1 公理と推論規則
Lを集合サイズの一階言語とする。各関数記号と関係記号の項数は有限であり、等号は台集合上の同一性として解釈される。
定義 1.1. 次の公理スキーマのすべての置換例を論理公理 (logical axiom) とする。
(H1)(H2)(H3)(Q1)(Q2)α→(β→α),(α→(β→γ))→((α→β)→(α→γ)),(¬β→¬α)→(α→β),∀xφ→φ[x:=t],∀x(φ→ψ)→(φ→∀xψ).(Q1) では、tがφのxに自由に代入可能であることを要求する。
(Q2) では、x∈/FV(φ)を要求する。
等号について、次の公理スキーマのすべての置換例を加える。
- 任意の項tに対するt=t。
- 各n項関数記号fに対する
(t1=u1∧⋯∧tn=un)→f(t1,…,tn)=f(u1,…,un).
- 各n項関係記号Rに対する
(t1=u1∧⋯∧tn=un)→(R(t1,…,tn)↔R(u1,…,un)).
(3)では、二項の論理的等号もR(v1,v2)として扱う。n=0の連言は恒真な論理式と解釈するので、零項関数と零項関係の場合も公理スキーマに含まれる。
推論規則は、次の二つである。
ηχ→ηχ(modus ponens),∀xχχ(一般化).
定義 1.2.Γ⊆Form(L)とする。Γからの導出 (derivation) とは、論理式χiと有限な依存前提集合Δi⊆Γの組(χi,Δi)からなる有限列であり、各行が次のいずれかであるものをいう。
- χi∈Γであり、Δi={χi}である。
- χiは定義 1.1の公理の置換例であり、Δi=∅である。
- 先行する二行(η→χi,Δj)と(η,Δk)へ modus ponens を適用して得られ、Δi=Δj∪Δkである。
- 先行する一行(χ,Δi)から一般化によってχi=∀xχとして得られ、かつすべてのδ∈Δiについてx∈/FV(δ)である。
末尾の論理式がφである導出が存在するとき、Γ⊢φと書く。Γ=∅のときは⊢φと書く。通常は依存前提集合を行に表示しない。
依存前提集合は、その行で未解消のまま実際に用いた前提を記録する。したがって一般化規則は、一般化する変数がその行のどの前提にも自由に現れない場合に限って用いられる。未使用の前提をΓに追加しても各行の依存前提集合は変わらないため、導出の単調性が保たれる。
2 命題論理から用いる派生則
一階 Hilbert 系の H1–H3 は、古典命題 Hilbert 系と同じである。量化子を含む論理式も、命題論理の公理スキーマでは一つの命題変数のように置換することができる。
補題 2.1. 連言と双条件を否定と含意による本記事の略記とする。任意の論理式について、H1–H3 と modus ponens だけから次の図式を導くことができる。
- 恒等式α→α、弱化、共通前件の modus ponens、および含意の推移が成り立つ。すなわち、Γ⊢βならΓ⊢α→βであり、
Γ⊢α→(β→γ),Γ⊢α→β⟹Γ⊢α→γ,
さらにΓ⊢α→βかつΓ⊢β→γならΓ⊢α→γである。
- 連言について
⊢(α∧β)→α,⊢(α∧β)→β,⊢α→(β→α∧β)
が成り立つ。
- 双条件について
⊢(α↔β)→(α→β),⊢(α↔β)→(β→α),⊢(α→β)→((β→α)→(α↔β))
が成り立つ。
- 否定と含意は双条件を保つ。すなわち、
⊢(α↔β)→(¬α↔¬β),⊢(α↔α′)→((β↔β′)→((α→β)↔(α′→β′)))
が成り立つ。
- ρを固定し、⊥ρ:=ρ∧¬ρと置くと、
⊢α→(¬α→⊥ρ),⊢⊥ρ→α,⊢⊥ρ→¬α
が成り立つ。
