1 三角形の場合:初等幾何による証明
以下は主定理のn=3の場合に限った初等幾何による証明である。一般のnに対する証明は、次節の射影幾何による主証明が与える。三角形の場合、閉じるかどうかは二円の中心間距離と半径の間の一つの等式で決まる。
補題 1.1. 三角形ABCの内心をI、外接円をΓとし、直線AIがΓとA以外で交わる点をMとする。このときIは線分AMの内点であり、MはAを含まない弧BC上にあり、
MB=MC=MIが成り立つ。
証明.α=∠BAC/2、β=∠ABC/2と置く。内心の定義により半直線AIは∠BACを、半直線BIは∠ABCをそれぞれ二等分するので、∠BAI=∠IAC=α、∠ABI=∠IBC=βである。半直線AIは∠BACの内部にあるので辺BCとその内点Dで交わり、Iは三角形ABCの内部にあるので線分ADの内点である。Dは弦BCの内点としてΓの内部にあるので、直線ADはΓとA以外の一点で交わり、その点がMであって、Dは線分AMの内点である。したがって直線AM上にA,I,D,Mがこの順に並び、とくにIは線分AMの内点である。AとMは直線BCについて反対側にあるので、MはAを含まない弧BC上にあり、Γ上の四点はA,B,M,Cの順に並ぶ。ゆえにAとBは直線MCについて同じ側にあり、AとCは直線MBについて同じ側にある。
半直線AMは半直線AIと一致するので∠MAC=α、∠MAB=αである。円周角の定理により、弦MCに対する円周角として∠MBC=∠MAC=αであり、弦MBに対する円周角として∠MCB=∠MAB=αである。よって三角形MBCの二つの底角は等しく、MB=MCである。
Mは線分AIをIの側へ延長した半直線上にあるので、∠BIMは三角形ABIの頂点Iにおける外角であり、三角形の外角は隣り合わない二つの内角の和に等しいので
∠BIM=∠IAB+∠IBA=α+βである。他方、Dは線分IM上かつ半直線BC上にあるので、半直線BCは∠IBMの内部にあり、弦CMに対する円周角として∠CBM=∠CAM=αであるから、
∠IBM=∠IBC+∠CBM=β+αである。よって三角形MBIのBとIにおける角は等しく、MB=MIである。
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補題 1.2. 中心O、半径Rの円Γと、中心I、半径rの円Γ′をとる。Γ上の点Aを通りΓ′に点Eで接する直線をℓとし、IとEはともにΓの内部にあるとする。ℓがΓとA以外で交わる点をB、直線AIがΓとA以外で交わる点をMとすると、
IA⋅MB=2Rrが成り立つ。
証明.EはΓの内部にあるので、直線ℓ=AEはΓとA以外の一点Bで交わり、Eは線分ABの内点である。同様にIはΓの内部にあるので、直線AIはΓとA以外の一点Mで交わり、Iは線分AMの内点である。接線と接点を通る半径は直交するのでIE⊥ℓであり、三角形AEIはEを直角の頂点とする直角三角形である(E=AはEがΓの内部にあることから従う)。Eは半直線AB上に、Mは半直線AI上にあるので∠BAM=∠EAIであり、直角三角形AEIの鋭角として∠BAM<90°である。
MのΓにおける対蹠点をNとすると、MNはΓの直径でありMN=2Rである。B=Mである。実際、B=MならばIは直線ℓ上にあり、Iとℓの距離がIE=r>0であることに反する。B=Nである。実際、B=Nならばタレスの定理により∠BAM=∠NAM=90°となり、∠BAM<90°に反する。したがって三角形NBMは退化せず、タレスの定理により∠NBM=90°であり、その鋭角として∠BNM<90°である。
∠BNM=∠BAMを示す。N=Aならば二つの角は同じ角である。N=Aとする。AとNが直線BMについて同じ側にあるならば、弦BMに対する円周角として∠BNM=∠BAMである。AとNが直線BMについて反対側にあるならば、四点は円周上にB,A,M,Nの順に並び、内接四角形BAMNにおいてAとNは向かい合う頂点であり、その頂点における内角は∠BAMと∠BNMであるから、内接四角形の対角の和により∠BAM+∠BNM=180°となる。しかし二つの角はともに90°未満であり、この等式は成り立たない。よってAとNは直線BMについて同じ側にあり、∠BNM=∠BAMである。
