1 正三角形からの逆向き構成
正の角α,β,γがα+β+γ=60∘を満たすとき、角3α,3β,3γをもつ三角形は、正三角形の周囲に六つの三角形を貼り合わせることによって得られます。貼り合わせの結果として頂点の角が3αになることが、この節の主張です。
補題 1.1. 正の角α,β,γがα+β+γ=60∘を満たすとする。三角形A′B′X′が
∠X′A′B′=α,∠X′B′A′=β,∠A′X′B′=120∘+γを満たすとする。線分A′B′上に、∠A′X′Z′=60∘+βを満たす点Z′と、∠B′X′Y′=60∘+αを満たす点Y′が、それぞれただ一つ存在する。このとき
∠A′Z′X′=∠B′Y′X′=60∘+γ,X′Z′=X′Y′が成り立つ。
証明.β<60∘<60∘+γであるから0∘<60∘+β<120∘+γ=∠A′X′B′である。したがって、X′から出て角A′X′B′の内部を通り、半直線X′A′と60∘+βの角をなす半直線がただ一つ存在し、この半直線は線分A′B′と両端以外のただ一つの点で交わる。この交点がZ′である。同じ理由で、0∘<60∘+α<120∘+γであるからY′もただ一つ存在する。三角形A′X′Z′の内角和から
∠A′Z′X′=180∘−α−(60∘+β)=60∘+γであり、三角形B′X′Y′の内角和から
∠B′Y′X′=180∘−β−(60∘+α)=60∘+γである。
線分A′B′上の相異なる二点P,Qについて、PがA′とQの間にあれば、半直線X′Pは角A′X′Qの内部にあり、∠A′X′P<∠A′X′Qである。したがって、線分A′B′上の点はX′から見た角∠A′X′Pの大小によってA′からの順序が定まる。Z′については∠A′X′Z′=60∘+βであり、Y′については
∠A′X′Y′=∠A′X′B′−∠B′X′Y′=(120∘+γ)−(60∘+α)=60∘+γ−αである。二つの角の差は
∠A′X′Y′−∠A′X′Z′=γ−α−β=2γ−60∘であるから、γと30∘の大小によって三つの場合に分かれる。
γ>30∘のとき、∠A′X′Z′<∠A′X′Y′であるから、線分A′B′上にA′,Z′,Y′,B′がこの順に並ぶ。Y′はZ′から見てB′の側にあるから
∠X′Z′Y′=∠X′Z′B′=180∘−∠A′Z′X′=120∘−γであり、Z′はY′から見てA′の側にあるから
∠X′Y′Z′=∠X′Y′A′=180∘−∠B′Y′X′=120∘−γである。γ<30∘のとき、∠A′X′Y′<∠A′X′Z′であるから、A′,Y′,Z′,B′がこの順に並ぶ。Y′はZ′から見てA′の側にあり、Z′はY′から見てB′の側にあるから
∠X′Z′Y′=∠X′Z′A′=60∘+γ,∠X′Y′Z′=∠X′Y′B′=60∘+γである。どちらの場合も三角形X′Z′Y′のZ′とY′における二つの内角が等しいので、二つの内角が等しい三角形は二等辺三角形であるという事実によりX′Z′=X′Y′である。γ=30∘のとき、∠A′X′Z′=∠A′X′Y′であるからZ′=Y′であり、X′Z′=X′Y′が成り立つ。▨
補題 1.2. 正の角α,β,γがα+β+γ=60∘を満たすとする。正三角形XYZを取り、直線XZに関してYと反対側に∠AXZ=60∘+βを満たす点Aを、直線XYに関してZと反対側に∠BXY=60∘+αを満たす点Bを取る。このとき
∠AXB=120∘+γが成り立つ。また、ZとBは直線XAに関して反対側にあり、YとAは直線XBに関して反対側にある。
証明.Xから出る半直線の位置を、半直線XYを始線とし、半直線XZの位置が60∘になる回転の向きに測った角で表す。位置は0∘以上360∘未満の値で取る。Xから出る二本の半直線の位置の差が180∘以下ならば、その差が二本の半直線のなす角であり、差が180∘を超えるならば、360∘から差を引いた値が二本の半直線のなす角である。また、位置θの半直線を含む直線は位置θとθ+180∘の二本の半直線からなり、位置がθとθ+180∘の間にある半直線と、そうでない半直線とが、この直線の両側を占める。