証明. 最初に、この証明の内部だけで用いる仮定除去変換を証明する。H1–H3 と modus ponens だけからなる有限導出でΛ∪{A}⊢0Bなら、Λ⊢0A→Bである。実際、導出の各行δに対してA→δを作る。δ=Aの場合は、H1 の二つの例
A→((A→A)→A),A→(A→A)と、H2 でβ=A→A、γ=Aとした例へ modus ponens を二回適用し、A→Aを得る。δが H1–H3 の例またはΛの元なら、δと H1 の例δ→(A→δ)からA→δを得る。δがη→δとηへの modus ponens から得られたなら、帰納法で得たA→(η→δ)とA→ηを H2 で結ぶ。この三場合で変換は閉じる。以下で一時的な仮定を外すときは、この有限変換だけを用いる。
(1)の恒等式は今の構成で得た。弱化はβと H1 の例β→(α→β)への modus ponens である。共通前件の規則は H2 へ modus ponens を二回適用して得る。含意の推移では、β→γを弱化してα→(β→γ)とし、共通前件の規則を適用する。
連言以下の導出に用いる四つの補助図式を作る。まず
A→((A→B)→B)(A)は、一時的な仮定A,A→Bへの modus ponens の後に仮定除去変換を二回適用して得る。ϑ=A→(A→A)と置くとϑは H1 の例である。H3 の二つの例
(¬¬ϑ→¬¬A)→(¬A→¬ϑ),(¬A→¬ϑ)→(ϑ→A)を(1)の含意の推移で結び、H1 の例¬¬A→(¬¬ϑ→¬¬A)ともう一度結ぶと¬¬A→(ϑ→A)を得る。(A) と定理ϑから(ϑ→A)→Aを得て、推移を用いると
⊢¬¬A→A(B)となる。(B) でAを¬Aに置き換え、H3 の例
(¬¬¬A→¬A)→(A→¬¬A)へ modus ponens を適用すると
⊢A→¬¬A(C1)を得る。H1 の例¬A→(¬B→¬A)と H3 の例(¬B→¬A)→(A→B)を推移で結ぶと
⊢¬A→(A→B)(C2)を得る。次にA→Bを一時的に仮定する。(B)、この仮定、(C1) を推移で結んで¬¬A→¬¬Bを得る。H3 の例
(¬¬A→¬¬B)→(¬B→¬A)へ modus ponens を適用し、仮定除去変換を用いると
⊢(A→B)→(¬B→¬A)(C3)となる。また、(A) をB=Cとした式と、(C3) をA=A→C、B=Cとした式を推移で結ぶと
⊢A→(¬C→¬(A→C))(C3’)を得る。最後にU=A→CとV=¬A→Cを一時的に仮定する。¬Cをさらに仮定すると、(C3) とVから¬¬A、(B) からAを得る。(C3') とAから¬C→¬Uを得て、仮定¬Cへの modus ponens により¬Uとなる。仮定¬Cだけを外すと¬C→¬Uである。H3 の例(¬C→¬U)→(U→C)からU→Cを得て、仮定Uへの modus ponens でCとなる。V、次にUを外すと
⊢(A→C)→((¬A→C)→C)(C4)を得る。
(2)を示す。K:=α∧β=¬(α→¬β)と置く。K,¬αを仮定すると、(C2) からα→¬βを得て、(C2) をA=α→¬β、B=αとしてKと結べばαを得る。したがってKの下で¬α→αであり、恒等式α→αと (C4) からαを得る。仮定Kを外すとK→αである。
次にK,α,¬βを仮定する。H1 からα→¬βを得て、直前と同じくKから (C2) を用いるとβを得る。仮定¬βを外し、恒等式β→βと (C4) を用いると、K,αからβを得る。またK,¬αからは、上で得たαと、K,αからの同じ有限導出を続けてβを得る。二つを仮定除去変換で含意にし、(C4) を適用するとKからβを得る。よってK→βである。