直角三角形AEIとNBMは、直角のほかに∠EAI=∠BNMを共有するので相似であり、A,E,IがそれぞれN,B,Mに対応する。したがって
MNIA=BMEIであり、IA⋅BM=MN⋅EI=2Rrである。
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定理 1.3 (オイラーの関係式). 三角形の外心をO、外接円の半径をR、内心をI、内接円の半径をrとすると
OI2=R2−2Rrが成り立つ。
証明. 三角形をABC、外接円をΓ、内接円をΓ′とし、直線AIがΓとA以外で交わる点をMとする。補題 1.1により、Iは線分AMの内点でありMI=MBである。Γ′が直線ABに接する点をEとすると、EはIから直線ABへ下ろした垂線の足であり、三角形ABIのA,Bにおける角∠BAC/2,∠ABC/2はともに鋭角であるから、Eは線分ABの内点である。よってEは弦ABの内点としてΓの内部にあり、Iは線分AMの内点としてΓの内部にある。直線ABがΓとA以外で交わる点はBであるから、補題 1.2を円Γ′と接線ABに適用してIA⋅MB=2Rrを得る。他方、IはΓの内部にあり、直線AM上にA,I,Mがこの順に並ぶので、方べきの定理によりIA⋅IM=R2−OI2である。以上を合わせて
R2−OI2=IA⋅IM=IA⋅MB=2Rrを得る。▨
定理 1.4. 中心O、半径Rの円Γoutと、中心I、半径rの円Γinをとり、ΓinはΓoutの内部にあるとする。次の三つは同値である。
- 三頂点がΓout上にあり、三辺がそれぞれΓinに接する三角形が存在する。
- OI2=R2−2Rrが成り立つ。
- Γout上のどの点Aについても、AからΓinへ引いた二本の接線がΓoutと再び交わる点をB,Cとすると、直線BCはΓinに接する。
証明.(3)⇒(1)を示す。(3)を仮定し、Γout上の点Aを一つとる。ΓinはΓoutの内部にあるのでAはΓinの外部にあり、AからΓinへ二本の相異なる接線を引くことができる。各接線はその接点を通り、接点はΓoutの内部にあるので、各接線はΓoutとA以外の一点で再び交わる。二本の接線がΓoutと再び交わる点をB,Cとする。二本の接線は相異なる直線であってともにAを通るのでA以外の共通点をもたず、B=Cである。A,B,Cは同一円周上の相異なる三点であるから三角形をなす。辺AB,ACを含む直線はΓinに接し、(3)により直線BCもΓinに接する。三つの接点はいずれもΓoutの内部にあるので、それぞれの辺の内点である。したがって三角形ABCは(1)の三角形である。
(1)⇒(2)を示す。(1)の三角形をABCとし、Γinが辺BC,CA,ABに接する点をそれぞれTa,Tb,Tcとする。各接点はΓoutの内部にあるので、それぞれの辺の内点である。Iと直線ABの距離はr>0なのでIは直線AB上になく、円Γinのすべての点は、接線ABについて中心Iを含む側の閉半平面にある。Taは辺BCの内点であってBと異なるので、直線ABについてCと同じ側にあり、直線AB上にはない。TaはΓinの点であるから、Iは直線ABについてCと同じ側にある。同様に、Tbを用いてIは直線BCについてAと同じ側にあり、Tcを用いてIは直線CAについてBと同じ側にある。よってIは三角形ABCの内部にあり、Iから三辺を含む直線までの距離はいずれもrである。二直線から等距離な点はその二直線のなす角の二等分線上にあり、Iは各内角の内部にあるので、Iは三つの内角の二等分線上にある。したがってIは三角形ABCの内心であり、Γinはその内接円、rは内接円の半径である。OとRは三角形ABCの外心と外接円の半径であるから、定理 1.3によりOI2=R2−2Rrである。
(2)⇒(3)を示す。(2)を仮定し、Γout上の点Aをとる。AはΓinの外部にあるので、AからΓinへ二本の相異なる接線を引くことができる。その接点をE,F、Γoutとの第二交点をB,Cとする。(3)⇒(1)の証明と同じ理由でB=Cであり、Eは線分ABの内点、Fは線分ACの内点である。Iと直線ABの距離はr>0なのでIは直線AB上になく、円Γinのすべての点は接線ABについてIを含む側の閉半平面にあり、FはΓinの点であって直線AB上にはなくCと同じ側にあるので、Iは直線ABについてCと同じ側にある。同様にIは直線ACについてBと同じ側にあり、Iは∠BACの内部にある。Iは∠BACの内部にあって直線AB,ACから等距離(距離r)なので、二直線から等距離な点の性質によりIは∠BACの内角の二等分線上にある。
