1 対象理論を PA 以上に固定する
算術言語をLA={0,S,+,×}とする。順序は§E16.15 定義 1.1の略記に従い、x≤yを∃z(y=x+z)の略記とする。
定義 1.1. 本記事を通じて、LA理論Tが次の二条件を満たすと仮定する。
- PA⊆Tである。ここでPAは§E16.15 定義 3.1の Peano 算術である。
- Tの公理を重複を許して列挙する決定的プログラムETを一つ固定することができる。
証明体系は§E16.10 定義 1.1の一階 Hilbert 系であり、論理公理スキーマを (H1)–(H3)、全称具体化の公理∀xφ→φ[x:=t]、全称分配の公理∀x(φ→ψ)→(φ→∀xψ)、および等号公理スキーマとする。同定義の副条件をそのまま引き継ぐ。すなわち、全称具体化の公理ではtがφのxへ自由に代入可能であることを、全称分配の公理ではxがφに自由に現れないことを要求する。この副条件を落とした形は妥当な公理スキーマではない。上流の記事はこの二つの量化子公理スキーマを (Q1)、(Q2) と呼んでいる。本記事では§E16.15 定義 2.1の公理を (Q1)、(Q2)、(Q4)–(Q7) の名で用いるため、記号の衝突を避けて論理公理スキーマの側を上の名で呼ぶ。上流の記事の記号は変更しない。Q⊆PA⊆Tであるから、Qを含む理論について上流の記事が証明した結果は、そのままTについて用いることができる。
Tの内部で用いる帰納法と、記事を記述するメタ理論で用いる帰納法を区別する必要がある。以下では第三の水準も現れる。すなわち、対象理論Tの証明可能性について述べる算術文を、PAが証明するという水準である。PA⊆Tであるから、PAが証明した文はTも証明する。この移行は、PAの結論をTの定理として用いる箇所で明示する。
§E16.21 定義 5.3と同じ標準的なΣ1証明述語PrfT(p,y)を用いて
ProvT(y):=∃pPrfT(p,y)
と定める。以下では、LA文φに対して
□TφをProvT(┌φ┐)
の略記とする。従って、□T□Tφは
ProvT(┌ProvT(┌φ┐)┐)
を表す。この記法は新しい様相演算子を言語へ加えるものではない。
定義 1.2. 固定した矛盾文を
⊥ := 0=S0と略記し、
ConT:=¬ProvT(┌0=S0┐)=¬□T⊥と定める。この文は、固定した証明体系、固定した公理列挙プログラム、および固定したPrfTに相対的である。
この段階ではTの無矛盾性を仮定しない。以下の三つの導出可能性条件は、矛盾するTに対しても、固定した証明符号の算術化から構文論的に成り立つ。
2 算術の道具を前提記事から引く
以下の議論は、長さの定まらない証明符号を自由変数として残したまま、有限列の法則と原始再帰関数の性質を用いる。§E16.19 定義 4.1が固定した有限列算術式は、Qの内部で標準入力を検証するために設計されており、その正しさは標準自然数についての外的な主張として証明されている。自由変数を残した一様な主張は、PAの帰納法公理スキーマを用いて別に証明しなければならない。
その作業は本記事では行わない。§E16.20 補題 5.2が長さ、成分、先頭追加、連結、末尾追加の法則を、§E16.20 補題 6.1が原始再帰関数の全域性と定義方程式を、§E16.20 補題 6.5がコース再帰の還元の定義方程式を、§E16.20 補題 7.2と§E16.20 補題 7.4が構文操作と数詞符号・閉項符号の法則を、いずれもPAの定理として与えている。さらに、§E16.20 補題 4.1が対関数と Cons 符号の法則を、§E16.20 補題 5.1が反復尾の法則を、§E16.20 補題 3.2が有限族の表符号化を、§E16.20 補題 1.2が最小数原理を、§E16.20 補題 6.7と§E16.20 補題 6.4が原始再帰版と有限列算術式 API との値の一致を、いずれもPAの定理として与えている。本記事はこれらを前提として用いる。原始再帰関数の値を項のように書く記法は§E16.20 記法、数詞代入の記法は§E16.20 定義 7.5に従う。
これらの前提はすべてPAの帰納法を用いて証明されている。本記事が対象理論をPA以上に限定する理由の一つはここにある。
3 D1:具体的証明を内部化する
命題 3.1. 任意の固定したLA文φについて、メタ理論で
T⊢φならば、メタ理論で
PA⊢□Tφ,従ってT⊢□Tφである。
証明.T⊢φと仮定する。この仮定は、標準自然数で符号化された有限なT証明が存在するという外的主張である。その証明符号をp0とする。§E16.21 定理 5.4の具体的証明の内部化により
Q⊢PrfT(pˉ0,┌φ┐)である。存在導入により
Q⊢∃pPrfT(p,┌φ┐),すなわちQ⊢□Tφを得る。Q⊆PA⊆TなのでPA⊢□TφかつT⊢□Tφである。ここではT⊢φという外的前提を標準モデルにおける真理へ移していない。具体的な有限証明符号p0を数詞としてQ内へ移しただけであり、Tの無矛盾性や健全性を用いていない。▨
D1 の結論をPAの水準で述べたことは、以下で繰り返し用いる。固定した各Tの定理θについて、PAは算術文□Tθを証明する。PA⊆Tであるから、Tが証明する固定した文は、PAの内部の議論でも証明可能性の入力として使うことができる。
4 証明列の合成と D2
以下では、証明列の長さnについて0<nのときのn−1を次の意味で用いる。LAには切捨て減法の関数記号が無いので、n−1は項ではない。0<nならば§E16.20 補題 1.1 (4)によりn=Sn′を満たすn′が存在し、(Q2) によりこのn′は一意である。an−1=yのような表記は∃n′(Sn′=n∧an′=y)の略記であり、n−1はこの一意なn′を表す。§E16.20 補題 6.3が定義列を固定した切捨て減法の値n−˙S0も、0<nのときこのn′に等しい。同補題の第1項がS0≤n→(n−˙S0)+S0=nを与え、§E16.20 補題 1.1 (3)により0<nとS0≤nが同値だからである。n+m−1も同様に、0<mのときのS(n+m′)=n+mを満たす一意な値を表す。
補題 4.1.PAは次を証明する。任意のp,yについてPrfT(p,y)が成り立つことと、次の三条件が成り立つことは同値である。