連言の導入では、α,βを仮定する。(C1) から¬¬βを得る。(A) をA=α、B=¬βとした式と、(C3) をA=α→¬β、B=¬βとした式を推移で結ぶとα→(¬¬β→¬(α→¬β))を得る。二回の modus ponens の後に二つの仮定を外せばα→(β→α∧β)となる。
(3)は、α↔βが(α→β)∧(β→α)の略記であることと、(2)の二つの射影および導入を、それぞれα→βとβ→αへ適用して得る。
(4)の否定の場合には、α↔βを仮定する。(3)の二つの射影と (C3) から¬α→¬βと¬β→¬αを得て、(3)の導入で¬α↔¬βにまとめる。仮定を外せば表示した図式を得る。
含意の場合にはα↔α′とβ↔β′を仮定する。(3)から四方向の含意を取り出す。さらにα→βを仮定し、α′→α、α→β、β→β′を(1)の推移で結ぶ。追加した仮定を外すと(α→β)→(α′→β′)となる。逆にα′→β′を仮定し、α→α′、α′→β′、β′→βを結んで仮定を外すと、逆向きの含意を得る。(3)で双条件にまとめ、最初の二つの仮定を外すと表示した含意の合同図式を得る。
(5)ではα,¬αを仮定する。(C2) を二回用いてρと¬ρを得て、(2)の連言導入から⊥ρを得る。二つの仮定を外すと(5)の最初の式になる。⊥ρを仮定した場合には、(2)の射影からρと¬ρを得る。(C2) と二回の modus ponens によりαを得て仮定を外せば⊥ρ→αとなり、αを¬αに置き換えれば最後の式も得る。
すべての仮定除去は冒頭の有限変換であり、量化公理、一般化規則、および完全性定理を用いていない。▨
補題 2.2. 任意の論理式α,βと変数xについて
⊢∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ)が成り立つ。
証明. Q1 の二つの例
∀x(α→β)→(α→β),∀xα→αと補題 2.1 (1)にある弱化、共通前件の modus ponens、および含意の推移から
⊢∀x(α→β)→(∀xα→β)を得る。C:=∀x(α→β)、D:=∀xαと置くと、この定理は⊢C→(D→β)である。定理全体をxで一般化して⊢∀x(C→(D→β))を得る。x∈/FV(C)なので、Q2 と modus ponens により⊢C→∀x(D→β)である。またx∈/FV(D)なので、Q2 の例
∀x(D→β)→(D→∀xβ)は公理である。補題 2.1 (1)で二つの含意を合成すると
⊢∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ)を得る。▨
3 α 同値と構文的同値
捕獲回避代入は α 同値類上で定まるが、Hilbert 系の定理は α 同値類で割る前の構文上の論理式(以下、raw 論理式)について述べられる。したがって、代入結果の代表を取り替えるためには、意味論的な α 不変性だけでなく、α 同値な二つの
raw 論理式の双条件が実際に導出されることが必要である。
補題 3.1. raw 論理式α,βが α 同値であるならば、
⊢α↔βが成り立つ。この導出には、完全性定理を用いない。
証明. 最初に、α 同値の生成元である一つの安全な束縛変数改名を扱う。z∈/FV(η)とし、∀xηのxに束縛された出現をzへ安全に改名して∀zη′を得たとする。安全性の条件により、raw な通常代入として
η′=η[x:=z],η=η′[z:=x]が成り立ち、いずれの代入も捕獲を起こさない。Q1 から
⊢∀xη→η′を得る。この定理全体をzで一般化する。z∈/FV(∀xη)なので、Q2 と modus ponens によって