直線AIがΓoutとA以外で交わる点をMとする。IはΓoutの内部にあるので、直線AM上にA,I,Mがこの順に並ぶ。方べきの定理と(2)により
IA⋅IM=R2−OI2=2Rrである。他方、IとEはΓoutの内部にあるので、補題 1.2を接線ABに適用してIA⋅MB=2Rrを得る。二式からIM=MBである。
三角形ABCの内心をI0とする。I0は∠BACの内角の二等分線上、すなわち直線AI上にあるので、直線AI0がΓoutとA以外で交わる点はMである。補題 1.1によりI0は線分AMの内点でありMI0=MBである。IとI0はともにMからAへ向かう半直線上にあってMからの距離が等しいので、I=I0である。したがってIは三角形ABCの内心であり、Iから直線BCまでの距離はIから直線ABまでの距離rに等しい。Iから直線BCへ下ろした垂線の足をGとするとIG=rであるからGはΓin上にあり、IG⊥BCであるから直線BCはΓinにGで接する。▨
主定理のn=3の場合は、この定理から次の形で従う。
系 1.5.ΓinがΓoutの内部にあり、三頂点がΓout上にあって三辺がそれぞれΓinに接する三角形が一つ存在するとする。Γout上の任意の点から出発し、Γinへの接線の一方に沿ってΓoutとの第二交点へ進み、以後は各頂点で直前の辺と異なる接線に沿って進む。このとき、出発点と最初の接線をどう選んでも、ちょうど三辺で出発点へ戻る。
証明.定理 1.4により定理 1.4 (3)が成り立つ。出発点をAとし、最初に選んだ接線がΓoutと再び交わる点をB、もう一方の接線が再び交わる点をCとする。BからΓinへ引くことができる接線は直線BAともう一本の二本であり、定理 1.4 (3)により直線BCはΓinに接し、C=Aであるから直線BCは直線BAと異なる。よってBで選ぶ接線は直線BCであり、次の頂点はCである。同様にCで選ぶ接線は直線CBと異なる接線、すなわち直線CAであり、次の頂点はAである。B=A,C=Aなので一辺でも二辺でも戻らず、ちょうど三辺でAへ戻る。▨
2 主証明:パスカルの定理を使う方法
2.1 1. 射影平面へ移す
円を、実射影平面の非退化な円錐曲線K(外側)とC(内側)として扱う。2点x,yを通る直線をx−y、2直線ℓ,mの交点をℓ∧mと書く。円錐曲線上の隣り合う点が一致する極限では、x−xはその点での接線を表す。
使う道具は次のパスカルの定理である。
定理 2.1 (パスカルの定理). 同じ円錐曲線上の6点1,2,3,4,5,6に対して、
(1−2)∧(4−5),(2−3)∧(5−6),(3−4)∧(6−1)は一直線上にある。
その双対であるブリアンションの定理は、6本の接線について、対応する3本の交点連結線が一点で交わることを述べる。以下では、同じ局所配置にパスカルまたはブリアンションを適用する。
2.2 2. 閉鎖補題
外側の円錐曲線K上に、すでに閉じているn角形
a1,a2,…,an
があり、その辺ai−ai+1(添字は巡回的)がすべてCに接しているとする。別に、K上の点列
b1,b2,…,bn
を取り、最初のn−1本の辺bi−bi+1だけがCに接しているとする。次を示すのが閉鎖補題である。
補題 2.2 (パスカル型閉鎖補題).n≥4とし、上の2列の点が退化しないとする。このとき
I=(a1−a2)∧(b1−b2),X=(a2−bn−1)∧(b2−an−1),I′=(an−1−an)∧(bn−1−bn)は相異なる一直線上の3点である。
証明. まず、局所的な伝播を2段階に分ける。2≤p<q≤n−1とし、
Lj=(aj−aj+1)∧(bj−bj+1),Xp,q=(ap−bq)∧(bp−aq)と置く。
第1段階(ブリアンションによる窓の拡大)。もしLp,Xp,q,Lq−1が相異なる一直線上にあれば、局所配置に現れる6本のCへの接線にブリアンションを適用することで、
Lp−1, Xp,q, Lqも相異なる一直線上にある。ここで重要なのは、LpとLq−1が同一直線上にあるという仮定が、6本の接線の交点を通る1本の線を与える点である。ブリアンションは残りの2本の接線に対応する交点も同じ線上に送る。