- n=Len(p)>0であり、各s<nについて第s行ℓsは§E16.21 定義 3.3の六成分ks,as,us,vs,is,wsをもつ。
- 各s<nについてFormula(as)が成り立ち、同定義の第4項の四つの場合のいずれかが成り立つ。
- an−1=yかつSentence(y)が成り立つ。
証明.PrfT(p,y)は∃zCheckT(p,y,z)の略記である。§E16.21 定義 3.3はCheckT(p,y,z)を、受理証人の条件AccT(p,y,z)と、z′≼zを満たす棄却証人が存在しないという条件との連言として定めている。AccTは五つの項目からなる。上流はこれらを第1項から第5項と呼ぶが、本補題自身の項と紛れるため、本記事では第1節から第5節と呼ぶ。第1節、第2節、第4節、第5節が上の第1項から第3項までの条件そのものであり、第3節は各行で必要になる原始再帰的検査の計算 trace がzの成分として入っていることを述べる。
左から右を示す。CheckT(p,y,z)を仮定すると、第1連言からAccT(p,y,z)が成り立つ。その第1節と第2節はLenQ0、AtQ0、EntryQ0の raw 式によってpの長さと各行の六成分を取り出す。§E16.20 補題 5.2 (1)と第2項により、これらの値はPAの内部で一意に定まり、Len(p)とEntry(p,s)に等しい。従って第1項が成り立ち、第4節と第5節から第2項と第3項が成り立つ。
右から左を示す。 第1項から第3項までを仮定し、CheckT(p,y,z)を満たすzを作る。
まず、zに入るべき成分をすべて集める。n:=Len(p)とする。§E16.20 補題 5.1 (5)は、pの第n反復尾が0であり、i<nを満たす各iの反復尾が0でないようなnの存在を与える。§E16.20 補題 5.2 (1)により、このnはLen(p)に等しい。AtQ0(p,n,0)が成り立つので、その証人として、pをn回復号する表符号(B,C)を取ることができる。各行ℓsとその六成分は§E16.20 補題 5.2 (2)が与える一意な値である。各行についてzへ集める trace は、§E16.21 定義 3.3の定義の第3項が正典として定めた一覧に従う。すなわちTerm、Formula、Free、FreeFor、SubTermCode、Look、およびAxWitTのうち、当該行で必要となるものの trace である。LogAxとSentenceは、同項が上流の定義の字面へ展開した形で用いると定めた述語であり、固有の遷移列をもたない。従ってこの二つについて同項が求めるのは、展開に現れる上の各判定の trace である。Term、Formula、Free、FreeForは§E16.18 定理 5.2により、SubTermCodeは§E16.18 定理 3.4により、Lookは§E16.18 定義 3.2と§E16.17 補題 3.1により、AxWitTは§E16.21 定理 2.2により、いずれも原始再帰的である。従って、それぞれの計算の接頭トレースR(q,n′)も原始再帰全関数の値である。§E16.20 補題 6.1 (1)により、これらの値はいずれもPAの内部で存在し一意である。AxWitTの証人wsは行ℓsの第6成分としてすでにpの中にあり、その検査 trace も同じ理由で一意に定まる。Term、Formula、Freeについては§E16.20 補題 7.2 (2)、FreeForについては同補題の第3項、SubTermCodeについては同補題の第4項が、いずれも§E16.20 補題 6.5 (2)を経て、PAがその値の構造再帰方程式を証明することを与える。Lookについては§E16.20 補題 7.1 (1)が定義方程式を与える。LogAxとSentence自身については、構造再帰方程式による展開を用いない。ここで用いるのは、上の一覧が挙げた判定の値の存在と一意性だけである。
次に、これらを一つの符号へまとめる。各添字s<nに対して、第s行に付随する成分を並べた符号を対応させる論理式は、上で述べた一意性によりsごとに一意な値を定める。§E16.20 補題 3.2を用いてこの族の表符号を取り、§E16.20 補題 5.2 (7)の末尾追加をn回繰り返す帰納法によって、長さnの一つの列符号へ収めることができる。復号表と全体に関わる成分を先頭へ加えると、目的のzを得る。
最後に、z′≼zを満たす棄却証人が存在しないことを確かめる。§E16.21 定義 3.3のRejT(p,y,z′)は、次の三つの場合のいずれかを、z′に格納した復号表と trace とともに主張する。第一は、Len(p)=0であることである。第二は、n=Len(p)>0であり、ある行r<nについてFormula(ar)または第4節の四つの場合のいずれもが成り立たないことである。第三は、n=Len(p)>0であり、an−1=yもしくは¬Sentence(y)であることである。
第一の場合を排除する。仮定した第1項は0<n=Len(p)を与えており、§E16.20 補題 5.2 (1)により長さの値はPAの内部で一意であるから、Len(p)=0は成り立たない。第二の場合と第三の場合を排除する。RejTが読み出す長さ、成分、および各判定の値は、同じ§E16.20 補題 5.2と§E16.20 補題 6.1によりPAの内部で一意に定まるので、仮定した第2項および第3項と衝突する。従ってPAは∀z′¬RejT(p,y,z′)を証明し、とくにz′≼zへ有界化した連言肢を得る。
以上によりCheckT(p,y,z)を満たすzが存在し、PrfT(p,y)を得る。▨
この補題により、以降では検査証人zを明示せず、行ごとの条件だけを扱えばよい。証人の存在はPAが保証する。
§E16.21 定義 6.1の合成関数comb(p,q)を用いる。同定義は、qの先行添字をLen(p)だけずらしてpの後ろへ連結し、末尾に modus ponens の一行を加える全域原始再帰関数である。§E16.21 命題 6.2は、標準自然数の証明符号についてこの関数が正しい証明を返すことをメタ理論で証明している。以下では、同じ主張を自由変数を残したままPAの内部で証明する。
補題 4.2.