⊢∀xη→∀zη′を得る。改名後にはx∈/FV(η′)であり、xはη′の自由なzに代入可能である。したがって、Q1 から⊢∀zη′→ηを得て、この定理全体をxで一般化し、
Q2 を適用すると
⊢∀zη′→∀xηとなる。補題 2.1 (3)で二方向をまとめれば、⊢∀xη↔∀zη′である。
次に、この導出が α 同値を生成する同値閉包と合同閉包を保つことを示す。反射性は⊢α→αの二つのコピーを補題 2.1 (3)でまとめて得る。対称性と推移性は、双条件から二方向の含意を取り出し、補題 2.1 (1)で含意を合成してから、補題 2.1 (3)で再び双条件にまとめて得る。否定と含意に関する合同性は、補題 2.1 (4)そのものである。
全称量化子に関して⊢α↔βとする。補題 2.1 (3)から⊢α→βと⊢β→αを得る。それぞれをxで一般化し、補題 2.2を適用すると
⊢∀xα→∀xβ,⊢∀xβ→∀xαとなるので、補題 2.1 (3)によって⊢∀xα↔∀xβを得る。以上を、α 同値を生成する安全な一段改名、同値関係の三規則、および原始構成子の合同規則からなる生成列に関して帰納的に適用すれば、任意の α 同値な raw 論理式について結論が従う。▨
以後、捕獲回避代入の結果を raw 論理式として表示するときは、出力となる α 同値類から一つの代表を選ぶ。代表を別のものへ取り替えても、直前の補題によって構文的な双条件を両方向に挿入することができる。
4 等号から導かれる規則
等号公理は、等号そのものの対称性と推移性を個別の公理にはしていない。等号の対称律と推移律は、等号を二項関係として扱う合同公理から導かれる。
補題 4.1. 任意の項t,u,vについて、次が成り立つ。
⊢t=u→u=t,⊢(t=u∧u=v)→t=v.
証明. 等号の関係合同公理で、原子式z1=z2の組(t,t)と(u,t)を比較すると、
(t=u∧t=t)→((t=t)↔(u=t))を得る。⊢t=tと補題 2.1 (2)および補題 2.1 (3)を用い、連言の導入と双条件の射影を展開すると⊢t=u→u=tが従う。
次に、原子式z1=z2の組(t,u)と(t,v)を比較すると、
(t=t∧u=v)→((t=u)↔(t=v))を得る。⊢t=tと補題 2.1 (2)および補題 2.1 (3)を用い、前提t=u∧u=vからu=vとt=uを取り出すとt=vを得る。基本派生則の証明冒頭にある仮定除去変換で前提を含意の左辺へ移すことができるため、表示した定理を得る。▨
定理 4.2.φ(z1,…,zn)の表示された自由変数へ、項t1,…,tnとu1,…,unを捕獲を避けて同時代入する。Eを
E=(t1=u1∧⋯∧tn=un)とする。このとき
⊢E→(φ[t1/z1,…,tn/zn]↔φ[u1/z1,…,un/zn])が成り立つ。n=0の場合には、同じ論理式どうしの双条件を得る。
証明.φの高さに関する帰納法を用いる。最初に、任意の項r(z1,…,zn)について
⊢E→r(tˉ)=r(uˉ)となることを項の構造に関する帰納法で示す。r=ziの場合は、補題 2.1 (2)を繰り返してEから第iの連言肢ti=uiを取り出す。rが表示された変数以外の変数または定数なら、反射律と H1 を用いる。r=f(r1,…,rk)の場合は、帰納法の仮定から得たk個の等式をEの下で補題 2.1 (1)にある共通前件の規則と補題 2.1 (2)の連言導入を繰り返し、連言にまとめてからk項関数記号fの合同公理を適用する。k=0では、結論は反射律そのものである。