相異性は、例えばLp−1=Lqと仮定すると、4本の相異なる接線が一点に集まることから矛盾する。非退化な円錐曲線Cについて、1点から引ける接線は高々2本なので、4本の接線のうち2本が一致する。しかしそれらはK上の相異なる8点を結ぶ直線なので一致できない。同様にXp,qとの一致も排除できる。
第2段階(パスカルによる窓の移動)。第1段階の結論を仮定し、
Xp,q′=(ap−1−bq+1)∧(bp−1−aq+1),J=(ap−1−aq)∧(bp−1−bq)と置く。パスカルを次の2通りに適用する。
- 6点ap−1,ap,bq,bp−1,bp,aqに適用すると、Lp−1,Xp,q,Jが共線。
- 6点ap−1,bq+1,bq,bp−1,aq+1,aqに適用すると、Xp,q′,J,Lqが共線。
仮定よりLp−1,Xp,q,Lqも共線なので、3本の共線性をつなげて
Lp−1, Xp,q′, Lqが共線となる。パスカルの3交点が一致しないことと、Kが非退化であることから、この3点も相異なる。
第1段階で添字の窓を外側へ広げ、第2段階で交点Xp,qを次の窓の交点へ移す。この操作を交互に繰り返すと、中央の添字から出発して端まで到達する。偶数nでは中央の6接線配置にブリアンション(n=4はそのまま)を使い、奇数nでは中央の6点配置にパスカルを使う。したがって最終的にI,X,I′が共線となる。これが一般nの帰納の中身である。□
2.3 3. 閉鎖補題からポンスレの結論へ
証明. 任意に選んだ開始点をb1とし、指定した接線枝を順に選んでb2,…,bnを作る。b1−b2,…,bn−1−bnは構成上Cに接している。
閉鎖補題からI,X,I′は共線である。さらに
J=(an−1−a1)∧(bn−1−b1),X′=(an−b1)∧(bn−a1)と置く。
6点へのパスカルの定理を2回使うと、
I,X,JおよびI′,J,X′がそれぞれ共線になる。すでにI,X,I′が共線なので、I,X′,I′も共線である。
ここで6本の直線
a1−a2,b1−b2,an−1−an,bn−1−bn,an−a1,bn−b1に双対パスカル(ブリアンション/カルノーの形)を適用する。最初の5本はCに接しているから、6本すべてが接する円錐曲線C′は5本の接線によってC′=Cと決まる。したがって最後の直線bn−b1もCに接する。
つまり、任意の開始点b1から出発してもn辺後に閉じる。円の場合は、退化点を避けて同じ枝を連続的に選ぶことで、これが冒頭の定理の主張になる。□
この証明で本質的なのは、パスカルを一度だけ使うことではない。中央の局所配置から共線性を「窓」として伝播させ、最後に5本の既知の接線から閉鎖辺を決めることである。
3 補助証明:楕円曲線上の平行移動
外側の円周上の点Pから内側の円へ引ける接線を1本選ぶと、次の頂点T(P)が決まる。これを円周上の写像と見る。閉じたn辺形があることは、Tn(P)=Pとなる点があることに対応する。
ポンスレの核心は、一般の円周上の写像を単なる回転と誤認することではない。2円の接線配置を二重被覆曲線へ持ち上げると、対応は楕円曲線上の一定の点の加法になる。したがってTn(P)=Pが1点で成り立つなら、その加法点はn倍して0になる。
補題 3.1 (閉形条件の群論的な形). 適切な二重被覆曲線Eと、その上の点qを用いて、接線を1辺進める操作はu↦u+qと表される。したがって、ある開始点でn辺閉じることはnq=0と同値である。
証明. 2円と接線の接点をパラメータ化し、接線条件を平方根の分岐をもつ代数曲線へ移す。その滑らかな射影閉包が種数1の曲線Eとなり、基点を単位元にすると楕円曲線の群構造が入る。隣接する接線の交換はこの曲線上の一定の点qの加法として表される。この「接線対応が一定の加法になる」部分は楕円曲線の群則を用いる標準結果として受け入れる。▨
この補題を受け入れると、1つの開始点でn辺閉じることはnq=0を意味する。すると任意のuについて
u+nq=u
なので、すべての開始点が同じn辺で閉じる。パスカルの証明が射影幾何の共線性を積み上げるのに対し、こちらは同じ事実を楕円曲線上の torsion(有限位数点)として表している。