直線XZは位置60∘と240∘の半直線からなり、Yを含む半直線の位置は0∘である。Aは直線XZに関してYと反対側にあり、∠AXZ=60∘+βであるから、半直線XAの位置は60∘+(60∘+β)=120∘+βである。位置60∘−(60∘+β)+360∘=360∘−βの半直線もXZと角60∘+βをなすが、この半直線はYと同じ側にあるのでXAではない。直線XYは位置0∘と180∘の半直線からなり、Zを含む半直線の位置は60∘である。Bは直線XYに関してZと反対側にあり、∠BXY=60∘+αであるから、半直線XBの位置は360∘−(60∘+α)=300∘−αである。
半直線XAとXBの位置の差は
(300∘−α)−(120∘+β)=180∘−α−β=120∘+γであり、180∘以下であるから∠AXB=120∘+γである。直線XAは位置120∘+βと300∘+βの半直線からなる。XZの位置60∘は120∘+βと300∘+βの間になく、XBの位置300∘−αはα+β<180∘により120∘+β<300∘−α<300∘+βを満たすので、ZとBは直線XAに関して反対側にある。直線XBは位置120∘−αと300∘−αの半直線からなる。XYの位置0∘は120∘−αより小さく、XAの位置120∘+βは120∘−α<120∘+β<300∘−αを満たすので、YとAは直線XBに関して反対側にある。▨
定理 1.3. 正の角α,β,γがα+β+γ=60∘を満たすとする。正三角形XYZを取り、直線XZに関してYと反対側に∠AXZ=60∘+β、∠AZX=60∘+γを満たす点Aを、直線YXに関してZと反対側に∠BYX=60∘+γ、∠BXY=60∘+αを満たす点Bを、直線ZYに関してXと反対側に∠CZY=60∘+α、∠CYZ=60∘+βを満たす点Cを取る。(60∘+β)+(60∘+γ)=180∘−α<180∘であるからAはただ一つ存在し、同様にB,Cもただ一つ存在する。このときA,B,Cは非退化三角形をなし、
∠BAC=3α,∠ABC=3β,∠BCA=3γが成り立つ。さらに、半直線AX,AZは角BACを三等分し、AXが辺ABに近い三等分線、AZが辺ACに近い三等分線である。同様に、半直線BX,BYは角ABCを三等分してBXが辺BAに近く、半直線CY,CZは角BCAを三等分してCYが辺CBに近い。したがって、X,Y,Zは三角形ABCの各辺に近い隣接三等分線の交点であり、正三角形をなす。
証明. 構成により、Aは直線XZに関してYと反対側にあって∠AXZ=60∘+βを満たし、Bは直線XYに関してZと反対側にあって∠BXY=60∘+αを満たすので、補題 1.2により∠AXB=120∘+γである。角α,β,120∘+γの和は180∘であるから、∠X′A′B′=α、∠X′B′A′=β、∠A′X′B′=120∘+γを満たす三角形A′B′X′が存在する。この三角形に補題 1.1を適用し、線分A′B′上の点Z′,Y′を取る。
三角形A′X′Z′の内角はA′でα、X′で60∘+β、Z′で60∘+γである。三角形AXZの内角は、構成によりXで60∘+β、Zで60∘+γであり、内角和からAでαである。二組の角が等しいので、三角形A′X′Z′と三角形AXZは相似であり、
AXA′X′=XZX′Z′が成り立つ。同様に、三角形B′X′Y′の内角はB′でβ、X′で60∘+α、Y′で60∘+γであり、三角形BXYの内角はXで60∘+α、Yで60∘+γ、Bでβであるから、二つの三角形は相似であり、
BXB′X′=XYX′Y′が成り立つ。XZ=XYであり、補題 1.1によりX′Z′=X′Y′であるから、二つの比は等しい。すなわちA′X′:AX=B′X′:BXである。さらに∠A′X′B′=120∘+γ=∠AXBであるから、二辺の比とその間の角がそれぞれ等しい二つの三角形は相似であるという事実により、三角形A′X′B′と三角形AXBは相似である。したがって