PA⊢∀b∀c∀p∀q(PrfT(p,ImpRaw(b,c))∧PrfT(q,b)→PrfT(comb(p,q),c))である。従って
PA⊢∀b∀c(ProvT(ImpRaw(b,c))∧ProvT(b)→ProvT(c))である。
証明.PAの内部でb,c,p,qを取り、二つの前件を仮定する。n=Len(p)、m=Len(q)とすると、補題 4.1によりn,m>0であり、pの末尾行の論理式はImpRaw(b,c)、qの末尾行の論理式はbである。§E16.21 定義 6.1のConseqは、符号がImpRaw(b,c)の形をもつときにその後件cを返す原始再帰全関数であり、§E16.20 補題 6.1 (2)によりその定義列の方程式はPAの定理である。従ってPAはConseq(an−1)=cを証明する。また、§E16.20 補題 7.2 (2)が与えるFormula(ImpRaw(b,c))↔(Formula(b)∧Formula(c))とFree(ImpRaw(b,c),i)↔(Free(b,i)∨Free(c,i))、および同補題の第1項が与えるc<ImpRaw(b,c)により、§E16.18 定義 2.1のSentenceの定義の有界全称量化がそのままcへ移る。従ってSentence(ImpRaw(b,c))からSentence(c)が従う。
r=comb(p,q)と置く。combは原始再帰的なConcatとConsで定義されているのに対し、PrfTは有限列算術式 API を用いる。§E16.20 補題 6.7と§E16.20 補題 6.4により、PAは双方の値が一致することを証明するので、以下では区別せずに扱う。§E16.20 補題 5.2 (6)と第7項により、PAはLen(r)=n+m+1と、rの第s成分についての次の三つの場合分けを証明する。ここでcombは二回の連結として定義されており、末尾の一行は長さ1の列との連結として加わる。
s<nの場合、rの第s行はpの第s行である。規則タグ、論理式、先行添字、公理証人はいずれも変わらず、先行添字はsより小さいままである。従って補題 4.1 (2)の該当する場合がrでも成り立つ。参照する先行行がpの中にあることは、s<nの範囲でrとpの成分が一致することから従う。
n≤s<n+mの場合、s=n+jと書くと、rの第s行はqの第j行をShiftnで移したものである。論理公理行と理論公理行では、論理式、LogAx判定、AxWitT証人が変わらないので条件はそのまま保たれる。modus ponens 行では、qにおける先行添字u,v<jがu+n,v+n<n+j=sとなり、参照先の論理式は第2領域で同じだけ移るため、au+n=ImpRaw(a′,as)とav+n=a′という一致が保たれる。一般化行でも同様に、先行添字がnだけ増え、一般化変数と本体の論理式が変わらないので条件が保たれる。ここで用いた「Shiftnが論理式を変えない」という事実と「添字がnだけ増える」という事実は、次のように得る。§E16.21 定義 6.1はShiftnを Cons 符号に関する有界コース再帰で定めており、§E16.20 補題 4.1によりPAは0<s→Tail(s)<sを証明するので、§E16.20 補題 6.5 (1)によりPAはShiftnの二つの定義方程式を証明する。そのうえで列の長さに関するPAの帰納法を行い、§E16.20 補題 5.2 (3)で成分を追跡すればよい。
s=n+mの場合、rの第s行はLineT(3,c,n−1,n+m−1,0,0)である。第n−1行の論理式はImpRaw(b,c)、第n+m−1行の論理式はbであるから、modus ponens の節がa′=bについて成り立つ。二つの先行添字はいずれもsより小さい。
以上でrの全行が第2項を満たす。末尾行の論理式はcであり、Sentence(c)はすでに得ている。従って補題 4.1によりPrfT(r,c)である。
第二の主張は、二つの前件の存在量化子を除去してp,qを取り、第一の主張を適用したうえでcomb(p,q)を証人として存在導入すれば得られる。▨
命題 4.3. 任意の固定したLA文α,βについて、
PA⊢□T(α→β)→(□Tα→□Tβ),従ってT⊢□T(α→β)→(□Tα→□Tβ)である。
証明.§E16.18 定義 1.1が含意の符号をImpRaw(y,z)=SeqCode(8,y,z)と固定しているので、┌α→β┐=ImpRaw(┌α┐,┌β┐)である。補題 4.2の第二の主張の全称量化子へb:=┌α┐、c:=┌β┐を代入すると、表示したPAの定理を得る。PA⊆TよりTも同じ文を証明する。この導出では、標準証明符号を一つも選んでいない。p,qを自由変数として残した補題 4.2を用いており、無矛盾性も用いていない。▨
5 対象理論内で証明を組み立てる三つの補題
D3 は D2 と異なり、内部で量化された任意の証明符号について証明可能性を証明可能にすることを要求する。そこで、PAが対象理論内の証明を一様に組み立てる三つの補題を用意する。閉項符号と代入可能性の判定については§E16.20 補題 7.4を用いる。同補題は、数詞符号Num(x)が閉項符号であること、閉項符号が任意の論理式符号の任意の変数へ自由に代入可能であること、閉項符号どうしの構成も閉項符号であること、代入する変数が本体に自由に現れない場合に代入結果が本体自身であること、および項符号を代入した結果がふたたび論理式符号であり、その自由変数が本体と代入項の自由変数から上に抑えられることを、いずれもPAの定理として与えている。
補題 5.1.χを、自由変数がvi1,…,vikに含まれる固定したLA論理式とし、∀vχをその全称閉包とする。χのvi1,…,vikへ符号e1,…,ekを順に代入した符号をinstχ(e1,…,ek)と書く。このとき
PA⊢∀e1⋯∀ek(1≤j≤k⋀ej が閉項符号 ∧ □T∀vχ→ProvT(instχ(e1,…,ek)))である。とくにej:=Num(xj)と取ると
PA⊢∀x1⋯∀xk(□T∀vχ→ProvT(┌χ(x˙1,…,x˙k)┐))である。
証明.kは外側で固定した自然数なので、kに関する帰納法は不要であり、k段の有限な操作を並べればよい。j=0,1,…,kについて、χのvi1,…,vijへe1,…,ejを代入し、残るvij+1,…,vikを全称量化した符号をθj(e)と書く。θ0は仮定の∀vχであり、θk(e)はinstχ(e)である。
