を求めよ。

    f(x)=−3x3+3x2−x+1,g(x)=3x3+x+3f(x) = -3x^{3}+3x^{2}-x+1,\qquad g(x) = 3x^{3}+x+3
  6. 等式 x³ + 1 == (x+1)(x²−x+1) は恒等式か方程式か(あるいは解をもたないか)を判定せよ。方程式ならば解も求めよ。

    x3+1=(x+1)(x2−x+1)x^{3} + 1 = (x + 1)(x^{2} - x + 1)
  7. f(x) と g(x) が次で与えられるとき、f + g の次数と fg の次数を求めよ。

    f(x)=x4−2x3−2x2−3x+3,g(x)=−x4+x3−3x2−x+2f(x) = x^{4}-2x^{3}-2x^{2}-3x+3,\qquad g(x) = -x^{4}+x^{3}-3x^{2}-x+2
  8. f(x) と g(x) が次で与えられるとき、f + g の次数と fg の次数を求めよ。

    f(x)=2x4+3x3−x2+2x−2,g(x)=2x4−2x3+x2−3x+1f(x) = 2x^{4}+3x^{3}-x^{2}+2x-2,\qquad g(x) = 2x^{4}-2x^{3}+x^{2}-3x+1
  9. 次の主張の真偽を判定せよ。主張: 整式の除法(商と余りを求める操作)では x に値を代入しない

    整式の除法(商と余りを求める操作)では x に値を代入しない\text{整式の除法(商と余りを求める操作)では } x \ \text{に値を代入しない}
  10. f(x) と g(x) が次で与えられるとき、f + g の次数と fg の次数を求めよ。

    f(x)=−x4+x3+x2−3x+3,g(x)=−3x2−x+1f(x) = -x^{4}+x^{3}+x^{2}-3x+3,\qquad g(x) = -3x^{2}-x+1

演習

問題を解いてから「解答・解説」を開けます。

整式(多項式)の文字は「不定元」(係数を操作するための形式的な記号)、関数・方程式の文字は「変数」(値を代入する対象)である。この区別をふまえて次の問いに答えよ。

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