∠XAB=∠X′A′B′=α,∠XBA=∠X′B′A′=βである。構成は、文字の置き換えX→Y→Z→X、A→B→C→A、α→β→γ→αを同時に行っても同じ構成であるから、同じ置き換えにより
∠YBC=β,∠YCB=γ,∠ZCA=γ,∠ZAC=αを得る。
頂点Aのまわりで、∠BAX=α、∠XAZ=α、∠ZAC=αである。補題 1.2によりBとZは直線AXに関して反対側にあるので、半直線AXとその逆向きの半直線のうちちょうど一方が角BAZの内部にある。逆向きの半直線が内部にあるならば、∠BAZは∠BAXと∠XAZを除いた残りの角360∘−2αに等しく、360∘−2α>180∘であるから、角の大きさが180∘未満であることに反する。したがって半直線AXは角BAZの内部にあり、∠BAZ=∠BAX+∠XAZ=2αである。半直線AXが角BAZの内部にあるので、XとBは直線AZに関して同じ側にある。構成により、Cは直線ZYに関してXと反対側にあって∠CZY=60∘+αを満たし、Aは直線ZXに関してYと反対側にあって∠AZX=60∘+γを満たすので、補題 1.2をZを中心に(Z,X,Y,C,A,γ,α,β)に対して適用すると、XとCは直線ZAに関して反対側にある。したがってBとCは直線AZに関して反対側にあるので、半直線AZとその逆向きの半直線のうちちょうど一方が角BACの内部にある。逆向きの半直線が内部にあるならば∠BAC=360∘−(2α+α)>180∘となって、角の大きさが180∘未満であることに反する。したがって半直線AZは角BACの内部にあり、
∠BAC=∠BAZ+∠ZAC=3αである。0∘<3α<180∘であるからA,B,Cは一直線上になく、三角形ABCは非退化である。半直線AX,AZは角BACの内部にあってこの角をα,α,αに分けるので、角BACの三等分線であり、AXが辺ABに近く、AZが辺ACに近い。同じ置き換えにより、∠ABC=3βであってBX,BYがその三等分線(BXが辺BAに近い)、∠BCA=3γであってCY,CZがその三等分線(CYが辺CBに近い)である。Xは半直線AXと半直線BXの交点であるから、辺ABに近い二本の三等分線の交点であり、Y,Zについても同様である。XYZは構成の出発点の正三角形である。▨
2 初等幾何による証明
以下は、定理 1の初等幾何による証明です。
証明.∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γと置く。三角形の内角和から、正の角α,β,γはα+β+γ=60∘を満たす。
正三角形X′Y′Z′を一つ取り、定理 1.3を適用して三角形A′B′C′を作る。この三角形の角は∠A′=3α,∠B′=3β,∠C′=3γであるから、二組の角が等しい二つの三角形は相似であるという事実により、三角形A′B′C′と三角形ABCは相似であり、A′↦A,B′↦B,C′↦Cを満たす相似変換fが存在する。相似変換は角の大きさを保ち、直線を直線へ写すので、fは角B′A′C′の辺A′B′に近い三等分線A′X′を角BACの辺ABに近い三等分線AXへ写し、角A′B′C′の辺B′A′に近い三等分線B′X′を角ABCの辺BAに近い三等分線BXへ写す。したがって、二本の三等分線の交点X′はXへ写る。同様にf(Y′)=Y、f(Z′)=Zである。相似変換はすべての長さを同じ比で変えるので、X′Y′=Y′Z′=Z′X′からXY=YZ=ZXを得る。これで定理 1は示された。▨
3 三角法による別証明
以下は、定理 1の三角法による別証明です。
証明.0<α+β<60∘かつ0<β+γ<60∘であるから、二つの分母は正である。三倍角の公式を