まず、各ejが閉項符号であれば、j=0,1,…,kのすべてについてθj(e)が文の符号であることを確かめる。j=0では、θ0は固定した文∀vχの符号であるからSentence(θ0)が成り立つ。§E16.20 補題 7.3により、符号に自由に現れる変数の添字はその符号より小さいので、Sentenceに現れる有界全称量化∀i≤yはすべての候補を調べており、∀k′¬Free(θ0,k′)が従う。以下の各段でも、文の符号であるという主張はこの有界化していない形で用いる。θj(e)が文の符号であるとし、θj(e)=AllRaw(ij+1,aj)と書く。§E16.20 補題 7.2 (2)が与えるFormulaとFreeのAllRawの節により、Formula(aj)が成り立ち、Free(aj,k′)を満たすk′はk′=ij+1に限る。θj+1(e)=SubTermCode(aj,ij+1,ej+1)であり、ej+1は閉項符号であるからTerm(ej+1)が成り立つ。従って§E16.20 補題 7.4 (7)をa:=aj、i:=ij+1、t:=ej+1について適用することができる。同項の前半によりFormula(θj+1(e))である。同項の後半により、Free(θj+1(e),k′)が成り立つならば、k′=ij+1かつFree(aj,k′)であるか、またはFree(aj,ij+1)かつFree(ej+1,k′)である。前者はFree(aj,k′)→k′=ij+1に反する。後者については、同補題が「eが閉項符号であること」とTerm(e)∧∀k′¬Free(e,k′)との同値をPAの定理として与えているので、Free(ej+1,k′)はこれに反する。従ってPAは∀k′¬Free(θj+1(e),k′)を証明する。§E16.18 定義 2.1のSentenceはFormulaと有界全称量化∀i≤y¬Free(y,i)の連言であるから、有界化していない主張からこの連言が従い、Sentence(θj+1(e))を得る。
同じ段で、j+1<kのときにθj+1(e)の最外の量化子が∀vij+2のままであることも確かめておく。ajの最外の構成子はAllRaw(ij+2,⋅)であり、§E16.18 定義 3.3の改名の第3条件はvij+2が代入する項に自由に現れることを含むが、ej+1は閉項符号なのでこれは成り立たない。従って改名は発動せず、§E16.20 補題 7.2 (4)のAllRawの場合の等式により、束縛変数の添字はij+2のままである。以上により、代入をこの順序で行えば、途中の各段の符号も文の符号であり、各段で次に取り除く量化子の変数添字も定まる。
PAの内部で閉項符号eを取り、□Tθ0を仮定する。jを0からk−1まで動かし、次の二段を順に適用する。
§E16.20 補題 7.4 (3)により、閉項符号ej+1はθj(e)の量化子∀vij+1の本体へ自由に代入可能である。従って符号
dj(e)=ImpRaw(θj(e), θj+1(e))は§E16.10 定義 1.1の論理公理スキーマのうち、定義 1.1で全称具体化の公理と呼んだものの置換例の符号であり、PAはLogAx(dj(e))を証明する。
このことを確かめる。y:=dj(e)、i:=ij+1とし、θj(e)=AllRaw(i,a)と書く。§E16.18 定義 4.2 (2)は、i,t,a,b≤yを満たすi,t,a,bが存在して
y=ImpRaw(AllRaw(i,a),b),Term(t),FreeFor(t,i,a),b=SubTermCode(a,i,t)が成り立つことを要求する。すなわち有界性も判定の一部である。aとb=θj+1(e)はyの真部分符号であり、iはAllRaw(i,a)の成分であるから、§E16.20 補題 7.2 (1)によりi,a,b≤yである。証人tについては場合を分ける。
Free(a,i)が成り立つ場合はt:=ej+1を証人に取る。§E16.20 補題 7.4 (6)によりt≤SubTermCode(a,i,t)=b≤yである。
¬Free(a,i)が成り立つ場合、ej+1はyの上界を超え得る。実際、代入する変数が本体に自由に現れなければ代入結果は本体と同じであり、ej+1の大きさは結果に反映されない。そこでt:=Zeroを証人に取る。§E16.20 補題 7.4 (5)によりSubTermCode(a,i,Zero)=a=bであり、この場合はθj+1(e)=SubTermCode(a,i,ej+1)=aでもあるから両者は一致する。Zero≤yは次による。§E16.18 定義 1.1によりZero=Cons(2,0)であり、y=ImpRaw(θj(e),θj+1(e))は先頭成分がタグ8の Cons 符号である。§E16.20 補題 4.1 (5)はCons(a,t)=Spair(a,t)とa<Cons(a,t)を与えるので、pair(2,0)=3からZero=4であり、8<yから9≤yである。従ってZero≤yである。Term(Zero)とFreeFor(Zero,i,a)は同補題の第2項と第3項による。
いずれの場合も、代入可能性は§E16.20 補題 7.4 (3)が与える。従ってPAは判定の四条件をすべて確かめ、LogAx(dj(e))を証明する。
長さ1の列Cons(LineT(1,dj(e),0,0,0,0),0)を取る。末尾の論理式dj(e)=ImpRaw(θj(e),θj+1(e))は文の符号である。実際、上でθj(e)とθj+1(e)がともに文の符号であることを示しており、§E16.20 補題 7.2 (2)が与えるFormula(ImpRaw(b,c))↔(Formula(b)∧Formula(c))とFree(ImpRaw(b,c),k′)↔(Free(b,k′)∨Free(c,k′))により、Formula(dj(e))と∀k′¬Free(dj(e),k′)が従うからである。従って補題 4.1によりこの列はT証明であり、
ProvT(dj(e))である。この段の入力ProvT(θj(e))と合わせ、補題 4.2の第二の主張をb:=θj(e)、c:=θj+1(e)について適用するとProvT(θj+1(e))を得る。
j=k−1の段を終えるとProvT(instχ(e))である。特別な場合は、§E16.20 補題 7.4 (2)によりNum(xj)が閉項符号であることから得る。▨
この補題と D1 を合わせると、次の道具が得られる。Tが証明する固定した全称文∀vχと、PAの内部で与えられた任意の閉項符号eについて、PAはProvT(instχ(e))を証明する。PA⊆Tであるから、PAが証明する任意の全称文をこの入力として使うことができる。以下では、この二段の組合せを「内部具体化」と呼ぶ。代入する符号は数詞に限らず、閉項符号であればよい。以下で等号の合同性や推移律をAdd(Num(x),Num(y))のような複合閉項へ具体化するのは、この形の適用である。
補題 5.2.PAは次を証明する。
- ∀x∀y ProvT(┌x˙+y˙=(x+y)⋅┐)。
- ∀x∀y ProvT(┌x˙×y˙=(x×y)⋅┐)。
- ∀x∀y (x=y→ProvT(┌x˙=y˙┐))。
- ∀x∀y (x≤y→ProvT(┌x˙≤y˙┐))および∀x∀y (y<x→ProvT(┌¬(x˙≤y˙)┐))。
- ∀x∀y (x<y→ProvT(┌x˙<y˙┐))および∀x∀y (y≤x→ProvT(┌¬(x˙<y˙)┐))。
ここで上付きの点は§E16.20 定義 7.5の数詞代入の記法であり、┌x˙+y˙=(x+y)⋅┐は、Eq(Add(Num(x),Num(y)),Num(x+y))を計算する原始再帰全関数の値を§E16.20 記法の記法で書いたものである。他の四項も同様である。
証明.(1)を示す。PAの内部でxを固定し、yに関するPAの帰納法を行う。