原子式が等号r=qの場合は、項について得た二つの等式と、等号を二項関係として扱う合同公理を用いる。原子式がR(r1,…,rk)の場合も、項について得たk個の等式を補題 2.1 (1)と補題 2.1 (2)によってEの下で連言にまとめ、Rの合同公理を用いる。k=0では空の連言を前件とする零項関係の合同公理が同じ原子式どうしの双条件を与える。
φ=¬ψの場合は、帰納法の仮定E→(ψ(tˉ)↔ψ(uˉ))と補題 2.1 (4)にある否定の合同図式を、補題 2.1 (1)の含意の推移で結ぶ。φ=ψ→χの場合は、二つの帰納法の仮定と補題 2.1 (4)にある含意の二引数の合同図式へ、補題 2.1 (1)の共通前件の modus ponens を二回適用する。
φ=∀yψの場合を考える。wをψ、E、および代入するすべての項のいずれにも現れない新しい変数とし、束縛変数を安全に改名して
∀yψ≡α∀wχとする。改名は論理式の高さを変えないので、χには帰納法の仮定を適用することができる。χ(tˉ)とχ(uˉ)を、χへの捕獲回避同時代入の raw な代表として選ぶ。帰納法の仮定と補題 2.1 (3)の二つの射影から、定理
⊢E→(χ(tˉ)→χ(uˉ))と逆向きの定理をそれぞれ得る。最初の定理全体をwで一般化し、w∈/FV(E)を用いて Q2 を適用すると
⊢E→∀w(χ(tˉ)→χ(uˉ))となる。補題 2.2と補題 2.1 (1)を用いると
⊢E→(∀wχ(tˉ)→∀wχ(uˉ))を得る。同じ議論を逆向きにも行う。補題 2.1 (3)にある双条件の導入図式へ、補題 2.1 (1)の共通前件の modus ponens を二回適用すると
⊢E→(∀wχ(tˉ)↔∀wχ(uˉ))を得る。§E16.7 定理 2.2により捕獲回避代入は α 同値類上で定まるので、元の raw 論理式∀yψへの二つの代入結果をそれぞれLt,Luと書けば、
Lt≡α∀wχ(tˉ),Lu≡α∀wχ(uˉ)である。A:=∀wχ(tˉ)、B:=∀wχ(uˉ)と置く。補題 3.1と補題 2.1 (3)の射影から、
⊢Lt→A,⊢A→Lt,⊢Lu→B,⊢B→Luを得る。一時的にEを仮定する。直前に得た⊢E→(A→B)へ modus ponens を適用してA→Bを得る。これをLt→AおよびB→Luと補題 2.1 (1)の含意の推移で合成するとLt→Luとなる。基本派生則の証明冒頭にある仮定除去変換でEを外せば⊢E→(Lt→Lu)である。逆向きの⊢E→(B→A)と残る二つの射影を用いると、同様に⊢E→(Lu→Lt)を得る。最後に、補題 2.1 (3)にある双条件の導入図式へ補題 2.1 (1)の共通前件の modus ponens を二回適用すると
⊢E→(Lt↔Lu)となる。この式は、元の raw な代表について求める結論である。以上で原始構成子のすべての場合を処理した。▨
5 演繹定理
定理 5.1 (演繹定理). 任意の前提集合Γと論理式θ,φについて、
Γ∪{θ}⊢φ⟺Γ⊢θ→φが成り立つ。
証明の方針は、左辺の有限導出の各行χに対してΓ⊢θ→χを構成することである。一般化の行では、元の導出規則の条件からx∈/FV(θ)が得られることを用いる。
証明. まず左から右を示す。Γ∪{θ}からの導出の長さに関する帰納法を用い、各行(χ,Δ)についてΓ⊢θ→χを構成する。行χがΓの要素または公理なら、Γ⊢χであり、補題 2.1 (1)にある弱化からΓ⊢θ→χを得る。行がθ自身なら、補題 2.1 (1)からΓ⊢θ→θを得る。
χがη→χとηへの modus ponens から得られたとする。帰納法の仮定はΓ⊢θ→(η→χ)とΓ⊢θ→ηを与える。H2 へ modus ponens を二回適用するとΓ⊢θ→χを得る。