sin3u=4sinusin(60∘+u)sin(60∘−u)と因数分解する。α+β=60∘−γとβ+γ=60∘−αを用いると
sin(α+β)sin3γsinα=4sinαsinγsin(60∘+γ),sin(β+γ)sin3αsinγ=4sinαsinγsin(60∘+α)となる。
U=60∘+γ,V=60∘+αと置くとU+V=180∘−βである。加法定理から
sin2U+sin2V−2sinUsinVcosβ=sin2U+sin2V+2sinUsinVcos(U+V)=sin2(U+V)=sin2βを得る。先の二式を左辺へ代入して共通因子16sin2αsin2γをくくると、求める等式が得られる。▨
証明.∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γと置く。辺の長さをa=BC,b=CA,c=ABとし、外接円の半径をRとする。正弦定理により、正の定数k=2Rを用いて
a=ksin3α,b=ksin3β,c=ksin3γと書く。
Xは辺ABに対応する交点、Yは辺BCに対応する交点である。三角形ABXでは∠BAX=α,∠ABX=βであり、三角形BCYでは∠BCY=γ,∠CBY=βである。正弦定理を適用すると
BX=sin(α+β)csinα,BY=sin(β+γ)asinγとなる。
Bから出る二本の三等分線の間の角はβである。三角形BXYに余弦定理を適用し、a,cの表示を代入すると
XY2=k2[(sin(α+β)sin3γsinα)2+(sin(β+γ)sin3αsinγ)2−2sin(α+β)sin3γsinαsin(β+γ)sin3αsinγcosβ]=16k2sin2αsin2βsin2γを得る。最後の等号には公式 3.1を用いた。kと三つの正弦は正であるから、正の平方根を取って
XY=4ksinαsinβsinγとなる。頂点と角を巡回置換すると、YZとZXに対しても右辺は同じである。したがってXY=YZ=ZXであり、XYZは正三角形である。▨
角の三等分線の存在は定理の仮定です。一般の角を定規とコンパスで三等分する作図可能性は別の問題であり、ここでは扱いません。モーリーはこの定理を1899年に発見しました。本記事は内角から得る第一モーリー三角形だけを扱い、外角三等分線と高次モーリー三角形は扱いません。
5 確認問題
問題 5.1.定理 1の三角形ABCと交点X,Y,Zについて、∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γと置く。∠AXZ=60∘+β、∠AZX=60∘+γ、∠AXB=120∘+γを示せ。
解答.
初等幾何による証明の相似変換fは、正三角形X′Y′Z′から定理 1.3で作った三角形A′B′C′を三角形ABCへ写し、f(X′)=X、f(Z′)=Zを満たす。相似変換は角の大きさを保つので、∠AXZ=∠A′X′Z′、∠AZX=∠A′Z′X′、∠AXB=∠A′X′B′である。構成により∠A′X′Z′=60∘+β、∠A′Z′X′=60∘+γであり、補題 1.2により∠A′X′B′=120∘+γである。▨
問題 5.2.∠A=3α,∠B=3β,∠C=3γとし、辺の長さをa=BC,c=ABとする。正弦定理からBX,BYを求め、三角形BXYの余弦定理へ代入せよ。また、この計算が一般の角の定規とコンパスによる三等分作図を与えない理由を述べよ。
解答.
三角形ABXとBCYに正弦定理を適用すると
BX=sin(α+β)csinα,BY=sin(β+γ)asinγとなる。∠XBY=βであるから
XY2=BX2+BY2−2BXBYcosβである。三角法による証明は、すでに存在すると仮定した三等分線の間の長さを計算している。定規とコンパスだけで三等分線を構成する手順は与えていないので、作図可能性とは別の議論である。▨