y=0の場合を見る。Num(0)=Zeroは§E16.18 定義 3.1の基底節であり、Numはパラメータ列が空の原始再帰であるから、§E16.20 補題 6.1 (2)によりこの閉じた等式はPAの定理である。またPAはx+0=xを証明するのでNum(x+0)=Num(x)である。Tは (Q4) の全称閉包∀v(v+0=v)を証明するから、内部具体化をxに適用してProvT(┌x˙+0=x˙┐)を得る。
yからSyへ進む段では、§E16.20 補題 7.4 (1)によりNum(Sy)=Succ(Num(y))であり、PAが証明するx+Sy=S(x+y)からNum(x+Sy)=Succ(Num(x+y))である。次の三つを順に得る。
- Tが証明する (Q5) の全称閉包∀v∀w(v+Sw=S(v+w))へ内部具体化を適用して、ProvT(┌x˙+Sy˙=S(x˙+y˙)┐)。
- 帰納法の仮定ProvT(┌x˙+y˙=(x+y)⋅┐)と、Tが証明する∀v∀w(v=w→Sv=Sw)への内部具体化、および補題 4.2により、ProvT(┌S(x˙+y˙)=S(x+y)⋅┐)。
- Tが証明する等号の推移律∀u∀v∀w(u=v→(v=w→u=w))への内部具体化と補題 4.2の二回の適用により、ProvT(┌x˙+Sy˙=S(x+y)⋅┐)。
最後の符号は┌x˙+(Sy)⋅=(x+Sy)⋅┐に等しい。従って帰納法の段が閉じる。
(2)も同様である。y=0では (Q6)、yからSyへの段では (Q7)∀v∀w(v×Sw=(v×w)+v)への内部具体化を用い、第1項が与える加法の内部計算と等号の推移律を組み合わせる。
(3)を示す。x=yとする。PAは、x=yならばx<yまたはy<xであることを証明する。Tが証明する∀v∀w(v=w→w=v)への内部具体化と補題 4.2により二つの場合は互いに移るので、x<yの場合を扱えばよい。xに関するPAの帰納法を行う。x=0かつ0<yならばPAの内部でy=Sy′を満たすy′を取ることができ、§E16.20 補題 7.4 (1)によりNum(y)=Succ(Num(y′))である。Tが証明する (Q1) の全称閉包∀v(Sv=0)への内部具体化はProvT(┌y˙=0┐)を与え、上の対称性を一度用いるとProvT(┌0=y˙┐)を得る。xからSxへ進む段では、Sx<yからy=Sy′かつx<y′であり、帰納法の仮定がProvT(┌x˙=y˙′┐)を与える。Tが証明する (Q2) の対偶∀v∀w(v=w→Sv=Sw)への内部具体化と補題 4.2によりProvT(┌Sx˙=Sy˙′┐)を得る。§E16.20 補題 7.4 (1)により、これはProvT(┌(Sx)⋅=y˙┐)である。
(4)の前半を示す。x≤yならば、§E16.15 定義 1.1の略記v≤w:⇔∃z(w=v+z)により、PAの内部でy=x+uを満たすuを取ることができる。第1項によりProvT(┌x˙+u˙=y˙┐)である。同じ略記により、Tは∀v∀t∀w(v+t=w→v≤w)を証明する。内部具体化を(x,u,y)へ適用し、補題 4.2を用いるとProvT(┌x˙≤y˙┐)を得る。
(4)の後半では、y<xからPAの内部でy+Sw=xを満たすwを取る。第1項によりProvT(┌y˙+(Sw)⋅=x˙┐)である。<の略記の定義によりTは∀t∀v∀w′(v+St=w′→v<w′)を証明するので、内部具体化と補題 4.2によりProvT(┌y˙<x˙┐)を得る。PA⊆Tであるから、Tは∀v∀w′(w′<v→¬(v≤w′))も証明する。同じ二段を適用するとProvT(┌¬(x˙≤y˙)┐)を得る。
(5)の前半は、(4)の後半の証明の途中で得たProvT(┌y˙<x˙┐)と同じ議論であり、x<yからy=x+Suを満たすuを取り、第1項とTの定理∀v∀t∀w(v+St=w→v<w)への内部具体化を用いる。後半は、PA⊆TによりTが∀v∀w(w≤v→¬(v<w))を証明することと、第4項の前半が与えるProvT(┌y˙≤x˙┐)を合わせて得る。▨
(4)の後半では、TがPAを含むことを本質的に用いている。全称文∀v∀w(w<v→¬(v≤w))をTの定理として使ったからである。Qを含むだけの理論では、この全称文が定理であるとは限らないので、同じ経路をたどることができない。
補題 5.3.θを、自由変数がvjとvi1,…,vikに含まれる固定したLA論理式とする。このとき
PA⊢∀x∀n(∀u≤n ProvT(┌θ(u˙,x˙)┐)→ProvT(┌∀vj≤n˙ θ(vj,x˙)┐))である。
証明.PAの内部でxを固定し、nに関するPAの帰納法を行う。帰納法の対象となる論理式は表示した含意そのものであり、PAの帰納法公理スキーマはすべてのLA論理式について成り立つので、複雑さの制限を受けない。
n=0の場合、仮定からProvT(┌θ(0˙,x˙)┐)である。PA⊆Tであるから、Tは∀u(u≤0→u=0)を証明し、従って
∀v(θ(0,v)→∀vj≤0 θ(vj,v))も証明する。内部具体化と補題 4.2により結論を得る。
nからSnへ進む段では、仮定はu≤Snを満たすすべてのuについてProvT(┌θ(u˙,x˙)┐)を与える。特にu≤nの場合に限れば帰納法の仮定の前件が成り立つので、
ProvT(┌∀vj≤n˙ θ(vj,x˙)┐)を得る。またu=Snの場合から
ProvT(┌θ((Sn)⋅,x˙)┐)を得る。PA⊆Tであるから、Tは∀w∀u(u≤Sw→(u≤w∨u=Sw))を証明し、従って
∀w∀v(∀vj≤w θ(vj,v)→(θ(Sw,v)→∀vj≤Sw θ(vj,v)))も証明する。この全称文へw:=nとv:=xの内部具体化を適用し、補題 4.2を二回用いると
ProvT(┌∀vj≤(Sn)⋅ θ(vj,x˙)┐)を得る。§E16.20 補題 7.4 (1)により、(Sn)⋅の符号はSucc(Num(n))であるから、これが求める結論である。▨
6 証明可能な Σ₁ 完全性
定義 6.1.Δ0論理式とΣ1論理式は、§E16.19 定義 2.1が上流で固定した類をそのまま用いる。すなわち、Δ0論理式の集合は、LAの原子論理式t=sと四つの順序の略記t≤s、t<s、t≼s、t≺sから出発し、¬、→、∧、∨、および有界量化
∀vRt δ:⟺∀v(vRt→δ),∃vRt δ:⟺∃v(vRt∧δ)によって生成される最小の集合である。ここでRは四つの略記のいずれかであり、束縛変数vは項tに現れない。四つの略記が含む存在量化子∃dを有界量化子として扱うことも、上流の定義が置いた規約をそのまま引き継ぐ。Σ1論理式とは、Δ0論理式δを用いて∃w1⋯∃wlδと書くことができる論理式である。ここでl≥0を許し、l=0のときはδ自身をΣ1論理式とみなす。