χ=∀xηが(η,Δ)の一般化から得られたとする。θ∈Δなら、一般化規則の条件からx∈/FV(θ)である。帰納法の仮定Γ⊢θ→ηを一般化してΓ⊢∀x(θ→η)を得る。この一般化は、もとのΔからθを除いた前提だけに依存し、xは各前提に自由に現れないため適法である。Q2 によりΓ⊢θ→∀xηを得る。
θ∈/Δなら、(∀xη,Δ)までの実依存部分はΓだけからの導出である。したがってΓ⊢∀xηであり、H1 からΓ⊢θ→∀xηを得る。
逆にΓ⊢θ→φとする。依存前提集合を保った同じ導出はΓ∪{θ}からの導出でもある。Γ∪{θ}ではθが前提なので、
modus ponens によりΓ∪{θ}⊢φを得る。▨
系 5.2.Γ⊢φならば、ある有限部分集合Γ0⊆Γが存在してΓ0⊢φである。
証明.Γからの一つの導出を固定する。導出は有限列なので、その行として現れるΓの要素も有限個である。導出に現れた前提の集合をΓ0とする。同じ有限列の一般化条件は、より小さい前提集合Γ0に対しても成立するので、同じ列がΓ0からの導出になる。▨
6 健全性
定理 6.1 (一階 Hilbert 系の健全性). 任意のΓ⊆Form(L)と論理式φについて、
Γ⊢φ⟹Γ⊨φが成り立つ。
証明の方針は、導出の各行が、その行の依存前提集合を満たす任意の構造と割当てで真であることを示すことである。量化公理では代入補題と充足の局所性を用い、一般化規則では変数が前提に自由に現れないという条件を用いる。
証明. 導出の長さに関する帰納法を用い、各行(χ,Δ)についてM,s⊨ΔならM,s⊨χとなることを示す。前提の行は依存前提集合がその前提だけからなるので真である。H1 と H2 は含意の真理値規則を直接適用すると真である。H3 が偽なら、その前件¬β→¬αが真、αが真、βが偽となるが、後二条件は前件を偽にするので矛盾する。
Q1 を考える。M,s⊨∀xφなら、a=[[t]]sMに対してM,s[x↦a]⊨φである。tがxに自由に代入可能であるため、§E16.7 系 5.3からM,s⊨φ[x:=t]を得る。したがって Q1 は妥当である。
Q2 を考える。M,s⊨∀x(φ→ψ)かつM,s⊨φとする。x∈/FV(φ)なので、§E16.6 定理 4.1により、任意のa∈∣M∣についてM,s[x↦a]⊨φである。Q2 の前件から同じ割当てでM,s[x↦a]⊨φ→ψであるから、M,s[x↦a]⊨ψを得る。aは任意なのでM,s⊨∀xψであり、Q2 は妥当である。
等号の反射公理は、等号が同一性として解釈されるため真である。関数合同公理では、各[[ti]]sM=[[ui]]sMなら、関数fMを同じ引数列へ適用した値が一致する。関係合同公理では、同じ引数列が関係RMに属するかどうかは一致する。n=0の場合は比較する引数が無く、同じ定数の値または同じ零項関係の真理値を比較するので妥当である。
modus ponens が真理を保存することは含意の意味から従う。χから∀xχへの一般化を考え、この行の依存前提集合をΔとする。M,s⊨Δと仮定する。任意のa∈∣M∣について、一般化条件と§E16.6 定理 4.1によりM,s[x↦a]⊨Δである。帰納法の仮定を割当てs[x↦a]へ適用するとM,s[x↦a]⊨χを得る。したがってM,s⊨∀xχである。
導出の末尾の依存前提集合はΓの部分集合である。M,s⊨Γを満たす任意の構造と割当てへ帰納法の結論を適用するとM,s⊨φを得る。したがってΓ⊨φである。▨
例 6.2 (一般化条件を外すことができない例). 一要素述語Pをもつ言語で、前提P(x)からP(x)自身は導出することができる。一般化条件を外せばP(x)⊢∀xP(x)となる。しかし、台集合{0,1}、PM={0}、s(x)=0とすればM,s⊨P(x)である一方、M,s⊨∀xP(x)である。したがって、その規則は健全ではない。