この規約は二つの事実に支えられている。標準モデルでは、四つの略記のいずれについても証人dはsの値以下であるから、規約はNにおける決定可能性を損なわない。Qの内部では、Qが加法の単調性を証明しないため証人の大小そのものを用いることができず、数詞を代入した場合の有限分解によって証人の候補を有限個の数詞へ落とす道筋を取る。本記事は対象理論がPAを含む場合だけを扱うので、後者の制限を受けない。PAは四つの略記のすべてについて、証人dがs以下であることを証明するからである。加数が左に来るt≼s(s=d+t)とt≺s(s=d+St)では、x≤yが∃z(y=x+z)の略記であることから、zをtまたはStに取って直ちにd≤sを得る。加数が右に来るt≤s(s=t+d)とt<s(s=t+Sd)では、§E16.20 補題 1.1 (1)が与える加法の交換律と結合律によりs=d+tおよびs=d+(S0+t)と書き直してから、同じくzを取る。Qはこの書き直しを与えないので、上の議論は第1項を用いることのできるPA以上の理論に限って通る。Qが同補題の第5項の加法の単調性を証明しないことも、同じ事情による。
PAは∀v∀w(v≼w↔v≤w)と∀v∀w(v≺w↔v<w)を証明する。前者は、v≼wが∃d(d+v=w)、v≤wが∃d(v+d=w)の略記であり、§E16.20 補題 1.1 (1)が加法の交換律を与えることによる。後者は、v≺wがSv≼w、v<wが∃d(w=v+Sd)の略記であることと、同補題の第3項が与えるv<w↔Sv≤wに、いま示した前者を合わせることによる。従ってPAの内部では四つの略記を区別する必要がない。区別が要るのは、加法の展開方向が結論を分けるQ内の議論だけである。
命題 6.2.§E16.21 定義 3.3が固定したCheckT(p,y,z)は、上の意味のΔ0論理式である。従って
ProvT(y)=∃p∃zCheckT(p,y,z)は上の意味のΣ1論理式である。この命題は、ProvT(y)と同値な別の論理式を作るものではない。上流の定義がCheckTをこの形の式として固定しているので、確認すべきことは、上流が挙げた上界がすべてp,y,zの項であることだけである。
証明.§E16.21 定義 3.3は、CheckTをAccT(p,y,z)∧∀z′≼z ¬RejT(p,y,z′)と定め、AccTとRejTを、すべての量化子を有界化した展開として式に固定している。各量化子に与える上界は、同定義に続く節「固定した式がΔ0である理由」が、量化子を四つの系統へ分けたうえで一つずつ挙げている。上界の一覧は上流が与えているので、本記事では書き写さない。書き写すと、上流の一覧との対応が字面で保たれる保証が無くなるからである。確かめるべきことは、上流が挙げた上界がいずれもp、y、zと外側の束縛変数から作ったLAの項であることであり、これは四つの系統の各項目をそのまま読めばよい。CheckTが付加する全称量化子の上界もzである。従ってCheckTの量化子はすべて項有界であり、CheckTは定義 6.1のΔ0論理式である。
上界が項であることの根拠は、いま挙げた「固定した式がΔ0である理由」の節が述べているとおりであり、本記事の道具では次のように読み直すことができる。§E16.19 定義 4.1のDecQ(s,a,t)はa<sとt<sを含むので、Cons 符号の各成分は符号自身より小さい。§E16.20 補題 4.1 (5)は、この事実をPAの定理としても与えている。上流の定義は、上界としてzを与える証人をすべてzの成分として格納することを要求しているので、PAの内部でもこれらはいずれもzより小さい。modus ponens の節にある∃bの上界aurについては、§E16.20 補題 7.2 (1)がb<aurをPAの定理として与える。
ProvTについての主張は、ProvT(y)=∃pPrfT(p,y)とPrfT(p,y)=∃zCheckT(p,y,z)という定義そのものから従う。▨
補題 6.3.δを、自由変数がvi1,…,vikに含まれる固定したΔ0論理式とする。このとき
PA⊢∀x((δ(x)→ProvT(┌δ(x˙)┐))∧(¬δ(x)→ProvT(┌¬δ(x˙)┐)))である。
証明.δの生成に関するメタ理論の帰納法を行う。以下の各場合で用いる論理的事実は、いずれもδを固定するごとに定まる一つのTの定理であり、内部具体化によってPAの内部の証明可能性主張へ移すことができる。
まず、項について次を確認する。t(v)を固定したLAの項とし、valt(x)をxにおける値とすると、PAは
∀x ProvT(┌t(x˙)=(valt(x))⋅┐)を証明する。tの構成に関するメタ理論の帰納法による。変数vijの場合はvalt(x)=xjであり、Tが証明する∀v(v=v)への内部具体化から結論を得る。0の場合はTが証明する固定した文0=0へ D1 を適用する。S、+、×の場合は、部分項に対する帰納法の仮定、補題 5.2 (1)と第2項、および等号の合同性∀u∀w(u=w→f(u)=f(w))への内部具体化を組み合わせ、等号の推移律で連結する。
原子論理式の場合。δがt=sのとき、a=valt(x)、b=vals(x)と置く。δ(x)が成り立つならばa=bであり、上の項の主張と等号の対称律・推移律への内部具体化からProvT(┌t(x˙)=s(x˙)┐)を得る。¬δ(x)ならばa=bであり、補題 5.2 (3)がProvT(┌a˙=b˙┐)を与える。項の主張と、Tが証明する∀u∀v∀u′∀v′(u=u′→(v=v′→(u′=v′→u=v)))への内部具体化を合わせるとProvT(┌¬(t(x˙)=s(x˙))┐)を得る。δがt≤sのときは、同じ議論で補題 5.2 (4)を用いる。a≤bならば第4項の前半、b<aならば第4項の後半が、それぞれ数詞についての肯定と否定の証明可能性を与える。δがt<sのときは、同様に同補題の第5項の前半と後半を用いる。δがt≼sまたはt≺sのときは、PA⊆TによりTが∀v∀w(v≼w↔v≤w)と∀v∀w(v≺w↔v<w)を証明することを用い、内部具体化と補題 4.2によって≤と<の場合へ帰着する。いずれの場合も、項の主張が与えるProvT(┌t(x˙)=a˙┐)とProvT(┌s(x˙)=b˙┐)を、順序の合同性∀u∀v∀u′∀v′(u=u′→(v=v′→(u′Rv′→uRv)))への内部具体化と合わせて、数詞についての結論を項についての結論へ移す。ここでRは≤または<である。
否定の場合。δ=¬δ′とする。δ(x)すなわち¬δ′(x)ならば、帰納法の仮定の後半がProvT(┌¬δ′(x˙)┐)を与える。¬δ(x)すなわちδ′(x)ならば、帰納法の仮定の前半がProvT(┌δ′(x˙)┐)を与え、Tが証明する∀v(δ′(v)→¬¬δ′(v))への内部具体化と補題 4.2からProvT(┌¬¬δ′(x˙)┐)を得る。
含意、連言、選言の場合。δ=δ1→δ2とする。δ(x)が成り立つのは、¬δ1(x)が成り立つ場合かδ2(x)が成り立つ場合である。前者では帰納法の仮定の後半と∀v(¬δ1→(δ1→δ2))、後者では帰納法の仮定の前半と∀v(δ2→(δ1→δ2))をそれぞれ内部具体化して用いる。¬δ(x)ならばδ1(x)と¬δ2(x)がともに成り立つので、二つの帰納法の仮定と∀v(δ1→(¬δ2→¬(δ1→δ2)))を用いる。連言と選言も、対応する四つの場合分けと固定した命題論理の定理への内部具体化によって同様に扱う。