7 構文的無矛盾性
変数x0を一つ固定し、
⊥:=(∀x0x0=x0)∧¬(∀x0x0=x0)
と略記する。この文はどの構造でも偽である。
定義 7.1.Lを集合サイズの一階言語とし、⊢Lを定義 1.2がLについて定めた導出可能性とする。前提集合Γ⊆Form(L)が Lにおいて構文的に無矛盾 (syntactically consistent in L) であるとは、
¬∃χ∈Form(L)(Γ⊢Lχ ∧ Γ⊢L¬χ)が成り立つことをいう。どの言語について述べているかが文脈から定まる場合には、添字を省いてΓ⊢χと書き、単に構文的に無矛盾であるという。
Γが文だけからなる場合、すなわちL理論S⊆Sent(L)の場合も、この定義をそのまま適用する。Sent(L)⊆Form(L)であるから、理論の無矛盾性は前提集合の無矛盾性の特別な場合である。
命題論理にも同じ名前の概念があり、条件の形も同じである。異なるのは、判定に用いる導出関係が本記事の一階 Hilbert 系のものである点だけである(§E16.4 定義 5.1)。
命題 7.2. 集合サイズの各言語Lと各前提集合Γ⊆Form(L)について、古典一階 Hilbert 系では次が同値である。
- ΓはLにおいて構文的に無矛盾である。
- Γ⊬L⊥である。
証明.⊥はLに属さない非論理記号を含まないので、以下の各行はすべてForm(L)に属する。Γ⊢LχかつΓ⊢L¬χなら、補題 2.1 (5)をρ=∀x0x0=x0として得るχ→(¬χ→⊥)へ modus ponens を二回適用し、Γ⊢L⊥を得る。逆にΓ⊢L⊥なら、補題 2.1 (5)の⊥→χと⊥→¬χへ modus ponens を適用してΓ⊢LχかつΓ⊢L¬χを得る。したがって二つの条件は同値である。▨
系 7.3. 集合サイズの各言語Lと各前提集合Γ⊆Form(L)について、Γを満たすL構造と割当てが存在するなら、ΓはLにおいて構文的に無矛盾である。
証明.Γ⊢L⊥なら、健全性によりΓ⊨⊥となる。しかし⊥はどの構造と割当てでも偽なので、Γのモデルが存在することに反する。命題 7.2によりΓはLにおいて構文的に無矛盾である。▨
8 演習
問題 8.1.
- ∀xP(x)⊢P(t)の一行の根拠を、代入可能性の条件とともに述べよ。
- P(x)⊢∀xP(x)が本記事の体系で導出することができないことを、健全性を用いて証明せよ。
- Γ∪{θ}⊢∀xηの最後の規則が一般化であるとする。演繹定理の証明でx∈/FV(θ)が必要になる箇所を示せ。
- zが安全な新変数であるとき、⊢∀xη→∀zη[x:=z]を
Q1、Q2、および一般化規則から導け。
解答 (確認問題の解答).
- tがP(x)のxに自由に代入可能なら、Q1 の例∀xP(x)→P(t)と前提∀xP(x)へ modus ponens を適用する。
- 例 6.2の構造と割当てでは前提が真で結論が偽である。もし導出することができるなら、健全性により意味論的帰結が成り立つため、矛盾する。
- 帰納法の仮定から得たΓ⊢θ→ηを一般化してΓ⊢∀x(θ→η)とした後、Q2∀x(θ→η)→(θ→∀xη)を用いる。
Q2 の変数条件がx∈/FV(θ)を要求する。元の導出の一般化条件が、xがΓ∪{θ}のどの前提にも自由に現れないことを保証する。
- Q1 により⊢∀xη→η[x:=z]である。この定理全体をzで一般化し、z∈/FV(∀xη)を用いて Q2 を適用すると、求める定理を得る。
▨