有界存在量化の場合。δ=∃v≤t δ′とする。δ(x)ならば、PAの内部でc≤valt(x)かつδ′(c,x)を満たすcを取ることができる。帰納法の仮定がProvT(┌δ′(c˙,x˙)┐)を与える。補題 5.2 (4)と項の主張からProvT(┌c˙≤t(x˙)┐)を得る。Tが証明する∀v∀v(v≤t(v)→(δ′(v,v)→∃v≤t(v)δ′(v,v)))への内部具体化と補題 4.2の二回の適用により結論を得る。
¬δ(x)ならば、u≤valt(x)を満たすすべてのuについて¬δ′(u,x)であり、帰納法の仮定がProvT(┌¬δ′(u˙,x˙)┐)を与える。補題 5.3をθ:=¬δ′、n:=valt(x)について適用すると
ProvT(┌∀v≤(valt(x))⋅ ¬δ′(v,x˙)┐)を得る。項の主張が与えるProvT(┌t(x˙)=(valt(x))⋅┐)と、Tが証明する
∀w∀v(t(v)=w→(∀v≤w ¬δ′(v,v)→¬∃v≤t(v)δ′(v,v)))への内部具体化を合わせると、求めるProvT(┌¬δ(x˙)┐)を得る。
有界全称量化の場合。δ=∀v≤t δ′とする。δ(x)ならば、u≤valt(x)を満たすすべてのuについて帰納法の仮定がProvT(┌δ′(u˙,x˙)┐)を与えるので、補題 5.3と項の主張を上と同じ形で用いる。¬δ(x)ならば、c≤valt(x)かつ¬δ′(c,x)を満たすcを取り、有界存在量化の肯定の場合と同じ手順を¬δ′について行う。
上界を与える関係が<、≼、≺である有界量化も、≤の場合へ移すことができる。補題 5.3は上界が≤の形の有界全称量化にしか適用することができないので、この移行は明示しておく必要がある。Rを<、≼、≺のいずれかとするとき、定義 6.1の略記の定義により
∀vRt δ′ ↔ ∀v≤t(vRt→δ′),∃vRt δ′ ↔ ∃v≤t(vRt∧δ′)が成り立つ。左から右はvRt→v≤tによる。Rが<のときは§E16.20 補題 1.1 (3)、≼と≺のときは上で述べたPAにおける四つの略記の同値による。右から左は前件を落とすだけである。Tはこれらの同値を証明するので、内部具体化と補題 4.2により、R有界な量化についての結論と≤有界な量化についての結論とは互いに移る。上界の項tは変わらないので、tの値による場合分けは要らない。従って、≤の場合について上で示した二つの場合の議論が、そのまま他の三つの関係の場合にも通る。▨
定理 6.4 (証明可能な Σ₁ 完全性).σを、自由変数がvi1,…,vikに含まれる固定したΣ1論理式とする。このとき
PA⊢∀x(σ(x)→ProvT(┌σ(x˙)┐))である。特にσがΣ1文ならばPA⊢σ→□Tσである。
証明.σ=∃w1⋯∃wlδと書く。ここでδはΔ0論理式である。PAの内部でxを取り、σ(x)を仮定する。存在量化子を順に除去して証人c1,…,clを取るとδ(c,x)が成り立つ。補題 6.3の前半により
ProvT(┌δ(c˙,x˙)┐)である。Tは固定した文
∀w∀v(δ(w,v)→∃w1⋯∃wlδ(w,v))を証明するので、内部具体化を(c,x)に適用し、補題 4.2を用いると
ProvT(┌σ(x˙)┐)を得る。lは外側で固定した自然数なので、証人の除去と存在導入はいずれも有限回の操作である。l=0の場合はσ自身がΔ0論理式であり、証人の除去も存在導入も行わずに補題 6.3の前半が結論を与える。
k=0の場合、┌σ(x˙)┐は固定した文σの符号であるから、表示した特別な場合を得る。▨
7 D3:証明可能性を内部でもう一段証明する
命題 7.1. 任意の固定したLA文φについて、
PA⊢□Tφ→□T□Tφ,従ってT⊢□Tφ→□T□Tφである。
証明.φを固定する。命題 6.2によりCheckTはΔ0論理式であるから、
□Tφ=ProvT(┌φ┐)=∃p∃zCheckT(p,┌φ┐,z)は定義 6.1の意味のΣ1文である。ここでは同値な別の論理式へ取り替えていない。上流の定義がPrfTをこの形に固定しているので、□Tφの符号┌□Tφ┐は、このΣ1文自身の符号である。
定理 6.4の特別な場合をσ:=□Tφについて適用すると
PA⊢□Tφ→□T□Tφを得る。PA⊆TよりTも同じ文を証明する。
符号の取り替えの一段が要らない理由を述べる。
上流がPrfTをΣ1論理式として固定していない場合には、□Tφと同値なΣ1文σを別に作ることになり、定理 6.4の結論に現れるのはσ自身の符号┌σ┐であって┌□Tφ┐ではない。同値な二つの文の符号は異なる自然数であるから、T⊢σ→□Tφへ命題 3.1と命題 4.3を適用して□Tσ→□T□Tφを得る一段が必要になる。本記事ではσと□Tφが同一の論理式であるから、この一段は生じない。
この導出では、標準数詞ごとの表現可能性ではなく、内部で量化された任意の証明符号を扱う定理 6.4を用いている。無矛盾性は用いていない。▨
定理 7.2 (Hilbert–Bernays–Löb の導出可能性条件).Tを定義 1.1の理論とし、固定した標準証明述語を用いる。任意の固定したLA文φ,ψに対して次が成り立つ。
- T⊢φならばT⊢□Tφである。
- T⊢□T(φ→ψ)→(□Tφ→□Tψ)である。
- T⊢□Tφ→□T□Tφである。
三条件の由来は異なる。D1 は具体的な標準証明を一つ内部化する外から内への規則であり、Qを含むだけで成り立つ。D2 と D3 は、証明符号を量化する算術文を対象理論内で証明するものであり、いずれもPAの帰納法を用いて証明した。特に、D1 の「T⊢φならば」はT内の含意φ→□Tφではない。
8 矛盾する二つの証明を合成する
第二不完全性定理の内部証明では、同じ文とその否定がともに証明可能ならば、矛盾も証明可能であることを用いる。これは D1 と D2 の帰結であるが、必要な論理定理も明示しておく。
補題 8.1. 任意の固定したLA文Aについて、
T⊢□TA→(□T¬A→□T⊥)である。
証明. まず、固定した Hilbert 型命題論理の公理 (H1) と (H3) を用いて
T⊢A→(¬A→⊥)(1)を確認する。仮定A,¬Aの下で、(H1) の例¬A→(¬⊥→¬A)と modus ponens により¬⊥→¬Aを得る。(H3) の例
(¬⊥→¬A)→(A→⊥)からA→⊥を得て、仮定Aと modus ponens により⊥を得る。§E16.10 定理 5.1を¬A、次にAへ適用すると (1) となる。
D1 を (1) へ適用して
T⊢□T(A→(¬A→⊥))を得る。D2 を一度適用すると
T⊢□TA→□T(¬A→⊥),さらに D2 を¬A,⊥へ適用すると
T⊢□T(¬A→⊥)→(□T¬A→□T⊥)を得る。命題論理で二つの含意を合成すると、表示した結論となる。▨
9 無矛盾性文から Gödel 文への内部含意
§E16.23 定義 2.1のGTを用いる。同定義はQを含む理論について与えられており、Q⊆PA⊆TであるからTに対しても適用することができる。対角線補題がQ内で与えた固定点なので、Tは
GT↔¬□TGT(G)
を証明する。次の補題まではTの無矛盾性を仮定しない。
補題 9.1.
T⊢ConT→GTである。
証明. (G) の左から右への含意に D1 を適用すると
T⊢□T(GT→¬□TGT)(2)である。D2 により、(2) から
T⊢□TGT→□T¬□TGT(3)を得る。一方、D3 をGTへ適用すると
T⊢□TGT→□T□TGT(4)である。
補題 8.1でA:=□TGTと置くと
T⊢□T□TGT→(□T¬□TGT→□T⊥)(5)を得る。(3)、(4)、(5) を命題論理で合成すると
T⊢□TGT→□T⊥(6)である。
次に、(G) の右から左への含意¬□TGT→GTの古典的対偶を取ると
T⊢¬GT→□TGT(7)となる。(6) と (7) から
T⊢¬GT→□T⊥を得る。もう一度古典的対偶を取ると
T⊢¬□T⊥→GTである。左辺は定義によりConTなので、結論を得る。以上の導出はすべてT内の有限導出であり、Tの無矛盾性を用いていない。▨
10 第二不完全性定理
定理 10.1 (Gödel の第二不完全性定理).Tを、PAを含み、公理集合を計算可能に列挙することができるLA理論とする。§E16.21 定義 5.3が固定した標準証明述語に対して
ConT=¬ProvT(┌0=S0┐)とする。Tが無矛盾ならば
T⊬ConTである。
証明方針は、仮定T⊢ConTを補題 9.1によりT⊢GTへ移し、第一不完全性定理の非証明と衝突させることである。無矛盾性は、この最後の外的な非証明を適用する箇所だけで用いる。
証明.Tが無矛盾であると仮定する。背理法のためT⊢ConTと仮定する。補題 9.1はT内で
T⊢ConT→GTを与えるため、modus ponens によりT⊢GTである。
一方、§E16.23 定理 2.2 (1)は、Qを含む無矛盾かつ計算可能に列挙することができる理論についてT⊬GTを与える。TはPAを含むのでQも含み、仮定により無矛盾である。これはT⊢GTと矛盾する。従ってT⊬ConTである。無矛盾性は D1、D2、D3、または内部含意ConT→GTの導出には用いず、この最終段階で外的事実T⊬GTを得るためだけに用いた。▨
例 10.2 (内部主張と外部主張の区別).T=PAと置く場合にも、PA⊢ConPA→GPAは内部の算術文の証明である。これに対し、PAが実際に無矛盾であることとPA⊬ConPAは、PAの証明集合についてメタ理論で述べる外部主張である。内部含意だけからPAの無矛盾性やConPAの真理を結論することはできない。
11 演習
問題 11.1. 次の問いに答えよ。
- D1 の前件T⊢φと、算術文□Tφは、どの言語水準に属するか。
- D2 の証明で、具体的な標準証明符号を選ばずに済む理由を述べよ。
- D3 を数詞ごとの表現可能性だけから導くことができない理由を述べよ。
- 補題 5.3の証明で、PAの帰納法を用いる箇所と、TがPAを含むことを用いる箇所をそれぞれ指摘せよ。
- T⊢ConT→GTの内部導出で、D2 と D3 はそれぞれ何を与えるか。
- 第二不完全性定理の証明で、Tの無矛盾性を用いる箇所を特定せよ。
- D3 の証明で、□Tφと同値な別のΣ1文を作った場合に必要になり、本記事では不要になる一段は何か。
解答 (確認問題の解答).
- T⊢φは、有限なT証明の存在を述べるメタ理論の外部主張である。□Tφは、固定した証明述語を含むLAの算術文である。
- 補題 4.2が、自由変数p,qを残したまま証明列の合成をPA内で一様に証明しているからである。
- 数詞ごとの表現可能性は、各標準証明符号に対して別々のQ証明を与えるだけである。D3 には、内部で量化された任意のpについて証明可能性を証明可能にする一つの導出が必要であり、それを定理 6.4が与える。
- 帰納法は上界nに関する外側のPAの帰納法として用いる。T⊇PAは、∀u(u≤0→u=0)と∀w∀u(u≤Sw→(u≤w∨u=Sw))をTの定理として用いる箇所で使う。
- D2 はGT→¬□TGTの証明可能性を□TGT→□T¬□TGTへ移す。D3 は□TGT→□T□TGTを与える。二つを矛盾証明の合成へ入れると□TGT→□T⊥を得る。
- 内部含意から仮にT⊢GTを得た後、第一不完全性定理により外側でT⊬GTと結論する箇所だけで用いる。
- 定理 6.4の結論に現れるのはΣ1文σ自身の符号である。σを□Tφと別の論理式に取ると、同値な二つの文の符号は異なる自然数なので、T⊢σ→□Tφへ D1 と D2 を適用して□Tσ→□T□Tφを得る一段が必要になる。本記事では上流がPrfTをΣ1論理式として固定しているため、□Tφ自身がΣ1文であり、この一段は生じない。
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12 境界と次の段階
本記事が証明したのは、PAを含み公理集合を計算可能に列挙することができる無矛盾なTについて、固定した標準的なΣ1証明述語PrfTによる特定の文ConTをT自身が証明しないことである。
対象理論をPA以上に限定した理由は、D2 と D3 の証明にある。D2 は長さの定まらない二つの証明列の連結を扱い、D3 は内部で量化された任意の証明符号について証明可能性を証明可能にする。いずれも、§E16.20 補題 5.2の有限列符号化の法則、§E16.20 補題 6.1の原始再帰関数の全域性と定義方程式、および有界量化の内部化を経由するため、帰納法公理スキーマを必要とする。§E16.15 定義 2.1の七公理には帰納法公理が含まれないので、本記事の経路はQを含むだけの理論には及ばない。
本記事は、PAの内部で有限列と原始再帰関数を扱う道具そのものを証明していない。それらは§E16.20 補題 6.5を含めて前提記事が与えており、本記事が新たに証明したのは、証明可能性述語に触れる主張だけである。
これは、Qを対象とする第二不完全性型の定理が存在しないという主張ではない。Bezboruah と Shepherdson は、弱い算術に合わせた固有の構成によって、Qが自身の無矛盾性を表す文を証明しないという型の結果を得ている。ただしその結論は、証明列の符号化と証明可能性述語の取り方に依存する。本記事が固定したPrfTについて同じ結論が従うわけではない。Pudlák は、解釈と定義可能な cut を用いる一般化を与えている。いずれも、標準的な証明可能性述語について Hilbert–Bernays–Löb の三条件を証明するという本記事の経路とは別の道筋であり、本記事はこれらを扱わない。
第一不完全性定理、Qにおける表現可能性、およびQの本質的決定不能性は、Qを含む理論を対象としたままである。本記事の限定はこれらの範囲を変えない。また、Tの健全性、真理から証明可能性への反映原理、およびT+ConTの無矛盾性は結論していない。Löb の定理は、本記事が証明した D1–D3 と対角線補題だけから導くことができるが、本記事では扱わず、展望の記事が証明する。後続の記事は、第一不完全性定理を計算可能性の議論と結び、Qの本質的決定不能性と一階論理の Church の定理を扱う。